説明

制御されたメソ多孔度を有するアルミナの調製方法

メソ細孔性アルミナの調製方法が記載され、この方法は、以下の工程を含む:a)水溶液中で、アルミニウムアルコキシドによって構成される少なくとも1種のアルミニウム源と、少なくとも1種のカチオン性界面活性剤と、メタノールおよびエタノールから選択される少なくとも1種の有機溶媒とを混合する工程;b)前記工程a)で形成された混合物を水熱処理する工程;c)前記工程b)で形成された固体を乾燥させる工程;d)前記工程c)で形成された固体を焼成する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御されたメソ多孔度を有するアルミナの分野に関する。より正確には、本発明は、種々の触媒用途における反応において用いられる触媒の触媒用担体として用いることを目的として制御されたメソ多孔度を有するアルミナの新規な調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒または吸着剤の担体として、細孔性のアルミナが日常的に用いられている。このような細孔性のアルミナは、アルミニウム塩の沈着またはアルミニウムアルコキシドの加水分解により調製される。このようなアルミナは、熱的および化学的に安定しているが、一般に比較的広い細孔サイズ分布と比較的中程度の比表面積を有する。
【0003】
良好な熱的および化学的安定性と、均一なメソ細孔サイズと、高い比表面積とを有するアルミナが、触媒作用または吸着作用における適用のために活発に開発されている。カチオン性、アニオン性、中性、または非イオン性の界面活性剤の存在下、アルミニウム塩の沈着またはアルミニウム前駆体の加水分解により調製されたアルミナは、調製条件に応じて、良好な熱的および化学的安定性と、均一なメソ細孔サイズと、高い比表面積とを有する。特許文献1には、そのようなアルミナの調製であって、アルミニウムアルコキシド、特にアルミニウムtri−secブトキシドと、カチオン性界面活性剤、特に式CH(CHn−1N(CHBr(n=12、14、16または18)を有する第四級アンモニウムと、有機アルコールタイプの溶媒、特に1−ブタノール、2−ブタノール、1−プロパノール、または2−プロパノールと、水とを含む混合物を水熱処理することによる、調製が記載されている。特許文献1に開示された方法により得られるアルミナは、良好な熱的安定性と、界面活性剤のサイズ(またはn)にとりわけ依存する値に調製されたメソ細孔サイズと、高い比表面積とを有する。しかし、特許文献1のアルミナは、比較的中程度のメソ細孔容積を有し、これは、このアルミナが種々の炭化水素転化反応において用いられる触媒中に存在する場合、二流の触媒性能をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2004/014799号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の目的と利点)
本発明は、メソ細孔性アルミナの新規な調製方法に関し、該方法は、 以下の工程を含む:
a) 水溶液中で、アルミニウムアルコキシドによって構成される少なくとも1種のアルミニウム源と、少なくとも1種のカチオン性界面活性剤と、メタノールおよびエタノールから選択される少なくとも1種の有機溶媒とを混合する工程;
b) 前記工程a)で形成された混合物を水熱処理する工程;
c) 前記工程b)で形成された固体を乾燥させる工程;
d) 前記工程c)で形成された固体を焼成する工程。
【0006】
本発明の方法に従って調製されたメソ細孔性アルミナは、制御されたメソ多孔度を有するアルミナであり、該アルミナは、良好な熱的および化学的安定性と高い比表面積とを有する。驚くべきことにかつ有利には、本発明の調製方法により、高いメソ細孔容積、すなわち、0.60mL/g以上、好ましくは0.8mL/g以上のメソ細孔性アルミナが製造される。これにより、前記メソ細孔性アルミナを含み、かつ、炭化水素供給原料の転化方法において用いられる触媒の場合、従来技術の方法に従って調製されたメソ細孔性アルミナを含む触媒を用いて得られた触媒性能と比較してはるかにより良好な触媒性能が得られる。特に、本発明の方法に従って調製された前記メソ細孔性アルミナを含みかつ炭化水素の水素化脱硫方法において用いられる触媒は、従来技術の方法を用いて調製されたメソ細孔性アルミナを含む触媒を用いて得られた触媒性能と比較してはるかにより良好な触媒性能を、特に、転化率および選択性の観点で、生じさせる。驚くべきことに、本発明の方法に従って調製された前記メソ細孔性アルミナを含む触媒は、とりわけそれが炭化水素の水素化脱硫方法において用いられる場合、従来技術の方法を用いて調製されたメソ細孔性アルミナを含む触媒より、より活性でありかつより選択性が高い。更に、本発明のメソ細孔性アルミナの調製方法の他の利点は、簡易でありかつ経済的であることである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(発明の説明)
