説明

制御装置及び同装置を備えたコージェネレーション装置

【課題】ガス種が異なってもガスエンジンの始動を容易にする。
【解決手段】制御部22は、第1の運転信号を検出すると第1の開度でクランキングを開始させ、第1の開度による所定回数のクランキングでエンジンの回転が一定の回転数に到達した場合、第1の開度に対応する第1のモードでエンジンの運転を開始させ、エンジンの回転が第1の開度による所定回数のクランキングで一定の回転数に未達の場合、第2の開度を設定してクランキングを開始させ、第2の開度による所定回数のクランキングでエンジンの回転が一定の回転数に到達した場合、第2の開度に対応する第2のモードでエンジンの運転を開始させる制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスエンジンの制御装置及び同装置を備えたコージェネレーション装置に関し、例えば、家庭用のコージェネレーション装置に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
近年、発電ユニットで生じた電力(電気エネルギー)を商用電力系統と連携させて電気負荷に供給すると共に、内燃機関の排熱を利用して生成した温水等(熱エネルギー)を熱負荷に供給するようにした家庭用コージェネレーション装置が知られるようになった。
【0003】
家庭用コージェネレーション装置では燃料としてガスが使用されることが多く、このため、ガスエンジンが内蔵される。ガスエンジの始動を制御するガスエンジン制御装置の基本原理は、例えば、特許文献1にその詳細が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−42400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスエンジンは、ガスと空気の混合気を爆発させることにより回転力を発生させているが、爆発させるためにはクランクシャフトが回転していなければならない。エンジンが停止している状態から、エンジンが継続的に完爆している状態(運転状態)に移行するためには、何らかの手段でクランクシャフトを回転させ、最初の1回を爆発させなければならない。エンジンの制御装置は、停止状態のエンジンのクランクシャフトをスタータモータによって駆動させる「クランキング」によりエンジンの始動制御を行う。
【0006】
ところで、ガスにはたくさんの種類があり、例えば、国内では、都市ガス13種類(7グループ)とLPガス種類であり、ガス機器は適合するガスの種類が決められている。上記したガスエンジンに適合可能なガスの種類が増えると、あるいは同じガス種であってもそのグループによって熱量(カロリー)が大きく異なることから、その種類やグループ(以下、単に「ガス種」と総称する)によってはクランキングの動作不良によりエンジンの始動が困難になることがある。
【0007】
本発明は、ガス種が異なってもガスエンジンの始動を容易にする、制御装置及び同装置を備えるコージェネレーション装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、エンジンの始動を制御する制御装置であって、設定される開度にしたがいエンジンに供給するガスの流量を調整する流量調整弁と、第1の運転信号を検出すると第1の開度による所定回数内のクランキングを開始させ、前記エンジンの回転数が基準値に未達の場合、第2の開度による前記所定回数内のクランキングを開始させる制御を行う制御部と、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の制御装置において、記憶部を有し、前記第1の開度または前記第2の開度による所定回数内のクランキングで前記エンジンの回転数が前記基準値に到達した場合、前記第1の開度または前記第2の開度に対応する第1または第2のモードを前記記憶部に保持することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の制御装置において、前記制御部は、前記記憶部に前記第1のモードが保持され、第2の運転信号を検出すると、前記第2の運転信号に応じて前記第1の開度で前記クランキングを開始させることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項2記載の制御装置において、前記制御部は、前記記憶部に前記第2のモードが保持され、第2の運転信号を検出すると、前記第2の運転信号に応じて前記第2の開度で前記クランキングを開始させることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載の制御装置において、報知部を更に有し、前記制御部は、前記第1のモード、前記第2のモードのそれぞれによる所定回数内のクランキングで、いずれも前記エンジンの回転数が前記基準値に未達の場合に、前記報知部によりクランキングの不良を報知することを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記請求項1〜5のいずれか1項記載の制御装置を有するコージェネレーション装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、制御部は、第1の運転信号を検出すると第1の開度による所定回数内のクランキングを開始させ、エンジンの回転数が基準値に未達の場合、第2の開度による所定回数内のクランキングを開始させる。