説明

剥離調節剤、剥離調節剤組成物、剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物および剥離性硬化皮膜を有するシート状基材

【課題】剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物に配合した場合、重剥離特性を与えかつ粘着剤層への皮膜成分の移行が低減され、低粘度であり、取り扱い作業性に優れた剥離調節剤を提供する。
【解決手段】(a1)M単位とQ単位のモル比が0.6〜1.0の範囲であり、水酸基またはアルコキシ基の含有量が0.3〜2.0重量%の範囲にあるMQ型オルガノポリシロキサンレジン 100重量部と、(a2)少なくとも1個の水酸基またはアルコキシ基を有する平均重合度100〜1000の鎖状ジオルガノポリシロキサン 20〜150重量部とを縮合反応させることにより得られ、好適には所定の水酸基含有量を有するオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物からなる剥離調節剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離調節剤、剥離調節剤組成物、これらを用いた剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物及び該組成物を硬化させてなる剥離性硬化皮膜を有するシート状基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物は、各種の紙、合成フィルム、繊維などの基材表面で硬化させて剥離性硬化皮膜を形成することにより、粘着性物質に対する非粘着性すなわち剥離性を付与させることができるため、粘着テープや各種ラベル類の製造に広く使用される。
【0003】
かかる剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物には、該組成物を硬化させてなる皮膜が粘着剤層に悪影響を与えないこと、すなわち粘着剤層への被膜成分が移行しないこと(粘着剤層の残留接着率などとして評価される)、硬化皮膜の剥離性などの特性が要求される。とりわけ、硬化被膜の剥離性は、粘着テープや各種ラベル類の仕様に関して重要な要求特性であり、それぞれの目的に応じて、いろいろな度合の剥離力を与える特性が要求される。また、そのような調整された剥離力が、経時的に変化することなく安定したものであることも要求される。剥離力の経時的安定性は、中ないし重剥離力が要求される場合、特に重要な課題である。
【0004】
硬化皮膜の剥離力を調整する技術として、軽剥離力を与える付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物組成物に、粘着性を有するポリオルガノシロキサン樹脂成分を添加し、重剥離化する方法が開示されている(特許文献1〜特許文献6参照)。また、軽剥離化を目的として水酸基含有ポリジメチルシロキサン等を添加する方法が開示されている(特許文献7)。
【0005】
同じく付加反応により硬化してなるシリコーン接着層を基材上に形成するシリコーン系感圧接着剤の分野では、水酸基を含有するポリオルガノシロキサン樹脂成分と水酸基含有ポリジメチルシロキサンの縮合物を粘着性向上に用いる技術が既に知られている(特許文献8、特許文献9)。
【0006】
同様に、地張り剤および剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物に水酸基を含有するポリオルガノシロキサン樹脂成分と水酸基含有ポリジメチルシロキサンの縮合物を配合する技術が既に知られており、これらの組成物が適度な剥離性を有することも既に知られている(特許文献10、特許文献11)。
【0007】
また、重剥離コントロール剤として、四官能単位または三官能単位を有する水酸基を含有するポリオルガノシロキサン樹脂成分とアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの部分縮合物を配合する技術(特許文献12)が知られており、四官能単位を有し水酸基を含有するポリオルガノシロキサン樹脂成分とオルガノハイドロジェンポリシロキサンの縮合物を配合する技術が既に知られている(特許文献13)。
【0008】
しかしながら、ここに開示された組成物による被膜は、調整された剥離力の経時的安定性が十分なものではなく、剥離力が経時的に軽くなるという問題があった。また、重剥離特性を実現すべく、公知の水酸基を含有するポリオルガノシロキサン樹脂成分と水酸基含有ポリジメチルシロキサンの縮合物を配合する技術にあっては、剥離調節剤を含む組成物が高粘度化しやすいという問題がある。さらに、粘着剤層への皮膜成分が移行し、粘着剤層の残留接着率が上昇する等の問題が生じたり、粘着剤を剥離する際に、剥離速度の増加に伴い粘着面からの剥離がスムーズにいかなくなる場合がある。これらの剥離調節剤および剥離性硬化物にあっては、剥離力の微調整が困難であって、実用上も剥離力の微調整が可能な剥離調節剤が望まれていた。また、原料であるアルケニル基含有M Q レジンは比較的高価であり、より安価に大量に提供できる剥離調節剤が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭52−086985号公報
【特許文献2】特開昭59−084935号公報
【特許文献3】特開平01−215857号公報
【特許文献4】特開平03−002270号公報
【特許文献5】特開平04−226120号公報
【特許文献6】特開平11−106703号公報
【特許文献7】特開平08−217980号公報
【特許文献8】特開平02−269157号公報
【特許文献9】特開平10−110156号公報
【特許文献10】特開昭57−029676号公報
【特許文献11】特開2008−013613号公報
【特許文献12】特開2007−106908号公報
【特許文献13】特開昭63−017290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、容易に入手できる原料を用いて、剥離力の調節が容易であり、付加硬化型の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物に配合した場合、重剥離特性を与え、粘着剤層への皮膜成分の移行が低減され、かつ低粘度であり取り扱い作業性に優れた剥離調節剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、M単位およびQ単位から本質的になるオルガノポリシロキサンレジンと、分子中に水酸基またはアルコキシ基を有する平均重合度10〜1000の直鎖状または分岐鎖状のジオルガノポリシロキサンを、所定の部数で縮合反応させることにより得られたオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物からなる剥離調節剤が少量の使用で優れた重剥離化効果を発揮することができ、高い残留接着率を有することを見出し、本発明に到達した。
【0012】
さらに、本発明者は、該縮合反応物の水酸基含有量が0.05〜0.80重量%の範囲、より好ましくは0.10〜0.60重量%の範囲にある場合、特に優れた重剥離効果を発揮しうることを見出し、本発明に到達した。また、本発明者は、成分(a1)と成分(a2)の反応比を調整することにより、あるいは該縮合反応物をシラザン化合物等のシリル化剤により処理することにより上記水酸基含有量を容易に制御し、優れた重剥離効果を有する剥離調節剤を調製することができることを見出し、本発明に到達した。また、本発明者は該剥離調節剤の粘度および剥離特性をより改善する目的で、直鎖状または分枝状オレフィンを使用した剥離調節剤組成物が有用であることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は、
「[1](a1) RSiO1/2単位(式中、Rは各々独立に水酸基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基または炭素原子数1〜10の置換もしくは非置換の一価炭化水素基である。)とSiO4/2単位から本質的に成り、SiO4/2単位に対するRSiO1/2単位のモル比が0.6〜1.0であり、水酸基またはアルコキシ基の含有量が0.3〜2.0重量%の範囲にあるオルガノポリシロキサンレジン 100重量部と、
(a2) 一分子中に少なくとも1個の水酸基または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を有する平均重合度100〜1000の直鎖状または分岐鎖状のジオルガノポリシロキサン 20〜150重量部とを(a3)縮合反応触媒の存在下において縮合反応させることにより得られたオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物からなる剥離調節剤。
[2]上記オルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物の水酸基含有量が0.05〜0.80重量%の範囲にあることを特徴とする[1]に記載の剥離調節剤。
[3]上記成分(a1) 100重量部と、上記成分(a2) 30〜100重量部とを上記成分(a3)の存在下において縮合反応させることにより得られ、かつその水酸基含有量が0.10〜0.60重量%の範囲にあるオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物からなる[1]または[2]に記載の剥離調節剤。
[4]上記成分(a1) 100重量部と、上記成分(a2) 20〜150重量部とを上記成分(a3)の存在下において縮合反応させた後、さらに(a4)1種類以上のシリル化剤 0.1〜10.0重量部と反応させることにより得られたオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物からなる[1]〜[3]のいずれか1項に記載の剥離調節剤。
[5]上記成分(a2)が、下記構造式で示される分子鎖両末端が水酸基により封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンである、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の剥離調節剤。
【化1】