本発明の主題は、メソ細孔性アルミナの調製方法に関し、該方法は以下の工程を含む:
a) 水溶液中で、アルミニウムアルコキシドによって構成される少なくとも1種のアルミニウム源と、少なくとも1種のカチオン性界面活性剤と、メタノールおよびエタノールから選択される少なくとも1種の有機溶媒とを混合する工程;
b) 前記工程a)で形成された混合物を水熱処理する工程;
c) 前記工程b)で形成された固体を乾燥させる工程;
d) 前記工程c)で形成された固体を焼成する工程。
【0008】
本発明の方法は、良好な熱的および化学的安定性を有し、かつ、均一な制御されたメソ細孔径と、高い比表面積と、高いメソ細孔容積とを有するメソ細孔性アルミナをもたらす。本発明の方法に従って調製されたメソ細孔性アルミナは、ミクロ細孔およびマクロ細孔を含まない。
【0009】
本発明の方法に従って調製されたメソ細孔性アルミナは、均一径のメソ細孔を有する、フィブリル化(fibrillated)構造、球状(nodular)構造、またはバーミキュラ構造を有する。 好ましくは、本発明の方法に従って得られた、 制御されたメソ多孔度を有するアルミナは、フィブリル化形態にある。このアルミナは、300m/g超、好ましくは400m/g超の比表面積と、0.6mL/g以上、好ましくは0.8mL/g以上のメソ細孔容積を有する。
【0010】
本発明の方法の工程a)は有利には、初めに、メタノールおよびエタノールから選択される前記有機溶媒中で、少なくとも前記カチオン性界面活性剤と、少なくとも前記アルミニウム源とを混合し、その後、水を前記混合物にゆっくりと加えることにより行われる。前記工程a)は有利には、周囲温度で行われる。
【0011】
本発明の方法の工程a)によると、混合物のモル組成は、水/アルミニウム源のモル比が、0.1〜10の範囲、好ましくは1〜3の範囲であり、カチオン性界面活性剤/アルミニウム源のモル比が0.1〜10の範囲、好ましくは0.1〜2の範囲であり、有機溶媒/水のモル比が1〜10の範囲、好ましくは4〜6の範囲であるようにされる。
【0012】
本発明の方法の工程a)を行うために用いられるカチオン性界面活性剤は、好ましくは、式CH(CHN(CH・Xを有する第四級アンモニウムタイプのカチオン性化合物であり、ここで、nは、8〜22の範囲であり、好ましくは、nは、12〜16の範囲であり、Xは、ハロゲン化物、アセタート、ホスファート、ニトラート、メチルスルファート、または水酸化物、好ましくはハロゲン化物、一層好ましくは臭化物である。界面活性剤のサイズまたは−(CH−鎖の長さは、アルミナのメソ細孔の径を調製するために用いられ得る。選ばれたカチオン性界面活性剤は、好ましくは臭化セチルトリメチルアンモニウム(cetyltrimethylammonium bromide:CTAB、n=15)である。界面活性剤の分子同士が合成条件の下で結合し、合成媒体中に組織化されたミセル凝集を形成する。界面活性剤の量は、ミセル凝集の役割が行われ得るように少なすぎてはならず、また、調製方法のコストが安価となるように多すぎてもならない。
【0013】
本発明の調製方法の工程a)を行うために用いられるアルミニウム源は、式Al(OR)(Rは、線状または分枝アルキル基であり、好ましくは分枝アルキル基である)を有するアルミニウムアルコキシドである。一層好ましくは、前記アルミニウム源は、アルミニウムtri−secブトキシド(Al(OCH(CH)(C)))またはアルミニウムイソプロポキシド(Al(OCH(CH)である。
【0014】
本発明の調製方法の前記工程a)を行うために用いられる水は、界面活性剤のミセル凝集が発生する速さと比較して、制限された速さでアルミニウムアルコキシドの加水分解を確実なものとする。 水の量は、アルミニウムアルコキシドの加水分解が起こり得るように少なすぎてはならず、また、ミセル凝集と比較して加水分解反応が急速に起こるのを避けるために多すぎてもならない。
【0015】
本発明の方法の前記工程a)を行うために用いられる、メタノールおよびエタノールから選択される有機溶媒は、特に、水を希釈してアルミニウムアルコキシドの加水分解を減速させるために用いられ得る。一層好ましくは、前記有機溶媒 は、エタノールである。
