説明

制御装置

【課題】車窓に配された電熱線の給電制御を効率よく行い、無駄な電力消費を防止する制御装置を提供する。
【解決手段】リヤウィンドウ101に配された熱線10への給電制御を行う場合において、通電時に熱線10に流れる電流及び電圧を検出し、検出した電流及び電圧に基づいて、例えば時系列に変化する熱線10の抵抗値の変化量を算出する。算出した抵抗値の変化量に基づいて、熱線10の温度上昇度を算出し、温度上昇度が所定値以上の場合に、熱線10への給電を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結露、着霜又は凍結等による車窓の曇りを防止するなどのために車窓に配された電熱線への給電制御を行う制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車内外の温度差により車両のウィンドウが曇り又は凍結し、乗員の視界が遮られる場合がある。このため、車両には所謂デフォッガが備えられている。デフォッガは、主にリヤウィンドウに取り付けられた電熱線に電流を流し、発熱させることで、ウィンドウの曇り等を除去する。これにより、乗員の視界が確保される。
【0003】
デフォッガは、他の車載装置に比べて消費電力が大きいため、ウィンドウの曇り等を効果的に除去し、無駄な電力の消費を抑制する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の装置は、熱線ヒータ(電熱線)に流れる電流の時間的な変化量に基づいて、リヤウィンドウの周囲温度を推定し、推定結果に基づいて、熱線ヒータに断続的に電流を供給する構成となっている。この構成とすることで、ウィンドウの周囲温度に適した加温を可能とし、過度な通電を回避することで消費電力の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−151285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、熱線ヒータに流れる電流の変化量からでは正確なリヤウィンドウの周囲温度を推定できない可能性がある。この場合、断続的に電流を熱線ヒータに供給しても、リヤウィンドウの曇りを十分に除去できないおそれがある。そこで、本発明者は、電熱線に流れる電流及び電圧を用いることで、電熱線に係る温度を適切に算出することができ、その結果、省電力でより効率的な曇り防止等を実現できることの知見を得た。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車窓に配された電熱線の給電制御を効率よく行い、無駄な電力消費を防止する制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る制御装置は、車窓に配された電熱線への給電制御を行う制御装置において、通電時に前記電熱線に流れる電流及び電圧を検出する手段と、検出した電流及び電圧に基づいて、前記電熱線に係る温度を算出する算出手段と、算出した温度に基づいて、前記電熱線への給電を停止させる停止手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、車窓に配された電熱線に流れる電流及び電圧に基づいて算出した電熱線に係る温度に基づいて、電熱線への給電を停止させる。電熱線に係る温度が、例えば車窓の曇り除去又は防止等に十分な温度となったときに、給電を停止させることで、無駄な電力消費を防止することができる。
【0009】
本発明に係る制御装置は、前記電熱線に流れる電流及び電圧を経時的に算出するようにしてあり、検出した電流及び電圧に基づいて、前記電熱線の抵抗値を経時的に算出する手段と、算出した抵抗値の変化量を算出する手段とをさらに備え、前記算出手段は、算出した抵抗値の変化量に基づいて、前記変化量に関わった抵抗値を算出した時点の温度差を算出し、前記停止手段は算出した温度差が所定値以上である場合に、給電を停止させるようにしてあることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、通電による温度変化の結果、電力線の抵抗値が変化した場合、抵抗値の変化量を算出し、算出した変化量に基づいて、温度差を算出する。そして、温度差が所定値以上である場合に、給電を停止させる。抵抗値の変化から温度変化を算出することで、より正確な電熱線に係る温度を算出できる。その結果、電熱線の給電制御を効率よく行い、無駄な電力消費を防止することができる。
【0011】
本発明に係る制御装置は、検出した電流及び電圧に基づいて、前記電熱線の抵抗値を算出する手段と、車内温度及び車外温度を取得する手段とをさらに備え、前記算出手段は、算出した前記電熱線の抵抗値に基づいて、前記電熱線の温度を算出し、前記停止手段は、算出した前記電熱線の温度が、取得した車内温度及び車外温度以上である場合に、給電を停止させるようにしてあることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、電熱線に流れる電流及び電圧から算出した抵抗値に基づいて、電熱線の温度を算出し、算出した温度が、車内温度及び車外温度以上となったときに、給電を停止させる。これにより、電熱線への給電を停止させた後に、車窓に曇りが発生することを防止できる。
