説明

副甲状腺ホルモン類似体およびその使用方法

本発明は、骨欠乏障害を有する患者を処置する新規方法に関する。一般的に、該方法は、有効な薬物動態プロファイル及びアデニル酸シクラーゼ活性の維持を生じさせるのに十分な1日用量にて、副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチド類似体を含む医薬的に許容可能な製剤を、必要とする患者に投与すると同時に望ましくない副作用を低減するステップを含む。本発明は、Ostabolin−Cの具体的な製剤にも関し、これには、吸入パウダー及びバイオアベイラビリティの向上を有する安定化製剤が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本出願は、骨欠乏障害を有する被験体を処置する方法及び組成物に関する。一般的に、該方法は、有効な薬物動態プロファイルを生じさせるのに十分な用量にて、副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチド又は類似体を含む医薬的に許容可能な製剤を、必要とする被験体に投与すると同時に望ましくない副作用を低減するステップを含む。加えて、その用量は、処置対象患者の体重、体表面積、体格指数(BMI)、除脂肪体重又は他の身体特徴に基づいて最適化されうる。この用量最適化手法は、PTHペプチド及び類似体並びに本明細書で述べるような他の治療剤に適用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
骨再形成又は代謝回転は、2つの拮抗作用:破骨細胞による古い骨の分解(吸収)及び骨芽細胞により新しい骨の形成からなる。骨量の減少は自然な加齢過程の一部として生じる。カルシウムが絶えず骨に加えられ、骨から取り除かれている。カルシウムが加えられる以上に速く取り除かれると、骨はより軽く、密度が低く、多孔質となる。これにより、骨はより脆弱となり、骨折のリスクが高くなる。
【0003】
既存の骨が新しい骨が作られる以上に速く分解されるため、加齢とともに骨はより薄くなる(骨減少症と称される)。これが生じると、骨は、ミネラル、重さ(量)及び構造を失い、より減弱且つ脆弱になる。更なる骨量減少により、骨減少症は骨粗鬆症に進展する。従って、骨が厚いほど、骨粗鬆症を発症するのに時間がかかる。骨粗鬆症は男性において生じうるが、65歳以上の女性において最も一般的である。
【0004】
骨粗鬆症は、荷重骨の特発性骨折及び不動化損傷の身体的・精神的悪化特徴をもたらすことが多い。特に、閉経後骨粗鬆症は骨代謝回転の促進を惹起するエストロゲンの消失によって生じ、古い骨の吸収と新しい骨の形成との不均衡増大を伴う。古い骨を破壊(骨の吸収)する細胞である破骨細胞が、新しい骨を構築(骨の形成)する細胞である骨芽細胞を上回るため、安定した状態の骨量ではなく、骨量減少が生じる。この骨形成による適切な補填を伴わない吸収による骨量減少の促進は、荷重骨の漸進的な薄化、多孔性増大及び減少を生じさせる。
【0005】
末期腎疾患は腎性骨ジストロフィー(ROD)として知られている骨疾患と必ず関連している。RODは、高循環濃度の副甲状腺ホルモン(PTH)及び過活性骨組織を特徴とする高回転型にて存在し得、嚢胞性線維性骨炎を伴うことが多い。無形成骨症としても知られている低回転型の疾患は、正常或いは低循環濃度のPTHを特徴とする。組織学的に、その骨表面は細胞活性がほとんど或いは全くない休眠状態にあり、骨軟化症が存在することもありうる。該疾患の発現率は、加齢、コルチコステロイド療法の存在、カルシウム模倣薬療法の存在、カルシウム含有リン吸着薬及び高用量のビタミンDステロールにより上昇する。しかし、現在、無形成骨症は、許容不可能な血清カルシウムに至ることなく処置することは困難である。従って、常に満たされていない効果的な治療法の必要性がある。
【0006】
骨粗鬆症の治療薬(これは、歴史的に食事カルシウムの増加、エストロゲン療法及びビタミンDの用量増加を含んできた)中、ヒト副甲状腺ホルモン(hPTH)処置は、骨を構築し、骨粗鬆症による骨量減少を補うために用いられる。副甲状腺ホルモンは副甲状腺によって産生され、血中カルシウム濃度の調節に関与している。それは高カルシウム血症ホルモンであり、血中カルシウム濃度を上昇させる。PTHはポリペプチドであり、非特許文献1に開示されている方法、好ましくは、非特許文献2の方法により、或いは非特許文献3により修正されているような方法を用いて、合成ポリペプチドが調製されうる。血清カルシウムが「正常」濃度以下に低下すると、副甲状腺はPTHを放出し、骨カルシウムの再吸収及び腸からのカルシウムの吸収の増大並びに腎臓のカルシウム再吸収が生じる。PTHのアンタゴニストはカルシトニンであり、これは循環カルシウムの濃度を低下させるように作用する。高濃度のPTHは骨からカルシウムを除去しうるが、間欠的な低用量は実際には骨成育を促進しうる。例えば、天然hPTH−(1−84)及びその断片hPTH−(1−34)(Eli Lilly and Co.による商標名FORTEO(登録商標)にて販売されているような)は、骨粗鬆症の処置に有用であることが示されている。しかし、天然hPTH−(1−84)及びhPTH−(1−34)断片は、骨形成を促進すると同時に骨吸収を活性化するという欠点を被る。その結果、hPTH−(1−34)は、骨梁(体軸骨格の骨を構成し、胸郭、背骨・頭蓋骨及び脊椎骨を含む)の骨折頻度を低下させるのに効果的であるが、皮質骨(ねじり荷重から保護するのに役立ち、例えば、股関節及び手首を含む)に対する骨折減少効果は著しく低い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Erickson及びMerrifield,The Proteins,Neurathら(編)、Academic Press社、ニューヨーク、1976,257頁
【非特許文献2】Hodgesら、Peptide Research,1,19(1988)
【非特許文献3】Atherton,E.及びSheppard,R.C.,Solid Phase Peptide Synthesis,IRL Press、Oxford、1989
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
骨粗鬆症及び他の骨変性/欠乏障害を有する患者において骨梁及び皮質骨における骨を回復させ、骨ミネラル密度を上昇させるため、好適なPTH類似体を用いる治療手法の必要性が存続している。更に、骨粗鬆症及び他の骨変性障害を有する患者において骨吸収を刺激せず、また、血清カルシウム濃度を有意に上昇させることなく、骨を回復させ、骨ミネラル密度及び形成を高めるため、好適なPTH類似体を用いる治療手法の必要性が存続している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、種々の骨変性又は骨欠乏障害に罹患している被験体を処置することを目的とする方法に用いる好適なPTHペプチド若しくはその類似体を含む医薬組成物及び製剤を提供する。本明細書で述べるPTHペプチド又は類似体は、骨梁及び皮質骨における骨形成を誘導し、これにより、骨ミネラル密度を上昇させ、骨を回復させる。予想外に、本明細書で述べるPTHペプチド又は類似体は、骨形成を誘導すると同時に既知のPTH類似体より少ない骨吸収を生じさせ、また、高カルシウム血症のより低い発現率及び重症度を示す。
【0010】
本明細書で開示されるPTHペプチド又は類似体は、特定の用量範囲内にて投与されると、動物における皮質骨に対する骨粗鬆症の作用を反転させるのに効果的である。古い皮質骨の吸収と新しい皮質骨の形成との不均衡を補正し、これらのPTHペプチド又は類似体は骨に対する骨粗鬆症の作用を反転させることが示されている。従って、本明細書で述べる方法は、皮質骨多孔性を有意に高めることなく、動物において皮質骨成長を促進する。
【0011】
これらのPTHペプチド又は類似体は骨損傷からの回復も促進する。従って、本発明のPTHペプチド又は類似体の特定の用量の投与は、骨折の処置のような様々な状況において骨粗鬆症性皮質骨を回復させ、骨治癒を促進する。
【0012】
一態様では、本発明は、骨粗鬆症を処置し、骨折を処置し、骨梁及び皮質骨における骨形成を誘導し、腎性骨ジストロフィー(ROD)及び関連障害を処置或いは予防する方法を提供し、該方法は、副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチド又は類似体を含む医薬的に許容可能な製剤を、必要とする被験体に投与するステップを含み、前記PTHペプチド類似体はホスホリパーゼC活性の低下を有するとともにアデニル酸シクラーゼ活性を維持し、その用量が有効な薬物動態プロファイル及び有効な生物活性を生じさせる。
【0013】
別の実施形態は、骨粗鬆症を処置し、骨折を処置或いは予防し、骨梁及び皮質骨における骨形成を誘導し、腎性骨ジストロフィー(ROD)及び関連障害を処置或いは予防するための、或いはPTHの他の任意の治療的使用のための本発明のPTHペプチド又は類似体の使用を提供し、この場合、カルシウムのモニタリングは必要とされない。
【0014】
別の実施形態は、骨粗鬆症を処置し、骨折を処置或いは予防し、骨梁及び皮質骨における骨形成を誘導し、腎性骨ジストロフィー(ROD)及び関連障害を処置或いは予防するための、或いはPTHの他の任意の治療的使用のための本発明のPTHペプチドの使用を提供し、この場合、骨肉腫の形成に関する警告は必要とされず、本発明のPTHペプチドの投与はForteoの投与と比べて低い骨肉腫の発現率となりうる。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、2〜100μgの1日用量範囲での単位用量剤形の治療有効量の副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチド又は類似体の水性製剤並びに医薬的に許容可能な賦形剤、希釈剤若しくは担体又はそれらの組合せを含む皮下投与用の医薬製剤を提供し、前記PTHペプチド又は類似体は、ホスホリパーゼ−C活性の低下を有し、アデニル酸シクラーゼ活性を維持し、且つ有効な薬物動態プロファイル及び有効な生物活性を有する。該医薬製剤内の他の治療有効量は、プロピレングリコール及び/又はエタノールで安定化された製剤の皮下送達のための0.5〜50μgの1日用量範囲或いは吸入送達のための100〜3,000μgの1日用量範囲並びに1日用量の3〜7倍での1週用量を含む。他の実施形態は、有効な薬物動態プロファイル及び有効な生物活性を生じさせる、任意の投与経路による任意の用量を含む。
【0016】
本発明の別の実施形態は、1つ又はそれ以上の容器内にデバイスに収容された治療有効量の上述の医薬組成物並びに使用説明書を含むラベル又は添付文書を含む、骨欠乏障害を処置するためのキットである。
【0017】
PTH類似体は、N末端における最初の34個のアミノ酸より少ないアミノ酸を任意に含む。本発明のPTHペプチド類似体は、完全長PTHペプチド又は34個のアミノ酸残基若しくはそれ以上の長さの他のPTHペプチド類似体と比べると、ホスホリパーゼ−Cの完全な活性化以下の活性化、より少ない骨吸収及び高カルシウム血症のより低い発現率若しくはより低い重症度を惹起しながら、体内の様々な部位において骨ミネラル密度(BMD)の上昇を維持する。
【0018】
本発明のPTHペプチド類似体の具体的な実施形態は、以下のもの:PTH−(1−31)NH,Ostabolin;PTH−(1−3O)NH;PTH−(1−29)NH;PTH−(1−28)NH;Leu27PTH−(1−31)NH;Leu27PTH−(1−30)NH;Leu27PTH−(1−29)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH Ostabolin−C(商標);Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−34)NH;Leu27シクロ(Lys26−Asp30)PTH−(1−34)NH;シクロ(Lys27−Asp30)PTH−(1−34)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;Ala27又はNle27又はTyr27又はIle27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−32)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)OH;Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH;Cys22Cys26Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;Cys22Cys26Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH;シクロ(27−30)PTH−(1−31)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH;シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−29)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−28)NH;Glu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−28)NH;並びにGlu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−31)NHを含む。
【0019】
本発明の他の実施形態は、骨欠乏障害を処置するとともに副甲状腺ホルモンの投与と関連する副作用を低減するための組成物及び方法を含み、該方法は、有効な薬物動態プロファイル及びアデニル酸シクラーゼ活性の維持を生じさせるのに十分な1日用量にて、副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチド類似体を含む医薬的に許容可能な製剤を、骨欠乏障害を有する被験体に投与すると同時に、望ましくない副作用を低減するステップを含む。任意に、該PTHペプチド類似体はホスホリパーゼ−C活性の低下を生じさせうる。
【0020】
別の実施形態では、該有効な薬物動態プロファイルは、種々様々な製剤を用いて種々の投与経路により成すことができ、a)2分〜60分の前記PTHペプチド類似体の半減期;b)30分〜4時間の前記PTHペプチド類似体の暴露時間;c)2分〜30分の前記PTHペプチド類似体のTmax;及びd)10〜400pg/mlの前記PTHペプチド類似体のCmaxからなる群より選択される薬物動態パラメータを含む。更なる実施形態では、該半減期は5分〜30分であり、該暴露時間は1〜2時間であり、該Tmaxは15〜30分であり、該Cmaxは50〜200pg/mlである。
【0021】