【0016】
本発明の調製方法の前記工程a)中に形成される混合物は、有利には、アルミニウムアルコキシドの加水分解を減速させるためにアルミニウム錯化剤を含む。例として、それは、ブタン−1,3−ジオールまたはトリエタノールアミンである。錯化剤の割合は、錯化剤/アルミニウム源のモル比が0〜10の範囲、好ましくは0〜2の範囲、一層好ましくは0.1〜2の範囲であるようにされる。有利には、前記錯化剤は、界面活性剤およびアルミニウム源と同時に導入される。
【0017】
本発明の調製方法の工程b)によると、水熱処理は、好ましくは25〜200℃の範囲、一層好ましくは80〜150℃の範囲である温度で行われる。水熱処理は、好ましくは5〜100時間の範囲、一層好ましくは10〜50時間の範囲である期間にわたり行われる。
【0018】
前記水熱処理の終わりに、固体は、通常の分離技術(ろ過または遠心分離)を用いて回収され、大量の溶媒、好ましくは前記工程a)を行う際に用いられる有機溶媒で洗浄され、固体、特にカチオン性界面活性剤から過剰に溶解した種が抜き出される。
【0019】
本発明の調製方法の工程c)において、乾燥は、好ましくは25〜150℃の範囲、一層好ましくは50〜120℃の範囲である温度で行われる。乾燥は、周囲空気中で行われる。その意図は、本発明の方法の前記工程a)を行う際に用いられたアルコール性有機溶媒の大部分を蒸発させることである。
【0020】
本発明の調製方法の工程d)によると、焼成は、好ましくは400〜800℃の範囲、一層好ましくは500〜750℃の範囲である温度で行われる。焼成は、周囲空気中で、好ましくは2〜12時間の範囲、一層好ましくは4〜10時間の範囲である期間にわたり行われる。その意図は、熱分解により界面活性剤を抜き出し、それにより前記メソ細孔性アルミナのメソ多孔度を遊離させることである。
【0021】
本発明の方法に従って得られたメソ細孔性アルミナは、制御されたメソ多孔度を有するアルミナである。これは、いくつかの分析技術によって特徴付けられる。前記メソ細孔性アルミナは、小角X線回折法(0.5〜6°の範囲である角2θの値、CuKα線)および広角X線回折法(5〜100°の範囲である角2θの値、CuKα線)によって特徴付けられる。前記アルミナの小角X線ディフラクトグラムは、1〜3°の範囲である2θ(CuKα線)において拡散ピークを有し、これは、得られたアルミナが長距離に完全な秩序を有しないメソ細孔により形成された構造であり、それが均一なメソ細孔径を有することを示す。前記メソ細孔性アルミナの広角X線ディフラクトグラムは、それが低結晶性ガンマアルミナであることを示す。本発明の方法に従って得られた前記メソ細孔性アルミナはまた、透過電子顕微鏡法(transmission electron micscopy:TEM)によって分析され、これは、対象となる固体の画像を形成するために用いられ得、観察されるコントラストが、観察される固体の構造的組織(structural organization)、組織(texture)、または形態の特徴である。本発明の方法に従って調製されたメソ細孔性アルミナについての得られたTEM画像は、規則正しい径のメソ細孔を有する、フィブリル化構造、球状構造、またはバーミキュラ構造を有する。好ましくは、本発明の方法に従って得られた制御されたメソ多孔度を有するアルミナは、フィブリル化形態にある。制御されたメソ多孔度を有する前記アルミナはまた、真空脱気処理後、窒素物理吸着により分析され、IV型等温線およびH2型ヒステリシスによってIUPAC分類(K S W Sing, D H Everett, R A W Haul, L Moscou, R A Pierotti, L Rouquerol, T Siemieniewska, IUPAC, Pure and Appl Chem 57 (1985), 603)を用いて、確認される。これは、メソ細孔性の固体の特徴であり、規則正しい径のメソ細孔の特徴である吸着等温線上に段部を有する。本発明の方法に従って得られた、制御されたメソ多孔度を有するアルミナの、BET理論(S Brunauer, P H Emmett, E Teller, J Am Chem Soc 60 (1938), 309)を用いて推論された比表面積SBETは、300m/g超、好ましくは400m/g超である。