説明

制御システム、制御方法、自動車

【課題】トンネル内外の環境差に起因して自動車のフロントガラスに生じる結露現象に関して、運転をサポートする枠組みを提供する。
【解決手段】自動車が走行可能なトンネルに関して、前記トンネル内の環境における露点D、又は前記トンネル内の環境における飽和水蒸気量Vを取得するトンネル情報取得部と、前記トンネル外の環境における前記自動車のフロントガラスの外面付近の温度Tf、又は前記トンネル外の環境における前記自動車のフロントガラスの外面付近の水蒸気量Vfを取得する自動車情報取得部と、温度Tfが露点D以下である場合、又は、水蒸気量Vfが飽和水蒸気量V以上である場合、所定の動作を行うように前記機器を制御する制御部と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車に搭載される機器の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のインテリジェント化が進んでおり、運転をサポートする種々の装置が開発・実装されている。例えば、雨滴を感知して自動的にワイパーを動作させる装置や、車載カメラにより道路の車線を認識し、車線を逸脱しそうな場合にディスプレイに警報を表示する装置を有する自動車が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自動車がトンネルに入ったときに、トンネル内外の環境差に起因して、フロントガラス外面に瞬間的に結露を生じる可能性がある。フロントガラス外面に結露が生じると、ドライバーの前方視界の妨げとなり、事故を誘引するおそれがある。
【0004】
しかしながら、従来の自動車には、このような結露現象に関して運転をサポートする装置は搭載されておらず、またそのようなサポート技術について検討もなされていない。
【0005】
そこで、トンネル内外の環境差に起因して自動車のフロントガラスに生じる結露現象に関して、運転をサポートする技術を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の制御システムは、自動車に搭載される機器を制御対象とする制御システムであって、自動車が走行可能なトンネルに関して、前記トンネル内の環境における飽和水蒸気量Vを取得するトンネル情報取得部と、前記トンネル外の環境における前記自動車のフロントガラスの外面付近の水蒸気量Vfを取得する自動車情報取得部と、水蒸気量Vfが飽和水蒸気量V以上である場合、所定の動作を行うように前記機器を制御する制御部と、前記自動車のフロントガラスの外面付近に配置される車載温度センサ及び車載湿度センサとを含み、前記自動車情報取得部が、前記自動車が前記トンネルに入る前に、前記車載温度センサからのセンサデータに基づいて前記自動車のフロントガラスの外面付近の温度Tfを取得し、前記車載湿度センサからのセンサデータに基づいて前記自動車のフロントガラスの外面付近の湿度Hfを取得し、温度Tfと湿度Hfとに基づいて水蒸気量Vfを算出し、前記トンネル情報取得部が、前記自動車が前記トンネルに入ったときに、前記車載温度センサからのセンサデータに基づいて前記トンネル内の温度Ttを取得し、温度Ttに基づいて飽和水蒸気量Vを取得し、前記機器が、前記自動車のフロントガラスに関連したワイパー駆動装置、前記自動車のフロントガラスに関連したウインドウォッシャー液噴出装置、前記自動車の搭乗者に対するアラーム装置の少なくとも一つを含む。
【0007】
本開示の制御システムは、自動車に搭載される機器を制御対象とする制御システムであって、自動車が走行可能なトンネルに関して、前記トンネル内の環境における露点D、又は前記トンネル内の環境における飽和水蒸気量Vを取得するトンネル情報取得部と、前記トンネル外の環境における前記自動車のフロントガラスの外面付近の温度Tf、又は前記トンネル外の環境における前記自動車のフロントガラスの外面付近の水蒸気量Vfを取得する自動車情報取得部と、温度Tfが露点D以下である場合、又は、水蒸気量Vfが飽和水蒸気量V以上である場合、所定の動作を行うように前記機器を制御する制御部と、を含む。
【0008】
前記トンネル情報取得部が、前記トンネル内の温度Tt及び湿度Htを取得し、温度Ttと湿度Htとに基づいて露点Dを算出することができる。この場合、前記トンネルに配置されるトンネル内温度センサ及びトンネル内湿度センサと、前記トンネル内温度センサ及びトンネル内湿度センサのセンサデータを、前記トンネル情報取得部が取得できるように外部に送信する送信ユニットとを含むことができ、前記トンネル情報取得部が、前記送信ユニットから送信されるセンサデータを取得し、前記センサデータに基づいて温度Tt及び湿度Htを取得することができる。
