説明

制御したラジカル重合用のS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)置換ジチオカーボネート誘導体、方法およびそれから製造したポリマー

ジチオカーボネート誘導体は、それを調製する方法と共に、開示されている。これらのジチオカーボネート化合物は、制御した遊離ラジカル重合において、開始剤、連鎖移動剤および/または停止剤として、利用できる。これらのジチオカーボネートは、狭い分子量分布のポリマーを生成するのに使用できる。有利なことに、本発明の化合物はまた、得られたポリマーに官能基を導入できる。これらのジチオカーボネート化合物は、臭気が少なく、実質的に無色である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本特許出願は、米国特許出願第10/278,335号(これは、2002年10月23日に出願され、S−(α,α’−二置換−α”−酢酸)置換ジチオカーボネート誘導体、方法およびそれから製造したポリマーに関する)に基づいた部分継続出願であり、この出願は、米国特許出願第09/505,749号(これは、2000年2月16日に出願され、制御したラジカル重合用の開始剤−連鎖移動剤−停止剤としてのs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートおよび誘導体およびそれらを製造する方法に関する)に基づいた部分継続出願である。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、s,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートおよび誘導体だけでなくそれらを製造する方法に関する。さらに、このカルボン酸末端基からは、他の末端官能基が誘導できる。これらの化合物は、制御した遊離ラジカル重合用の開始剤、連鎖移動剤または停止剤として、利用できる。s,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物を利用する遊離ラジカル重合は、一般に、テレケリックポリマーを形成する。もし、s,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物以外の開始剤も使用するなら、使用するs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物に対するその開始剤の量に比例して、単一の末端官能基を有するポリマーが形成される。
【0003】
さらに他の実施態様では、ジチオカーボネート誘導体は、それらを調製する方法と共に、開示されている。これらのジチオカーボネート化合物は、制御した遊離ラジカル重合において、開始剤、連鎖移動剤および/または停止剤として、利用できる。これらのジチオカーボネートは、狭い分子量分布を有するポリマーを生成するのに使用できる。有利なことに、本発明の化合物はまた、得られたポリマーの官能基を導入できる。これらのジチオカーボネート化合物は、臭気が少なく、実質的に無色である。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
有機チオカーボネート類のいくつかは、多年にわたって公知であり、それらの合成には、種々の経路が使用されているものの、本発明のs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物は、種々の用途(例えば、農薬および潤滑油添加剤)があると主張されている。
【0005】
ブロックコポリマーを生成する伝統的な方法(例えば、リビング重合または末端官能性ポリマーの連結)は、多くの欠点(例えば、使用できる種類のモノマーに制約がある、低い転化率、反応条件およびモノマー純度に関する厳しい要件)がある。末端連結方法に付随した難点には、ポリマー間で反応を行うこと、および所望の純粋な末端官能性ポリマーを生成することが挙げられる。本発明のs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートは、遊離ラジカル重合で利用するとき、上記問題点および難点を改善できる。
【0006】
先行文献であるWO98/01478は、リビング遊離ラジカル重合を行うためにチオカーボネートを使用することを開示している。この参考文献は、アルキルおよびベンジル官能基に限られ、当該技術分野で公知の一般方法を使って任意のアリールまたはカルボン酸置換トリチオカーボネートを製造することはできない。Synthesis,p 894(1986),J.Chemical Research(Synopsis),p 478(1995)およびSynthetic Communications,Vol.18,p 1531(1988)。本発明者はまた、本願の実施例の箇所で分かるように、これらの文献の実施例26で開示されたジベンジル誘導体の転化が、アクリレートを重合するとき、本発明と比較して非常に遅いことを発見した。WO/01478は、背景の項で、実験により、ジチオカルバメート誘導体が低い移動定数を有し、ラジカル重合にリビング特性を与えるのに実質的に効果的ではないことが明らかとなったと述べている。
【0007】
Macromolecules,32,p 6977−6980(1999)は、以下のことを述べている:
【0008】
【化1】

【0009】
ジチオカルバメート化合物、すなわち、
【0010】
【化2】

【0011】
は、重合を制御できず、有効なRAFT剤ではない。さらに、開示した方法を使用すると、カルボキシル末端基が形成できない。また、WO99/35177およびMacromolecules,Rapid Communications,21,p 1035−1039(2001)から、重合を制御するためには、R、RおよびRを微調整する必要があることが分かっており、このことは、全てのジチオカルバミン酸ジアルキルがRAFT剤として作用することを保証するものではないことを意味する。さらに、単結合イオウ原子の置換基は、それらの合成では、カルボン酸含有基ではあり得ない。
【0012】
米国特許第6,153,705号は、一般式(I)のブロックポリマーを重合する方法に関する:
【0013】
【化3】

【0014】
該方法では、以下のものが互いに接触される:
次式のエチレン性不飽和モノマー:
CYY’(=CW−CW’)=CH
一般式(III)の前駆体化合物:
【0015】
【化4】

【0016】
およびラジカル重合開始剤。
【0017】
Macromolecule Rapid Communications 2001,22,p 1497−1503および米国特許第6,153,705号は、種々のキサンテートを開示している。これらの参考文献は、そこに開示された方法を使用して本発明のキサンテート化合物を調製できない。1)第’705号特許で開示されたハロゲン化第三級アルキルを使うアルキル化によると、置換ではなく脱離が生じる。この参考文献で開示されたハロ...ジアルキル酢酸は、アルキル化できない。2)本発明の化合物は、その化合物の単結合イオウ原子に結合した第三級炭素を含有する。第’705号特許は、好ましくは、第二級炭素原子を有するR基を利用し、その結果、本発明のものよりも低い連鎖移動定数が得られる。さらに、これらの参考文献で開示されたキサンテートは、有効性低いことが発見されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来技術に照らして、予想外なことに、本発明の化合物は、遊離ラジカル重合にリビング特性を与えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の要旨)
本発明は、以下の一般式を有するs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート、それらの誘導体、およびそれらを製造する方法に関する:
【0020】
【化5】

【0021】
ここで、RおよびRは、以下で示す。
【0022】
このs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートは、一般に、強塩基(例えば、水酸化ナトリウム)中にて、二硫化炭素、ハロホルムおよびケトンから形成でき、続いて、酸性化される。このs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートは、重合中にて、イニフェルター(inifertors)、すなわち、開始剤として、または連鎖移動剤として、使用できる。これらの化合物は、それゆえ、遊離ラジカル重合を熱的および化学的に制御して狭い分子量分布を得るのに利用できる。モノマーの重合は、バルク、乳濁液または溶液中であり得る。もし、2種またはそれ以上のモノマーが連続的に重合されるなら、ブロックコポリマーが製造できる。存在している二官能性酸末端基は、さらに、他の反応性ポリマーまたはモノマーと反応して、ブロックまたはランダムコポリマーを形成できる。s,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物を利用する遊離ラジカル重合は、一般に、テレケリックポリマーを形成する。もし、s,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物以外の開始剤も使用するなら、使用するs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物に対する該開始剤の量に比例して、単一の末端官能基を有するポリマーが形成される。
【0023】
さらに他の実施態様では、本発明のジチオカーボネート化合物は、以下の一般式を有する:
【0024】
【化6】

【0025】
ここで、T、R12、R13、R14、aおよびjは、以下で定義されている。好ましくは、置換基Tは、アミン誘導体であり、好ましくは、ジアルキルアミノ誘導体である。
【0026】
これらのジチオカーボネート化合物は、遊離ラジカル重合において、開始剤および/または鎖停止剤としてだけでなく、連鎖移動剤として、利用できる。本発明のジチオカーボネートを使うと、有利なことに、狭い分子量分布のポリマーが生成できる。これらのジチオカーボネート化合物の存在下にて形成されたポリマーは、少なくとも1個の末端カルボキシル基を有し、これは、さらに反応されて、ブロックまたはランダムコポリマーを形成できる。これらのジチオカーボネート化合物に重合されるモノマーまたはポリマーは、その単結合イオウ原子と隣接する第三級炭素原子との間に付加される。これらの重合は、不活性雰囲気下にて、行われる。本発明の化合物および/またはポリマーまたはコポリマーは、そのカルボン酸基の金属塩またはアンモニウム塩によって、水溶性または水分散性に製造できる。
【0027】
従って、本発明のジチオカーボネート化合物を使用して、以下の式を有するポリマーが生成できる:
【0028】
【化7】

【0029】
ここで、T、R12、R13、R14、ポリマー、a、g、jおよびfは、以下で定義されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
本明細書中で後に開示する方法により調製されるs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートおよび誘導体は、次式で描写できる:
【0031】
【化8】

【0032】
ここで、RおよびRは、別個に、同一または異なり得、そして1個〜約6個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、または1個またはそれ以上の置換基を有するC〜約Cアルキル、または1個またはそれ以上のアリールまたは置換アリール基(これは、そのアリール環に1個〜6個の置換基を有する)であり得、ここで、該1個またはそれ以上の置換基は、別個に、1個〜6個の炭素原子を有するアルキル;またはアリール;または全体で2個〜約20個の炭素原子を有するエーテル(例えば、メトキシまたはヘキサノキシ);またはニトロ;またはそれらの組合せを含有する。このような化合物の例には、s,s’−ビス−2−メチル−2−プロパン酸−トリチオカーボネートおよびs,s’−ビス−(2−フェニル−2−プロパン酸)−トリチオカーボネートが挙げられる。RおよびRはまた、全体で5個〜約12個の炭素原子を有する環状環の一部を形成できるか一部であり得る。RおよびRは、好ましくは、別個に、メチルまたはフェニル基である。
【0033】
本発明のs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートの省略した反応式は、一般に、以下のように記述できる:
【0034】
【化9】

【0035】
本発明のs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物を形成するのに利用されるプロセスは、一般に、多段階プロセスであり、そして二硫化炭素および塩基を混ぜ合わせる工程を包含し、それにより、中間体トリチオ構造が形成される(I、II、IIIおよびIVを参照)。この二硫化炭素/塩基反応の溶媒として、ケトンが役立ち得、それゆえ、この反応の第一工程で加えることができる。この反応の第二工程では、このトリチオ中間体混合物には、ハロホルム、またはハロホルムとケトン、またはα−トリハロメチル−α−アルカノールが加えられる(V、VIおよびVIIを参照)。形成された反応生成物(IXを参照)は、引き続いて、酸性化され、それにより、この反応が完結し、上記s,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物が形成される(Xを参照)。
【0036】
この反応は、所望の時間でs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートを生成するように、これらの反応物の相互作用を完結するのに十分な温度で、実行される。この反応は、その反応塊のほぼ凝固点から溶媒のほぼ還流温度までの広い範囲内の任意の温度で、実行できる。この反応温度は、一般に、約−15℃〜約80℃、望ましくは、約0℃〜約50℃、好ましくは、約15℃〜約35℃であり、室温が好ましい。この反応は、大気圧で実行される。その反応時間は、いくつかの要因に依存しており、温度が最も影響する。この反応は、一般に、20時間以内、好ましくは、10時間以内に完結する。
【0037】
もし、この反応で溶媒を使用するなら、好ましくは、相移動触媒が利用される。溶媒の例は、本明細書中にて、以下で述べる。この反応で利用されるケトンは、溶媒としても二重に働き得、従って、通常、溶媒は必要ではない。相移動触媒の量は、本発明で利用するとき、一般に、二硫化炭素1モルあたり、約0.1モルパーセント〜約10モルパーセント、望ましくは、約0.5モルパーセント〜約5モルパーセント、好ましくは、約2モルパーセント〜約4モルパーセントである。この相移動触媒は、ポリエーテルおよび/またはオニウム塩であり得、これらには、周期表の第VA族または第VIA族元素の第四級または第三級有機化合物およびそれらの塩が挙げられる。第四級アミンおよびそれらの塩が最も好ましい。
【0038】
「オニウム塩」とは、さらに特定すると、第三級または第四級アミンおよび塩(例えば、非混和性液体での不均一反応の相移動触媒中で一般に使用されるもの)を意味する。選択したオニウム塩の一般的な必要条件は、2種の液体相が存在しているとき、その有機相および水相の両方で溶解性であること、および水相よりも有機相で少し溶解性が高いことである。この反応はまた、単一の有機液体相だけが存在しているとき、相移動触媒と共に進行するが、このような反応は、水相および有機相の両方が存在しているものほど好ましくない。このケトホルム合成では、多種多様なオニウム塩が有効である。
【0039】
これらのオニウム塩には、周期表の第VA族元素および一部の第VIA族元素の周知の塩、第三級アミンおよび第四級化合物(例えば、米国特許第3,992,432号およびAngewandte Chemie,International Edition in English,16 493−558(August 1977)の概説で論述されているもの)が挙げられる。本明細書中では、種々のアニオン移動反応が論述されており、この場合、この相移動触媒は、その水相において、その初期イオンを他のイオンと交換して、そこで、輸送されたアニオン(OH−イオンを含めて)との本発明の化学反応を実行する。
【0040】
この合成で使用されるオニウム塩には、式(RY)を有する1個またはそれ以上の基が挙げられ、ここで、Yは、第VA族元素から誘導された五価イオン、または第VIA族元素から誘導された四価イオンである;Rは、Yが五価のとき、4個の共有結合でYに結合した塩分子の有機部分であり、そしてYが四価のとき、3個の共有結合でYに結合した塩分子の有機部分である;Xは、水性環境にてカチオン(RY)から解離するアニオンである。(RY)基は、記述した様式で2個の五価第VA族イオンを置換した二塩基性四級塩の場合のように、繰り返され得る。
【0041】
本発明で使用するのに好ましいオニウム塩は、次式を有する:
(R)X
ここで、Yは、NまたはPであり、そしてR−Rは、一価炭化水素ラジカルであり、これらは、好ましくは、アルキル、アルケニル、アリール、アルカリール、アラルキルおよびシクロアルキル部分またはラジカルからなる群から選択され、必要に応じて、適当なヘテロ原子含有官能基で置換されている。これらのオニウム塩は、一般に、2相の異なる液体相のうちの極性が低い相にて、溶解性が低く優先性が少なくなるように選択される。米国特許第3,992,432号で開示された塩のいずれかは、有効であることが分かっているが、R、R、RおよびRの炭素原子の全数が累積的に約13個〜約57個の範囲、好ましくは、約16個〜約30個の範囲であるものが最も好ましい。最も好ましいオニウム塩は、Y=Nを有し、そして以下である炭化水素ラジカルを有する:Rは、CHであり、そしてR、RおよびRは、それぞれ、n−C、n−C;n−C11;混合C17;n−C1225;n−C1837;混合C〜C10アルキル;などからなる群から選択される。しかしながら、Rは、Cn−Cおよびn−Cベンジルから選択され得る。・
種々の対イオンが使用され得、これらには、Cl、Br、I、NO、SO−2、HSOおよびClが挙げられる。
【0042】
この合成において相移動触媒として有用な第三級アミンまたはトリアミンには、アルキルアミンおよびアリールジアルキルアミンが挙げられ、これらは、それぞれ、トリブチルアミンおよびフェニルジブチルアミン(これらは、市販されている)で例示され、ここで、各アルキルは、1個〜約16個の炭素原子を有し得る。
【0043】
この合成において触媒として有用なポリエーテルには、環状ポリエーテル(例えば、クラウンエーテルであって、これらは、Agenwandte Chemie(上記)で開示されている)および次式を有する非環式ポリエーテルが挙げられる:
R−O−R
ここで、RおよびRは、別個に、1個〜約16個の炭素原子を有するアルキル、または置換官能基(例えば、ヒドロキシ、イオウ、アミン、エーテルなど)を含有するアルキルである。最も好ましい非環式ポリエーテルは、次式を有する:
R−(OCHCHOR”
ここで、
Rは、1個〜約16個の炭素原子を有するアルキルである;
R”は、1個〜約16個の炭素原子を有するアルキル、またはHであり、そしてrは、0〜約300の範囲の整数である。
【0044】
市販のポリエーテル、例えば、以下のものは、最も好ましい:テトラエチレングリコールジメチルエーテル;ポリエチレンオキシド(分子量約5000);ポリ(エチレングリコールメチルエーテル);1,2−ジメトキシエタン;ジエチルエーテルなど。
【0045】
このケトン合成では、ポリエーテル触媒は、望ましくない副生成物が非常に少ない反応(この反応は、制御可能であるように、比較的に穏やかな発熱を伴って、進行する)において、所望の非対称的に置換した異性体を優先して生成するように指示されるので、特に望ましい。
【0046】
この有機溶媒は、その反応物が溶解性である任意の溶媒であり得、これには、ヒドロハロメチレン(特に、ヒドロクロロメチレン)、スルホラン、ジブチルエーテル、ジメチルスルホン、ジイソプロピルエーテル、di−n−プロピルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、四塩化炭素、ヘプタン、ミネラルスピリットなどが挙げられる。最も好ましい溶媒は、ミネラルスピリットである。溶媒は、一般に、それらの反応物の全重量を基準にして、約10〜約500パーセント、好ましくは、約50パーセント〜約200パーセントの量で、利用される。
【0047】
反応成分に関する限り、この合成では、以下の一般式を有する種々のケトンのいずれかが使用できる:
【0048】
【化10】