【0013】
本発明に係る制御装置は、前記電熱線への給電開始後の経過時間を計時する手段をさらに備え、前記停止手段は、給電開始から所定時間経過した場合、給電を停止させるようにしてあり、前記温度差が所定値以上である場合、又は、前記電熱線の温度が車内温度及び温度以上である場合、給電開始から所定時間経過するまで、断続的に前記電熱線へ給電させる手段をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、停止するまでに断続的に給電を行うことで、曇りなどを除去した後、再び車窓が曇らないように防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、車窓に配された電熱線に流れる電流及び電圧に基づいて算出した電熱線に係る温度に基づいて、電熱線への給電を停止させる。電熱線に係る温度が、例えば車窓の曇り除去又は防止等に十分な温度となったときに、給電を停止させることで、無駄な電力消費を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係るデフォッガ装置が搭載された車両を模式的に示す斜視図である。
【図2】実施形態1に係るデフォッガ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態1に係るデフォッガ装置で実行される処理を示すフローチャートである。
【図4】実施形態2に係るデフォッガ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】実施形態2に係るデフォッガ装置で実行される処理を示すフローチャートである。
【図6】実施形態3に係るデフォッガ装置で実行される処理を示すフローチャートである。
【図7】実施形態4に係るデフォッガ装置で実行される処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る御装置の好適な実施形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態では、本発明に係る制御装置を、車両に搭載されるデフォッガ装置として説明する。
【0018】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るデフォッガ装置が搭載された車両を模式的に示す斜視図である。実施形態1に係るデフォッガ装置は、車両100のリヤウィンドウ101の略全域に亘って埋め込まれた熱線10を備えている。熱線10は、デフォッガ装置がオンされることで通電され、発熱する抵抗発熱体である。熱線10は発熱することで、リヤウィンドウ101を加温する。これにより、デフォッガ装置は、結露、着霜又は凍結等によるリヤウィンドウ101の曇りを防止する。
【0019】
図2は、実施形態1に係るデフォッガ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【0020】
デフォッガ装置は、ECU(Electronic Control Unit)1、給電回路2、スイッチ3、電流センサ4、及び電圧センサ5等を備えている。給電回路2は、例えばリレースイッチを備えており、ECU1によりオンオフ制御されることで、所定電圧を熱線10へ給電し、給電を停止する。スイッチ3は、運転者がデフォッガ装置をオンオフするためのスイッチであり、例えばインストルメントパネル(図示せず)の所定位置に配置されている。電流センサ4及び電圧センサ5は、熱線10に流れる電流、及び熱線10に印加される電圧を検出する。電流センサ4及び電圧センサ5は、熱線10全体に流れる電流及び電圧を検出するようにしてもよいし、一部に流れる電流及び電圧を検出するようにしてもよい。
【0021】
ECU1は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備えるマイクロコンピュータを主体に構成されている。そして、ECU1は、CPUがROMに格納された制御プログラムを実行することで、バスで接続されている各部の動作制御を行うことによりデフォッガ装置全体の動作を制御する。
【0022】
ECU1は、給電回路2が備えるスイッチをオンオフすることで、熱線10へ給電し、また給電を停止する。例えば、スイッチ3がオンされたとき、ECU1は給電を開始し、スイッチ3がオフされたとき、ECU1は給電を停止する。また、ECU1はタイマ機能を備えており、スイッチ3がオンされてから所定時間(例えば、10分)経過したとき、ECU1は給電を停止する。なお、給電回路2にタイマ機能を搭載し、給電回路2において計時して、給電を停止するようにしてもよい。