【0009】
前記トンネル情報取得部が、前記トンネル内の温度Ttを取得し、温度Ttに基づいて飽和水蒸気量Vを算出することができる。この場合、前記トンネルに配置されるトンネル内温度センサと、前記トンネル内温度センサからのセンサデータを、前記トンネル情報取得部が取得できるように外部に送信する送信ユニットとを含むことができ、前記トンネル情報取得部が、前記送信ユニットから送信されるセンサデータを取得し、前記センサデータに基づいて飽和水蒸気量Vを取得することができる。
【0010】
前記自動車のフロントガラスの外面付近に配置される車載温度センサ及び車載湿度センサを含むことができ、前記自動車情報取得部が、前記自動車が前記トンネルに入る前に、前記車載温度センサからのセンサデータに基づいて前記自動車のフロントガラスの外面付近の温度Tfを取得し、前記車載湿度センサからのセンサデータに基づいて前記自動車のフロントガラスの外面付近の湿度Hfを取得し、温度Tfと湿度Hfとに基づいて水蒸気量Vfを算出することができる。この場合、前記トンネル情報取得部が、前記自動車が前記トンネルに入ったときに、前記車載温度センサからのセンサデータに基づいて前記トンネル内の温度Ttを取得し、温度Ttに基づいて飽和水蒸気量Vを取得することができる。
【0011】
前記自動車のフロントガラスの外面付近に配置される車載温度センサ及び車載湿度センサを含むことができ、前記自動車情報取得部が、前記自動車が前記トンネルに入る前に、前記車載温度センサからのセンサデータに基づいて前記自動車のフロントガラスの外面付近の温度Tfを取得し、前記トンネル情報取得部が、前記自動車が前記トンネルに入ったときに、前記車載温度センサからのセンサデータに基づいて前記トンネル内の温度Ttを取得し、前記車載湿度センサからのセンサデータに基づいて前記トンネル内の湿度Htを取得し、温度Ttと湿度Htとに基づいて露点Dを算出することができる。
【0012】
予め測定された前記トンネル内の露点のデータ、又は、予め測定された前記トンネル内の温度及び湿度のデータを格納するデータベースを含むことができ、前記トンネル情報取得部が、前記データベースから読み出したデータに基づいて露点Dを取得することができる。
【0013】
予め測定された前記トンネル内の飽和水蒸気量のデータ、又は、予め測定された前記トンネル内の温度のデータを格納するデータベースを含むことができ、前記トンネル情報取得部が、前記データベースから読み出したデータに基づいて飽和水蒸気量Vを取得することができる。
【0014】
前記機器が、前記自動車のフロントガラスに関連するワイパー装置、前記自動車のフロントガラスに関連するウインドウォッシャー液噴出装置、前記自動車の搭乗者に対してアラームを報知するアラーム装置の少なくとも一つを含むことができる。
【0015】
本開示の自動車は、制御システムと制御対象機器とを含む自動車であって、前記制御システムが、自動車が走行可能なトンネルに関して、前記トンネル内の環境における露点D、又は前記トンネル内の環境における飽和水蒸気量Vを取得するトンネル情報取得部と、前記トンネル外の環境における前記自動車のフロントガラスの外面付近の温度Tf、又は前記トンネル外の環境における前記自動車のフロントガラスの外面付近の水蒸気量Vfを取得する自動車情報取得部と、温度Tfが露点D以下である場合、又は、水蒸気量Vfが飽和水蒸気量V以上である場合、所定の動作を行うように前記制御対象機器を制御する制御部と、を含む。
【0016】
本開示の制御方法は、自動車に搭載される機器を制御対象とする制御方法であって、自動車が走行可能なトンネルに関して、前記トンネル内の環境における露点D、又は前記トンネル内の環境における飽和水蒸気量Vを取得することと、前記トンネル外の環境における前記自動車のフロントガラスの外面付近の温度Tf、又は前記トンネル外の環境における前記自動車のフロントガラスの外面付近の水蒸気量Vfを取得することと、温度Tfが露点D以下である場合、又は、水蒸気量Vfが飽和水蒸気量V以上である場合、所定の動作を行うように前記機器を制御することと、を含む。
【0017】
本開示の制御方法に対応する処理は、コンピュータが有するCPUにより実施することができるが、そのためのプログラムは、CD−ROM、磁気ディスク、半導体メモリ及び通信ネットワークなどの各種の媒体を通じてインストールまたはロードすることができる。
【0018】
なお、本明細書において、「部」とは、ハードウェアにより実現されるユニット、ソフトウェアにより実現されるユニット、両方を用いて実現されるユニットを含む。また1つのユニットが2つ以上のハードウェアを用いて実現されてもよく、2つ以上のユニットが1つのハードウェアにより実現されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態の制御システム1の概略構成を示すブロック図である。
