説明

制御されたラジカル重合で得られる水溶性または水分散性のアクリル分散剤

【課題】水溶性(水分散性)アクリルポリマーの水溶液(水分散液)の製造方法、セメントの流動化剤としての使用、セメント質グラウト、モルタル、コンクリートの流動化混合剤、化粧配合物での使用。
【解決手段】下記モノマーA、B、C(合計100mol%)を連鎖移動剤の非存在下で、十分量の水溶性アルコキシアミンの存在下で、モノマーA、B、Cの変換率が少なくとも90重量%になるまで共重合する方法:
(A)5〜70%の(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類および/または(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリルアミド類の一種または複数のモノマー、
(B) 5〜95%の一種または複数の不飽和カルボン酸モノマー、
(C) 0〜85%の水に余り溶けない一種または複数の疎水性モノマー
ポリマーの多分散度指数Mw/Mnは<2、Mnは10,000〜50,000であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御されたラジカル重合によって得られる水溶性または水分散性のアクリル分散剤に関するものである。
本発明は特に、水性媒体中で鉱物粒子、例えばセメント、砂、鉱物骨材の分散剤ポリマーを合成する方法と、この方法で得られた分散剤ポリマーと、セメント、モルタルまたはコンクリートのような水性結合剤(liants hydrauliques)をベースにした配合物や砂または鉱物骨材のような鉱物粒子を含むその他の配合物での上記分散剤ポリマーの使用とに関するものである。
本発明の一つの対象である水性媒体中でのラジカル重合による上記合成方法は、水性媒体中での重合によって分散剤を合成する従来法では実質的に不可欠であった連鎖移動剤を使用しないでも、分子量分布が良く制御された分散剤コポリマーを得ることができるという大きな利点を有する。
本発明の製造方法を用いて製造したポリマー分散剤または流動化剤(fluidifiants)は既存の市販品よりも優れた性能を示す。
【背景技術】
【0002】
鉱物粒子用、特にセメント、モルタルまたはコンクリートのような水性結合剤用の分散剤(流動化剤ともよばれる)の中には、水性結合剤をベースにした混合物の流体化(fluidification)性能が顕著な製品、すなわち、少量の分散剤で混合物の流体化が良くなる製品のカテゴリーが存在する。この優れた性能から、この製品を用いることによって水の量を減らしても優れた流動性を示す混合物を製造することができる。従って、当業界ではこの製品を「高減水剤(haut-reducteurs d'eau)」とも呼ぶ。この製品のカテゴリーは「超可塑剤(superplastifiants)」ともよばれ、その化学的性質によって主として2つのタイプが市販されている。多くの研究、例えば下記文献で、これらの2つのタイプの製品群の一方をスルホン化ポリマーとよび、他方をポリカルボキシレートとよんでいる。
【非特許文献1】CANMET材料技術研究所出版、「超可塑剤:特性とコンクリートでの利用」、V.S.Ramachandran V.M.Malhotra,C.Jolicoeur and N.Spiratos著、カナダ天然資源省、公共事業・行政サービス省、1988年)
【0003】
スルホン化ポリマー群はポリナフタレンスルホネートおよびポリメラミンスルホネートを含み、これらはホルムアルデヒドとナフタレンスルホネートまたはメラミンスルホネートとの縮合物としても知られている。この製品に代わって最近では第2の主要な市販の超可塑剤であるポリカルボキシレート群が用いられる傾向がある。このポリカルボキシレート群の性能は前者よりはるかに優れている。
大抵の場合、「ポリカルボキシレート」という用語は「櫛形」コポリマーを意味し、その分子構造は下記で区別できる:
(1)イオン性の基を含む炭化水素主鎖(アクリル酸および/またはメタクリル酸、マレイン酸および/またはフマル酸の(共)重合で得られタイプ)と、
(2)非荷電性のポリマー側鎖、特にまたは専らポリエチレンオキシドブロックを含むポリマー側鎖。
【0004】
上記の側鎖を有するコポリマーまたは「櫛形」コポリマーの分子の合成方法は主として下記の2つである。
第1の方法は当業者にとって最短ルートで、例えば少なくとも2種類の異なるアクリルまたはメタクリル型のモノマーを共重合する方法である。すなわち、塩基性媒体中で主鎖に負電荷を生じさせるイオン性の基を含む酸モノマーと、エステルまたはアミドのような化学官能基を介して結合し、側鎖となるオキシエチレン鎖を有するモノマーを共重合する。本発明ではこの第1の方法を用いる。
【0005】
第2の方法は2段階法で、先ず最初にイオン性の基を含む主鎖を合成し、次に、この主鎖に側鎖を結合する。この結合は主鎖の官能基(例えば酸基)と被結合側鎖と組合せる官能基、例えばアルコール基(主鎖の酸とのエステル化)、アミン基(主鎖の酸とのアミド化)との化学反応で行なう。
【0006】
上記第1の方法での「櫛形」コポリマーの製造は一般に当業者に周知の方法に従った水性媒体中でのラジカル共重合反応で行なわれる。この共重合で気をつけなければならない点は、共重合するモノマーとその相対組成の選択の外に、平均分子量および分子量分布を制御することである。これらの2つの変数は得られる生成物の用途特性と密接に関係する。例えば、特許文献1に記載の製造方法で得られるポリカルボン酸型ポリマーから成るセメント分散剤は(a)重量平均分子量が10,000〜500,000g/mol(ポリエチレングリコール標準品に対して測定、ゲル透過クロマトグラフィまたはGPC法)で、(b)重量平均分子量とピーク頂点分子量との差(Mw−Mp)が0〜8000である。
【特許文献1】米国特許第6,376,581号明細書
【0007】
この差Mw−Mpが8000以下であるということは分子量分布が狭いことを示し、分散剤の良好な性能に必要であると上記特許文献1(米国特許第6,376,581号明細書)には記載されている。しかし、この米国特許第6,376,581号では相対的に広い分子量分布ができる傾向のある通常のラジカル重合プロセスでポリマーを製造している。この傾向は所望する主たる分子量(すなわち分子量分布の頂点での分子量、Mp)が大きくなるほど強くなる。
【0008】
さらに、水性媒体中での通常のラジカル重合方法で製造されるポリマーの分子量を制御するには連鎖移動剤のような分子量を制御するための化学剤または系の使用する必要があるということは下記文献に記載のように当業者には周知である。
【特許文献2】米国特許第6,376,681号明細書
【特許文献3】国際特許第WO 01/74736 A1号公報
【特許文献4】欧州特許第1,136,507 A1号公報
【0009】
