説明

前立腺癌の領域効果分析方法およびキット

【課題】組織病理学的な切除縁近傍で検出可能なメチル化マーカーの検出に基づいて前立腺癌を特徴付ける方法を提供する。
【解決手段】各種遺伝子のメチル化状態の検出を含む前立腺癌を特徴付ける方法およびキット。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2006年10月31日に出願された米国仮特許出願第60/855640号の利益を主張するものである。
【0002】
〔発明の背景〕
本発明は、切除縁内等の腫瘍に近接する領域に存在するメチル化遺伝子の検査法に関する。
【0003】
広域発癌(field cancerizaiton)の前提(領域効果(field effect)とも呼ばれる)は、原発性腫瘍の多発および局所的再発の発生を説明するために、1950年代に最初に提唱された。この概念は、癌が多くの部位で発生して、腫瘍を異常組織が取り囲んで発生しており、新生物性の細胞(neoplastic cells)または前新生物性の細胞(preneoplastic cells)が、腫瘍に近位の組織学的に正常な領域に存在していることを示唆している、という知見に基づいている。
【0004】
腫瘍の拡散を判定する標準的な方法は、原発性腫瘍を外科的に切除し、続けて、光学顕微鏡を使用して切除縁および他の組織を注意深く観察することである。既存の手段では、組織近傍を標準的手法で染色し、光学顕微鏡下で腫瘍細胞の存在を判定する。的確な病期診断は、リンパ節等の、より遠位部での局所転移の存在とともに、腫瘍の局所的拡散の程度も判断する。組織病理学的判定は、生存の確率の判定を補助する予後診断的な指標を提供する。
【0005】
目視観察、および光学顕微鏡下における隣接組織および局所リンパ節の形態学的判定に基づいた標準的な組織病理学的方法論には、限界があることが知られている。より初期の段階で疾病の拡散を判定する能力がより高く、隣接組織および局所組織での腫瘍転移の程度のより正確な指標となる情報を得ることが可能な方法が望まれている。本発明は、試料中のメチル化マーカーの検出に基づいて、そのような方法を提供するものである。
【0006】
高等真核生物において、CpGジヌクレオチド内のグアノシンの5’側に位置するシトシンでのみ、DNAがメチル化される。この修飾は、特に遺伝子プロモーター領域に位置するCpGリッチ領域(CpGアイランド)を含む場合に、遺伝子の発現での重要な調節効果を持つ。通常はメチル化されないCpGアイランドの異常なメチル化は、不死化および形質転換した細胞において頻繁に起こる事象であり、ある種の腫瘍抑制遺伝子、もしくはある種のヒトの癌の改善と関連のある遺伝子の転写不活性化と関連付けられてきた。前記のようなメチル化事象の検出は、組織病理学的情報が明瞭でないもしくは全体として有益でない場合、または前記検出が組織病理学的情報の活用を増大できる場合に、診断的および/または予後診断的情報を提供することができる。
【0007】
〔発明の概要〕
本発明の一態様は、組織病理学的な切除縁(標準的な組織学的手法で検査した時に正常に見える)近傍で検出可能なメチル化マーカーの検出に基づいて前立腺癌を特徴付ける方法である。
【0008】
本発明は、ハイリスク集団を選別し、化学的予防または化学療法を受けているハイリスク患者をモニタリングするための、細胞病理学の補助として使用可能な方法を提供する。
【0009】
本発明の別の態様は、前立腺癌を特徴付けるためのキットである。キットは、メチル化マーカーの増幅および検出のための試薬を備え、切除縁試料を使用して前立腺癌の患者にそれらを使用するための説明書を含む。
【0010】
本発明の別の態様では、悪性または悪性度が低い前立腺癌の患者を、腫瘍縁のメチル化マーカーの有無に依存して処置する方法と同様に、患者を治療する。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、以下に示す群の1つ以上の遺伝子の過剰メチル化は、切除縁試料中に検出される。すなわち、APC、RASSF1A、および、RARβ2である。患者の前立腺癌に関する状態は、そのような検出に基づいて特徴づけられる。過剰メチル化の検出は、過剰メチル化の検出は、病気の転移または悪性度に対する予後不良の指標となる。予後診断は、他の指標と組み合わることが最も好ましい。
【0012】
本発明の別の態様では、定量リアルタイムPCRを介してメチル化の状態を決定する。
【0013】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、腫瘍縁標本等の原発性新生物の外側の組織病理学的組織試料に存在する、変異核酸配列を検出する方法に関する。本明細における変異とは、ある種のマーカーの配列の過剰メチル化である。マーカーとは、メチル化状態が前立腺癌の状態と相関する遺伝子に相当する、核酸である。
【0014】
用語「新生物性(neoplastic)」は、新生物に直接もしくは間接に関係があること、または新生物の原因となることに適用する。用語「腫瘍縁(tumor margin)」は、識別可能な腫瘍を取り囲んでいる組織に適用する。固形腫瘍を外科的に切除する場合、腫瘍縁とは、識別可能な腫瘍と共に切り取られ、通常は肉眼で正常に見える組織である。さらに具体的には、「縁(margin)」とは、腫瘍の端、辺縁、または、境界である。縁は一般的に原発腫瘍から約1mmから4mm広がっているが、原発固形腫瘍の大きさにしたがって更に大きいこともあり得る。
【0015】