【図2A】第1の実施形態に係る情報処理ユニット13のハードウェア構成を示す図である。
【図2B】本実施形態に係る情報処理ユニット13の機能構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る結露対応処理を説明するフローチャートである。
【図4】第2の実施形態の制御システム1'の概略構成を示すブロック図である。
【図5】第2の実施形態に係る結露対応処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示を実施するための好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本開示の第1の実施形態である制御システム1、及び制御システム1を搭載した自動車100の概略構成を表わす図である。
【0021】
図1に示すように、制御システム1は、自動車100のフロントガラス101の外面付近(例えば、フロントガラス101の外面の上端付近など)にそれぞれ取り付けられる、車載温度センサ11及び車載湿度センサ12と、自動車100に搭載される情報処理ユニット13とを含んでいる。
【0022】
自動車100は、従来の自動車と同様の機能構成を有しており、例えば、フロントガラス101に関連する各種機器として、ワイパー装置102、ウインドウォッシャー液噴出装置103などを含んでいる。また自動車100は、ディスプレイユニットやスピーカ等を有するカーナビゲーションシステム104を含むこともできる。
【0023】
車載温度センサ11及び車載湿度センサ12は、フロントガラス101の外面付近の温度、湿度をそれぞれ計測し、計測したデータを情報処理ユニット13に出力するように構成される。このような車載温度センサ11及び車載湿度センサ12は、従来の温度センサや湿度センサを用いて実現できる。
【0024】
情報処理ユニット13は、後述する結露対応処理を実行するように構成される。
【0025】
図2Aは、情報処理ユニット13のハードウェア構成を示すブロック図である。図2Aに示すように、情報処理ユニット13は、CPU、メモリ(ROM、RAM)、通信インタフェース等のハードウェアを含んでおり、自動車100の電子制御ユニット105、カーナビゲーションシステム104、車載温度センサ11及び車載湿度センサ12などから出力される信号を受信し、またフロントガラス101に関連する少なくとも1つの機器のコントローラに制御信号を出力するように構成されている。なお、CPU等に代えて、ASIC等の集積回路を用いて情報処理ユニット13を構成してもよい。
【0026】
図2Bは、情報処理ユニット13の機能構成を示すブロック図である。図2Bに示すように、情報処理ユニット13は、トンネル情報取得部21、自動車情報取得部22、機器制御部23等の機能手段を含んでいる。
【0027】
トンネル情報取得部21は、自動車100が走行可能なトンネル200に関して、トンネル200内の環境における飽和水蒸気量Vを取得する。より具体的には、トンネル情報取得部21は、自動車100がトンネル200に入ったときに、車載温度センサ11から出力される温度データに基づいてトンネル200内の温度Ttを取得し、温度Ttに基づいてトンネル200内の環境における飽和水蒸気量Vを取得する。
【0028】
自動車情報取得部22は、トンネル200外の環境におけるフロントガラス101の外面付近の水蒸気量Vfを取得する。より具体的には、自動車情報取得部22は、自動車100がトンネル200に入る前に、車載温度センサ11及び車載湿度センサ12から出力されるセンサデータに基づいて、フロントガラス101の外面付近の温度Tf及び湿度Hfを取得し、温度Tfと湿度Hfとに基づいて、フロントガラス101の外面付近の水蒸気量Vfを算出する。
【0029】
機器制御部23は、トンネル情報取得部21及び自動車情報取得部22が取得した各データに基づき、フロントガラス101の外面に結露が生じているかどうか、又は、生じる可能性があるかどうかを判定し、判定結果に基づいて、自動車100に搭載される少なくとも1つの機器、例えばワイパー装置のコントローラに対し、所定の動作を行うように指示する制御信号を出力する。
【0030】
以下、図3に示すフローチャートに基づいて、制御システム1を用いて実現される運転をサポートする枠組みについて説明する。なお、各工程(符号が付与されていない部分的な工程を含む)は処理内容に矛盾を生じない範囲で、任意に順番を変更して又は並列に実行することができる。
