刷版検出装置
【課題】版胴上における位置決め部材への刷版の当接を精度よく検出する。
【解決手段】刷版検出装置10は、回転軸を中心とする版胴3の外側面30上において、回転軸に平行な方向に互いに離間して設けられる一対の位置決め部材33、刷版9の一辺のエッジ91が一対の位置決め部材33の双方に当接する際に、エッジ91により押されることにより、一対の位置決め部材33に当接する一対の導通部材53、および、一対の導通部材53が一対の位置決め部材33に当接することにより電気的に閉じられる回路に設けられる検出部を備える。これにより、版胴3上における双方の位置決め部材33への刷版9の当接を精度よく検出することができる。
【解決手段】刷版検出装置10は、回転軸を中心とする版胴3の外側面30上において、回転軸に平行な方向に互いに離間して設けられる一対の位置決め部材33、刷版9の一辺のエッジ91が一対の位置決め部材33の双方に当接する際に、エッジ91により押されることにより、一対の位置決め部材33に当接する一対の導通部材53、および、一対の導通部材53が一対の位置決め部材33に当接することにより電気的に閉じられる回路に設けられる検出部を備える。これにより、版胴3上における双方の位置決め部材33への刷版9の当接を精度よく検出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、版胴上における位置決め部材への刷版の当接を検出する刷版検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
刷版を作製する製版装置や、刷版を用いて印刷を行う印刷機では、刷版を版胴に取り付ける際に、版胴上において版胴の回転軸に平行な方向に互いに離間して設けられる一対の位置決め部材に刷版のエッジを当接させることにより、版胴上における刷版の位置(周方向の位置)および刷版の当該エッジの回転軸に対する平行度が確保される。特許文献1では、刷版の挿入端である基準ピン孔の底面が基準ピン(位置決め部材)に当接すると、版胴側の検知部である両方の基準ピンが版によって導通され、ランプが点灯することにより版が確実に挿入されたことを確認する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−193114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、絶縁性の樹脂にて形成された刷版も用いられており、この場合、位置決め部材への刷版の当接を特許文献1の手法により検出することは不可能である。また、刷版の本体となる基材が導電性材料にて形成される場合に、当該基材への感光材料の塗布後に、基材をカットして刷版を取り出すときには、刷版において導電性を有する本体のエッジを位置決め部材に当接させることができるが、感光材料が塗布された基材がそのまま刷版として利用される(すなわち、カットをしない)ときには、絶縁性の感光材料が本体のエッジにも付着していることがある。この場合、位置決め部材への刷版の当接を特許文献1の手法により検出することができなくなる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、版胴上における位置決め部材への刷版の当接を精度よく検出することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、版胴上における位置決め部材への刷版の当接を検出する刷版検出装置であって、回転軸を中心とする版胴の外側面上において、前記回転軸に平行な方向に互いに離間して設けられる一対の位置決め部材と、刷版の一辺のエッジが前記一対の位置決め部材の双方に直接的または間接的に当接する際に、前記エッジにより押されることにより、前記一対の位置決め部材に当接する、または、前記一対の位置決め部材から離れる一対の導通部材と、前記エッジにより押される前記一対の導通部材が前記一対の位置決め部材に当接することにより電気的に閉じられる回路に設けられる、または、前記エッジにより押される前記一対の導通部材が前記一対の位置決め部材から離れることにより電気的に開かれる回路に設けられる検出部とを備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の刷版検出装置であって、前記エッジが前記一対の導通部材を間に挟んで前記一対の位置決め部材に間接的に当接する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の刷版検出装置であって、前記一対の導通部材のそれぞれが、板バネである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の刷版検出装置であって、前記版胴の前記外側面上にて前記刷版を保持するクランプの一部を押すことにより前記クランプを開放するクランプ開放部と、前記クランプ開放部に取り付けられ、前記クランプ開放部が前記クランプを開放する際に前記一対の位置決め部材に接触する一対の接触ピンとをさらに備え、前記一対の接触ピンが前記回路の一部を構成する。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の刷版検出装置であって、前記一対の導通部材が前記クランプ開放部に取り付けられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、版胴上における位置決め部材への刷版の当接を精度よく検出することができる。また、請求項2の発明では、位置決め部材への刷版の当接をより精度よく検出することができ、請求項3の発明では、刷版検出装置の構造を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像記録装置の構成を示す図である。
【図2】版胴の外側面を示す図である。
【図3】位置決め部材近傍を示す図である。
【図4】クランプ近傍を示す図である。
【図5】クランプ近傍を示す図である。
【図6】クランプ近傍を示す図である。
【図7】比較例の刷版検出装置を示す図である。
【図8】比較例の刷版検出装置を示す図である。
【図9】導通部材の他の例を示す図である。
【図10】導通部材のさらに他の例を示す図である。
