説明

剥離層を有するシリコーン光学フィルム

本発明の光学フィルムは、支持面と、支持面と対向するライナー面と、を有するシリコーンエラストマー部と、シリコーンエラストマー部の一方に設けられた支持面の一部と少なくとも接する剥離可能な支持部と、シリコーンエラストマー部の他方に設けられたライナー面の一部と少なくとも接する剥離可能なライナー部と、を有する。支持部がシリコーンエラストマー部から剥離する第1剥離張力を有し、ライナー部がシリコーンエラストマー部から剥離する第2剥離張力を有する。また、第1剥離張力が、第2剥離張力と異なり、一つの実施形態では、第1剥離張力が第2剥離張力より高くなっており、具体的には、第1剥離張力が、第2剥離張力より少なくとも20%高いものとされている。また、上述の光学フィルムを備えた画像ディスプレイ装置が提供される。画像ディスプレイ装置に設けられた光学フィルムは、画像ディスプレイ装置の自動組み立ておよび製造において、向上した耐久性、再加工性、作業性を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年6月2日に出願された米国特許出願番号12/497,336の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、光学フィルム、特に画像表示装置の自動組立で用いられるシリコーン光学フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
液晶ディスプレイ(LCD)装置、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL表示)装置、プラズマディスプレイ(PDP)装置などの周知の画像表示装置は、一般的に、携帯用のメディアプレイヤー、携帯電話、コンピュータのモニタ、テレビなどのフラットパネル電子装置で用いられている。それらの装置の薄い構造は、比較的薄い画像ディスプレイパネルにより可能であり、ブラウン管テレビのような大きな従来のディスプレイより美的魅力を提供する。しかしながら、薄い画像ディスプレイパネルは、従来のディスプレイより通常壊れやすい。このため、ディスプレイパネルを組み立てる時や消費者が使用している際、他の物に接触して、薄い画像ディスプレイパネルが損傷を受けやすい。
【0004】
この欠点を解決するため、多くの従来の画像ディスプレイ装置には、保護ガラスパネルや透明な光学フィルム層(光学フィルタ)、もしくは、保護ガラスと光学フィルム層を組み合わせたものが、取り付けられている。しかしながら、その光学フィルムは、組み立ての際に、例えば形状に切り込みを入れるなど変形させることが難しい。
【0005】
また、この変形されたフィルムは、画像ディスプレイ装置やその製造方法において、さらなる欠点を有する。例えば、画像ディスプレイ装置の構造は、時々、画像ディスプレイパネルと光学フィルム層との間や、画像ディスプレイパネルとガラスパネルとの間に気泡が入り込むことがある。このため、画像ディスプレイ装置の製造は、真空を維持するために相当な力を必要とするため、多くの場合真空チャンバー内で行われるが、それらの強力な力の必要性が、画像ディスプレイ装置のコストを著しく増加させている。
【0006】
さらに、従来の光学フィルムを用いている画像ディスプレイ装置は、専門の技術者によって手作業で組み付けられている。そのような仕事は、非常に繰り返しの多い細かい作業であり、専門の技術者の疲労などにより、適切に位置づけられていない部品を有する不完全な組み立て品が生じる結果となってしまう。また、そのような組立品は、通常、後で再加工や再処理を必要とするが、従来のディスプレイ装置では、その装置を保護するために、光学フィルタとして、アクリルベースの硬化材料を使用しているので、従来のアクリル光学フィルタを適した形状に打ち抜きする変換プロセスの間で、再加工作業や再処理作業を行うことが難しい。さらに、画像ディスプレイ装置に変形されたフィルムを組み立てる組立プロセスや、製造プロセスにおいても、その再加工作業や再処理作業を行うことは難しい。また、一般的に、従来の光学フィルムは、耐久性が弱く、また、再加工・再処理することが難しいので、高い廃棄量となり、結果としてコストが増えてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、そのような環境から画像ディスプレイ装置を保護するために、光学フィルタとして有用である改良された光学フィルムを提供することを課題とする。また、型の打ち抜きを従来よりも簡単にして、耐久性、作業性、および、再利用性を向上させることができ、従来の画像ディスプレイ装置の欠点を克服して、その欠点を減らすことができる光学フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、支持面と、前記支持面と対向するライナー面と、を有するシリコーンエラストマー部と、該シリコーンエラストマー部の一方に設けられた前記支持面の一部と少なくとも接する剥離可能な支持部と、該シリコーンエラストマー部の他方に設けられた前記ライナー面の一部と少なくとも接する剥離可能なライナー部と、を有する光学フィルムを提供する。