(式中、Rは各々独立に水酸基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基または炭素原子数1〜10の置換もしくは非置換の炭素−炭素二重結合を有しない一価炭化水素基であり、mは200〜800の範囲の数である。)
[6]上記成分(a4)がシラザン化合物であり、反応後に得られたオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物の水酸基含有量が0.10〜0.60重量%の範囲にあることを特徴とする[4]に記載の剥離調節剤。
[7]上記の[1]〜[6]のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物からなる剥離調節剤 100重量部と、下記構造式(1)または(2)で示される1種類以上のオレフィン 0.1〜50重量部からなる剥離調節剤組成物。
【化2】

(式中、aは1〜27の範囲の数であり、d,fは独立に0〜20の範囲の数であり、b,eは独立に1〜12の範囲の数であり、gは3〜14の範囲の数である。)
[8](A)上記の[1]〜[6]のいずれか1項に記載の剥離調節剤または[7]に記載の剥離調節剤組成物 1〜20重量部
(B)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個以上有するオルガノポリシロキサン 95〜70重量部
(C)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン [成分(C)中のケイ素原子結合水素原子]と[成分(B)中のアルケニル基] のモル比が0.3〜5.0となる量
(D)ヒドロシリル化反応用白金系触媒: 触媒量
からなることを特徴とする剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
[9]成分(B)の25℃における粘度が50〜2000mPa・sであり、組成物が無溶剤型である[8]に記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
[10]さらに(E)有機溶剤:10〜3000重量部からなる[8]に記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
[11]上記の[8]〜[10]のいずれか1項に記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる剥離性硬化皮膜を有するシート状基材。」である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容易に入手できる原料を用いて、剥離力の調節が容易であり、付加硬化型の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物に配合した場合、優れた重剥離特性を与え、かつ粘着剤層への皮膜成分の移行が低減され、低粘度であり取り扱い作業性に優れた剥離調節剤および剥離調節剤組成物、これらを配合してなる剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明にかかる剥離調節剤は、(a1) RSiO1/2単位(式中、Rは各々独立に水酸基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基または炭素原子数1〜10の置換もしくは非置換の一価炭化水素基である。)とSiO4/2単位から本質的に成り、SiO4/2単位に対するRSiO1/2単位のモル比が0.6〜1.0であり、水酸基またはアルコキシ基の含有量が0.3〜2.0重量%の範囲にあるオルガノポリシロキサンレジン 100重量部と、
(a2) 一分子中に少なくとも1個の水酸基または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を有する平均重合度100〜1000の直鎖状または分岐鎖状のジオルガノポリシロキサン 20〜150重量部とを(a3)縮合反応触媒の存在下において縮合反応させることにより得られたオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物からなる。
【0016】
該剥離調節剤は、上記縮合反応物の水酸基含有量が0.05〜0.80重量%の範囲にあることが重剥離特性の点から好ましく、特に、水酸基含有量が0.10〜0.60重量%の範囲にあることがより好ましい。
【0017】
本発明において、上記の剥離調節剤であるオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物は、上記成分(a1) 100重量部と、上記成分(a2) 30〜100重量部とを上記成分(a3)の存在下において縮合反応させることにより、水酸基含有量を調整して好適に得ることができる。また、上記成分(a1)と成分(a2)との縮合反応後、さらに(a4)1種類以上のシリル化剤 0.1〜10.0重量部と反応させることにより得ることができる。以下、本発明にかかる剥離調節剤について、より具体的に説明する。
【0018】
成分(a1)は、M単位およびQ単位の比が所定の範囲にあり、所定量の水酸基またはアルコキシ基を有するMQ型のオルガノポリシロキサンレジンである。より具体的には、成分(a1)は、RSiO1/2単位とSiO4/2単位から本質的に成り、SiO4/2単位に対するRSiO1/2単位のモル比が0.6〜1.0であり、水酸基またはアルコキシ基の含有量が0.3〜2.0重量%の範囲にあるオルガノポリシロキサンレジンである。
【0019】
式中、Rは各々独立に水酸基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基または炭素原子数1〜10の置換もしくは非置換の一価炭化水素基である。ここで、水酸基はケイ素原子に結合した水酸基であり、いわゆるシラノール基(−OH)である。炭素原子数1〜6のアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が例示される。また、炭素原子数1〜10の置換もしくは非置換の一価炭化水素基は、特に限定されるものではないが、炭素−炭素二重結合を有しない、非反応性の一価炭化水素基であることが好ましい。かかる一価炭化水素基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、パーフルオロアルキル基(例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロブチル基)等のハロゲン化アルキル基、パーフルオロエーテル化アルキル基、シアノエチル基が例示されるが、合成の容易性や剥離特性の点で、好ましくはメチル基、フェニル基またはパーフルオロアルキル基である。
【0020】
成分(a1)は、RSiO1/2で表されるM単位とSiO4/2で表されるQ単位から本質的に成るMQ型のオルガノポリシロキサンレジンであり、SiO4/2単位に対するRSiO1/2単位のモル比は0.6〜1.0の範囲、好適には0.65〜0.90の範囲であり、より好適には0.70〜0.80の範囲である。該モル比が前記下限未満では、剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物に配合した際に、他のシロキサン成分との相溶性が低下する。一方上限を超えると重剥離特性、特に初期重剥離特性が不十分な結果となる。また、該オルガノポリシロキサンレジンは、後述する成分(a2)と縮合反応する成分であり、分子中に水酸基またはアルコキシ基の含有量が0.3〜2.0重量%の範囲にあることを特徴とする。成分(a1)の水酸基またはアルコキシ基の含有量は、好適には0.4〜1.0重量%の範囲であり、より好適には0.5〜0.9重量%の範囲である。本発明において、成分(a1)が水酸基を0.5〜0.8重量%含むことが特に好ましい。成分(a1)の水酸基またはアルコキシ基の含有量が前記下限未満では、成分(a2)との縮合反応が不十分になる他、得られた剥離調節剤の重剥離特性が不十分となる場合がある。一方、成分(a1)の水酸基またはアルコキシ基の含有量が前記上限を超えると、得られた剥離調節剤の糊残り等の問題が生じる場合がある。
【0021】
成分(a2)は、一分子中に少なくとも1個の水酸基または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を有する平均重合度100〜1000の直鎖状または分岐鎖状のジオルガノポリシロキサンであり、成分(a1)の水酸基またはアルコキシ基と縮合反応することにより、本発明にかかる剥離調節剤であるオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物を形成する。かかる成分(a2)は、水酸基または炭素原子数1〜6のアルコキシ基は一分子中に少なくとも1個あることが必要であるが、反応性の見地から分子鎖の末端に2以上の水酸基または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を有することが好ましい。また、剥離調節剤を安定に製造することができ、重剥離特性に優れることから、成分(a2)は直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが特に好ましい。
【0022】
本発明において、成分(a2)の平均重合度は100〜1000の範囲にあることが必要であり、より好適には、150〜900の範囲であり、最も好適には200〜800の範囲である。成分(a2)の平均重合度が前記上限を超えると、成分(a1)との縮合反応により得られた剥離調節剤の粘度が非常に高く、特に無溶剤型の剥離剤組成物に配合することが困難となり、また通常の塗工機を用いて剥離剤組成物を基材に塗布することができず、実用的でない。また、成分(a2)の平均重合度が前記下限未満では、縮合反応物がゲル化し、目的とする剥離調節剤を得ることができない。
【0023】
本発明において、成分(a2)は、好適には下記構造式で示される分子鎖両末端が水酸基により封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。
【化3】