【図11】導通部材のさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る画像記録装置1の構成を示す図である。画像記録装置1はCTP(Computer To Plate)用の装置(製版装置)であり、光ビームを出射するヘッド部2、画像が記録される刷版9を外側面30に保持する保持ドラムである版胴3、および、画像記録装置1の各構成要素を制御する制御部4を備える。刷版9にはヘッド部2からの光ビームが走査されつつ照射されることにより、画像が記録される(すなわち、光の照射により画像が記録される)。例えば、刷版9の本体は、アルミニウムや樹脂にて形成され、厚さは0.15mm(ミリメートル)以上0.4mm以下である。
【0014】
版胴3の外側面30は回転軸J1を中心とする円筒面であり、版胴3がモータ31により回転することにより、ヘッド部2が刷版9に対して版胴3の回転軸J1を中心とする周方向に相対的に一定の速度で移動する。また、ヘッド部2はモータ211およびボールねじ212を有するヘッド移動機構21により版胴3の回転軸J1に平行な方向(以下、「軸方向」という。)に移動し、ヘッド部2の位置はエンコーダ213により検出される。画像記録装置1では、ヘッド部2の刷版9に対する相対移動に同期してヘッド部2からの光ビームの出射が制御され、刷版9上に画像が記録される。
【0015】
図2は、版胴3の外側面30を示す図である。図2に示すように、版胴3の外側面30上には、軸方向に長い凹部301が形成されており、凹部301内には、複数のクランプ32および一対の位置決め部材33が設けられる。複数のクランプ32は軸方向に配列され、矩形の刷版9における一辺のエッジ91近傍の部位が複数のクランプ32と版胴3の外側面30との間にて把持される。一対の位置決め部材33は軸方向に互いに離間する。各位置決め部材33と重なる位置に配置されるクランプ32には、位置決め部材33との干渉を避ける切欠部320が形成される。
【0016】
図3は、1つの位置決め部材33近傍を拡大して示す図である。位置決め部材33は、例えばステンレス鋼等の金属にて形成され、導電性を有する。また、平面視した位置決め部材33において、刷版9に近接する端部は円弧状(例えば、曲率半径が20mmの円弧)である。後述するように、版胴3上に刷版9を取り付ける際には、刷版9のエッジ91と位置決め部材33との間に薄板状の部材(導通部材53)が配置され、その後、当該部材が取り外されるため、図3では、刷版9のエッジ91と位置決め部材33とが僅かに離間している。
【0017】
図4は、クランプ32近傍の構成を示す図である。図4では、版胴3、位置決め部材33およびクランプ32については、位置決め部材33の位置にて回転軸J1に垂直な面にて切断した断面を示し、他の構成要素については、回転軸J1に沿って見た様子を示す。また、図4では、後述の昇降機構52をブロックにて示し、版胴3上には刷版9は取り付けられていない。
【0018】
図4に示すように、版胴3の凹部301内には、各クランプ32を回転軸J1に平行な軸を中心に回動可能に支持する支持部材323が設けられる。また、凹部301内には、各クランプ32の一方の端部321(軸方向に垂直な方向における端部)を凹部301の底面から離れる方向(図4の上方)へと付勢するバネ(圧縮バネ)等の弾性部材324が設けられ、弾性部材324により、クランプ32の他方の端部322が外側面30に向けて付勢される。
【0019】
画像記録装置1は、図4中のクランプ32の上方に配置されるクランプ開放部51、および、クランプ開放部51を図4中の二点鎖線にて示す位置(以下、「開放位置」という。)へと移動する昇降機構52をさらに備える。クランプ開放部51は軸方向に長く、下端部には軸方向に伸びる棒状部材511が取り付けられる。昇降機構52が、クランプ開放部51を図4中の実線にて示す位置(以下、「退避位置」という。)から開放位置へと移動すると、図5に示すように、棒状部材511により、各クランプ32の一方の端部321が外側面30に向けて(正確には、凹部301の底面に向けて)押し下げられ、クランプ32の他方の端部322が外側面30から離間してクランプ32が開放される。実際には、昇降機構52はカム機構を有しており、クランプ開放部51の移動に伴って、クランプ開放部51の向きも僅かに変化する(すなわち、回転軸J1に平行な軸を中心として僅かに回動する)。
【0020】
また、クランプ開放部51には、一対の接触ピン54が取り付けられる。軸方向に関して、一対の接触ピン54は一対の位置決め部材33と同じ位置に配置され、クランプ開放部51がクランプ32を開放する際に、一対の接触ピン54が一対の位置決め部材33にそれぞれ接触する。このとき、ピン保持部541内にて各接触ピン54を付勢する圧縮バネが収縮して、接触ピン54がピン保持部541内へと押し込まれる。図2に示すように、一対の接触ピン54は導電線を介して検出部6に接続される。図2では、符号54を付す矢印にて接触ピン54を示している。
【0021】
図5に示すように、クランプ開放部51には、一対の導通部材53がさらに設けられる。軸方向に関して、一対の導通部材53は一対の位置決め部材33と同じ位置に配置され、クランプ開放部51がクランプ32を開放する際に、図5中に二点鎖線にて示すように導通部材53の先端が位置決め部材33と凹部301の側壁302(軸方向に沿う側壁)との間に配置される。例えば、導通部材53はステンレスバネ鋼(SUS304CSP等)にて形成され、厚さは0.05mm以上0.1mm以下である。また、一対の導通部材53の間には導電線が設けられ(図2参照)、一対の導通部材53は互いに電気的に接続する。なお、導通部材53は、ステンレスバネ鋼以外の金属等、導電性を有する他の材料にて形成されてよい。
【0022】
次に、刷版9を版胴3の外側面30上に取り付ける動作について説明する。刷版9を版胴3に取り付ける際には、図4に示すように、版胴3の凹部301が回転軸J1を中心とする周方向の所定の位置(図4では、版胴3の最上部となる位置)に配置される。また、次の画像記録動作にて画像が記録される(予定の)刷版9が準備される。
【0023】