このように、燃料流量弁の開度を段階的に変化させることにより、ガス種に依存することなくエンジンの始動を可能とする制御装置を提供することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、制御部は、第1の開度または第2の開度による所定回数内のクランキングでエンジンの回転数が基準値に到達した場合、第1の開度または第2の開度に対応する第1または第2のモードを記憶部に保持する。したがって、エンジン回転数が基準値に達した第1のモードまたは第2のモードの少なくとも一つを記憶部に保持することにより、次回始動時保持したモードにしたがいエンジンの始動を制御する。このため、早い段階でエンジンを始動させることができ、したがって、始動までの待ち時間が短縮されエンジン出力を負荷に早期に供給できる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、制御部は、記憶部に第1のモードが保持されていたときに第2の運転信号を検出すると、第2の運転信号に応じて第1の開度でクランキングを開始させる。このため、第2のモードによるクランキングの試行回数が減少することからエンジン始動に要する時間が短縮される。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、制御部は、記憶部に第2のモードが保持されていたときに第2の運転信号を検出すると、第2の運転信号に応じて第2の開度でクランキングを開始する。このため、第1のモードによるクランキングの試行回数が減少することからエンジン始動に要する時間が短縮される。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、制御部は、第1のモードと第2のモードのいずれかのクランキングでエンジンの回転が所定の回転数に未達の場合に、報知部によりクランキングの不良を報知する。したがって、運転者は報知部によりエンジン始動の失敗を認識することができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、ガス種に依存することなくガスエンジンの始動を可能とする制御装置をコージェネレーション装置に適用することで、発電ユニットで生じた電力を商用電力系統と連携させて電気負荷に供給すると共に、エンジンの排熱を利用して生成した温水等を熱負荷に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る制御装置を内蔵するコージェネレーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1の流量調整弁の機構図である。
【図3】図2の流量調整弁の開口部断面を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る制御装置のクランキング不良時の動作を示すタイミング図である。
【図5】本発明の実施形態に係る制御装置のクランキング成功時の動作を示すタイミング図である。
【図6】本発明の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】図6の動作の続きを示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係る制御装置の動作をグラフ上で従来例と対比して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0022】
図1に、コージェネレーション装置の全体構成が示されている。コージェネレーション(cogeneration)は、「combined heat and power」ともいわれ、内燃機関、外燃機関等の排熱を利用して動力・温熱・冷熱を取り出し、総合エネルギー効率を高める、新エネルギー供給システムのひとつである。なお、コージェネ、コジェネとも呼ばれることもある。
【0023】
(コージェネレーション装置の構成)
コージェネレーション装置10は、商用電源(商用電力系統)30から電気負荷31に至る交流電力の給電路に接続可能な、発電機11(スタータ/ジェネレータ)と、発電機11を駆動するエンジン12と、エンジン12の冷却水を排気熱と熱交換させて昇温する熱交換器13とを主要部品として有する。そして、熱交換器13で昇温させられた冷却水が供給されて温水などを生成する排熱利用給湯暖房ユニット等の熱負荷32が接続される。
【0024】
商用電源30は、単相3線からAC100/200Vで50Hz(または60Hz)の交流電力を出力する。発電機11とエンジン12とは、熱交換器13と共にコージェネレーション装置10の筐体内部に収容される。