【0049】
ここで、RおよびRは、本明細書中で上記のとおりである。二硫化炭素は、この反応の制御剤であるので、このケトンは、一般に、二硫化炭素1モルあたり、約110モルパーセント〜約2,000モルパーセント、好ましくは、約150モルパーセント〜約300モルパーセント、好ましくは、約180モルパーセント〜約250モルパーセントの量で、利用される。
【0050】
本発明の合成で使用するのに適当なアルカリ塩基には、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。この塩基は、一般に、二硫化炭素のモル数の約5倍〜約15倍の量で利用され、好ましくは、この反応で利用される二硫化炭素のモル数の約6〜約10倍で利用される。
【0051】
その酸性化工程で使用される酸には、塩酸、硫酸、リン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸は、その水溶液を酸性にするのに適当な量で、利用される。
【0052】
本発明のハロホルムは、一般式CHXを有し、ここで、Xは、別個に、塩素または臭素である。本発明で使用されるハロホルムの量は、一般に、二硫化炭素1モルあたり、約110モルパーセント〜約2000モルパーセント、望ましくは、約150モルパーセント〜約300モルパーセント、好ましくは、180モルパーセント〜約250モルパーセントである。ハロホルムの例には、クロロホルムおよびブロモホルムが挙げられるが、これらに限定されず、クロロホルムは、本発明の好ましいハロホルムである。
【0053】
あるいは、この反応混合物にハロホルムおよびケトンの両方を加える代わりに、α−トリハロメチル−α−アルカノールで置き換えることができる。この反応で利用されるα−トリハロメチル−α−アルカノールの量は、二硫化炭素1モルあたり、約110モルパーセント〜約2000モルパーセント、望ましくは、約150モルパーセント〜約300モルパーセント、好ましくは、約180モルパーセント〜約250モルパーセントである。このα−トリハロメチル−α−アルカノールの一般式は、一般に、以下のように表わされる:
【0054】
【化11】

【0055】
ここで、X、RおよびRは、上で定義したとおりである。
【0056】
いずれの特定の理論にも限定されることを望まないものの、この反応プロセスの特定の機構は、以下のとおりであると考えられている:
最初に、この二硫化炭素および水酸化ナトリウムが反応される。
【0057】
【化12】

【0058】
この反応の次の工程では、このクロロホルムは、以下のようにして、このケトンと反応される:
【0059】
【化13】

【0060】
次いで、以下が反応される:
【0061】
【化14】

【0062】
全体的な反応は、以下のとおりである:
【0063】
【化15】

【0064】
本発明で生成されたs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物は、一般に、イニフェルターとして分類でき、このことは、それらが連鎖移動剤および開始剤の両方として作用することを意味する。ブロックコポリマーに他の種類のイニフェルターを使用することは、Yagei and Schnabel in Progress in Polymer Science 15、551(1990)で論述されており、その内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0065】
それゆえ、本発明の化合物は、モノマーの重合を開始する開始剤として、利用できる。それらはまた、連鎖移動剤として使用でき、これは、新規ポリマー鎖を形成する核として作用できる新規ラジカルを形成することにより、ポリマー鎖の成長を妨害し停止する。これらの化合物はまた、開始ラジカルおよびモノマーの殆どが消費されたとき、それらの化合物が休止種としてポリマーに取り込まれる点で、停止剤として利用できる。望ましくは、他の化合物(例えば、本明細書中にて以下で列挙したもの)は、しばしば、本明細書中にて以下で記述するように、この遊離ラジカル重合における開始剤として使用され、本発明のs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物は、連鎖移動剤として作用する。
【0066】
本発明のs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物は、遊離ラジカル重合における連鎖移動剤として使用され、リビング特性を有する重合および低い多分散性のポリマーを提供するだけでなく、テレケリックポリマーの形成をもたらす。
【0067】
リビング重合は、停止および連鎖移動なしで進行する連鎖重合である。リビング重合を診断するには、以下の実験的な規準が利用できる:
1.重合は、全てのモノマーが消費されるまで、進行する。モノマーをさらに追加すると、連続した重合が起こる。
【0068】
2.数平均分子量M(またはX、数平均重合度)は、転化率の一次関数である。
【0069】
3.ポリマー分子(および活性中心)の数は、一定であり、転化率とは無関係である。
【0070】
4.その分子量は、この反応の化学量論で制御できる。
【0071】
5.分子量分布の狭いポリマーが生成される。
【0072】
6.連鎖末端官能化ポリマーは、定量収率で調製できる。
【0073】
7.ラジカル重合では、活性末端基の数は、2であるべきであり、各末端に対して、1である。
【0074】
以上のこと以外に、他の規準もまた、重合のリビング特性を決定するのに役立ち得る。ラジカルリビング重合には、1つには、重合の第一工程から単離されたポリマーを重合の第二工程のマクロ開始剤として使用する性能があり、ここで、ブロックコポリマーまたはグラフトポリマーが最終的に形成される。ブロックコポリマーの形成を確認するために、分子量の測定およびブロック構造の決定が使用される。構造測定には、個々のブロックが共に連結されたセグメントのNMRまたはIR信号の検査およびまたは末端基の決定は、共に、非常に重要である。ラジカル重合では、リビング重合の規準の一部だけが実際に満たされる。それらがさらに重合を受ける性能があるために、これらの種類のポリマーはまた、「反応性ポリマー」とも呼ぶことができる。リビング重合のさらに詳細な説明は、「Living Free− Radical Block Copolymerization UsingThio−Inifertors」、by Anton Sebenik,Progress in Polymer Science,vol.23,p.876,1998で見られる。
【0075】
これらのリビング重合プロセスは、その長さおよび組成を反応の化学量論および転化度で制御した1種またはそれ以上のモノマーを含有する低分子量分布ポリマーを生成するのに、使用できる。単独ポリマー、ランダムコポリマーまたはブロックポリマーは、高い制御度合および低い多分散度で生成できる。低い多分散度のポリマーには、通常の遊離ラジカル重合で生成されたものよりも著しく低い多分散度を備えたものがある。通常の遊離ラジカル重合では、形成されたポリマーの多分散度(多分散度は、重量平均分子量と数平均分子量との比M/Mとして、定義される)は、典型的には、2.0より高い。本発明のs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物およびそれらの誘導体を利用することにより得られる多分散度は、好ましくは、1.75または1.5以下、しばしば、1.3以下であり、その連鎖移動剤および反応条件を適当に選択すると、1.25以下であり得る。
【0076】
これらのs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物を連鎖移動剤としてのみ使用するとき、その重合は、類似の制御様式でポリマーを生じつつ、低温で、他の開始剤で開始できる。
【0077】
開始剤および連鎖移動剤の両方としてs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物を利用する遊離ラジカル重合は、一般に、テレケリックポリマーを形成する。このs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート以外の開始剤も利用するとき、単一末端官能基を有するポリマーは、使用するこのs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートに対する該他の開始剤の量に比例して、形成される。
【0078】
本発明の遊離ラジカルリビング重合プロセスは、遊離ラジカル重合できる任意のモノマーまたはモノマーの組合せに適用できる。このようなモノマーには、1種またはそれ以上の共役ジエンモノマーまたは1種またはそれ以上のビニル含有モノマー、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0079】
これらのジエンモノマーは、全体で、4個〜12個の炭素原子を有し、例には、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1−3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエンおよび4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
これらのビニル含有モノマーは、以下の構造を有する:
【0081】
【化16】