そのメソ細孔のサイズ(径)分布は、BJH理論(E P Barett, L G Joyner, P P Hallender, J Am Chem Soc 73 (1951), 373)から推論され、脱着分枝に適用され、中心(DBJH)は4〜20nmの範囲、好ましくは5〜15nmの範囲である。メソ細孔性分布の幅は、狭く、メソ細孔のサイズまたは径に対する最小値(Dmin):0.25×DBJH超、およびメソ細孔のサイズまたは径に対する最大値(Dmax):1.75×DBJH未満に相当する。本発明の方法に従って得られた、制御されたメソ多孔度を有する前記アルミナは、飽和蒸気圧等温線から測定された、メソ細孔容積(VN2、飽和圧力に近い圧力で、分析対象の物質の細孔中に凝縮した液体の容積として求められる(Gurvitsch則):L Gurvitsch, J Phys Chem Soc Russ, 47 (1915), 805)を有し、これは、非常に高く、好ましくは0.6mL/g以上、より好ましくは0.8mL/g以上である。好ましくは、前記メソ細孔容積は、4mL/g未満である。本発明によると、本発明の方法を用いて調製されたメソ細孔性アルミナは、ミクロ細孔およびマクロ細孔を含まない。
【0022】
本発明の調製方法を用いて得られた、制御されたメソ多孔度を有するアルミナは、有利には、触媒担体として用いられる。制御されたメソ多孔度を有する前記アルミナを触媒担体として含む触媒の調製は、当業者に知られた触媒調製方法を用いて行われる。そのような触媒は、通常、前記メソ細孔性アルミナから形成された担体の細孔中に沈着させられた活性金属相を含む。担体は、当業者に知られた方法を用いて前記メソ細孔性アルミナを成形することにより得られる。前記メソ細孔性アルミナは、鉱物バインダを加えることにより成形されて、乾燥および焼成の後に成形マトリクスに凝集力を提供するようにしてよい。前記メソ細孔性アルミナはまた、成形された後に、鉱物バインダを加えてまたは加えることなくそれを焼成してもよい。本発明の方法に従って調製されたメソ細孔性アルミナは、有利には、混合−押出によって成形され、すなわち、ベーマイトおよび酸性水溶液と混合されて、ベーマイトの解膠を促し、ペーストを形成し、このペーストは、ダイを通して押されて、押出物が成形される。この押出物は、乾燥および焼成の後一般的には0.4〜4mmの径を有する。成形されたアルミナは、その後、乾燥させられて、成形の間に導入された溶媒(水)の大部分が蒸発させられ、焼成されて、成形マトリクスに凝集力が提供され、必要ならば、界面活性剤が依然として存在する場合熱分解によって界面活性剤が抜き出される。
【0023】
活性相は、成形前または成形時、本発明の方法に従って調製されたアルミナの細孔中に導入されてもよく、あるいは、成形後、担体の細孔中に導入されてもよい。細孔への導入は、当業者に知られた含浸技術を用いて行われる。触媒は、例えば、元素周期表の第VIB族および/または第VIII族からの水素化脱水素特性を有する金属を含んでもよい。それは、例えば、第VIB族からの元素としてはモリブデンおよび/またはタングステンであってもよく、第VIII族からの元素としては、コバルトおよび/またはニッケルであってもよい。好ましくは、第VIB族からの金属は、導入の様式に拘わらず、第VIII族からの金属の導入と同時またはその直後に導入される。金属は、好ましくは、成形前または成形後、金属の前駆体塩を含む溶液を用いて、本発明の方法に従って調製されたアルミナの乾式含浸により導入される。それは、成形前または成形後、1種以上の金属前駆体を含む1種以上の溶液を用いて、本発明の方法に従って調製されたアルミナに含浸させるための1回以上の操作によって行われてもよい。このように金属を含む、本発明の方法に従って調製されたアルミナは、溶媒(水)を蒸発させるように、乾燥させられ、焼成され、金属前駆体は金属酸化物に転化させられる。要素が、対応する前駆体塩を含浸させるためのいくつかの工程において導入される場合、中間の乾燥工程および焼成工程が通常行われる。使用前、活性種を形成するために、金属酸化物を硫化物に変換することがしばしば必要である。この活性化段階は、還元供給原料(reducing feed)中、水素および硫化水素の存在下に行われる。
【0024】