前記支持部は、前記シリコーンエラストマー部から剥離する第1剥離張力を有するものとされ、前記ライナー部は、前記シリコーンエラストマー部から剥離する第2剥離張力を有するものとされている。また、前記第1剥離張力が、前記第2剥離張力と異なるものとされており、一つの実施形態では、第1剥離張力が、第2剥離張力より高くなっている。具体的には、第1剥離張力が、0.25〜1.90N/inの範囲であり、第2剥離張力が、前記第1剥離張力より少なくとも20%低くなっている。別の実施形態では、第2剥離張力が、第1剥離張力より低い少なくとも40〜70%になっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光学フィルムは、従来技術をこえて多くの利点を提供する。例えば、剥離可能な支持部およびライナー部の改良された剥離張力は、画像ディスプレイ装置において、自動組み立てする際に適切な光学フィルムを有利に製造することが可能である。また、本発明の光学フィルムは、加熱や加湿に対して改良された耐久性を示し、加熱や加湿の状態で容易に縮んだり、膨張したりしない。さらに、本発明の光学フィルムは、打ち抜き中や液晶セルのような無アルカリガラスを有する装置の組み立て中に、汚れたり脱落したりすることなく、作業することができるような改善された作業性を有する。また、本発明の光学フィルムは、画像装置に誤って組みつけられた際に、光学フィルムを装置に残したり、フィルムを破いたりすることなく、その画像装置から簡単にはがすことが可能なので、再利用することもできる。この性質は、従来の光学フィルムにはないものである。本発明の光学フィルムは、長期にわたって、時間のかかるプロセス、高価な硬化プロセスにおいては必要とされていなかった。また、画像装置における簡単な変更および自動組み立てにおいては、このような光学フィルムは必要がなかった。
【0010】
本発明における前述した利点や他の利点は、以下の記載の中で述べられる。本明細書においては、本明細書の一部を構成する添付された図面について記載され、図面の記載は本発明の好ましい実施形態である。しかしながら、そのような実施形態は本発明の全ての範囲を表すものではなく、したがって本発明の範囲は請求の範囲及び本明細書の中に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光学フィルムの断面図である。
【図2】シリコーンエラストマー部に取り付けられた剥離可能なライナー部に画像装置を自動的に組み付ける工程で用いられる本発明の光学フィルムの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、携帯メディアプレイヤー、携帯電話、コンピュータのモニタ、テレビなど多くのフラットパネル電子装置において用いられている液晶ディスプレイ(LCD)装置、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)装置、プラズマディスプレイパネル(PDP)装置などの画像ディスプレイ装置において、光学フィルタとして用いられる改良された光学フィルムを提供する。
【0013】
本発明の光学フィルムは、画像ディスプレイ装置で光学フィルタとして用いる際に有利な接着剤と集合性を有するシリコーンエラストマー部(シリコーンゲル)と、剥離可能な支持部(支持ライナー)と、剥離可能なライナー部(剥離ライナー)と、で少なくとも構成されている。
【0014】
第1実施形態において、本発明の光学フィルムは、シリコーンエラストマー部と、剥離可能な支持部(支持ライナー)と、剥離可能なライナー部(剥離ライナー)とで構成されている(図1を参照)。シリコーンエラストマー部は、支持面と前記支持面と対向するライナー面とを有している。支持部は、シリコーンエラストマー部の一方に設けられた支持面の一部に少なくとも接しており、剥離可能である。また、ライナー部は、シリコーンエラストマー部の他方に設けられたライナー面の一部に少なくとも接しており、剥離可能である。前記支持部は、前記シリコーンエラストマー部から剥離する第1剥離張力を有し、前記ライナー部は、前記シリコーンエラストマー部から剥離する第2剥離張力を有する。第1剥離張力および第2剥離張力は、異なる。一つの実施形態では、第1剥離張力が、第2剥離張力より高い。具体的には、一つの実施形態において、第1剥離張力は、0.25〜1.90N/inの範囲であり、第2剥離張力は、第1剥離張力より低い少なくとも20%である。別の実施形態においては、第2剥離張力が、第1剥離張力より低い少なくとも20%〜95%、または、少なくとも30%〜80%、または、40%〜70%であってもよい。