【0023】
さらに、実施形態1では、ECU1は熱線10の温度上昇を推定し、熱線10が所定温度に達した場合に給電を停止する。以下、実施形態1における温度の推定方法について説明する。
【0024】
スイッチ3がオンされ、給電回路2を介して熱線10に給電を開始した後、ECU1は、電流センサ4及び電圧センサ5が検出する電流I及び電圧Vに基づいて、熱線10の抵抗値R(=V/I)を算出する。熱線10は、通電された場合、時間の経過と共に温度が上昇するため、熱線10の抵抗値Rは時間と共に変化する。ECU1は、抵抗値Rを随時算出し、変化する抵抗値Rの変化量ΔRを算出する。
【0025】
変化量ΔRは、通電開始時における熱線10の抵抗値Rintを基準とした変化量であり、ΔR=R−Rintにより算出される。抵抗値Rintは、通電開始後に熱線10に閾値(電流Ith)以上の電流が流れたときの熱線10の抵抗値である。なお、抵抗値Rintは、通電開始してから所定時間経過時における熱線10の抵抗値としてもよい。
【0026】
ECU1は、算出した抵抗値の変化量ΔRに基づいて、熱線10の温度上昇度ΔTを算出する。温度上昇度ΔTは、温度上昇により変化した熱線10の抵抗値Rにおける熱線10の温度Tと、抵抗値Rintにおける熱線10の温度Tintとの差分であり、ΔT=T−Tintとなる。ここで、熱線10の抵抗値Rは、R=R0 *{1+α(T−T0 )}と表すことができる。R0 は、0℃のときの熱線の抵抗値(例えば2Ω)、T0 は0(℃)、Tは、熱線の温度である。また、αは、温度係数(例えば0.004)である。そうすると、変化量ΔRは、ΔR=R−Rint=R0 *α(T−Tint)となる。したがって、温度上昇度ΔTは、ΔT=T−Tint=ΔR/β(β:係数)により算出することができる。
【0027】
ECU1は、算出した温度上昇度ΔTが所定値Tthとなった場合には、デフォッガ装置をオフにする。すなわち、ECU1は、通電されてから熱線10が温度Tth上昇したときに、給電回路2に熱線10への給電を停止させる。このとき、ECU1は、スイッチ3がオンされてから所定時間経過していない場合であってもオフにする。これにより、曇りが除去されて視界が確保された後は速やかに熱線への通電を停止することができ、無駄な電力消費を防止することができる。
【0028】
以上のように構成されるデフォッガ装置における動作について説明する。図3は、実施形態1に係るデフォッガ装置で実行される処理を示すフローチャートである。図3に示す処理は、ECU1により実行される。
【0029】
ECU1は、スイッチ3がオンされたか否かを判定する(S1)。オンされていない場合(S1:NO)、ECU1はオンされるまで待機する。オンされた場合(S1:YES)、ECU1は、給電回路2に熱線10への給電を開始させ(S2)、タイマを起動しカウントを開始する(S3)。ECU1は、電流センサ4及び電圧センサ5が検出した電流I及び電圧Vを取得し(S4)、電流Iが電流Ith以上であるか否かを判定する(S5)。電流Iが電流Ith以上でない場合(S5:NO)、ECU1は、S4を再度実行する。
【0030】
電流Iが電流Ith以上となった場合(S5:YES)、ECU1は、抵抗値Rintを算出する(S6)。抵抗値Rintは、電圧V/電流Iにより算出される。ECU1は、算出した抵抗値RintをRAMなどに記憶する。
【0031】
次に、ECU1は、電流センサ4及び電圧センサ5が検出した電流I及び電圧Vを取得し(S7)、抵抗値Rを算出する(S8)。ECU1は、抵抗値Rint及び抵抗値Rに基づいて、温度上昇度ΔTを算出する(S9)。ECU1は、算出した温度上昇度ΔTが所定値Tth以上であるか否かを判定する(S10)。温度上昇度ΔTが所定値Tth以上である場合(S10:YES)、ECU1は、給電回路2に熱線10への給電を停止させる(S12)。これにより、デフォッガ装置がオフとなり、ECU1は本処理を終了する。
【0032】
温度上昇度ΔTが所定値Tth以上でない場合(S10:NO)、ECU1は、S3でタイマを起動してから所定時間経過したか否かを判定する(S11)。所定時間経過していない場合(S11:NO)、ECU1は、処理をS7に戻す。所定時間経過した場合(S11:YES)、ECU1は、給電回路2に給電を停止させ(S12)、本処理を終了する。
【0033】
以上のように、実施形態1では、熱線10の抵抗値の変化量ΔRから、熱線10の温度上昇度ΔTを算出し、温度上昇度ΔTが所定値Tth以上の場合に、熱線10への給電を停止している。これにより、リヤウィンドウ101の曇りなどが除去されても、所定時間が経過するまで熱線10に給電し続けることによる電力消費を回避できる。
【0034】
(実施形態2)
以下、本発明に係る実施形態2について説明する。実施形態2では、熱線10の温度を算出し、算出した温度と、車内外の温度とに基づいて、デフォッガ装置をオフにする点で、実施形態1と相違する。以下、実施形態1との相違点について説明する。