【0082】
ここで、Rは、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、または置換C〜Cアルキルを含有し、ここで、該置換基は、別個に、以下を含有する:1個またはそれ以上のヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ(OR)、カルボキシ、カルボン酸金属(COOM)であって、Mは、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたは亜鉛などまたはアンモニウム塩である、アシルオキシ、アロイルオキシ(OCR)、アルコキシ−カルボニル(CO)、アリールオキシ−カルボニル;またはN−ピロリドニル;そしてRは、水素、R、COH、CO、CO、CN、CONH、CONHR、OCR、ORまたはハロゲンを含有する。Rは、C〜C18アルキル、置換C〜C18アルキル、C〜Cアルケニル、アリール、ヘテロシクリル、アラルキルまたはアルカリールであり、ここで、該置換基は、別個に、1個またはそれ以上のエポキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ(および塩)、スルホン酸(および塩)、アルコキシ−またはアリールオキシ−カルボニル、ジシアナト、シアノ、シリル、ハロまたはジアルキルアミノである。必要に応じて、これらのモノマーは、無水マレイン酸、N−ビニルピロリドン、N−アルキルマレイミド、N−アリールマレイミド、フマル酸ジアルキルおよび環化重合可能モノマーを含有する。本明細書中で使用するモノマーCH=CRには、C〜Cアクリレートおよびメタクリレート、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、アクリル酸およびメタクリル酸、スチレンまたはメチルスチレン、C〜C12アルキルスチレン(これらは、鎖または環の両方で置換基を有する)、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−およびN,N−アルキルアクリルアミドおよびメタクリルアミド、これらのモノマーの混合物、およびこれらのモノマーと他のモノマーとの混合物が挙げられる。当業者は、コモノマーの選択がそれらの立体特性および電子特性により決定されることを認識する。種々のモノマーのコポリマー性を決定する要因は、当該技術分野で十分に実証されている。例えば、以下を参照:Greenley,R.Z.,in Polymer Handbook,3rd Edition(Brandup,J.,and Immergut,E.H.Eds.)Wiley:New York,1989 pll−53。
【0083】
特定のモノマーまたはコモノマーには、以下が挙げられる:メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル(全ての異性体)、メタクリル酸ブチル(全ての異性体)、メタクリル酸2−エチルヘキシル、イソボルニルメタクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(全ての異性体)、アクリル酸ブチル(全ての異性体)、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリロニトリル、スチレン、官能性メタクリレート、アクリレート(例えば、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(全ての異性体)、メタクリル酸ヒドロキシブチル(全ての異性体)、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチルおよびメタクリル酸トリエチレングリコール)、イタコン酸;金属塩(例えば、全てのモノマー酸(例えば、イタコン酸および2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸などがあるが、これらに限定されない)のナトリウム塩および亜鉛塩);N−ビニルイミダゾール、ビニルピリジンN−オキシド、4−ビニルピリジンカルボキシメチルベタイン、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、p−スチレンスルホン酸、p−スチレンカルボン酸、アクリル酸2−ジメチルアミノエチルおよびそのアルキル/ハロゲン化水素塩、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチルおよびそのアルキル/ハロゲン化水素塩、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メタクリル酸2−(アセトアセトキシ)エチル、アセト酢酸2−(アクリロイルオキシ)エチル、メタクリル酸3−トリアルコキシ(メトキシ、エトキシ、イソプロポキシなど)シリルプロピル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル(全ての異性体)、アクリル酸ヒドロキシブチル(全ての異性体)、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、アクリル酸トリエチレングリコール、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−第三級ブチルメタクリルアミド、N−n−ブチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチロールメタクリルアミド、N−第三級ブチルアクリルアミド、N−N−ブチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ethylolアクリルアミド、ビニル安息香酸(全ての異性体)、ジエチルアミノスチレン(全ての異性体)、α−メチルビニル安息香酸(全ての異性体)、ジエチルアミノα−メチルスチレン(全ての異性体)、p−ビニルベンゼンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリブトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジメトキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジエトキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジブトキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジイソプロポキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジメトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジエトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジブトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジイソプロポキシシリルプロピル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、アクリル酸トリブトキシシリルプロピル、アクリル酸ジメトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジエトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジブトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジイソプロポキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジメトキシシリルプロピル、アクリル酸ジエトキシシリルプロピル、アクリル酸ジブトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジイソプロポキシシリルプロピル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、アクリル酸トリブトキシシリルプロピル、アクリル酸ジメトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジエトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジブトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジイソプロポキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジメトキシシリルプロピル、アクリル酸ジエトキシシリルプロピル、アクリル酸ジブトキシシリルプロピル、ジイソプロポキシシリルプロピルアミエート、酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、エチレンおよびプロピレン、およびそれらの組合せ。
【0084】
好ましいモノマーには、C〜C18アクリレート;C〜Cモノアルキルおよびジアルキルアクリルアミド;C〜Cアクリレートとメタクリレートとの組合せ;アクリルアミドとメタクリルアミドとの組合せ;C〜Cスチレン;ブタジエン;イソプレンおよびアクリロニトリルがある。
【0085】
上で述べたように、この遊離ラジカル重合プロセスを開始するために、しばしば、遊離ラジカル開始源として、開始剤を利用することが望ましい。一般に、これらのラジカル開始源は、遊離ラジカルを発生させる適当な方法(例えば、適当な化合物の熱誘発した等方性分断(熱開始剤(例えば、過酸化物、ペルオキシエステルまたはアゾ化合物))、レドックス開始系、光化学開始系または高エネルギー放射線(例えば、電子線、X線またはγ線))であり得る。この開始系は、反応条件下にて、実験条件下で連鎖移動剤と開始剤または開始ラジカルとの著しく好ましくない相互作用がないように、選択される。この開始剤はまた、その反応媒体またはモノマー混合物中で必要な溶解度を有するべきである。本発明のs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物は、開始剤として役立ち得るが、その反応は、高温で行わなければならない。従って、必要に応じて、本発明のs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物以外の開始剤を利用することが望ましい。
【0086】
熱開始剤は、重合温度で適当な半減期を有するように、選択される。これらの開始剤には、以下の化合物の1種またはそれ以上を挙げることができる:
2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−シアノ−2−ブタン)、イソ酪酸ジメチル2,2’−アゾビスジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアンペンタン酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(t−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(1,1)−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−ヒドロキシエチル)]−プロピオンアミド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(N、N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、2,2’−アゾビス(2,2,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、過酢酸t−ブチル、過安息香酸t−ブチル、過オクトン酸t−ブチル、過ネオデカン酸t−ブチル、過イソ酪酸t−ブチル、過ピバリン酸t−アミル、過ピバリン酸t−ブチル、過二炭酸ジイソプロピル、過二炭酸ジシクロヘキシル、過酸化ジクミル、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過二硫酸カリウム、次亜硝酸ジ−t−ブチル、次亜硝酸ジクミル。
【0087】
光化学開始剤系は、その反応媒体またはモノマー混合物中で必要な溶解度を有するように、また、この重合条件下にてラジカル生成に適当な量子収率を有するように、選択される。例には、ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、アシルホスフィンオキシド、および重合条件下での光レドックス系生成が挙げられる;これれらの開始系には、以下の酸化剤と還元剤との組合せを挙げることができる:
酸化剤:過二硫酸カリウム、過酸化水素、ヒドロ過酸化t−ブチル。還元剤:鉄(II)、チタン(III)、チオ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム。
【0088】
他の適当な開始系は、最近の教本で記述されている。例えば、Moad and Solomon 「The Chemistry of Free Radical Polymerization」(Pergamon、London.1995.pp 53−95)を参照。
【0089】
本発明の好ましい開始剤は、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)または4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、または2,2’−アゾビス(2−シアノ−2−ブタン)、または1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)である。この重合プロセスで利用される開始剤の量は、広範に変えることができ、一般に、利用する連鎖移動剤の全モル数を基準にして、約0.001パーセント〜約99パーセント、望ましくは、約0.01パーセント〜約50または75パーセントである。好ましくは、利用する連鎖移動剤(すなわち、s,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物)の全モル数を基準にして、約0.1モルパーセント〜約5、10、15、20または25モルパーセントの少量が使用される。主にテレケリックであるポリマーを形成するために、これらのs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物以外の開始剤は、より少ない量(例えば、利用する連鎖移動剤の全モル数を基準にして、約0.001パーセント〜約5パーセント、望ましくは、約0.01パーセント〜約4.5パーセント、好ましくは、約0.1パーセント〜約3パーセント)が使用される。
【0090】
必要に応じて、上で述べたように、この遊離ラジカル重合プロセスでは、溶媒が利用され得る。このような溶媒の例には、C〜C12アルカン、トルエン、クロロベンゼン、アセトン、t−ブチルアルコールおよびジメチルホルムアミドが挙げられるが、これらに限定されない。これらの溶媒は、それ自体連鎖移動剤しないように、選択される。本発明の重合プロセスで利用する溶媒の量は、一般に、その重合で利用するモノマー約10重量%〜約500重量%、好ましくは、約50重量%〜約200重量%である。
【0091】
上で述べたように、本発明のs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートを遊離ラジカル重合プロセスの連鎖移動剤として使用することが好ましい。利用する連鎖移動剤(CTA)の量は、形成するポリマーの所望の分子量に依存しており、そして当業者に知られているように計算できる。連鎖移動剤の量を計算する式は、以下のとおりである:
(ポリマーのMn)=[(モノマーの重量×CTAの分子量)/CTAの重量]+(CTAの分子量) XII(a)
いずれの特定の機構にも限定するつもりはないものの、この遊離ラジカル重合プロセスの機構は、ビニルモノマーを使用するとき、以下のとおりであると考えられている:
【0092】
【化17】

【0093】
【化18】

【0094】
あるいは、この反応は、以下のように進行できる:
【0095】
【化19】

【0096】
【化20】

【0097】
上記機構から分かるように、2つの異なる構造を有するポリマー(XIXおよびXXIIを参照)が形成できる。得られたポリマーは、テレケリックポリマー(これは、本発明のトリチオカーボネート化合物により形成され、そして鎖の末端に同じ官能基を備えている)または単一末端官能基を有し開始剤停止鎖(これは、AIBNのような通常の開始剤を使用することにより、形成される)もまた有するポリマーのいずれかである。上で述べたように、得られたポリマー間の割合は、所望の結果を得るように制御でき、一般に、利用する開始剤の量に依存している。明らかに、もし、この開始剤が本発明のs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物のみであるなら、得られるポリマーは、常に、テレケリックである。利用する他の開始剤の量が多くなるほど、比例的に、形成されるテレケリックポリマーの量が少なくなる。一般に、m、m’、m”、n、n’またはn”は、一般に、約1〜約10、000、望ましくは、約5〜約500、好ましくは、約10〜約200である。1種またはそれ以上のビニルモノマーおよび/または1種またはそれ以上のジエンモノマーが利用できる限り、本発明のポリマーの繰り返し基は、一般に、式XIXおよびXXIIで示され同一または異なり得ることが理解できるはずである。すなわち、ランダムポリマー、三元コポリマーなどは、言及した2個の繰り返し基のいずれかだけでなくブロックコポリマー(これらは、まず最初に、1種のモノマーを加えることにより、次いで、引き続いて、異なるモノマーを加えることにより、形成できる)内で、形成できる(例えば、内部ブロックコポリマー)。
【0098】
本発明により形成されたポリマーは、一般に、以下の式で表わされる:
【0099】
【化21】

【0100】
ここで、このようなモノマーは、本明細書中にて、上で記述されている。もちろん、上記式は、XXIIのように、その上に開始剤末端基を含有できる。
【0101】
それらの反応条件は、使用する温度が制御様式でラジカルを発生するように、当業者に知られているように選択され、ここで、この温度は、一般に、ほぼ室温〜約200℃である。この反応は、室温より低い温度で実行できるが、そうするのは、実用的ではない。この温度は、しばしば、その反応に対して選択する開始剤に依存しており、例えば、AIBNを使用するとき、この温度は、一般に、約40℃〜約80℃であり、アゾジシアノジ吉草酸を使用するとき、この温度は、約50℃〜約90℃であり、過酸化ジ−t−ブチルを使用するとき、この温度は、一般に、約110℃〜約160℃であり、s,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートを使用するとき、この温度は、一般に、約80℃〜約200℃である。
【0102】
この遊離ラジカル重合により上で述べたようにして調製された低多分散性のポリマーは、例えば、化学変換またはブロックコポリマーを形成するために他のポリマー鎖と結合する反応をさらに受けるモノマーに由来の反応性末端基を含有できる。従って、上で列挙したモノマー(すなわち、共役ジエンまたはビニル含有モノマー)のいずれかは、連鎖移動剤としてs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートを利用して、ブロックコポリマーを形成するのに利用できる。あるいは、これらの置換基は、非反応性であり得る(例えば、アルコキシ、アルキルまたはアリール)。反応性基は、この実験条件下にて連鎖移動剤との好ましくない反応がないように、選択すべきである。
【0103】
本発明のプロセスは、バッチ、半バッチ、連続または給送モードのいずれかで、乳濁液、溶液または懸濁液中にて、実行できる。それ以外は、狭い多分散性のポリマーを生成する通常の手順が使用できる。最も低い多分散性のポリマーを得るには、この連鎖移動剤は、重合開始前に加えられる。例えば、溶液中のバッチ様式で実行するとき、その反応器には、典型的には、連鎖移動剤およびモノマーまたは媒体+モノマーが充填される。次いで、この混合物に、所望量の開始剤が加えられ、その混合物は、所望の転化率および分子量で決定される時間にわたって、加熱される。広いが制御されていない多分散度を有するポリマーまたは多様な分子量分布を有するポリマーは、その重合プロセスの過程にわたって、この連鎖移動剤を制御して加えることにより、生成できる。
【0104】
乳濁重合または懸濁重合の場合、その媒体は、しばしば、主として、水および通常の安定剤、分散剤であり、しばしば、他の添加剤が存在できる。溶液重合には、その反応媒体は、使用するモノマーに適した広範囲の媒体から選択できる。
【0105】
既に述べたように、給送重合条件を使用すると、低い移動定数の連鎖移動剤を使用することが可能となり、また、バッチ重合プロセスを使用して容易に達成できないブロックポリマーを合成することが可能となる。もし、この重合が給送系で実行されるなら、その反応は、以下のようにして、実行できる。この反応器には、選択した媒体、連鎖移動剤および必要に応じて、モノマーの一部が充填される。残りのモノマーは、別の容器に入れられる。他の別の容器にて、この反応媒体には、開始剤が溶解または懸濁される。このモノマー+媒体および開始剤+媒体が、例えば、注射器ポンプまたは他のポンピング装置により、長時間にわたって導入されている間、この反応器中の媒体は、加熱され攪拌される。給送の速度および持続時間は、大部分は、溶液の量、所望のモノマー/連鎖移動剤/開始剤の割合および重合速度により、決定される。この給送が完了した後、追加期間にわたって、加熱が継続できる。
【0106】
この重合の完結に続いて、このポリマーは、その媒体および未反応モノマーをストリッピングすることにより、または非溶媒で沈殿することにより、単離できる。あるいは、そのポリマー溶液/乳濁液は、もし、その容器に適当であるなら、そのまま使用できる。
【0107】
本発明は、遊離ラジカル重合の分野で広く適用可能であり、そして被覆(自動車および他の車両用の塗料のクリアコートおよびベースコート仕上げ、または広範囲の基板用の工業用、建築用または保守管理用の仕上げを含めて)用のポリマーおよび組成物を生成するのに使用できる。このような被覆には、さらに、顔料、耐久剤、腐食および酸化防止剤、レオロジー制御剤、金属箔および他の添加剤を挙げることができる。ブロックポリマーおよび星形ポリマーおよび分枝ポリマーは、相溶化剤、熱可塑性エラストマー、分散剤またはレオロジー制御剤として、使用できる。本発明のポリマーの追加用途は、画像化、電子機器(例えば、フォトレジスト)、エンジニアリングプラスチック、接着剤、封止剤、紙の被覆および処理、織物の被覆および処理、インクおよび重ね印刷ワニス、および高分子全般の分野である。
【0108】
上で示した重合機構で分かるように、このs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートは、両方の鎖末端で2個の官能基を有するテレケリックポリマーを形成するのに利用できる。
【0109】
「テレケリックポリマー」との用語は、その鎖末端に位置している1個またはそれ以上(好ましくは、2個)の反応性官能基を有する比較的に低分子量の高分子を設計するために、1960年に、Uraneckらにより、提案された。このs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートおよびそれから形成されたポリマーの両方の末端官能基は、選択的な反応で他の分子と結合を形成する性能を有する。テレケリックポリマーまたはプレポリマーの官能性は、このような末端基の数に等しい。各末端に官能基(例えば、COOH)を含有するテレケリックポリマーは、鎖伸長コポリマーおよびブロックコポリマーをさらに合成するのに有用である。
【0110】
テレケリックポリマーの関心は、このようなポリマーが、一般に、適当な連結剤と併用されて、以下の3つの重要な操作を実行できるという事実にある:(1)二官能性連結剤による短鎖の長鎖への鎖伸長;(2)多官能性連結剤を使用することによるネットワークの形成;および(3)異なる骨格を備えたテレケリックを組み合わせることによる(ポリ)ブロックコポリマーの形成。これらの概念は、「反応射出成形」(RIM)で例示されるいわゆる「液体ポリマー」技術の基礎をなすので、工業的に非常に重要である。また、ゴムの形成がネットワーク形成に形成に基づいているので、ゴム工業でも、大きな関心が向けられている。古典的なゴム技術では、これは、粘度の低い長鎖を架橋することにより、達成される。従って、古典的なゴム技術には、エネルギー集約的混合操作が必要である。液状前駆体(これは、所望のネットワークに末端結合できる)の使用により、加工上有利となるだけでなく、ある場合には、最終製品の特性が良好になる。テレケリックポリマーおよびそれらの合成についてのそれ以上の情報は、「Telechelic Polymers:Synthesis and Applications」(Eric J.Goethe,CRC Press,Boca Raton,Florida,1989)で見られる。
【0111】
本発明のテレケリックポリマーまたはs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートの反応性官能性酸末端基の反応条件は、一般に、上記遊離ラジカルポリマーを形成するものと同じである。単量体またはポリマー形状の酸は、通常の様式で、その誘導体に変換できる。例えば、そのエステルは、水を除去しつつ、この酸をアルコール中にて酸触媒で還流することにより、製造できる。水を除去しつつ、この酸をアミンと共に加熱することにより、アミドが形成できる。この酸を、触媒(例えば、トリフェニルホスフィンまたは酸様トルエンスルホン酸)と共にまたは触媒なしで、エポキシドと直接反応させることにより、2−ヒドロキシ−エチルエステルが形成できる。以下の実施例で分かるように、上記モノマー(例えば、1種またはそれ以上のジエンモノマーまたは1種またはそれ以上のビニル含有モノマー)のいずれかが利用され、本発明のs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートから、このテレケリックポリマーが形成できる。上記成分のいずれか(例えば、溶媒など)は、本明細書中にて上で述べた量で、利用できる。
【0112】
このs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物の酸基は、重合前または重合後のいずれかにて、他の官能基に変換できる。たとえこれらのs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物が、重合前に酸末端基から変換された末端官能基を有していても、重合中に加えられるモノマーは、上記機構だけでなく以下のXXIIIおよびXXIVでも示されているように、そのイオウ−第三級炭素間の鎖に付加する。これらのs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート化合物のカルボン酸末端基き、他の末端官能基(例えば、エステル、チオエステル、アミド、β−メルカプトエステル、β−ヒドロキシエステルまたはβ−アミノエステル)に変換または変化できる。これらの末端官能基の連鎖移動剤は、以下で示す。
【0113】
ビニルモノマーを使用するとき、本発明のs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートからテレケリックポリマーを形成する反応の例は、以下のとおりである:
【0114】
【化22】