この薬物動態プロファイルは、経口、局所、経皮(transdermal)、経鼻、肺内、経皮(transpercutaneous)(機械的又はエネルギー手段により皮膚が破損している場合)、経直腸、口腔内、経膣、経移植リザーバー又は非経口を含む、当業者には周知の任意の投与経路により成すことができる。非経口は、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内及び頭蓋内注射若しくは注入術を含む。より好ましくは、投与経路は、皮下、経皮(transcutaneous)、鼻腔内、経皮(transdermal)、経口又は吸入投与である。
【0022】
更なる実施形態では、低減される望ましくない副作用は、骨吸収、冷感、疲労、倦怠感、軟便、熱感、下腹部痛、注射部位反応、関節痛、注射部位出血、咽喉痛、筋痙攣及び腹痛からなる群より選択される。更に具体的には、低減される望ましくない副作用は、高カルシウム血症、平均血清カルシウム濃度の上昇、頭痛、悪心、背部痛、眩暈及び四肢痛からなる群より選択される。
【0023】
本発明のPTHペプチドは様々な用量にて投与することもできる。有効用量は投与されるPTHペプチド若しくは類似体の製剤型及び投与経路により異なりうる。投与量が、本明細書で述べる好ましい用量範囲から生じうるのと同様の薬物動態学的或いは生物学的プロファイルを生じさせうるように、当業者は投与経路又は製剤を変更することにより、投与量を調節することができる。例示的な投与量は、水性製剤の皮下送達のための2〜100μgの1日用量、プロピレングリコール及び/又はエタノールで安定化された製剤の皮下送達のための0.5〜50μgの1日用量、吸入送達のための100〜3,000μgの1日用量並びに1日用量の3〜7倍での1週用量を含む。他の好適な投与量は、上述の用量範囲により生じるものと同様のバイオアベイラビリティ又は薬物動態プロファイルを生じさせる、任意の投与経路による任意の投与量を含む。
【0024】
水性製剤の皮下送達のための好ましい用量は、5〜9μg,10〜19μg,20〜30μg,31〜40μg,42〜45μg,46〜50μg、更に具体的には、5μg,7.5μg,10μg,15μg,20μg,25μg,30μg,35μg,40μg,45μg又は50μgでの用量を含む。水性製剤の皮下送達のための最も好ましい用量は、7.5,15,30又は45μgを含む。用量は被験体のサイズに基づいて算出することもできる。μgでの用量は、μgをμg/kg又はμg/m又はμg/mlに変換することにより、患者の特徴、例えば、身長、体重、体表面積、BMI、除脂肪体重などに対して正規化されうる。
【0025】
本発明のPTHペプチドは、0.20〜0.90μg/kg、より好ましくは、0.30〜0.70μg/kg、更に好ましくは、0.46〜0.69μg/kgの1日用量にて投与することもできる。
【0026】
本発明の更なる実施形態は逐次療法を含む。そのような処置レジメンの一実施形態は、高用量の好適なPTHペプチド又は類似体で処置を開始し、次に、1〜12カ月でもよいが、好ましくは、3〜9カ月、最も好ましくは、4〜8カ月の期間の後、低レベルにて骨形成を維持するが、骨吸収の刺激を許容しない低用量に切り替える。逐次療法は低用量で処置を開始し、次に、高用量に切り替えてもよい。そのような逐次療法は本明細書で開示されるすべての用量にて施行することができる。
【0027】
1つの好適な投薬レジメンは、35μg〜100μgの第一の1日用量での皮下投与によるPTHペプチド又は類似体の水性製剤を投与するステップと、次に、第一期の終了後、2μg〜35μgのPTHペプチド類似体の第二の用量を第二期間投与するステップとを含む。別の好適な投薬レジメンは、2μg〜35μgの第一の1日用量での皮下投与によるPTHペプチド又は類似体の水性製剤を投与するステップと、次に、第一期の終了後、35μg〜100μgのPTHペプチド類似体の第二の用量を第二期間投与するステップとを含む。加えて、本発明のPTHペプチドは、100μg〜2,000μgの第一及び第二の1日用量或いは該1日用量の3〜7倍多い第一及び第二の1週用量にて吸入により投与されうる。同様に、逐次療法のための用量は、吸入投与又はプロピレングリコール若しくはエタノールで安定化された製剤又は当該技術分野において公知の任意の経路により投与される他の任意の製剤に対して算出されうる。
【0028】
本発明の別の実施形態は、患者の体重、身長、体表面積、BMI若しくは他の患者の特徴及び/又は症状の発現に基づく用量の患者への投与である。この体重カットオフ方法は、治療有効用量を決定するとともに、患者の体重、体表面積又はBMIに基づいて患者に対する副作用の低発症を維持する方法を提供する。被験体の体重又は重量に基づいて異なる用量を被験体に付与することにより、様々な被験体への薬剤暴露量がより均一となる。患者の体重、体表面積又はBMIに基づく用量の選択は、全体的な有効性及びその用量に応答する患者の割合を向上させるとともに、患者に対する高暴露をもたらす用量の副作用を低減することにより、本発明のペプチドのリスク対有益性プロファイルを向上させる。
【0029】
骨形成を刺激する卓越した作用を有する骨粗鬆症治療剤はすべて、用量が患者の体重、身長、体表面積、BMI又は患者の他の体型特徴に基づく態様にて投与されうる。本発明の範囲内にあるそのような治療剤の例には、抗スクレロスチンMab、Wntシグナル伝達経路の負の調節因子の阻害剤及びアクチビン受容体作動薬が含まれる。加えて、被験体の体重、体表面積又はBMIに基づく用量は、その骨形成作用がPTHのその受容体に対する作用により媒介されるすべての治療剤に対して有効であり、これには、PTH、完全長(1−84)及びその断片、PTH類似体、PTHrP並びにPTHrP類似体が含まれる。患者の体重、体表面積又はBMIに基づく用量により有効である具体的なPTHペプチドは、限定されないが、完全長PTH 1−84、PTH 1−34,PTH−(1−31)NH,Ostabolin;PTH−(1−3O)NH;PTH−(1−29)NH;PTH−(1−28)NH;Leu27PTH−(1−31)NH;Leu27PTH−(1−30)NH;Leu27PTH−(1−29)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH Ostabolin−C(商標);Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−34)NH;Leu27シクロ(Lys26−Asp30)PTH−(1−34)NH;シクロ(Lys27−Asp30)PTH−(1−34)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;Ala27又はNle27又はTyr27又はIle27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−32)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)OH;Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH;Cys22Cys26Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;Cys22Cys26Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH;シクロ(27−30)PTH−(1−31)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH;シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−29)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−28)NH;Glu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−28)NH;並びにGlu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−31)NHを含む。
【0030】
加えて、患者の体重、体表面積又はBMIに基づいて投与されうる治療剤の好適例には、狭い治療域を有する任意の薬剤、より具体的には、ホルモン療法が含まれる。具体的な治療剤は、内在性PTH産生を刺激するカルシウム受容体拮抗薬、例えば、PTH受容体のアゴニストとして作用するものも含み、これには、PTH、完全長及びその断片、PTH類似体、PTHrP及びその類似体が含まれる。患者の体重、体表面積又はBMIに基づく用量の投与は様々な適応症において用いることができ、これには、骨粗鬆症、骨折修復、腎性骨疾患、コルチコステロイド誘発性骨粗鬆症、移植並びに骨梁及び皮質骨における骨形成の誘導が含まれる。
【0031】
本発明は、Ostabolin−Cの具体的な製剤にも関し、これには、吸入パウダー及びバイオアベイラビリティの向上を有する安定化製剤が含まれる。そのような安定化製剤の1つは、Ostabolin−C、40%エタノール及び60%水(pH6.0〜8.0)を含み、該製剤は5℃で少なくとも2年間安定している。別の製剤は、Ostabolin−C、40%プロピレングリコール及び60%水(pH6.0〜8.0)を含み、該製剤は5℃で少なくとも2年間安定している。これらの製剤は単独で、或いは組み合わせて、メチオニン、リポ酸、スクロース及びNaClも含みうる。
【0032】
図1〜17では、別記しない場合、Ostabolin−C投与後の測定は15週コースの表示用量の皮下連日投与後に行われ、ベースラインと比較して変化が測定された。本明細書で用いるように、ベースラインは処置を受ける前の患者の個々の測定値である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含む医薬製剤を受ける、中等度の骨粗鬆症を有する患者における腰椎骨ミネラル密度(BMD)のパーセント変化を示す棒グラフ図である。
【図2】hPTH−(1−34)テリパラチド、Forteo(登録商標)を含む医薬製剤を受ける、中等度の骨粗鬆症を有する患者における腰椎骨ミネラル密度(BMD)のパーセント変化を示すグラフ図である。
【図3】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含む医薬製剤を受ける、中等度の骨粗鬆症を有する患者における全股関節ミネラル密度(BMD)のパーセント変化を示す棒グラフ図である。
【図4】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含む医薬製剤を受ける、中等度の骨粗鬆症を有する患者における大腿頸部骨ミネラル密度(BMD)のパーセント変化を示す棒グラフ図である。
【図5】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含む医薬製剤を受ける、中等度の骨粗鬆症を有する患者における転子骨ミネラル密度(BMD)のパーセント変化を示す棒グラフ図である。
【図6】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含む医薬製剤を受ける、中等度の骨粗鬆症を有する患者における橈骨遠位端骨ミネラル密度(BMD)のパーセント変化を示す棒グラフ図である。
【図7】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含む医薬製剤を受ける、中等度の骨粗鬆症を有する患者における橈骨骨幹中部骨ミネラル密度(BMD)のパーセント変化を示す棒グラフ図である。
【図8】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含む医薬製剤を受ける、中等度の骨粗鬆症を有する患者における、骨形成マーカーであるI型プロコラーゲンアミノ末端プロペプチド(P1NP)のパーセント変化を示す棒グラフ図である。
【図9】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含む医薬製剤を受ける、中等度の骨粗鬆症を有する患者における、骨形成マーカーであるオステオカルシンのパーセント変化を示す棒グラフ図である。
【図10】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含む医薬製剤を受ける、中等度の骨粗鬆症を有する患者における、骨形成マーカーである骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)のパーセント変化を示す棒グラフ図である。
【図11】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含む医薬製剤を受ける、中等度の骨粗鬆症を有する患者における、骨吸収マーカーであるN−テロペプチド(NTx)のパーセント変化を示す棒グラフ図である。
【図12】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含む医薬製剤を受けている、中等度の骨粗鬆症を有する患者における、骨吸収マーカーであるC末端テロペプチド(CTx)のパーセント変化を示す棒グラフ図である。
【図13】rhPTH−(1−34)、テリパラチド、Forteo(登録商標)を含む医薬製剤を受ける、中等度の骨粗鬆症を有する患者における骨形成及び骨吸収マーカーのパーセント変化を示すグラフ図である。
【図14】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含む医薬製剤を受ける、中等度の骨粗鬆症を有する患者における異常な血清カルシウム濃度のパーセントを示す棒グラフ図である。
【図15】Dealら(2005)J.Bone Min.Res.20,1905−1991頁に由来するForteoデータを示すスライド図である。
【図16】Ostabolin−C及びForteoの有効性を示すスライド図である。
【図17】Ostabolin−C及びForteoの有効性を示すスライド図である。
【図18】異なる用量でのOstabolin−Cの第I相薬物動態を示すグラフ図である。
【図19】異なる用量での雌ラットにおけるOstabolinの薬物動態を示すグラフ図である。
【図20】6週間の皮下試験でのサルにおけるOstabolinの薬物動態を示すグラフ図である。
【図21】腰椎、橈骨骨幹中部、高カルシウム血症及び同化ウィンドウ(anabolic window)での効果を含む、30ugでのOstabolin−Cの投与データを示すグラフ図である。
【図22】腰椎、橈骨骨幹中部、高カルシウム血症及び同化ウィンドウ(anabolic window)での効果を含む、45ugでのOstabolin−Cの投与データを示すグラフ図である。
【図23】Ostabolin−C暴露増大による、4カ月時点での腰椎BMDのベースラインからの変化(%)のデータを示すグラフ図である。
【図24】Ostabolin−Cの全範囲の暴露を評価する線形回帰分析、並びに、プラセボと比較した、Ostabolin−C暴露増大への暴露後4カ月及び12カ月時点での腰椎BMDのベースラインからの変化(%)を示すグラフ図である。
【図25】腰椎BMDに対する45ug用量のOstabolin−Cの効果、4カ月及び12カ月時点でのベースラインからの変化(s a)(%)を示すグラフ図である。