【0015】
「光学フィルム」は、異なる材料の層で形成されており、画像ディスプレイ装置において、光学フィルタとして用いるために有利な接着剤、変形特性、組立特性を有する材料で構成された光学フィルムである。
【0016】
「シリコーンエラストマー部」または「シリコーンゲル」は、柔らかいゲルで構成されて硬化される当業者において公知の不活性の半無機高分子シリコーン化合物(Semi-inorganic polymeric silicone compound)である。シリコーンゲルは、シリコーンゲル上の支持面およびライナー面で向上する剥離張力を示す。「支持面」は、シリコーンゲルの一方の面であり、支持物に接してその支持物に接着する。「ライナー面」は、シリコーンゲルの一方の面と対向する他方の面であり、ライナーに接してそのライナーに接着する。
【0017】
本発明のシリコーンゲルは、また、一般的に広範囲な熱安定性(−115℃〜300℃)および超撥水性を有し、工業用途で多く用いられている。シリコーン重合体およびシリコーンエラストマー部は、優れた電気的性質および柔軟性を有し、有効なUVおよび耐化学性を提供する。また、湿気と水に耐性を示し、毒性はほとんどない。さらに、シリコーン重合体およびシリコーンエラストマー部は熱応力が低く、振動をコントロールすることができ、低いイオン含有量であり、低揮発性成分で、再利用することが可能であり、とても使いやすいものである。本発明で用いられるシリコーンゲルは、当業者において公知の供給業者から市販されているものである。また、本発明のシリコーンゲルは、(1)0.5mmの厚さで、可視光線範囲380〜780mmの85%以上の高い透過率を示し、(2)屈折率約1.35〜1.45(好ましくは、屈折率1.40、1.41、1.42)のアクリル樹脂材料と同じぐらいの屈折率を有し、(3)優れた緩衝性、応力緩和性質、耐久性、再利用性、および、高い耐光性を有する。光学フィルムにおいて、非常に低い収縮率および熱安定性は、極めて安定した物質的かつ光学的に支持物とシリコーンゲルとの結合、および、ライナーとシリコーンゲルとの結合を確実にする。光学フィルムの熱安定性により、−40から110℃までの温度範囲で用いることができる。もちろん、本発明で用いられている材料で支持部およびライナー部と共に改良された剥離張力を有する他の形のシリコーンゲルでも、本発明の光学フィルムにおいて用いることが可能である。当業者においては、与えられた用途で使用するために、公知のシリコーンゲルの特徴を評価する方法は、理解されている。
【0018】
「剥離可能な支持部」は、当業者において公知の支持物(support)であり、シリコーンゲルを支持するだけでなく、シリコーンゲルから剥がすことができる。使用中に、支持部では、組み立てに適した形状に変更している間に、シリコーンゲルがその構成および形状を維持することができるようになっている。また、支持部は、画像ディスプレイ装置における組み立て中と同じように、保管および運搬中にシリコーンゲルの構成および形状を維持することができると共に、シリコーンゲルから剥がすことが可能である。支持部は、金属、セラミック、ガラスなどの材料に限定されず、シリコーンゲルに対する必要な支持部を有する当業者において公知の材料であればよい。一つの実施形態では、支持部は、ポリエチレン・テレフタレート(PET)のようなポリエステル樹脂、ポリメチル・メタクリレート(PMMA)のようなポリアクリル樹脂、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、または、これら樹脂を組み合わせたもので構成されるグループから選択されて構成されたプラスティック層である。支持部の厚みは、通常、所望の光学製品の必要条件によって決まり、厚みの範囲は、20〜150μmである。一つの実施形態では、支持部の厚みは50〜75μmであり、また、別の実施形態では、支持部の厚みは、50〜150μm、50〜100μm、または、100〜150μmである。
【0019】
「剥離可能なライナー部」は、当業者において公知のライナーであり、シリコーンゲルを保護すると共に、シリコーンゲルから剥がすこともできる。ライナー部は、変更の前または変更中に、シリコーンエラストマー部に適用してもよい。例えば、光学フィルムを適当なサイズに打ち抜く際に、シリコーンエラストマー部に合わせてライナー部を変更してもよい。使用中、ライナー部が、破片や衝突による損傷からシリコーンゲルを保護するので、シリコーンゲルは、画像ディスプレイ装置において、その構造および組み立て前の形を維持することが可能である。そのライナー部が、シリコーンゲルから剥がすことができることがポイントである。