核酸は、以下に示す場合に、そのメチル化状態が前立腺癌と相関がある遺伝子に「相当する」。すなわち、そのような遺伝子の上記メチル化状態が前立腺癌についての情報を提供する場合と、その配列が、遺伝子もしくはその相補鎖のコーディング部分である、遺伝子もしくはその相補鎖の代表的部分である、遺伝子もしくはその相補鎖のプロモーターもしくは調節配列である、遺伝子もしくはその相補鎖の存在を示す配列である、または、遺伝子もしくはその相補鎖の全長の配列である場合と、である。このような核酸を本明細書ではマーカーと呼ぶ。マーカーは以下のような遺伝子に相当する。すなわち、HIN(配列番号58)、RASSF1A(配列番号69)、APC(プロモーター=配列番号64、遺伝子=配列番号65)、および、RARβ2(配列番号62)である。関心のある他の配列は、ベータ−アクチン(配列番号60および61)、およびPTGS2(プロモーター=配列番号66、遺伝子=配列番号67)等の分析の参照として有用な構成遺伝子を含む。GSTP1(配列番号59)は関心のある遺伝子である。
【0016】
過剰メチル化の検出のための分析は、MSPおよび制限エンドヌクレアーゼ分析等の技術を含む。プロモーター領域は、このような過剰メチル化分析の検出に対して特に注目すべき標的である。
【0017】
本発明は、前立腺癌と関連するDNAが増幅され検出される、被験者の組織または他の生物学的試料のマーカーの特定領域のメチル化状態の決定を含む。マーカーに相当する遺伝子によってコードされるタンパク質の発現レベルの減少(すなわち、転写の減少)は、しばしばプロモーターのような特定の領域の過剰メチル化の結果であるため、このような領域が過剰メチル化されているか否かを決定することが望ましい。過剰メチル化された領域とは、正常な組織と比較した場合に、病変組織(または予後不良を反映するような効果がある組織)から得られた試料中で、統計的に有意なより大きな割合でメチル化されている領域のことである。腫瘍縁試料に対するマーカーの使用によって検出された過剰メチル化は、原発腫瘍の外側での、新生物の発生または新生物の発生の可能性を示す。これはまた、より悪性の癌、および、潜在的または実際により転移性の癌を示す。したがって、どの患者がより積極的な治療を受け、どの患者が待機療法等のより保存的な治療を受けることができるかという線引きをする。
【0018】
マーカー配列の特定の部分に基づくオリゴヌクレオチドプライマーは、PCR等の技術によってDNAを増幅するために特に有用である。本発明のいくつかのプライマー/プローブまたはレポーター試薬は、マーカー遺伝子の発現調節配列のメチル化を検出するために使用される。これらは、核酸配列の転写、および、時には核酸配列の翻訳を調節する、核酸配列である。したがって、発現調節配列には、プロモーター、エンハンサー、転写のターミネーター、開始コドン(すなわち、ATG)、イントロンに対するスプライシングシグナル、mRNAの適切な翻訳を可能にするためのその遺伝子の正しい読み取り枠の維持、および、終止コドンに関する配列を含むことができる。
【0019】
本発明の一方法では、マーカーを含む標的細胞を、核酸と結合する試薬に接触させることを含む。標的細胞の成分は、DNAまたはRNA等の核酸である。これらの試薬は、標的配列を増幅および検出するように構成された、PCRもしくはMSPのプライマーまたはその他の分子等の、プローブおよびプライマーを含むことができる。例えば、これらの試薬は、スコーピオン試薬(Scorpion reagent)またはスコーピオンレポーター(Scorpion reporter)と呼ばれ、ウィットコブら(Whitcombe et. al.)に付与された米国特許第6,326,145号および同第6,270,967号(これらの文献は、参照によりその全体が本明細書に包含される)に記載されたような、それら自身のレポーター区域(their own reporter segments)に組み合わせた、または結合したプライミング配列を含むことができる。用語「プライマー」と「プライミング配列」とは、同一ではないが、本明細書では核酸配列の増幅をプライミングする分子または分子の一部に言及するために使用してもよい。
【0020】
メチル化パターンを検出する鋭敏な方法の1つには、メチル化感受性酵素の使用とポリメラーゼ連鎖反応(PCR)との組み合わせを含む。DNAを酵素で消化した後、PCRは、DNA切断がメチル化によって阻害された場合にのみ、制限酵素部位に隣接するプライマーから増幅する。
【0021】
本発明の方法はまた、核酸含有標本を、非メチル化シトシンを修飾する作用物質と接触させることと、CpG特異的オリゴヌクレオチドプライマーを使用して標本中のCpG含有核酸を増幅することと、メチル化核酸を検出することと、を含むこともできる。好ましい修飾は、非メチル化シトシンが他のヌクレオチドに変換して、非メチル化シトシンとメチル化シトシンを区別することである。作用物質は、非メチル化シトシンをウラシルに変換するものであって、亜硫酸水素ナトリウムが好ましいが、非メチル化シトシンを修飾する一方でメチル化シトシンを修飾しない他の作用物質を使用することもできる。亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)による修飾が最も好ましく、シトシンの5,6−二重結合(5,6-double bond of cytosine)と直ちに反応するが、メチル化シトシンとはほとんど反応しない。シトシンは亜硫酸水素イオンと反応して、脱アミノ化を受けやすいスルホン酸シトシン反応中間体を形成し、スルホン酸ウラシルを生成する。スルホン酸基はアルカリ条件下で取り除くことが可能であり、その結果としてウラシルが生成される。ウラシルはTaqポリメラーゼによってチミンとして認識されるので、PCRでは、出発鋳型(starting template)で5−メチルシトシンが存在した場所にのみシトシンを含む生成物となる。スコーピオンレポーターおよび試薬ならびに他の検出システムは、上記方法で処理された修飾種と非修飾種を同様に区別する。
【0022】