【図26】Ostabolin−Cの全範囲の暴露を評価する線形回帰分析、並びに、プラセボと比較した、Ostabolin−C暴露増大への暴露後4カ月及び12カ月時点でのP1NP及びCTxのベースラインからの変化(%)を示すグラフ図である。
【図27】Ostabolin−Cの全範囲の暴露を評価する線形回帰分析、並びに、プラセボと比較した、Ostabolin−C暴露増大への暴露後4カ月及び12カ月時点での全股関節BMDのベースラインからの変化(%)を示すグラフ図である。
【図28】Ostabolin−Cの全範囲の暴露を評価する線形回帰分析、並びに、プラセボと比較した、Ostabolin−C暴露増大への暴露後4カ月及び12カ月時点での血清カルシウム濃度のベースラインからの変化(%)を示すグラフ図である。
【図29】Ostabolin−Cの全範囲の暴露を評価する線形回帰分析、並びに、プラセボと比較した、Ostabolin−C暴露増大への暴露後4カ月時点での大腿頸部BMDのベースラインからの変化(%)を示すグラフ図である。
【図30】Ostabolin−Cの全範囲の暴露を評価する線形回帰分析、並びに、プラセボと比較した、Ostabolin−C暴露増大への暴露後12カ月時点での橈骨骨幹中部BMDのベースラインからの変化(%)を示すグラフ図である。
【図31】種々の用量でのOstabolin−Cの投与後の高カルシウム血症の発症(少なくとも1回のエピソード)を示すグラフ図である。
【図32】種々の用量でのOstabolin−Cの投与後の高カルシウム血症の発症(2回以上のエピソードと比較した1回のみのエピソード)を示すグラフ図である。
【図33】7.5,20,30及び45ug用量にて投与されたOstabolin−Cの暴露範囲を示すグラフ図である。
【図34】暴露に対する用量最適化の影響を重ね合わせた、7.5,20,30及び45ug用量にて投与されたOstabolin−Cの暴露範囲を示すグラフ図である。
【図35】30ugにて女性及び男性に投与されたOstabolin−Cの暴露範囲を示すグラフ図である。女性は実線で表され、男性は破線で表されている。男性の平均体重は82kgであり、女性の平均体重は64kgであった。
【図36】体重カットオフ68kgを用いた、男性及び女性に投与されたOstabolin−Cの暴露範囲を示すグラフ図である。女性は実線で表され、男性は破線で表されている。このグラフは、この体重カットオフにより、男性と女性がほぼ同じ暴露を受けることを示す。
【図37】体重カットオフを用いた、4カ月時点での高カルシウム血症の発現率を示すグラフ図である。該グラフは、体重カットオフ約68kgにより、認められる高カルシウム血症(%)が15%未満であることを示す。
【図38】体重カットオフを用いた、12カ月時点での高カルシウム血症の発現率を示すグラフ図である。
【図39】体重カットオフを用いた、4カ月時点での1%超の高カルシウム血症の発現率を示すグラフ図である。
【図40】体重カットオフを用いた、12カ月時点での1%超の高カルシウム血症の発現率を示すグラフ図である。
【図41】骨形成に対する体重カットオフ変化の結果を示すグラフ図である。
【図42】骨吸収に対する体重カットオフ変化の結果を示すグラフ図である。
【図43】骨形成/吸収比に対する体重カットオフ変化の結果を示すグラフ図である。
【図44】体重カットオフを適用した、4カ月時点での腰椎BMDの発生率を示すグラフ図である。
【図45】体重カットオフを適用した、12カ月時点での腰椎BMDの発生率を示すグラフ図である。
【図46】体重カットオフを適用した、4カ月時点での腰椎BMDが3%超である応答者の発生率を示すグラフ図である。
【図47】高カルシウム血症及び腰椎BMD応答者比を比較することによる、体重カットオフの解離結果を示すグラフ図である。
【図48】体重カットオフ変化の部位特異的作用を比較することによる、BMD応答者の解離を示すグラフ図である。
【図49】CTx及び高カルシウム血症に対する体重カットオフの作用を比較することによる、体重カットオフの比較結果を示すグラフ図である。
【図50】CTx及び血清カルシウムに対する体重カットオフの作用を比較することによる、体重カットオフの比較結果を示すグラフ図である。
【図51】血清カルシウム及び腰椎BMDに対する体重カットオフの作用を比較することによる、体重カットオフの比較結果を示すグラフ図である。
【図52】体重カットオフを適用した、4カ月時点での頭痛及び悪心の発現率を示すグラフ図である。
【図53】体重カットオフを適用した、4カ月時点での全股関節BMDの発現率を示すグラフ図である。
【図54】体重カットオフを適用した、12カ月時点での全股関節BMDの発生率を示すグラフ図である。
【図55】Ostabolin−C吸入投与後第1日目においてOCIPにより達成された生物学的AUC(0−4)レベルを示すグラフ図である。
【図56】Ostabolin−C吸入投与後第1日目においてOCIPにより達成された生物学的Cmaxレベルを示すグラフ図である。
【図57】Ostabolin−C吸入投与後第1日目においてOCIPにより達成された生物学的Tmaxレベルを示すグラフ図である。
【図58】Ostabolin−C吸入投与後第1及び第7日目においてOCIPにより達成された生物学的Cmaxレベルを示すグラフ図である。
【図59】Ostabolin−C吸入投与後第1及び第7日目においてOCIPにより達成された生物学的AUC(0−4)レベルを示すグラフ図である。
【図60】pg/mlでのOstabolin−Cの第1日目の平均血中濃度を示すグラフ図である。
【図61】Ostabolin−C吸入投与後の尿中cAMP濃度を示すグラフ図である。
【図62】Ostabolin−C吸入投与後の尿中cAMP濃度を示すグラフ図である。
【図63】Ostabolin−C吸入投与後の環状cAMP濃度の上昇とAUC(0−2)レベルの増大との関係を示すグラフ図である。
【図64】Ostabolin−C吸入投与後の環状AMP濃度の上昇とCmaxレベルの増大との関係を示すグラフ図である。
【図65】Ostabolin−C吸入投与後のP1NPの平均変化(%)を示すグラフ図である。
【図66】Ostabolin−C吸入投与後のオステオカルシンの平均変化(%)を示すグラフ図である。
【図67】Ostabolin−C吸入投与後のP1NPレベルの増大とAUC(0−2)レベルの増大との関係を示すグラフ図である。
【図68】Ostabolin−C吸入投与後のCTxの平均変化(%)を示すグラフ図である。
【図69】Ostabolin−C吸入投与後の平均心拍数を示すグラフ図である。
【図70】Ostabolin−C吸入投与後の平均心拍数を示すグラフ図である。
【図71】皮下投与後、種々のOstabolin−C製剤により達成された生物学的AUC(0−tz)レベルを示すグラフ図である。
【図72】皮下投与後、種々のOstabolin−C製剤により達成された生物学的Cmaxレベルを示すグラフ図である。
【図73】筋肉内及び静脈内投与後、種々のOstabolin−C製剤により達成された生物学的AUC(0−tz)レベルを示すグラフ図である。
【図74】筋肉内及び静脈内投与後、種々のOstabolin−C製剤により達成された生物学的Cmaxレベルを示すグラフ図である。
【図75】静脈内投与後、雌ラットにおける種々のOstabolin−C製剤の血漿濃度を示すグラフ図である。
【図76】皮下投与後、雌ラットにおける種々のOstabolin−C製剤の血漿濃度を示すグラフ図である。
【図77】筋肉内投与後、雌ラットにおける種々のOstabolin−C製剤の血漿濃度を示すグラフ図である。
【図78】Forteoと比べたOstabolin−Cに関する用量カットオフの効果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
本発明は、種々の骨変性又は骨欠乏障害に罹患している患者を処置することを目的とする方法に用いる好適なPTHペプチド類似体を含む医薬組成物及び製剤を提供する。本明細書で述べるPTHペプチド類似体化合物は、骨梁及び皮質骨における骨形成を誘導し、これにより、骨ミネラル密度を上昇させ、骨を回復させる。予想外に、本明細書で述べるPTHペプチド類似体は、骨形成を誘導するとともに既知のPTH類似体より少ない骨吸収を生じさせ、また、高カルシウム血症のより低い発現率及び重症度を示す。加えて、本発明のPTHペプチドはより短時間のPKプロファイルを提供し、これは有効性を維持するとともに副作用を低減する。
【0035】
本発明は、従来技術のPTHsと関連する副作用を低減する方法として用量最適化も提供する。本発明のペプチドは、特定の患者の体重、身長、サイズ、体表面積若しくはBMI及び/又は症状の発現に基づき、様々な用量にて患者に投与されうる。この体重、体表面積又はBMIカットオフ方法は、治療有効用量を決定するとともに、患者の体重、体表面積又はBMIに基づいて患者に対する副作用の低発症を維持する方法を提供する。特定の患者に高暴露となる用量は、高カルシウム血症を含む副作用の可能性を高める。加えて、特定の患者に対する用量が、より高用量の治療剤に対して忍容性を示すことができたであろう、特定の体重、体表面積又はBMIの患者に対する状況において低すぎたため、特定の患者において有効性の不足が認められうる。
【0036】
PTH受容体アゴニストへの一過性暴露は骨形成応答を生じさせ、一方、一部のPTH受容体アゴニストへの連続的暴露は強力な骨吸収作用を生じさせる。従来の皮下注射を特徴とするようなPTH受容体アゴニストへの一過性暴露でさえ、ある程度の骨吸収の刺激が生じ、これは、高カルシウム血症及び皮質多孔性の増加を含む有害な臨床作用と関連する。PTH受容体アゴニストへの暴露期間を短縮する薬物送達の改変は、用量間隔及び用量の投与経路にかかわらず、所与の用量に対する骨吸収の刺激レベルを低下させるとともに、骨形成レベルを維持或いは高めることにより、PTH受容体アゴニストの治療域を向上させる。
【0037】
本発明は、従来のPTHsより短時間のPKプロファイルを有する、Ostabolin−C及び本明細書で開示される関連類似体を含むPTH類似体に関する。そのようなPTHsは、所与の用量当量に対する骨吸収の刺激レベルを低下させるとともに、骨形成レベルを維持或いは高めることにより、治療域の拡大を生じさせる。
【0038】
本発明は、より短時間のPKプロファイルのため、PTH類似体の投与と関連する望ましくない副作用の低減にも関する。低減されうる望ましくない副作用は、骨吸収、冷感、疲労、軟便、熱感、下腹部痛、注射部位反応、関節痛、注射部位出血、咽喉痛、筋痙攣及び腹痛を含む。更に具体的には、低減されうる望ましくない副作用は、高カルシウム血症、平均血清カルシウム濃度の上昇、頭痛、悪心、背部痛、眩暈及び四肢痛を含む。
【0039】
本発明は、副甲状腺ホルモンを投与することにより、患者における骨の靱性及び/又は剛性を高め、並びに/或いは骨折の発現率を低下させる方法に関する。該方法は、潜在性外傷部位又は実際の外傷部位において靱性及び/又は剛性を高めるために用いられうる。一般的に、外傷は、骨折、手術による外傷、関節置換、整形外科的処置などを含む。一般的に、骨の靱性及び/又は剛性の向上は、皮質骨のミネラル濃度の上昇、骨強度の向上、荷重に対する抵抗性の増大などを含む。一般的に、骨折発現率の低下は、未処置対照集団と比べた患者の骨折の可能性又は実際の骨折発現率の低下を含む。
【0040】
本発明は、本明細書で述べる副甲状腺ホルモンを投与することにより、骨梁及び皮質骨を含む骨の靱性及び/又は剛性を高め、並びに/或いは骨折の発現率及び/又は重症度を低下させる方法に関する。より詳細には、本発明は、潜在性或いは実際の外傷部位において骨の靱性又は剛性を高める方法に関する。骨の靱性及び/又は剛性の向上は当業者には周知の多くの方法にて明示され得、例えば、骨ミネラル密度の上昇、骨ミネラル含量の増加、損傷までの労作(work to failure)の増加などの方法である。一実施形態では、本発明の方法は、脊椎及び/又は非脊椎骨折の発現率若しくは重症度を低下させる。本発明の方法は、そのような骨折のリスクを低減し、或いはそのような骨折を処置するために用いられうる。特に、本発明の方法は、脊椎及び/又は非脊椎骨折の発現率を低下させ、脊椎骨折の重症度を低下させ、多発性脊椎骨折の発現率を低下させ、骨質を向上させたりすることができる。
【0041】
本発明者らは、ホスホリパーゼC活性の低下を有するとともにアデニル酸シクラーゼ活性を維持するPTHペプチド類似体が、血清カルシウム濃度を有意に上昇させることなく、約2〜約100μg/日の用量にて骨梁及び皮質骨における骨形成を誘導し、且つ従来のPTH類似体より少ない骨吸収を生じさせるのに驚くほど有用であることを見出した。一般的に、本発明により提供される方法は、骨形成を誘導し、34アミノ酸残基長又はそれ以上の長さのPTH類似体の投与と比べ、より少ない骨吸収及びより低い高カルシウム血症の発現率を生じさせるため、約2〜約100μg/日の量でのPTH化合物の用量又は該1日用量の3〜7倍多い1週用量を、必要とする動物に投与することにより実施される。加えて、本発明のPTHペプチドは、100μg〜2,000μgの1日用量にて吸入により投与されうる。
本発明のPTHペプチド類似体は単独で、或いは他の骨強化剤と組み合わせて、骨欠乏に関連する疾患、症状又は病状に罹患しているヒト及び動物を含む任意の哺乳動物を処置するために用いられうる。本発明の一実施形態では、骨形成の亢進を必要とする患者は男性又は女性のようなヒト患者である。好ましい実施形態では、該患者は閉経後女性である。
【0042】
(定義)
以下の定義は閲覧者に役立つように提供される。別記しない限り、本明細書で用いられる技術用語、表記法並びに他の科学又は医学用語若しくは用語体系はすべて、化学及び医療技術分野における当業者に一般的に理解される意味を有するものとする。場合により、一般的に理解される意味を有する用語は、明瞭性及び/又は即時の参照のために本明細書で定義され、本明細書におけるそのような定義の包含は、当該技術分野において一般的に理解されるような用語の定義に関する実質的な相違を表すと必ずしも解釈されるべきではない。
【0043】
本明細書で用いられるように、本発明の「PTHペプチド類似体」は、限定的ではないが、好ましくは、非天然であり、組換え又はペプチド合成により得られうる。本発明のPTH類似体は、卵巣摘出(ovarectomized)骨粗鬆症ラットモデルにおいて見出されたようなヒトPTH活性を有する、ヒト、ラット、ブタ又はウシPTHの完全長PTH(1−84)、1−31及び1−34断片並びに他の断片又は断片の変異体を含む(Kimmelら、Endocrinology,1993,32(4):1577)。ヒトPTH活性はPTHの骨梁及び/又は皮質骨の成長を増大させる能力を含む。本発明のPTH類似体は、PTH受容体を含み、或いは発現させる培養細胞、例えば、骨芽細胞又は破骨細胞に投与されると、AC活性を高める。本発明のPTH類似体は、以下に定義されるようないくつかの更なる機能活性を有する。
【0044】
