説明

剥離可能な接着用電力ケーブル組成物

本発明は(a)高温ポリマーおよびソフトポリマーの混合物、および(b)導電性フィラーから製造される、またはこれらを含む半導電性電力ケーブル組成物であり、ここでこの組成物から製造された半導電性ケーブル層は、第2のケーブル層に可剥的に接着する。本発明はまた、前記半導電ケーブル層をワイヤーまたはケーブルに適用して製造した電力ケーブル構造物とともに、半導電性電力ケーブル組成物から製造された半導電ケーブル層も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力ケーブル組成物に関する。特に本発明は、半導電性電力ケーブル組成物、かかる半導電性組成物から製造された物品(半導電性ケーブル層および電力ケーブル構造物)、ならびに半導電性組成物とその関連物品の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
定格の導体使用温度が90℃以上の電力ケーブルは、一般的に化学的架橋性のポリマー物質を導体の周囲に押出すことによって製造される。定格のケーブル使用温度および関連する過負荷環境における物質変化に対する耐性を得るために、押出に続いて化学的架橋性のポリマー物質を架橋する。
【0003】
中・高電圧のケーブル設計において、化学的架橋性ポリマー性物質は一般的に導電性フィラー類を含み、得られるケーブル層に半導電性が付与される。化学的架橋性ポリマー物質は、金属導電層とポリマー誘電性絶縁体層の間に電気的ストレス制御層を作るために押出されたり、誘電性ポリマー層とアース線またはテープとの間の電気的ストレス制御層として用いられたりする場合がある。通常は様々な層が共押出され、続いて同時に架橋される。加えてケーブル構造物の一部には、保護シース、防湿層、または保護ジャケットを含むことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
得られるケーブル層が密接に結合されるため、一般的には共押出および同時架橋が望ましい。密接な結合は部分的な層間剥離を防止し、層間に空隙が形成されるのを妨げ、これによって早発性のケーブル破損を防止する。層間剥離および空隙形成は、ケーブルを通常使用中、曲げおよび/または熱によって発生する可能性がある。
【0005】
残念なことに、共押出および同時架橋による密接な結合に欠点が無いわけではない。とりわけこの製造方法では、最外部の電気的ストレス制御層(または半導電層)をポリマー誘電性絶縁層から剥離することが望ましい用途において、問題が存在する。(架橋性結合は、電気的ストレス制御層とポリマー誘電性絶縁層の境界面にわたって発生すると考えられる。これらの層を剥ぎ取る為には、これらの結合を破壊する必要がある。)剥離力が大きすぎる場合、半導電層を絶縁層から剥離すると絶縁層が損傷する。
【0006】
半導電層は、通常の作業状態においては絶縁層に密着しているが、必要に応じて絶縁層から容易に剥離できることが望ましい。これらの特性は日常生活におけるケーブル利用を促進し、ジョイント類、スプライス類、および末端類といった付属品の取り付けも容易にする。
【0007】
従来は、化学的架橋性ポリマー物質は多くの場合に極性ポリマー類を含有し、非極性ポリオレフィン性ポリマー類を一般的に含む絶縁材料との溶融混和性を減少させる。最も一般的には、化学的架橋性ポリマー物質は、酢酸ビニルコモノマー含有量が28重量パーセントより高いエチレン酢酸ビニルコポリマー類を主成分とする。これら高極性コポリマー類の欠点は、凝集傾向のある化合物を生成しがちなことである。凝集問題は避けることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は(a)高温ポリマーおよびソフトポリマーの混合物、および、(b)導電性フィラー、を含む半導電性電力ケーブル組成物であり、ここでこの組成物から製造された半導電性ケーブル層は、第2のケーブル層に剥離可能に接着する。本発明はまた、前記半導電性ケーブル層をワイヤーまたはケーブルに適用して製造した電力ケーブル構造物と、半導電性電力ケーブル組成物から製造された半導電ケーブル層も含む。
【0009】