本発明で標本中のCpG含有核酸の増幅に使用されるプライマーは、修飾の後(例えば、亜硫酸水素塩による)、処理されていないDNA、すなわちメチル化DNAおよび非メチル化DNAを、特異的に区別する。メチル化特異的PCR(MSPCR)では、非メチル化DNAに対するプライマーまたはプライミング配列は、メチル化DNAに保持されているCから区別するために、3’CG対にTを持つことが好ましく、その相補鎖はアンチセンスプライマーのためにデザインされる。非メチル化DNAのためのMSPプライマーまたはプライミング配列では、センスプライマー中にCが存在せず、アンチセンスプライマー中にGが存在しないため(Cは修飾されて、増幅生成物中でT(チミジン)として増幅されるU(ウラシル)になる)、通常配列中に含まれるCまたはGが相対的に少ない。
【0023】
多型遺伝子座中の多数の核酸で特異的な重合の開始を提供するために、本発明のプライマーは、十分な長さと適切な配列のオリゴヌクレオチドである。適切なプローブまたはレポーターに曝されことで、増幅された配列のメチル化状態が明らかになり、これによって診断情報が明らかになる。
【0024】
好ましいプライマーは、プライマー伸長生成物の合成の開始が可能な、8以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドで構成されており、実質的に多様な遺伝子座の鎖に対して相補的である。合成を行う環境条件は、ヌクレオチド三リン酸およびDNAポリメラーゼ等の重合のための作用物質の存在と、適切な温度およびpHとを含む。プライマーまたはプライミング配列のプライミング区域は、増幅の際に最大の効率をあげるために一本鎖であることが好ましいが、二本鎖であってもよい。二本鎖の場合には、伸長生成物の合成に使用する前に、まずプライマーの二本鎖を解離する処理をする。プライマーは、重合を誘発する作用物質の存在下で伸長生成物の合成をプライミングするのに、十分な長さである必要がある。プライマーの正確な長さは、温度、バッファー、および、ヌクレオチド組成物等の因子に依存する。オリゴヌクレオチドプライマーは、約12〜20のヌクレオチドを含むことが最も好ましいが、もっと多いあるいは少ないヌクレオチドを含んでいてもよく、周知の設計のガイドラインまたは規則に従う事が好ましい。
【0025】
プライマーは、増幅されるべきゲノム遺伝子座のそれぞれの鎖と実質的に相補的であり、前記に議論されたように適切なGまたはCヌクレオチドを含むようにデザインされる。これは、プライマーが、重合のための作用物質が作用可能な条件下で、それぞれの鎖とハイブリダイズするために十分に相補的である必要があることを意味する。言い換えれば、プライマーは、ゲノム遺伝子座をハイブリダイズし、ゲノム遺伝子座の増幅を可能にするのに十分な5’および3’の隣接配列(あるいは複数の隣接配列)と相補的である必要がある。
【0026】
プライマーは増幅プロセスで利用される。つまり、反応ステップ数に対してさらに多くの標的遺伝子座を産生する反応(好ましくは酵素的連鎖反応)が含まれる。最も好ましい実施形態では、この反応は指数関数的に多大な量の標的遺伝子座を産生する。上記のような反応は、PCR反応を含む。典型的には、ひとつのプライマーは遺伝子座の負(−)の鎖と相補的であり、もうひとつのプライマーは正(+)の鎖と相補的である。変性した核酸にプライマーをアニールさせ、次にDNAポリメラーゼIの大きなフラグメント(クレノウ(Klenow))等の酵素とヌクレオチドとによる伸長を行い、結果として標的遺伝子座配列を含む新たに合成された+と−の鎖を得る。連鎖反応の生成物は、使用した特定のプライマーの終端に対応する末端を持つ別の核酸二本鎖である。
【0027】
プライマーは、自動的な方法を含む従来のホスホトリエステル法(phosphotriester)およびホスホジエステル法(phosphodiester)等の、任意の適切な方法を使用して準備してもよい。そのような自動的な一実施形態では、開始物質としてジエチルホスホルアミダイト(diethylphosphoramidites)を使用し、ビューケージら(Beaucage, et at.)(テトラへドロン・レターズ(Tetrahedron Letters),22:1859−1862,1981年)によって記述されたように合成してもよい。修飾された固体担体上でオリゴヌクレオチドを合成する方法は、米国特許第4,458,066号に記載されている。
【0028】
精製、未精製にかかわらず、切除縁試料から得られた任意の核酸標本が、標的遺伝子座(例えば、CpG)を含む特異な核酸配列を、含む、または含むと疑われるならば、本発明の開始核酸または複数の開始核酸として利用することができる。したがって、例えば、プロセスには、DNA、またはメッセンジャーRNAを含むRNAを使用してもよい。DNAまたはRNAは、一本鎖または二本鎖であってよい。RNAを鋳型として使用する場合では、鋳型をDNAに逆転写するのに最適な酵素および/または条件が使用される。加えて、それぞれの一本の鎖を含んだDNA−RNAハイブリッドを使用してもよい。複数の核酸の混合物を使用してもよく、または、同じもしくは異なるプライマーを使用した本明細書中の前記の増幅反応で生成された核酸を使用してもよい。増幅されるべき特定の核酸配列、すなわち標的遺伝子座は、より大きな分子の一部であってもよく、または特定の配列が核酸全体を構成するように別個の分子として最初から存在することもある。核酸含有標本は、組織(特に、前立腺組織およびリンパ組織)、血液もしくは血液成分、リンパ液、尿、尿道洗浄液、精液または他の生物試料であってよく、マニアティス等(Maniatis, et al.)によって記述されたように(「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」, ニューヨーク州コールドスプリング港(Cold Spring Harbor, N.Y.) ページ280,281,1982年)様々な技術によって抽出することができる。