【0024】
式中、Rは各々独立に水酸基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基または炭素原子数1〜10の置換もしくは非置換の炭素−炭素二重結合を有しない、非反応性の一価炭化水素基である。Rである一価炭化水素基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、パーフルオロアルキル基(例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロブチル基)等のハロゲン化アルキル基、パーフルオロエーテル化アルキル基、シアノエチル基が例示されるが、合成の容易性や剥離特性の点で、好ましくはメチル基、フェニル基またはパーフルオロアルキル基である。特に、Rは90モル%以上がメチル基であることが好ましく、95モル%以上がメチル基であることが最も好ましい。
【0025】
上記構造式で表される分子鎖両末端が水酸基により封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンの平均重合度mは、200〜800の範囲の数であり、得られる剥離調節剤の粘度が低いため取り扱いが容易であり、縮合反応時のゲル化が起こりにくいために安定に生産することができる利点がある。本発明において、最も好適な平均重合度mの数の範囲は250〜750である。
【0026】
本発明の剥離調節剤は、上記成分(a1)であるオルガノポリシロキサンレジン 100重量部と、成分(a2)であるジオルガノポリシロキサン 20〜150重量部とを(a3)縮合反応触媒の存在下において縮合反応させることにより得ることができる。本発明において、重剥離特性に優れた剥離調節剤を安定に得るためには、成分(a1)/成分(a2)の反応重量比は、1/0.2〜1/1.5の範囲であることが必要であり、1/0.3〜1/1.0の範囲が特に好ましい。すなわち、成分(a1)100重量部と成分(a2)30〜100重量部とを(a3)縮合反応触媒の存在下において縮合反応させることが特に好ましく、水酸基含有量が0.10〜0.60重量%の範囲にあり、重剥離特性に優れたオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物を容易に得ることができる。
【0027】
一方、成分(a1)/成分(a2)の反応重量比が前記下限よりも低い場合または1/2.0以上の場合には、剥離調節剤の重剥離効果が不十分となる。一方、前記反応重量比が前期上限を超え、1/2.0未満となる範囲、すなわち、1/1.5<「成分(a1)/成分(a2)の反応重量比」<1/2.0の範囲では縮合反応中にゲル化が起こり、目的とする剥離調節剤が得られない場合がある。
【0028】
成分(a3)は縮合反応触媒であり、成分(a1)および成分(a2)の縮合反応を促進する成分である。かかる縮合反応促進触媒は酸、塩基、有機酸金属塩等の1種類または2種類以上の縮合触媒を用いることができるが、アンモニア(気体)、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、アミン、有機アミンのカルボン酸塩、第四級アンモニウム塩、カルボン酸及びカルボン酸金属塩から選ばれる縮合触媒が好ましい。特に、揮発性のアンモニア、アミン等を用いる場合、縮合反応後に加熱・減圧等により反応系から縮合反応触媒を容易に除去でき、反応を停止させやすいという利点がある。
【0029】
本発明の成分(a3)として好適なアミンは、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、ブタノールアミン及びブチルアミンにより例示される第一級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、エチルアミルアミン、イミダゾール及びプロピルヘキシルアミンにより例示される第二級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリプロパノールアミン、ピリジン、N−メチルイミダゾール及びメチルプロピルヘキシルアミンにより例示される第三級アミン;リン酸ドデシルアミン、テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロノナンにより例示されるアミン化合物及びその塩が挙げられる。同様に、好適な有機アミンのカルボン酸塩として、ジエチルアンモニウムアセテート、ブチルアンモニウムオクトエート、n−ヘキシルアンモニウム‐2‐エチルヘキサノエート及びトリメチルアンモニウムラウレートが挙げられる。
【0030】
好適な第四級アンモニウム塩として、テトラメチルアンモニウムアセテート、塩化メチルエチルジブチルアンモニウムまたは塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、テトラメチルグアニジン‐2‐エチルヘキサノエート、により例示される。好適なカルボン酸として、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ギ酸、ステアリン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ドデカン酸、デカン酸、3,6−ジオキサヘプタン酸及び3,6,9−トリオキサデカン酸が挙げられる。また、金属がLi,Na,K,Ce及びCaからなる群から選ばれるカルボン酸金属塩も使用することができ、ギ酸カリウムや酢酸カリウムが例示される。
【0031】
本発明の剥離調節剤は、上記のオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物中の水酸基含有量が0.05〜0.80重量%の範囲にあることが好ましい。該水酸基含有量はより好適には0.10〜0.60重量%の範囲であり、0.20〜0.50重量%の範囲が最も好ましい。該縮合反応物中の水酸基含有量を上記範囲内にすることにより、本発明の剥離調節剤は優れた重剥離特性を有し、かつ剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物に配合した際に、他のシロキサン成分との相溶性が向上し、均一な組成物を得ることができる。また、該組成物を硬化させてなる剥離性硬化皮膜の剥離特性および残留接着率が改善される。一方、該縮合反応物中の水酸基含有量が前記上限を超えると、浴中において剥離調節剤とシロキサン成分の分離が発生する場合があり、水酸基含有量が前記下限未満では本発明の剥離調節剤を離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物に大量に配合しないと重剥離特性が実現できない場合がある。
【0032】
上記の縮合反応物中の水酸基含有量は、成分(a1)であるオルガノポリシロキサンレジンと、成分(a2)であるジオルガノポリシロキサンの種類の選択、反応重量比および反応時間によっても制御することができる。
【0033】
さらに、上記成分(a1)と成分(a2)とを(a3)縮合反応触媒の存在下において縮合反応させた後、(a4)1種類以上のシリル化剤と反応させることにより所定の水酸基含有量を有するオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物を得ることができる。(a4)1種類以上のシリル化剤を用いることにより、縮合反応物の水酸基含有量を容易に調整でき、重剥離特性および浴中における他のシロキサン成分との相溶性に優れた剥離調節剤を得られる点で有用である。
【0034】
成分(a4)である1種類以上のシリル化剤は、縮合反応物の水酸基の一部に疎水性が強いトリメチルシリル基等のシリル基を導入し、その水酸基含有量を調整することにより安定した重剥離特性を発現すると共に、疎水性である他のシロキサン成分との相溶性を改善して、浴中における剥離調節剤とシロキサン成分の分離を抑制する目的で使用される。成分(a4)の使用量は、上記成分(a1)と成分(a2)との反応重量比や所望の重剥離特性等に応じて適宜選択することができるが、成分(a1) 100重量部に対して0.1〜10.0重量部の使用が好適であり、1〜8.0重量部の使用がより好適である。
【0035】
成分(a4)である1種類以上のシリル化剤は、トリアルキルシリル化剤であることが好ましく、入手容易であることから、トリメチルシリル化剤が特に好ましい。かかるシリル化剤は、具体的には式:((CHSi)NR〔式中、Rは水素又は低級アルキル基である〕で表されるシラザン化合物を好適に例示することができ、より具体的には、ヘキサメチルジシラザン、N−メチル−ヘキサメチルジシラザン、N−エチル−ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチル−N−プロピルジシラザン等のシラザン化合物が挙げられる。本発明において、反応性の良さからヘキサメチルジシラザンを用いるのが特に好適である。
【0036】
他のトリメチルシリル化剤として、式:(CHSiY〔式中、Yはハロゲン原子、−OH、−OR、または−NRから選ばれる基(Rは上記と同じである)である〕で示されるシラン化合物を使用することもできる。より具体的には、トリメチルクロロシラン、トリメチルシラノール、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、プロポキシトリメチルシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン等が挙げられ、反応性の良さからトリメチルシラノールを用いるのが特に好適である。
【0037】
本発明にかかる剥離調節剤は、目的の重量比で上記の成分(a1)と成分(a2)とを有機溶剤に溶解させて均一に混合した後、アンモニア水等の(a3)縮合反応触媒を触媒量添加し、所定の温度、時間で反応させることに合成される。反応のスケール等によるが、反応温度は室温(25℃)〜80℃であり、反応時間は0.5〜10時間が一般的である。
【0038】
上記反応後、有機溶剤の還流(リフラックス)温度まで昇温させ、縮合水やアンモニア等の成分を除去することにより、目的とする上記の成分(a1)と成分(a2)の縮合反応物である剥離調節剤を得ることができる。また、上記の縮合水やアンモニア等の成分を除去した後に、成分(a4)である1種類以上のシリル化剤を添加し、70〜90℃、より好適には85℃付近で反応させることにより、該縮合反応物中の水酸基含有量を調整し、目的とする重剥離特性を有する剥離調節剤を得ることができる。
【0039】
無溶剤型の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物に配合する場合、得られた剥離調節剤に目的の粘度に合わせたポリシロキサン類を粘度調節剤として添加し、溶剤を除去して目的物を得ることが好ましい。配合安定性の点から、上記ポリシロキサン類は、25℃における粘度が0.65〜1,000mPa・sの環状ポリシロキサン、分子鎖末端がアルケニルジメチルシロキシ基、トリメチルシロキシ基、ジメチルモノヒドロキシシロキシ基またはジメチルモノアルコキシシロキシ基で封鎖された直鎖状もしくは分岐状のジメチルポリシロキサン、またはこれらの混合物が例示できる。好適には、シロキサン単位からなる重合度3〜7の環状メチルポリシロキサン、25℃における粘度が5〜500mPa・sの直鎖状ジメチルポリシロキサンが例示される。特に好適には、後述する剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物の成分(B)でもある分子鎖末端がアルケニルジメチルシロキシ基で封鎖された直鎖状のジメチルポリシロキサンが例示される。さらに具体的には、下記式で示される分子鎖末端がアルケニルジメチルシロキシ基で封鎖された直鎖状のジメチルポリシロキサンが例示される。
式: MRaRa
式中、MRaは(CH(Ra)SiO1/2で表される1官能のアルケニルジメチルシロキシ基であり、Raは炭素原子数2〜8のアルケニル基である。Dは(CHSiO2/2で表される2官能のシロキサン単位である。pは好適には5〜200の範囲の数である。Raは好ましくはビニル基またはヘキセニル基であり、pは特に好適には20〜100の範囲の数である。
【0040】
溶剤型の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物に配合する場合、得られた剥離調節剤に目的の粘度に合わせた有機溶剤を添加して目的物を得る。有機溶剤としてはトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素溶剤、へキサン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族系炭化水素溶剤、ジイソプロピルエーテル、1 , 4− ジオキサンなどのエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤などが上げられる。トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、へキサン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族系炭化水素溶剤が好ましい。
【0041】
本発明の剥離調節剤は、さらに、下記構造式(1)または(2)で示される1種類以上のオレフィンを配合することを特徴とする剥離調節剤組成物として使用することができる。これらのオレフィンを本発明の剥離調節剤に配合することにより、剥離調節剤組成物の粘度を容易に調整し、剥離性オルガノポリシロキサンへの配合をより容易ならしめることができる。また、これらのオレフィンは公知の剥離調節剤であり、本発明にかかる剥離調節剤組成物の重剥離特性等を所望の範囲に制御できる点でも極めて有用な添加剤である。
【化4】