これにより得られ、かつ、本発明の調製方法を用いて得られた制御されたメソ多孔度を有する前記アルミナを含む触媒は、有利には、石油留分、石炭からの留分または天然ガスから製造された炭化水素のような炭化水素供給原料を水素化精製および/または水素化転化するために用いられ、より具体的には、例えば、芳香族、および/またはオレフィン化合物、および/またはナフテン、および/またはパラフィンを含む供給原料のような炭化水素供給原料の水素化、水素化脱窒、水素化脱酸素、水素化脱芳香族、水素化脱硫、水素化脱金属、水素化異性化、水素化脱アルキル化、および脱水素に用いられ、前記供給原料は場合により金属および/または窒素および/または酸素および/または硫黄を含む。一層好ましくは、本発明の調製方法を用いて得られた制御されたメソ多孔度を有する前記アルミナを含む前記触媒は、炭化水素供給原料の水素化脱硫および水素化脱窒のために用いられる。高い水素化脱硫活性が望まれる場合、本発明の方法に従って調製されたアルミナを含む触媒中に存在する水素化脱水素機能を有する金属は、コバルトおよびモリブデンの組み合わせからなる。高い水素化脱窒活性が望まれる場合、ニッケルとモリブデンまたはタングステンとの組み合わせが好ましい。
【0025】
本発明の調製方法を用いて得られた制御されたメソ多孔度を有する前記アルミナを含む触媒を用いる種々の方法において用いられる供給原料は、ガソリン、軽油、真空軽油、脱アスファルト化されたまたは脱アスファルト化されていない残渣油、パラフィンオイル、蝋、およびパラフィンより形成された群より一般に選択される。それらは、硫黄、酸素、窒素、および場合による金属、例えばニッケルやバナジウム等、のような少なくとも一種のヘテロ原子を含む。水素化精製または水素化転化の条件、例えば、温度、圧力、水素(リットル)/炭化水素(リットル)の体積比、または、毎時空間速度等は、供給原料の特性、所望の生成物の質、および精製所で利用できる設備に応じて大幅に変わり得る。本発明の調製方法を用いて得られた制御されたメソ多孔度を有する前記アルミナを含む触媒を用いる種々の方法のための反応器(単数または複数)中で用いられる操作条件とは、200℃超、好ましくは200〜450℃の範囲の温度、0.5〜30MPaの範囲、好ましくは20MPa未満の圧力であり、空間速度は0.1〜10h−1の範囲、好ましくは0.1〜8h−1の範囲、一層好ましくは0.2〜6h−1の範囲であり、導入される水素の量は、水素(リットル)/炭化水素HC(リットル)の体積比が、10〜5000L/Lの範囲、好ましくは100〜2000L/Lの範囲であるようにされる。
【0026】
以下の実施例は、本発明を例証するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。以下の実施例におけるアルミナは、本明細書中に前述した分析技術によって分析された。
【0027】
(実施例1(比較例):WO-2004/014799によるアルミナA1の調製)
この実施例では、特許出願第WO-2004/014799の実施例1〜4、およびH C Leeらによる刊行物(Microporous and Mesoporous Materials 79 (2005), 61-68)に記載された手順に従って、アルミニウム源としてアルミニウムtri−secブトキシド(Al−sec−but)を、カチオン性界面活性剤として臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を、有機溶媒として1−ブタノール(ButOH)を用いた、制御されたメソ多孔度を有するアルミナA1の調製を記載する。
【0028】
混合物は、以下のモル組成を有していた:
1Al−sec−but:0.5CTAB:2HO:10ButOH。
【0029】
35.69gの臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を、72.65gの1−ブタノール中に溶解させた。48.32gのアルミニウムtri−secブトキシド(Al−sec−but)をまた、72.5gの1−ブタノール中に溶解させた。CTAB溶液を、Al−sec−but溶液に連続的に攪拌しながらゆっくりと加えた。0.5時間後、7.06gの水を、混合物にゆっくりと加えた。混合物を、テフロン(登録商標)ライナを有するステンレス鋼製のオートクレーブ内に導入し、100℃で24時間にわたり水熱処理を施した。ろ過によって回収された固体を、大量のエタノールで洗浄し、周囲温度で16時間にわたり乾燥させ、次いで換気式オーブン内において110℃で5時間にわたり周囲空気中で乾燥させた。その後それを、マッフル炉内において500℃で4時間にわたり周囲空気中で焼成し、その間2℃/分の昇温が行われた。このようにしてアルミナA1を得た。
【0030】
アルミナA1は、広角XRD、小角XRD、窒素容積測定分析、およびTEMによって特徴付けられた。
【0031】