【0025】
エンジン12は、複数種のガスを燃料とする、水冷4サイクルの単気筒OHV(Over Head Valve)型の火花点火式のエンジンであり、例えば163ccの排気量を備える。エンジン12が内蔵する不図示のシリンダヘッド及びシリンダブロックは水平方向(横向き)に配置され、その内部に1個のピストン(不図示)が往復動自在に配置される。ピストンには鉛直方向に配置されるクランクシャフト40が連結される。クランクシャフト40近傍にはクランク角センサ14が設けられている。
【0026】
発電機11は多極コイルを備え、クランクシャフト40の上端に取り付けられるフライホイールの内側のクランクケース上に固定される。発電機11は、フライホイールとの間で相対回転するとき、交流電力を生成する。発電機11は、商用電源30(あるいは図示しないバッテリ)から通電されるとき、エンジン12をクランキングするスタータモータとしても機能する。
【0027】
エア供給源33から供給されるエア(吸気)は、エアクリーナ15を通ってミキサ16に供給される。一方、燃料供給源34から供給されるガスは、ガス供給路17、遮断弁18、流量調整弁19を介して供給され、そこでエアと混合させられる。つまり、ミキサ16で混合気が生成される。
【0028】
ミキサ16で生成された混合気はエンジン12内部の燃焼室(図示せず)に流れる。燃焼室の付近には不図示の点火プラグが配置される。点火プラグは、図示しないバッテリの出力がパワートランジスタやイグニッションコイルなどからなる点火装置を介して供給されると、燃焼室に臨む電極間に火花放電を生じ、混合気を着火して燃焼させる。よって生じた排気(排ガス)はエンジン12から出力され、熱交換器13を介してエンジン12に接続される排気管20を通って筐体の外に排出される。
【0029】
発電機11の出力はインバータユニット21に送られる。インバータユニット21は発電機11の出力をAC100/200V(単相)に変換する。インバータユニット21は、ECU(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)からなる制御部22の指令を受けて発電機11の機能をスタータとジェネレータの間で切り替える。制御部22には、熱負荷32の操作ユニット35が接続される。また、記憶部23と報知部24、並びに、電動モータ25〜27が接続されている。電動モータ25は、遮断弁18,電動モータ26は流量調整弁19、電動モータ27は、ミキサ16が内蔵するスロットル弁28をそれぞれ駆動する。
【0030】
制御部22は、操作ユニット35により入力される情報、およびクランク角センサ14他、各種センサを介して入力された情報に基づき、電動モータ25〜27を制御することにより、遮断弁18,流量調整弁19,スロットル弁28を制御してエンジン12の始動と運転の制御を行う。
【0031】
制御部22は、第1の運転信号(エンジン始動要求)を検出すると第1の開度による所定回数内のクランキングを開始させ、エンジン12の回転数が基準値に未達の場合、第2の開度による所定回数内のクランキングを開始させる制御を行う。
【0032】
また、制御部22は、第1の開度または第2の開度による所定回数内のクランキングでエンジンの回転数が基準値に到達した場合、第1の開度または第2の開度に対応する第1または第2のモードを記憶部23に保持する。制御部22は、記憶部23に第1のモードが保持され、第2の運転信号(次回エンジン始動要求)を検出すると、第2の運転信号に応じて第1の開度でクランキングを開始させ、記憶部23に第2のモードが保持され、第2の運転信号を検出すると、第2の運転信号に応じて第2の開度でクランキングを開始させる制御も行う。
【0033】
また、制御部22は、第1のモード、第2のモードのそれぞれによる所定回数内のクランキングで、いずれもエンジン12の回転数が基準値に未達の場合に、報知部24によりクランキングの不良を報知する制御も行う。
【0034】
ここでいう「開度」とは、例えば、図3に示すように、燃料調整弁19として用いられるニードルバルブアセンブリのニードル19eとオリフィス19fとの間に形成される開口部19gの開口面積のことをいう。この開口面積は、制御部22が、ニードル19eの上下動を駆動するステップモータ19aのステップ数を制御することによって可変設定する。すなわち、制御部22は、第1の開度aで複数回のクランキングによる始動を試み、基準値となるアイドリング回転数に到達しなければ、更に第2の開度bによる複数回のクランクキングによる始動を試みる構成とした。例えば、遮断弁18の開弁時間が75秒以内になっていた場合、8秒要するクランキングを3回、3セット(72秒)行うことが可能である。また、「モード」とは、設定された開度毎に行われる複数回(例えば3回)のクランキングセットのことをいう。
【0035】