【0115】
もちろん、上で述べたように、繰り返し単位mおよびnは、式Wで一般に示すように、共役ジエンモノマー、または指定したビニルモノマー、またはそれらの組合せのいずれかから誘導できることが理解できるはずである。
【0116】
引き続いて、このs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートの酸基から、他の末端官能基が誘導でき、これは、一般に、次式で表わすことができる:
【0117】
【化23】

【0118】
ここで、Eは、以下で示す。例えば、
【0119】
【化24】

【0120】
【化25】

【0121】
ここで、Eは、XR’であり、すなわち、R’は、別個に、H、C〜C18アルキル(これは、必要に応じて、1個またはそれ以上のハロゲン、ヒドロキシルまたはアルコキシで置換できる)、C〜C18ヒドロキシアルキルおよびC〜C18アミノアルキルを含有し、そしてXは、酸素、イオウ、NHまたはNR’を含有する。
【0122】
以下は、この酸から誘導できる末端官能基のさらに他の例である:
【0123】
【化26】

【0124】
ここで、Eは、
【0125】
【化27】

【0126】
であり、すなわち、ここで、R〜Rは、別個に、H、C〜C18アルキル、アリール基または置換アリール基(これは、その環に、1個〜6個の置換基(例えば、ハロゲン、ヒドロキシまたはアルコキシ)を有する)、C〜C18ヒドロキシアルキル、C〜C18アミノアルキル、C〜C18メルカプトアルキルなどを含有する。Yは、酸素、イオウ、NH、またはNR〜Rを含有できる。
【0127】
これらのs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートの酸基から誘導できるさらに他の官能基のさらに他の例は、以下のとおりである:
【0128】
【化28】

【0129】
ここで、Eは、OR10であり、すなわち、ここで、Zは、脱離基(例えば、ハロゲン化物またはスルホン酸アルキルまたはスルホン酸アリール)を含有できる。R10は、C〜C18アルキルまたは置換アルキル(ここで、該置換基は、ハロゲン、ヒドロキシルまたはアルコキシである)、C〜C18ヒドロキシアルキルまたはC〜C18アミノアルキルなどを含有できる。
【0130】
s,s’−ビス−(2−メチル−2−プロパン酸)−トリチオカーボネートの上で示したメチルエステルの調製は、以下のとおりである:s,s’−ビス−(2−メチル−2−プロパン酸)−トリチオカーボネート(R、R=CH)(2.82g、0.01モル)、炭酸ナトリウム粉末(3.18g、0.03モル)およびジメチルホルムアミド15mLを、ヨウ化メチル(3.41g、0.024モル)のジメチルホルムアミド2ml溶液を10分間にわたって滴下しつつ、窒素下にて、40℃で、攪拌した。その反応物を、40〜50℃で、2時間攪拌し、HO(25mL)に注ぎ、そして全体で200mlのエーテルで3回抽出した。その含エーテル溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、そして濃縮した。その黄色固形物を、ヘキサンから再結晶することにより、さらに精製した。赤外およびH’ NMRにより、上記所望生成物が明らかとなった。
【0131】
既に形成されたテレケリックポリマーの一例(これは、その酸末端基の変換を受けて、ビニルモノマーから製造された)は、以下のとおりである:
【0132】
【化29】

【0133】
ここで、mおよびnは、上で示したとおりである。
【0134】
上記構造(XXXIV)は、エポキシドと本発明のs,s’−ビス−(2−メチル−2−プロパン酸)−トリチオカーボネート(I)(R、R=CH、0.01モル)とを反応させることにより形成し、Epon Resin 828(Resolution Performance Products、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応生成物;ビスフェノールAの80〜85%ジグリシジルエーテル)(70g)およびトリフェニルホスフィン(0.12g)を、窒素下にて、95℃まで加熱した。この反応は、滴定により、そのカルボン酸の消失についてモニターした。この反応は、1.5時間で事実上完結したことが分かった。その生成物の構造は、質量分光法でさらに確認できる。
【0135】
本発明の他の局面は、さらに、以下の化合物を形成することに関する:
【0136】
【化30】

【0137】
【化31】

【0138】
ここで、R11は、ベンジル基、C〜C18アルキル、または置換アルキル(これは、例えば、ハロゲン、ヒドロキシルまたはアルコキシで置換されている)、C〜C18ヒドロキシアルキル、カルボキシルアルキル、またはカルボアルコキシアルキルを含有する。QXは、相移動触媒(例えば、硫酸テトラブチルアンモニウム水素または塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム(Aliquot 336))である。
【0139】
得られた化合物は、s−置換アルキル−s’−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートである。R11は、1個〜18個の炭素原子を有するアルキル、アラルキル、ヒドロキシアルキル、シアノアルキル、アミノアルキル、カルボキシルアルキル、またはカルボアルコキシアルキル、メルカプトアルキルなどである。RおよびRは、本明細書中にて、上で述べたとおりである。
【0140】
イニフェルターまたは連鎖移動剤のいずれかとしてs−置換アルキル−s’−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートを使用するとき、R11がカルボキシアルキルでないなら、このポリマーの1個の末端だけがカルボキシル官能性を有する(すなわち、それは、もはや、テレケリックポリマーではない)。
【0141】
この上では、種々のポリマーが示されているものの、これらのカルボキシ末端ポリマー(例えば、W)またはE末端ポリマーのいずれかは、当該技術分野および文献で公知の1種またはそれ以上のモノマーおよび/または1種またはそれ以上のポリマーと反応でき、種々のブロックポリマー(これらは、同じモノマーまたは2種またはそれ以上の異なるモノマーから誘導される)を得られることが理解できるはずである。例えば、各酸末端基は、過剰のエポキシ化合物(例えば、グリシジルビスフェノールA)と反応され、次いで、引き続いて、追加グリシジルビスフェノールAと重合されて、エポキシポリマーが形成できる。生来、他のブロックポリマーまたはコポリマーは、このカルボン酸末端基または他の末端基(これらは、一般に、この上で、Eと表示されている)と反応できる。
【0142】
(ジチオカーボネート)
(I.ジチオカルバメート)
本発明のさらに他の実施態様は、以下の一般式を有するジチオカーボネート化合物に関する:
【0143】
【化32】

【0144】
ここで、jは、1または2であり、但し、jが1のとき、Tは、−(−NR1516)である;そしてjが2のとき、Tは、2個のチオカルボニル基の各炭素原子に窒素原子が直接結合した二価ラジカルである;ここで、R12およびR13は、別個に、同一または異なり、別個に、同一または異なり、1個〜約6個または約12個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル;または6個〜約18個の炭素原子を有するアリール基であって、該アリール基は、必要に応じて、ヘテロ原子を含有する;ここで、R12および/またはR13置換基は、別個に、1個〜6個の炭素原子を有するアルキル;アリール基;ハロゲン;シアノ基;全体で2個〜約20個の炭素原子を有するエーテル;ニトロ;またはそれらの組合せである。R12およびR13はまた、全体で3個〜約12個の炭素原子を有する置換または非置換環状環の一部を形成でき、ここで、該置換基は、上で記述したとおりである。R12およびR13は、好ましくは、別個に、メチル基またはフェニル基である;ここで、R15およびR16は、別個に、同一または異なり、必要に応じて置換されており、必要に応じて、ヘテロ原子を含有し、そして水素;または1個〜約18個の炭素を有する直鎖または分枝アルキル、6個〜約18個の炭素原子を有するアリール基であって、該アリール基は、必要に応じて、飽和または不飽和である;7個〜約18個の炭素を有するアリールアルキル;3個〜約18個の炭素原子を有するアルケンアルキル;または3個〜約200個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールエーテルから誘導した基である。R15およびR16はまた、アミン(例えば、ピペラジン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、4−アルキルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−アルキルアミノアルキル−3,3.5,5−テトラメチル−2−ピペラジノン、ヘキサメチレンイミン、フェノチアジン、イミノジベンジル、フェノキサジン、N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、ジシクロヘキシルアミンおよびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない)から誘導できる。R15およびR16はまた、全体で4個〜約12個の炭素原子を有する置換または非置換の環状環(これは、必要に応じて、窒素原子と共に、ヘテロ原子を含有する;例えば、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、イミダゾール、2−オキサゾリドン、4,4−ジメチルオキサゾリドンなど)を形成できる。これらのR15およびR16置換基は、別個に、R14に関して本明細書中で記述しているように、同一であり得る。R15およびR16は、好ましくは、別個に、フェニル基またはアルキルまたは置換アルキル(これは、1個〜約18個の炭素原子を有する;例えば、メチル基)であるか、またはR15およびR16は、別個に、ヘキサメチレンである。
【0145】
適用する式全体にわたって、反応スキーム、機構など、および金属(例えば、ナトリウム)または塩基(水酸化ナトリウム)が適用される仕様および本発明の適用は、単にそれらに限定することを意味しないことが理解できるはずである。他の金属または塩基(例えば、カリウムおよび水酸化カリウムがあるが、これらに限定されない)は、それぞれ、本発明の開示により考慮される。
【0146】
jが1のとき、上式のTは、(NR1516−)−であり、このジチオカーボネート化合物は、一般に次式を有するS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカーボネートである:
【0147】
【化33】

【0148】
ここで、R12、R13、R15およびR16は、この上で定義したとおりである。
【0149】
jが2のとき、このジチオカーボネート化合物は、次式を有するビス−S−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカーボネートである:
【0150】
【化34】

【0151】
ここで、R12およびR13は、この上で定義したとおりである;そして、ここで、Tは、存在しているチオカルボニル基の各々に窒素原子を直接結合した二価架橋ラジカルである。
【0152】
1実施態様では、Tは、以下である:
【0153】
【化35】

【0154】
ここで、R17およびR18は、別個に、同一または異なり、必要に応じて置換されており、そして水素、1個〜約18個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、約6個〜約18個の炭素原子を有するアリール基、7個〜約18個の炭素原子を有するアリールアルキル、3個〜約18個の炭素原子を有するアルケンアルキル基であり、ここで、該置換基は、RおよびRについて本明細書中で記述したように、同一であり得る;ここで、R19は、必要に応じて置換されており、存在しないか、または1個〜約18個の炭素原子(1個〜約6個の炭素原子が好ましい)を有するアルキレン基、3個〜約200個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールエーテルから誘導した基であり、ここで、該置換基は、RおよびRについて本明細書中で記述したように、同一であり得、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、イオウまたはリン)である;そして、ここで、R20およびR21は、別個に、同一または異なり、RおよびRについて本明細書中で記述したように、必要に応じて置換され、そして1個〜約4個の炭素原子を有するアルキレンであり、R20およびR21は、好ましくは、全体で、3個〜5個の炭素原子を有する。
【0155】
さらに他の実施態様では、Tは、以下である:
【0156】
【化36】

【0157】
ここで、nは、0〜約18であり、0〜約6が好ましい;
【0158】
【化37】

【0159】
ここで、nは、0〜約18であり、0〜約6が好ましい;
T架橋ラジカルの一部の特定の非限定的な例には、以下がある:
【0160】
【化38】

【0161】
【化39】

【0162】
ここで、n+m=3〜5である;
このS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)またはビスS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカルバメートは、一般に、ジチオカルバメート、ハロホルムおよびケトンの反応生成物である。相移動触媒、溶媒および塩基(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)もまた、このS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)またはビスS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカルバメートを形成するのに、利用できる。
【0163】
ジチオカーボネートの金属塩は、調製されるか、または業者(例えば、Aldrich of Milwaukee,WIまたはAcros of Sommerville,NJ)から購入されるか、いずれかである。ジチオカーボネートの金属塩は、文献で開示されているように、アミン、二硫化炭素および金属水酸化物からその場で製造される。ジチオカーボネートの金属塩の例には、N,N−ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムおよびN,N−ジエチル−ジチオカルバミン酸ナトリウムが挙げられる。
【0164】
このS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)またはビスS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカルバメートは、反応容器にて、好ましくは、不活性雰囲気下で、そのジチオカルバメートを、ハロホルム、ケトン、塩基、必要に応じて、溶媒および触媒と混ぜ合わせることにより、形成される。この塩基は、好ましくは、好ましい温度範囲を維持し副生成物を避けるために、一定時間にわたって、他の成分に加えられる。その反応生成物は、引き続いて、酸性化されて、この反応を完結する。この反応生成物は、固体または液体として単離され、必要に応じて、精製される。
【0165】
この反応の制限剤は、このアミンおよび二硫化炭素、またはジチオカルバメートの金属塩(利用されるとき)である。このハロホルムは、この反応にて、約0モルパーセント〜約500モルパーセント過剰な量で利用され、約50モルパーセント〜約200モルパーセント過剰が好ましい。このケトンは、この反応にて、0モルパーセント〜約3000モルパーセント過剰な量で利用され、約100モルパーセント〜約1000モルパーセント過剰が好ましい。この金属水酸化物は、利用するとき、10モルパーセント〜500モルパーセント過剰な量で存在しており、約60モルパーセント〜150モルパーセント過剰が好ましい。
【0166】
本発明のS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカルバメートの省略した反応式は、一般に、以下のとおりである:
【0167】
【化40】