【0031】
情報処理ユニット13は、自動車100がトンネル外を走行中であり、走行予定経路上に次に進入するトンネル200が存在する場合、以下の結露対応処理を実行する。
【0032】
自動車情報取得部22は、例えばカーナビゲーションシステム104から取得した情報に基づき、自動車100がトンネル200に入る前であると判断できる場合、車載温度センサ11から温度データを取得し、車載湿度センサ12から湿度データを取得する(S101)。
【0033】
次に、自動車情報取得部22は、車載温度センサ11から取得した温度データに基づき、トンネル200外の環境におけるフロントガラス101の外面付近の温度Tfを取得し、車載湿度センサ12から取得した湿度データに基づき、トンネル200外の環境におけるフロントガラス101の外面付近の湿度Hfを取得する(S102)。例えば、トンネル外走行中に車載温度センサ11及び車載湿度センサ12から所定期間にわたって取得した各データを平均し、温度Tf、湿度Hfとして求めることができる。
【0034】
次に、自動車情報取得部22は、温度Tf及び湿度Hfに基づいて、トンネル200外の環境におけるフロントガラス101の外面付近の水蒸気量Vfを算出する(S103)。例えば、温度と飽和水蒸気量との対応関係を格納したテーブルを予め記憶しておき、該テーブルを参照して温度Tfにおける飽和水蒸気量を取得し、該飽和水蒸気量と湿度Hfとから水蒸気量Vfを算出することができる。
【0035】
一方、トンネル情報取得部21は、例えばカーナビゲーションシステム104から取得した情報に基づき、自動車100がトンネル200に入ったと判断できる場合、車載温度センサ11から温度データを取得する(S104)。
【0036】
次に、トンネル情報取得部21は、車載温度センサ11から取得した温度データに基づき、トンネル200内の環境におけるフロントガラス101の外面付近の温度を取得する(S105)。第1の実施形態では、かかるトンネル200内の環境におけるフロントガラス101の外面付近の温度をトンネル内の温度Ttとして用いる。
【0037】
トンネルに入ってから短期間で温度Ttを求めるために、例えば、車載温度センサ11の計測結果が定常状態となる前に、車載温度センサ11の温度データの時間変化から、トンネル内走行時の定常状態におけるフロントガラス101の外面付近の温度を予測し、これを温度Ttとして用いてもよい。このような予測には、従来の予測技術を用いることができる。
【0038】
次に、トンネル情報取得部21は、温度Ttに基づいて、トンネル内の環境における飽和水蒸気量Vを取得する(S106)。例えば、上述した、温度と飽和水蒸気量との対応関係を格納したテーブルを参照して、温度Ttにおける飽和水蒸気量Vを取得することができる。
【0039】
次に、機器制御部23は、自動車情報取得部22が算出した水蒸気量Vfと、トンネル情報取得部21が取得した飽和水蒸気量Vとに基づき、トンネル200内の走行時に、フロントガラス101の外面に結露が生じているかどうか、又は、生じる可能性があるかどうかを判断する(S107)。具体的には、水蒸気量Vfが飽和水蒸気量V以上であるか否かを判定し、水蒸気量Vfが飽和水蒸気量Vより小さい場合、フロントガラス101の外面に結露が生じておらず、又、生じる可能性もないと判断する。この場合、判断対象となったトンネル200について結露対応処理を終了する。
【0040】
一方、機器制御部23は、水蒸気量Vfが飽和水蒸気量V以上である場合、フロントガラス101の外面に結露が生じているか、又は、生じる可能性があると判断し、自動車100に搭載される少なくとも1つの機器に、所定の動作を行うように指示する制御信号を出力する(S108)。
【0041】
例えば、ワイパー装置102のコントローラに対して制御信号を出力する場合、機器制御部23は、フロントガラス101のワイパーを例えば一定期間又は一定回数駆動するように指示する制御信号を出力する。その後、判断対象となったトンネル200について結露対応処理を終了する。ワイパー装置102は、かかる制御信号に基づき、ワイパーを動作させ、その結果、フロントガラス101に生じている結露が除去され、結露の発生が防止される。
(第2の実施形態)
図4は、本開示の第2の実施形態である制御システム1'、及び制御システム1'を搭載した自動車100の概略構成を表わす図である。
【0042】
図1に示すように、制御システム1'は、自動車100のフロントガラス101の外面付近(例えば、フロントガラス101の上端付近など)に取り付けられる車載温度センサ11と、自動車100に搭載される情報処理ユニット13とを含んでいる。
【0043】