続いて、昇降機構52によりクランプ開放部51が退避位置から開放位置へと移動し、図5に示すように、クランプ32が開放される。このとき、版胴3の外側面30に設けられる一対の位置決め部材33に一対の接触ピン54がそれぞれ接触するとともに、導通部材53の先端が位置決め部材33と凹部301の側壁302との間に配置される。一方、版胴3の回転軸J1に垂直な断面において、クランプ32が設けられる外側面30上の位置の接線に沿って図4に示す刷版9が搬送機構(図示省略)により移動する。そして、刷版9の一辺のエッジ91が各導通部材53の端部に(直接的に)当接し、導通部材53をさらに押し込んで、図5に示すように、導通部材53が位置決め部材33に当接する。換言すると、刷版9のエッジ91が一対の位置決め部材33に間接的に当接する。これにより、版胴3上における刷版9の位置(周方向の位置)および刷版9のエッジ91の軸方向に対する平行度が確保される。
【0024】
既述のように、図2の一対の位置決め部材33は一方の接触ピン54、検出部6および他方の接触ピン54を介して互いに電気的に接続し、一対の導通部材53も互いに電気的に接続する。したがって、各導通部材53が位置決め部材33に当接することにより、検出部6から一方の接触ピン54、一方の位置決め部材33、一方の導通部材53、他方の導通部材53、他方の位置決め部材33および他方の接触ピン54を介して検出部6へと戻る電気的に閉じられた回路61が形成される。これにより、検出部6において、双方の位置決め部材33への刷版9の(間接的な)当接が電気的に検出され、検出信号が制御部4へと出力される。このように、画像記録装置1では、クランプ開放部51(図5参照)、一対の位置決め部材33、一対の導通部材53、一対の接触ピン54および検出部6により、版胴3上における位置決め部材33への刷版9の当接を検出する刷版検出装置10が実現される。
【0025】
続いて、昇降機構52によりクランプ開放部51が開放位置から退避位置へと移動し、図6に示すように、クランプ32が閉じられる。このとき、一対の接触ピン54が一対の位置決め部材33から離間するとともに、導通部材53が位置決め部材33と凹部301の側壁302との間の位置から離間する。したがって、図3および図6に示すように、刷版9のエッジ91と位置決め部材33とが僅かに離間した状態にて、刷版9がクランプ32により版胴3の外側面30上に保持される。
【0026】
その後、版胴3が回転軸J1を中心として図6中の時計回りに所定の角度だけ回転し、刷版9が外側面30上に巻き付けられる。そして、刷版9においてエッジ91と平行な他方のエッジ近傍の部位が、版胴3上の他のクランプにより外側面30上に固定され、刷版9を版胴3上に取り付ける動作が完了する。
【0027】
刷版9上に画像を記録する際には、図示省略の撮像部により刷版9における軸方向に垂直な一方のエッジ(エッジ91に垂直なエッジ)が撮像され、軸方向に関しては、当該エッジの位置から一定距離だけ離れた位置が記録開始位置となる。また、回転軸J1を中心とする周方向に関しては、一対の位置決め部材33から所定の距離だけ離れた位置が記録開始位置となる。
【0028】
このとき、刷版9のエッジ91が位置決め部材33から導通部材53の厚さ分だけ離れるため、周方向に関して実際の記録開始位置は、エッジ91が位置決め部材33に直接的に当接する場合における記録開始位置からずれてしまう。しかしながら、画像記録装置1により画像が記録される全ての刷版9において、記録開始位置が同様にずれるため、複数の色用の複数の刷版9を用いて印刷機にて印刷を行う際に、印刷媒体上において色ずれが生じることはない。また、導通部材53を介して刷版9が位置決め部材33に当接する場合でも、周方向における刷版9の位置精度は、所定の要求精度(例えば、刷版間での位置ずれの許容範囲20μm(マイクロメートル))を満たすことが可能である。なお、導通部材53の厚さを考慮して、周方向における記録開始位置が補正されてよい。
【0029】
ここで、導通部材53を省略した比較例の刷版検出装置について説明する。図7および図8は、比較例の刷版検出装置90を示す図であり、図2および図5にそれぞれ対応する図である。比較例の刷版検出装置90では、本体が導電性を有する刷版9が用いられ、刷版9のエッジ91が一対の位置決め部材933に当接することにより、検出部96から一方の接触ピン954、一方の位置決め部材933、刷版9、他方の位置決め部材933および他方の接触ピン954を介して検出部96へと戻る電気的に閉じられた回路961が形成される。これにより、検出部96において、双方の位置決め部材933への刷版9の(直接的な)当接が電気的に検出される。
【0030】
しかしながら、比較例の刷版検出装置90において、絶縁性の感光材料が刷版9のエッジ91を覆う場合には、刷版9と位置決め部材933との間の電気的な導通が確保されないため、検出部96において、刷版9の位置決め部材933への当接を検出することができない。また、本体が絶縁性の樹脂にて形成される刷版9が用いられる場合には、比較例の刷版検出装置90では、刷版9の位置決め部材933への当接を検出することが不可能である。
【0031】
これに対し、図5の刷版検出装置10では、互いに電気的に接続された一対の導通部材53が設けられ、刷版9のエッジ91が一対の位置決め部材33の双方に当接する際に、一対の導通部材53がエッジ91により押されて一対の位置決め部材33に当接する。これにより、刷版9の導電性の有無にかかわらず、版胴3上における双方の位置決め部材33への刷版9の当接を精度よく検出することができる。また、一対の導通部材53のそれぞれが板バネであることにより、導通部材の移動をガイドする機構等を設けることなく、刷版9のエッジ91により押される導通部材53を位置決め部材33に当接させることができ、刷版検出装置10の構成を簡素化することができる。
【0032】
刷版検出装置10では、クランプ32の一部を押すことによりクランプ32を開放するクランプ開放部51が設けられ、検出用の回路61の一部を構成する一対の接触ピン54がクランプ開放部51に取り付けられる。これにより、スリップリング等を用いることなく、検出用の回路61を容易に形成することができる。また、一対の導通部材53もクランプ開放部51に取り付けられることにより、版胴3の回転時(画像記録時等)において導通部材53を版胴3上から容易に退避させることができ、ヘッド部2を版胴3に近接させて画像記録を行うこと等が可能となる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0034】