連鎖移動剤の役目は得られるポリマーの平均分子量を制限し、鉱物粒子、特にセメント粒子の分散用途で有用なポリマーを製造することにある。例えば特許文献4ではセメント用分散剤の好ましい平均分子量の範囲は数平均分子量またはMnは1000〜30,000ダルトン(またはg/mol)であるとしている。この特許明細書には平均分子量が過度に高い(例えば、Mn>30,000g/mol)と分散剤ポリマーの流体化性能が最適にならないと記載されている。さらに、平均分子量が過度に低いとポリマーを分散または可塑化する能力が低下し、このポリマーがセメントベースの混合物を数分〜数時間の間、流体に維持する特性も同様で低下することも記載されている。しかし、この特許では通常のラジカル開始剤と連鎖移動剤とを用いて重合を行っている。
【0010】
すなわち、分散剤用の分散剤、特にセメント製品用分散剤として用いるポリマーを水性媒体中での通常のラジカル重合を用いて製造するプロセスまたは方法では、そのポリマーの良好な性能に合った平均的な分子量に制限するために、一般にラジカル重合で周知の連鎖移動剤を使用する。
しかし、重合段階で少なくとも一種の追加成分を添加しなければならないという欠点の他に、水性媒体中で最も有効な連鎖移動剤のいくつかは毒性または臭気から取り扱いが難しいという欠点がある。水性媒体中で得られるポリマーの平均分子量を制限するための他の方法では、通常のラジカル重合自体の性質と連鎖移動剤とを組合せる(または連鎖移動剤の代わりに用いる)戦略である。この方法にも問題がないわけではない。例えば、最高重合温度を用いることができる(これは鎖の終了・伝播の反応速度定数値の相対変化によって分子量が制限される傾向がある)が、これはエネルギーの点でコストが高くなることが多く、重合が制御不能(発熱反応)となった場合の安全マージンが低下する。分子量を制限する手段として多量のラジカル重合開始剤を使用することもできるが、コストが上昇し、発熱重合反応が制御不能となった場合の安全マージンが低下する。分子量を制限するさらに他の手段は希釈した媒体中で操作して反応終了時の高分子量の生成を不利にしたり、モノマーの変換が不完全な状態で重合反応を停止したり、モノマーを半連続的にかなり長い添加時間で添加することであるが、これらの方法は製造プロセスの生産性に影響を与え、ポリマー分散剤の製造コスト全体を押し上げるという欠点がある。
【0011】
さらに、濃縮水性媒体中での通常のラジカル重合では目標とする平均分子量の増加とともに分子量分布の幅が広くなる傾向があるが、それを避けるために当業者は分子量制御剤を用いるか、および/または、その他の戦略、例えば上記パラグラフで述べた戦略を用いて平均分子量を制限しようとしている。換言すれば、水性媒体中の通常のラジカル重合では分散特性が良く、平均分子量が高く(一般にMn値が25,000以上)、しかも、分子量分布幅が低いという特性を同時に有する分子は得ることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は、水溶液または水分散液中で、連鎖移動剤を用いずに、制御ラジカル重合によって、多分散度指数Mw/Mnが<2で、Mnが10,000〜50,000であるポリカルボン酸型のポリマーを製造できる方法を見出した。
【0013】
本発明はさらに、水溶液または水分散液中で、連鎖移動剤を用いずに、制御されたラジカル重合によって少なくとも60%のモノマーを変換し、その後に通常のラジカル重合を行うことで多分散度指数Mw/Mnが<6、好ましくは<5、さらに好ましくは<4で、Mnが10,000〜50,000、好ましくは30,000〜150,000であるポリカルボン酸型のポリマーを製造することができるということを見出した。
【0014】
本発明で得られたポリマーはセメントのような鉱物粒子用の分散剤として使用され、さらに、流動化混合剤として利用でき、鉱物粒子の組成物、特にセメントベースの組成物、例えばセメント質グラウト(coulis)、モルタルおよびコンクリートと混合したり、充填剤および/または水不溶性顔料、化粧溶剤およびオイルを含む化粧組成物の混合剤として利用でき、さらには、セラミック組成物でも使用できる。
本発明で得られた生成物は従来のものより優れた特性を有する。本発明のポリマーは水溶液または水分散液の形、好ましくはポリマーを合成した水溶液または水分散液の形か、この水溶液または水分散液から調製された希釈した形で用いられる。さらに、本発明ポリマーを合成した水溶液または水分散液を例えば噴霧によって乾燥して粉末の形で用いることができる。セメント用または鉱物粒子の組成物での流動化混合剤として使用する場合には、溶液中に残る未重合のモノマーの量をできるだけ少なくする必要がある。本発明で得られたポリマーは化粧組成物、塗料またはセラミック組成物において、必要に応じてさらにその他の化合物、その他のポリマーと混合して使用することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明第1の形態は下記モノマー(A)、(B)、(C)(合計100mol%)を、連鎖移動剤の非存在下で、十分量の水溶性アルコキシアミンの存在下で、モノマー(A)、(B)、(C)の変換率が少なくとも90重量%、好ましくは93%になるまで共重合することを特徴とする水溶性または水分散性アクリルポリマーの水溶液または水分散液の製造方法にある:
(A) 5〜70%、好ましくは5〜50%の(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類および/または((アルコキシ)ポリアルキレングリコール)(メタ)アクリルアミド類の一種または複数のモノマー、
(B) 5〜95%、好ましくは20〜95%の一種または複数の不飽和カルボン酸モノマー、
(C) 0〜85%、好ましくは0〜65%の、水にあまり溶けない一種または複数の疎水性モノマー。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
アルコキシアミンは重合開始剤と制御剤の役目をする。従って、制御されたラジカル重合とよばれる。
本発明のポリマーは多分散度指数Mw/Mnが<2で、Mnが10,000〜50,000であるのが有利である。
【0017】
本発明はさらに、上記方法で得られる水溶性または水分散性アクリルポリマーの水溶液または水分散液と、この水溶液または水分散液を希釈して調製される任意の希釈材料と、やはりこの水溶液または水分散液から濃縮、例えば乾燥粉末または湿式粉末の形のポリマー(水溶液または水分散液中に存在していた)が得られるまで濃縮して調製される任意の濃縮材料に関するものである。
連鎖移動剤を実質的でない量だけ添加したり、モノマー(A)、(B)、(C)の一種が連鎖移動剤の官能基を有したり、実質的でない量の連鎖移動剤を発生させても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0018】