また、制御システム1'は、結露対応処理の判断対象となるトンネル200にそれぞれ配置される、トンネル内温度センサ14、トンネル内湿度センサ15、データ送信ユニット16を含んでいる。
【0044】
自動車100、車載温度センサ11は、原則として第1の実施形態と同様である。
【0045】
情報処理ユニット13は、図2に示す第1の実施形態と同様のハードウェア構成及び機能構成を有する。ただし、自動車情報取得部22、トンネル情報取得部21がそれぞれ、水蒸気量Vf、飽和水蒸気量Vに代えて、温度Tf、露点Dを取得する点、トンネル情報取得部21が、車載温度センサ11のセンサデータではなく、トンネル内温度センサ14等のセンサデータを取得する点で、第1の実施形態とは異なっている。
【0046】
トンネル内温度センサ14及びトンネル内湿度センサ15は、トンネル200内の温度、湿度をそれぞれ計測し、計測したデータをデータ送信ユニット16に出力するように構成される。このようなトンネル内温度センサ14及びトンネル内湿度センサ15は、従来の温度センサや湿度センサを用いて実現できる。
【0047】
データ送信ユニット16は、トンネル内温度センサ14及びトンネル内湿度センサ15の各センサデータを、情報処理ユニット13(トンネル情報取得部21)が取得できるように外部の無線基地局等に送信する。このようなデータ送信ユニット16は、従来の無線送信ユニットを用いて実現できる。
【0048】
例えば、外部の無線基地局に送信された各センサデータは、通信ネットワークを介して自動車100の車載無線通信装置によって受信することができ、かかる車載無線通信装置から情報処理ユニット13に出力することができる。なお制御システム1'が無線通信部を含んでいてもよく、かかる無線通信部を介して情報処理ユニット13がデータ送信ユニット16から送信されるセンサデータを受信する構成としてもよい。
【0049】
以下、図5に示すフローチャートに基づいて、制御システム1'を用いて実現される運転をサポートする枠組みについて説明する。なお、各工程(符号が付与されていない部分的な工程を含む)は処理内容に矛盾を生じない範囲で、任意に順番を変更して又は並列に実行することができる。
【0050】
情報処理ユニット13は、自動車100がトンネル外を走行中であり、走行予定経路上に次に進入するトンネル200が存在する場合、以下の結露対応処理を実行する。
【0051】
自動車情報取得部22は、例えばカーナビゲーションシステム104から取得した情報に基づき、自動車100がトンネル200に入る前であると判断できる場合、車載温度センサ11から温度データを取得する(S201)。
【0052】
次に、自動車情報取得部22は、車載温度センサ11から取得した温度データに基づき、トンネル200外の環境におけるフロントガラス101の外面付近の温度Tfを取得する(S202)。例えば、トンネル外走行中に車載温度センサ11から所定期間にわたって取得した温度データを平均し、温度Tfとして求めることができる。
【0053】
一方、トンネル情報取得部21は、例えばカーナビゲーションシステム104から取得した情報に基づき、自動車100がトンネル200に入る前であると判断できる場合、又は、自動車100がトンネル200に入ったと判断できる場合、トンネル200に配置されるデータ送信ユニット16から、無線基地局等を介して、トンネル内温度センサ14が計測した温度データ、及びトンネル内湿度センサ15が計測した湿度データを取得する(S203)。
【0054】
次に、トンネル情報取得部21は、トンネル内温度センサ14が計測した温度データに基づき、トンネル200内の温度Tt取得し、トンネル内湿度センサ15が計測した湿度データに基づき、トンネル200内の湿度Htを取得する(S204)。トンネル内温度センサ14及びトンネル内湿度センサ15は、通常、トンネル200内の環境の定常状態における温度や湿度を測定できることから、第2の実施形態では、トンネル内温度センサ14が計測した温度データを加工せずにトンネル200内の温度Ttとして用い、トンネル内湿度センサ15が計測した湿度データを加工せずにトンネル200内の湿度Htとして用いる。
【0055】
次に、トンネル情報取得部21は、温度Tt及び湿度Htに基づき、トンネル200内の環境における露点Dを計算する(S205)。例えば、温度と飽和水蒸気量との対応関係を格納したテーブルを予め記憶しておき、該テーブルを参照して温度Ttにおける飽和水蒸気量を取得し、該飽和水蒸気量と湿度Htとからトンネル内の水蒸気量を算出し、再び前記テーブルを参照して、前記算出したトンネル内水蒸気量が飽和水蒸気量として対応づけられている温度を、露点Dとして抽出することができる。
【0056】