その上本発明は、高温ポリマー、ソフトポリマー、および、導電性フィラーの混合物をブレンドするステップを含む、電力ケーブル半導電性組成物の製造法も含む。あるいは、この製造プロセスは、(a)高温ポリマー、ソフトポリマーおよび第1カップリング剤の混合物を導電性フィラーの存在下で反応性カップリングするステップであり、ここで、得られる混合物は硬化剤レベルが低減されており、ならびに、(b)第2カップリング剤を混合するステップであり、ここで、前記第2カップリング剤は、実質的に得られる混合物の硬化剤レベルには影響しない、を含む。
【0010】
本発明はまた、(a)半導電性電力ケーブル組成物を金属導電体上に押出し、前記金属導電体上に半導電性ケーブル層を形成するステップ、(b)前記半導電性ケーブル層上に、化学架橋性絶縁組成物を押出すステップ、(c)第2の半導電性電力ケーブル組成物を、前記ポリマー誘電性絶縁体上に押出し、第2の半導電性ケーブル層を形成するステップ、ならびに、(d)前記化学架橋性絶縁組成物を架橋し、架橋されたポリマー誘電性絶縁体を形成するステップを含む、電力ケーブルの製造方法を含む。
【0011】
本発明の半導電性電力ケーブル組成物は、(a)高温ポリマーとソフトポリマーの混合物、および、(b)導電性フィラーを含み、ここで前記組成物から製造された半導電性ケーブル層は、第2のケーブル層に剥離可能に接着する。好適には、得られた半導電性ケーブル層は、試験温度150℃におけるホットクリープ試験で測定された耐熱性(ICEA T−28−562に記載され、ANSI/ICEA標準S−94−649およびS−97−682で基準とされる試験方法)が、100%より低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書における「剥離可能に接着する」という語は、電力ケーブルの通常使用状態において半導電層が第2層(通常は絶縁層)に接着し、必要に応じて容易に第2層から剥離できる特性を有する(すなわち、第2層を実質的に損傷することなく、半導電層を第2層から離層/分離する)という意味で用いる。剥離張力(strip tension)に関して「剥離可能に接着する」という表現は、0.5インチ幅ストリップあたり3から24ポンド(13ミリ幅ストリップあたり1.3から10.9キログラム)の間の剥離張力を意味する。また、このテスト法はANSI/ICEA標準S−94−649およびS−97−682でも基準とされている。
【0013】
本明細書で用いる「高温ポリマー」という語は、半導電性ケーブル層に適する耐熱性を有するが、その他の望ましい特性を欠くポリマーを意味する。例えば、高温ポリマーは望ましいプロセス特性またはその他の物質特性を有さない場合がある。適切な高温ポリマー類としては、ポリプロピレン類、ポリエステル類、ナイロン類、ポリスルホン類、およびポリアラミド類が挙げられる。好適な高温ポリマー類はポリプロピレン類である。組成物中の高温ポリマーの量は50重量パーセントよりも低いことが望ましい。より好適には、高温ポリマーは組成物中に10から40重量パーセントの間の量存在する。最も好適には、20から30重量パーセントの間の量で存在する。
【0014】
本明細書において用いる「ソフトポリマー」という語は、高温ポリマーのプロセス特性を強化し、ソフトポリマーが熱耐性をさらに向上させるために高温ポリマーとカップリングする、ネットワーキングソース(networking source)を提供するポリマーを意味する。適切なソフトポリマー類としては、ポリエチレン類、ポリプロピレン類、ポリエステル類、およびゴム類が挙げられる。好適なソフトポリマー類はポリエチレン類である。
【0015】