本発明ポリマーはそれ自体が新規化合物である。すなわち、本発明は下記モノマー(A)、(B)、(C)(合計100mol%)を含み、多分散度指数Mw/Mnが<2で、Mnが10,000〜50,000である水溶性アクリルポリマーの水溶液または水分散性アクリルポリマーの水分散液に関するものである:
(A) 5〜70%、好ましくは5〜50%の(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類および/または(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリルアミド類の一種または複数のモノマー、
(B) 5〜95%、好ましくは20〜95%の一種または複数の不飽和カルボン酸モノマー、
(C) 0〜85%、好ましくは0〜65%の水に余り溶けない一種または複数の疎水性モノマー。
【0019】
本発明はさらに、上記水溶液または水分散液から希釈して調製された任意の希釈材料と、やはりこの水溶液または水分散液から濃縮して調製された任意の濃縮材料、例えば乾燥粉末または湿式粉末の形のポリマー(水溶液または水分散液中に存在していた)が得られるまで乾燥した材料とに関するものである。
【0020】
本発明の第2の形態は、下記モノマー(A)、(B)、(C)(合計100mol%)を、連鎖移動剤の非存在下、十分量の水溶性アルコキシアミンの存在下で、モノマー(A)、(B)、(C)の変換率が少なくとも50重量%、好ましくは60%になるまで共重合し、次いで、通常のラジカル開始剤の存在下で重合を終了し、必要な場合にはさらに連鎖移動剤の存在下でモノマー(A)、(B)、(C)の変換率が少なくとも90重量%、好ましくは93重量%になるまで重合する、水溶性アクリルポリマーの水溶液または水分散性アクリルポリマーの水分散液の製造方法にある:
(A) 5〜70%、好ましくは5〜50%の(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類および/または(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリルアミド類の一種または複数のモノマー、
(B) 5〜95%、好ましくは20〜95%の一種または複数の不飽和カルボン酸モノマー、
(C) 0〜85%、好ましくは0〜65%の水にあまり溶けない一種または複数の疎水性モノマー。
【0021】
本発明はさらに、上記方法で得られる水溶性(または水分散性)アクリルポリマーの水溶液または水分散液と、この水溶液または水分散液から希釈して調製された任意の希釈材料と、やはりこの水溶液または水分散液から濃縮して調製された任意の濃縮材料、例えば乾燥粉末または湿式粉末の形のポリマー(水溶液または水分散液中に存在していた)が得られるまで乾燥した材料とに関するものである。
【0022】
水溶液または水分散液中のアクリルポリマーの多分散度指数Mw/Mnは<6、好ましくは<5、さらに好ましくは<4であり、Mwは10,000〜50,000、好ましくは30,000〜150,000である。制御ラジカル重合の終了時に、多分散度指数Mw/Mnが<2であり、且つ、Mnが10,000〜50,000であるのが有利である。
連鎖移動剤を実質的でない量で添加したり、モノマー(A)、(B)、(C)の一種が連鎖移動剤の官能基を有したり、連鎖移動剤がわずかな量発生させても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0023】
これらのポリマーはそれ自体が新規物質である。従って、本発明は下記(A)、(B)、(C)を含み(合計100mol%)、多分散度指数Mw/Mnが<6、好ましくは<5、さらに好ましくは<4で、Mwが10,000〜50,000、好ましくは30,000〜150,000である水溶性または水分散性アクリルポリマーの水溶液または水分散液にある:
(A) 5〜70%、好ましくは5〜50%の(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類および/または((アルコキシ)ポリアルキレングリコール)(メタ)アクリルアミド類の一種または複数のモノマー、
(B) 5〜95%、好ましくは20〜95%の一種または複数の不飽和カルボン酸モノマー、
(C) 0〜85%、好ましくは0〜65%の水にあまり溶けない一種または複数の疎水性モノマー
【0024】
本発明はさらに、上記水溶液または水分散液から希釈して調製された任意の希釈材料と、やはり上記水溶液または水分散液から濃縮して調製された任意の濃縮材料、例えば乾燥粉末または湿式粉末の形のポリマー(水溶液または水分散液中に存在していた)が得られるまで乾燥した材料とに関するものである。
【0025】
本発明のポリマーは水溶液または水分散液で用いられ、これらを合成した水溶液または水分散液の形か、この水溶液または水分散液を希釈して得られる希釈材料の形で用いるのが好ましい。本発明のポリマーはその合成に使用した水溶液または水分散液を例えば噴霧乾燥して得た粉末状態で用いることもできる。
本発明はさらに、上記ポリマーのセメントのような鉱物粒子の分散剤としての使用に関するものである。
本発明はさらに、上記ポリマーの、鉱物粒子組成物、特にセメントベースの組成物、例えばセメント質グラウト、モルタルおよびコンクリート用の流動化混合剤としての使用にも関するものである。本発明はさらに、上記ポリマーの、鉱物粒子組成物、特にセメントベースの組成物、例えばセメント質グラウト、モルタルおよびコンクリートでの流動化用の使用に関するものであり、この使用では他のポリマーとの混合物にして使用することもできる。
本発明はさらに、上記分散剤を含むセメントにも関するものである。
【0026】
本発明のポリマーは、化粧品、塗料またはセラミック配合物(または組成物)で使用することができる。この使用では他の化合物または他のポリマーと混合して使用することもできる。
本発明はさらに、これら化粧品、塗料またはセラミック組成物に関するものである。
本発明はさらに、上記組成物から得られる最終製品に関するものである。
【0027】
本発明の分子量MwおよびMnはポリエチレングリコール当量で表され、GPC(ゲル透過クロマトグラフィ)技術である立体除外クロマトグラフィー(SEC)で測定される。本発明のポリマーは分子量で特徴付けられ、この分子量はポリマーを含む希釈溶液を下記「水性」SEC列に通して求める:
(1)一組のカラム、例えばTSK PW XLカラム300×7を順番に配置し、次に、2500型ヘッドプレカラ70×7ムを置き、次に6000/2500/3000/4000の順に配置、
(2)ポンプ、例えば島津 LC 10、
(3)検出器、例えば示差屈折率検出器(例えば、35℃にサーモスタット制御 されたセルを備えたVarian RI 4)および/または紫外線分光学的検出器(例えばVarian UV 2050)、