次に、機器制御部23は、自動車情報取得部22が取得した温度Tfと、トンネル情報取得部21が取得した露点Dとに基づき、トンネル200内の走行時に、フロントガラス101の外面に結露が生じているかどうか、又は、生じる可能性があるかどうかを判断する(S206)。具体的には、温度Tfが露点D以下であるか否かを判定し、温度Tfが露点Dより大きい場合、フロントガラス101の外面に結露が生じておらず、又、生じる可能性もないと判断する。この場合、判断対象となったトンネルについて結露対応処理を終了する。
【0057】
一方、機器制御部23は、温度Tfが露点D以下である場合、フロントガラス101の外面に結露が生じているか、又は、生じる可能性があると判断し、自動車100に搭載される少なくとも1つの機器に、所定の動作を行うように指示する制御信号を出力する(S207)。
【0058】
例えば、ウインドウォッシャー液噴出装置103のコントローラに対して制御信号を出力する場合、機器制御部23は、フロントガラス101にウインドウォッシャー液を噴出するように指示する制御信号を出力する。その後、判断対象となったトンネルについて結露対応処理を終了する。ウインドウォッシャー液噴出装置103は、かかる制御信号に基づき、ウインドウォッシャー液を噴出させ、その結果、フロントガラス101に生じている結露が除去され、結露の発生が防止される。
【0059】
本開示は、以上の実施形態に限定されるべきものではなく、特許請求の範囲に表現された思想および範囲を逸脱することなく、種々の変形、追加、および省略が当業者によって可能である。
【0060】
例えば、第1の実施形態の構成要素と、第2の実施形態の構成要素とは、矛盾の生じない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【0061】
一例として、第1の実施形態において、ウインドウォッシャー液噴出装置103を機器制御部23による制御対象機器としてもよく、同様に、第2の実施形態において、ワイパー装置102を制御対象機器としてもよい。また、第1及び第2の実施形態において、ワイパー装置102とウインドウォッシャー液噴出装置103の両方を制御対象機器としてもよい。
【0062】
更に、ワイパー装置102やウインドウォッシャー液噴出装置103に加えて、又は代えて、自動車100に搭載される他の機器を対象として、所定の動作をするように制御することもできる。例えば、カーナビゲーションシステム104を警報装置として利用する場合、フロントガラス101に結露が生じる可能性があることを運転者等に警報するために、ディスプレイに警告メッセージを表示したり、スピーカから警告音声を出力したりするように、カーナビゲーションシステム104を制御することができる。
【0063】
特に第2の実施形態のように、トンネル情報取得部21が、自動車100がトンネル200に入る前に、温度データ及び湿度データを取得する場合、機器制御部23は、トンネル200への進入時にフロントガラス101の外面に結露が生じる可能性があるか否かを、自動車100がトンネル200に入る前に判断できるので、警報装置に対し、トンネル200に入る前に運転者等に警告するように制御することができる。
【0064】
また例えば、第1の実施形態において、第2の実施形態のように、結露対応処理の判断対象となるトンネルに、トンネル内温度センサ14、データ送信ユニット16などを配置し、トンネル情報取得部21が、トンネル内温度センサ14が計測した温度データをデータ送信ユニット16から取得し、トンネル内温度センサ14の温度データに基づいて飽和水蒸気量Vを求める構成としてもよい。
【0065】
また例えば、第2の実施形態において、第1の実施形態のように、トンネル情報取得部21が、自動車100がトンネルに入ったと判断できる場合に、車載温度センサ11から取得した温度データ、及び車載湿度センサ12から取得した湿度データに基づいて、トンネル内の温度Tt及び湿度Htを取得する構成としてもよい。
【0066】
また例えば、第2の実施形態において、フロントガラス101の外面付近に、又は結露対応処理の判断対象となるトンネルに、露点計を配置し、トンネル情報取得部21が、該露点計の測定データに基づいて露点Dを求める構成としてもよい。
【0067】
また例えば、各トンネルについて予め露点、又は、温度及び湿度を測定して、データベースに格納しておき、情報処理ユニット13が、該データベースから、結露対応処理の判断対象となるトンネルの露点Dを読み出して取得するか、又は、該トンネルの温度Tt及び湿度Htを読み出して露点Dを算出する構成としてもよい。
【0068】