(式中、aは1〜27の範囲の数であり、d,fは独立に0〜20の範囲の数であり、b,eは独立に1〜12の範囲の数であり、gは3〜14の範囲の数である。)
【0042】
上記構造を有するオレフィン成分は室温(25℃)で液状〜固体状であり、炭素原子数が20を超えると室温で固体状になる場合があり、炭素原子数が6未満では揮発性が高くなる。そこで、剥離調節剤の粘度調整に使用する場合には、炭素原子数が6〜20、好ましくは8〜18以下、より好ましくは10〜16の室温で液状のオレフィンが好適に用いられる。なお、上記他の有機溶剤に分散させることにより、炭素原子数が20をこえる固体状のオレフィンであっても使用することができる。また、二種類以上の炭素原子数の異なるオレフィンを組み合わせて使用することができ、直鎖状オレフィンと分枝状オレフィンを組み合わせて使用することもできる。
【0043】
かかるオレフィンの具体例として、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセンからなる群から選択される直鎖状オレフィン、下記構造式(3)または(4)で示される分枝状オレフィンを好適に用いることができる。
【0044】
【化5】

【0045】
本発明の剥離調節剤組成物は下記構造式(1)または(2)で示される1種類以上のオレフィンを配合してなるものであり、その配合量は特に限定されるものではないが、上記のオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物 100重量部に対して、上記オレフィン 0.1〜50重量部を配合することが好ましく、剥離調節剤組成物の重剥離特性および粘度の点から0.5〜20重量部の範囲で配合することが特に好ましい。
【0046】
次に、本発明の剥離調節剤または剥離調節剤組成物を含む剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物について説明する。
【0047】
本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物は、(A)上記の剥離調節剤または剥離調節剤組成物 1〜20重量部、(B)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個以上有するオルガノポリシロキサン 95〜70重量部、(C)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン [成分(C)中のケイ素原子結合水素原子]と[成分(B)中のアルケニル基] のモル比が0.3〜5.0となる量 および(D)ヒドロシリル化反応用白金系触媒 触媒量からなる。なお、成分(A)〜成分(D)の和(合計量)は100重量部である。
【0048】
成分(B)は、本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物の主成分であり、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個以上有するオルガノポリシロキサンである。成分(B)は成分(D)の触媒作用により成分(C)とヒドロシリル化反応により架橋する。分子構造は、直鎖状が一般的であるが、分岐鎖状であってもよい。
【0049】
ケイ素原子結合アルケニル基は、好ましくは炭素原子数2〜10のアルケニル基であり、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基が例示される。好ましくは、ビニル基であり、ついでアリル基、ヘキセニル基である。分子中のアルケニル基の含有量は、1分子中でケイ素原子に結合する全有機基の0.1〜20モル%であることが好ましく、0.2〜10.0モル%がより好ましい。特に好適な範囲は0.5〜5.0モル%の範囲である。アルケニル基の含有量が前記下限未満では実用に足る硬化速度が得られない場合があり、前記上限を超えると硬化皮膜の剥離力が大きくなり過ぎる場合がある。アルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合している場合、側鎖のケイ素原子に結合している場合、分子鎖末端のケイ素原子と側鎖のケイ素原子の両方に結合している場合があり得る。
【0050】
成分(B)中のケイ素原子に結合したアルケニル基以外の有機基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、式CmF2m+1CH2CH2−(ただし、mは1〜10の整数である)で表されるパーフルオロアルキル基(例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロブチル基)等のハロゲン化アルキル基;式F[CF(CF)CFO]CF(CF)CFOCHCHCH−、F[CF(CF)CFO]CF(CF)CHOCHCHCH−、F[CF(CF)CFO]CFCFCHCH−、F[CF(CF)CFO]CF(CF)CHCH−、C2m+1CHCHOCHCHCH−、C2m+1CHOCHCHCH−(ただし、nは1〜5の整数、mは3〜10の整数である)で表されるパーフルオロエーテル化アルキル基;シアノエチル基が例示されるが、合成の容易性や硬化皮膜特性の点で、好ましくはアルキル基、フェニル基またはパーフルオロアルキル基(ただし、50モル%以上がメチル基)である。アルケニル基以外のすべての有機基がメチル基であることがより好ましい。
【0051】
成分(B)として、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルエトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体が例示される。
【0052】
成分(B)は、常温で液状でも生ゴム状でもよいが、無溶剤型組成物用には液状である必要があり、好ましくは50〜10,000mPa・sであり、より好ましくは50〜2,000mPa・sである。常温で生ゴム状の場合は、キシレン、トルエン等の有機溶剤に溶解する必要がある。
【0053】
成分(C)は1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、25℃における粘度が1〜1,000mPa・sであり、かつ、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合有機基が炭素原子数1〜8のアルキル基またはフェニル基であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。また、成分(B)との架橋反応のため、分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有することが必要であり、1分子中に3個以上のケイ素原子結合水素原子を有することが好ましい。
【0054】
ケイ素原子結合水素原子の結合位置は特に限定されず、分子鎖末端、側鎖、これら両方が例示される。ケイ素原子結合水素原子の含有量は0.1〜20重量%であることが好ましく、0.5〜18重量%であることがより好ましい。
【0055】
ケイ素原子に結合する有機基としてメチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,オクチル基等の炭素原子数1〜8のアルキル基とフェニル基があるが、それらの合計数の50%以上が炭素原子数1〜8のアルキル基であることが好ましい。かかるアルキル基のうちでは、硬化被膜特性と製造容易性の点でメチル基が好ましい。成分(C)の分子構造として、直鎖状,分岐鎖状,分岐状、環状が例示される。
【0056】
成分(C)の25℃における粘度は1〜1,000mPa・sであり、好ましくは5〜500mPa・sである。25℃における粘度が前記下限未満であると、成分(C)がオルガノポリシロキサン組成物中から揮発し易く、前記上限を超えると、オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間が長くなるためである。
【0057】
成分(C)は、より具体的には、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン,両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体,両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体,環状メチルハイドロジェンポリシロキサン,環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、テトラ(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シランが例示される。
【0058】
成分(B)と成分(C)の配合比率は、[成分(C)中のケイ素原子結合水素原子]と[成分(B)中のアルケニル基]のモル比が0.3〜5.0となる量である。このモル比が0.3より小さいと硬化性が低下しやすく、より具体的には硬化速度が遅くなりすぎ、硬化皮膜が弱くなる。このモル比が5.0より大きいと粘着性物質に対する剥離性が低下し、硬化皮膜同士がブロッキングしやすくなる。また、剥離力の経時変化が大きくなり、実用性が損なわれる場合がある。こうした観点から、好ましくは0.7〜2.0となる量である。
【0059】
成分(D)はヒドロシリル化反応用白金系触媒であり、成分(B)と成分(C)のヒドロシリル化反応による架橋、硬化を促進させる。かかる白金系触媒として、塩化白金酸,塩化白金酸のアルコール溶液,塩化白金酸のアルデヒド溶液,塩化白金酸のオレフィン錯体,塩化白金酸とジケトン類との錯体;塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体,塩化白金酸とテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンとの錯体、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体,白金テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体等の白金アルケニルシロキサン錯体;四塩化白金,白金微粉末,アルミナ微粒子またはシリカ微粒子に微粉末状白金を担持させたもの,白金黒,白金オレフィン錯体,白金ジケトン錯体,白金カルボニル錯体が例示される。