【0029】
抽出された試料が純粋でない場合、増幅の前に、試料の細胞、体液、組織、すなわち動物細胞の膜を開放するためと、核酸(複数の核酸)の鎖(複数の鎖)を露出および/または解離するために、効果のある量の試薬で処理をしてもよい。鎖を露出および解離する溶解および核酸変性のステップによって、より容易な増幅が可能になる。
【0030】
試料の標的核酸配列が二本鎖を含んでいる場合、鋳型としての使用を可能にする前に、核酸の鎖を解離する必要がある。別のステップとしてまたはプライマー伸長生成物の合成と同時に、鎖の解離を行うことができる。この鎖の解離は、物理的、化学的、または、酵素的方法を含む、各種適切な変性条件を使用することで達成できる。核酸の鎖を解離する物理的な一手段では、変性するまで核酸を熱することを含む。典型的な熱変性は、最大10分間で約80℃から105℃の範囲の温度を含んでもよい。鎖の解離は、ヘリカーゼとして知られる酵素群の酵素によって、またはヘリカーゼ活性を有し、リボATPの存在下でDNAを変性することが知られている酵素RecAによって、誘発されてもよい。ヘリカーゼを使用する核酸の鎖の解離に適した反応条件は、クーン・ハフマン−ベルリン(Kuhn Hoffmann-Berling)によって記述されている(「CSH‐クオンティテイティブ・バイオロジー(CSH-Quantitative Biology)」, 43:63, 1978年)。RecAを使用する技術は、C.ラディン(C. Radding)において概説されている((「アニュアル・レビュー・オブ・ジェネティクス(Ann. Rev. Genetics)」, 16:405−437, 1982年)。これらの技術の改良版についても、現在では周知である。
【0031】
核酸あるいは複数の核酸の相補鎖が解離された場合、その核酸が本来二本鎖であったか一本鎖であったかに関わらず、解離された鎖は、追加的核酸鎖の合成の鋳型としていつでも使用できる。この合成は、プライマーの鋳型に対するハイブリダイゼーションが起こるような条件下で行われる。一般的に合成は、緩衝水溶液中で行われ、好ましくはpH7〜9の、最も好ましくは約pH8である。モル過剰(ゲノム核酸に対して、通常はプライマー:鋳型が約10:1)の2つのオリゴヌクレオチドプライマーが、解離された鋳型鎖を含む緩衝液に添加されるのが好ましい。本発明のプロセスが診断的応用に用いられる場合には、相補鎖の量が未知であることがあるため、相補鎖の量に対するプライマーの量は常に確実に決定できるとは限らない。しかしながら、事実上、増幅される配列が複雑な長鎖核酸鎖の混合物に含まれている場合には、加えられるプライマーの量は、一般的に相補鎖(鋳型)の量に対してモル過剰である。大幅なモル過剰はプロセスの効率を向上させるのに好ましい。
【0032】
デオキシリボヌクレオチド三リン酸であるdATP、dCTP、dGTP、および、dTTPは、プライマーと別に、またはプライマーと共に、適切な量が合成混合液に添加され、その結果得られた溶液は、約90℃から100℃で、最長で10分間、好ましくは1分から4分間、加熱される。この加熱終了後、溶液は室温まで冷却され、これはプライマーのハイブリダイゼーションにとって好ましい。冷却された混合液に、プライマー伸長反応を実行するのに適した作用物質(「重合用作用物質」)が加えられ、当業者には周知の条件下で反応を行うことができる。重合用作用物質が熱安定性の場合は、他の試薬と共に添加してもよい。この合成(または増幅)反応は、室温から、重合用作用物質が機能しない温度まで、起こる可能性がある。
【0033】
重合用作用物質は、機能してプライマー伸長生成物の合成を達成する任意の化合物またはシステムであってもよいが、酵素が好ましい。この目的に適合する酵素は、例えば、大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼI、大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、T4 DNAポリメラーゼ、他の有用なDNAポリメラーゼ、ポリメラーゼの変異体、逆転写酵素、および熱安定性酵素(例えば、変性を起こす十分高められた温度にさらされた後、プライマー伸長を行うような酵素)を含むその他の酵素を含む。好ましい作用物質はTaqポリメラーゼである。適した酵素は、ヌクレオチドが本来の様式で結合し、それぞれの遺伝子座の核酸鎖に相補的なプライマー伸長生成物を形成することを促進する。一般的には、合成はそれぞれのプライマーの3’末端で開始され、合成が終了するまで鋳型鎖に沿って5’方向へ進み、異なった長さの分子を生成する。しかしながら、5’末端で合成を開始し、前記に記載されたものと同様のプロセスを使用して、逆方向へ進む重合用作用物質があってもよい。
【0034】
増幅の方法は、PCRによるものが最も好ましい。本発明のプライマーを使用するPCRで増幅されたメチル化および非メチル化の遺伝子座が、代替の手段で同様に増幅されるのであれば、代替の増幅方法を採用してもよい。
【0035】
増幅された生成物は、マリス等(Mullis et. al.)に付与された米国特許第4,683,195号(この米国特許文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする)に記載されているように、生成物に特異的な、プローブまたはレポーターを用いて、メチル化または非メチル化として同定されることが好ましい。ポリヌクレオチドを検出するためのプローブおよびレポーターの分野における進歩は、当業者には周知のことである。状況に応じて、核酸のメチル化パターンは、制限酵素による消化およびサザンブロット解析(Southern blot analysis)等の他の技術によって確認することができる。5’CpGのメチル化を検出するために使用できるメチル化感受性の制限エンドヌクレアーゼの例には、SmaI、SacII、EagI、MspI、HpaII、BstUIおよびBssHIIが含まれる。