【0168】
本発明のビスS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカルバメートの省略した反応式は、一般に、以下のとおりである:
【0169】
【化41】

【0170】
この反応は、このS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)またはビスS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカルバメート化合物を所望の時間で生成するために、それらの反応物の反応を開始し完結するのに十分な温度で、実行される。この反応は、その反応塊のほぼ凝固点から溶媒のほぼ還流温度までの広い範囲内の温度で、実行できる。この反応温度は、一般に、約−15℃〜約80℃、望ましくは、約0℃〜約50℃、好ましくは、約15℃〜約35℃であり、約15℃〜約25℃が好ましい。その反応は、室温で実行できる。その反応時間は、いくつかの要因に依存しており、温度は、最も影響がある。この反応は、一般に、20時間以内、好ましくは、約10時間以内に完結する。
【0171】
この反応において任意の溶媒を使用するとき、一般に、触媒(好ましくは、相移動触媒)が利用される。好ましい触媒および溶媒の例は、この上で列挙され、そして援用される。好ましい相移動触媒には、塩化トリカプリルメチルアンモニウム(Aliquot 336)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウムおよび硫酸テトラブチルアンモニウム水素が挙げられる。このS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)またはビスS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカルバメート化合物を形成する反応で利用される触媒および溶媒の量は、一般に、上で示した量と同じであり、ここで援用される。このケトンもまた溶媒であるとき、この触媒は、必要に応じて、そのプロセスから排除される。
【0172】
このジチオカルバメート反応で利用されるケトン、ハロホルム、塩基および酸は、トリチオカーボネート合成で上で列挙したものと同じであり得、ここで援用される。あるいは、トリチオカーボネート合成で上で記述した量で、このハロホルムおよびケトンに代えて、α−トリハロメチル−α−アルカノールが利用できる。
【0173】
このS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカルバメートの形成の反応スキームは、以下のとおりであると考えられている:
CHCl+NaOH → NaCCl+H
【0174】
【化42】

【0175】
ここで、R15およびR16は、上で定義したとおりである。このビスS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカーボネートを形成する反応スキームは、上記反応スキームと類似しており、当業者に明らかである。好ましい実施態様では、上記のような相移動触媒(硫酸テトラブチルアンモニウム水素または塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム(Aliquot 336))が利用される。
【0176】
これらのS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)またはビスS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカルバメート化合物は、上記トリチオカーボネート化合物とほぼ同じ様式で、利用される。すなわち、これらのS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)またはビスS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカルバメート化合物は、種々の実施態様にて、モノマーの重合を開始する開始剤として、新規ラジカル(これは、新規ポリマー鎖を形成する核として、作用できる)を形成することによりポリマー鎖の成長を妨害し停止する相移動触媒として、および/または休眠種としてポリマーに取り込まれる停止剤として、利用される。好ましくは、これらのS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)またはビスS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカルバメート化合物は、リビング特性を有する遊離ラジカル重合における連鎖移動剤として利用され、分子量および多分散度を制御したポリマーが得られる。
【0177】
(ジチオカルバメート(コ)ポリマー)
この目的のために、本発明はまた、以下の一般式を有するジチオカルバメート化合物から誘導されたポリマーまたはコポリマーを形成する方法に関する:
【0178】
【化43】

【0179】
ここで、R12、R13、R15、R16およびTは、この上で定義されており、ここで、このポリマーは、本明細書中で記述したモノマー(例えば、共役ジエンモノマー、またはビニル含有モノマー、またはそれらの組合せがあるが、これらに限定されない)から誘導され、ここで、各ポリマー繰り返し単位は、同一または異なり、ここで、fは、一般に、1〜約10,000、好ましくは、約3〜約5,000である。好ましいポリマーは、アクリル酸アルキル、アクリル酸ビニル、アクリル酸およびスチレンから誘導される。もちろん、fが1のとき、そのポリマーは、単一の反応したモノマー単位であることが理解できるはずである。
【0180】
上記ジチオカルバメートポリマーまたはコポリマーは、本明細書中で記述されているように、この(ポリマー)繰り返し単位を形成するモノマーと、S−(α,α’−二置換−α”−酢酸)またはビスS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカルバメート化合物と、必要に応じて、a)溶媒およびb)ラジカル重合開始剤とを、適当な量で、互いに接触させることにより、調製できる。
【0181】
このS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカーボネート化合物のポリマー形成機構は、以下のとおりであると考えられる:
【0182】
【化44】

【0183】
このビスS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカーボネート化合物の機構は、上で述べた機構と類似しており、当業者に明らかである。
【0184】
上記反応式で図示されているように、これらのモノマーは、その化合物の単結合イオウ原子と第三級炭素原子との間で、そのチオカルボニルチオ結合に隣接したジチオカルバメート化合物に重合される。
【0185】
本発明のジチオカルバメート化合物は、実質的に無色のポリマーを生成するのに使用される。これらのジチオカルバメート化合物のポリマーまたはコポリマーは、その電子供与性アミノ基がチオカルボニル基の求電子性を低くするので、加水分解的に安定である。これらのポリマーはまた、求核試薬(例えば、アミン)に対しても安定である。
【0186】
それらの反応条件は、使用する温度が制御様式でラジカルを発生するように、当業者に知られているように選択され、この温度は、一般に、ほぼ室温〜約200℃である。この反応は、室温より低い温度で実行できるが、そうするのは、実用的ではない。この温度は、しばしば、その反応に対して選択する開始剤に依存しており、例えば、AIBNを使用するとき、この温度は、一般に、約40℃〜約80℃であり、アゾジシアノジ吉草酸を使用するとき、この温度は、約50℃〜約90℃であり、過酸化ジ−t−ブチルを使用するとき、この温度は、一般に、約110℃〜約160℃であり、S−(α,α’−二置換−α”−酢酸)またはビスS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカルバメートを使用するとき、この温度は、一般に、約120℃〜約200℃である。
【0187】
この遊離ラジカル重合により上で述べたようにして調製された低多分散性のポリマーは、例えば、化学変換またはコポリマーを形成するために他のポリマー鎖と結合する反応をさらに受けるモノマーに由来の反応性末端基を含有できる。従って、上で列挙したモノマー(すなわち、共役ジエンまたはビニル含有モノマー)のいずれかは、連鎖移動剤としてS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)またはビスS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカルバメート化合物を利用して、コポリマーを形成するのに利用できる。さらに、1実施態様では、これらのポリマーは、重合中にて、架橋剤を使用して架橋される。適当な架橋剤には、ポリアリルペンタエリスリトール、ポリアリルスクロース、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールトリアクリレート、メチレンビス−アクリルアミドおよびエチレングリコールジアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、これらの置換基は、非反応性であり得る(例えば、アルコキシ、アルキルまたはアリール)。反応性基は、この実験条件下にて連鎖移動剤との好ましくない反応がないように、選択すべきである。
【0188】
本発明のプロセスは、バッチ、半バッチ、連続または給送モードのいずれかで、乳濁液、溶液または懸濁液中にて、実行される。バルク重合(溶媒なし)もまた、伝播が遅いので、達成される。それ以外は、狭い多分散性のポリマーを生成する通常の手順が使用できる。最も低い多分散性のポリマーを得るには、この連鎖移動剤は、重合開始前に加えられる。これらのジチオカルバメートから生成されるポリマーまたはコポリマーの多分散度は、一般に、約3.0未満である。例えば、溶液中のバッチ様式で実行するとき、その反応器には、典型的には、連鎖移動剤およびモノマーまたは媒体+モノマーが充填される。次いで、この混合物に、所望量の開始剤が加えられ、その混合物は、所望の転化率および分子量で決定される時間にわたって、加熱される。広いが制御されていない多分散度を有するポリマーまたは多様な分子量分布を有するポリマーは、その重合プロセスの過程にわたって、この連鎖移動剤を制御して加えることにより、生成できる。
【0189】
乳濁重合または懸濁重合の場合、その媒体は、しばしば、主として、水および通常の安定剤、分散剤であり、しばしば、他の添加剤が存在できる。溶液重合には、その反応媒体は、使用するモノマーに適した広範囲の媒体から選択できる。
【0190】
既に述べたように、給送重合条件を使用すると、低い移動定数の連鎖移動剤を使用することが可能となり、また、バッチ重合プロセスを使用して容易に達成できないブロックポリマーを合成することが可能となる。もし、この重合が給送系で実行されるなら、その反応は、以下のようにして、実行できる。この反応器には、選択した媒体、連鎖移動剤および必要に応じて、モノマーの一部が充填される。残りのモノマーは、別の容器に入れられる。さらに他の別の容器にて、この反応媒体には、開始剤が溶解または懸濁される。このモノマー+媒体および開始剤+媒体が、例えば、注射器ポンプまたは他のポンピング装置により、長時間にわたって導入されている間、この反応器中の媒体は、加熱され攪拌される。給送の速度および持続時間は、大部分は、溶液の量、所望のモノマー/連鎖移動剤/開始剤の割合および重合速度により、決定される。この給送が完了した後、追加期間にわたって、加熱が継続できる。
【0191】
この重合の完結に続いて、このポリマーは、その媒体および未反応モノマーをストリッピングすることにより、または非溶媒で沈殿することにより、単離できる。あるいは、そのポリマー溶液/乳濁液は、もし、その容器に適当であるなら、そのまま使用できる。これらのS−(α,α’−二置換−α”−酢酸)ジチオカルバメート化合物の適用には、トリチオカーボネート化合物に関して上で列挙したもののいずれかが挙げられる。
【0192】
これらのジチオカルバメートポリマーまたはコポリマーの誘導体はまた、存在しているアルコールおよび/またはジオールに由来のエステル化生成物を含めて、形成できる。チオエステルは、メルカプタンを利用して形成でき、そしてアミドは、アミンなどから形成できる。アンモニウム塩は、第一級、第二級および第三級アミンから形成できる。金属塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物、酸化物などから形成できる。
【0193】
本発明は、遊離ラジカル重合の分野で広く適用可能であり、そして被覆(自動車および他の車両用の塗料のクリアコートおよびベースコート仕上げ、または広範囲の基板用の工業用、建築用または保守管理用の仕上げを含めて)用のポリマーおよび組成物を生成するのに使用できる。このような被覆には、さらに、通常の添加剤(例えば、顔料、耐久剤、腐食および酸化防止剤、レオロジー制御剤、金属箔および他の添加剤)を挙げることができる。ブロックポリマー、星形ポリマーおよび分枝ポリマーは、相溶化剤、熱可塑性エラストマー、分散剤またはレオロジー制御剤として、使用できる。本発明のポリマーの追加用途は、画像化、電子機器(例えば、フォトレジスト)、エンジニアリングプラスチック、接着剤、封止剤、紙の被覆および処理、織物の被覆および処理、インクおよび重ね印刷ワニス、および高分子全般の分野である。
【0194】
(II.アルコキシジチオカーボネート)
本発明のさらに他の実施態様は、以下の式を有するアルコキシジチオカーボネート化合物に関する:
【0195】
【化45】

【0196】
ここで、R12およびR13は、この上で定義したとおりである;
ここで、R14は、必要に応じて置換されており、そして1個〜約12個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、必要に応じて飽和または不飽和のアリール基;7個〜約18個の炭素原子を有するアリールアルキル;アシル基;アルケン基;3個〜約18個の炭素原子を有するアルケンアルキル基;アルケン基;アルキレン基;アルコキシアルキル;ポリアルキレングリコールから誘導した基;3個〜200個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルから誘導した基;3個〜200個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールモノアリールエーテルから誘導した基、ポリフルオロアルキル(例えば、2−トリフルオロエチル);リン含有アルキル;またはヘテロ原子を含有する置換または非置換アリールであり得る。1個〜6個の炭素原子を有するアルキル基およびアルキレン基が好ましい;
ここで、これらのR14置換基は、1個〜6個の炭素原子を有するアルキル;アリール;ハロゲン(例えば、フッ素または塩素);シアノ基;アミノ基;アルケン基;アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;カルボキシ基;アシルオキシ基;カルバモイル基;アルキルカルボニル基;アルキルアリールカルボニル基;アリールカルボニル基;アリールアルキルカルボニル基;フタルイミド基;マレイミド基;スクシンイミド基;アミジノ基;グアジモ(guanidimo)基;アリル基;エポキシ基;アルコキシ基;アルカリ金属塩;カチオン性置換基(例えば、四級アンモニウム塩);ヒドロキシル基;全体で2個〜約20個の炭素原子を有するエーテル(例えば、メトキシまたはヘキサノキシ);ニトロ;イオウ;リン;カルボアルコキシ基;1個またはそれ以上のイオウ原子、酸素原子または窒素原子を含有する複素環基、またはそれらの組合せを含有する;ここで、「a」は、1〜約4であり、1または2が好ましい。
【0197】
上式の化合物は、一般に、O−アルキル−S−(α,α’−二置換−α”−酢酸)キサンテートとして同定されている。このO−アルキル−S−(α,α’−二置換−α”−酢酸)キサンテートは、アルコキシレート塩、二硫化炭素、ハロホルムおよびケトンの反応生成物として、生成される。あるいは、このアルコキシレート塩および二硫化炭素に代えて、キサンテートの金属塩が利用できる。
【0198】
このアルコキシレート塩または二硫化炭素、あるいは、キサンテートの金属塩は、典型的には、この反応の制限剤である。このハロホルムは、この反応にて、一般に、約0モルパーセント〜約500モルパーセント過剰な量、好ましくは、約50モルパーセント〜約200モルパーセント過剰な量で利用される。このケトンは、この反応にて、一般に、0モルパーセント〜約3000モルパーセント過剰な量、好ましくは、約100モルパーセント〜約1000モルパーセント過剰な量で利用される。この金属水酸化物は、利用するとき、10モルパーセント〜500モルパーセント過剰な量で存在しており、約60モルパーセント〜150モルパーセント過剰が好ましい。
【0199】
このO−アルキル−S−(α,α’−二置換−α”−酢酸)キサンテートを形成する一般的な反応機構は、以下のとおりである:
【0200】
【化46】