(4)ペルティエ効果オーブン、例えばJasco社のJetstream、
(5)注入バルブ、例えばRheodyne。
【0028】
分子量分布は各カラム内の滞留時間で各カラム系の分離力に従って求められる。分子量の値は一般にポリエチレングリコール標準品を用いて較正して得るが、大抵の場合、平均分子量はポリエチレングリコール当量で表す。
本明細書では「ポリマー」および「コポリマー」という用語は本発明の分散剤を示すのに差別しないで用いる。
【0029】
最初に、本発明の第1形態について説明する。
モノマー(A)の例としてはメトキシポリエチレングリコールアクリレートおよびメタクリレート、(メトキシポリエチレングリコール)アクリルアミドおよびメタクリルアミド、メトキシポリ(プロピレン−ブロック−エチレン)グリコールアクリレートおよびメタクリレート、(メトキシポリ(プロピレン−ブロック−エチレン)グリコール)アクリルアミドおよびメタクリルアミド、エトキシポリエチレングリコールアクリレートおよびメタクリレート、(エトキシポリエチレングリコール)アクリルアミドおよびメタクリルアミド、エトキシポリ(プロピレン−ブロック−エチレン)グリコールアクリレートおよびメタクリレートおよび(エトキシポリ(プロピレン−ブロック−エチレン)グリコール)アクリルアミドおよびメタクリルアミドが挙げられる。ポリアルキレングリコール側鎖の全長は、この側鎖の平均分子量Mnが350〜10,000g/mol、好ましくは1000〜6000g/molとなるようにするのが有利である。これらのモノマーの中では、数平均分子量が900〜5100、好ましくは1800〜2200であるポリエチレングリコール側鎖を有するメトキシポリエチレングリコールアクリレートおよびメタクリレートが好ましい。
【0030】
(B)の例としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸や、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水アクリル酸および無水メタクリル酸が挙げられる。アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。
(C)の例としては、アクリルエステルおよびメタクリルエステルおよびスチレンまたはビニルモノマーが挙げられる。アルキルメタクリレートが好ましい。
【0031】
本発明のコポリマーの重合方法は「制御されたラジカル重合技術」を用いる方法である。
アルコキシアミンの例としては特許文献5のアルコキシアミンが挙げられる。
【特許文献5】国際特許第WO2004/014926号公報
【0032】
このアルコキシアミンのニトロオキシド物質は重合制御剤の役目をする。用いるアルコキシアミンは2−メチル−2−[N−(tert-ブチル)−N−(ジエトキシホスホリル−2,2−ジメチルプロピル)アミノキシ]−プロピオン酸およびその金属塩およびアンモニウム塩、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム塩が有利である。以降、このアルコキシアミンを「MAMA」と略記する。重合媒体は溶剤の水または水をベースとする溶剤の混合物である。
【0033】
モノマー混合物は重合反応を開始する前に一度に導入する(バッチ式)か、「半連続添加式」で導入できる。この半連続添加式では重合反応開始時から所定時間、一般には数分〜数時間モノマーを重合反応器に少しずつ導入する。重合反応はアルコキシアミン(MAMA)によって開始される。アルコキシアミンMAMAは白色微粉で、酸基を塩基、好ましくは強塩基で中和し水に溶かさなければならない。このMAMAの中和はモノマー添加前に水槽脚部を有する重合反応器中で行うか、中和したMAMAの水溶液を別に調製し、重合開始時に反応器に1回で添加するか、重合中に遅れて添加するか、半連続式モノマー添加法を選択した時には重合中にモノマー添加と同時に半連続式に添加することができる。最後のモノマー添加と同時の半連続式MAMA添加法では、重合反応器に導入されるMAMAの量に対するモノマー量の比が一定になるようにする。
制御されたラジカル重合は一般に2〜8時間、25〜100℃、好ましくは40〜80℃の重合温度で行なう。
【0034】
本発明方法で得られる分散剤または流動化剤は一般に水溶液または水分散液の形で提供され、その固体含有率は当業者に周知の揮発物質を蒸発させる方法で測定される。この固体含有率は10〜60%、好ましくは20〜50%であるのが有利である。水溶液または水分散液の重量と蒸発後の乾燥残留物の重量との差によって、乾燥抽出物のパーセンテージが決まる。このパーセンテージは流動化用水溶液または水分散液をそのまま用いるときに、鉱物粒子をベースとする組成物中で用いられる分散剤材料の有効量を確かめる際に必要な特性である。流動化用水溶液または水分散液の粘度は当業者に周知のブルックフィールド(B型)粘度計のようなレオメータを用いて測定できる。この粘度はかなり複雑な形で水溶液または水分散液中のモノマーのポリマーへの変換率と水溶液中または水分散液中のポリマーの分子量に依存する。モノマーのポリマーへの変換率を評価するのに用いることもできる他の技術は例えば核磁気共鳴(NMR)またはクロマトグラフ分離法である。本発明の分散剤の合成に使用可能ないくつかのモノマーは揮発性が低いので、水溶液または水分散液の乾燥抽出物によるモノマーのポリマーへの変換率の評価は不正確になる。
【0035】
次に、本発明の第2の形態について説明する。第1の形態との本質的な相違は、モノマーの完全な変換(重合)を制御されたラジカル重合によって行うのではなく、重合を制御されたラジカル重合条件下で開始し、その後、通常のラジカル重合条件下で重合(すなわち、過酸化物、過硫酸塩、アゾ化合物またはこれらの均等物を用いて重合)し、重合を終了する点にある。この通常のラジカル重合条件下で重合されるモノマーは制御されたラジカル重合で既に存在する未変換のモノマーにするか、制御されたラジカル重合用に予め調製した分散剤の一部を含む水溶液または水分散剤を添加するか、これら両者を組合せて用いる。通常のラジカル重合を行う時には、制御されたラジカル重合によって既に調製された分散剤の一部を含む水溶液または水分散液中に、水性媒体中での通常のラジカル重合反応で用いられる当業者に周知の通常のラジカル発生剤を添加する。そうしたラジカル発生剤の中では過硫酸塩の金属塩およびアンモニウム塩、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸アンモニウム、水溶性アゾ開始剤、例えば2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライドおよび4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノン酸)の金属塩およびアンモニウム塩、レドックスペアー、例えば過硫酸(ナトリウム、カリウムまたはアンモニウム)/ビタミンCペアーまたはメタ重亜硫酸ナトリウムまたはメタ亜硫酸水素カリウム/過硫酸ペアーまたは過酸化水素/第一鉄イオン塩ペアーまたはtert-ブチルヒドロペルオキシド/スルホキシル酸ナトリウムペアーおよびその他の任意の可能な一種または複数の酸化剤/一種または複数の還元剤の組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