【0060】
成分(B)および成分(C)との相溶性、有機溶剤への溶解性、硬化反応の促進能の点で、塩化白金酸,塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体,塩化白金酸とテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンとの錯体,白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体,白金テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体等の白金アルケニルシロキサン錯体が特に好ましい。
【0061】
成分(C)の配合量は触媒量、すなわち、本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させるのに十分な量であるが、該組成物の硬化性、基材への密着性、経済性を勘案すると、成分(B)と成分(C)の合計100重量部当り白金金属量で5〜1000ppmの範囲が好ましく、10〜300ppmの範囲がより好ましい。
【0062】
本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物は、成分(B)が生ゴム状である場合には、組成物をシート状基材へ薄くコーテイングすることができないので、上記成分(A)〜成分(D)の合計量を100重量部として、さらに(E)有機溶剤 10〜3000重量部を配合し、溶剤型の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物として使用することができる。
【0063】
成分(E)は有機溶剤であり、成分(A)〜成分(D)を均一に溶解でき、硬化を阻害しないものであれば特に限定されない。具体的には、トルエン,キシレン等の芳香族系炭化水素;ペンタン,ヘキサン,ヘプタン等の脂肪族系炭化水素;トリクロロエチレン,パークロロエチレン,トリフルオロメチルベンゼン,1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン,メチルペンタフルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトンが例示される。これらのうちでは、溶解性と安全性と経済性の点からトルエン,キシレン,n−ヘキサンが好ましい。
【0064】
本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物は、上記成分以外に、
常温下でのゲル化、硬化を抑制して保存安定性を向上させ、加熱硬化性とするために、(F)ヒドロシリル化反応抑制剤を含有することが好ましい。ヒドロシリル化反応抑制剤として、アセチレン系化合物、エンイン化合物、有機窒素化合物、有機燐化合物、オキシム化合物が例示され、具体的には、3−メチル−1−ブチン−3−オール(=メチルブチノール)、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、フェニルブチノール等のアルキニルアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−イン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、ベンゾトリアゾール、メチルビニルシクロシロキサンが例示される。この付加反応抑制剤の配合量は、通常、上記成分(A)〜成分(D)の合計量を100重量部として、0.001〜5重量部の範囲内であるが、本成分の種類、ヒドロシリル化反応用白金系触媒の性能と含有量、成分(B)中のアルケニル基量、成分(C)中のケイ素原子結合水素原子量に応じて適宜選定するとよい。
【0065】
本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物には、必要に応じて、その他の任意成分を添加することができる。例えば、安定剤、耐熱向上剤、充填剤、顔料、レベリング剤、基材への密着性向上剤、帯電防止剤、消泡剤、非反応性オルガノポリシロキサンなどを添加してもよい。また、生産工程における本組成物の塗工プロセスに応じ、所望の塗膜の厚さを実現するために、シリカ微粉末等の公知の増粘剤をさらに配合することもできる。
【0066】
本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物の全体の粘度は、シート状基材へのコーテイング性の点で、無溶剤型では25℃における粘度が50〜2,000mPa・sの範囲にあることが好ましく、溶剤型では25℃における粘度が50〜5,000mPa・sの範囲にあることが好ましい。
【0067】
本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物は、前記各成分を均一に混合することにより容易に製造することができる。各成分の配合順序は特に制限されるものではないが、混合後、直ちに使用しないときは、成分(A)と成分(B)の混合物と、成分(C)と成分(D)の混合物を別々に保存しておき、使用直前に両者を混合することが好ましい。
【0068】
以上のような本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物を、紙,グラシン紙,ダンボール紙,クレーコート紙,ポリオレフィンラミネート紙,特にはポリエチレンラミネート紙,ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミドなどの合成樹脂から得られるプラスチックフィルム,布,合成繊維,金属箔等の各種シート状基材表面に均一に塗工し、成分(B)と成分(C)がヒドロシリル化反応して架橋するのに十分な条件下で加熱すると、これらのシート状基材表面に、粘着性物質に対して適度な剥離抵抗を有する硬化皮膜を形成する。しかも、当該硬化皮膜はシート状基材への密着性に優れるという特徴を有する。
【0069】
上記基材に本発明の組成物を塗布するには、ロール塗布、グラビア塗布、ワイヤードクター塗布、エアーナイフ塗布、ディッピング塗布などの公知の方法を用いることができる。塗布量としては0.01〜100g/mとすればよく、塗膜の厚さとしては0.1〜100μm程度で、基材の全面または剥離性の必要な箇所に部分的に塗布する。
【0070】
シート状基材上での本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物の硬化温度は、一般に50〜200℃が適切であるが、シート状基材の耐熱性が良好であれば200℃以上でもよい。加熱方法は特に限定されるものではなく、熱風循環式オーブン中での加熱、長尺の加熱炉への通過、赤外線ランプやハロゲンランプによる熱線輻射が例示される。また、加熱と紫外線照射を併用して硬化させてもよい。シリコーン組成物の硬化は、50〜200℃で行うことが好ましく、この場合加熱時間が1秒〜5分とすることがでる。
【0071】
本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物を塗工し硬化させてなる剥離性シートに適用する粘着性物質は、各種粘着剤、各種接着剤等であり、アクリル樹脂系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤;アクリル樹脂系接着剤、合成ゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤が例示される。また、アスファルト、餅のような粘着性食品、糊、鳥もちが例示される。
【実施例】
【0072】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、下記の例において、部はいずれも重量部であり、粘度は25℃において測定した値である。式中、Mは(CHSiO1/2または(CH(OH)SiO1/2で表される1官能のシロキサン単位であり、MViは(CH(CH=CH)SiO1/2で表される1官能のシロキサン単位であり、MOHはまたは(CH(OH)SiO1/2で表される1官能のシロキサン単位であり、Dは(CHSiO2/2で表される2官能のシロキサン単位であり、QはSiOで表される4官能のシロキサン単位である。また、剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物の硬化速度、その硬化皮膜の基材への密着性およびその硬化皮膜の粘着性物質に対する剥離抵抗値は以下に示す方法により評価した。
【0073】
[粘度]
粘度は、25℃においてデジタル表示粘度計(芝浦システム株式会社製のビスメトロンVDA2型)に2号ローターを装着してローター回転数30rpmの条件で測定した。
[水酸基(シラノール基)の含有量]
オルガノポリシロキサンレジン、各剥離調節剤中の水酸基の含有量は、FT−IR (フ−リエ変換赤外分光光度計)NEXUS 670型(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いて、水酸基(シラノール基)に帰属される吸収波長3200〜3800cm−1の−OH伸縮振動特性吸収ピークの吸収強度に基づいて定量した。具体的には、水酸基の含有量が既知であるトリメチルシラノール標準試料を用いた検量線法により、測定試料の上記ピークの吸収強度から、試料中の水酸基の含有量を定量した。
【0074】