本明細書で用いられるように、「ホスホリパーゼ−C活性の低下」を有するPTHペプチド類似体とは、完全長PTHペプチド又は少なくとも34アミノ酸残基長である他のPTHペプチド類似体と比べ、完全以下のホスホリパーゼ−Cの活性を惹起するため、何らかの態様にて切断或いは修飾されたPTHペプチド類似体をいう。
【0045】
本明細書で用いられるように、「骨吸収の低下」を生じさせるPTHペプチド類似体とは、完全長PTHペプチド又は少なくとも34アミノ酸残基長である他のPTHペプチド類似体と比べ、より少ない骨吸収を惹起するため、何らかの態様にて切断或いは修飾されたPTHペプチド類似体をいう。
【0046】
本明細書で用いられるように、「高カルシウム血症レベルの低下」を生じさせるPTHペプチド類似体とは、完全長PTHペプチド又は少なくとも34アミノ酸残基長である他のPTHペプチド類似体と比べ、より低い高カルシウム血症の発現率又はより低い高カルシウム血症の重症度を惹起するため、何らかの態様にて切断或いは修飾されたPTHペプチド類似体をいう。
【0047】
本明細書で用いられるように、病状又は患者を「処置する」或いは病状又は患者「の処置」とは、臨床結果を含む有益な、或いは所望の結果を得るために措置を講じることをいう。本発明を目的として、有益な、或いは所望の臨床結果は、限定されないが、骨欠乏に関連する1つ以上の疾患、症状若しくは病状の緩和又は改善を含む。一般的に、そのような骨欠乏の疾患、症状又は病状は、骨ミネラル密度(“BMD”)の上昇により測定されるような骨形成を誘導することによって処置される。例えば、骨粗鬆症の症状は、背部痛、身長の低下と前屈姿勢、背骨の湾曲(老人性円背)又は(特に、股関節、脊椎又は手首の)軽傷を伴って生じうる骨折を含む。パジェット病の症状は、最も一般的には、骨痛を含む。他の症状には、頭痛及び難聴、頸部痛、神経圧迫、頭囲拡大又は脊椎屈曲、股関節痛、関節軟骨損傷(関節炎を生じさせうる)並びに樽状胸郭が含まれうる。変形性関節症の症状は、関節痛、運動範囲の制約及び不安定性、関節軟骨びらんの証拠となるX線像、関節腔狭小化、軟骨下骨硬化並びに骨棘(骨の突起)を含みうる。関節リウマチの症状は、身体の両側(対称性)、特に、手、手首、肘、足、膝又は首における、痛みを伴い、腫脹し、圧痛があり、硬直した関節を含む。関節リウマチを有する患者のほぼ三分の一において、豆粒大からモスボール大に及ぶリウマチ結節(隆起)が発現する。通常、これらの結節は、身体の圧点上、例えば、肘、指関節、脊椎及び下肢骨に生じる。
【0048】
本明細書で用いられるように、症状(単数又は複数)の「低減」(及びこの語句の文法的等価物)は、症状(単数又は複数)の重症度又は頻度の低下或いは症状(単数又は複数)の除去を意味する。
【0049】
本明細書で用いられるように、本明細書で述べる薬剤又は医薬組成物又は製剤を「投与する」或いは本明細書で述べる薬剤又は医薬組成物又は製剤「の投与」は、自己投与を含む直接投与及び薬剤を処方する行為を含む間接投与を含む。例えば、本明細書で用いられるように、患者に薬剤を自己投与するように指示し、且つ/或いは患者に薬剤の処方箋を与える医師は、患者に薬剤を投与している。
【0050】
本発明に従って様々な投与経路が用いられうる。本明細書で述べるペプチドの有効量が、非経口、経口、吸入、局所、経直腸、経鼻、口腔、経膣又は移植リザーバーにより投与されうる。
【0051】
本発明の好ましい一実施形態では、本明細書で述べるペプチドの有効量は非経口にて投与されうる。本明細書で用いられるような「非経口」という用語は、経皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、無針注射、髄腔内、肝内、病巣内及び頭蓋内注射若しくは注入術を含む。より好ましくは、投与経路は皮下投与である。
【0052】
本明細書で用いられるように、本明細書で述べる薬剤又は医薬組成物又は製剤又は作用物質の「治療有効量」は、疾患又は病状を有する患者に投与されると、目的とする治療効果、例えば、患者における疾患又は病状の1つ以上の兆候の緩和、改善、軽減又は除去、を有する薬剤又は作用物質の量である。完全な治療効果は必ずしも1回用量の投与により生ぜず、一連の用量の投与後のみに生じうる。従って、治療有効量は1回以上の投与にて投与されうる。
【0053】
本明細書で用いられるように、本明細書で述べる薬剤又は医薬組成物又は製剤又は作用物質の「予防有効量」は、患者に投与されると、目的とする予防効果、例えば、疾患若しくは症状の発現(又は再発)の予防又は遅延或いは疾患若しくは症状の発現(又は再発)の可能性の低減、を有する薬剤又は作用物質の量である。完全な予防効果は必ずしも1回用量の投与により生ぜず、一連の用量の投与後のみに生じうる。従って、予防有効量は1回以上の投与にて投与されうる。
【0054】
本明細書で述べる薬剤又は医薬組成物又は製剤「と組み合わせた」骨強化剤の投与は、並行投与(即ち、一定期間にわたる患者への薬剤及び骨強化剤の投与、同時投与(薬剤と骨強化剤とがほぼ同時に、例えば、相互の約数分から数時間以内に投与される)及び共投与(薬剤と骨強化剤とが経口又は非経口投与に好適な単回用量形態に組み合わせられ、或いは化合される)を含む。
【0055】
「患者」は、哺乳動物、好ましくは、ヒトであるが、獣医学的処置を必要とする動物、例えば、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)及び実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)でもよい。
【0056】
本明細書全体にわたる数値範囲への言及は、開示範囲内にあるすべての数字を包含するものとすることに留意すべきである。従って、例えば、約1%〜約50%の範囲の提示は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%或いは9%、10%、12%、14%、16%、20%、25%、30%、35%、40%、45%及び50%並びに、例えば、21.3%、7.9%及び44.5%を含む。
【0057】
本発明の組成物には追加の活性成分が含まれうる。その選択は限定されないが、所望の複合効果のために選択されうる。例えば、補完性治療効果のために追加されうる活性成分は、限定されないが、ビタミンD及び類似体、エストロゲン、カルシトニン、ビスホスホナート及びそれらの混合物を含む。特に望ましい選択はカルシトニンである。
【0058】
(骨の障害及び疾患)
(骨欠乏)
一態様では、困窮している患者は骨欠乏を有し、それは、患者が所望より少ない骨を有し、或いは骨が所望より低密度或いは低強靭性であるということである。骨欠乏は、骨折により生じるような局所性或いは骨粗鬆症により生じるような全身性でありうる。骨欠乏は、骨形成と骨吸収との均衡がシフトし、骨欠乏となる骨再形成障害から生じうる。そのような骨再形成障害の例には、例えば、骨粗鬆症、パジェット病、腎性骨ジストロフィー、腎性くる病、変形性関節症、関節リウマチ、軟骨形成不全症、骨軟骨炎(osteochodrytis)、副甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、先天性低ホスファターゼ血症、線維腫病変(fribromatous lesions)、線維性骨異形成症(fibrous displasia)、多発性骨髄腫、骨代謝回転異常、溶骨性骨疾患及び歯周病が含まれる。骨再形成障害は、有機基質、骨ミネラル化、骨再形成、骨格・ミネラルの恒常性を調節する内分泌、栄養及び他の因子の障害を特徴とする代謝性骨疾患を含む。そのような障害は遺伝性又は後天性であり得、一般的に、全身性であり、骨格系全体に影響を及ぼす。
【0059】
従って、一態様では、ヒト患者は骨再形成障害を有しうる。本明細書で用いられるような骨再形成とは、破骨細胞による骨吸収及び骨芽細胞による骨形成を伴う、骨基質及びミネラルの連続的回転により、古い骨が除去され、新しい骨が形成されていく過程をいう。
【0060】
骨粗鬆症は、通常はミネラル化した骨の骨密度の低下、その結果としての骨梁の薄化及び骨皮質の多孔性増大を特徴とする一般的な骨再形成障害である。骨粗鬆症により生じる骨格の脆弱性は、患者に骨痛及び骨折の発現率増加を被りやすくさせる。この病状における進行性の骨量減少は、当初の骨格量の最大で50%の減少を生じさせうる。一次性骨粗鬆症は、正常な生殖腺機能を有する小児又は若年成人において生じる特発性骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症とも表現されるI型骨粗鬆症を含み、老人性骨粗鬆症であるII型骨粗鬆症は、主に70歳以上の高齢者において生じる。二次性骨粗鬆症の原因は、内分泌性(例えば、グルココルチコイド過多、副甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症(hypoganodism))、薬剤誘発性(例えば、コルチコステロイド、ヘパリン、タバコ)及びその他多種(例えば、慢性腎不全、肝疾患及び吸収不良症候群骨粗鬆症(malabsorbtion syndrome osteoporosis))でありうる。
【0061】
本明細書で用いられるような「骨欠乏を発症するリスクがある」という語句は、平均以上の骨欠乏を発症する傾向を有する患者を包含するものとする。一例として、骨粗鬆症に罹患しやすい者は、閉経後女性、高齢男性(例えば、65歳以上者)及び副作用として骨粗鬆症を引き起こすことが知られている薬剤で処置されている者(例えば、ステロイド誘発性骨粗鬆症)を含む。骨粗鬆症のような骨再形成障害に起因する骨欠乏を発症するリスクがある者を同定するのに用いられうる特定の因子は、当該技術分野において周知である。骨粗鬆症のリスク因子は、当該技術分野において公知であり、年齢にかかわらず、男性及び女性における性腺機能低下性病状、性腺機能低下症を誘発する病状、疾患又は薬剤、骨粗鬆症と関連する栄養因子(低カルシウム又はビタミンDが最も一般的である)、喫煙、アルコール、骨量減少と関連する薬剤(例えば、グルココルチコイド、サイロキシン、ヘパリン、リチウム、抗痙攣薬など)、転倒しやすくさせる視力喪失、宇宙旅行、不動化、慢性的入院又は臥床並びに骨粗鬆症のリスク上昇と関連している他の全身性疾患を含む。
【0062】
骨粗鬆症の存在の兆候は、当該技術分野において公知であり、少なくとも1つの脊椎圧迫骨折のX線による証拠、低骨量(典型的には、平均若年層正常値以下の少なくとも1つの標準偏差)及び/又は非外傷性骨折を含む。他の重要な因子には、家族歴、生活様式、エストロゲン又はアンドロゲン欠乏並びに負のカルシウムバランスが含まれる。閉経後女性は特に骨粗鬆症を発症するリスクを有する。以降、骨疾患の処置への言及は、文脈上、別様となる場合を除き、管理及び/又は予防を含むものとする。
【0063】
(骨外傷)
本発明の方法は、1つ以上の骨への外傷に罹患しうる、或いは罹患している患者に有益である。該方法は、哺乳動物患者、例えば、ヒト、ウマ、イヌ及びネコ、特に、ヒトの利益となる。骨外傷は競走馬及びイヌ、更に、家庭のペットに問題となりうる。ヒトは、例えば、事故、医療介入、疾患又は障害に起因する様々な骨外傷のいずれにも罹患しうる。若年層では、骨外傷は、骨折、骨折を修復するための医療介入又は、例えば、運動競技により損傷した関節若しくは結合組織の修復に起因しうる。他のタイプの骨外傷、例えば、骨粗鬆症、変性骨疾患(例えば、関節炎又は変形性関節症)、股関節置換又は他の全身性病状(例えば、グルココルチコイド性骨粗鬆症、火傷又は臓器移植)に対する治療と関連する二次性疾患に由来する外傷は、高齢者に見出されることが最も多い。
【0064】
骨粗鬆症は、例えば、脊椎及び/又は非脊椎骨折を生じさせうる。脊椎骨折は脊柱を含む骨折であり、非脊椎骨折は脊柱を含まない任意の骨折をいう。非脊椎骨折は脊椎骨折よりも一般的であり、米国では年間700,000件の脊椎骨折と比べ、推定850,000件の非脊椎骨折が発生する。非脊椎骨折は300,000件以上の股関節骨折及び250,000件以上の手根骨折、加えて、他の非脊椎部位における300,000件の骨折を含む。非脊椎骨折の他の例には、腰部骨折、前腕遠位部骨折、上腕骨近位部骨折、手首骨折、橈骨骨折、足関節骨折、上腕骨骨折、肋骨骨折、足骨折、骨盤骨折又はこれらの組合せが含まれる。
【0065】
本発明の方法は、そのような骨折のリスクを低減し、或いはそのような骨折を処置するために用いられうる。例えば、腰部、脊椎又はその両方における骨の強度及び/又は剛性を高めることにより、骨折のリスクは低減し、骨折治癒が促進される。骨粗鬆症のリスクを有する典型的な女性は、閉経後女性又は閉経前の性腺機能低下女性である。好ましい患者は閉経後女性であり、同時ホルモン補充療法(HRT)、エストロゲン若しくは等価な療法又は抗吸収療法から独立している。本発明の方法は、骨粗鬆症の任意の病期において患者の利益となりうるが、特に、初期及び進行期において利益となりうる。
【0066】
本発明は、特に、骨粗鬆症に進行するリスクを有し、或いはリスクにある患者において骨折の発生を予防或いは減少させるのに有効な方法を提供する。例えば、本発明は、脊椎及び/又は非脊椎骨折の発症を低下させ、脊椎骨折の重症度を低下させ、多発性脊椎骨折の発症を低下させ、骨質を向上させたりすることができる。別の実施形態では、本発明の方法は、今後の多発性骨格骨折のリスクにある、低骨量又は過去の骨折を有する患者、例えば、脊椎骨粗鬆症が迅速に進行している可能性がある患者の利益となりうる。
【0067】
また、他の患者は骨外傷のリスクにあり、或いは骨外傷に罹患している可能性があり、本発明の方法から利益を得ることができる。例えば、上記の1つ以上の骨折のリスクにある多種多様の患者は、骨外傷を生じさせる外科手術を期待することができ、或いは異常に少ない骨量又は不良骨構造又はミネラル欠乏の骨格部位における骨を操作する整形外科的処置を受けうる。例えば、手術、例えば、関節置換術(例えば、膝又は股関節)又は脊椎固定術又は骨若しくは骨格を固定する他の処置後の機能回復は、本発明の方法により向上しうる。本発明の方法は、異常に少ない骨量又は不良骨構造の部位における骨を操作する整形外科的処置からの回復も促進することができ、その処置は、例えば、骨切り術を含む外科的な骨の分離、骨構造の喪失が股関節臼蓋形成による再構築及び人工器官ずれの防止を必要とする関節置換術を含む。本発明の実施に好適な他の患者には、副甲状腺機能低下症又は脊柱後弯症に罹患している患者が含まれ、該患者は副甲状腺機能低下症又は脊柱後弯症の進行に関連し、或いはそれによって引き起こされる外傷を受けうる。
【0068】
(骨の靭性及び剛性)
本発明の方法は、骨の靭性、剛性又はその両方を高めることにより、外傷のリスクを低減し、或いは外傷からの回復を促進する。一般的に、骨の靭性又は剛性は皮質骨及び骨梁(海綿骨)の量及び強度に由来する。本発明の方法は、正常集団の範囲内又は範囲以上のレベルの骨の靭性、剛性、量及び/又は強度を提供することができる。好ましくは、本発明は、外傷から生じ、或いは外傷のリスクを生じさせるレベルに対して向上したレベルを提供する。靭性、剛性又はその両方の向上は、未処置対照集団と比べ、骨折のリスク又は可能性を低下させる。
【0069】