【0201】
このO−アルキル−S−(α,α’−二置換−α”−酢酸)キサンテートの調製は、キサンテート(すなわち、キサントゲン酸の塩)を反応容器(これは、好ましくは、かき混ぜ装置、温度計、滴下漏斗および冷却器を備え付けている)に加えることで開始する。このキサンテートは、当該技術分野で公知のアルコキシレート塩および二硫化炭素から調製できる。
【0202】
例えば、O−エチルキサンテートのナトリウム塩(CHCHOC(S)S−Na)は、溶媒(例えば、アセトン)および必要に応じて触媒(例えば、Aliquot 336、または本明細書中で述べたまたは当該技術分野で公知の他の触媒)の存在下で、反応容器にて、好ましくは、約0℃〜約25℃で、ナトリウムエトキシドから調製できる。その一般的な反応は、以下のとおりである:
【0203】
【化47】

【0204】
O−エチルキサンテートの金属塩はまた、業者(例えば、Aldrich Chemical of Milwaukee,WI)から市販されている。
【0205】
さらに他の工程では、このキサンテート金属塩を含有する反応容器に、ケトン、ハロホルム、必要に応じて、溶媒、および触媒(全て、この上で記述されている)が加えられる。このケトンが溶媒であるとき、この触媒は、必要に応じて、そのプロセスから排除される。この混合物には、好ましくは、長時間にわたって、この上で述べたような強塩基が加えられる。これらの反応成分は、好ましくは、その反応全体にわたって、混合される。その反応生成物は、引き続いて、この上で述べたような酸で酸性化され、この反応が完結し、このO−アルキル−S−(α,α’−二置換−α”−酢酸)キサンテートを形成する。この反応は、一般に、約0℃〜約80℃、好ましくは、約15℃〜約50℃の温度で行われ、室温が好ましい。この反応は、不活性雰囲気下にて、大気圧で、実行できる。その反応時間は、一般に、温度に依存しており、一般に、20時間以内、好ましくは、10時間以内に完結する。トリチオカーボネート化合物に関して上で述べたように、ハロホルムおよびケトンに代えて、α−トリハロメチル−α−アルカノールが利用できる。
【0206】
このO−アルキル−S−(α,α’−二置換−α”−酢酸)キサンテートは、モノマーの重合を開始する開始剤として、新規ラジカル(これは、新規ポリマー鎖を形成する核として、作用できる)を形成することによりポリマー鎖の成長を妨害し停止する相移動触媒として、および/または休眠種としてポリマーに取り込まれる停止剤として、利用される。好ましくは、これらのO−アルキル−S−(α,α’−二置換−α”−酢酸)キサンテートは、リビング特性を有する遊離ラジカル重合における連鎖移動剤として利用され、分子量および多分散度を制御したポリマーが得られる。
【0207】
(キサンテート(コ)ポリマー)
このO−アルキル−S−(α,α’−二置換−α”−酢酸)キサンテートから、次式のポリマーまたはコポリマーが調製できる:
【0208】
【化48】

【0209】
ここで、R12、R13およびR14は、この上で定義したとおりであり、ここで、このポリマーは、この上で定義され援用されているように、共役ジエンモノマーまたはビニル含有モノマーまたはそれらの組合せから誘導され、ここで、各g繰り返し単位は、別個に、同一または異なり、一般に、1〜約10,000、好ましくは、約5〜約500である。好ましいモノマーには、アクリレート、アクリル酸およびスチレンがある。もちろん、gが1のとき、このポリマーは、単独で反応したモノマー単位であることが理解できるはずである。
【0210】
上記ポリマーまたはコポリマーは、この上で記述されているように、O−アルキル−S−(α,α’−二置換−α”−酢酸)キサンテートを形成するモノマーと、必要に応じて、a)溶媒およびb)ラジカル重合開始剤とを、適当な量で、互いに接触させることにより、調製できる。
【0211】
その機構は、以下のとおりであると考えられる:
【0212】
【化49】

【0213】
上記機構で図示されているように、これらのモノマーは、その化合物の単結合イオウ原子と第三級炭素原子との間で、そのチオカルボニルチオ結合に隣接したキサンテート化合物に重合される。
【0214】
本発明のO−アルキルジチオカーボネート化合物は、実質的に無色のポリマーを生成するのに使用される。これらのO−アルキルジチオカーボネート化合物のポリマーまたはコポリマーは、その電子供与性アミノ基がチオカルボニル基の求電子性を低くするので、加水分解的に安定であり、これらのポリマーはまた、求核試薬(例えば、アミン)に対しても安定である。
【0215】
それらの反応条件は、使用する温度が制御様式でラジカルを発生するように、当業者に知られているように選択され、ここで、この温度は、一般に、ほぼ室温〜約200℃である。この反応は、室温より低い温度で実行できるが、そうするのは、実用的ではない。この温度は、しばしば、その反応に対して選択する開始剤に依存しており、例えば、AIBNを使用するとき、この温度は、一般に、約40℃〜約80℃であり、アゾジシアノジ吉草酸を使用するとき、この温度は、約50℃〜約90℃であり、過酸化ジ−t−ブチルを使用するとき、この温度は、一般に、約110℃〜約160℃であり、O−アルキル−S−(α,α’−二置換−α”−酢酸)キサンテートを使用するとき、この温度は、一般に、約80℃〜約200℃である。
【0216】
ジチオカルバメート化合物に関して上で述べたように、このO−アルキル−S−(α,α’−二置換−α”−酢酸)キサンテートから調製されたポリマーまたはコポリマーは、他のポリマー鎖と結合するために、例えば、伸長したコポリマーを形成するために、化学変換または反応をさらに受けることができる反応性末端基を含有する。本発明のプロセスは、バッチ、半バッチ、連続または給送モードのいずれかで、乳濁液、溶液または懸濁液中にて、実行される。狭い多分散性のポリマーを生成する通常の手順が使用できる。最も低い多分散性のポリマーを得るには、この連鎖移動剤は、重合開始前に加えられる。これらのキサンテートポリマーまたはコポリマーの多分散度は、一般に、約3.0未満である。例えば、溶液中のバッチ様式で実行するとき、その反応器には、典型的には、連鎖移動剤およびモノマーまたは媒体+モノマーが充填される。次いで、この混合物に、所望量の開始剤が加えられ、その混合物は、所望の転化率および分子量で決定される時間にわたって、加熱される。広いが制御されていない多分散度を有するポリマーまたは多様な分子量分布を有するポリマーは、その重合プロセスの過程にわたって、この連鎖移動剤を制御して加えることにより、生成できる。
【0217】
乳濁重合または懸濁重合の場合、その媒体は、しばしば、主として、水および通常の安定剤、分散剤であり、しばしば、他の添加剤が存在できる。溶液重合には、その反応媒体は、使用するモノマーに適した広範囲の媒体から選択できる。
【0218】
既に述べたように、給送重合条件を使用すると、低い移動定数の連鎖移動剤を使用することが可能となり、また、バッチ重合プロセスを使用して容易に達成できないブロックポリマーを合成することが可能となる。もし、この重合が給送系で実行されるなら、その反応は、以下のようにして、実行できる。この反応器には、選択した媒体、連鎖移動剤および必要に応じて、モノマーの一部が充填される。残りのモノマーは、別の容器に入れられる。他の別の容器にて、この反応媒体には、開始剤が溶解または懸濁される。このモノマー+媒体および開始剤+媒体が、例えば、注射器ポンプまたは他のポンピング装置により、長時間にわたって導入されている間、この反応器中の媒体は、加熱され攪拌される。給送の速度および持続時間は、大部分は、溶液の量、所望のモノマー/連鎖移動剤/開始剤の割合および重合速度により、決定される。この給送が完了した後、追加期間にわたって、加熱が継続できる。
【0219】
この重合の完結に続いて、このポリマーは、その媒体および未反応モノマーをストリッピングすることにより、または非溶媒で沈殿することにより、単離できる。あるいは、そのポリマー溶液/乳濁液は、もし、その容器に適当であるなら、そのまま使用できる。これらのO−アルキル−S−(α,α’−二置換−α”−酢酸)キサンテートジチオカーボネート化合物の適用には、トリチオカーボネートおよびジチオカーボネート化合物に関して上で列挙したもののいずれかが挙げられる。
【0220】
本発明のジチオカーボネート化合物は、遊離ラジカル重合の分野で広く適用可能であり、増粘剤として、また、被覆(自動車および他の車両用の塗料のクリアコートおよびベースコート仕上げ、または広範囲の基板用の工業用、建築用または保守管理用の仕上げを含めて)用のポリマーおよび組成物を生成するのに使用できる。このような被覆には、さらに、顔料、耐久剤、腐食および酸化防止剤、レオロジー制御剤、金属箔および他の添加剤を挙げることができる。ブロックポリマーおよび星形ポリマーおよび分枝ポリマーは、相溶化剤、熱可塑性エラストマー、分散剤またはレオロジー制御剤として、使用できる。本発明のポリマーの追加用途は、画像化、電子機器(例えば、フォトレジスト)、エンジニアリングプラスチック、接着剤、封止剤、紙の被覆および処理、織物の被覆および処理、インクおよび重ね印刷ワニス、および高分子全般などの分野において、複合材料、ポッティング樹脂、発泡体、積層体である。
【0221】
本発明は、以下の実施例(これらは、本発明を限定するのではなく、本発明を説明するのに役立つ)を参照して、さらによく理解できる。
【実施例】
【0222】
(実施例1)
(s,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート(R=R=CH)の合成)
【0223】
【化50】

【0224】
手順:
500mlジャケット付きフラスコ(これには、機械攪拌機、温度計、還流冷却器および滴下漏斗が備え付けられている)に、二硫化炭素22.9グラム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム2.0グラムおよびトルエン100mLを加えた。その溶液を、20℃で、窒素下にて攪拌し、そして50%水酸化ナトリウム溶液168グラムを加えて、その温度を20℃と30℃の間で維持した。この添加後、20〜30℃で、アセトン43.6グラムおよびクロロホルム89.6グラムを加えた。次いで、その反応物を、15〜20℃で、一晩攪拌した。その混合物に水500mlを加え、層分離した。その有機層を捨て、その水層を濃HClで酸性化して、黄色固形物として、生成物を得た。トルエン50mlを加えて、この混合物と共に攪拌した。その固形物をトルエンで濾過しリンスして、一定重量になるまで空気乾燥した後、22.5グラムの生成物を集めた。
【0225】
(実施例2)
(s,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネート(R=R=CH)の合成)
【0226】
【化51】

【0227】
この手順は、溶媒としてトルエンをミネラルスピリッツで置き換えたこと以外は、実施例1とほぼ同じであった。黄色固形物として、生成物40.3グラムを得た。
【0228】
(実施例3)
(s−アルキル−s’−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートの合成)
【0229】
【化52】

【0230】
手順:ドデシルメルカプタン(0.1モル)およびAliquot 336(0.004モル)をアセトン48gに溶解した。50%水酸化ナトリウム溶液(0.105モル)を加え、続いて、アセトン溶液10g中の二硫化炭素(0〜1モル)を滴下した。その媒体は、無色から黄色に変わった。20分後、クロロホルム(0.15モル)を加え、続いて、50%NaOH(0.5モル)およびNaOHビーズ(5g)を滴下した。そのrxnを、15〜20℃で、一晩攪拌し、濾過し、そのゾルをアセトンでリンスした。そのアセトン層を乾燥状態まで濃縮した。その塊を水に溶解し、濃HClで酸性化し、その生成物を沈殿し、水でリンスして、黄色固形物を集めた。この固形物をヘキサン350mLに溶解した。その溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、そして濾過した。この有機溶液を冷却して、黄色薄片として、この生成物を沈殿させた。収率85%。
【0231】
(実施例4)
(従来技術の化合物の重合)
【0232】
【化53】

【0233】
手順:
ジベンジルトリチオカーボネート(1.54g、5.3mmole)、アクリル酸2−エチルヘキシル(25グラム、135.7mmole)、AIBN(0.05g、0.3mmole)およびアセトン(25ml)を混合した。その転化率を計算するGC内部標準として、ウンデカン1mLを加えた。その溶液を、窒素で、15分間パージした後、窒素下にて、52℃まで加熱した。この反応の初めから終わりまで、発熱は検出されなかった。この重合の過程において、その試料のアリコートをGCおよびGPAにかけた。以下の表では、7時間にわたる重合の進行を示した。
【0234】
【化54】

【0235】
(実施例5)
(s,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートの重合)
【0236】
【化55】

【0237】
手順:実施例4と同じ手順に従って、新規トリカーボネート(1.50g、5.3mmole)、アクリル酸2−エチルヘキシル(25g、135.7mmole)、AIBN(0.05g、0.3mmole)およびアセトン(25ml)を混合した。内部標準として、ウンデカン1mLを加えた。その反応物を、52℃で、7時間攪拌した。以下の表では、得られたポリマーの転化率および分子量を示した。
【0238】
【化56】

【0239】
(実施例6)
(s,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートの重合)
【0240】
【化57】

【0241】
手順:これは、このトリチオカーボネートを連鎖移動剤として使用するバルク重合である。このトリチオカーボネート(1.0g、3.5mmole)、アクリル酸2−エチルヘキシル(25g、135.7mmole)、AIBN(0.05g、0.3mmole)およびウンデカン(内部標準)1mLを窒素でパージし、次いで、3時間にわたって、60℃まで加熱した。以下の表では、このポリマーの転化率および分子量を示した。
【0242】
【化58】