広角XRDにより、得られたアルミナA1が低結晶性ガンマアルミナであることを示すディフラクトグラムを得た。小角XRDにより、長距離に完全な秩序を有しないが均一なメソ細孔径を有するメソ細孔によって形成された構造の特徴であるピークの画像を得た。TEM分析により、アルミナA1が、規則正しい径のメソ細孔を持つバーミキュラ構造を有することが示された。窒素容積測定分析(窒素の物理吸着)により、アルミナA1についての比表面積340m/g、4.0nmを中心とする狭いメソ細孔サイズ(径)分布1.0〜7nm、メソ細孔容積0.45mL/gを得た。全ての構造的データを表1に要約する。
【0032】
(実施例2(本発明):制御されたメソ多孔度を有するアルミナA2の調製)
この実施例では、本発明に従って、アルミニウム源としてアルミニウムtri−secブトキシド(Al−sec−but)を、カチオン性界面活性剤として臭化セチルトリメチルアンモニウムを、有機溶媒としてエタノール(EtOH)を用いた、制御されたメソ多孔度を有するアルミナA2の調製を記載する。
【0033】
混合物は、以下のモル組成を有していた:
1Al−sec−but:0.5CTAB:2HO:10EtOH。
【0034】
35.69gの臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を、45.13gのエタノール中に溶解させた。48.32gのアルミニウムtri−secブトキシド(Al−sec−but)をまた、45.10gのエタノール中に溶解させた。CTAB溶液を、Al−sec−but溶液に連続的に攪拌しながらゆっくりと加えた。0.5時間後、7.06gの水を、混合物にゆっくりと加えた。混合物を、テフロン(登録商標)ライナを有するステンレス鋼製のオートクレーブ内に導入し、100℃で24時間にわたり水熱処理を施した。ろ過によって回収された固体を、大量のエタノールで洗浄し、周囲温度で16時間にわたり乾燥させ、次いで換気式オーブン内において110℃で5時間にわたり周囲空気中で乾燥させた。その後それを、マッフル炉内において500℃で4時間にわたり周囲空気中で焼成し、その間2℃/分の昇温が行われた。このようにしてアルミナA2を得た。
【0035】
アルミナA2は、広角XRD、小角XRD、窒素容積測定分析、およびTEMによって特徴付けられた。
【0036】
広角XRDにより、得られたアルミナA2が低結晶性ガンマアルミナであることを示すディフラクトグラムを得た。小角XRDにより、長距離に完全な秩序を有しないが均一なメソ細孔径を有するメソ細孔によって形成された構造の特徴であるピークの画像を得た。TEM分析により、アルミナA2が、フィブリル化構造を有することが示された。窒素容積測定分析(窒素の物理吸着)により、アルミナA2についての比表面積423m/g、6.2nmを中心とする狭いメソ細孔サイズ(径)分布3.0〜9.0nm、メソ細孔容積0.85mL/gを得た。全ての構造的データを表1に要約する。
(実施例3(本発明):制御されたメソ多孔度を有するアルミナA3の調製)
この実施例における焼成温度が750℃であったこと以外は、アルミナA2を調製する際に用いた操作条件下で、制御されたメソ多孔度を有するアルミナA3を調製した。このようにしてアルミナA3を得た。
【0037】
アルミナA3は、広角XRD、小角XRD、窒素容積測定分析、およびTEMによって特徴付けられた。
【0038】
広角XRDにより、得られたアルミナA3が低結晶性ガンマアルミナであることを示すディフラクトグラムを得た。小角XRDにより、長距離に完全な秩序を有しないが均一なメソ細孔径を有するメソ細孔によって形成された構造の特徴であるピークの画像を得た。TEM分析により、アルミナA3が、フィブリル化構造を有することが示された。窒素容積測定分析(窒素の物理吸着)により、アルミナA3についての比表面積309m/g、6.7nmを中心とする狭いメソ細孔サイズ(径)分布3.5〜8.9nm、メソ細孔容積0.69mL/gを得た。全ての構造的データを表1に要約する。
【0039】
【表1】

【0040】
本発明の方法に従って調製されたアルミナA2およびA3は、狭いメソ細孔サイズ(径)分布および高い比表面積を有していた。それらは、従来技術の方法に従って調製されたアルミナA1のメソ細孔容積より著しく高いメソ細孔容積を有していた。高い比表面積と高いメソ細孔容積によって特徴付けられたアルミナA3は、高温で焼成されたものの、非常に良好な熱的安定性を示した。
【0041】
(実施例4:触媒C1、C2、C3、およびC4の調製)