向上した場合の骨のいくつかの特性は、骨の靭性及び/又は剛性の増大を付与する。そのような特性には、骨ミネラル密度(BMD)、骨ミネラル含量(BMC)、活性化頻度又は骨形成速度、骨梁数、骨梁の厚さ、骨梁及び他の結合性、骨膜及び皮質内骨形成、皮質多孔性、骨断面積及び骨量、荷重への抵抗性並びに/或いは損傷までの労作(work to failure)が含まれる。1つ以上のこれらの特性の増大は本発明の方法の好ましい転帰である。
【0070】
骨のいくつかの特性、例えば、骨髄空間及び弾性率の低減は骨の靭性及び/又は剛性の増大を付与する。より新しい(より高い靭性及び剛性)骨は、より古い骨の微結晶より概して小さい微結晶を有する。従って、一般的に、骨の微結晶サイズの縮小化は骨の靭性及び剛性を増大させ、骨折の発症を低下させる。加えて、骨の微結晶の成熟化は、骨の靭性及び/又は剛性の増大を含む、更なる所望の特性を骨に付与することができ、且つ/或いは骨折の発症を低下させることができる。1つ以上のこれらの特性の低減は本発明の方法の好ましい転帰となりうる。
【0071】
本発明の方法は、複数の骨の任意の骨の靭性及び/又は剛性も高めるのに効果的である。例えば、本発明は、腸骨のような寛骨、大腿骨のような下肢骨、椎骨のような脊椎由来骨又は遠位前腕骨若しくは近位上腕骨のような腕由来骨を含む骨の靭性及び/又は剛性を高めることができる。この靭性及び/又は剛性の増大は骨全体に見出され、或いは骨のいくつかの部分に局在しうる。例えば、大腿骨の靭性及び/又は剛性は、大腿骨頸又は大腿骨転子の靭性及び/又は剛性を高めることによって増大されうる。股関節の靭性及び/又は剛性は、腸骨稜又は腸骨棘の靭性及び/又は剛性を高めることによって増大されうる。椎骨の靭性及び/又は剛性は、椎弓根、椎弓板又は椎体の靭性及び/又は剛性を高めることによって増大されうる。有利なことに、その作用は脊椎の複数部分、例えば、頸椎、胸椎、腰椎、仙椎及び/又は尾椎における椎骨に対するものである。その作用は1つ以上の中部胸椎及び/又は上部腰椎に対するものであることが好ましい。
【0072】
靭性及び/又は剛性の増大は、各タイプの骨又は主に1つのタイプの骨に見出されうる。骨のタイプは、海綿(網状、索状又は層板状)骨及び緻密(皮質性又は高密度)骨及び骨折仮骨を含む。本発明の方法は、好ましくは、海綿骨及び皮質骨或いは皮質骨単独に対するその作用を通じて靭性及び/又は剛性を高める。結合組織が付着している骨梁も本発明の方法により靭性及び/又は剛性が高められうる。例えば、靱帯、腱及び/又は筋の付着部位において更なる靭性を付与することは有利である。
【0073】
本発明の別の態様では、靭性又は剛性の増大は骨折の発症を低下させうる。この態様では、靭性又は剛性の増大は、脊椎骨折の発症の低下、重度骨折の発症の低下、中等度骨折の発症の低下、非脊椎骨折の発症の低下、多発性骨折の発症の低下又はそれらの組合せを含みうる。
【0074】
本発明の方法は、骨欠乏が骨再形成障害以外の因子によって生じる病状において骨形成を亢進させるのにも用いられうる。そのような骨欠乏は、骨折、骨外傷、外傷骨手術(例えば、骨移植又は骨融合)後、人工関節術後、骨形成術後、歯科手術後、骨化学療法及び骨放射線療法と関連する病状を含む。骨折はあらゆるタイプの微視的及び肉眼的骨折を含む。骨折及び/又は損傷の例には、患者の任意の骨における剥離骨折、粉砕骨折、癒着不能骨折、横骨折、斜骨折、螺旋骨折、分節骨折、分節間隙、転位骨折、嵌入骨折、若木骨折、膨隆骨折、疲労骨折、関節内骨折(骨端骨折)、閉鎖骨折(単純骨折)、開放骨折(複雑骨折)、骨空隙及び不顕性骨折が含まれる。
【0075】
前述のように、多種多様の骨疾患、例えば、骨再形成サイクルと関連するあらゆる骨疾患が本発明により処置されうる。そのような疾患の例には、あらゆる形態の骨粗鬆症、骨軟化症及びくる病が含まれる。骨粗鬆症、特に、閉経後、男性、移植後及びステロイド誘発性型の骨粗鬆症には特に注目すべきである。加えて、PTHペプチド類似体は骨促進剤及び骨同化剤として用途を見出す。そのような使用は本発明の別の態様を成す。
【0076】
(副甲状腺ホルモン類似体)
活性成分として、本明細書で述べる医薬的に許容可能な組成物又は溶液は、ヒトPTH又はKimmelら、Endocrinology,1993,32(4):1577により報告されている卵巣摘出(ovarectomized)骨粗鬆症ラットモデルにおいて見出されたようなヒトPTH活性を有するラット、ブタ若しくはウシPTHの完全長PTH(1−84)、1−31及び1−34断片並びに他の断片又は置換、欠失若しくは挿入を含む断片の変異体を組み込みうる。ヒトPTH活性はPTHの骨梁及び/又は皮質骨の成長を増大させる能力を含む。本発明のPTH類似体は、PTH受容体を含み、或いは発現させる培養細胞、例えば、骨芽細胞又は破骨細胞に投与されると、AC活性を高める。本発明において用いられるPTH類似体は天然又は非天然であり、望ましくは、PTHの最初の34個のN末端残基より少ない残基を取り込む。
【0077】
PTHは、2つの二次メッセンジャー系であるG蛋白質活性化アデニル酸シクラーゼ(AC)及びG蛋白質活性化ホスホリパーゼCの活性化を通じて作用する。後者は膜結合プロテインキナーゼCs(PKC)活性の刺激を生じさせる。PKC活性はPTH残基29−32を必要とすることが示されている(Jouishommeら(1994)J.Bone Mineral Res.9,(1179−1189)。骨成長の増大、即ち、骨粗鬆症の処置において有用な該作用が、ペプチド配列のAC活性を高める能力に連動していることが確定している。
【0078】
天然PTH配列及びその1−34切断形態は、これらの活性をすべて有することが示されている。hPTH−(1−34)配列は、
Ser Val Ser Glu Ile Gln Leu Met His Asn Leu Gly Lys His Leu Asn Ser Met Glu Arg Val Glu Trp Leu Arg Lys Lys Leu Gln Asp Val His Asn Phe−OH(配列番号1)
である。
【0079】
AC活性は該分子の最初の数個のN末端残基を必要とすることが示されている。従って、本発明のこの実施形態に従って、hPTH−(1−34)分子の選択末端部分を欠失させることにより、PKC活性と関連するそれらの生物活性を除去することが可能である。一実施形態では、これらの短縮化類似体はカルボキシル末端アミドの形態であることが望ましい。従って、本発明の1つの特徴は、ヒト副甲状腺類似体PTH(1−25)−NH,PTH(1−26)−NH,PTH(1−27)−NH,PTH(1−28)−NH,PTH(1−29)−NH,PTH(1−30)−NH,及びPTH(1−31)−NHの変異体を含む。
【0080】
本発明において用いられるPTH類似体の別の特徴に従って、驚くべきことに、天然hPTH配列においてLys27をLeuに置換すると、AC刺激に対するより高い活性が生じることが見出された。また、この類似体はカルボキシル末端アミドの形態である場合にその最大活性を示す。従って、本発明の別の特徴は、[Leu27]−PTH−(1−25)−NHから[Leu27]−PTH−(1−31)−NHまでのすべての配列を含むPTH類似体の使用を含む。
【0081】
本発明の別の特徴に従って、例えば、Glu22及びLys26の側鎖或いは側鎖Lys26及びAsp30のカップリングを含み、Lys27がLeu又は他の種々の疎水性残基に置換され得、C末端遊離アミド末端又はC末端遊離カルボキシル末端を有する環化により、PTH類似体のラクタムが形成される。そのような置換は、側鎖に2〜10個の炭素を有するオルニチン、シトルリン、アルファ−アミノ酪酸又は任意の直鎖状若しくは分岐状アルファ−アミノ脂肪酸を含み、そのような類似体のいずれもが脂肪族鎖末端において極性基又は荷電基を有する。極性基又は荷電基の例には、アミノ、カルボキシル、アセトアミド、グアニド及びウレイドが含まれる。Ile、ノルロイシン、Met及びオルニチンは最も活性が高いと想定される。
【0082】
従って、本発明のPTH類似体は、例えば、残基Glu22とLys26,Ly26とAsp30又はGlu22とLys27との間のラクタム形成を特徴としうる。Lys27からLeuへの置換は、両親媒性ヘリックスの疎水面上のより疎水性が高い残基となる。これにより、PTH受容体を含むラット骨肉腫(ROS)細胞株におけるアデニリルシクラーゼ刺激活性の増大が生じた。他のそのような置換が同じ或いは増大した活性を有する類似体を生じさせうるということが当業者には理解されるであろう。これらの疎水性置換はMet又はノルロイシンのような残基を含む。置換といずれかのラクタム形成との複合効果は、アルファ−ヘリックスを安定化し、生物活性を高め、この分子領域を蛋白質分解から保護すると想定される。更に、C末端におけるアミドの存在は、ペプチドをエキソ型蛋白質分解から保護すると想定される(Leslie,F.M.及びGoldstein,A.(1982)Neuropeptides 2,185−196)。
【0083】
本発明の好ましい一実施形態では、開示方法において用いられるペプチドは以下の配列を有するPTH(1−31)−NH2である:
Ser−Val−Ser−Glu−Ile−Gln−Leu−Met−His−Asn−Leu−Gly−Lys−His−Leu−Asn−Ser−Met−Glu−Arg−Val−Glu−Trp−Leu−Arg−Lys−Xaa−Leu−Gln−Asp−Val−NH(配列番号2)。
【0084】
Xaaは、Lys,Leu,Ile,Nle及びMetからなる群より選択される。好ましい実施形態では、XaaはLysである(配列番号3)。この実施形態はOSTABOLINとも称される。
【0085】
本発明の別の好ましい実施形態では、開示方法において用いられるペプチドは、Glu22とLys26との間のラクタムの形態にて環化されたシクロ(22−26)PTH−(1−31)−NH2であり、以下の配列を有する:
Ser−Val−Ser−Glu−Ile−Gln−Leu−Met−His−Asn−Leu−Gly−Lys−His−Leu−Asn−Ser−Met−Glu−Arg−Val−Glu−Trp−Leu−Arg−Lys−Xaa−Leu−Gln−Asp−Val−Y(配列番号4)。
【0086】
Xaaは、Leu,Ile,Nle及びMetからなる群より選択され、YはNH又はOHである。XaaがLeuであってYがNHである場合(配列番号5)、そのPTHはOSTABOLIN−C(商標)とも称される。
【0087】
従って、本発明において用いられるPTH類似体は環化され、或いは直鎖状となり得、また、C末端において任意にアミド化されうる。PTH変異体の形態での代替例は、PTHの安定性及び半減期を向上させる1〜5のアミノ酸置換、例えば、位置8及び/又は18におけるメチオニン残基の、酸化に対するPTHの安定性を向上させるロイシン又は他の疎水性アミノ酸への置換並びに25−27領域におけるアミノ酸の、プロテアーゼに対するPTHの安定性を向上させるヒスチジン又は他のアミノ酸のようなトリプシン非感受性アミノ酸への置換を取り込む。他の好適な形態のPTHは、PTHrP,PTHrP(1−34)、PTHrP(1−36)並びにPTH1受容体を活性化するPTH又はPTHrPの類似体を含む。これらの形態のPTHは、本明細書で総称的に用いられるような「副甲状腺ホルモン類似体」という用語に包含される。該ホルモンは、既知の組換え法又は合成法、例えば、米国特許第4,086,196号;第5,556,940号;第5,955,425号;第6,541,450号;第6,316,410号;及び第6,110,892号(参照して本明細書に組み込まれる)に述べられているような方法により得られうる。
【0088】
本発明のPTHペプチド類似体の具体的な実施形態は以下のものを含む:PTH−(1−31)NH,Ostabolin;PTH−(1−30)NH;PTH−(1−29)NH;PTH−(1−28)NH;Leu27PTH−(1−31)NH;Leu27PTH−(1−30)NH;Leu27PTH−(1−29)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH Ostabolin−C(商標);Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−34)NH;Leu27シクロ(Lys26−Asp30)PTH−(1−34)NH;シクロ(Lys27−Asp30)PTH−(1−34)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;Ala27又はNle27又はTyr27又はIle27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−32)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)OH;Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH;Cys22Cys26Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;Cys22Cys26Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH;シクロ(27−30)PTH−(1−31)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH;シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−29)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−28)NH;Glu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−28)NH;並びにGlu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−31)NH
【0089】
一般的に、PTHペプチド類似体の好ましい実施形態は、投与されると、ホスホリパーゼ−C活性の低下、骨吸収の低下及び高カルシウム血症レベルの低下を生じさせるものである。本明細書で定義セクションにおいて定義されるように、「ホスホリパーゼ−C活性の低下」とは、完全長PTHペプチド又は少なくとも34アミノ酸残基長である他のPTHペプチド類似体と比べ、完全以下のホスホリパーゼ−Cの活性を惹起するため、何らかの態様にて切断或いは修飾されたPTHペプチド類似体をいう。「骨吸収の低下」とは、完全長PTHペプチド又は少なくとも34アミノ酸残基長である他のPTHペプチド類似体と比べ、より少ない骨吸収を惹起するため、何らかの態様にて切断或いは修飾されたPTHペプチド類似体をいう。そして、「高カルシウム血症レベルの低下」とは、完全長PTHペプチド又は少なくとも34アミノ酸残基長である他のPTHペプチド類似体と比べ、より低い高カルシウム血症の発現率又はより低い高カルシウム血症の重症度を惹起するため、何らかの態様にて切断或いは修飾されたPTHペプチド類似体をいう。
【0090】