図9に示すように、軸方向(図9の横方向)において各位置決め部材33に隣接する位置に導通部材53aが設けられてよい。図9の導通部材53aは棒状であり、版胴3に固定される支持ピン533により導通部材53aが回転可能に支持される。また、導通部材53aの一方の端部531aには引張バネ等の弾性部材534が設けられ、端部531aが位置決め部材33から離れるように付勢される。刷版9を版胴3上に取り付ける際には、刷版9のエッジ91が導通部材53aの他方の端部532aに当接して端部532aがエッジ91により押される。そして、端部531aが位置決め部材33に当接することにより、検出部6において位置決め部材33への刷版9の当接が検出される。実際には、導通部材53aが撓むことにより、エッジ91が位置決め部材33に直接的に当接するまで、刷版9が位置決め部材33に向けて押し込まれる。
【0035】
また、図10に示すように、略L字状の導通部材53bが設けられてもよい。導通部材53bでは、一方の端部531bが支持ピン533により回転可能に支持され、弾性部材534により導通部材53bが位置決め部材33に向けて付勢される。刷版9を版胴3上に取り付ける際には、刷版9のエッジ91が導通部材53bの他方の端部532bに当接して端部532bが押されることにより、導通部材53bが位置決め部材33から離れ(すなわち、当接状態から離間状態となり)、刷版9が位置決め部材33にほぼ当接したことが検出部6にて検出される。
【0036】
以上のように、刷版検出装置10では、刷版9の一辺のエッジ91が一対の位置決め部材33の双方に直接的または間接的に当接する際に、エッジ91により押されることにより、一対の位置決め部材33に当接する、または、一対の位置決め部材33から離れる一対の導通部材が設けられる。これにより、エッジ91により押される一対の導通部材が一対の位置決め部材33に当接することにより電気的に閉じられる回路(閉回路)、または、エッジ91により押される一対の導通部材が一対の位置決め部材33から離れることにより電気的に開かれる回路が形成され、当該回路に設けられる検出部6により、双方の位置決め部材33への刷版9の当接を精度よく検出することが可能となる。ただし、位置決め部材33への刷版9の当接をより精度よく検出するには、図5の刷版検出装置10のように、刷版9のエッジ91が一対の導通部材53を間に挟んで一対の位置決め部材33に間接的に当接することが好ましい。
【0037】
版胴3の回転時において導通部材53を版胴3上から退避させる必要がない場合には、例えば位置決め部材33上に絶縁性の支持部材を設け、当該支持部材により導通部材53を支持することも可能である。この場合、刷版9が版胴3上に取り付けられていないときには導通部材53が位置決め部材33から離間し、刷版9が版胴3上に取り付けられているときには、刷版9のエッジ91により導通部材53の先端が押されて導通部材53と位置決め部材33とが常時当接する。
【0038】
刷版検出装置10において、例えば、図11に示す導通部材53cが用いられてもよい。図11の導通部材53cでは、ベース部材535に複数の糸状部材536が取り付けられ、ベース部材535および糸状部材536は、導電性材料にて形成される。刷版9が版胴3に取り付けられる際には、複数の糸状部材536が、位置決め部材33と、凹部301の側壁302との間に配置され、刷版9のエッジ91により押されて位置決め部材33と当接する。
【0039】
導通部材53,53a〜53cおよび位置決め部材33の一方、または、双方に、めっき等により導電性の高い材料(銅等)が被覆されてよい。
【0040】
刷版9のエッジ91において切欠部(例えば、半円状の切欠部)が形成され、当該切欠部の位置決め部材33への当接を検出する際に、上記導通部材53,53a〜53cが利用されてよい。この場合、切欠部のエッジも、刷版9のエッジ91の一部であると捉えることができる。
【0041】
刷版検出装置10は、刷版9に画像を記録する画像記録装置1以外に、刷版9を版胴の外側面に取り付けて各種印刷媒体に印刷を行う印刷機において用いられてよい。
【0042】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0043】
3 版胴
6 検出部
9 刷版
10 刷版検出装置
30 外側面
32 クランプ
33 位置決め部材
51 クランプ開放部
53,53a〜53c 導通部材
54 接触ピン
61 回路
91 エッジ
J1 回転軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、版胴上における位置決め部材への刷版の当接を検出する刷版検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
刷版を作製する製版装置や、刷版を用いて印刷を行う印刷機では、刷版を版胴に取り付ける際に、版胴上において版胴の回転軸に平行な方向に互いに離間して設けられる一対の位置決め部材に刷版のエッジを当接させることにより、版胴上における刷版の位置(周方向の位置)および刷版の当該エッジの回転軸に対する平行度が確保される。特許文献1では、刷版の挿入端である基準ピン孔の底面が基準ピン(位置決め部材)に当接すると、版胴側の検知部である両方の基準ピンが版によって導通され、ランプが点灯することにより版が確実に挿入されたことを確認する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−193114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、絶縁性の樹脂にて形成された刷版も用いられており、この場合、位置決め部材への刷版の当接を特許文献1の手法により検出することは不可能である。また、刷版の本体となる基材が導電性材料にて形成される場合に、当該基材への感光材料の塗布後に、基材をカットして刷版を取り出すときには、刷版において導電性を有する本体のエッジを位置決め部材に当接させることができるが、感光材料が塗布された基材がそのまま刷版として利用される(すなわち、カットをしない)ときには、絶縁性の感光材料が本体のエッジにも付着していることがある。