制御されたラジカル重合反応後に残った変換すべきモノマーが多量に存在する場合、通常のラジカル重合開始剤を用いて得られる水溶液または水分散液は通常のラジカル重合で得られるものと制御されたラジカル重合で得られるものとの出所が異なるコポリマーのブレンドにでる。通常のラジカル重合段階では連鎖移動剤、例えば水性媒体中での通常のラジカル重合で通常用いられる連鎖移動剤を用いることができるが、用いない方が有利である。通常のラジカル重合で用いられる連鎖移動剤の中ではイソプロパノールまたは水溶性メルカプタン、例えばチオグリコール酸またはメルカプトプロピオン酸またはメルカプトエタノールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本出願人は出所が異なる上記コポリマーブレンドは、通常のラジカル重合のみで得られる分散剤では良好な分散特性が得られないような全体の分子量分布の場合でも、鉱物粒子を良好に分散または流動化することができるということを見出した。
【0037】
本発明のポリマーを使用すると、鉱物粒子の水分散液、特にセメントのような水性結合剤をベースにした組成物に良好な流動性を付与することができる。本発明の別の対象は、鉱物粒子組成物、特にセメントのような水性結合剤をベースとした組成物での分散剤または流動化剤としての本発明ポリマーの使用にある。
【0038】
本発明のポリマーの分散または流動化能力は上記流動化剤を含む鉱物粒子をベースにした組成物を製造して試験できる。そうした組成物の一つはセメントモルタルである。このセメントモルタルはセメントと、標準砂と、水と、本発明分散剤ポリマーを含む水溶液または水分散液とを、必要に応じて例えば消泡剤を加えてから混合して得られる。このモルタル組成物に対して種々の試験を行うことができる。下記実施例では分散剤の流動化能力を特徴付けるの特に関係のある2つの測定すなわち分散剤を添加したモルタルケークの「初期広がり(etalement initial)」の測定と、時間を関数としたの分散剤を添加したモルタルケークの「広がり(etalement)」の測定を行なった。
【0039】
最初に、分散剤を添加したモルタルケークの初期広がりの測定方法を説明する。分散剤または流動化剤の存在下で標準法に従ってモルタルを製造し、アブラムスのミニコーンとして当業者に周知の厳密に定義された寸法を有する中空の円錐台に上記モルタルを充填する。コーンは頂部の充填口と、底の排出口とを有する。コーンを下側の開口部を塞ぐ平板の上に載せ、モルタルを内側に維持する。充填直後に、コーンを支持部材から引き上げる。その結果、モルタルが平板上に流れ出し、平板上に丸いケークの形で広がる。モルタル調製物の流動性が高ければ高いほど、モルタルはより広がり、ケークの直径も大きくなる。「スランプ(slump)」または広がり(etalement)値として当業者に周知のケークの最大広がり直径は調製物の流動性のかなり信頼できる測定値である。この流動性は主として2つのパラメータすなわちモルタルの水/セメント比(W/C比)と、セメントに対する分散剤中の乾燥材料の%で表される流動化剤の量(SP%)とを調節することで変えることができる。W/C比が大きければ大きい程、またはSP%が高ければ高い程、モルタルの流動性が高く、従って、広がり直径(またはスランプ)の測定値が高くなる。
【0040】
次に、分散剤を添加したモルタルのケークの広がりを時間の関数で測定する方法を説明する。初期広がり値(モルタルの流動性に関連する)すなわち初めてコーンをモルタルで充填した直後の広がり値は上記の手順で決定できる。次に、広がったモルタルを標準手順に従って回収し、練り直し、種々の時間に測定を繰り返して、最初の広がりすなわち初期広がりからの広がりを測定できる。一般に、モルタルの流動性を2時間以内または3時間以内の時間モニターする。この測定による流動性の経時変化から添加モルタルの挙動が決定できる。流動性ができるだけ長時間、2時間または3時間後の限界まで、できるだけ高く維持されるのが望ましいことが多い。
【実施例】
【0041】
実施例1(本発明)
アルコキシアミンMAMAで開始−制御した「制御されたラジカル重合」によるコポリマー
変速攪拌器モーター、反応物の導入口、酸素を追い出すことができる不活性ガス(例えば窒素)の導入管、測定プローブ(例えば温度測定用)、還流によって蒸気を凝縮するための装置および熱交換流体のジャケット内循環によって反応器の内容物を加熱/冷却することができるジャケットを備えた1リットル容のガラス反応器中に70gの脱イオン水と、5.70gのアルコキシアミンMAMA(アルケマ)と、60mlの0.4N水酸化ナトリウム溶液とを導入する。この溶液中に窒素を送って脱気する。さらに、277.4gのポリエチレングリコールメタクリレート(Mnが2080g/molのPEG側鎖、アルドリッチ)の50%水溶液と11.5gのメタクリル酸(アルケマ)との混合物を適切な容器で調製し、この混合物を窒素で10分間脱気する。
【0042】
次いで、反応器中のアルコキシアミン溶液を60℃に加熱する。反応媒体の温度が55℃に達してからモノマー混合物を2時間かけて添加する。添加中に反応器内温度が約60℃になる。添加終了後、60℃の温度をさらに4時間維持した後、溶液を周囲温度に冷却する。得られた分散剤コポリマー水溶液の最終乾燥抽出物は重量法で測定して35.65%であった。モノマーのポリマーへの変換率はSECで評価し、94重量%である。SECで測定されたコポリマーの分子量は、PEG当量で、分布のピークの分子量(Mp)が20,910g/mol、数平均分子量(Mn)が19,780、重量平均分子量(Mw)が35,490である。
【0043】
コポリマーの流動化能力を測定するために調製したモデルモルタルは518.5gのLumbres型の乾燥セメント(CEM I 42.5R)と、1350gの標準砂(CEN EN 196−1)と、279.99gの脱イオン水と、2.54gの分散剤コポリマー水溶液と、乾燥材料に対して1重量%の予備添加した消泡剤(Clerol)とから成る。使用量はW/C比が0.54で固定され、分散剤の量(SP%)がセメントに対して0.175%となるようにした。モルタルの調製および流動性(広がりまたはスランプ)の測定は温度が21℃(許容誤差±2℃)に調整された室で行う。
【0044】