また例えば、各トンネルについて予め飽和水蒸気量、又は、温度を測定して、データベースに格納しておき、情報処理ユニット13が、該データベースから、結露対応処理の判断対象となるトンネルの飽和水蒸気量Vを読み出して取得するか、又は、該トンネルの温度Ttを読み出して飽和水蒸気量Vを求める構成としてもよい。
【0069】
このようなデータベースは、制御システム1、1'の一部として、又は制御システム1、1'の外部装置として、自動車100に搭載されていてもよく、また情報処理ユニット13がアクセス可能であれば自動車100外に配置されていてもよい。
【0070】
また例えば、データ送信ユニット16において、トンネル内温度センサ14やトンネル内湿度センサ15のセンサデータを平均するなどして、温度Ttや湿度Htを取得し、情報処理ユニット13に向けて送信する構成としてもよい。更に、データ送信ユニット16において、温度Tt及び湿度Htから露点Dを算出し、情報処理ユニット13に向けて送信する構成としてもよい。
【0071】
また例えば、各センサやユニットは、内部電源により動作する構成、自動車100やトンネル内に配置された電源等から電力の供給を受けて動作する構成のいずれであってもよい。
【0072】
なお、以上に説明した実施形態及び種々の変形の技術的特徴は任意に組み合わせて採用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1、1' 制御システム、
11 車載温度センサ、
12 車載湿度センサ、
13 情報処理ユニット
14 トンネル内温度センサ、
15 トンネル内湿度センサ、
16 データ送信ユニット
21 トンネル情報取得部
22 自動車情報取得部
23 機器制御部
100 自動車
101 フロントガラス
102 ワイパー装置
103 ウインドウォッシャー液噴出装置
104 カーナビゲーションシステム
105 電子制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載される機器を制御対象とする制御システムであって、
自動車が走行可能なトンネルに関して、前記トンネル内の環境における飽和水蒸気量Vを取得するトンネル情報取得部と、
前記トンネル外の環境における前記自動車のフロントガラスの外面付近の水蒸気量Vfを取得する自動車情報取得部と、
水蒸気量Vfが飽和水蒸気量V以上である場合、所定の動作を行うように前記機器を制御する制御部と、
前記自動車のフロントガラスの外面付近に配置される車載温度センサ及び車載湿度センサとを含み、
前記自動車情報取得部が、前記自動車が前記トンネルに入る前に、前記車載温度センサからのセンサデータに基づいて前記自動車のフロントガラスの外面付近の温度Tfを取得し、前記車載湿度センサからのセンサデータに基づいて前記自動車のフロントガラスの外面付近の湿度Hfを取得し、温度Tfと湿度Hfとに基づいて水蒸気量Vfを算出し、
前記トンネル情報取得部が、前記自動車が前記トンネルに入ったときに、前記車載温度センサからのセンサデータに基づいて前記トンネル内の温度Ttを取得し、温度Ttに基づいて飽和水蒸気量Vを取得し、
前記機器が、前記自動車のフロントガラスに関連したワイパー駆動装置、前記自動車のフロントガラスに関連したウインドウォッシャー液噴出装置、前記自動車の搭乗者に対するアラーム装置の少なくとも一つを含む、制御システム。
【請求項2】
自動車に搭載される機器を制御対象とする制御システムであって、
自動車が走行可能なトンネルに関して、前記トンネル内の環境における露点D、又は前記トンネル内の環境における飽和水蒸気量Vを取得するトンネル情報取得部と、
前記トンネル外の環境における前記自動車のフロントガラスの外面付近の温度Tf、又は前記トンネル外の環境における前記自動車のフロントガラスの外面付近の水蒸気量Vfを取得する自動車情報取得部と、
温度Tfが露点D以下である場合、又は、水蒸気量Vfが飽和水蒸気量V以上である場合、所定の動作を行うように前記機器を制御する制御部と、
を含む制御システム。
【請求項3】
前記トンネル情報取得部が、前記トンネル内の温度Tt及び湿度Htを取得し、温度Ttと湿度Htとに基づいて露点Dを算出する、請求項2記載の制御システム。
【請求項4】
更に、前記トンネルに配置されるトンネル内温度センサ及びトンネル内湿度センサと、
前記トンネル内温度センサ及びトンネル内湿度センサのセンサデータを、前記トンネル情報取得部が取得できるように外部に送信する送信ユニットとを含み、
前記トンネル情報取得部が、前記送信ユニットから送信されるセンサデータを取得し、前記センサデータに基づいて温度Tt及び湿度Htを取得する、請求項3記載の制御システム。
【請求項5】
前記トンネル情報取得部が、前記トンネル内の温度Ttを取得し、温度Ttに基づいて飽和水蒸気量Vを算出する、請求項2記載の制御システム。