ライナー部は、保護するためにどんな材料で構成されていてもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステルフィルム、紙のような多孔質材、布や不織布、網のような適切な薄い材料、発泡シート、金属箔、積層板などで、ライナー部を構成してもよく、また、これらに限定されるものではない。具体的な例を挙げると、ライナーの特定のサンプルは、3M(登録商標)の3M5932、TOPTECH(登録商標)のSubstrate FPET C 50C(SILFLU 50 MD07)、または、LOPAREX(登録商標)のD2.0 CL PET X5015/000の市販の材料で構成されている。一つの実施形態では、ライナー部は、プラスティックフィルムであり、ライナー部の厚みは、約20〜150μmである。他の実施形態では、ライナー部の厚みは、約50〜約70μmである。また、別の実施形態では、支持部の厚みは、50〜150μm、50〜100μm、または、100〜150μmである。
【0020】
支持部およびライナー部は、同じ材料または異なる材料で構成されていてもよく、ユーザの必要に応じて、構成することができる。当業者においては、光学フィルムの特定の目的に応じて、公知の方法を使用して、好ましい材料を決定することが可能である。
【0021】
「剥離張力」は、支持部とシリコーンゲルとの間の接着力、および、ライナー部とシリコーンゲルとの間の接着力を剥がすために必要とされる張力(テンション)を意味する。剥離張力は、ASTM D1000(アメリカ材料試験D1000)、剥離試験、引張りテストなどのような標準試験を含む公知技術の方法で決定することができる。
【0022】
一つの実施形態では、シリコーンゲルから支持部を剥がす張力(支持部の剥離張力)が、シリコーンゲルからライナー部を剥がす張力(ライナー部の剥離張力)と異なっている。支持部の剥離張力とライナー部の剥離張力との違いは、型抜きされた形状に変更する間や画像装置を含めた光学フィルムの自動組み立てにおいて、改善された作業性および光学フィルムの耐久性を提供するためにとても重要である。ライナー部と支持部との剥離張力の違いが、例えば、あまりに差がありすぎたり、あまり差がなかったりして正確ではない場合、変更した光学フィルム(例えば、画像装置の組立で取り外されるライナー部および/または支持部と共に型抜き光学フィルム)が、組み立て中に変形してしまったり、緩んだりしてしまう可能性がある。本発明の光学フィルムから支持部およびライナー部の異なる剥離張力が、従来の技術をこえて独自の光学フィルムを生み出す。つまり、支持部とライナー部の剥離張力の違いが、シリコーンゲルを支持したり、保護したりすることと、シリコーンゲルから剥がすことを両立させる。
【0023】
例えば、シリコーンエラストマー部から剥離する第1剥離張力を有する支持部が用いられる際、第1剥離張力が、シリコーンゲルの支持面から支持部を剥がすために必要とされる張力を有する。つまり、剥離張力を有する材料で構成された支持部が、シリコーンゲルに対して適切な支持を提供するために必要な高い張力を備えていると共に、シリコーンゲルを損傷することなく、シリコーンゲルから簡単に剥がすことができるのに必要な低い張力を備えている。同様に、第2剥離張力を有するライナー部が用いられる際、第2剥離張力が、シリコーンゲルのライナー表面からライナー部を剥がすために必要とされる張力を有する。つまり、ライナー部の剥離張力は、変更の間、ライナー表面に固定することを維持するために必要な高い張力を備えていると共に、画像ディスプレイ装置の組み立て中にシリコーンゲルを損傷することなく、シリコーンゲルから簡単に剥がすことができるのに必要な低い張力を備えている。一つの実施形態では、支持部の剥離張力が、約0.25〜1.90N/inで構成されている。また、ライナー部の剥離張力が、支持部の剥離張力より少なくとも20%小さくなっている。別の実施形態では、ライナー部の剥離張力が、少なくとも20%〜95%、少なくとも30%〜80%、または、少なくとも40%〜70%、支持部の剥離張力より小さく構成されている。
【0024】
本発明の光学フィルムの改良された剥離張力は、支持部およびライナー部が、所望の形状に変更されている間や画像ディスプレイ装置における自動組み立てプロセスの間で、シリコーンゲルから簡単に剥がすことができる。異なる剥離張力を有する材料で構成された支持部およびライナー部を用いることは、画像ディスプレイ装置の組み立ての間、光学フィルムを破損することなく、また、画像ディスプレイ装置に光学フィルムを残すことなく、画像ディスプレイ装置に対して、改良された耐久性、作業性、再加工性を有する光学フィルムを提供する。これは、従来技術をこえて非常に大きな利点を意味する。すなわち、ライナー部が、支持部をシリコーンゲルから剥がすことよりもさらに簡単にシリコーンゲルから剥がすことができる。また、支持部からシリコーンゲルを剥がさずに、ライナー部が剥がされてもよい。支持部とライナー部との剥離張力の違いは、画像装置における変更および自動組み立てにおいて、光学フィルムの品質にとって絶対必要である。ライナー部の剥離張力があまりに高すぎると、画像装置における組み立ての間、ライナー部を剥がす際に、光学フィルムが、変形したり支持部から緩んだりする可能性がある。