モルタルの調製では最初に水と分散剤溶液とを混合し、続いてこの混合物から成る混合水をモルタルミキサーに導入する。セメント添加後に、ミキサーを再度65回転/分で30秒間運転する。砂の添加後にミキサーを65回転/分で30秒間運転する。得られた混合物を125回転/分で30秒間混合した後、90秒間放置する。この静止時間後に125回転/分でさらに60秒間再度混合する。こうして得られたモルタルは上記アブラムスのミニコーンに充填できる。このミニコーンの重量および寸法は下記の通り:最低重量4kg、上側開口部の直径50mm、下側開口部の直径100mm、高さ150mm。充填前に、スポンジで湿らせた厚さ1cmの50×50cmのPVC板上にコーンを載せる。コーンを3段階で充填する厳密に定義された手順に従って充填する。毎回コーンの全高の3/1を充填し、全体の高さを充填するには合計で2分かける。さらに、1/3の充填が終了する度に、モルタル内の空気の随伴を減少させるために、コーンの内容物に長さ30cm、直径5mmの金属棒を取り付けて沈降分離させる。2分後に、充填コーンを持ち上げてその内容物を支持板上に広げる。コーンを持ち上げてから30秒後に、ケークの2つの垂直直径の長さを測定して広がりを測定する。この2つの直径の平均がモルタルの初期広がりの測定値である。時間を関数としたモルタルの流動性の測定のため、広がったモルタルを回収し、再度ミキサーに入れ、水の蒸発を防ぐために十分に覆って放置する。更なる測定を行う時間が来たら、125回転/分で60秒間混合した後、上記手順に従ってコーンを充填し、初期広がりの所で述べた方法で再度、広がりを測定する。
【0045】
[表1]は本実施例の分散剤を用いて調製したモルタルの時間を関数とする広がりの変化を示している。この[表1]には比較例として市販の分散剤(Cray Valley社のEcocryl 5930)を用いて調製した同じW/C比およびSP%のモルタルの同一条件下での性能も示してある。
【0046】
実施例2(本発明)
アルコキシアミンMAMAを用いた制御されたラジカル重合と過硫酸アンモニウムを用いた通常のラジカル重合とを組合せて得られるコポリマー
実施例1と同じ装置を装備した1リットル容のガラス反応器中に、120gの脱イオン水と、1.15gのアルコキシアミンMAMA(アルケマ)と、12mlの0.4N水酸化ナトリウム溶液とを導入する。この溶液を窒素で脱気する。さらに、277.4gのポリエチレングリコールメタクリレート(Mnが2080g/molのPEG側鎖、アルドリッチ)の50%水溶液と、11.5gのメタクリル酸(アルケマ)との混合物を適切な容器で調製し、この混合物を窒素で10分間脱気する。
次いで、反応器内のアルコキシアミン溶液を60℃に加熱する。反応媒体の温度が60℃に達してからモノマー混合物を2時間かけて添加する。添加終了後、温度を60℃にさらに4時間維持した後に溶液を周囲温度に冷却する。こうして得られた分散剤コポリマーの水溶液の乾燥抽出物は重量法で測定して35.4%であった。モノマーのポリマーへの変換率はSECで評価し、69重量%である。SECで測定したアルコキシアミンMAMAを用いて得られたコポリマーの分子量はPEG当量でMpが29,760g/mol、Mnが29,110g/mol、Mwが56,120g/molである。
次に、0.22gの過硫酸アンモニウム(アルドリッチ)を添加して残留モノマーを変換する。反応媒体を75℃で4時間加熱した後、周囲温度に冷却する。こうして得られた分散剤コポリマーの水溶液の最終乾燥抽出物は重量法で測定して33.6%であった。変換率(SECで評価)は97重量%である。SECで測定された制御されたラジカル重合および通常のラジカル重合で得られたコポリマーブレンドの全分子量はPEG当量でMpが59,640g/mol、Mnが38,280g/mol、Mwが134,500g/molである。
コポリマーの流動化能力を実施例1で述べた手順に従って同じ実験条件を用いて測定する。モルタルを518.5gのLumbres型の乾燥セメントと、1350gの標準砂(CEN EN 196−1)と、279.99gの脱イオン水と、2.70gの分散剤コポリマー水溶液と、乾燥材料に対して1重量%の予め添加した消泡剤(Clerol)とから調製した。
[表2]は本実施例の分散剤を用いて調製したモルタルの時間を関数とした広がりの変化を示している。この[表2]には比較例として市販の分散剤(Cray Valley社のEcocryl 5930)を用いて同じW/C比およびSP%で同条件下で調製したモルタルの性能も示してある。
【0047】
実施例3(本発明)
アルコキシアミンMAMAを用いた制御されたラジカル重合と、過硫酸アンモニウムを用いた通常のラジカル重合との組合せで得られるコポリマー
実施例1と同じ装備をした1リットル容のガラス反応器に、120gの脱イオン水と、2.29gのアルコキシアミンMAMA(アルケマ)と、24mlの0.4N水酸化ナトリウム溶液とを導入する。この溶液に窒素を送って脱気する。さらに、277.4gのポリエチレングリコールメタクリレート(Mnが2080g/molのPEG側鎖、アルドリッチ)の50%水溶液と、11.5gのメタクリル酸(アルケマ)との混合物を適切な容器で調製し、この混合物を窒素で10分間脱気する。
次に、反応器中のアルコキシアミン溶液を60℃に加熱する。反応媒体の温度が60℃に達したら、モノマー混合物を2時間かけて添加する。添加終了後、温度を60℃にさらに4時間維持した後、溶液を周囲温度に冷却する。こうして得られた分散剤コポリマーの水溶液の乾燥抽出物は重量法で測定して35.4%であった。モノマーのポリマーへの変換率(SECで評価)は67重量%である。アルコキシアミンMAMAを用いて得られたコポリマーの分子量はSECの測定で、PEG当量でMpが16,630g/mol、Mnが15,990g/mol、Mwが21,310g/molである。
次いで、残ったモノマーを0.45gの過硫酸アンモニウム(アルドリッチ)を添加して変換する。反応媒体を75℃で4時間加熱した後、周囲温度に冷却する。得られた分散剤コポリマーの水溶液の最終乾燥抽出物は重量法で測定して34.8%であった。変換率(SECで評価)は97重量%であった。制御されたラジカル重合と通常のラジカル重合とで得られたコポリマーブレンドの全分子量は、SECの測定で、PEG当量でMpが18,800g/mol、Mnが19,060g/mol、Mwが40,380g/molである。
コポリマーの流動化能力を実施例1で述べた手順で同じ実験条件を用いて測定した。モルタルは518.5gのLumbres型の乾燥セメントと、1350gの標準砂(CEN EN 196−1)と、279.99gの脱イオン水と、乾燥材料に対して1重量%の消泡剤(Clerol)を予め添加した2.61gの分散剤コポリマー水溶液とで調製した。本実施例の分散剤を用いて調製したモルタルの初期広がりは370mm以上であった。これは高い流動化能力を示すものである。