【0036】
本発明の別の態様では、メチル化比が使用される。これは、得られたマーカーの増幅されたメチル化種の量と、増幅された参照マーカーまたは増幅された非メチル化マーカー領域の量との間の比を規定することで行うことができる。PCRが、定量リアルタイムPCRである場合に、最も情報が得られる。規定されたまたは所定のカットオフまたは閾値よりも高い比は、過剰メチル化と考えられ、比がカットオフ値を超えなかった場合よりも再発に関してより不良な予後を示すと、考えられる。カットオフは、既知の方法に従って規定され、これらの方法は、関心のある状態(再発または悪性度)の試料と既知の正常状態の試料との、少なくとも2セットの試料に対して使用される。本発明の参照マーカーは、内部標準として使用することもできる。参照マーカーは、試料の細胞で恒常的に発現しているベータアクチン等の遺伝子であることが好ましい。
【0037】
規定値または所定値(カットオフまたは閾値)は、比が使用されない場合でも本発明にしたがう方法で規定され、使用される。この場合、カットオフ値は、正常試料内または癌が診療的に重大ではない(診療的に意義のある状態に進行しないことがわかっている、または、悪性でない)試料内のメチル化の量または比率等のベースライン値に対する、メチル化の量または比に関して規定される。メチル化比を基にした方法を使用した場合と同様に、これらのカットオフ値は、周知の方法にしたがって規定される。
【0038】
本発明の方法およびキットは、多重化のためのステップと試薬を含むことができる。すなわち、1つより多くのマーカーを一度に分析することができる。
【0039】
興味深いことに、GSTP1(腫瘍の判定におそらく最も有用なマーカーであるマーカー)は、本発明の目的のための切除縁マーカーとしては、有用であることが見出されなかった。つまり、悪性または転移性の癌の患者でさえも、このマーカーは、切除縁試料中に見出されなかった。実施例で言及されるGSTP1プライマーおよびプローブは、以下の通りである。
【0040】

【0041】
本発明の方法とキットで有用と見出された典型的なマーカーは、APC、RARβ2、および、RASSF1Aである。これらの領域のメチル化の検出に有用なプローブは、このような診断または予後診断方法に有用である。マーカーの検出のために好ましい分子を下記に示す。マーカー遺伝子の短縮名を、採用した検出システムの種類と共に括弧内に示す。アンチセンスは、結合したペアのもう一方のプライミング配列との関連性があるようにデザインされた、プライマーの方向性を参照するにすぎない。それは必ずしもゲノムDNAに対してアンチセンスである必要はない。
【0042】

【0043】
本発明の好ましい実施形態では、上記のマーカーおよび方法は、組織学的情報と組み合わせて使用される。2つを組み合わせた場合、組織学的な偽陰性率は、かなり低下する。つまり、組織学ならびに本発明の方法およびマーカーが、患者が予後不良または悪性病変を持つと示した場合には、それが事実である可能性は非常に高い。患者が、再発、転移、または、病変の悪性進行を経験する可能性がある、という指標を、組織学単独で得られない場合、マーカーの過剰メチル化陽性の知見は、組織学的結果が不正確である、ということを示唆する。
【0044】
本発明のキットは、少なくとも1つのプライマーもしくはプローブ、または検出分子(例えばスコーピオンレポーター)を完全に含有してさえいれば、各種の構成成分で構成することができる。一実施形態では、キットは過剰メチル化マーカー部分を増幅および検出するための試薬を含む。状況に応じて、キットは、試料から核酸を抽出するための試料調整用試薬および/または物品(例えば、試験管)を含む。
【0045】
好ましいキットでは、1−試験管MSP(one-tube MSP)に必要な試薬を含む。必要な試薬には、対応するPCRプライマーのセット、Taqポリメラーゼ等の熱安定性DNAポリメラーゼ、および加水分解プローブまたは分子ビーコン等の適切な検出試薬などを含む。状況に応じた好ましいキットでは、検出試薬は、スコーピオンレポーターまたは試薬である。単染料プライマーまたは臭化エチジウム等の二本鎖DNAに特異的な蛍光染料も使用することができる。プライマーは、高濃度を生じる量であることが好ましい。キットには、付加的な材料を含むこともある。その付加的な材料は、適切な反応用チューブまたはバイアル、バリア組成物、典型的にはワックスビーズ(状況に応じてマグネシウムを含む)、必須の緩衝液およびdNTP等の試薬、対照核酸(複数の対照核酸)および/または任意の追加緩衝液、化合物、コファクター(co-factors)、イオン性成分、タンパク質および酵素、ポリマー、ならびに、MSP反応に使用可能な材料などを含む。状況に応じて、キットは、核酸抽出試薬および材料を含む。
【0046】
本発明の最も好ましいキットでは、説明書が、切除縁試料に対して実施される分析の規定と、この試料を得るための最適な位置を腫瘍の核(tumor core)に対して指示することと、含む。本発明にしたがう別のキットでは、説明書は、分析が行われる切除縁試料は、組織病理学的に正常に見えるものであることを指示する。説明書はまた、メチル化陽性の結果には、引き続き積極的または長期的治療等の特定の治療を行うべきであることを指示することもできる。
【0047】
本発明の分析に使用される材料は、キットの準備に理想的に適合する。このようなキットは、バイアル、チューブおよび、それに類するような、1つまたはそれ以上の容器手段を厳重に密閉して納めるために区分化された担持手段を包含してもよく、各々の容器手段は、本方法で使用される別々の要素の1つを包含する。