触媒C1、C2、C3、およびC4を、それぞれ、アルミナA1、A2、A3、およびA4から調製した。アルミナA4は、市販のガンマアルミナであり、La Rocheからの整理番号Versal 250を有し、このものは、混合−押出によって成形され、140℃で2時間にわたり周囲空気中で乾燥させられ、600℃で2時間にわたり周囲空気中で焼成され、粉砕されたものであり、表1に与えられる組織特性を有している。
【0042】
硝酸コバルト(Co(NO・HO、Fluka)と七モリブデン酸アンモニウム((NHMo24・4HO、Fluka)の同時乾式含浸により、触媒C1、C2、C3、およびC4を調製した。各アルミナA1、A2、A3、およびA4上に10重量%のモリブデンおよび2.45重量%のコバルトを沈着させるように、配合を調整した。含浸の後に、2時間にわたり周囲温度で成熟させ、換気式オーブン内において110℃で16時間にわたり周囲空気中で乾燥させ、マッフル炉内で500℃で8時間にわたり周囲空気中で焼成し、その間1.5℃/分の昇温が行われた。
【0043】
各触媒は、窒素容積測定分析によって特徴付けられた。触媒C1、C2、C3、およびC4について行われた窒素容積測定分析による分析結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
制御されたメソ多孔度を有し、かつ本発明の方法に従って調製されたアルミナA2およびアルミナA3をそれぞれに含む触媒C2およびC3は、活性相の沈着にもかかわらず、従来技術に従って調製されたアルミナA1を含む触媒C1と比較して、狭いメソ細孔のサイズ(径)分布と、高い比表面積と、とりわけ非常に高いメソ細孔容積とを有していた。触媒C2およびC3はまた、従来のアルミナA4で製造された触媒C4のものと比較して、狭いメソ細孔サイズ(径)分布と高い比表面積とを有していた。本発明の方法に従って調製されたアルミナA2およびA3は、このように、触媒担体であることに関して良好な特性と有しており、また、非常に良好な化学的安定性を有していた。
【0046】
(実施例5:チオフェン(モデル硫黄含有分子)の水素化脱硫における触媒C1、C2、C3、およびC4の触媒評価)
炭化水素の水素化脱硫における触媒C1、C2、C3、およびC4の性能を評価するための基準触媒試験として、チオフェンの水素化脱硫を選択した。チオフェンは、炭化水素中に存在する硫黄含有芳香族分子を表す単純なモデル分子である。チオフェンの転化率および水素化脱硫反応における所望の生成物であるブタンに対する選択性の観点で、触媒C1、C2、C3、およびC4の触媒性能を評価した。これはモデル分子試験であったため、工業装置において用いられる操作条件と比較して操作条件を適合させた。
【0047】
水素流れ(60mL/分)中のHS(10体積%)中、大気圧で、400℃の温度で2時間にわたり(6℃/分の昇温)行われる硫化を、触媒C1、C2、C3、およびC4に施した。現場(in situ)で硫化を行い、その後、大気圧で、0.2gの触媒を装填した固定床反応器内において触媒試験を行った。真空蒸留によって連続して2回精製されたチオフェンを、6.65kPaの一定圧力でありかつ水素流れ(10mL/分)中の反応器内に導入した。この触媒試験は、350℃の温度および0.1MPaの圧力で行われた。
【0048】
試薬(チオフェン)と生成物(ブタン、ブト−1−エン、trans−ブト−2−エン、cis−ブト−2−エン)の量を、フレームイオン化検出器およびPLOTアルミナカラムを備えたガスクロマトグラフを用いて分析した。
【0049】
チオフェンの転化率およびブタン選択性を求めることにより、触媒C1、C2、C3、およびC4の触媒性能を評価した。結果を表3に示す。
【0050】
以下のように、チオフェンの転化率を計算した:
Cvチオ=(Σa/4)/(aチオ/3.4+Σa/4)
式中、aは、生成物i、すなわち、ブタン、ブト−1−エン、trans−ブト−2−エン、およびcis−ブト−2−エンに相当するクロマトグラム上のピークの面積であり、aチオは、チオフェンに相当するクロマトグラム上のピークの面積である。
【0051】
以下のように、ブタンに対する選択性を計算した:
Selブタン=aブタン/Σa/4。
【0052】
式中aは、転化率の演算について上記で定義された通りであり、aブタンは、ブタンに相当するクロマトグラム上のピークの面積である。
【0053】
【表3】

【0054】