【0035】
図4は、実施形態2に係るデフォッガ装置の電気的構成を示すブロック図である。実施形態2では、デフォッガ装置は、実施形態1の構成に加え、車内温度センサ6及び車外温度センサ7を備えている。ECU1は、車内温度センサ6及び車外温度センサ7が検出した温度を取得する。なお、実施形態2では、デフォッガ装置が車内温度センサ6及び車外温度センサ7を備える構成としているが、車両100に既に搭載されている車内温度センサ及び車外温度センサから、温度を取得する構成であってもよい。
【0036】
ECU1は、温度上昇により変化した熱線10の抵抗値Rにおける熱線10の温度Tを算出する。実施形態1で説明したように、温度上昇により変化した熱線10の抵抗値Rは、R=R0 *{1+α(T−T0 )}と表される。したがって、熱線10の温度Tは、T=(R/R0 −1)/α+T0 により算出される。
【0037】
ECU1は、算出した熱線10の温度Tが車内温度センサ6及び車外温度センサ7が検出した車外温度及び車内温度以上である場合には、デフォッガ装置をオフにする。すなわち、ECU1は、給電回路2に熱線10への給電を停止させる。車外温度及び車内温度に従って給電制御を行うことで、どのような気温環境下であっても、リヤウィンドウ101の曇りの除去後は速やかに熱線10への給電を停止することができ、無駄な電力消費を防止することができる。
【0038】
以下に、実施形態2に係るデフォッガ装置における動作について説明する。図5は、実施形態2に係るデフォッガ装置で実行される処理を示すフローチャートである。
【0039】
ECU1は、スイッチ3がオンされたか否かを判定する(S20)。オンされていない場合(S20:NO)、ECU1はオンされるまで待機する。オンされた場合(S20:YES)、ECU1は、給電回路2に熱線10への給電を開始させ(S21)、タイマを起動しカウントを開始する(S22)。ECU1は、電流センサ4及び電圧センサ5が検出した電流I及び電圧Vを取得し(S23)、電流Iが電流Ith以上であるか否かを判定する(S24)。電流Iが電流Ith以上でない場合(S24:NO)、ECU1は、S23を再度実行する。
【0040】
電流Iが電流Ith以上となった場合(S24:YES)、ECU1は、抵抗値Rintを算出する(S25)。次に、ECU1は、電流センサ4及び電圧センサ5が検出した電流I及び電圧V、並びに車内温度センサ6及び車外温度センサ7が検出した車内温度Tin及び車外温度Toutを取得する(S26)。ECU1は取得した電流I及び電圧Vから抵抗値Rを算出する(S27)。ECU1は、算出した抵抗値Rint及び抵抗値Rに基づいて、温度Tを算出する(S28)。ECU1は、算出した温度Tが車内温度Tin及び車外温度Tout以上であるか否かを判定する(S29)。
【0041】
車内温度Tin及び車外温度Tout以上である場合(S29:YES)、ECU1は、給電回路2に熱線10への給電を停止させる(S30)。これにより、デフォッガ装置がオフとなり、ECU1は本処理を終了する。温度Tが車内温度Tin及び車外温度Tout以上でない場合(S29:NO)、ECU1は、S22でタイマを起動してから所定時間経過したか否かを判定する(S31)。所定時間経過していない場合(S31:NO)、ECU1は、処理をS26に戻す。所定時間経過した場合(S31:YES)、ECU1は、給電回路2に給電を停止させ(S30)、本処理を終了する。
【0042】
以上のように、実施形態2では、熱線10の抵抗値の変化量ΔRから、熱線10の温度Tを算出する。そして、車外温度及び車内温度を目標温度として熱線10へ給電し、算出した温度Tが車外温度Tin及び車外温度Tout以上となったときに、熱線10への給電を停止する。これにより、リヤウィンドウ101の結露などを除去した後も給電し続けることで、電力消費が大きくなることを防止できる。
【0043】
(実施形態3)
以下、本発明に係る実施形態3について説明する。実施形態3では、温度上昇度ΔTの算出方法が実施形態1と相違する。また、実施形態3では、温度上昇度ΔTが所定値Tthとなった場合、熱線10をPWM(Pulse Width Modulation)制御する点で、実施形態1と相違する。以下、実施形態1との相違点について説明する。
【0044】
実施形態3に係るデフォッガ装置の構成は、実施形態1と同様である。実施形態3では、ECU1は、以下の式(1)又は式(2)により、温度上昇度ΔTを算出する。式(1)及び式(2)において、Δtは1s、τは120s、Rth1 は0.15(K/W)、Rth2 は0.064(K/V2 )である。また、nは自然数である。
【0045】
【数1】

【0046】
ECU1は、算出した温度上昇度ΔTが所定値Tthとなった場合、給電回路2に熱線10のPWM制御を実行させる。このとき、ECU1は、PWM制御における電圧Vpwmを算出する。温度上昇度ΔTが所定値Tthとなった場合、式(2)は、以下の式(3)と表せる。