【0025】
本発明の一つの実施形態では、図2のハッチマークで示すように、剥離ライナー12は、画像ディスプレイ装置(図示せず)の組み立てに対して打ち抜きしている間、本発明の光学フィルム10に追加されている。剥離ライナー12を有する光学フィルム10は、画像ディスプレイ装置(図示せず)の組み立ての際に適切なサイズおよび形状14にカットされる。別の実施形態では、剥離ライナー12が、光学フィルム10を抜き打ちする前に、シリコーンゲルに追加されている。また、組み立ての間に、剥離ライナー12が変形された光学フィルム(例えば、画像ディスプレイ装置の組み立てで打ち抜きされた光学フィルム)から剥がせるように構成にもよい。このように、シリコーンゲルのライナー面が画像装置の組み立てで変更されたとしても、シリコーンゲルの支持面を保護することが可能である。
【0026】
支持部およびライナー部を構成する材料の剥離張力を、ユーザの要件に合わせて異なる材料に適応させるために、当業者において公知の方法によって変更することができる。具体的な剥離張力を達成するために、剥離張力におけるどんな温度差が必要とされているか、また、シリコーンエラストマー部、支持部、および、ライナー部を有する光学フィルムをどのように変更すればいいのか、本発明の開示から理解できるだろう。例えば、シリコーンゲルの支持面および/またはライナー面は、特定の支持部の材料またはライナー部の材料で剥離張力を増やしたり、減らしたりするために、シリコーン、フッ素、長鎖アルキル、または、脂肪酸アミドのような剥離手段(release agent)の処理を介して、変更することができる。あるいは、シリコーンゲルの支持面および/またはライナー面は、特定の支持部の材料またはライナー部の材料で剥離張力を増やしたり、減らしたりするために、シリカ粉末で処理された剥離および防汚を適用することもでき、また、塗装タイプ、混練タイプ、混練混合タイプ、蒸着タイプなどの静電気防止処理を行ってもよい。特に、シリコーンゲルの表面が、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理のような剥離処理を適切に受ける場合、シリコーンゲルからの支持部および/またはライナー部の材料の剥離張力は、さらに変更することができる。
【0027】
本発明の光学フィルムは、一つの実施形態において、感圧接着剤を製造する方法と同じような方法を用いて製造されてもよい。最初のステップでは、支持部が、シリコーンゲルの支持面に適用されて、支持部とシリコーンゲルとの間に剥離可能な取付けを確保するために、適所に押しつけられる。次のステップでは、ライナー部が、シリコーンゲルのライナー面に適用されて、剥離可能な取付けが確保されるまで、適所に押しつけられる。他の実施形態では、当業者において公知の異なる製造方法が、用いられている。
【0028】
別の実施形態では、光学フィルムが、支持部、ライナー部、および/または、シリコーンゲルに接合される追加のライナー部(図示せず)および/または機能的なライナー部(図示せず)を含んでいる。追加の部品を所望の光学フィルムの層に取り付けたとしても、上述したように同じ方法で、追加の部品を備えた本発明の光学フィルムを形成することは可能である。これらの組み立て技術は、よく知られており、また、本発明の開示より当業者によって理解されるだろう。
【0029】
「機能的なライナー部」は、光学フィルムで用いられている公知の追加の機能的なフィルムおよび/または添加物を意味する。具体的には、反射防止層、粘着防止層、拡散層、アンチグレア層、UV遮蔽層、光重合開始剤、架橋剤、無機微粒子、均染剤、消泡剤、増粘剤、中和剤、静電気防止剤、または、これらを組み合わせたものなどが、機能的なライナー部に用いられている。機能的なライナー部の適切な種類は、当業者において公知である。機能的なライナー部の厚みは、約20〜150μmの範囲である。一つの実施形態では、機能的なライナー部の厚みが、50〜75μmであり、また、別の実施形態では、機能的なライナー部の厚みが、50〜150μm、50〜100μm、または、100〜150μmである。
【0030】
本発明は、さらに、本発明の光学フィルムを有する画像ディスプレイ装置(図示せず)を提供する。「画像ディスプレイ装置」は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)装置、有機ELディスプレイ装置(OELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)装置など、ポータブルメディアプレーヤーや、携帯電話、コンピュータのモニタやテレビなど多くのフラットパネルの電子デバイスで用いられている公知の装置である。