[シリコーン組成物の硬化方法]
シリコーン組成物を調製直後ポリエチレンラミネート紙基材にシリコーン組成物を0.6〜0.8g/m となるように印刷適正試験機を用いて塗布し、130 ℃ の熱風式乾燥機中で30秒間加熱しこれをシリコーンセパレーター( 剥離紙) とし以下の測定に使用した。
【0075】
[剥離力]
前記したシリコーン組成物の硬化方法に従い得られたシリコーンセパレーターを25℃
で20時間保存した後、溶剤型アクリル系粘着剤BPS−5127(東洋インキ株式会社製)を塗布して70℃で2分間加熱処理した。次に粘着剤を塗布し処理した面に、アートコート紙を貼り合せ、2.5cm幅に切断し、更に25℃で24時間保存したもの、及び70℃で3日保存したものを試料とし、試料の表面紙(上質紙)を、引っ張り試験機を使用し角度180度、剥離速度0.3(m/分)および100(m/分)の条件で反対方向に引張り、剥離に要した力を測定して初期剥離力(N)とした。
【0076】
[残留接着率の評価]
前記したシリコーン組成物の硬化方法に従い得られたシリコーンセパレーターの表面に、ポリエステルテープニットー31B(日東電工株式会社製商品名)を貼り合せ、1976Paの荷重をかけ、70℃で20時間加熱処理してから、このテープを剥がし、これをステンレス板に貼り付け、この処理したテープを、引っ張り試験機を用い、ステンレス板から剥離するのに要した力を初期剥離力試験と同様の方法で測定し接着力(A)とした。
【0077】
同様に、このポリエステルテープニットー31B テープをデュポン社製テフロン(登録商標)板に貼り合せ、1976Pa の荷重をかけ、70℃で20時間加熱処理してから、このテープを剥がし、これをステンレス板に貼り付け、この処理したテープを、引っ張り試験機を用い、ステンレス板から剥離するのに要した力を初期剥離力試験と同様の方法で測定しシリコーン硬化表面に触れていないブランクの接着力( B ) とした。残留接着率(%)は次の式から求めた。
残量接着率= 接着力(A)/ブランクの接着力(B)×100
【0078】
[剥離調節剤の合成例1]
温度計、冷却管および攪拌機を備えた2Lのセパラブルフラスコに、下記原料を仕込み、30分攪拌する。
(a1−1)メチルポリシロキサンレジン:
0.74 (OH量=0.74%) 300g
(a2−1)分子鎖両末端がヒドロキシジメチルシロキシ基で封鎖された直鎖状のジメチルポリシロキサン:
OH330OH 128g
キシレン 444g
上記原料を均一に混合後、40℃まで昇温し、(a3)28%アンモニア水溶液を5g添加し約5時間反応させる。その後、水抜き管を取り付け、140℃まで昇温し、2時間かけて縮合水及びアンモニアを取り除き、室温まで冷却することにより、メチルポリシロキサンレジン−ジメチルポリシロキサン縮合物からなる剥離調節剤(1)のキシレン溶液を得た。
【0079】
得られた剥離調節剤(1)の水酸基(シラノール基)含有量を表1に示す。また、剥離調節剤(1)のキシレン溶液に、粘度調整のため、両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖された直鎖状のジメチルポリシロキサン(MVi60Vi) 428gを添加し、約30分均一になるまで混合し、キシレンをストリッピングで除去することにより、剥離調節剤(1)のジメチルポリシロキサン溶液を得た。該溶液の粘度を表1に示す。なお、該溶液中の、メチルポリシロキサンレジン−ジメチルポリシロキサン縮合物からなる剥離調節剤(1)の含有量は50重量%である。
【0080】
[剥離調節剤の合成例2]
上記[剥離調節剤の合成例1]において、成分(a2−1)(=MOH330OH)の仕込み量を256gとした他は合成例1と同様にして、剥離調節剤(2)のキシレン溶液を得た。また、剥離調節剤(2)のキシレン溶液に、粘度調整のため、両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖された直鎖状のジメチルポリシロキサン(MVi60Vi) 556gを添加し、約30分均一になるまで混合し、キシレンをストリッピングで除去することにより、剥離調節剤(2)のジメチルポリシロキサン溶液(剥離調節剤(2)の含有量=50重量%)を得た。
【0081】
該剥離調節剤(2)の水酸基(シラノール基)含有量を表1に示す。また、剥離調節剤(2)のジメチルポリシロキサン溶液の粘度を表1に示す。
【0082】
[剥離調節剤の合成例3]
上記[剥離調節剤の合成例1]において、成分(a2−1)の代わりに、
(a2−2) MOH400OH 128g
を用いた他は合成例1と同様にして、剥離調節剤(3)のキシレン溶液および剥離調節剤(3)のジメチルポリシロキサン溶液を得た。該剥離調節剤(3)の水酸基(シラノール基)含有量を表1に示す。また、剥離調節剤(3)のジメチルポリシロキサン溶液(剥離調節剤(3)の含有量=50重量%)の粘度を表1に示す。
【0083】
[剥離調節剤の合成例4]
上記[剥離調節剤の合成例1]において、成分(a2−1)の代わりに、
(a2−3) MOH620OH 128g
を用いた他は合成例1と同様にして、剥離調節剤(4)のキシレン溶液および剥離調節剤(4)のジメチルポリシロキサン溶液を得た。該剥離調節剤(4)の水酸基(シラノール基)含有量を表1に示す。また、剥離調節剤(4)のジメチルポリシロキサン溶液(剥離調節剤(4)の含有量=50重量%)の粘度を表1に示す。
【0084】
[剥離調節剤の合成例5]
上記[剥離調節剤の合成例1]と同様にして、剥離調節剤(1)のキシレン溶液を得た後、室温で(a4)ヘキサメチルジシラザン 4gを添加し、85℃で2時間反応させることにより、剥離調節剤(1)のシラノール基の一部をトリメチルシリル基により封鎖した。得られた反応後の溶液を剥離調節剤(5)のキシレン溶液とし、粘度調整のため、両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖された直鎖状のジメチルポリシロキサン(MVi60Vi) 428gを添加し、約30分均一になるまで混合し、キシレンをストリッピングで除去することにより、剥離調節剤(5)のジメチルポリシロキサン溶液(剥離調節剤(5)の含有量=50重量%)を得た。該剥離調節剤(5)の水酸基(シラノール基)含有量を表1に示す。また、剥離調節剤(5)のジメチルポリシロキサン溶液の粘度を表1に示す。
【0085】
[剥離調節剤の合成例6]
上記[剥離調節剤の合成例5]において、成分(a4)であるヘキサメチルジシラザンの添加量を8gとした他は合成例5と同様にして、剥離調節剤(6)のキシレン溶液および剥離調節剤(6)のジメチルポリシロキサン溶液を得た。該剥離調節剤(6)の水酸基(シラノール基)含有量を表1に示す。また、剥離調節剤(6)のジメチルポリシロキサン溶液(剥離調節剤(6)の含有量=50重量%)の粘度を表1に示す。
【0086】
[剥離調節剤の合成例7]
上記[剥離調節剤の合成例5]において、成分(a4)であるヘキサメチルジシラザンの添加量を20gとした他は合成例5と同様にして、剥離調節剤(7)のキシレン溶液および剥離調節剤(7)のジメチルポリシロキサン溶液(剥離調節剤(7)の含有量=50重量%)を得た。該剥離調節剤(7)の水酸基(シラノール基)含有量を表1に示す。また、剥離調節剤(7)のジメチルポリシロキサン溶液の粘度を表1に示す。
【0087】
[剥離調節剤の合成例8]
上記[剥離調節剤の合成例1]において、成分(a1−1)および成分(a2−1)の仕込み量を以下のように変更した他は合成例1と同様にして、剥離調節剤(8)のキシレン溶液を得た。
(a1−1)M0.74 (OH量=0.74%) 75g
(a2−1)MOH330OH 256g
また、剥離調節剤(8)のキシレン溶液に、粘度調整のため、両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖された直鎖状のジメチルポリシロキサン(MVi60Vi) 331gを添加し、均一になるまで約30分間混合し、キシレンをストリッピングで除去することにより、剥離調節剤(8)のジメチルポリシロキサン溶液(剥離調節剤(8)の含有量=50重量%)を得た。該剥離調節剤(8)の水酸基(シラノール基)含有量を表1に示す。また、剥離調節剤(8)のジメチルポリシロキサン溶液の粘度を表1に示す。
【0088】
[剥離調節剤の合成例9]
上記[剥離調節剤の合成例1]において、成分(a2−1)の代わりに、
(a2−1)´ MOH2200OH 128g
を用いた他は合成例1と同様にして、剥離調節剤(9)のキシレン溶液を得た。また、剥離調節剤(9)のキシレン溶液に、粘度調整のため、両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖された直鎖状のジメチルポリシロキサン(MVi60Vi) 1112gを添加し、均一になるまで約30分間混合し、キシレンをストリッピングで除去することにより、剥離調節剤(9)のジメチルポリシロキサン溶液(剥離調節剤(9)の含有量=33重量%)を得た。該剥離調節剤(9)の水酸基(シラノール基)含有量を表1に示す。合成例1〜8の剥離調節剤に比して、2倍量のジメチルポリシロキサン(MVi60Vi)中に溶解されているにもかかわらず、得られた剥離調節剤(9)のジメチルポリシロキサン溶液は表1に示す通り、極めて高粘度であった。
【0089】
[合成例1の剥離調節剤を用いた剥離調節剤組成物の調製例1]
上記[剥離調節剤の合成例1]において得られた、剥離調節剤(1)のジメチルポリシロキサン溶液(剥離調節剤(1)の含有量=50重量%) 100重量部に、下記構造式(3)で示される分枝状オレフィン 2重量部を添加し、均一に混合することにより、剥離調節剤(1)および分枝状オレフィンからなる剥離調節剤組成物(1)のジメチルポリシロキサン溶液を得た。該ジメチルポリシロキサン溶液の粘度は表1に示す通り、分枝状オレフィンを添加していない場合に比して大きく低下した。
【化6】