この場合、位置決め部材への刷版の当接を特許文献1の手法により検出することができなくなる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、版胴上における位置決め部材への刷版の当接を精度よく検出することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、版胴上における位置決め部材への刷版の当接を検出する刷版検出装置であって、回転軸を中心とする版胴の外側面上において、前記回転軸に平行な方向に互いに離間して設けられる一対の位置決め部材と、刷版の一辺のエッジが前記一対の位置決め部材の双方に直接的または間接的に当接する際に、前記エッジにより押されることにより、前記一対の位置決め部材に当接する、または、前記一対の位置決め部材から離れる一対の導通部材と、前記エッジにより押される前記一対の導通部材が前記一対の位置決め部材に当接することにより電気的に閉じられる回路に設けられる、または、前記エッジにより押される前記一対の導通部材が前記一対の位置決め部材から離れることにより電気的に開かれる回路に設けられる検出部とを備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の刷版検出装置であって、前記エッジが前記一対の導通部材を間に挟んで前記一対の位置決め部材に間接的に当接する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の刷版検出装置であって、前記一対の導通部材のそれぞれが、板バネである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の刷版検出装置であって、前記版胴の前記外側面上にて前記刷版を保持するクランプの一部を押すことにより前記クランプを開放するクランプ開放部と、前記クランプ開放部に取り付けられ、前記クランプ開放部が前記クランプを開放する際に前記一対の位置決め部材に接触する一対の接触ピンとをさらに備え、前記一対の接触ピンが前記回路の一部を構成する。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の刷版検出装置であって、前記一対の導通部材が前記クランプ開放部に取り付けられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、版胴上における位置決め部材への刷版の当接を精度よく検出することができる。また、請求項2の発明では、位置決め部材への刷版の当接をより精度よく検出することができ、請求項3の発明では、刷版検出装置の構造を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像記録装置の構成を示す図である。
【図2】版胴の外側面を示す図である。
【図3】位置決め部材近傍を示す図である。
【図4】クランプ近傍を示す図である。
【図5】クランプ近傍を示す図である。
【図6】クランプ近傍を示す図である。
【図7】比較例の刷版検出装置を示す図である。
【図8】比較例の刷版検出装置を示す図である。
【図9】導通部材の他の例を示す図である。
【図10】導通部材のさらに他の例を示す図である。
【図11】導通部材のさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る画像記録装置1の構成を示す図である。画像記録装置1はCTP(Computer To Plate)用の装置(製版装置)であり、光ビームを出射するヘッド部2、画像が記録される刷版9を外側面30に保持する保持ドラムである版胴3、および、画像記録装置1の各構成要素を制御する制御部4を備える。刷版9にはヘッド部2からの光ビームが走査されつつ照射されることにより、画像が記録される(すなわち、光の照射により画像が記録される)。例えば、刷版9の本体は、アルミニウムや樹脂にて形成され、厚さは0.15mm(ミリメートル)以上0.4mm以下である。
【0014】
版胴3の外側面30は回転軸J1を中心とする円筒面であり、版胴3がモータ31により回転することにより、ヘッド部2が刷版9に対して版胴3の回転軸J1を中心とする周方向に相対的に一定の速度で移動する。また、ヘッド部2はモータ211およびボールねじ212を有するヘッド移動機構21により版胴3の回転軸J1に平行な方向(以下、「軸方向」という。)に移動し、ヘッド部2の位置はエンコーダ213により検出される。画像記録装置1では、ヘッド部2の刷版9に対する相対移動に同期してヘッド部2からの光ビームの出射が制御され、刷版9上に画像が記録される。
【0015】
図2は、版胴3の外側面30を示す図である。図2に示すように、版胴3の外側面30上には、軸方向に長い凹部301が形成されており、凹部301内には、複数のクランプ32および一対の位置決め部材33が設けられる。複数のクランプ32は軸方向に配列され、矩形の刷版9における一辺のエッジ91近傍の部位が複数のクランプ32と版胴3の外側面30との間にて把持される。一対の位置決め部材33は軸方向に互いに離間する。各位置決め部材33と重なる位置に配置されるクランプ32には、位置決め部材33との干渉を避ける切欠部320が形成される。
【0016】
図3は、1つの位置決め部材33近傍を拡大して示す図である。位置決め部材33は、例えばステンレス鋼等の金属にて形成され、導電性を有する。また、平面視した位置決め部材33において、刷版9に近接する端部は円弧状(例えば、曲率半径が20mmの円弧)である。後述するように、版胴3上に刷版9を取り付ける際には、刷版9のエッジ91と位置決め部材33との間に薄板状の部材(導通部材53)が配置され、その後、当該部材が取り外されるため、図3では、刷版9のエッジ91と位置決め部材33とが僅かに離間している。
【0017】
図4は、クランプ32近傍の構成を示す図である。図4では、版胴3、位置決め部材33およびクランプ32については、位置決め部材33の位置にて回転軸J1に垂直な面にて切断した断面を示し、他の構成要素については、回転軸J1に沿って見た様子を示す。また、図4では、後述の昇降機構52をブロックにて示し、版胴3上には刷版9は取り付けられていない。
【0018】