【0031】
本発明の光学フィルムを有している画像ディスプレイ装置は、出願番号180825.00102、表題“画像ディスプレイアセンブリおよび装置と、その製造方法”で開示しているような(それら開示全体を参照することにより本明細書に組み入れられる)、新規の自動化されたプロセスや機械で組み付けられてもよい。本発明の新しい剥離張力および光学フィルムの他の特徴は、従来の光学フィルムによって提供されない画像ディスプレイ装置の自動組み立てに対して、非常に適している。
【0032】
以下、添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。
【0033】
<実施例1.方法および材料>
この実施例では、出願人がどのように本発明の光学フィルムを構成したのかを記載する。
【0034】
支持部およびライナー部は、当業者にはよく知られているように、光学フィルムで用いる市販のもので提供される。代表的な材料は、3M(登録商標)5993第2のライナー(5993 Secondary Liner)のような透明なポリエステルフィルムである。
【0035】
シリコーンゲルは、当業者によって公知の市販されているものであり、シリコーンゲルの厚みは、0.05mm〜2.0mmである。シリコーンゲルの支持面と支持部との間の第1剥離張力は、0.635N/cmである。また、シリコーンゲルの支持面とライナー部との間の第2剥離張力は、0.203N/cmである(JIS規格 Z0237)。
【0036】
本発明におけるシリコーンゲルは、JIS K7412およびASTM D542の方法によって測定されるように、屈折率1.4(25度、589nm)より大きい屈折率を有する。0.5mmでの透過率は、85%を越える(380nm/JIS K7105、780nm/JIS K2207)。ショアニードル硬度(Shore Needle hardness)は、50〜80である(JIS K2207)。
【0037】
支持部は、シリコーンゲルの支持面に接しており、剥離可能な接着剤が固定されるまで圧力が加えられる。ライナー部は、シリコーンゲルのライナー面に接しており、剥離可能な接着剤が固定されるまで圧力が加えられる。追加のライナー部および/または機能的なライナー部を同じように付け加えることも可能である。
【0038】
<実施例2.再加工性>
この実施形態では、本発明の光学フィルムの再加工性(reworkability)をどのように評価したか説明する。
【0039】
縦42mm×横32mmにカットされた光学フィルムのサンプルは、高真空状態で、ガラス−フィルム−ガラスのサンドイッチ構造を形成している厚さ0.7mmのガラス板(コーニング社製:Corning Incorporated、1737)の両側にラミネート装置で取り付けられる。再加工プロセスに関して、金属治具は、フィルムとガラスとの間に小さな隙間を生成するために用いられる。そして、数滴の低極性有機溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)がその隙間に注入され、接着剤を取り外すために、その溶媒がフィルムとガラスとの接合部分に添って浸される。最終的に、ガラスは、全構造から分離される。その後、光学フィルムを他のガラスまたはLCDから手ではがすことができる。また、再加工性は、以下の判定基準によって評価される。
【0040】
一般的に、各サンプルの再加工性は、3つの幅広いカテゴリーによって評価される。フィルムの断裂、ガラスの破裂や傷がなく、フィルムに残さず上手に全ての構造からはがすことができるサンプルの一部が、良い再加工性を示していると見なされる。それに対して、フィルムの断裂やLCD以外のガラスの破裂があり、一度ではがすことができないサンプルが、悪い再加工性を示していると見なされる。また、試験の間、破裂したり傷が付いたりしたLCDは、欠陥があると見なされる。
【0041】
<実施例3.耐久性>
この実施形態では、本発明の光学フィルムの耐久性をどのように評価したか説明する。
【0042】
420mm×240mmにカットされた光学フィルムのサンプルは、の厚さ0.7mmの非含アルカリガラス(コーニング社製:Corning Incorporated、1737)の両側にラミネート装置で取り付けられる。サンプル積層板は、サンプル片を非含アルカリガラス・プレートに完全に接着するまで、50℃、0.5Mpaで15分間、加熱滅菌される。このプロセスの後、サンプルは、80℃、90℃、95℃、100℃、または60℃、湿度90%RHで、500時間保管される。そして、発泡、剥離、分離が視覚的に評価される。
【0043】