【0243】
(実施例7)
(s,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートの重合)
【0244】
【化59】

【0245】
手順:
このトリチオカーボネートは、イニフェルターとして、使用した。トリチオカーボネート(1.0g、3.5mmole)、アクリル酸n−ブチル(20g、156.1mmole)を、内部標準としてのデカン1mLと共に、15分間にわたって、窒素でパージし、次いで、130℃で、窒素下にて、6時間重合した。以下の表では、このポリマーの転化率および分子量を示した。
【0246】
【化60】

【0247】
(実施例8)
(イニフェルターとしてのs,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートを利用する遊離ラジカル重合)
【0248】
【化61】

【0249】
手順:このトリチオカーボネート(2.0g、7.1mmole)およびアクリル酸2−エチルヘキシル(25.0g、135.7mmole)を、15分間にわたって、窒素でパージし、次いで、10時間にわたって、175℃まで加熱した。以下の表では、このポリマーの転化率および分子量を示した。
【0250】
【化62】

【0251】
(実施例9)
(s,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートの重合)
【0252】
【化63】

【0253】
手順:
このトリチオカーボネートは、ポリスチレンを製造するためのイニフェルターとして、使用した。このトリチオカーボネート(2.0g、7.1mmole)およびスチレン(25g、240.4mmole)を、内部標準としてのデカン1mLと共に、140℃で、窒素下にて、6時間重合した。以下の表では、この重合の進行を示した。
【0254】
【化64】

【0255】
(実施例10)
(s,s’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカーボネートの重合)
【0256】
【化65】

【0257】
手順:
このトリチオカーボネートは、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびスチレンのブロックコポリマーを製造する連鎖移動剤として、使用した。このトリチオカーボネート(1.5g、5.3mmole)、アクリル酸2−エチルヘキシル(30g、162.8mmole)およびAIBN(0.03g、0.18mmole)を、内部標準としてのウンデカン1mLと共に、60℃で、窒素下にて重合した後、スチレン(15g、144.2mmole)およびAIBN(0.03g、0.18mmole)を加えた。この重合を継続したが、以下は、その進行を示す。
【0258】
【化66】

【0259】
*スチレンを加えた
(実施例11)
(実施例3から得たトリチオカーボネートとの重合)
このトリチオカーボネート(1.82g.5mmole)、アクリル酸n−ブチル(25g、195.1mmole)およびAIBN(0.04g、0.25mmole)を、内部標準としてのウンデカン1mLと共に、窒素雰囲気下にて、7時間重合した。それは、以下の表で描写するように、GCにより、97.5%の転化率を示した:
【0260】
【化67】

【0261】
(実施例12)
【0262】
【化68】

【0263】
手順:
300mLのジャケット付きフラスコ(これには、機械攪拌機、温度計、滴下漏斗および窒素入口チューブ(挿入用)を備え付けている)に、O−エチルキサントゲン酸カリウム16.3グラム、クロロホルム17.9グラム、硫酸テトラブチルアンモニウム水素1.36グラムおよびシクロヘキサノン88.1グラムを入れ、そして15〜20℃の間まで冷却した。水酸化ナトリウムビーズ40グラムを一度に加えて、その温度を20℃未満に保持した。この添加後、この反応物を、約20℃で、12時間攪拌した。水100mLを加え、それらの水層を濃塩酸で酸性化した。トルエン100mlを加えて、その生成物を抽出した。このトルエン溶液を硫酸マグネシウムで乾燥した後、それを濾過し、そして濃縮して、20グラムの黄色固形物を得、これを、ヘキサンから再結晶することにより、さらに精製した。
【0264】
(実施例13)
【0265】
【化69】

【0266】
本実施例では、O−エチルキサントゲン酸ナトリウムをその場で形成した。実施例12で上記の装置を備え付けた反応容器にて、二硫化炭素7.6グラム、硫酸テトラブチルアンモニウム水素1グラムおよびアセトン58.1グラムを攪拌した。ナトリウムエトキシド(96%、Aldrich)7.1グラム、室温で、一度に加えた。この添加の30分後、クロロホルム17.9グラムを加え、続いて、水酸化ナトリウムビーズ20グラムを一度に加えて、その温度を25℃未満に保持した。15℃で、12時間攪拌した。その混合物を濾過し、そしてアセトンで十分にリンスした。このアセトン溶液を濃縮し、そして水に溶解した。濃HCl(20ml)を加えた。形成されたオイルを、トルエンの2つの50ml部分に抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、そしてオイルに濃縮した。このオイルを、沸騰ヘキサンの2つの50ml部分で抽出した。この溶液から、ベージュ色固形物を生成した。
【0267】
(実施例14)
(S−(メチル,メチル,酢酸)ジチオカーボネートの合成)
【0268】
【化70】

【0269】
手順:
N,N−ジフェニルジチオカルバミン酸ナトリウム10.7グラム、クロロホルム7.2グラム、アセトン4.6グラム、Aliquot 336(0.8グラム)およびトルエン50mLを、15〜20℃で、窒素下にて、攪拌し、その間、50%水酸化ナトリウム16グラムを滴下して、その反応温度を20℃未満に保持した。水を加えて、その固形物を溶解した、層分離し、その水層を濃塩酸で酸性化した。この固形物を水で洗浄し、そしてトルエンから再結晶して、淡黄色固形物を得た。
【0270】
(実施例15)
【0271】
【化71】

【0272】
手順:
N,N−ジフェニルジチオカルバミン酸ナトリウムをN,N−ヘキサメチレンジチオカルバミン酸ナトリウムで置き換え、この反応を、実施例14で説明したようにして、行った。その生成物は、白色固形物であった。
【0273】
(実施例16)
【0274】
【化72】

【0275】
手順:
本実施例で利用したジチオカルバミン酸ナトリウムは、モルホリノジチオカルバミン酸ナトリウムであった。この反応を、実施例14で説明したようにして、行った。白色粉末として、良好な収率で、生成物を得た。
【0276】
(実施例17)
【0277】
【化73】

【0278】
手順:
本実施例で利用したジチオカルバミン酸ナトリウムは、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムであった。この反応を、実施例14で説明したようにして行い、そしてアセトンをシクロヘキサノンで置き換えた。白色粉末として、良好な収率で、生成物を得た。
【0279】
(実施例18)
【0280】
【化74】

【0281】
手順:
本実施例では、N,N−ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウムを利用した。この反応を、実施例14で記述したようにして、行った。白色粉末として、生成物を単離した。
【0282】
(実施例19)
【0283】
【化75】

【0284】
手順:
本実施例では、N,N−ジイソブチルジチオカルバミン酸ナトリウムを利用した。この反応を、実施例14で記述したようにして、行った。黄色粉末として、生成物を単離した。
【0285】
(実施例20)
【0286】
【化76】

【0287】
手順:
本実施例では、N,N−ヘキサメチレンジチオカルバメート2−ブタノンを利用した。この反応を、実施例14で説明したようにして行い、そしてアセトンで置き換えた。ヘキサン/トルエンから再結晶した後、白色粉末として、良好な収率で、生成物を得た。
【0288】
(実施例21)
【0289】
【化77】

【0290】
手順:
このピペラジンビス−(ジチオカルバミン酸)のS,S’−二ナトリウム塩14.1グラム、2−ブタノン100ml、クロロホルム17.9グラムおよび塩化ベンジルトリエチルアンモニウム1.13グラムを混合し、そして15〜20℃で、窒素雰囲気下にて、攪拌した。50%水酸化ナトリウム溶液40グラムを一度に加えて、その反応温度を20℃未満に保持した。この添加後、その反応物を、20℃で、12時間攪拌した。この混合物を濾過し、その固形物を2−ブタノンでリンスし、次いで、水100mlで攪拌した。水が酸性になるまで、濃HClを加えた。この固形物を集め、そして水でリンスして、灰白色粉末を得た。この粉末をメタノールで結晶化して、白色粉末を得た。
【0291】
(実施例22)
【0292】
【化78】

【0293】
実施例21の上記手順と同様に、ピペラジンビス−(ジチオカルバミン酸)の二ナトリウム塩をジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムで置き換え、そして2−ブタノンをアセトンで置き換えた。白色粉末として、高収率で、所望生成物を得た。
【0294】
(実施例23)
【0295】
【化79】

【0296】
実施例21の手順を利用して、ピペラジンビス−(ジチオカルバミン酸)の二ナトリウム塩をジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムで置き換え、そしてBTEACを硫酸テトラブチルアンモニウム水素で置き換え。白色粉末として、所望生成物を得た。
【0297】
(実施例24)
【0298】
【化80】

【0299】
この反応は、そのジチオカルバメート塩がN−フェニル−N−1−ナフチルジチオカルバミン酸塩でありケトンがアセトンであること以外は、実施例21と同様にして、実行した。トルエンおよびヘプタンの混合物から再結晶した後、ベージュ色粉末として、生成物を得た。
【0300】
(実施例25)
【0301】
【化81】

【0302】
この反応は、2−ブタノンを2−ペンタノンで置き換えたこと以外は、実施例21と類似の様式で、実行し、ヘキサンから再結晶した後、白色粉末として、生成物を得た。
【0303】
(実施例26)
【0304】
【化82】

【0305】
手順:
ジエチルアミン7.38グラムおよびアセトン80mLおよびAliquot 336(2.0グラム)を混合し、そして窒素雰囲気下にて、15℃で、攪拌した。アセトン20mL中の二硫化炭素7.6グラムを滴下して、その温度を20℃未満に保持した。この添加の30分後、50%水酸化ナトリウム8.8グラムを加えた。30分後、クロロホルム17.9グラムを加え、続いて、50%水酸化ナトリウム31.2グラムを加えた。この反応物を、15〜20℃で、12時間攪拌した。その混合物を濃縮し、次いで、水に溶解した。濃HCl(15ml)を加えて、ベージュ色固形物を沈殿し、これを、水(20グラム)で十分に洗浄した。トルエンから再結晶すると、白色固形物が得られた。
【0306】
(実施例27)
【0307】
【化83】

【0308】
手順:
実施例26の手順のジエチルアミンをヘキサメチレンイミンで置き換え、そしてアセトンをイソブチルケトンで置き換えた。その生成物をヘキサン/トルエンから再結晶して、白色粉末を得た。
【0309】
(実施例28)
【0310】
【化84】

【0311】
実施例26の手順のジエチルアミンをジアリルアミンで置き換え、そしてAliquot 336をBTEACで置き換えた。その生成物は、ヘキサン/トルエンから再結晶した後、白色結晶性固形物であった。
【0312】
(実施例29)
【0313】
【化85】

【0314】
実施例26の手順のジエチルアミンをジメチルアミン(水中で40%)で置き換えた。その生成物は、トルエンから再結晶した後、白色結晶であった。
【0315】
(実施例30)
【0316】
【化86】

【0317】
実施例27の手順のアセトンを2−ブタノンで置き換えた。その生成物は、トルエンから再結晶した後、白色固形物であった。
【0318】
(実施例31)
【0319】
【化87】

【0320】
実施例26の手順のアセトンをシクロヘキサノンで置き換えた。その生成物は、トルエンから再結晶した後、白色固形物であった。
【0321】
(実施例32)
【0322】
【化88】

【0323】
本実施例では、N−フェニル−N−4−アニリノフェニルジチオカルバミン酸ナトリウム22.8グラム、クロロホルム17.9グラムおよびアセトン100mLを混合し、そして15℃で、窒素下にて、攪拌した。50%水酸化ナトリウム40グラムを滴下して、その温度で20℃未満に保持した。この反応物を、15℃で、一晩(約12時間)攪拌した。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、その残留物を水に溶解した。その水溶液を濃塩酸で酸性化して、緑色固形物を集めた。乾燥した固形物をトルエンから結晶化して、灰色がかった固形物を得た。その構造をH−NMRで確認した。
【0324】
(実施例33)
(新規ジチオカーボネート誘導体を使った制御ラジカル重合)
100%の転化率と想定して、式XII(a)から、各ポリマーまたはコポリマーの理論数平均分子量(Mn)theoを算出した。
【0325】
(Mn)exは、重合生成物からGPCで測定したMnである。バルク重合では、モノマー20〜25グラム、開始剤0.01〜0.05グラム(例えば、AIBN)および所望のMn(これは、式XII(a)を使用して算出した)を得るのに必要な量のジチオカーボネートを窒素ガスでパージし、次いで、徐々に加熱する。時には、その温度を83℃未満に保持するために、空気または水冷却が必要である。得られたポリマーをMALDI質量スペクトル測定にかけた。そのスペクトルは、明らかに、各ポリマー鎖中のカルボキシル停止基を示していた。
【0326】
第一ポリマーをバルクにすることにより、ブロック共重合を実行し、次いで、第二ポリマーおよび同量の開始剤を加え、次いで、同様に重合した。もし、両方のモノマーを同時に加えたとしたら、ランダム共重合が実行できた。
【0327】
この重合およびブロック重合の結果は、以下の表に列挙する。
【0328】
【化89】

【0329】
特許法に従って、最良の形態および好ましい実施態様が示されているものの、本発明の範囲は、それらには限定されず、むしろ、添付の請求の範囲の範囲で限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式を有する化合物を含有する、ジチオカーボネート組成物:
【化1A−1】