ポリエチレン類としては、エチレンのホモポリマー類、ならびに、エチレンと1つ以上のアルファオレフィン類と、場合によってジエンとのコポリマー類が挙げられる。このポリエチレンはまた、エチレンと、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、または、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル)のような不飽和エステルとのコポリマー、エチレンと、アクリル酸またはメタクリル酸のような不飽和酸のコポリマー、または、エチレンとビニルシラン(例えば、ビニルトリメトキシランおよびビニルトリエトキシシラン)のコポリマーでもよく、そしてこれらの任意のコモノマー類のインターポリマーも同様である。上記以外の物質を後改質(post-modify)したポリエチレン類、および、それらのブレンド類もまた、本発明の範囲内であるとみなされる。好適なポリエチレン類は、エチレンのホモポリマー類、エチレンと1つ以上のアルファオレフィン類のコポリマー類、ならびに、エチレンと不飽和エステルのコポリマーである。より好適には、ソフトポリマー類向けのポリエチレン類は、極性モノマーと非極性コモノマーのコポリマー類である。最も好適なポリエチレン類は、エチレンと不飽和エステルのコポリマー類である。
【0016】
適切なポリプロピレン類としては、プロピレンのホモポリマー類、プロピレンとその他のオレフィン類とのコポリマー類、および、プロピレン、エチレン、およびジエン類のターポリマー類が挙げられる。
【0017】
適切なポリエステル類としては、飽和ジカルボン酸および飽和2官能性アルコールを含む熱可塑性樹脂が挙げられる。詳細な例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート(またはトリメチレンテレフタレート)、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4―ジメチロールテレフタレート、およびポリネオペンチルテレフタレートが挙げられる。好適なポリエステル類は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート(またはトリメチレンテレフタレート)、および、ポリブチレンテレフタレートである。
【0018】
適切なナイロン類としては、ナイロン6、ナイロン6,6、および、より鎖長が長いジアミン類から製造されたナイロン類が挙げられる。好適なナイロン類は、ナイロン6およびナイロン6,6である。
【0019】
適切なゴム類としては、熱可塑性ゴム類、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー類、スチレンーブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム類、イソプレンゴム類、ニトリルゴム類、ポリクロロプレンゴム類、水素化スチレン−ブタジエンブロックコポリマー類、メタクリル酸ブタジエンスチレンゴム、アクリル酸エラストマー類(例えばエチレンメチルアクリル酸)、フルオロエストマー類、ならびに、熱可塑性エラストマー類(例えば熱可塑性ウレタン類、ポリアミド類、および、ポリエステルエーテル類)が含まれる。
【0020】
適切な導電性フィラー類としては、カーボンブラック類、カーボンファイバー類、カーボンナノチューブ類、グラファイト粒子類、金属類、および、金属コーティング粒子類が挙げられる。好適な導電性フィラー類はカーボンブラック類である。好適には、導電性フィラーは、組成物から製造した半導電性ケーブル層に付与されるICEA S−66−524に記載の方法で測定した体積抵抗率が50,000ohm−cm未満となるのに充分な量、組成物中に存在する。
【0021】
さらに、硬化剤が導電性組成物中に存在してもよい。適切な硬化剤としては、有機過酸化物類、アジド類、有機官能性シラン類、マレイン酸ポリオレフィン類、フェノール類、および、イオウ加硫剤類が挙げられる。適切な有機過酸化物類としては、芳香属ジアシル過酸化物類、脂肪族ジアシル過酸化物、二塩基酸過酸化物、ケトン過酸化物類、アルキルペルオキソ酸エステル類、および、アルキル水素過酸化物類が挙げられる。適切なアジド硬化剤としては、アルキルアジド、アリールアジド類、アシルアジド類、アジドホルマート類、ホスホリルアジド類、ホスフィンアジド類、シリルアジド類、および多官能価アジド類が挙げられる。適切なシラン類としては不飽和シラン類が挙げられ、それらは、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニル、またはγ−(メタ)アクリルオキシアリル基のようなエチレン性不飽和ヒドロカルビル基、および、ヒドロカルビルオキシ、ヒドロカルボニルオキシ、または、ヒドロカルビルアミノ基のような加水分解性基を含む。好適な硬化剤は有機過酸化物類である。