【0048】
比較例1
未変換モノマーの比率が過度に高い場合
実施例1と同じ装備をした1リットル容のガラス反応器に、123gの脱イオン水と、3.45gのアルコキシアミンMAMA(アルケマ)と、36mlの0.4N水酸化ナトリウム溶液と、416gのポリエチレングリコールメタクリレート(Mnが2080g/molのPEG側鎖、アルドリッチ)の50%水溶液と、17.2gのメタクリル酸(アルケマ)とを導入する。この溶液を窒素で10分間脱気した後、85℃に加熱する。温度を85℃に7時間維持した後、溶液を周囲温度に冷却する。こうして得られた分散剤コポリマーの水溶液の乾燥抽出物は重量法で測定して36.71%であった。モノマーのポリマーへの変換率(SECで評価)は82重量%である。アルコキシアミンMAMAを用いて得られたコポリマーの分子量は、SECの測定で、PEG当量でMpが12,370g/mol、Mnが12,710g/mol、Mwが20,670g/molである。
コポリマーの流動化能力を実施例1に記載の手順で同じ実験条件を用いて測定した。モルタルは518.5gのLumbres型の乾燥セメントと、1350gの標準砂(CEN EN 196−1)と、279.99gの脱イオン水と、乾燥材料に対して1重量%の消泡剤(Clerol)]を予め添加した2.47gの分散剤コポリマー水溶液とから調製した。[表3]は本比較の分散剤を用いて調製したモルタルの時間を関数とした広がりの変化を示す。[表3]の性能を[表1]および[表2]のモルタルの性能と比較することができる。
【0049】
比較例2
未変換モノマーの比率が過度に高い場合
実施例1と同じ装備をした1リットル容のガラス反応器に、150gの脱イオン水と、0.86gのアルコキシアミンMAMA(アルケマ)と、9mlの0.4N水酸化ナトリウム溶液と、416gのポリエチレングリコールメタクリレート(Mnが2080g/molのPEG側鎖、アルドリッチ)の50%水溶液と、17.2gのメタクリル酸(アルケマ)とを導入する。この溶液を窒素で10分間脱気した後、85℃に加熱する。温度を85℃に7時間維持した後、溶液を周囲温度に冷却する。得られた分散剤コポリマーの水溶液の乾燥抽出物は重量法で測定しけ36.06%であった。モノマーのポリマーへの変換率(SECで評価)は63重量%である。アルコキシアミンMAMAを用いて得られたコポリマーの分子量はSECの測定でPEG当量でMpが53,670g/mol、Mnが43,170g/mol、Mwが117,900g/molである。
コポリマーの流動化の力を実施例1の手順で同じ実験条件を用いて測定した。モルタルは518.5gのLumbres型の乾燥セメントと、1350gの標準砂(CEN EN 196−1)と、279.99gの脱イオン水と、乾燥材料に対して1重量%の消泡剤(Clerol)を予め添加した2.51gの分散剤コポリマー水溶液とから調製した。[表3]に本比較例の分散剤を用いて調製したモルタルの時間を関数とする広がりの変化を示す。[表3]に示した性能は[表1]および[表2]のモルタルの性能と比較することができる。
【0050】
【表1】

【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性アクリルポリマーの水溶液または水分散性アクリルポリマーの水分散液の製造方法において、
下記モノマー(A)(B)(C)(合計100mol%)を、連鎖移動剤の非存在下で、十分量の水溶性アルコキシアミンの存在下で、モノマー(A)、(B)、(C)の変換率が少なくとも90重量%になるまで共重合することを特徴とする方法:
(A) 5〜70%の(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類および/または((アルコキシ)ポリアルキレングリコール)(メタ)アクリルアミド類の一種または複数のモノマー、
(B) 5〜95%の一種または複数の不飽和カルボン酸モノマー、
(C) 0〜85%の水に余り溶けない一種または複数の疎水性モノマー
【請求項2】
モノマー(A)、(B)、(C)の変換率を少なくとも93%にする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水溶性アクリルポリマーの水溶液または水分散性アクリルポリマーの水分散液の製造方法において、
下記モノマー(A)、(B)、(C)(合計100mol%)を連鎖移動剤の非存在下で、十分量の水溶性アルコキシアミンの存在下で、モノマー(A)、(B)、(C)の変換率が少なくとも50重量%になるまで共重合し、その後に通常のラジカル開始剤の存在下で重合を終了し、必要な場合にはさらに、連鎖移動剤の存在下でモノマー(A)、(B)、(C)の変換率が少なくとも90重量%になるまで共重合することを特徴とする方法:
(A) 5〜70%の(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類および/または(アルコキシ)ポリアルキレングリコール)(メタ)アクリルアミド類の一種または複数のモノマー、
(B) 5〜95%の一種または複数の不飽和カルボン酸モノマー、
(C) 0〜85%の水に余り溶けない一種または複数の疎水性モノマー。
【請求項4】
アルコキシアミンの存在下でのモノマー(A)、(B)、(C)の変換率を少なくとも60重量%にする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
通常のラジカル開始剤の存在下でのモノマー(A)、(B)、(C)の変換率を少なくとも93重量%にする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
モノマーの比率が下記である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法:
(A)の一種または複数のモノマーが5〜50%、
(B)の一種または複数のモノマーが20〜95%、
(C)の一種または複数のモノマー賀0〜65%。
【請求項7】
(A)のモノマーのポリアルキレングリコール側鎖の数平均分子量Mnが350〜10,000g/molである請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
上記ポリアルキレングリコール側鎖の数平均分子量Mnが1000〜6000g/molである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(A)のモノマーを、数平均分子量が900〜5100であるポリエチレングリコール側鎖を有するメトキシポリエチレングリコールアクリレートおよびメタクリレートの中から選択する請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