【0090】
[合成例6の剥離調節剤を用いた剥離調節剤組成物の調製例2]
上記[剥離調節剤の合成例6]において得られた、剥離調節剤(6)のジメチルポリシロキサン溶液(剥離調節剤(6)の含有量=50重量%) 100重量部に、上記構造式(3)で示される分枝状オレフィン 2重量部を添加し、均一に混合することにより、剥離調節剤(6)および分枝状オレフィンからなる剥離調節剤組成物(2)のジメチルポリシロキサン溶液を得た。該ジメチルポリシロキサン溶液の粘度は表1に示す通り、分枝状オレフィンを添加していない場合に比して大きく低下した。
【0091】
[参考例1]
下記原料を容器に仕込み、室温で均一になるまで攪拌することにより、メチルポリシロキサンレジンのジメチルポリシロキサン溶液(1)を得た。該溶液の粘度は、2,000mPa・sであった。なお、該溶液中の、メチルポリシロキサンレジンの含有量は50重量%である。
メチルポリシロキサンレジン:M0.65 (OH量=0.1%) 300g
ジメチルポリシロキサン:MVi60Vi 300g
【0092】
[参考例2]
下記原料を容器に仕込み、室温で均一になるまで攪拌することにより、メチルポリシロキサンレジンのジメチルポリシロキサン溶液(2)を得た。該溶液の粘度は、2,000mPa・sであった。なお、該溶液中の、メチルポリシロキサンレジンの含有量は50重量%である。
メチルポリシロキサンレジン:M´0.70 (OH量=0.1%、Vi量=1.9%) 300g
ジメチルポリシロキサン:MVi60Vi 300g
(式中、M,D,Qは前記と同様のシロキサン単位であり、M´は、(CHSiO1/2、(CH(CH=CH)SiO1/2または(CH(OH)SiO1/2で表される1官能のシロキサン単位であり、ビニル基(Vi)および水酸基(OH)を有する。)
【0093】
[参考例3]
合成例1と同様の装置に、下記原料を仕込み、合成例1と同様に成分(a3)を添加して縮合反応を行ったところ、縮合反応物はゲル化した。このため、該メチルポリシロキサンレジン−ジメチルポリシロキサン縮合物は剥離調節剤として用いることができなかった。
(a1−1)M0.74 (OH量=0.74%) 300g
(a2−2)´ MOH80OH 128g
キシレン 444g
【0094】
合成例1〜7により得られた剥離調節剤(1〜7)のジメチルポリシロキサン溶液(1〜7)は、本発明の実施例に用いた。同様に、調製例1および調製例2により得られた剥離調節剤組成物(1)のジメチルポリシロキサン溶液、剥離調節剤組成物(2)のジメチルポリシロキサン溶液は、本発明の実施例に用いた。また、合成例8,9により得られた剥離調節剤(8,9)のジメチルポリシロキサン溶液(8,9)、参考例1,2で調製したメチルポリシロキサンレジンのジメチルポリシロキサン溶液(1,2)は本発明の比較例に用いた。