【0022】
加えて、半導電性電力ケーブル組成物は、さらにカップリング剤を含んでもよい。本明細書において用いる「カップリング剤」という語は、ポリマーまたはポリマーブレンドのカップリングまたはグラフト化を目的として用いる、化合物または化合物の混合物を意味する。カップリング剤は、半導電性ケーブル層に耐熱性を付与するために必要な硬化剤の量を低減するのに充分な量存在してもよい。カップリング剤は硬化剤と同一の化合物でもよい。
【0023】
適切なカップリング剤としては、有機過酸化物類、アジド類、有機官能性シラン類、マレイン酸ポリオレフィン類、フェノール類、およびイオウ加硫剤類が挙げられる。適切な有機過酸化物類としては、芳香属ジアシル過酸化物類、脂肪族ジアシル過酸化物、二塩基酸過酸化物、ケトン過酸化物、アルキルペルオキシエステル類、およびアルキル水素過酸化物類が挙げられる。適切なアジドカップリング剤としては、アルキルアジド、アリールアジド類、アシルアジド類、アジドホルマート類、ホスホリルアジド類、ホスフィンアジド類、シリルアジド類、および多官能価アジド類が挙げられる。適切なシラン類としては不飽和シラン類が挙げられ、それらはビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニル、またはγ−(メタ)アクリルオキシアリル基のようなエチレン性不飽和ヒドロカルビル基、および、例えばヒドロカルビルオキシ、ヒドロカルボニルオキシ、または、ヒドロカルビルアミノ基のような加水分解性基を含む。好適なカップリング剤は有機過酸化物類である。
【0024】
加えて、半導電性電力ケーブル組成物はさらに相溶化ポリマーを含んでいてもよい。本明細書で用いる「相溶化ポリマー類」の語は、高温ポリマーおよびソフトポリマーの両方に対し親和性を有するポリマー類を含む。好適な相溶化ポリマーはコポリマー類(例えば、エチレン−アルファオレフィンコポリマー類)、および、官能性ポリマー類(例えば、マレイン酸ポリオレフィン類およびグリシジル−官能性ポリオレフィン類)である。高温およびソフトポリマー類の選択に基づき、当業者は他の適切な相溶化ポリマー類を容易に特定することができる。
【0025】
さらに本発明の組成物は、酸化防止剤、安定剤、発泡剤、顔料、加工助剤、および硬化促進剤のような他の添加剤を含んでもよい。
【0026】
好適な実施態様において、本発明は、(a)高温ポリマーおよびソフトポリマーの混合物、および、(b)導電性フィラー、を含む半導電性電力ケーブル組成物であり、ここで、前記組成物から製造された半導電性ケーブル層は、第2のケーブル層に剥離可能に接着する。高温ポリマーおよびソフトポリマーは、熱耐性が異なっていてもよい。より好適な実施態様において、半導電性ケーブル層は、150℃の試験温度におけるホットクリープ試験によって測定した耐熱性が100%より低い。また、より好適な実施態様において、第2のケーブル層は化学的架橋された層である。
【0027】
他の実施態様において、半導電性ケーブル層は、半導電性電力ケーブル組成物より製造される。さらに他の実施様態において、電力ケーブル構造物は、半導電性ケーブル層をワイヤーもしくはケーブルに被せることによって製造される。
【0028】
さらに他の実施様態において、本発明は、高温ポリマー、ソフトポリマー、および、導電性フィラーの混合物をブレンドするステップを含む、半導電性電力ケーブル組成物の製造プロセスであり、ここで、前記組成物から製造された半導電性ケーブル層は、第2のケーブル層に剥離可能に接着する。この実施様態においては、この混合物はさらにカップリング剤を含んでいてもよい。好適には、前記カップリング剤は、高温ポリマー、ソフトポリマー、および導電性フィラーの混合物から、前記カップリング剤なしに製造した半導電性ケーブル層に耐熱性を付与するため必要な硬化剤の量を低減する。
【0029】