上記の数平均分子量が1800〜2200である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(B)のモノマーを、アクリル酸およびメタクリル酸の中から選択する請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(C)のモノマーをアルキルメタクリレートの中から選択する請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
用いるアルコキシアミンを2−メチル−2−[N−tert-ブチル−N−(ジエトキシ−ホスホリル−2,2−ジメチルプロピル)アミノキシ]プロピオン酸およびその金属塩およびアンモニア塩の中から選択する請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
下記を含む(コモノマーの合計100mol%)それぞれ水溶性または水分散性アクリルポリマーの水溶液または水分散液:
5〜70%の(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの群および/または((アルコキシ)ポリアルキレングリコール)(メタ)アクリルアミドの群の一種または複数のモノマー(A)、
5〜95%の一種または複数の不飽和カルボン酸モノマー(B)、
0〜85%の、水に余り溶けない一種または複数の疎水性モノマー(C)
上記ポリマーのMnは10,000〜50,000である。
【請求項15】
ポリマーの多分散度指数Mw/Mnが<2である請求項14に記載の溶液または分散液。
【請求項16】
下記(A)、(B)、(C):
(A) 5〜70%の(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類および/または((アルコキシ)ポリアルキレングリコール)(メタ)アクリルアミド類の一種または複数のモノマー、
(B) 5〜95%の一種または複数の不飽和カルボン酸モノマー、
(C) 0〜85%の水に余り溶けない一種または複数の疎水性モノマー、
を含む(合計100mol%)、水溶性または水分散性アクリルポリマーの水溶液または水分散液であって、
上記ポリマーの多分散度指数Mw/Mnが<6で、Mnが10,000〜50,000であることを特徴とする水溶液または水分散液。
【請求項17】
ポリマーの多分散度指数Mw/Mnが<5である請求項16に記載の溶液または分散液。
【請求項18】
ポリマーの多分散度指数Mw/Mnが<4である請求項17に記載の溶液または分散液。
【請求項19】
Mwが30,000〜150,000である請求項16〜18のいずれか一項に記載の溶液または分散液。
【請求項20】
モノマーの比率が下記である請求項14〜19のいずれか一項に記載の溶液または分散液:
一種または複数のモノマー(A)が5〜50%、
一種または複数のモノマー(B)が20〜95%、
一種または複数のモノマー(C)が0〜65%。
【請求項21】
(A)のモノマーのポリアルキレングリコール側鎖の数平均分子量Mnが350〜10,000g/molである請求項14〜20のいずれか一項に記載の溶液または分散液。
【請求項22】
上記ポリアルキレングリコール側鎖の平均分子量Mnが1000〜6000g/molである請求項21に記載の溶液または分散液。
【請求項23】
(A)のモノマーが数平均分子量が900〜5100であるポリエチレングリコール側鎖を有するメトキシポリエチレングリコールアクリレートおよびメタクリレートの中から選択される請求項14〜20のいずれか一項に記載の溶液または分散液。
【請求項24】
上記数平均分子量が1800〜2200である請求項23に記載の溶液または分散液。
【請求項25】
(B)のモノマーがアクリル酸およびメタクリル酸の中から選択される請求項14〜24のいずれか一項に記載の溶液または分散液。
【請求項26】
(C)のモノマーがアルキルメタクリレートの中から選択される請求項14〜25のいずれか一項に記載の溶液または分散液。
【請求項27】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法で得られる溶液または分散液または請求項14〜26のいずれか一項に記載の溶液または分散液を希釈して得られる溶液または分散液。
【請求項28】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法で得られる溶液または分散液または請求項14〜26のいずれか一項に記載の溶液または分散液を乾燥して得られる粉末状ポリマー。
【請求項29】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法で得られるポリマーまたは請求項14〜26または請求項27または28のいずれか一項に記載の溶液または分散液の、必要に応じて他のポリマーと混合されていてもよい鉱物粒子組成物、特にセメントベースの組成物、例えばセメント質グラウト(coulis)、モルタルおよびコンクリートの流動化混合剤としての使用。
【請求項30】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法で得られるポリマーまたは請求項14〜26または請求項27または28のいずれか一項に記載の溶液または分散液から得られる最終製品。
【請求項31】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法で得られるポリマーまたは請求項14〜26または請求項27または28のいずれか一項に記載の溶液または分散液を含むセメント。
【請求項32】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法で得られるポリマーまたは請求項14〜26または請求項27または28のいずれか一項に記載の溶液または分散液の、必要に応じて他の化合物または他のポリマーと混合されていてもよい化粧組成物またはセラミック組成物または塗料組成物での使用。
【請求項33】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法で得られるポリマーまたは請求項14〜26または請求項27または28のいずれか一項に記載の溶液または分散液を含み、必要に応じて他の化合物または他のポリマーと混合されていてもよい化粧組成物。

【公表番号】特表2008−519120(P2008−519120A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539615(P2007−539615)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002789
【国際公開番号】WO2006/051216
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】