本明細書で述べる方法にて投与される好ましいPTH類似体は、商品名OSTABOLIN−C(商標)にてZelos Therapeutics,Inc.により改良されたような[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NH及び[Leu27]PTH−(1−31)−NHを含む。本発明の別の実施形態では、[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−30)−NHが、本明細書で述べる方法において用いられる。別の実施形態では、該ホルモンは、遊離カルボキシル末端を有し、或いはC末端にてアミド化されうる直鎖状類似体PTH(1−31)でよい。更に別の実施形態では、該ホルモンは、遊離カルボキシル末端を有し、或いはC末端にてアミド化されうるPTH(1−30)又は[Leu27]PTH−(1−30)−NHでよい。本発明の方法において用いられうる、これら及び他のPTH類似体の好適な安定化溶液は、米国特許第5,556,940号;第5,955,425号;第6,541,450号;第6,316,410号;及び第6,110,892号(参照して本明細書に組み込まれる)に述べられている。
【0091】
(本発明の方法及び該方法において有用な薬剤)
一般的に、本発明により提供される方法は、骨形成を誘導し、骨量減少又は骨吸収を抑制或いは低減するのに有効な量にて1日又は1週用量のPTH化合物を、必要とする動物に投与することによって実施される。
【0092】
本発明の一態様は、2μg〜100μgの1日皮下用量の水性製剤又は14μg〜700μgの1週用量にて、PTHペプチド類似体を含む医薬的に許容可能な製剤を、必要とする患者に投与することによって骨粗鬆症を処置する方法を提供し、該PTHペプチド類似体は、ホスホリパーゼ−C活性の低下を有するが、アデニル酸シクラーゼ活性を維持する。例示的な用量は、プロピレングリコール及び/又はエタノールで安定化された製剤の皮下送達のための0.5〜50μgの1日用量、吸入送達のための100〜3,000μgの1日用量及び1日用量の3〜7倍での1週用量を含む。他の好適な用量は、上述の用量範囲により生じるものと同様のバイオアベイラビリティ又は薬物動態プロファイルを生じさせる、任意の投与経路による任意の用量を含む。一実施形態では、患者はヒト男性又は女性である。好ましい実施形態では、女性は閉経後である。
【0093】
別の実施形態では、骨粗鬆症は、進行期骨粗鬆症、性腺機能低下性骨粗鬆症、脊椎骨粗鬆症、移植誘発性骨粗鬆症及びステロイド誘発性骨粗鬆症からなる群より選択される。
【0094】
骨形成、骨密度又は骨ミネラル化を増大させ、或いは骨吸収を阻止するための当該技術分野において公知の骨強化剤が、本発明の方法及び医薬組成物において用いられうる。また、好適な骨強化剤が、例えば、天然又は合成ホルモン、例えば、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERMs)、エストロゲン、アンドロゲン、カルシトニン、プロスタグランジン及びパラトルモン;成長因子、例えば、血小板由来成長因子、インスリン様成長因子、形質転換成長因子、上皮成長因子、結合組織成長因子及び線維芽細胞成長因子;ビタミン、特に、ビタミンD;ミネラル、例えば、カルシウム、アルミニウム、ストロンチウム、ランタニド(例えば、米国特許第7,078,059号(参照して本明細書に組み込まれる)において述べられ、用いられているようなランタン(III)化合物)及びフッ化物;イソフラボン、例えば、イプリフラボン;プラバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン及びアトルバスタチンを含むスタチン系薬剤;パラトルモン受容体、エストロゲン受容体及びプロスタグランジン受容体を含む、骨芽細胞及び破骨細胞の表面上の受容体のアゴニスト又はアンタゴニスト;ビスホスホナート及び骨同化剤を含むということを骨形成分野の当業者は認識する。一実施形態では、ビタミンD、カルシウム又はその両方が本発明の医薬製剤と同時投与される。
【0095】
一般的に、PTHペプチド類似体の好ましい実施形態は、投与されると、ホスホリパーゼ−C活性の低下、骨吸収を刺激する能力の低下及び高カルシウム血症レベルの低下を生じさせるものを含む。本明細書で定義セクションにおいて定義されるように、「ホスホリパーゼ−C活性の低下」とは、完全長PTHペプチド又は他のPTHペプチド類似体と比べ、完全以下のホスホリパーゼ−Cの活性を惹起するため、何らかの態様にて切断或いは修飾されたPTHペプチド類似体をいう。「骨吸収の低下」とは、完全長PTHペプチド又は他のPTHペプチド類似体と比べ、より少ない骨吸収を惹起するため、何らかの態様にて切断或いは修飾されたPTHペプチド類似体をいう。そして、「高カルシウム血症レベルの低下」とは、完全長PTHペプチド又は他のPTHペプチド類似体と比べ、より低い高カルシウム血症の発現率又はより低い高カルシウム血症の重症度を惹起するため、何らかの態様にて切断或いは修飾されたPTHペプチド類似体をいう。
【0096】
本明細書で述べる方法にて投与される好ましいPTH類似体は、商品名OSTABOLIN−C(商標)にてZelos Therapeutics,Inc.により改良されたような[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NH及び商品名OSTABOLIN(商標)にてZelos Therapeutics,Inc.により改良されたようなPTH−(1−31)−NHを含む。本発明の別の実施形態では、[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−30)−NHが、本明細書で述べる方法において用いられる。別の実施形態では、該ホルモンは、遊離カルボキシル末端を有し、或いはC末端にてアミド化されうる直鎖状類似体PTH(1−31)でよい。更に別の実施形態では、該ホルモンは、遊離カルボキシル末端を有し、或いはC末端にてアミド化されうるPTH(1−30)又は[Leu27]−PTH(1−30)−NHでよい。本発明の方法において用いられうる、これら及び他のPTH類似体の好適な安定化溶液は、米国特許第5,556,940号;第5,955,425号;第6,541,450号;第6,316,410号;及び第6,110,892号(参照して本明細書に組み込まれる)に述べられている。
【0097】
更に、本明細書で述べる医薬組成物及び製剤は、以下に詳細に述べる用量及び投与経路にて、骨梁及び皮質骨における骨芽細胞分化を刺激することによって骨形成を誘導すると同時に、高カルシウム血症(即ち、正常濃度以上の血中カルシウム)の発症を低下させるように作用する。
【0098】
本発明の別の態様では、患者における骨折を処置する方法が提供される。好ましい方法は、30μgの1日用量にて3カ月間、PTHペプチド類似体の医薬的に許容可能な製剤を、必要とする患者に投与するステップを含み得、該PTHペプチド類似体はホスホリパーゼC活性の低下を有するとともにアデニル酸シクラーゼ活性を維持し、該PTHペプチド類似体は骨形成を誘導する。別の実施形態では、該方法は、30μg〜45μgの1日皮下用量にて1,2又は3カ月間、PTHペプチド類似体の医薬的に許容可能な製剤を、必要とする患者に投与するステップを含み得、該PTHペプチド類似体はホスホリパーゼC活性の低下を有するとともにアデニル酸シクラーゼ活性を維持し、該PTHペプチド類似体は骨形成を誘導する。
【0099】
本明細書で述べる医薬製剤は、患者の骨格の任意の骨における骨折の治癒を促進するのに用いられうる。好ましい実施形態では、本発明の医薬製剤は、腰部、前腕、上腕、手首、橈骨、足関節、肋骨、大腿骨、脛骨及び足の骨折を治癒するのに用いられる。骨折は上述のような複数のタイプの骨折であり得、治癒は骨折している可能性がある複数の骨において同時に生じうる。
【0100】
別の態様では、本発明は、PTHペプチド類似体の医薬的に許容可能な製剤の1日用量を、必要とする患者に投与することにより、BMDの上昇により測定されるような骨梁及び皮質骨における骨形成を誘導する方法を提供し、該ペプチド類似体はホスホリパーゼC活性の低下を有するとともにアデニル酸シクラーゼ活性を維持する。
【0101】
好ましい実施形態では、該医薬製剤は、脊椎、頭蓋骨、肋骨、股関節、足関節及び手関節において骨形成を誘導するのに用いられうるが、患者の骨格の任意の骨が骨を形成するために誘導されうる。別の実施形態では、本発明のPTH医薬製剤の投与後、血清カルシウム濃度が正常値を上回る患者集団における発生率が、従来のPTHペプチドの投与に関して認められる発生率より低い。
【0102】
更に別の態様では、本発明は、PTHペプチド類似体の医薬的に許容可能な製剤の1日用量を、必要とする患者に投与することにより、腎性骨ジストロフィー(ROD)及び関連障害を処置或いは予防する方法を提供し、該ペプチド類似体はホスホリパーゼC活性の低下を有するとともにアデニル酸シクラーゼ活性を維持する。
【0103】
一実施形態では、ROD関連障害は嚢胞性線維性骨炎及び無形成骨症である。
【0104】
(想定外の結果)
本明細書で述べる医薬組成物及び製剤は、以下に詳細に述べる用量及び投与経路にて、骨梁及び皮質骨における骨芽細胞分化を刺激することによって骨形成を誘導すると同時に、破骨細胞分化を、従って、骨吸収を低減或いは抑制するように作用する。34未満のアミノ酸長のPTH類似体が好ましく、それは、これらの切断形態が骨形成増大の正の作用を維持するとともに、骨吸収増大の負の作用を最小化するためである。骨吸収の最小化は皮質多孔性の低下も生じさせる。
【0105】
本発明のPTH類似体の種々の用量での投与は、従来のPTH類似体の投与と比べると、想定外の優れた結果をもたらした。本発明のPTH類似体は、4カ月コースにわたって投与されると、少なくとも1年コースにわたって投与された、少なくとも34アミノ酸残基長の従来技術のPTH類似体と比べ、腰椎、股関節、大腿骨頸及び転子のBMD上昇に対する同様或いはそれ以上の効果を有することが示された。従来技術のPTH類似体の結果については、Neer,N.Eng.J.Med Vol 344,No.19,2001年5月、1434−1441頁を参照されたい。これらの想定外の結果については、実施例及び図において詳細に述べられる。
【0106】
本発明のペプチドの投与は、皮質骨、特に、手根に対する正の作用も有する(橈骨遠位端及び骨幹中部、図6及び7)。歴史的に、PTHは骨吸収を増大させることが知られており、これは皮質多孔性を高め、従って、PTHが皮質骨のBMDを高めることが困難となる。本発明の投与量及び製剤は、プラセボ及びテリパラチド、Forteo(登録商標)と比べ、皮質骨成長に対する正の作用を有する。これは前例のない知見であり、3作用用量に対してプラセボとの統計的有意差を示す。
【0107】
本発明のPTHsの投与は、骨形成及び骨吸収マーカーに対する想定外の結果も有する。骨形成マーカーは、P1NP、オステオカルシン及びBSAPを含み、骨吸収マーカーは、NTx及びCTxを含む。プラセボと比べ、Ostabolin−C(商標)が15,30及び45μgにて投与されると、骨形成マーカーはより高い変化(%)を有する(図8〜10)。Ostabolin−C(商標)が30及び45μgにて投与されると、骨形成マーカー増大の強い作用がある。図11〜13における骨吸収マーカーは、Ostabolin−C(商標)投与後に骨吸収のある程度の増大があるが、この増大は従来技術のテリパラチド、Forteo(登録商標)PTH投与後の増大より少ない(Neerら、2001)。
【0108】
本発明のPTHペプチドの投与は、予想外に、当該技術分野において公知のPTHsと比べ、はるかに低い高カルシウム血症の発現率及び重症度となることも示された。PTHペプチドを投与されている患者の高カルシウム血症とは、正常値の上限(2.64mmol/L;10.6mg/dL)を上回る、患者の少なくとも1つの血清カルシウム値の発現のことである(Neerら、2001)。
【0109】
Forteo(登録商標)の投与は、プラセボと比べ、高カルシウム血症の発症レベルの上昇をもたらした。FDAによるForteo(登録商標)の認可は、平均19カ月間、20又は40μg/日のForteo(登録商標)を用いた、閉経後女性1637名(脊椎骨折の既往を有する)の処置結果に基づくものであった。Forteo(登録商標)の添付文書(その全体を参照して本明細書に組み込まれる)及びNeerを参照されたい。概して、該薬剤に対する忍容性は高かったが、プラセボ群における2%と比べ、20μg群の患者の11%及び40μg群の患者の28%において少なくとも1回、高カルシウム血症が認められた。対照的に、本発明のPTHペプチドの低用量投与(7.5,15及び30μg)は、プラセボと比べ、極くわずかな高カルシウム血症の発症の増加となった。一例として、プラセボ群の5%及び15μg用量投与群の5%において少なくとも1回、高カルシウム血症が認められ、高カルシウム血症は純増とならなかった。
【0110】
従って、種々の用量での本発明のPTH類似体の投与は、以下の予想外の結果をもたらす:1)少なくとも1年コースにわたって投与された従来技術のPTH類似体と比べ、わずか4カ月コースにわたって投与された場合の腰椎、股関節、大腿骨頸及び転子のBMD上昇に対する同様或いはそれ以上の効果;2)従来技術のPTHペプチドが皮質骨のBMDの低下をもたらしたのに対し、皮質骨、特に、手根(橈骨遠位端及び骨幹中部)におけるBMDの上昇;及び(3)従来技術のPTHペプチドと比べ、より低量の高カルシウム血症の発症及び重症度。
【0111】
本発明のPTHペプチドは、はるかに低い高カルシウム血症の発現率及び重症度をもたらす同化剤であるため、現在利用可能な治療法に対する実質的な改善を提供する。今日までの前臨床及び臨床実験に基づき、本発明のPTHペプチドは、高カルシウム血症を誘発することなく、骨粗鬆症を処置するのに安全且つ高度に有効な同化剤である。その骨吸収に対する影響の低下により、本発明のPTHペプチドはその骨質に対する作用に関して向上した臨床プロファイルも有する。
【0112】
骨吸収の低下は骨吸収マーカーのレベル低下により測定されうる。骨代謝回転の生化学的マーカーは任意の所与の時点においてどの程度の骨が存在するかを示すことはできず、従って、骨粗鬆症を診断し、或いは該疾患の重症度がどの程度でありうるかを示すのに用いることはできないが、生化学的マーカーは本発明の医薬組成物及び製剤と併せて、(1)閉経期及び閉経後女性における骨量減少を予測し、(2)処置への骨格応答をモニタリングするのに用いることができる。骨ミネラル密度(BMD)測定と異なり、生化学的マーカーは骨代謝回転の急激な変化を検出することができる。通常、BMD検査は数年で骨密度の変化を検出するが、マーカーは数週又は数カ月で骨代謝の変化を検出することができる。骨代謝回転は種々の生化学的マーカーの測定により評価されうる。2つの基本的なタイプのマーカーがあり、それは骨形成のマーカーと骨吸収のマーカーである。加えて、これらのマーカーは、2群:骨芽細胞及び破骨細胞によって放出される物質を測定するマーカーと、骨に見出される主要な蛋白質であるコラーゲンの形成又は分解時に生成される物質を測定するマーカーとに分類されうる。骨再形成が生じると、これらの物質は血中に放出され、最終的に尿中に排泄される。血中(血清中)及び尿中に多くの生化学的マーカーが検出され、測定されうる。