インバータユニット21の出力は屋内配電盤36に送られる。屋内配電盤36は、過電流の通電などを防止する主幹ブレーカと、インバータユニット21の出力に商用電源30の電力を加えて電気負荷31に供給する分電盤と、発電機11の専用ブレーカと、商用電源30から主幹ブレーカに至る給電路に配置されてそこを流れる交流電力の電流に応じた信号を生じる電流センサなどを備える。即ち、インバータユニット21の出力は、屋内配電盤36で商用電源30の電力と連系されて電気負荷31に供給される。
【0036】
インバータユニット21の出力は、屋内配電盤36で商用電源30から電気負荷31に至る交流電力の給電路に接続可能にされる。尚、発電機11の発電出力(定格電力)は、1.OkW程度である。
【0037】
符号29は、エンジン12を冷却する冷却水(不凍液)の通路(以下、「冷却水通路」という)を示す。冷却水通路29は、エンジン12のシリンダブロックとオイルタンクや熱交換器13を通り、熱負荷32に接続される。熱交換器13において、冷却水は、排気(排ガス)と熱交換して昇温させられる。尚、熱交換器13は、例えば、冷却水通路29を変形させ、排気通路20を覆うような構造としたものである。熱交換器13を通過した冷却水は、シリンダブロックおよびシリンダヘッドに形成されるシリンダ通路に供給されてエンジン12と熱交換し、エンジン12を冷却する。排気やエンジン12との熱交換によって昇温させられた高温の冷却水は、冷却水通路29を通ってコージェネレーション装置10の筐体外部から熱負荷32に戻される。
【0038】
(流量調整弁の構造)
図2に、流量調整弁19として用いられるニードルバルブアセンブリの断面構造が示されている。ニードルバルブアセンブリは、ステップモータ19aと、回転軸19bと、プランジャ19cと、ストッパ19dと、ニードル19eと、オリフィス19fとにより構成される。ステップモータ19aの回転運動は、プランジャ19cにより上下動の直線運動に変換される。つまり、ステップモータ19aのモータ軸19bに取り付けられたリードスクリューの回転が、内壁に筒状のナットを有するプランジャ19cの相対的な回転、及び軸移動が禁止されるように取り付けられたストッパ19dにより直線運動に変換される。ここに示すステップモータ19aは、図1の電動モータ26に相当する。
【0039】
制御部22は、プランジャ19cの先端部に配置されてプランジャ19cの往復運動に連携して動作するニードル19eとオリフィス19fとの間に形成される開口部19gの開口面積(以下、開度という)を制御することによってガス管17を通るガスの流量を調整する。具体的に、図3(a)に示す図2の3aでのニードル19eとオリフィス19fで構成されるニードルバルブ本体のc−c断面を、図3(b)(c)(d)のそれぞれに示す。
【0040】
図3(b)に示されるように、ニードル19eの表面とオリフィス19fの座面とが接触した全閉時のステップモータ19aのステップ数(ゼロ)を基準とし、図3(c)に示されるようにステップモータ19aに供給されるステップ数がa(ゼロからのステップ数差)のときの開度を50%、図3(d)に示されるように、ステップ数がbのときの開度を70%として制御することとした。このステップ数との対応関係は、ガス種によって変化させるものとする。
【0041】
(制御部の動作)
図4に、クランキングによる始動が失敗(クランキング不良)したときの制御部22の動作が、図5に、クランキングによる始動が成功して運転状態に移行するときの制御部22の動作が、それぞれ示されている。図4及び図5は、共に、(a)クランキングのモード(モード1、モード2,モード3)、(b)クランク角センサ14の出力、(c)流量調整弁19の開度(ステップ数:小、中、大)が示されている。なお、図5において、(d)は次回始動時における流量調整弁19の開度、(e)は、次回始動時におけるクランク角センサ14出力である。
【0042】
図4のタイミング図には、制御部22により設定されるモード毎に各3回のクランキングを行ない、エンジン12の始動を制御することが示されている。図4によれば、始めに比較的高カロリーのガスから始動できるように流量調整弁19の開度が比較的小さいモード1を設定して3回のクランキングを実行する。
【0043】
ここで、3回のクランキングによってもエンジン12の回転数が基準値であるアイドリング回転数に至らず始動に失敗したことが確認されると、制御部22は、ガスカロリーが低いと認識して次に大きい開度(中)が設定されるモード2で3回のクランキングを実行する。ここでもエンジン12の始動に失敗したときに、更にガスカロリーが低いと認識して大きな開度(大)でモード3による3回のクランキングを実行する。なお、ここでは、高カロリーのガスから始動できるように、開度が比較的小さいモードから開度が大きくなモードを順次切り替えエンジン12の始動を制御することとしたが、順序は問わない。また、各モードにおけるクランキングは3回としたが、3回に制限されず、ガス供給通路17内のパージを含めて始動に必要な回数を設定すればよい。
【0044】
図5は、モード2が設定されたときの3回目のクランキングでエンジン12がアイドリング回転数に至り(完爆状態)、エンジン12の始動に成功した場合の動作を示している。ここでは、モード2が設定されたときにエンジン12の始動に成功しているため、エンジン12の運転開始前に記憶部23に対しエンジン12の始動を成功させたモードを保存しておくことにより、次回始動時、保持されたモード2(開度が中)からクランキングを開始することができる。このことにより、早い段階でエンジンを始動させることができ、したがって、始動までの待ち時間が短縮され、エンジン出力を負荷に早期に供給できる。
【0045】
なお、クランキング回数、エンジン回転数ともに、制御部22が、エンジン12のクランク軸近傍に取りつけられるクランク角センサ14から取得した角度情報に基づき演算することにより導出されるものとする。
【0046】
以下、図6、図7に示すフローチャートを参照しながら図1に示す制御部22の動作について詳細に説明する。
【0047】
図6において、制御部22は、常時、ユーザ操作によるエンジン始動要求の到来を監視している(ステップS101)。ここでは、熱負荷32の操作ユニット35からの始動ボタン操作を検知するものとする。ここで、エンジン始動が検知されると(ステップS101”YES”)、制御部22は、記憶部23に保持された設定(モード)の読み込みを行う(ステップS102)。記憶部23には、前回のエンジン始動が成功したときのモードが保持されているものとする。
【0048】
ここで、ステップモータ19aのステップ数がaのときの開度でエンジン12の始動を試みる「モード1」が設定されていた場合(ステップS103”YES”)、制御部22は、そのモード1にしたがう3回のクランキングを行う(ステップS104)。次に、制御部22は、そのクランキングによりエンジンが始動してアイドル回転数に到達したか否かを判定する(ステップS105)。ここで判定される基準値としてのアイドリング回転数とは、例えば、800rpmであり、制御部22は、クランク角センサ14によりクランク軸のクランク角に関する情報を取得してエンジン回転数を演算により計算し、アイドリング回転数との差を求めることにより判定する。
【0049】
ここで、エンジン12がアイドリング回転数に到達したと判定された場合(ステップS105”YES”)、その設定(モード1)を記憶部23に保持し(ステップS110)、熱負荷32に例えば給湯を行う運転状態に移行する(ステップS111)。なお、ここで運転状態とは、クランキングによりエンジン12が始動し、以降、熱負荷32により負荷に応じて制御部22が電動モータ27を介してスロットル弁28を制御している状態をいう。そして、制御部22は、エンジン停止要求の到来を待って(ステップS112”YES”)、その運転を終了する。
【0050】
一方、ステップS105のアイドリング回転数判定処理において、エンジン12がアイドリング回転数に未達と判定された場合(ステップS105”NO”)、制御部22は、ステップモータ19aのステップ数がbのときの開度でエンジン12の始動を試みる「モード2」による3回のクランキングを行う(ステップS106)。次に、制御部22は、そのクランキングによりエンジンが始動してアイドル回転数に到達したか否かを判定する(ステップS107)。
【0051】
ここで、エンジン12がアイドリング回転数に到達したと判定された場合(ステップS107”YES”)、その設定(モード2)を記憶部23に保持し(ステップS110)、熱負荷32に例えば給湯を行う運転状態に移行する(ステップS111)。一方、エンジン12がアイドリング回転数に未達と判定された場合(ステップS107”NO”)、制御部22は、ステップモータ19aのステップ数がcのときの開度でエンジン12の始動を試みる「モード3」による3回のクランキングを行う(ステップS108)。
【0052】
次に、制御部22は、そのクランキングによりエンジンが始動してアイドル回転数に到達したか否かを判定する(ステップS109)。ここで、エンジン12がアドリング回転数に到達したと判定された場合(ステップS109”YES”)、その設定(モード3)を記憶部23に保持し(ステップS110)、熱負荷32に例えば給湯を行う運転状態に移行する(ステップS111)。そして、エンジン停止要求の到来を待って(ステップS112”YES”)、運転を終了する。一方、依然としてエンジン12がアドリング回転数に未達と判定された場合(ステップS109”NO”)、制御部22は、報知部24を駆動してエラー(クランキング不良)を外部に通知する。
【0053】
一方、ステップS103のモード1判定処理において、記憶部23にモード1が保持されていないと判定された場合(ステップS103”NO”)、制御部22は、モード2が保持されているか否かを判定する(図7のステップS113)。ここで、「モード2」が設定されていた場合(ステップS113”YES”)、制御部22は、そのモードにしたがう3回のクランキングを行う(ステップS114)。次に、制御部22は、そのクランキングによりエンジンが始動してアイドル回転数に到達したか否かを判定する(ステップS115)。