【0047】
【数2】

【0048】
式(3)における電圧VをPWM制御時の電圧Vpwmとした場合、式(3)は、以下の式(4)と表され、式(4)から電圧Vpwmが算出される。
【0049】
【数3】

【0050】
ECU1は、算出した電圧Vpwmとなるように、給電回路2を制御して、熱線10のPWM制御を実行させる。
【0051】
以下に、実施形態3に係るデフォッガ装置における動作について説明する。図6は、実施形態3に係るデフォッガ装置で実行される処理を示すフローチャートである。
【0052】
ECU1は、スイッチ3がオンされたか否かを判定する(S40)。オンされていない場合(S40:NO)、ECU1はオンされるまで待機する。オンされた場合(S40:YES)、ECU1は、給電回路2に熱線10への給電を開始させ(S41)、タイマを起動しカウントを開始する(S42)。ECU1は、電流センサ4及び電圧センサ5が検出した電流I及び電圧Vを取得し(S43)、上述の式(1)又は式(2)により、温度上昇度ΔTを算出する(S44)。
【0053】
ECU1は、算出した温度上昇度ΔTが、所定値Tth以上であるか否かを判定する(S45)。所定値Tth以上である場合(S45:YES)、ECU1は、S42でタイマを起動してから所定時間経過したか否かを判定する(S46)。所定時間が経過していない場合(S46:NO)、ECU1は、給電回路2を介して熱線10のPWM制御を開始する(S47)。このとき、ECU1は、上述の電圧Vpwmを算出する。その後、ECU1は、S46の処理を実行し、所定時間が経過するまで熱線10のPWM制御を実行する。所定時間が経過した場合(S46:YES)、ECU1は、給電回路2に給電を停止させ(S48)、本処理を終了する。
【0054】
一方、算出した温度上昇度ΔTが、所定値Tth以上でない場合(S45:NO)、ECU1は、S42でタイマを起動してから所定時間が経過したか否かを判定する(S49)。所定時間が経過していない場合(S49:NO)、ECU1は、S43の処理を実行する。所定時間が経過した場合(S49:YES)、ECU1は、給電回路2に給電を停止させ(S48)、本処理を終了する。
【0055】
以上のように、実施形態3では、実施形態1のように、熱線10の抵抗値の変化量ΔRを算出することなく、温度上昇度ΔTを算出している。そして、温度上昇度ΔTが所定値Tth以上の場合に、熱線10のPWM制御を行っている。これにより、リヤウィンドウ101の曇りなどが除去された後に、リヤウィンドウ101が再び曇らないように防止することができる。また、熱線10に断続的に給電することで、電力消費を軽減することができる。
【0056】
(実施形態4)
以下、本発明に係る実施形態4について説明する。熱線10の温度Tの算出方法が、実施形態2と相違する。また、実施形態4では、温度Tが所定温度以上となった場合、熱線10をPWM制御する点で、実施形態2と相違する。以下、実施形態2との相違点について説明する。
【0057】
実施形態4に係るデフォッガ装置の構成、及び温度上昇度ΔTの算出方法は、実施形態2と同様である。ECU1は、温度上昇により変化した熱線10の抵抗値Rにおける熱線10の温度Tを算出する。温度Tは、T=ΔT+Taにより算出される。Taは、雰囲気温度であり、Ta=(Tin+Tout)/2により算出される。なお、PWM制御における電圧Vpwmは、実施形態3と同様の方法により算出される。
【0058】
ECU1は、算出した熱線10の温度Tが車内温度センサ6及び車外温度センサ7が検出した車内温度Tin及び車外温度Tout以上である場合には、デフォッガ装置をオフにする。すなわち、ECU1は、給電回路2に熱線10への給電を停止させる。
【0059】
以下に、実施形態4に係るデフォッガ装置における動作について説明する。図7は、実施形態4に係るデフォッガ装置で実行される処理を示すフローチャートである。
【0060】
ECU1は、スイッチ3がオンされたか否かを判定する(S60)。オンされていない場合(S60:NO)、ECU1はオンされるまで待機する。オンされた場合(S60:YES)、ECU1は、給電回路2に熱線10への給電を開始させ(S61)、タイマを起動しカウントを開始する(S62)。次に、ECU1は、電流センサ4及び電圧センサ5が検出した電流I及び電圧V、並びに車内温度センサ6及び車外温度センサ7が検出した車内温度Tin及び車外温度Toutを取得する(S63)。ECU1は、式(1)又は式(2)により、温度上昇度ΔTを算出する(S64)。
【0061】
次に、ECU1は、車内温度Tin及び車外温度Toutに基づいて、雰囲気温度Taを算出し(S65)、温度上昇度ΔTと雰囲気温度Taとを加算して、温度Tを算出する(S66)。ECU1は、算出した温度Tが車内温度Tin及び車外温度Tout以上であるか否かを判定する(S67)。
【0062】