図4に示すように、版胴3の凹部301内には、各クランプ32を回転軸J1に平行な軸を中心に回動可能に支持する支持部材323が設けられる。また、凹部301内には、各クランプ32の一方の端部321(軸方向に垂直な方向における端部)を凹部301の底面から離れる方向(図4の上方)へと付勢するバネ(圧縮バネ)等の弾性部材324が設けられ、弾性部材324により、クランプ32の他方の端部322が外側面30に向けて付勢される。
【0019】
画像記録装置1は、図4中のクランプ32の上方に配置されるクランプ開放部51、および、クランプ開放部51を図4中の二点鎖線にて示す位置(以下、「開放位置」という。)へと移動する昇降機構52をさらに備える。クランプ開放部51は軸方向に長く、下端部には軸方向に伸びる棒状部材511が取り付けられる。昇降機構52が、クランプ開放部51を図4中の実線にて示す位置(以下、「退避位置」という。)から開放位置へと移動すると、図5に示すように、棒状部材511により、各クランプ32の一方の端部321が外側面30に向けて(正確には、凹部301の底面に向けて)押し下げられ、クランプ32の他方の端部322が外側面30から離間してクランプ32が開放される。実際には、昇降機構52はカム機構を有しており、クランプ開放部51の移動に伴って、クランプ開放部51の向きも僅かに変化する(すなわち、回転軸J1に平行な軸を中心として僅かに回動する)。
【0020】
また、クランプ開放部51には、一対の接触ピン54が取り付けられる。軸方向に関して、一対の接触ピン54は一対の位置決め部材33と同じ位置に配置され、クランプ開放部51がクランプ32を開放する際に、一対の接触ピン54が一対の位置決め部材33にそれぞれ接触する。このとき、ピン保持部541内にて各接触ピン54を付勢する圧縮バネが収縮して、接触ピン54がピン保持部541内へと押し込まれる。図2に示すように、一対の接触ピン54は導電線を介して検出部6に接続される。図2では、符号54を付す矢印にて接触ピン54を示している。
【0021】
図5に示すように、クランプ開放部51には、一対の導通部材53がさらに設けられる。軸方向に関して、一対の導通部材53は一対の位置決め部材33と同じ位置に配置され、クランプ開放部51がクランプ32を開放する際に、図5中に二点鎖線にて示すように導通部材53の先端が位置決め部材33と凹部301の側壁302(軸方向に沿う側壁)との間に配置される。例えば、導通部材53はステンレスバネ鋼(SUS304CSP等)にて形成され、厚さは0.05mm以上0.1mm以下である。また、一対の導通部材53の間には導電線が設けられ(図2参照)、一対の導通部材53は互いに電気的に接続する。なお、導通部材53は、ステンレスバネ鋼以外の金属等、導電性を有する他の材料にて形成されてよい。
【0022】
次に、刷版9を版胴3の外側面30上に取り付ける動作について説明する。刷版9を版胴3に取り付ける際には、図4に示すように、版胴3の凹部301が回転軸J1を中心とする周方向の所定の位置(図4では、版胴3の最上部となる位置)に配置される。また、次の画像記録動作にて画像が記録される(予定の)刷版9が準備される。
【0023】
続いて、昇降機構52によりクランプ開放部51が退避位置から開放位置へと移動し、図5に示すように、クランプ32が開放される。このとき、版胴3の外側面30に設けられる一対の位置決め部材33に一対の接触ピン54がそれぞれ接触するとともに、導通部材53の先端が位置決め部材33と凹部301の側壁302との間に配置される。一方、版胴3の回転軸J1に垂直な断面において、クランプ32が設けられる外側面30上の位置の接線に沿って図4に示す刷版9が搬送機構(図示省略)により移動する。そして、刷版9の一辺のエッジ91が各導通部材53の端部に(直接的に)当接し、導通部材53をさらに押し込んで、図5に示すように、導通部材53が位置決め部材33に当接する。換言すると、刷版9のエッジ91が一対の位置決め部材33に間接的に当接する。これにより、版胴3上における刷版9の位置(周方向の位置)および刷版9のエッジ91の軸方向に対する平行度が確保される。
【0024】
既述のように、図2の一対の位置決め部材33は一方の接触ピン54、検出部6および他方の接触ピン54を介して互いに電気的に接続し、一対の導通部材53も互いに電気的に接続する。したがって、各導通部材53が位置決め部材33に当接することにより、検出部6から一方の接触ピン54、一方の位置決め部材33、一方の導通部材53、他方の導通部材53、他方の位置決め部材33および他方の接触ピン54を介して検出部6へと戻る電気的に閉じられた回路61が形成される。これにより、検出部6において、双方の位置決め部材33への刷版9の(間接的な)当接が電気的に検出され、検出信号が制御部4へと出力される。このように、画像記録装置1では、クランプ開放部51(図5参照)、一対の位置決め部材33、一対の導通部材53、一対の接触ピン54および検出部6により、版胴3上における位置決め部材33への刷版9の当接を検出する刷版検出装置10が実現される。
【0025】
続いて、昇降機構52によりクランプ開放部51が開放位置から退避位置へと移動し、図6に示すように、クランプ32が閉じられる。このとき、一対の接触ピン54が一対の位置決め部材33から離間するとともに、導通部材53が位置決め部材33と凹部301の側壁302との間の位置から離間する。したがって、図3および図6に示すように、刷版9のエッジ91と位置決め部材33とが僅かに離間した状態にて、刷版9がクランプ32により版胴3の外側面30上に保持される。
【0026】
その後、版胴3が回転軸J1を中心として図6中の時計回りに所定の角度だけ回転し、刷版9が外側面30上に巻き付けられる。そして、刷版9においてエッジ91と平行な他方のエッジ近傍の部位が、版胴3上の他のクランプにより外側面30上に固定され、刷版9を版胴3上に取り付ける動作が完了する。
【0027】
刷版9上に画像を記録する際には、図示省略の撮像部により刷版9における軸方向に垂直な一方のエッジ(エッジ91に垂直なエッジ)が撮像され、軸方向に関しては、当該エッジの位置から一定距離だけ離れた位置が記録開始位置となる。また、回転軸J1を中心とする周方向に関しては、一対の位置決め部材33から所定の距離だけ離れた位置が記録開始位置となる。
【0028】