【請求項6】
更に、前記トンネルに配置されるトンネル内温度センサと、
前記トンネル内温度センサからのセンサデータを、前記トンネル情報取得部が取得できるように外部に送信する送信ユニットとを含み、
前記トンネル情報取得部が、前記送信ユニットから送信されるセンサデータを取得し、 前記センサデータに基づいて飽和水蒸気量Vを取得する、請求項5記載の制御システム。
【請求項7】
更に、前記自動車のフロントガラスの外面付近に配置される車載温度センサ及び車載湿度センサを含み、
前記自動車情報取得部が、前記自動車が前記トンネルに入る前に、前記車載温度センサからのセンサデータに基づいて前記自動車のフロントガラスの外面付近の温度Tfを取得し、前記車載湿度センサからのセンサデータに基づいて前記自動車のフロントガラスの外面付近の湿度Hfを取得し、温度Tfと湿度Hfとに基づいて水蒸気量Vfを算出する、請求項2記載の制御システム。
【請求項8】
前記トンネル情報取得部が、前記自動車が前記トンネルに入ったときに、前記車載温度センサからのセンサデータに基づいて前記トンネル内の温度Ttを取得し、温度Ttに基づいて飽和水蒸気量Vを取得する、請求項7記載の制御システム。
【請求項9】
更に、前記自動車のフロントガラスの外面付近に配置される車載温度センサ及び車載湿度センサを含み、
前記自動車情報取得部が、前記自動車が前記トンネルに入る前に、前記車載温度センサからのセンサデータに基づいて前記自動車のフロントガラスの外面付近の温度Tfを取得し、
前記トンネル情報取得部が、前記自動車が前記トンネルに入ったときに、前記車載温度センサからのセンサデータに基づいて前記トンネル内の温度Ttを取得し、前記車載湿度センサからのセンサデータに基づいて前記トンネル内の湿度Htを取得し、温度Ttと湿度Htとに基づいて露点Dを算出する、請求項2記載の制御システム。
【請求項10】
更に、予め測定された前記トンネル内の露点のデータ、又は、予め測定された前記トンネル内の温度及び湿度のデータを格納するデータベースを含み、
前記トンネル情報取得部が、前記データベースから読み出したデータに基づいて露点Dを取得する、請求項2記載の制御システム。
【請求項11】
更に、予め測定された前記トンネル内の飽和水蒸気量のデータ、又は、予め測定された前記トンネル内の温度のデータを格納するデータベースを含み、
前記トンネル情報取得部が、前記データベースから読み出したデータに基づいて飽和水蒸気量Vを取得する、請求項2記載の制御システム。
【請求項12】
前記機器が、前記自動車のフロントガラスに関連するワイパー装置、前記自動車のフロントガラスに関連するウインドウォッシャー液噴出装置、前記自動車の搭乗者に対してアラームを報知するアラーム装置の少なくとも一つを含む、請求項2記載の制御システム。
【請求項13】
制御システムと制御対象機器とを含む自動車であって、
前記制御システムが、
自動車が走行可能なトンネルに関して、前記トンネル内の環境における露点D、又は前記トンネル内の環境における飽和水蒸気量Vを取得するトンネル情報取得部と、
前記トンネル外の環境における前記自動車のフロントガラスの外面付近の温度Tf、又は前記トンネル外の環境における前記自動車のフロントガラスの外面付近の水蒸気量Vfを取得する自動車情報取得部と、
温度Tfが露点D以下である場合、又は、水蒸気量Vfが飽和水蒸気量V以上である場合、所定の動作を行うように前記制御対象機器を制御する制御部と、
を含む、自動車。
【請求項14】
自動車に搭載される機器を制御対象とする制御方法であって、
自動車が走行可能なトンネルに関して、前記トンネル内の環境における露点D、又は前記トンネル内の環境における飽和水蒸気量Vを取得することと、
前記トンネル外の環境における前記自動車のフロントガラスの外面付近の温度Tf、又は前記トンネル外の環境における前記自動車のフロントガラスの外面付近の水蒸気量Vfを取得することと、
温度Tfが露点D以下である場合、又は、水蒸気量Vfが飽和水蒸気量V以上である場合、所定の動作を行うように前記機器を制御することと、
を含む制御方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−195094(P2011−195094A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66464(P2010−66464)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(509348786)エンパイア テクノロジー ディベロップメント エルエルシー (117)
【Fターム(参考)】