ここで、R12およびR13は、別個に、同一または異なり、1個〜約12個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキルである;または6個〜約18個の炭素原子を有するアリール基であり、該アリール基は、必要に応じて、ヘテロ原子を含有する;またはR12およびR13は、3個〜約12個の炭素原子を有する置換または非置換環状環の一部を形成するか一部である;
ここで、R14は、必要に応じて置換されており、そして1個〜約12個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、必要に応じて飽和または不飽和のアリール基;約7個〜約18個の炭素原子を有するアリールアルキル;アシル基;アルケン基;3個〜約18個の炭素原子を有するアルケンアルキル基;アルキレン基;アルコキシアルキル;ポリアルキレングリコールから誘導した基;約3個〜約200個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルから誘導した基;約3個〜約200個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールモノアリールエーテルから誘導した基、ポリフルオロアルキル;リン含有アルキル;またはヘテロ原子を含有する置換または非置換アリール環である;
ここで、「a」は、1〜約4である;
ここで、jは、1または2である;
但し、jが1のとき、Tは、−(−NR1516)であり、そしてjが2のとき、Tは、2個のチオカルボニル基の各炭素原子に窒素原子が直接結合した二価ラジカルである;そして
ここで、R15およびR16は、別個に、同一または異なり、必要に応じて置換されており、必要に応じて、ヘテロ原子を含有し、そして水素;または1個〜約18個の炭素を有する直鎖または分枝アルキル;またはアリール基または6個〜約18個の炭素原子を有するアリールアルキル基であって、該アリールアルキル基は、必要に応じて、飽和または不飽和である;または7個〜約18個の炭素を有するアリールアルキル;または3個〜約18個の炭素原子を有するアルケンアルキル;またはポリアルキレングリコールエーテルから誘導した基;またはアミンから誘導した基である;またはR15およびR16は、窒素原子を備えた置換または非置換環状環の形態であり、該環状環は、全体で、4個〜約12個の炭素原子を有する、
組成物。
【請求項2】
12およびR13が、別個に、フェニル基、または1個〜約10個の炭素原子を有するアルキル基であり、ここで、R12およびR13が、前記環状環の一部である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
14が、1個〜約8個の炭素原子を有するアルキルであり、jが、1であり、そしてR15およびR16が、別個に、フェニル基、または1個〜約10個の炭素原子を有するアルキル基、またはヘキサメチレンであり、ここで、R15およびR16が、前記環状環の一部である、前出の請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記「a」が、1または2であり、R14が、1個〜約4個の炭素原子を有するアルキルであり、R12およびR13が、別個に、1個〜約4個の炭素原子を有するアルキルであるか、またはR12およびR13が、前記環状環の一部である、前出の請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記「a」が、2であり、R12およびR13が、別個に、フェニル基、または1個〜約10個の炭素原子を有するアルキル基であるか、またはR12およびR13が、環状環の一部であり、R14が、1個〜約8個の炭素原子を有するアルキルであり、jが、2であり、そしてTが、以下である、請求項1に記載の組成物:
【化1A−2】


ここで、R17およびR18は、別個に、同一または異なり、必要に応じて置換されており、そして水素;1個〜約18個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル;または約6個〜約18個の炭素原子を有するアリール基;または7個〜約18個の炭素原子を有するアリールアルキル;または3個〜約18個の炭素原子を有するアルケンアルキル基である;
ここで、R19は、必要に応じて置換されているか、または存在しない;または1個〜約18個の炭素原子を有するアルキレン基;または3個〜約200個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールエーテルから誘導した基である;ここで、R20およびR21は、別個に、同一または異なり、必要に応じて置換され、そして1個〜約4個の炭素原子を有するアルキレン基である、
組成物。
【請求項6】
前記「a」が、2であり、jが、2であり、そしてTが、以下である、請求項1に記載の組成物:
【化1A−3】


ここで、nは、0〜約18であり、ここで、R12およびR13は、別個に、フェニル基、1個〜約10個の炭素原子を有するまたはアルキル基であるか、またはR12およびR13は、3個〜約12個の炭素原子を有する環状環の一部である、
組成物。
【請求項7】
次式を有するポリマーまたはコポリマーを含有する、組成物:
【化1A−4】


ここで、R12およびR13は、別個に、同一または異なり得、1個〜約12個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキルであり得る;または6個〜約18個の炭素原子を有するアリール基であり、該アリール基は、必要に応じて、ヘテロ原子を含有する;またはR12およびR13は、3個〜約12個の炭素原子を有する置換または非置換環状環の一部を形成できるか一部であり得る;
ここで、R14は、必要に応じて置換されており、そして1個〜約12個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、必要に応じて飽和または不飽和のアリール基;約7個〜約18個の炭素原子を有するアリールアルキル;アシル基;アルケン基;3個〜約18個の炭素原子を有するアルケンアルキル基;アルキレン基;アルコキシアルキル;ポリアルキレングリコールから誘導した基;約3個〜約200個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルから誘導した基;約3個〜約200個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールモノアリールエーテルから誘導した基、ポリフルオロアルキル;リン含有アルキル;またはヘテロ原子を含有する置換または非置換アリール環であり得る;
ここで、R15およびR16は、別個に、同一または異なり、必要に応じて置換されており、必要に応じて、ヘテロ原子を含有し、そして水素;または1個〜約18個の炭素を有する直鎖または分枝アルキル;または6個〜約18個の炭素原子を有するアリール基であって、該アリール基は、必要に応じて、飽和または不飽和である;または7個〜約18個の炭素を有するアリールアルキル;または3個〜約18個の炭素原子を有するアルケンアルキル;またはポリアルキレングリコールエーテルから誘導した基;またはアミンから誘導した基である;またはR15およびR16は、窒素原子を備えた置換または非置換環状環の形態であり、該環状環は、全体で、4個〜約12個の炭素原子を有する;
Tは、2個のチオカルボニル基の各炭素原子に窒素原子が直接結合した二価ラジカルである;
ここで、該ポリマー繰り返し単位は、少なくとも1種の共役ジエンモノマー、またはビニル含有モノマー、またはそれらの組合せから誘導されるが、但し、各繰り返し単位は、同一または異なり得る;そして
ここで、該繰り返し単位の数fは、別個に、1個〜約10,000個である;
ここで、該gは、約1〜約10,000である;そして
ここで、該「a」は、1〜約4である、
組成物。
【請求項8】
12およびR13が、別個に、フェニル基、または1個〜約10個の炭素原子を有するアルキル基であり、またはR12およびR13が、3個〜約12個の炭素原子を有する環状環の一部であり、そしてR15およびR16が、別個に、フェニル基、または1個〜約10個の炭素原子を有するアルキル基、またはヘキサメチレンであるか、またはR15およびR16が、3個〜約12個の炭素原子を有する環状環の一部である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
12およびR13が、別個に、フェニル基、または1個〜約8個の炭素原子を有するアルキル基であるか、またはR12およびR13が、3個〜約12個の炭素原子を有する環状環の一部であり、そしてTが、以下である、請求項7または8のいずれかに記載の組成物:
【化1A−5】


ここで、R17およびR18は、別個に、同一または異なり、必要に応じて置換されており、そして水素;または1個〜約18個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル;または約6個〜約18個の炭素原子を有するアリール基;または7個〜約18個の炭素原子を有するアリールアルキル;または3個〜約18個の炭素原子を有するアルケンアルキルである;ここで、R19は、必要に応じて置換されているか、または存在しない;または1個〜約18個の炭素原子を有するアルキレン基;または3個〜約200個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールエーテルから誘導した基である;ここで、R20およびR21は、別個に、同一または異なり、必要に応じて置換され、そして1個〜約4個の炭素原子を有するアルキレン基であるか、または
Tは、以下である:
【化1A−6】


ここで、nは、0〜約18である、
組成物。
【請求項10】
前記共役ジエンモノマーが、4個〜12個の炭素原子を有し、そして前記ビニル含有モノマーが、次式を有する、請求項7〜9のいずれかに記載の組成物:
【化1A−7】


ここで、Rは、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、または置換C〜Cアルキルを含有し、ここで、該置換基は、別個に、以下を含有する:1個またはそれ以上のヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ(OR)、カルボキシ、カルボン酸金属塩(COOM)であって、Mは、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたは亜鉛またはアンモニウム塩である、カルボン酸金属塩、アシルオキシ、アロイルオキシ(OCR)、アルコキシ−カルボニル(CO)、アリールオキシ−カルボニル;またはN−ピロリドニル;
ここで、Rは、水素、R、COH、CO、COR、CN、CONH、CONHR、OCR、ORまたはハロゲンを含有する;
ここで、Rは、C〜C18アルキル、置換C〜C18アルキル、C〜Cアルケニル、アリール、ヘテロシクリル、アラルキルまたはアルカリールを含み、そして
ここで、該置換基は、別個に、1個またはそれ以上のエポキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、カルボキシ塩、スルホン酸、スルホン酸塩、アルコキシ−またはアリールオキシ−カルボニル、ジシアナト、シアノ、シリル、ハロまたはジアルキルアミノを含む、
組成物。
【請求項11】
前記ポリマー繰り返し単位が、アクリル酸アルキル、酢酸ビニル、アクリル酸、N−ビニルピロリドンまたはそれらの組合せから誘導され、該繰り返し単位fまたはgの数が、約3〜約5,000である、請求項7〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
12およびR13が、別個に、フェニル基または1個〜約4個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項7〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
ジチオカーボネート化合物を形成する方法であって、該方法は、以下の工程を包含する:
塩基、および必要に応じて、溶媒および触媒の存在下にて、a)キサンテート化合物のアルコキシレート塩またはジチオカルバメート化合物の金属塩、b)二硫化炭素、c)ハロホルム、およびd)ケトンを反応させて、反応生成物を形成する工程;および
該反応生成物を酸性化して、該ジチオカーボネート化合物を形成する工程。
【請求項14】
前記ハロホルムが、クロロホルムまたはブロモホルム、またはそれらのブレンドであり、そして前記ケトンが、次式を有する、請求項13に記載の方法:
【化1A−8】


ここで、R12およびR13は、別個に、同一または異なり、必要に応じて置換されており、1個〜約12個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキルである;または6個〜約18個の炭素原子を有するアリール基であり、該アリール基は、必要に応じて、ヘテロ原子を含有する;またはR12およびR13は、3個〜約12個の炭素原子を有する置換または非置換環状環の一部を形成するか一部である;
方法。
【請求項15】
ジチオカーボネート化合物が、次式を有する、請求項13または14のいずれかに記載の方法:
【化1A−9】


ここで、該「a」は、1〜約4である;
ここで、jは、1または2である;
ここで、R12およびR13は、別個に、同一または異なり、必要に応じて置換されており、そして1個〜約8個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキルである;または6個〜約18個の炭素原子を有するアリール基であり、該アリール基は、必要に応じて、ヘテロ原子を含有する;またはR12およびR13は、3個〜約12個の炭素原子を有する置換または非置換環状環の一部を形成するか一部である;
ここで、R14は、必要に応じて置換されており、そして1個〜約12個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、必要に応じて飽和または不飽和のアリール基;約7個〜約18個の炭素原子を有するアリールアルキル;アシル基;アルケン基;3個〜約18個の炭素原子を有するアルケンアルキル;アルキレン基;アルコキシアルキル;ポリアルキレングリコールから誘導した基;約3個〜約200個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルから誘導した基;約3個〜約200個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールモノアリールエーテルから誘導した基、ポリフルオロアルキル;リン含有アルキル;またはヘテロ原子を含有する置換または非置換アリール環である;そして
但し、jが1のとき、Tは、−(−NR1516)であり、そしてjが2のとき、Tは、2個のチオカルボニル基の各炭素原子に窒素原子が直接結合した二価ラジカルである;そして
ここで、R15およびR16は、別個に、同一または異なり、必要に応じて置換されており、必要に応じて、ヘテロ原子を含有し、そして水素;または1個〜約18個の炭素を有する直鎖または分枝アルキル;または6個〜約18個の炭素原子を有するアリール基またはアリールアルキル基であって、該アリールアルキル基は、必要に応じて、飽和または不飽和である;または7個〜約18個の炭素を有するアリールアルキル;または3個〜約18個の炭素原子を有するアルケンアルキル;またはポリアルキレングリコールエーテルから誘導した基;またはアミンから誘導した基である;またはR15およびR16は、窒素原子を備えた置換または非置換環状環の形態であり、該環状環は、全体で、4個〜約12個の炭素原子を有する、
方法。
【請求項16】
前記触媒を含有させ、前記反応が、約−15℃〜約80℃の温度で行われる、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記ジチオカルバメートの前記金属塩のモル量を基準にして、前記ハロホルムが、0モルパーセント過剰〜約500モルパーセント過剰の量で使用され、そして前記ケトンが、0モルパーセント過剰〜約300モルパーセント過剰の量で使用される、請求項13〜16に記載の方法。
【請求項18】
さらに、少なくとも1種のビニル含有モノマーまたは少なくとも1種の共役ジエンモノマーを前記ジチオカーボネート化合物と反応させて、ジチオカーボネートコポリマーを形成する工程を包含する、請求項13〜17に記載の方法。
【請求項19】
前記共役ジエンモノマーが、4個〜12個の炭素原子を有し、そして前記ビニル含有モノマーが、次式を有する、請求項13〜18に記載の方法:
【化1A−10】


ここで、Rは、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、または置換C〜Cアルキルを含有し、ここで、該置換基は、別個に、以下を含有する:1個またはそれ以上のヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ(OR)、カルボキシ、カルボン酸金属塩(COOM)であって、Mは、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたは亜鉛またはアンモニウム塩である、カルボン酸金属塩、アシルオキシ、アロイルオキシ(OCR)、アルコキシ−カルボニル(CO)、アリールオキシ−カルボニル;またはN−ピロリドニル;
ここで、Rは、水素、R、COH、CO、COR、CN、CONH、CONHR、OCR、ORまたはハロゲンを含有する;
ここで、Rは、C〜C18アルキル、置換C〜C18アルキル、C〜C18アルケニル、アリール、ヘテロシクリル、アラルキルまたはアルカリールを含み、そして
ここで、該置換基は、別個に、1個またはそれ以上のエポキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、カルボキシ塩、スルホン酸、スルホン酸塩、アルコキシ−またはアリールオキシ−カルボニル、ジシアナト、シアノ、シリル、ハロまたはジアルキルアミノを含む、
方法。
【請求項20】
前記ジチオカーボネートコポリマーが、次式を有する、請求項18または19に記載の方法:
【化1A−11】


ここで、該ポリマー繰り返し単位は、前記少なくとも1種の共役ジエンモノマー、または前記ビニル含有モノマー、またはそれらの組合せから誘導されるが、但し、各繰り返し単位は、同一または異なり得る;そして
ここで、該繰り返し単位の数fは、別個に、1個〜約10,000個である;
ここで、該gは、約1〜約10,000である、
方法。

【公表番号】特表2006−503971(P2006−503971A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501651(P2005−501651)
【出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2003/033476
【国際公開番号】WO2004/037780
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(505026538)ノベオン アイピー ホールディングス コーポレイション (10)
【Fターム(参考)】