さらに他の実施様態において、本発明は、(a)高温ポリマー、ソフトポリマー、および、カップリング剤の混合物を導電性フィラーの存在下で反応性カップリングするステップ、および、(b)硬化剤を混合するステップを含む、半導電性ケーブル組成物の製造プロセスであり、ここで、前記組成物から製造された半導電性ケーブル層は、第2のケーブル層に剥離可能に接着する。好適には、前記カップリング剤は、高温ポリマー、ソフトポリマー、および導電性フィラーの混合物から、カップリング剤なしに製造した半導電性ケーブル層に耐熱性を付与するため必要な硬化剤の量を低減する。
【0030】
本発明の他の実施様態において、本発明は(a)高温ポリマー、ソフトポリマー、および、導電性フィラーの混合物を含む半導電性電力ケーブル組成物を金属導電体上に押出し、前記金属導電体上に半導電性ケーブル層を形成するステップ、および、b)ポリマー−誘電性絶縁体を前記半導電性ケーブル層上に押出すステップを含む、電力ケーブルの製造方法である。この実施様態はさらに、(c)第2の半導電性電力ケーブル組成物をポリマー誘電性絶縁層上に押出して、第2の半導電性ケーブル層を形成するステップを含んでいてもよい。
【0031】
この実施態様の別の側面においては、本発明は、(a)高温ポリマー、ソフトポリマー、および、導電性フィラーの混合物を含む半導電性電力ケーブル組成物を金属導電体上に押出し、前記金属導電体上に半導電性ケーブル層を形成するステップ、(b)前記半導電性ケーブル層上に、化学的架橋性絶縁組成物を押し出すステップ、(c)第2の半導電性電力ケーブル組成物を、前記ポリマー誘電性絶縁体上に押出し、第2の半導電性ケーブル層を形成するステップ、ならびに、d)前記化学架橋性絶縁組成物を架橋し、架橋されたポリマー誘電性絶縁体を形成するステップを含む、方法である。
【実施例】
【0032】
以下の非制限的な実施例によって本発明を説明する。
【0033】
実施例1〜7
比較実施例1、6および7、ならびに実施例2、4および5において、混合物を実験室規模のコンパウンダーで混合し、190℃の溶融温度を5分間実現した。実施例3においては、高温ポリマー、ソフトポリマーおよび導電性フィラーの混合物を実験室規模のコンパウンダー内で混合し、190℃の溶融温度を5分間実現した後に冷却し、続いて120℃で過酸化物を加えた。
【0034】
例示の各配合について、ホットクリープ性能およびポリエチレン絶縁体基材への接着性を評価した。150℃において15分間、20N/平方センチメートルの引張応力の負荷状態下で、ホットクリープ試験片の耐熱変形を評価した。伸びおよび残留変形を計測した。表Iに残留変形を%ホットセット(% Hot Set)として示す。
【0035】
接着性の計測については、例示の配合の30ミルプラークを製造した。ポリエチレン絶縁体基材はThe Dow Chemical Companyより市販のHFDB−4202架橋性ポリエチレン絶縁体から120℃で製造した。続いて、試験用プラークおよびポリエチレン絶縁体基材を、180℃を超える温度で、基材が硬化する充分な時間をかけて、圧力下で共に成形した。次にこの2層の試験片を、周囲温度下で終夜コンディショニングした。この2層の試験片より取った1/2インチ幅の切片を評価した。90度剥離試験を、インストロン(商標)引張試験機を用い、20インチ/1分間の剥離速度で、行った。
【0036】
例示の配合の重合性材料を表Iに示す濃度で加え、以下を含有させた。
(1)酢酸ビニル含有量が28重量パーセントであり、メルトインデックスが3g/10分である、duPont Elvax265(商標)エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA−1)、
(2)酢酸ビニル含有量が18重量パーセントであり、メルトインデックスが3g/10分であり、The Dow Chemical Company から市販の、DXM−451(商標)エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA−2)、
(3)メルトフローレートが0.8であり、Dow Chemical Companyより市販のフラクショナルホモポリマーである、5D45(商標)ポリプロピレン(PP−1)、および、
(4)メルトフローレートが20である、ポリポリプロピレンのホモポリマー(PP−2)。
【0037】