このとき、刷版9のエッジ91が位置決め部材33から導通部材53の厚さ分だけ離れるため、周方向に関して実際の記録開始位置は、エッジ91が位置決め部材33に直接的に当接する場合における記録開始位置からずれてしまう。しかしながら、画像記録装置1により画像が記録される全ての刷版9において、記録開始位置が同様にずれるため、複数の色用の複数の刷版9を用いて印刷機にて印刷を行う際に、印刷媒体上において色ずれが生じることはない。また、導通部材53を介して刷版9が位置決め部材33に当接する場合でも、周方向における刷版9の位置精度は、所定の要求精度(例えば、刷版間での位置ずれの許容範囲20μm(マイクロメートル))を満たすことが可能である。なお、導通部材53の厚さを考慮して、周方向における記録開始位置が補正されてよい。
【0029】
ここで、導通部材53を省略した比較例の刷版検出装置について説明する。図7および図8は、比較例の刷版検出装置90を示す図であり、図2および図5にそれぞれ対応する図である。比較例の刷版検出装置90では、本体が導電性を有する刷版9が用いられ、刷版9のエッジ91が一対の位置決め部材933に当接することにより、検出部96から一方の接触ピン954、一方の位置決め部材933、刷版9、他方の位置決め部材933および他方の接触ピン954を介して検出部96へと戻る電気的に閉じられた回路961が形成される。これにより、検出部96において、双方の位置決め部材933への刷版9の(直接的な)当接が電気的に検出される。
【0030】
しかしながら、比較例の刷版検出装置90において、絶縁性の感光材料が刷版9のエッジ91を覆う場合には、刷版9と位置決め部材933との間の電気的な導通が確保されないため、検出部96において、刷版9の位置決め部材933への当接を検出することができない。また、本体が絶縁性の樹脂にて形成される刷版9が用いられる場合には、比較例の刷版検出装置90では、刷版9の位置決め部材933への当接を検出することが不可能である。
【0031】
これに対し、図5の刷版検出装置10では、互いに電気的に接続された一対の導通部材53が設けられ、刷版9のエッジ91が一対の位置決め部材33の双方に当接する際に、一対の導通部材53がエッジ91により押されて一対の位置決め部材33に当接する。これにより、刷版9の導電性の有無にかかわらず、版胴3上における双方の位置決め部材33への刷版9の当接を精度よく検出することができる。また、一対の導通部材53のそれぞれが板バネであることにより、導通部材の移動をガイドする機構等を設けることなく、刷版9のエッジ91により押される導通部材53を位置決め部材33に当接させることができ、刷版検出装置10の構成を簡素化することができる。
【0032】
刷版検出装置10では、クランプ32の一部を押すことによりクランプ32を開放するクランプ開放部51が設けられ、検出用の回路61の一部を構成する一対の接触ピン54がクランプ開放部51に取り付けられる。これにより、スリップリング等を用いることなく、検出用の回路61を容易に形成することができる。また、一対の導通部材53もクランプ開放部51に取り付けられることにより、版胴3の回転時(画像記録時等)において導通部材53を版胴3上から容易に退避させることができ、ヘッド部2を版胴3に近接させて画像記録を行うこと等が可能となる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0034】
図9に示すように、軸方向(図9の横方向)において各位置決め部材33に隣接する位置に導通部材53aが設けられてよい。図9の導通部材53aは棒状であり、版胴3に固定される支持ピン533により導通部材53aが回転可能に支持される。また、導通部材53aの一方の端部531aには引張バネ等の弾性部材534が設けられ、端部531aが位置決め部材33から離れるように付勢される。刷版9を版胴3上に取り付ける際には、刷版9のエッジ91が導通部材53aの他方の端部532aに当接して端部532aがエッジ91により押される。そして、端部531aが位置決め部材33に当接することにより、検出部6において位置決め部材33への刷版9の当接が検出される。実際には、導通部材53aが撓むことにより、エッジ91が位置決め部材33に直接的に当接するまで、刷版9が位置決め部材33に向けて押し込まれる。
【0035】
また、図10に示すように、略L字状の導通部材53bが設けられてもよい。導通部材53bでは、一方の端部531bが支持ピン533により回転可能に支持され、弾性部材534により導通部材53bが位置決め部材33に向けて付勢される。刷版9を版胴3上に取り付ける際には、刷版9のエッジ91が導通部材53bの他方の端部532bに当接して端部532bが押されることにより、導通部材53bが位置決め部材33から離れ(すなわち、当接状態から離間状態となり)、刷版9が位置決め部材33にほぼ当接したことが検出部6にて検出される。
【0036】
以上のように、刷版検出装置10では、刷版9の一辺のエッジ91が一対の位置決め部材33の双方に直接的または間接的に当接する際に、エッジ91により押されることにより、一対の位置決め部材33に当接する、または、一対の位置決め部材33から離れる一対の導通部材が設けられる。これにより、エッジ91により押される一対の導通部材が一対の位置決め部材33に当接することにより電気的に閉じられる回路(閉回路)、または、エッジ91により押される一対の導通部材が一対の位置決め部材33から離れることにより電気的に開かれる回路が形成され、当該回路に設けられる検出部6により、双方の位置決め部材33への刷版9の当接を精度よく検出することが可能となる。ただし、位置決め部材33への刷版9の当接をより精度よく検出するには、図5の刷版検出装置10のように、刷版9のエッジ91が一対の導通部材53を間に挟んで一対の位置決め部材33に間接的に当接することが好ましい。
【0037】
版胴3の回転時において導通部材53を版胴3上から退避させる必要がない場合には、例えば位置決め部材33上に絶縁性の支持部材を設け、当該支持部材により導通部材53を支持することも可能である。この場合、刷版9が版胴3上に取り付けられていないときには導通部材53が位置決め部材33から離間し、刷版9が版胴3上に取り付けられているときには、刷版9のエッジ91により導通部材53の先端が押されて導通部材53と位置決め部材33とが常時当接する。