【0054】
ここで、エンジン12がアドリング回転数に到達したと判定された場合(ステップS115”YES”)、その設定(モード2)を記憶部23に保持し(ステップS110)、熱負荷32に例えば給湯を行う運転状態に移行する(ステップS111)。そして、エンジン停止要求の到来を待って(ステップS112”YES”)、運転を終了する。
【0055】
一方、ステップS115のアイドリング回転数判定処理において、エンジン12がアイドリング回転数に未達と判定された場合(ステップS115”NO”)、制御部22は、ステップモータ19aのステップ数がaのときの開度でエンジン12の始動を試みる「モード1」による3回のクランキングを行う(ステップS116)。次に、制御部22は、そのクランキングによりエンジンが始動してアイドル回転数に到達したか否かを判定する(ステップS117)。
【0056】
ここで、エンジン12がアドリング回転数に到達したと判定された場合(ステップS117”YES”)、その設定(モード1)を記憶部23に保持し(ステップS110)、熱負荷32に例えば給湯を行う運転状態に移行する(ステップS111)。一方、エンジン12がアドリング回転数に未達と判定された場合(ステップS117”NO”)、制御部22は、ステップモータ19aのステップ数がcのときの開度でエンジン12の始動を試みる「モード3」による3回のクランキングを行う(ステップS118)。
【0057】
ここで、エンジン12がアドリング回転数に到達したと判定された場合(ステップS119”YES”)、その設定(モード3)を記憶部23に保持し(ステップS110)、熱負荷32に例えば給湯を行う運転状態に移行する(ステップS111)。そして、エンジン停止要求の到来を待って(ステップS112”YES”)、運転を終了する。なお、依然としてエンジン12がアドリング回転数に未達と判定された場合(ステップS119”NO”)、制御部22は、報知部24を駆動してエラー(クランキング不良)を外部に通知する。
【0058】
なお、ステップS113のモード2判定処理において、記憶部23にモード2が保持されていないと判定された場合(ステップS113”NO”)、制御部22は、モード3が保持されているか否かを判定する(ステップS120)。ここで、「モード3」が設定されていた場合(ステップS120”YES”)、制御部22は、そのモードにしたがう3回のクランキングを行う(ステップS121)。次に、制御部22は、そのクランキングによりエンジンが始動してアイドル回転数に到達したか否かを判定する(ステップS122)。
【0059】
ここで、エンジン12がアドリング回転数に到達したと判定された場合(ステップS122”YES”)、その設定(モード3)を記憶部23に保持し(図6のステップS110)、熱負荷32に例えば給湯を行う運転状態に移行する(ステップS111)。そして、エンジン停止要求の到来を待って(ステップS112”YES”)、その運転を終了する。
【0060】
一方、ステップS122のアイドリング回転数判定処理において、エンジン12がアイドリング回転数に未達と判定された場合(図7のステップS122”NO”)、制御部22は、ステップモータ19aのステップ数がaのときの開度でエンジン12の始動を試みる「モード1」による3回のクランキングを行う(ステップS123)。次に、制御部22は、そのクランキングによりエンジンが始動してアイドル回転数に到達したか否かを判定する(ステップS124)。
【0061】
ここで、エンジン12がアドリング回転数に到達したと判定された場合(ステップS124”YES”)、その設定(モード1)を記憶部23に保持し(図6のステップS110)、熱負荷32に例えば給湯を行う運転状態に移行する(ステップS111)。そして、エンジン停止要求の到来を待って(ステップS112”YES”)、運転を終了する。なお、依然としてエンジン12がアイドリング回転数に未達と判定された場合(ステップS126”NO”)、制御部22は、報知部24を駆動してエラー(クランキング不良)を外部に通知する。
【0062】
なお、記憶部23に、モード1,モード2,モード3のいずれも保持されていない場合(ステップS120”No”)は、上記したエンジン始動制御に関する一連の処理を終了する。
【0063】
図8に、本発明の実施例に係る制御装置の動作をグラフ上で従来例と対比して示した。(a)は本発明の実施例であり、(b)は従来例である。いずれも縦軸に開度(ガス流量)を、横軸にクランキングサイクルを示す。また、上に網掛けした領域は、ガス種Bのエンジン始動可能流量領域であり、下に網掛けした領域は、ガス種Aのエンジン始動可能流量領域である。図8(b)に示されるように、従来、ガス種Aに対して始動可能なガス流量になるように開度を固定してクランキングによる始動を行っていたものを、図8(a)に示されるように、開度を可変制御することでガス種Aの他にガス種Bでもエンジンの始動が可能になる。
【0064】