【0048】
例えば、容器手段のひとつは、ハイブリダイゼーションプローブを包含してもよく、ハイブリダイゼーションプローブを検出できるように、標識する、または標識することが可能である。第2の容器は、細胞溶解緩衝液を包含してもよい。キットはまた、標的核酸配列の増幅のためのヌクレオチド(複数のヌクレオチド)を保持する容器、および/または、レポーター分子に結合するレポーター手段を包含する容器を有してもよく、レポーター手段はアビジンまたはストレプトアビジンのようなビオチン結合タンパク等であり、レポーター分子は酵素標識、蛍光標識、または、放射性核種標識等である。
【0049】
〔実施例〕
本実施例は、37の前立腺摘除術由来の試料を使用した、48の病変の研究および分析を記述するものである。生体外の生検試料をこれらから採取し、それぞれ中心から外側に向かって広げ、直線的な配列でおよそ1mm間隔に分割した。第1の中心の生検試料は、組織学的に癌陽性と確認された。それに続く生検試料(第1の試料から、1mmから4mmまで)は、組織学的に陰性と確認された。領域効果(field effect)の規模および空間依存性を提示するために、マーカーのメチル化率を測定した。
【0050】
<実施例1(試料採取)>
生体外で生検試料の核は、過去5年以内に手術を受けた患者由来の、根治的前立腺摘除術組織のパラフィンブロックをさかのぼって収集し、採取した。癌病変の中心からは、生検試料の核を1つ採取し、正常に見える前立腺組織近位からは、癌病変の中心からの距離を1mmずつ増やして、生体外で3ないし4つの核を採取した。各生検試料の核(直径〜1.5mm、および、深さ3〜4mm)を、水平な状態で、パラフィンブロック中に再び包埋した。メチル化分析のために切片(5×10μ)を切り出し、各々の核に対してブラケットH&E染色スライド(bracketing H&E slides)を調製し、組織学的に評価した。
【0051】
<実施例2:試料調製、DNA単離、および、亜硫酸水素塩による修飾>
DNA抽出のために、各々の核のブロックから50μの組織(5×10μ切片)をキシレンで脱パラフィンし(10分間)、続いて、100%エタノールで2回(各5分間)洗浄した。エタノール洗浄の後、残留エタノールを全て蒸発させるため、50〜55℃の乾燥器でチューブをインキュベート(蓋を開けた状態)した。脱パラフィンした組織に40μLの抽出緩衝液(10mM Tris pH 8.0、150mM 塩化ナトリウム(NaCl)、2mM EDTA、0.5% SDS)および10μLのプロテイナーゼK(Qiagen)を加え、500rpmの振盪をしながらヒートブロックで、56℃でインキュベートをした。翌朝、試料を70℃で10分間熱してインキュベートし、156906.4m/s(16000x g)で5分間遠心した。50μLの組織溶解液(または500ngの一般的なメチル化/非メチル化ゲノム対照DNA)に対し、EZ DNAメチル化キット(Zymo Research)を使用し、インキュベートの時間および温度に下記の変更を加えながら、製造業者のプロトコルにしたがって、亜硫酸水素ナトリウムによるDNA修飾を行った。試料を1100rpmで振盪しながらヒートブロックで70℃3時間のインキュベートをした。亜硫酸水素塩により処理されたDNAの最終的な溶出は、25μLの溶出緩衝液中で行った。試料を−80℃で保管した。修飾されたDNAは、定量メチル化特異的PCRのための鋳型として使用された。
【0052】
<実施例3:メチル化特異的PCR(MSP)>
スコーピオンプローブおよびプライマーを、関心のある遺伝子のプロモーター領域中のメチル化されたCpGアイランドを増幅するためにデザインした。ハウスキーピング遺伝子であるβ−アクチンの増幅のために、メチル化非依存性領域を選択した。スコーピオンプローブの折りたたみ、および単位複製配列の調査を、DNA mfoldプログラムを使用してモデル化した。スコーピオンプローブおよびプライマーは、スガンジナビアジーンシンセシスAB(Scandinavian Gene Synthesis AB)から得た。プライマーおよびプローブの配列は、以下に同定されている。多重化PCRのために、個々の遺伝子に対するスコーピオンプローブを、5’の位置で、固有の蛍光色素(FAM、Cy5、Cy3、および、テキサスレッド)で標識した。
【0053】
メチル化特異的プライマーを使用して、亜硫酸塩により変換された細胞株DNA(MCF−7、LNCaP、および、HCT−116)から、各々の遺伝子に対して関心のあるプロモーター配列を増幅して、各々の遺伝子に対する較正対照を調製した。増幅されたPCR生成物を精製した後、標準的なプロトコルを使用してTOPO TAクローニングキット(Invitrogen)にクローニングし、大腸菌(E coli.)に形質転換した。プラスミドDNAを単離し、直線化し、2×10コピー/5μLのストック希釈液として−80℃で保管した。ケミコン(Chemicon)から得た一般的なメチル化および非メチル化ゲノムDNA(CpG−MおよびCpG−U)を、それぞれ正および負の対照として、全てのPCR反応で使用した。
【0054】
各々の遺伝子に対して固有に標識された特異的プローブを使用して、一試料内で4つの標的の同時検出(4つの蛍光チャンネルを使用)を可能にする、Smart Cycler II(Cepheid, Sunnyvale CA)で、蛍光発生多重化定量MSP分析を行った。4遺伝子(GSTP1、APC、RARB2、ベータ−アクチン)および2遺伝子(RASSF1A、ベータ−アクチン)の多重化MSPを、各々の試料および同条件にしたチューブ内の対照DNAに対して行った。PCR反応混合液は、各々の遺伝子に対するプライマーおよびプローブを各500nM、5Uの抗体共役ファーストスタート(Fast Start)Taqポリメラーゼ(Roche)、各1.25mMのdATP、dCTP、dGTP、および、dTTPを含む緩衝混合液(67.0mM Tris pH8.8、6.7mM MgCl2、16.6mM (NH4)2SO4、10mM メルカプトエタノール)、ならびに、5μLの亜硫酸水素塩により修飾されたDNA鋳型で構成され、最終液量は25μLであった。サーモサイクルの条件は以下の通りであった。すなわち、95℃で1分間、続いて95℃で30秒間と59℃で30秒間とを40サイクル、72℃で5分間延長した。