カーボンブラックはCabot Corporationより市販のCSX614であった。各配合は、ポリマー100部あたり55部(pphr)のカーボンブラックを含んでいた。使用された過酸化物はTRIGANOX 101であり、Akzo Nobelより市販されている。比較実施例1と実施例2〜5においては、コンパウンドの過程で0.4pphrの量の過酸化物を加えた。比較実施例6においては、コンパウンドの後に0.4pphrの量の過酸化物を加えた。比較実施例7の配合は、一切の過酸化物を含まなかった。
【0038】
比較実施例1に例示の配合中の過酸化物はコンパウンド中に完全に反応したため、試験片はホットクリープの負荷に耐えることができなかった。残留未反応過酸化物が全く無しに、比較実施例1の試験片はポリエチレン絶縁体基材に完全に結合した。この結合はまた、配合がコンパウンド工程で過酸化物を全く含まなかった場合は、得られた試験片自体がポリエチレン絶縁体基材と完全に結合し、EVE−2を用いた従来の手法は完全に結合した試験片をもたらすことを示す。
【0039】
表Iは、実施例2に例示の配合は、望ましいホットクリープおよびポリエチレン絶縁体基材からの剥離性を有することを示す。実施例3の配合は改善された耐熱性を示したが、その試験片はポリエチレン絶縁体基材と完全に結合した。実施例4および5は、実施例2の配合より、耐熱性と剥離性が改善されたことを示した。
【0040】
比較実施例6は優れた耐熱性を示したが、未反応の過酸化物(すなわちコンパウンド中に消費されなかった過酸化物)は、混合物の硬化剤レベルを、試験片がポリエチレン絶縁体基材と完全に結合することを防ぐように充分に下げることができなかった。比較実施例7はカップリング剤を含まないブレンドであり、耐熱性が比較的低い試験片を生じた。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例8
実施例8において、混合物を実験室規模のコンパウンダーで混合し、190℃の溶融温度を5分間実現した。この混合物は、65部のEVA−1、35部のPP−1、100部のポリマーあたり55部(pphr)のCabot Corporation CSX614カーボンブラック、および、0.4pphrのAkzo Nobel TRIGANOX 101過酸化物を含んでいた。
【0043】
15キロボルトの電力ケーブル設計の一部として、前記混合物を過酸化物架橋性ポリエチレン絶縁体(HFDB−4202)上に、半導電性層として押出した。HFDB−4202架橋性ポリエチレン絶縁体はThe Dow Chemical Companyより市販されている。
【0044】
15キロボルトの電力ケーブル設計物に、1/0AWGのアルミニウム導体、15ミルの架橋性半導電性電力ケーブル配合物、175ミルの架橋性ポリエチレン絶縁体、および、40ミルの実施例8の半導電性電力ケーブル組成物を用いた。押出したケーブルを、有機過酸化物の熱分解がポリマー架橋を開始する、高温、乾燥の窒素チューブ(連続加硫チューブ)に通した。続いて、硬化したケーブルを冷却水に通した。
【0045】
外側の実施例8の半導電性電力ケーブル組成物は、架橋されたポリエチレンケーブル絶縁体に、0.5インチあたり11〜12ポンドの剥離張力で剥離可能に接着することが見出された。また、150℃において0.2MPaの引張応力を適用して試験すると、ホットクリープ伸張は19パーセントであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)高温ポリマーおよびソフトポリマーの混合物、
(b)導電性フィラー、
を含む半導電性電力ケーブル組成物であり、前記組成物から製造された半導電性ケーブル層が第2のケーブル層に剥離可能に接着する、組成物。
【請求項2】
前記半導電性ケーブル層の、試験温度150℃におけるホットクリープ試験によって測定した耐熱性が100%より低い、請求項1の半導電性電力ケーブル組成物。
【請求項3】
前記高温ポリマーおよび前記ソフトポリマーが異なる耐熱性を有する、請求項1の半導電性電力ケーブル組成物。
【請求項4】
前記高温ポリマーが、ポリプロピレン類、ポリエステル類、ナイロン類、ポリスルホン類、および、ポリアラミド類からなる群より選択され、前記ソフトポリマーが、ポリエチレン類、ポリプロピレン類、ポリエステル類、および、ゴム類からなる群より選択される、請求項1の半導電性電力ケーブル組成物。