車内温度Tin及び車外温度Tout以上である場合(S67:YES)、ECU1は、S62でタイマを起動してから所定時間経過したか否かを判定する(S68)。所定時間が経過していない場合(S68:NO)、ECU1は、給電回路2を介して熱線10のPWM制御を開始する(S69)。このとき、ECU1は、上述の電圧Vpwmを算出する。その後、ECU1は、S68の処理を実行し、所定時間が経過するまで熱線10のPWM制御を実行する。所定時間が経過した場合(S68:YES)、ECU1は、給電回路2に給電を停止させ(S70)、本処理を終了する。
【0063】
一方、算出した温度Tが車内温度Tin及び車外温度Tout以上でない場合(S67:NO)、ECU1は、S62でタイマを起動してから所定時間が経過したか否かを判定する(S71)。所定時間が経過していない場合(S71:NO)、ECU1は、S63の処理を実行する。所定時間が経過した場合(S71:YES)、ECU1は、給電回路2に給電を停止させ(S70)、本処理を終了する。
【0064】
以上説明したように、実施形態4では、熱線10の温度Tを算出し、温度Tが車内温度Tin及び車外温度Tout以上の場合に、熱線10のPWM制御を行っている。これにより、リヤウィンドウ101の結露などを除去した後も給電し続けることで、電力消費が大きくなることを防止できる。また、断続的に給電することで、熱線10の温度が下降し、リヤウィンドウ101に曇りが再び発生することを防止できる。この場合、断続的な給電とすることで、リヤウィンドウ101の曇りを防止するために常時熱線10へ給電する場合との対比において、電力消費を抑制することができる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態について、具体的に説明したが、各構成及び動作等は適宜変更可能であって、上述の実施形態に限定されることはない。上述の実施形態では、本発明に係る制御装置をデフォッガ装置として説明しているが、本発明に係る制御装置を他の車載機器に搭載してもよい。例えば、空調機器のECU等で、上述したデフォッガ装置のECU1の動作を実行させ、熱線10への給電を制御させてもよい。また、熱線10に流れる電流及び電圧に基づいて熱線10の温度、又は温度上昇度を算出する方法は、上述の実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0066】
1 ECU
2 給電回路
3 スイッチ
4 電流センサ
5 電圧センサ
10 熱線
101 リヤウィンドウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車窓に配された電熱線への給電制御を行う制御装置において、
通電時に前記電熱線に流れる電流及び電圧を検出する手段と、
検出した電流及び電圧に基づいて、前記電熱線に係る温度を算出する算出手段と、
算出した温度に基づいて、前記電熱線への給電を停止させる停止手段と
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記電熱線に流れる電流及び電圧を経時的に算出するようにしてあり、
検出した電流及び電圧に基づいて、前記電熱線の抵抗値を経時的に算出する手段と、
算出した抵抗値の変化量を算出する手段と
をさらに備え、
前記算出手段は、
算出した抵抗値の変化量に基づいて、前記変化量に関わった抵抗値を算出した時点の温度差を算出し、
前記停止手段は
算出した温度差が所定値以上である場合に、給電を停止させるようにしてある
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
検出した電流及び電圧に基づいて、前記電熱線の抵抗値を算出する手段と、
車内温度及び車外温度を取得する手段と
をさらに備え、
前記算出手段は、
算出した前記電熱線の抵抗値に基づいて、前記電熱線の温度を算出し、
前記停止手段は、
算出した前記電熱線の温度が、取得した車内温度及び車外温度以上である場合に、給電を停止させるようにしてある
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記電熱線への給電開始後の経過時間を計時する手段
をさらに備え、
前記停止手段は、
給電開始から所定時間経過した場合、給電を停止させるようにしてあり、
前記温度差が所定値以上である場合、又は、前記電熱線の温度が車内温度及び温度以上である場合、給電開始から所定時間経過するまで、断続的に前記電熱線へ給電させる手段
をさらに備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−73644(P2011−73644A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229731(P2009−229731)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】