【0055】
各々の遺伝子に対するコピー数の標準曲線を作成するために、それぞれの遺伝子に対するキャリブレータストック(2×10コピー/5μL)を等量ずつ1チューブに混合することにより、キャリブレータ混合液を新たに調製した。10倍段階希釈(2×10ないし2×10)の、この混合液を水で調製し、上記に記載したようなPCR反応と同条件で反応を行った。各々4遺伝子に対するCt(サイクル閾値)を、各試料中のメチル化遺伝子のコピー数に変換した。各試料に対するデータは、メチル化率(メチル化遺伝子のコピー数/β−アクチンのコピー数×1000)として表わされる。4遺伝子および2遺伝子多重化に対して別々に標準曲線を作成した。各々の距離でのメチル化率を、中心の悪性の核(malignant core)でのメチル化率で除する事によって、正規化された百分率メチル化を計算した。
【0056】
これらの多重化に使用したマーカーは以下の遺伝子に相当する。
多重化1:GSTP1(配列番号59)、β−アクチン(配列番号60/61)、APC(配列番号64/65)、RARβ2(配列番号62)
多重化2:RASSF1A(配列番号69)、β−アクチン(配列番号60/61)
多重化3:Hin−1(配列番号58)、β−アクチン(配列番号60/61)
【0057】
分析に使用したプライマーおよびプローブは以下の通りである。
GSTP1:プローブ:配列番号19;プライマー:配列番号20
β−アクチン:プローブ:配列番号38;プライマー:配列番号39
APC:プローブ:配列番号34;プライマー:配列番号35
RASSF1A:プローブ:配列番号30;プライマー:配列番号31
Hin−1:プローブ:配列番号54;プライマー:配列番号55
【0058】
以下の表1に、5つの遺伝子各々と共に遠位の核で観察された領域効果を示す。データは、各々の遺伝子に対して、メチル化率として示している。核および周辺部位の厳格な組織病理学を組み合わせて、領域効果に対する試料を確認した。「領域効果」に適合する病変を判定するために、以下の判定基準を使用した。
1.癌病変(C0)は、遺伝子に対してメチル化率がポジティブである。
2.全ての半径の核(C1〜C4)および周囲組織は、高悪性度PIN(high grade PIN)または癌の組織学的証拠を持たない。
【0059】
【表1】

【0060】
上記データからは、マーカーAPC、RARβ2、RASSF1A、および、HIN−1に領域効果が見出される。領域効果は、悪性の核から2mmの位置で見られ、ほとんどの場合は、当該核から最大3mmまでで見られる。メチル化マーカーの検出によって得られたシグナルの強度は、一般的に中心からの試料の距離の関数(function)に応じて変化するが、直線的には変化しない(図1および図2)。これは、癌性現象の多発性病巣の存在が原因である可能性がある。驚くべきことに、GSTP1に対して領域効果は見られなかった。
【0061】
〔実施の態様〕
(1) 患者の前立腺癌を特徴付ける方法において、
原発性前立腺新生物の外部の組織試料を得ることであって、前記試料が、形態上腫瘍病理学の特徴を示さない、組織試料を得ることと、
前記試料中のマーカー(Marker)の存在または量を決定することと、
前記マーカーの量または存在が所定値より上回った場合に、癌を悪性(aggressive)として評価することと、
を含む、方法。
(2) 実施態様1に記載の方法において、
前記マーカーの量または存在が、所定値を超えなかった場合、悪性度が低い(indolent)として前記癌が特徴づけられる、方法。
(3) 実施態様1に記載の方法において、
前記マーカーが、APC、RASSF1A、RARβ2、および、HIN−1からなる群から選択される、方法。
(4) 前立腺癌を特徴付けるための分析を実施するキットにおいて、
マーカー試薬を含む、キット。
(5) 実施態様4に記載のキットにおいて、
前記マーカーが、APC、RASSF1A、RARβ2、および、HIN−1からなる群から選択される遺伝子のためのものである、キット。
(6) 実施態様4に記載のキットにおいて、
前記試薬が、配列番号(Seq. ID No.)34および35からなる群のメンバーを含む、キット。
(7) 実施態様6に記載のキットにおいて、
PCRのプライミング試薬が、実質的に配列番号34および35からなる、キット。
(8) 実施態様4に記載のキットにおいて、
前記試薬が、配列番号30および31からなる群のメンバーを含む、キット。
(9) 実施態様8に記載のキットにおいて、
PCRのプライミング試薬が、実質的に配列番号30および31からなる、キット。
【0062】
(10) 実施態様4に記載のキットにおいて、
前記試薬が、配列番号32および33からなる群のメンバーを含む、キット。
(11) 実施態様10に記載のキットにおいて、
PCRのプライミング試薬が、実質的に配列番号32および33からなる、キット。
(12) 実施態様4に記載のキットにおいて、
前記試薬が、配列番号54および55からなる群のメンバーを含む、キット。
(13) 実施態様12に記載のキットにおいて、
PCRのプライミング試薬が、実質的に配列番号54および55からなる、キット。
(14) 実施態様4に記載のキットにおいて、