具体的に、流量調整弁19の開度を段階的に可変設定することによりエンジンの始動を制御することで、始動可能な燃料流量域が異なるガス種であってもその燃料流域に達したときにエンジンの始動が可能になる。例えば、ガス種Aではクランキング回数3回以内で始動が可能になり、ガス種Bでは、7〜9回のクランキングでエンジン12の始動が可能になる。
【0065】
(実施例の効果)
本発明の実施例に係る制御装置によれば、制御部22は、第1の運転信号を検出すると第1の開度でクランキングを開始させ、所定回数のクランキングでエンジンの回転が一定の回転数に到達した場合に第1の開度に対応する第1のモードでエンジンの運転を開始させ、一定の回転数に未達の場合、第2の開度を設定してクランキングを開始させ、一定の回転数に到達したか否かを検知してエンジンの始動を制御する。このため、第1の開度と第2の開度をガス種に応じて設定することでガス種に依存することなくガスエンジンの始動を可能とするエンジン制御装置を提供することができる。
【0066】
また、制御部22は、記憶部23に第1のモードが保持され、第2の運転信号を検出すると、第2の運転信号に応じて第1の開度でクランキングを開始する。このため、第2のモードと第3のモードによるクランキングの試行回数が減少することからエンジン始動に要する時間が短縮される。更に、制御部22は、第1のモードと第2のモードと第3のモードのいずれかのクランキングでエンジンの回転が所定の回転数に未達の場合に、報知部24によりクランキングの不良を報知する。したがって、運転者は報知部24を視認あるいは視聴することでエンジン始動の失敗を認識することができる。
【0067】
なお、本発明によれば、上記したガス種に依存することなくガスエンジンの始動を可能とする制御装置をコージェネレーション装置に適用することで、発電ユニットで生じた電力を商用電力系統と連携させて電気負荷31に供給すると共に、内燃機関(エンジン12)の排熱を利用して生成した温水等(熱エネルギー)を熱負荷32に供給することができる。
【符号の説明】
【0068】
10…コージェネレーション装置、11…発電機、12…エンジン、13…熱交換器、14…クランク角センサ、15…エアクリーナ、16…ミキサ、17…ガス供給路、18…遮断弁、19…流量調整弁、20…排気通路、21…インバータユニット、22…制御部、23…記憶部、24…報知部、25、26、27…電動モータ、28…スロットル弁、29…冷却水通路、30…商用電源、31…電気負荷、32…熱負荷、33…エア供給源、34…燃料供給源、35…操作ユニット、36…屋内配電盤、40…クランクシャフト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの始動を制御する制御装置であって、
設定される開度にしたがいエンジンに供給するガスの流量を調整する流量調整弁と、
第1の運転信号を検出すると第1の開度による所定回数内のクランキングを開始させ、前記エンジンの回転数が基準値に未達の場合、第2の開度による前記所定回数内のクランキングを開始させる制御を行う制御部と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
記憶部を有し、
前記第1の開度または前記第2の開度による所定回数内のクランキングで前記エンジンの回転数が前記基準値に到達した場合、前記第1の開度または前記第2の開度に対応する第1または第2のモードを前記記憶部に保持することを特徴とする請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記記憶部に前記第1のモードが保持され、第2の運転信号を検出すると、前記第2の運転信号に応じて前記第1の開度で前記クランキングを開始することを特徴とする請求項2記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記記憶部に前記第2のモードが保持され、第2の運転信号を検出すると、前記第2の運転信号に応じて前記第2の開度で前記クランキングを開始することを特徴とする請求項2記載の制御装置。
【請求項5】
報知部を更に有し、
前記制御部は、
前記第1のモード、前記第2のモードのそれぞれによる所定回数内のクランキングで、いずれも前記エンジンの回転数が前記基準値に未達の場合に、前記報知部によりクランキングの不良を報知することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の制御装置。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1項記載の制御装置を有するコージェネレーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−154276(P2012−154276A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15393(P2011−15393)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】