【0113】
骨形成に最も一般的に用いられるアッセイは、骨形成時に骨芽細胞によって産生され、血流に放出される蛋白質である骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)、オステオカルシン及びプロコラーゲンペプチドの血清検査である。典型的には、骨吸収マーカーは骨の主要蛋白質であるコラーゲンの産物の分解を測定する。これらには、I型コラーゲン架橋のピリジノリン、デオキシピリジノリン、尿中デオキシピリジノリン(尿中DPD)、N−テロペプチド(NTX)及びC−テロペプチド(CTX)が含まれる。
【0114】
早期のアッセイ、例えば、総アルカリホスファターゼ及びヒドロキシプロリンは、パジェット病のような代謝性骨疾患をモニタリングするのに現在でも用いられている。しかし、そのレベルが該疾患を有する患者において正常範囲内にある傾向にあるため、これらの検査は、骨粗鬆症において生じる傾向にある、より微妙な骨再形成変化のモニタリングに用いられるほどに感度が十分ではない。
【0115】
更なる想定外の結果は、本発明のPTHペプチドの長期投与による骨肉腫形成の発現の欠如である。従来技術のForteo(登録商標)は、その包装内にForteo(登録商標)がラットにおいて骨肉腫の発現率の上昇を引き起こしたという警告ラベルを含む。該ラベルは、骨肉腫に対するベースラインリスクが増大している患者にはForteo(登録商標)を処方すべきではないと警告している。対照的に、本発明のPTHペプチドの長期使用による骨肉腫の発現リスクはわずかである。本発明のPTHペプチドは、PTH(1−34)と比べ、異なる配列及び異なるシグナル伝達に基づき、全くないか、或いはより少ない骨肉腫の発症を有しうる。本発明のPTHペプチドの投与により最小化されるホスホリパーゼ−C及び下流プロテインキナーゼC活性が、骨芽細胞の成長に関与しうる。
【0116】
本発明のPTHペプチドに関する別の想定外の結果は、高カルシウム血症の発症可能性について、これらのペプチドを服用している患者の血清カルシウム濃度をモニタリングする必要性がないことである。従来技術のForteo(登録商標)を服用している患者の血清カルシウム濃度は、処置コースの間、血液及び/又は尿試料を通じてモニタリングされる。Forteo(登録商標)の添付文書は、Forteo(登録商標)の投与が「高カルシウム血症を増悪させる」可能性があると警告している。Forteo(登録商標)の使用は、血中の多量のカルシウム(高カルシウム血症)、骨癌又は他の骨疾患を有する患者には推奨されない。対照的に、本発明のPTHペプチドの投与は、Forteo(登録商標)の投与と比べ、より低い高カルシウム血症の発現率をもたらす。従って、本発明のPTHペプチドの投与に関し、カルシウムのモニタリングは必要でないともいえる。
【0117】
本発明のペプチドに関する別の想定外の結果は、患者の体重、体表面積若しくはBMI及び症状の発現に基づき、患者に投与される用量を調整する能力である。患者の体重、体表面積又はBMIカットオフ方法は、治療有効用量を決定するとともに、患者の体重、体表面積又はBMIに基づいて患者に対する副作用の低発症を維持する方法を提供する。特定の患者に高暴露となる用量は、高カルシウム血症を含む副作用の可能性を高める。加えて、特定の患者、特に、男性において有効性の不足が認められ得、それは、より高用量の治療剤に対して忍容性を示し得た、特定の体重、体表面積又はBMIの患者に対する状況において、該特定の患者に対する用量が少なすぎたためである。
【0118】
骨形成を刺激する卓越した作用を有する骨粗鬆症治療剤はすべて、用量が患者の体重、体表面積又はBMIに基づく態様にて投与されうる。本発明の範囲内にあるそのような治療剤の例には、抗スクレロスチンMab、Wntシグナル伝達経路の負の調節因子の阻害剤及びアクチビン受容体作動薬が含まれる。加えて、患者の体重、体表面積又はBMIに基づく用量は、その骨形成作用がPTHのその受容体に対する作用により媒介されるすべての治療剤に対して有効であり、これには、PTH、完全長及びその断片、PTH類似体、PTHrP並びにPTHrP類似体が含まれる。患者の体重、体表面積又はBMIに基づく用量により有効である具体的なPTHペプチドは、限定されないが、完全長PTH 1−84、PTH 1−34,PTH−(1−31)NH,Ostabolin;PTH−(1−3O)NH;PTH−(1−29)NH;PTH−(1−28)NH;Leu27PTH−(1−31)NH;Leu27PTH−(1−30)NH;Leu27PTH−(1−29)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH Ostabolin−C(商標);Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−34)NH;Leu27シクロ(Lys26−Asp30)PTH−(1−34)NH;シクロ(Lys27−Asp30)PTH−(1−34)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;Ala27又はNle27又はTyr27又はIle27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−32)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)OH;Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH;Cys22Cys26Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;Cys22Cys26Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH;シクロ(27−30)PTH−(1−31)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH;シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−29)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−28)NH;Glu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−28)NH;並びにGlu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−31)NHを含む。
【0119】
加えて、患者の体重、体表面積又はBMIに基づいて投与されうる治療剤の好適例には、内在性PTH産生を刺激するカルシウム受容体拮抗薬、例えば、PTH受容体のアゴニストとして作用するものが含まれ、これには、PTH、完全長及びその断片、PTH類似体、PTHrP及びその類似体が含まれる。患者の体重、体表面積又はBMIに基づく用量の投与は様々な適応症において用いることができ、これには、骨粗鬆症、骨折修復、腎性骨疾患、コルチコステロイド誘発性骨粗鬆症、移植並びに骨梁及び皮質骨における骨形成の誘導が含まれる。
【0120】
本発明のペプチドの用量範囲の有効性を評価することにより、非応答者数を減少するため、低用量は除外され得、通常、安全性の懸念をもたらす高用量も除外されうる。複数の有効用量の選択は、全体的な有効性及びその用量に応答する患者の割合を向上させるとともに、患者に対する高暴露をもたらす用量の副作用を低減することにより、本発明のペプチドのリスク対有益性プロファイルを向上させる。
【0121】
(PKプロファイルの向上)
本発明のPTH類似体の投与は、既知のPKプロファイルと比べ、より短時間(より鋭いピーク)のPKプロファイルをもたらした。このより短時間のPKプロファイルは、PTH処置の正の作用を維持すると同時に、副作用を低減することになる。本発明の範囲内にある好適なPKパラメータは、2分〜60分のPTHペプチド類似体の半減期;30分〜4時間のPTHペプチド類似体の暴露時間;2分〜30分のPTHペプチド類似体のTmax;及び10〜400pg/mlのPTHペプチド類似体のCmaxを含む。より好ましいPK範囲は、15分〜30分の半減期、1〜2時間の暴露時間、15〜30分のTmax及び50〜200pg/mlのCmaxを含む。
【0122】
本発明の範囲内にある薬物動態の詳細は、ヒト及び動物への投与について、図に示されている。ヒトに投与されるPTHでは、緩衝剤、ポリオール及び安定化剤を含む液体製剤(pH3〜5)にてOstabolin−Cが投与された。同様の薬物動態プロファイルを生じさせる別の実施形態のPTHsも投与されうる。動物に投与されるPTHでは、Ostabolin−Cが酸性化生理食塩水中に配合され、リン酸で調整されてpH7.2+/−0.4にされた。上述のOstabolin−C PTH製剤を用いた薬物動態が図18〜20に示されている。
【0123】
(医薬組成物/製剤、投薬及び投与)
本発明の方法及び組成物において様々なPTHペプチド類似体化合物が用いられうる。一般的に、PTHペプチド類似体の好ましい実施形態は、投与されると、ホスホリパーゼ−C活性の低下、骨吸収の低下及び高カルシウム血症レベルの低下を生じさせるものを含む。本明細書で定義セクションにおいて定義されるように、「ホスホリパーゼ−C活性の低下」とは、完全長PTHペプチド又は少なくとも34アミノ酸残基長である他のPTHペプチド類似体と比べ、完全以下のホスホリパーゼ−Cの活性を惹起するため、何らかの態様にて切断或いは修飾されたPTHペプチド類似体をいう。「骨吸収の低下」とは、完全長PTHペプチド又は少なくとも34アミノ酸残基長である他のPTHペプチド類似体と比べ、より少ない骨吸収を惹起するため、何らかの態様にて切断或いは修飾されたPTHペプチド類似体をいう。そして、「高カルシウム血症レベルの低下」とは、完全長PTHペプチド又は少なくとも34アミノ酸残基長である他のPTHペプチド類似体と比べ、より低い高カルシウム血症の発現率又はより低い高カルシウム血症の重症度を惹起するため、何らかの態様にて切断或いは修飾されたPTHペプチド類似体をいう。
【0124】
本明細書で述べる方法にて投与される好ましいPTH類似体は、商品名OSTABOLIN−C(商標)にてZelos Therapeutics,Inc.により改良されたような[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NH及び商品名OSTABOLIN(商標)にてZelos Therapeutics,Inc.により改良されたようなPTH−(1−31)−NHを含む。本発明の別の実施形態では、[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−30)−NHが、本明細書で述べる方法において用いられる。別の実施形態では、該ホルモンは、遊離カルボキシル末端を有し、或いはC末端にてアミド化されうる直鎖状類似体PTH(1−31)でよい。更に別の実施形態では、該ホルモンは、遊離カルボキシル末端を有し、或いはC末端にてアミド化されうるPTH(1−30)又は[Leu27]PTH−(1−30)−NHでよい。本発明の方法において用いられうるPTHペプチド類似体の好適な安定化溶液は、米国特許第5,556,940号;第5,955,425号;第6,541,450号;第6,316,410号;及び第6,110,892号(参照して本明細書に組み込まれる)に述べられている。
【0125】
(投与量)
本発明に用いるPTHペプチド類似体の有効量は、所定のレジメンに従って投与した後、所望の有益性又は治療効果を付与する量である。有効用量は、投与されるPTHペプチド又は類似体の製剤タイプ並びに投与経路に従って異なりうる。投与量が本明細書で述べる好ましい用量範囲から生じるものと同様の薬物動態学的或いは生物学的プロファイルを生じさせうるように、当業者は投与経路又は製剤を変更することにより、投与量を調節することができる。例示的な用量は、水性製剤の皮下送達のための2〜100μgの1日用量、プロピレングリコール及び/又はエタノールで安定化された製剤の皮下送達のための0.5〜50μgの1日用量、吸入送達のための100〜3,000μgの1日用量並びに1日用量の3〜7倍での1週用量を含む。他の好適な用量は、上述の用量範囲により生じるものと同様のバイオアベイラビリティ又は薬物動態プロファイルを生じさせる、任意の投与経路による任意の投与量を含む。
【0126】
水性製剤にて皮下投与されるPTH類似体の有効量の非限定例は、約2μg/日〜約100μg/日、好ましくは、約5μg/日〜約45μg/日、更に好ましくは、約7.5μg/日〜約20μg/日、更に好ましくは、約20μg/日〜約30μg/日、更に好ましくは、約30μg/日〜約45μg/日、更に好ましくは、約5,7.5,10,15,20,25,30,35,40,45又は50μg/日に及びうる。更なる好ましい用量は、5,6,7,7.5,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44又は45μg/日の用量を含む。水性製剤にて皮下投与されるPTH類似体の有効量の更なる例は、約14μg/週〜約420μg/週、好ましくは、約35μg/週〜約280μg/週、更に好ましくは、約70μg/週〜約140μg/週、更に好ましくは、約140μg/週〜約210μg/週、更に好ましくは、35,70,105,140,175,205又は245μg/週に及びうる。用量は、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎又は7日毎(1回/週)に投与されうる。また、これらの用量はバイオアベイラビリティを補正するように調節されうる。また、使用されるPTHペプチドの分子量を考慮に入れ、投与量はmmolにて計量されうる。
【0127】
また、投与量は患者のサイズに基づいて計算されうる。μgでの用量は、μgをμg/kg又はμg/m2又はμg/mlに変換することにより、或いは当該技術分野において公知の他の好適な変換により、患者の特徴、例えば、身長、体重、体表面積、BMI、除脂肪体重などに対して正規化されうる。好適な実施形態では、用量はμg/kgベースでも皮下投与されうる。この計算は30μg及び45μgを例示的な用量として用いて次のように行われる。ヒト患者の平均体重が約65kgであるという想定に基づき、30μgと45μg用量は0.46μg/kgと0.69μg/kgとに変換される。μgをμg/kgに変換するには、μg用量は65kgで除され、μg/kg用量が得られる(用量/体重=μg/kg)。30μgの用量では、ヒトの平均体重65kg当たり30μgは約0.46μg/kgのμg/kg用量となる。45μgでは、ヒトの平均体重65kg当たり45μgは約0.69μg/kgのμg/kg用量となる。水性製剤の皮下送達のための本発明の範囲内の用量は、0.20〜0.90μg/kg、より好ましくは、0.30〜0.70μg/kg、更に好ましくは、0.46〜0.69μg/kgを含む。好ましい範囲内の用量は、PTH療法の有効性を最大限にすると同時に副作用を低減する。