構成的発現遺伝子(constitutively expressed gene)を増幅し、およびその構成的発現遺伝子の存在を検出するための試薬、
をさらに含む、キット。
(15) 実施態様1に記載の方法において、
メチル化比を確定することと、
前記メチル化比がカットオフ値を超えるか否かを決定することと、
をさらに含む、方法。
(16) 実施態様1に記載の方法において、
治療のモニタリングに使用される、方法。
(17) 実施態様4に記載のキットにおいて、
前記マーカーが、実質的にRASSF1Aおよび構成的発現遺伝子のためのマーカーからなる、キット。
(18) 実施態様17に記載のキットにおいて、
前記構成的発現遺伝子が、β−アクチンであるキット。
(19) 実施態様4に記載のキットにおいて、
前記マーカーが、実質的にHin−1および構成的発現遺伝子のためのマーカーからなる、キット。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、中心核からの距離の関数として領域効果を示す試料数を表示するグラフ表示である。各マーカーに対して、特定の距離でメチル化率を示す試料数を、中心である悪性の核(C)にメチル化率を有しそれに続く核では癌を示さない前立腺癌摘除術試料の総数で除した。
【図2】図2は、領域効果の各種のグラフ表示である。正規化されたメチル化の割合を、C核相当部で得られたメチル化率で除し、100で乗ずることで計算した。実施例3でメチル化率を示したそれぞれの試料の、正規化されたメチル化率は、APC(最前列)、RARβ(2、3、4番目の列)、および、RASSF1S(最後の2列)に対し、Cからの距離の関数(function)としてさらに調査された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の前立腺癌を特徴付ける方法において、
原発性前立腺新生物の外部の組織試料を得ることであって、前記試料が、形態上腫瘍病理学の特徴を示さない、組織試料を得ることと、
前記試料中のマーカーの存在または量を決定することと、
前記マーカーの量または存在が所定値より上回った場合に、癌を悪性として評価することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記マーカーの量または存在が、所定値を超えなかった場合、悪性度が低いとして前記癌が特徴づけられる、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記マーカーが、APC、RASSF1A、RARβ2、および、HIN−1からなる群から選択される、方法。
【請求項4】
前立腺癌を特徴付けるための分析を実施するキットにおいて、
マーカー試薬を含む、キット。
【請求項5】
請求項4に記載のキットにおいて、
前記マーカーが、APC、RASSF1A、RARβ2、および、HIN−1からなる群から選択される遺伝子のためのものである、キット。
【請求項6】
請求項4に記載のキットにおいて、
前記試薬が、配列番号34および35からなる群のメンバーを含む、キット。
【請求項7】
請求項6に記載のキットにおいて、
PCRのプライミング試薬が、実質的に配列番号34および35からなる、キット。
【請求項8】
請求項4に記載のキットにおいて、
前記試薬が、配列番号30および31からなる群のメンバーを含む、キット。
【請求項9】
請求項8に記載のキットにおいて、
PCRのプライミング試薬が、実質的に配列番号30および31からなる、キット。
【請求項10】
請求項4に記載のキットにおいて、
前記試薬が、配列番号32および33からなる群のメンバーを含む、キット。
【請求項11】
請求項10に記載のキットにおいて、
PCRのプライミング試薬が、実質的に配列番号32および33からなる、キット。
【請求項12】
請求項4に記載のキットにおいて、
前記試薬が、配列番号54および55からなる群のメンバーを含む、キット。
【請求項13】
請求項12に記載のキットにおいて、
PCRのプライミング試薬が、実質的に配列番号54および55からなる、キット。
【請求項14】
請求項4に記載のキットにおいて、
構成的発現遺伝子を増幅し、およびその構成的発現遺伝子の存在を検出するための試薬、
をさらに含む、キット。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、
メチル化比を確定することと、
前記メチル化比がカットオフ値を超えるか否かを決定することと、
をさらに含む、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、
治療のモニタリングに使用される、方法。
【請求項17】
請求項4に記載のキットにおいて、
前記マーカーが、実質的にRASSF1Aおよび構成的発現遺伝子のためのマーカーからなる、キット。
【請求項18】
請求項17に記載のキットにおいて、
前記構成的発現遺伝子が、β−アクチンであるキット。
【請求項19】
請求項4に記載のキットにおいて、
前記マーカーが、実質的にHin−1および構成的発現遺伝子のためのマーカーからなる、キット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−113659(P2008−113659A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−282156(P2007−282156)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(505060347)ベリデックス・エルエルシー (43)
【氏名又は名称原語表記】Veridex,LLC
【住所又は居所原語表記】33 Technology Drive,Warren,NJ 07059,U.S.A.
【Fターム(参考)】