【0095】
【表1】


(*1) 縮合反応時にゲル化してしまうため、剥離調節剤を得られなかった。
【0096】
[実施例1]
(A1)剥離調節剤(1)のジメチルポリシロキサン溶液(1)10部、(B1)分子鎖両末端及び側鎖にビニル基(ビニル基含有量1.1重量%)を有する粘度200mPa・sの直鎖状のメチルビニルポリシロキサン87部、(C1)分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(粘度25mPa・s、ケイ素原子結合水素原子含有量1.6重量%)を2.7部、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.30部を均一に混合した。この混合物に、(D)塩化白金酸・1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(白金金属含有率0.60重量%)を白金金属量100ppmとなる量添加し混合することにより、剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物を得た。得られたオルガノポリシロキサン組成物をポリエチレンラミネート紙上に塗工し、剥離抵抗値及び残留接着率を測定した結果を表2に示した。
【0097】
[実施例2〜実施例7]
成分(A1)として、合成例2〜7により得られた、剥離調節剤(2)〜(7)のジメチルポリシロキサン溶液(2)〜(7)を使用する以外は、実施例1と同様にして組成物を調整し、ポリエチレンラミネート紙上に塗工し、剥離抵抗値及び残留接着率を測定した結果を表2に示した。
【0098】
[実施例8]
成分(A1)として、調製例1により得られた、剥離調節剤(1)および分枝状オレフィンからなる剥離調節剤組成物(1)のジメチルポリシロキサン溶液を使用する以外は、実施例1と同様にして組成物を調整し、ポリエチレンラミネート紙上に塗工し、剥離抵抗値及び残留接着率を測定した結果を表2に示した。
【0099】
[実施例9]
成分(A1)として、調製例2により得られた、剥離調節剤(6)および分枝状オレフィンからなる剥離調節剤組成物(2)のジメチルポリシロキサン溶液を使用する以外は、実施例1と同様にして組成物を調整し、ポリエチレンラミネート紙上に塗工し、剥離抵抗値及び残留接着率を測定した結果を表2に示した。
【0100】
[比較例1〜比較例3]
成分(A1)として、合成例8により得られた剥離調節剤(8)のジメチルポリシロキサン溶液(8)、参考例1,2で調製した各メチルポリシロキサンレジンのジメチルポリシロキサン溶液(1,2)を使用する以外は実施例1と同様にして組成物を調整し、ポリエチレンラミネート紙上に塗工し、剥離抵抗値及び残留接着率を測定した結果を表2に示した。
【0101】
[比較例4]
成分(A1)として、合成例9により得られた剥離調節剤(9)のジメチルポリシロキサン溶液(9)を使用する以外は実施例1と同様の組成物を得たが、印刷適正試験機での塗工において、目標とする塗工量に塗工することができなかった。







【0102】
【表2】

【0103】
表2に示す通り、実施例1〜7の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物は初期および70℃で3日間エージングした後の重剥離特性に優れるものである。また、粘度調節剤として分枝オレフィンをさらに配合した剥離調節剤組成物を用いた実施例8、9においても、実施例1〜7と同等の優れた重剥離特性を有し、表1に示す通り、組成物が低粘度となるため取り扱いが容易となるものである。
【0104】
一方、剥離調節剤である縮合物を合成する際の成分(a2)/成分(a1)の比が本発明の範囲外にある合成例8にかかる剥離調節剤(8)を用いた比較例1、縮合反応させていないポリシロキサンレジンを用いた比較例2および比較例3において、特に、初期重剥離特性が上記各実施例に劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の剥離調節剤および剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物は、シート状基材表面に、重剥離特性を有し、粘着性物質に対する剥離性に優れた硬化皮膜を形成するのに有用であり、本発明の剥離性硬化皮膜を有するシート状基材は、特に工程紙,粘着物質包装紙,粘着テープ,粘着ラベル,表面保護フィルム等に好適に使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1) RSiO1/2単位(式中、Rは各々独立に水酸基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基または炭素原子数1〜10の置換もしくは非置換の一価炭化水素基である。)とSiO4/2単位から本質的に成り、SiO4/2単位に対するRSiO1/2単位のモル比が0.6〜1.0であり、水酸基またはアルコキシ基の含有量が0.3〜2.0重量%の範囲にあるオルガノポリシロキサンレジン 100重量部と、
(a2) 一分子中に少なくとも1個の水酸基または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を有する平均重合度100〜1000の直鎖状または分岐鎖状のジオルガノポリシロキサン 20〜150重量部とを(a3)縮合反応触媒の存在下において縮合反応させることにより得られたオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物からなる剥離調節剤。
【請求項2】
上記オルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物の水酸基含有量が0.05〜0.80重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の剥離調節剤。
【請求項3】
上記成分(a1) 100重量部と、上記成分(a2) 30〜100重量部とを上記成分(a3)の存在下において縮合反応させることにより得られ、かつその水酸基含有量が0.10〜0.60重量%の範囲にあるオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物からなる請求項1または請求項2に記載の剥離調節剤。
【請求項4】
上記成分(a1) 100重量部と、上記成分(a2) 20〜150重量部とを上記成分(a3)の存在下において縮合反応させた後、さらに(a4)1種類以上のシリル化剤 0.1〜10.0重量部と反応させることにより得られたオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物からなる請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の剥離調節剤。
【請求項5】
上記成分(a2)が、下記構造式で示される分子鎖両末端が水酸基により封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンである、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の剥離調節剤。
【化1】

(式中、Rは各々独立に水酸基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基または炭素原子数1〜10の置換もしくは非置換の炭素−炭素二重結合を有しない一価炭化水素基であり、mは200〜800の範囲の数である。)
【請求項6】
上記成分(a4)がシラザン化合物であり、反応後に得られたオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物の水酸基含有量が0.10〜0.60重量%の範囲にあることを特徴とする請求項4に記載の剥離調節剤。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサンレジン−オルガノポリシロキサン縮合反応物からなる剥離調節剤 100重量部と、下記構造式(1)または(2)で示される1種類以上のオレフィン 0.1〜50重量部からなる剥離調節剤組成物。
【化2】

(式中、aは1〜27の範囲の数であり、d,fは独立に0〜20の範囲の数であり、b,eは独立に1〜12の範囲の数であり、gは3〜14の範囲の数である。)
【請求項8】
(A)請求項1〜6のいずれか1項に記載の剥離調節剤または請求項7に記載の剥離調節剤組成物 1〜20重量部
(B)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個以上有するオルガノポリシロキサン 95〜70重量部
(C)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン [成分(C)中のケイ素原子結合水素原子]と[成分(B)中のアルケニル基] のモル比が0.3〜5.0となる量
(D)ヒドロシリル化反応用白金系触媒: 触媒量
からなることを特徴とする剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項9】
成分(B)の25℃における粘度が50〜2000mPa・sであり、組成物が無溶剤型である請求項8に記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項10】
さらに(E)有機溶剤:10〜3000重量部からなる請求項8に記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項11】
請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる剥離性硬化皮膜を有するシート状基材。

【公開番号】特開2010−37557(P2010−37557A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163299(P2009−163299)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】