【0038】
刷版検出装置10において、例えば、図11に示す導通部材53cが用いられてもよい。図11の導通部材53cでは、ベース部材535に複数の糸状部材536が取り付けられ、ベース部材535および糸状部材536は、導電性材料にて形成される。刷版9が版胴3に取り付けられる際には、複数の糸状部材536が、位置決め部材33と、凹部301の側壁302との間に配置され、刷版9のエッジ91により押されて位置決め部材33と当接する。
【0039】
導通部材53,53a〜53cおよび位置決め部材33の一方、または、双方に、めっき等により導電性の高い材料(銅等)が被覆されてよい。
【0040】
刷版9のエッジ91において切欠部(例えば、半円状の切欠部)が形成され、当該切欠部の位置決め部材33への当接を検出する際に、上記導通部材53,53a〜53cが利用されてよい。この場合、切欠部のエッジも、刷版9のエッジ91の一部であると捉えることができる。
【0041】
刷版検出装置10は、刷版9に画像を記録する画像記録装置1以外に、刷版9を版胴の外側面に取り付けて各種印刷媒体に印刷を行う印刷機において用いられてよい。
【0042】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0043】
3 版胴
6 検出部
9 刷版
10 刷版検出装置
30 外側面
32 クランプ
33 位置決め部材
51 クランプ開放部
53,53a〜53c 導通部材
54 接触ピン
61 回路
91 エッジ
J1 回転軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
版胴上における位置決め部材への刷版の当接を検出する刷版検出装置であって、
回転軸を中心とする版胴の外側面上において、前記回転軸に平行な方向に互いに離間して設けられる一対の位置決め部材と、
刷版の一辺のエッジが前記一対の位置決め部材の双方に直接的または間接的に当接する際に、前記エッジにより押されることにより、前記一対の位置決め部材に当接する、または、前記一対の位置決め部材から離れる一対の導通部材と、
前記エッジにより押される前記一対の導通部材が前記一対の位置決め部材に当接することにより電気的に閉じられる回路に設けられる、または、前記エッジにより押される前記一対の導通部材が前記一対の位置決め部材から離れることにより電気的に開かれる回路に設けられる検出部と、
を備えることを特徴とする刷版検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の刷版検出装置であって、
前記エッジが前記一対の導通部材を間に挟んで前記一対の位置決め部材に間接的に当接することを特徴とする刷版検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の刷版検出装置であって、
前記一対の導通部材のそれぞれが、板バネであることを特徴とする刷版検出装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の刷版検出装置であって、
前記版胴の前記外側面上にて前記刷版を保持するクランプの一部を押すことにより前記クランプを開放するクランプ開放部と、
前記クランプ開放部に取り付けられ、前記クランプ開放部が前記クランプを開放する際に前記一対の位置決め部材に接触する一対の接触ピンと、
をさらに備え、
前記一対の接触ピンが前記回路の一部を構成することを特徴とする刷版検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の刷版検出装置であって、
前記一対の導通部材が前記クランプ開放部に取り付けられることを特徴とする刷版検出装置。
【請求項1】
版胴上における位置決め部材への刷版の当接を検出する刷版検出装置であって、
回転軸を中心とする版胴の外側面上において、前記回転軸に平行な方向に互いに離間して設けられる一対の位置決め部材と、
刷版の一辺のエッジが前記一対の位置決め部材の双方に直接的または間接的に当接する際に、前記エッジにより押されることにより、前記一対の位置決め部材に当接する、または、前記一対の位置決め部材から離れる一対の導通部材と、
前記エッジにより押される前記一対の導通部材が前記一対の位置決め部材に当接することにより電気的に閉じられる回路に設けられる、または、前記エッジにより押される前記一対の導通部材が前記一対の位置決め部材から離れることにより電気的に開かれる回路に設けられる検出部と、
を備えることを特徴とする刷版検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の刷版検出装置であって、
前記エッジが前記一対の導通部材を間に挟んで前記一対の位置決め部材に間接的に当接することを特徴とする刷版検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の刷版検出装置であって、
前記一対の導通部材のそれぞれが、板バネであることを特徴とする刷版検出装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の刷版検出装置であって、
前記版胴の前記外側面上にて前記刷版を保持するクランプの一部を押すことにより前記クランプを開放するクランプ開放部と、
前記クランプ開放部に取り付けられ、前記クランプ開放部が前記クランプを開放する際に前記一対の位置決め部材に接触する一対の接触ピンと、
をさらに備え、
前記一対の接触ピンが前記回路の一部を構成することを特徴とする刷版検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の刷版検出装置であって、
前記一対の導通部材が前記クランプ開放部に取り付けられることを特徴とする刷版検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−39699(P2013−39699A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176835(P2011−176835)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]