【請求項5】
前記高温ポリマーがポリプロピレンであり、前記ソフトポリマーがポリエチレンである、請求項4の半導電性電力ケーブル組成物。
【請求項6】
前記ポリエチレンが、極性モノマーと非極性モノマーのコポリマーである、請求項5の半導電性電力ケーブル組成物。
【請求項7】
前記導電性フィラーが、カーボンブラック類、カーボンファイバー類、カーボンナノチューブ類、グラファイト粒子類、金属類、および、金属コーティング粒子類からなる群より選択される、請求項1の半導電性電力ケーブル組成物。
【請求項8】
前記第2のケーブル層が化学的架橋されている、請求項1の半導電性電力ケーブル組成物。
【請求項9】
硬化剤をさらに含む、請求項1の半導電性電力ケーブル組成物。
【請求項10】
カップリング剤をさらに含む、請求項1の半導電性電力ケーブル組成物。
【請求項11】
前記カップリング剤が、前記半導電性ケーブル層に耐熱性を付与するために必要な硬化剤の量を低減する、請求項10の半導電性電力ケーブル組成物。
【請求項12】
硬化剤をさらに含む、請求項11の半導電性電力ケーブル組成物。
【請求項13】
前記混合物が相溶化ポリマーをさらに含む、請求項1の半導電性電力ケーブル組成物。
【請求項14】
請求項1の半導電性電力ケーブル組成物から製造される、半導電性ケーブル層。
【請求項15】
電線またはケーブル上に請求項14の半導電性ケーブル層を適用して製造された、電力ケーブル構造物。
【請求項16】
高温ポリマー、ソフトポリマー、および、導電性フィラーの混合物をブレンドするステップを含む半導電性電力ケーブル組成物の製造方法であり、ここで、前記組成物から製造された半導電性ケーブル層が、第2のケーブル層に剥離可能に接着する、製造方法。
【請求項17】
前記混合物がカップリング剤をさらに含む、請求項16の方法。
【請求項18】
(a)高温ポリマー、ソフトポリマー、およびカップリング剤の混合物を、導電性フィラーの存在下で反応性カップリングするステップであり、ここで前記カップリング剤は、高温ポリマー、ソフトポリマー、および導電性フィラーの混合物から、前記カップリング剤なしに製造した半導電性ケーブル層に耐熱性を付与するため必要な硬化剤の量を低減し、ならびに、
(b)硬化剤を混合するステップ
を含み、ここで、前記組成物から製造された前記半導電性ケーブル層は、第2のケーブル層に剥離可能に接着する、半導電性電力ケーブル組成物の製造方法。
【請求項19】
(a)高温ポリマー、ソフトポリマー、および、導電性フィラーの混合物を含む半導電性電力ケーブル組成物を金属導電体上に押出し、前記金属導電体上に半導電性ケーブル層を形成するステップ、および、
(b)ポリマー−誘電性絶縁体を前記半導電性ケーブル層上に押し出すステップ
を含む、電力ケーブルの製造方法。
【請求項20】
(c)第2の半導電性電力ケーブル組成物を、前記ポリマー誘電性絶縁体上に押出して、第2の半導電性ケーブル層を形成するステップをさらに含む、請求項19の電力ケーブルの製造方法。
【請求項21】
(a)高温ポリマー、ソフトポリマー、および、導電性フィラーの混合物を含む半導電性電力ケーブル組成物を金属導電体上に押出し、前記金属導電体上に半導電性ケーブル層を形成するステップ、
(b)前記半導電性ケーブル層上に、化学架橋性絶縁体組成物を押出すステップ、
(c)第2の半導電性電力ケーブル組成物を、前記ポリマー誘電性絶縁体上に押出し、第2の半導電性ケーブル層を形成するステップ、ならびに、
(d)前記化学架橋性絶縁組成物を架橋し、架橋されたポリマー誘電性絶縁体を形成するステップ、
を含む、電力ケーブルの製造方法。

【公表番号】特表2006−521679(P2006−521679A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509265(P2006−509265)
【出願日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/009075
【国際公開番号】WO2004/088674
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】