結果は、本発明の方法に従って調製されたアルミナA2およびA3をそれぞれ含む触媒C2およびC3が、チオフェン転化率およびブタンに対する選択性の観点で、従来技術に従って調製されたメソ細孔性アルミナを含む触媒C1を用いて観察された触媒性能と比較して、最良の触媒性能をもたらすことを示している。触媒C2およびC3はまた、従来市販のアルミナ触媒C4で得られたチオフェン転化率およびブタンに対する選択性より高いチオフェン転化率およびブタンに対する選択性をもたらす。触媒C2およびC3は、このように、触媒C1およびC4と比較して、より活性でありかつより選択的な触媒である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソ細孔性アルミナの調製方法であって、以下の工程を含む方法:
a) 水溶液中で、アルミニウムアルコキシドによって構成される少なくとも1種のアルミニウム源と、少なくとも1種のカチオン性界面活性剤と、メタノールおよびエタノールから選択される少なくとも1種の有機溶媒とを混合する工程;
b) 前記工程a)で形成された混合物を水熱処理する工程;
c) 前記工程b)で形成された固体を乾燥させる工程;
d) 前記工程c)で形成された固体を焼成する工程。
【請求項2】
前記工程a)の混合物のモル組成は、水/アルミニウム源のモル比が0.1〜10の範囲であり、カチオン性界面活性剤/アルミニウム源のモル比が0.1〜10の範囲であり、有機溶媒/水のモル比が1〜10の範囲であるようにされる、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
工程a)を行うために用いられる前記カチオン性界面活性剤は、式CH(CHN(CH・Xを有するカチオン性第四級アンモニウム型化合物であり、式中、nは8〜22の範囲であり、Xはハロゲン化物、アセタート、ホスファート、ニトラート、メチルスルファート、または水酸化物である、請求項1または2に記載の調製方法。
【請求項4】
前記カチオン性界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウムである、請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
前記アルミニウム源は、アルミニウムtri−secブトキシド(Al(OCH(CH)(C)))またはアルミニウムイソプロポキシド(Al(OCH(CH)である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項6】
前記有機溶媒はエタノールである、請求項1〜5のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項7】
前記水熱処理は、25〜200℃の範囲の温度で、5〜100時間の範囲にわたる期間行われる、請求項1〜6のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項8】
乾燥は、25〜150℃の範囲の温度で行われる、請求項1〜7のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項9】
焼成は、400〜800℃の範囲の温度で行われる、請求項1〜8のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項10】
前記メソ細孔性アルミナは、フィブリル化形態にある、請求項1〜9のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項11】
前記メソ細孔性アルミナは、300m/g超の比表面積を有する、請求項1〜10のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項12】
前記メソ細孔性アルミナは、0.6mL/g以上のメソ細孔容積を有する、請求項1〜11のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項13】
前記メソ細孔性アルミナは、ミクロ細孔およびマクロ細孔を含まない、請求項1〜12のいずれか1つに記載の調製方法。

【公表番号】特表2011−525884(P2011−525884A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515516(P2011−515516)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000682
【国際公開番号】WO2010/004106
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】