発泡、剥離、分離のどれにも示されなかったサンプルは、よい耐久性が示されていると見なされる。発泡、剥離、分離が生じたサンプルは、発泡、剥離、分離が、単に視覚的に受け入れることができないか、または、機能的に受け入れられるレベルかどうかを決めるために、さらに評価される。発泡、剥離、分離が実質的に生じているサンプルは、悪い耐久性として見なされる。
【0044】
<実施例.剥離張力の測定>
この実施形態では、与えられた材料の剥離張力をどのように測定したか実証する。
【0045】
ASTM1000の測定方法は以下の通りである。両面テープに対する標準試験方法は、電気的電子的を用いて、以下のものが使用される。AR−1000接着/剥離の試験装置またはIstron Mini44張力試験装置、溶剤:IPA、MEK、アセトン、試験版:クリーンクロス、約幅1×長さ6、ゴム製のローラー4.51bs(2kg)が、測定方法に用いられる。
【0046】
使用中、光学フィルムの5つのサンプルは、サイズカッターa1を用いてフィルムの長さが幅1″、長さ6″で計測されて製造される。一貫性を保つために、サンプルは、ルーターで位置合わせをされている。また、サンプルの一部は、ペンナイフおよび幅a1の金属ルーターを用いて、カットすることができる。ライナー材料の追加の5片、幅約2″、長さ5″のサイズの測定が、ペン内具および金属ルーターを用いて、製造される。クリーンクロスが、溶剤で浸されて、各サンプルが溶剤で完全にきれいにされる。サンプルは、一つの縦方向において新しいクリーンウェットクロスを五回用いて、再度きれいにされる。その後、サンプルは、テストされるライナー上に貼り付けられる。サンプルは、ライナー/テストパネルアセンブリの長さに沿って中心に配置するのが好ましい。また、サンプルは、室温で20分または24時間に保管されることが望ましい。保存時間および条件付けはアプリケーション要件によって変えてもよい。
【0047】
一定時間保管した後、剥離ライナーテストは、300mm/min(12″/min)の速度で、AR−1000またはInstron張力テストの装置によって行われる。速度は、アプリケーション用要件に応じて変更してもよい。また、高速剥離テストにおいては、AR1000を用いることを推奨する。
【0048】
以上、本発明に係る光学フィルム実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示的なものであって、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明は、特許請求の範囲で請求される本発明の要旨を逸脱しない範囲で、本発明が属する分野において通常の知識を有する者により適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 光学フィルム
12 剥離ライナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)支持面と、該支持面と対向するライナー面と、を有するシリコーンエラストマー部と、(b)該シリコーンエラストマー部の一方に設けられた前記支持面の一部と少なくとも接する剥離可能な支持部と、(c)該シリコーンエラストマー部の他方に設けられた前記ライナー面の一部と少なくとも接する剥離可能なライナー部と、を有する光学フィルムにおいて、
前記支持部が、前記シリコーンエラストマー部から剥離する第1剥離張力を有するものとされ、かつ、
前記ライナー部が、前記シリコーンエラストマー部から剥離する第2剥離張力を有するものとされている
ことを特徴とする光学フィルム。
【請求項2】
前記第1剥離張力が、前記第2剥離張力と異なるものとされていることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記第1剥離張力が、前記第2剥離張力より高いものとされていることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記第1剥離張力が、0.25〜1.90N/inの範囲のものとされ、かつ、
前記第2剥離張力が、前記第1剥離張力より少なくとも20%低いものとされていることを特徴とする請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記ライナー部が、前記支持部の剥離張力より少なくとも40〜70%低い範囲である剥離張力を有するものとされていることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記支持部が、金属、セラミック、ガラス、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、または、それら材料を混ぜ合わせたもの、から成るグループから選択される材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記支持部の厚みが、20〜150μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記支持部の厚みが、50〜150μmの範囲であることを特徴する請求項7に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記ライナー部の厚みが、20〜150μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記ライナー部の厚みが、50〜100μmの範囲であることを特徴とする請求項9に記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記ライナー部が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、テレフタル酸エステル、ポリエステル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン酢酸共重合体、ペーパー、クロス、不織布、ネット、発泡シート、金属箔、積層板、および、これら材料を組み合わせたもの、から成るグループから選択される材料で構成されることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項12】
前記シリコーンエラストマー部が、1.4より大きい屈折率を有するものとされていることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項13】
前記シリコーンエラストマー部の厚みが、0.05〜2mmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項14】
前記シリコーンエラストマー部の厚みが、0.15〜1mmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項15】
請求項1に記載された光学フィルムを備えた画像ディスプレイ装置において、
前記支持部および前記ライナー部が、前記光学フィルムから剥がすことができるように設けられていることを特徴とする画像ディスプレイ装置。
【請求項16】
(a)支持面と、該支持面と対向するライナー面と、を有するシリコーンエラストマー部と、(b)該シリコーンエラストマー部の一方に設けられた前記支持面の一部と少なくとも接する剥離可能な支持部と、(c)該シリコーンエラストマー部の他方に設けられた前記ライナー面の一部と少なくとも接する剥離可能なライナー部と、を有する光学フィルムにおいて、
前記支持部が、前記シリコーンエラストマー部から剥離し、かつ、約0.25〜1.90N/inの範囲である第1剥離張力を有するものとされ、
前記ライナー部は、前記シリコーンエラストマー部から剥離し、かつ、
前記第1剥離張力より少なくとも20%低い第1剥離張力を有するものとされている
ことを特徴とする光学フィルム。
【請求項17】
前記支持部が、前記ライナー部と異なる材料で構成されていることを特徴とする請求項16に記載の光学フィルム。
【請求項18】
前記支持部が、金属、セラミック、ガラス、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、または、それら材料を混ぜ合わせたもの、から成るグループから選択される材料で構成されていることを特徴とする請求項16に記載の光学フィルム。
【請求項19】
前記ライナー部が、前記支持部の剥離張力より低い少なくとも40〜70%の範囲である剥離張力を有するものとされていることを特徴とする請求項16に記載の光学フィルム。
【請求項20】
請求項16に記載された光学フィルムを備えた画像ディスプレイ装置において、前記支持部および前記ライナー部が、前記光学フィルムから剥がすことができるように設けられていることを特徴とする画像ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−532036(P2012−532036A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517575(P2012−517575)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/038614
【国際公開番号】WO2011/002604
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(500407190)ブレイディー ワールドワイド インコーポレイテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】Brady Worldwide, Inc.
【住所又は居所原語表記】2221 West Camden Road, Milwaukee, WI 53209, USA
【Fターム(参考)】