【0128】
吸入療法では、PTHペプチド又は類似体は100μg〜3,000μg/日の用量にて投与されうる。より具体的には、PTHペプチド又は類似体は、100μg,200μg,300μg,400μg,500μg,600μg,700μg,800μg,900μg,1000μg,1100μg,1200μg,1300μg,1400μg,1500μg,1600μg,1700μg,1800μg,1900μg,2000μg,2100μg,2200μg,2300μg,2400μg,2500μg,2600μg,2700μg,2800μg,2900μg又は3000μg/日の用量にて投与されうる。吸入療法は1日用量の3〜7倍にて毎週投与することもできる。
【0129】
閉経後女性におけるMTDを確定し、そのPKプロファイルを第II相皮下投与量と比較し、且つcAMP及び骨代謝回転のバイオマーカーに関する生物活性を評価するため、Ostabolin−C(商標)吸入パウダー(OCIP)を用いて第I相臨床試験が実施された。好ましい用量の300μg及び800μgは、皮下投与と同様のPKプロファイルとなった。このPKプロファイルは、2分〜60分のPTHペプチド類似体の半減期;30分〜4時間のPTHペプチド類似体の暴露時間;2分〜30分のPTHペプチド類似体のTmax;及び10〜400pg/mlのPTHペプチド類似体のCmaxを含んだ。より好ましいPK範囲は、15分〜30分の半減期、1〜2時間の暴露時間、15分〜30分のTmax及び50〜200pg/mlのCmaxを含む。吸入用量の詳細は実施例14に示されている。
【0130】
用量は、患者の症状の発現及び体重、体表面積若しくはBMIに基づいて様々な量にて投与することもできる。そのような用量最適化については以下に詳細に考察される。
【0131】
(用量最適化)
用量最適化は、あらゆる薬剤、特に、狭い治療域を有する薬剤に重要である。PTH及びその類似体を含む一般的なホルモンは、そのような狭い治療域を有する薬剤である。この狭い治療域のため、種々の症状を呈するすべての患者に対する標準化された単回用量は、必ずしも有効ではありえない。異なる症状及び異なる体重、体表面積若しくはBMIを有する患者に対する2つの別個の用量30μgと45μgの本発明者らの用量最適化手法は、この課題に対処するものである。
【0132】
適切なリスク/有益性比を有するヒト患者へのPTH類似体の投与の用量最適化は、従来技術のPTHsでは困難であることが判明した。PTH類似体の投与及び市販可能性が多くの企業により分析され、最も有効で最も毒性が低い用量を得ることは困難な状態である。PTHの投薬を研究しているそのような企業の2社は、Lilly社(Forteo 1−34 hPTHを有する)及びNPS社(Preos−組換え完全長ヒト副甲状腺ホルモン、rhPTH 1−84)である。
【0133】
本発明のPTHペプチドの用量最適化は、Forteoで現在利用可能な単回用量を超える有益性を提供する。Lilly社のForteoは20μg用量に対してのみ承認されている。Lilly社は20μg及び40μgの用量を投与する可能性を検討したが、20μg用量のみが承認された。Forteo 40μgを投与された患者の28%において少なくも1回、高カルシウム血症が認められたため、40μg用量のリスク/有益性比があまりに大きかった。従って、Forteo(hPTH 1−34)の20μg用量が、すべての患者のあらゆる症状に利用可能な唯一の用量である。20μg用量が十分な有益性を付与しない一部の患者がいる。加えて、Forteoの承認審査概要では、FDAは男性に対する適正用量は30μgであるべきことを示した。2つの異なる用量30μgと45μgの本発明者らの用量最適化手法は、Forteoの40μg用量のリスク及びForteoの20μg用量での一部の患者における有効性の不足を克服するものである。
【0134】
加えて、NPS社はその組換え完全長ヒト副甲状腺ホルモンrhPTH 1−84、Preosの様々な用量を検討している。第II相臨床試験では、NPS社は、50,75及び100μg/日の用量を分析した。第III相臨床試験では、投与用量は100μgの単回用量に限定された。この用量は高カルシウム血症の高発症レベルにより、未だ承認されていない。
【0135】
本発明に関して述べられる用量/体重カットオフは、単回用量のPTH投与のリスクが、得られる有益性を上回る従来技術の課題を回避するのに役立つ。従って、用量は患者の体重、体表面積又はBMIに基づいて投与することができる。以下のデータに示すように、最少の副作用での最大利益は、Ostabolin−Cが、体重カットオフ値未満の患者に対して約30μgの用量にて、また、体重カットオフ値超の患者に対して約45μgの用量にて投与される場合に得られる。用量/体重カットオフのこれらの同じ有益性は、Ostabolin−Cに加え、本明細書で述べるPTH類似体及び他の治療剤に関して生じ、これは、抗スクレロスチンMab、Wntシグナル伝達経路の負の調節因子の阻害剤、アクチビン受容体作動薬、PTH、完全長及びその断片、PTH類似体、PTHrP及びPTHrP類似体を含む、その骨形成作用がPTHのその受容体に対する作用により媒介される治療剤並びにPTH、完全長及びその断片、PTH類似体、PTHrP及びその類似体を含むPTH受容体のアゴニストとして作用するような内在性PTH産生を刺激するカルシウム受容体拮抗薬を含む。
【0136】
本明細書における実施例において詳述される、Ostabolin−C皮下プログラム由来の4カ月及び12カ月第II相データは、30−45μgの1日用量が骨粗鬆症の処置に対して適切な有益性対リスクプロファイルを有することを示す。30μg用量は、高カルシウム血症の低発症及び副作用の発症の低下を伴う、腰椎BMDの臨床的に有益な上昇を示す。45μg用量は腰椎BMDのより高い上昇を引き起こし、股関節のBMDの上昇も生じさせる。従って、用量最適化が、高用量にて認められる副作用の増大を被ることなく、高用量の一部又はすべてのプラス方向の有効有益性を取り込みうるかを探索することは興味深い。この分析については以下に述べられる。
【0137】
30μg用量では、腰椎BMDは上昇し、橈骨中部BMDは上昇し、高カルシウム血症の発症パーセントは比較的低く、同化ウィンドウ(anabolic window)により示されるように、骨吸収に対する骨形成の増大が大きい。この30μg用量の利点は、Forteoと比べて低下した骨吸収の証拠を伴う、早期の大幅な骨形成の増大を含む。より短時間のPKプロファイルを有する、本発明の範囲内にあるPTHsは、腰椎及び股関節での正のBMD変化においてForteoに関して認められるものと同様の有益性を付与するが、本発明は、皮質骨減少の可能性の低下を伴い、副作用を低減する。本発明は、高カルシウム血症を生じさせる傾向の低下も示す。Ostabolin−Cの30及び45μg用量の投与データが図21及び22に示されている。
【0138】
45μg用量でのPTH類似体の投与も更なる有益性を付与する。これらの同じ有益性は、Ostabolin−Cに加え、本明細書で述べるPTH類似体に関して生じる。この45μg用量は優れた有効性を有するが、副作用の発生を伴う。45μg用量のOstabolin−Cの投与は、強力な骨形成作用と結びついた、股関節及び腰椎における強度の早期BMD変化をもたらす。また、この正の作用は骨吸収刺激及び高カルシウム血症の多少の証拠と組み合わせられる。これらの結果は図22に示されている。
【0139】
30及び45μgの用量に関して上記に示された効果に基づき、有益性を得ると同時に有害作用を最低限にするため、用量最適化が重要であることは明らかである。用量を最適化する1つの方法は、より短時間のPKプロファイルを生じさせる用量を投与することである。本発明の範囲内にある好適なPKパラメータは、2分〜60分のPTHペプチド類似体の半減期;30分〜4時間のPTHペプチド類似体の暴露時間;2分〜30分のPTHペプチド類似体のTmax;及び10〜400pg/mlのPTHペプチド類似体のCmaxを含む。より好ましいPK範囲は、15分〜30分の半減期、1〜2時間の暴露時間、15〜30分のTmax及び50〜200pg/mlのCmaxを含む。
【0140】
用量を最適化する別の方法は、患者の体重、身長、体表面積又はBMIに依存し、異なる用量を投与することである。本明細書におけるデータに示されるように、高用量の45μgは、特に股関節においてForteoに関してこれまでに認められた以上の有効性を有する。しかし、この高用量は一部の患者に対して高カルシウム血症のリスク因子も示す。低用量の30μgはForteoに関して認められているものと少なくとも同等の有効性を有し、高カルシウム血症のリスク因子を示さない。30μg用量も45μg用量もすべての患者に最適というわけではない。本明細書で提示される用量最適化は、30及び45μg用量の正の特性、即ち、有害作用の低リスクを有する優れた有効性を兼ね備える投薬レジメンを提供する。この投薬レジメンは、体重、身長、BMI、除脂肪体重又は体表面積を含む患者の身体特徴に基づき、異なる用量を提供する。
【0141】
このようにして、患者における非応答の可能性は、大柄な患者における低用量の回避によって軽減され、患者における有害作用の可能性は、小柄な患者における高用量の回避によって軽減される。本発明の範囲内にある用量は、50kg以上、より厳密には、65kg以上、より厳密には、68kg以上、より厳密には、70kg以上の体重がある患者への45μgの投与並びに90kg未満、より厳密には、75kg未満、より厳密には、68kg未満、より厳密には、65kg未満、より厳密には、59kg未満、より厳密には、50kg未満の体重がある患者への30μgの投与を含む。
【0142】
この用量/体重カットオフ最適化は、患者の体重、体表面積若しくはBMI及び症状の発現に基づき、患者に投与される用量を調整する能力を提供する。体重カットオフ方法は、治療有効用量を決定するとともに、患者の体重、体表面積又はBMIに基づいて患者に対する副作用の低発症を維持する方法を提供する。特定の患者に対して高暴露となる用量は、高カルシウム血症を含む副作用の可能性を高める。加えて、特定の患者に対する用量が、より高用量の治療剤に対して忍容性を示すことができたであろう、特定の体重、体表面積又はBMIの患者に対する状況において低すぎたため、特定の患者において有効性の不足が認められうる。
用量範囲の有効性を評価することにより、非応答者数を減少するため、低用量は除外され得、通常、安全性の懸念をもたらす高用量も除外されうる。体重、体表面積又はBMIカットオフは、患者に投与される用量を高用量又は低用量に限定する。複数の有効用量の選択は、全体的な有効性及びその用量に応答する患者の割合を向上させるとともに、患者に対する高暴露をもたらす用量の副作用を低減することにより、本発明のペプチドのリスク対有益性プロファイルを向上させる。
【0143】
30〜45μg/日の投与範囲を検討するため、用量がμg/kgに変換され(1日用量÷体重kg×100(小数の回避のため))、個々の薬剤への暴露に基づき、Ostabolin−Cへの応答が分析された。積極的処置を受ける患者は全員、個々の用量暴露に変更され、次に、μg/kgの漸増暴露用量コホートに再編成された(0〜15,16〜25,26〜35,36〜45,46〜55,56超μg/kg)。これらの新規用量暴露コホートにおける、4カ月の処置後の一次及び二次エンドポイントの平均変化率が算出された。線形回帰分析により、Ostabolin−Cへの暴露作用が用量暴露の全範囲にわたって評価されることが可能となった。集団平均値は連続変数の95%CIで線形回帰分析として提示される。腰椎BMD(図23〜24)、大腿骨頸BMD(図29)、前腕橈骨骨幹中部(図30)、全股関節(図27,53〜54)、血清カルシウム(図28)、高カルシウム血症(図31〜32)及び骨形成・骨吸収マーカー(図26)に対する作用のデータが図に示されている。その結果は、バイオマーカー及びBMDエンドポイント並びに血清カルシウム(すべて連続変数)のすべてが、本試験にて試験を行った用量範囲全体にわたって線形パターンにて変化することを示す。
【0144】
平均的ヒト患者は約65kgの体重があるという想定に基づき、30μgと45μg用量は0.46μg/kgと0.69μg/kgとに変換された。μgをμg/kgに変換するには、μg用量は65kgで除され、μg/kg用量が得られる(用量/体重=μg/kg)。30μgの用量では、ヒトの平均体重65kg当たり30μgは約0.46μg/kgのμg/kg用量となる。45μgでは、ヒトの平均体重65kg当たり45μgは約0.69μg/kgのμg/kg用量となる。これらの用量は図に示されている。本発明の範囲内にある用量は、0.20〜0.90μg/kg、より好ましくは、0.30〜0.70μg/kg、更に好ましくは、0.46〜0.69μg/kgを含む。より好ましい範囲内にある用量は、PTH療法の有効性を最大限にすると同時に副作用を低減する。
【0145】
試験集団における用量暴露範囲を縮小する1つの方法は、単一体重カットオフによる2つの用量強度を用いることである(即ち、カットオフ未満の体重がある患者は全員、低用量(30μg)を受け、一方、体重カットオフを上回る患者は全員、高用量(45μg)を受ける)。この用量最適化方法のOstabolin−C暴露に対する影響は図33〜36に示されている。
【0146】
68kgでの体重カットオフの作用は、30及び45μg用量群における暴露の拡大を低下させる。これは実施例において詳細に示されている。3つの異なるBMDパラメータのモデル化データの比較は、腰椎BMDと比べ、全股関節及び大腿骨頸BMDに作用するためには漸進的に高い用量の暴露が必要であることを示す。これにより、治療が患者個々のニーズに合わせて調整されることが可能となる。腰椎BMDでは、提示される体重カットオフは68kgであり、そのため、68kg未満の体重がある腰椎BMDを有する患者は30μg用量を投与され、68kg以上の体重がある腰椎BMDを有する患者は45μg用量を投与されうる。股関節及び大腿骨頸では、より高い用量が同様の正の作用を有する必要があるため、提示されるカットオフ体重は68kgより低い。
【0147】
(血漿濃度−AUC)
用量は、PTH類似体又は他の骨粗鬆症治療剤の有効血漿濃度を付与するようにも選択されうる。ペプチド濃度の有効最大血漿濃度の例は、約10pg/mL〜約400pg/mL、好ましくは、約20pg/mL〜約300pg/mL;約50pg/mL〜約280pg/mL;約80pg/mL〜約250pg/mL;約100pg/mL〜約150pg/mLの範囲でありうる。PTHペプチド類似体の最大血漿濃度のための他の好適な用量範囲は、20〜40pg/mL,40〜60pg/mL,60〜80pg/mL,80〜100pg/mL,100〜120pg/mL,120〜140pg/mL,140〜160pg/mL,160〜180pg/mL,180〜200pg/mL,200〜230pg/mL,230〜260pg/mL,260〜300pg/mL,300〜350pg/mL及び350〜400pg/mLを含む。
【0148】
本発明の別の具体的な実施形態では、ペプチドは、5pg・h/mL〜400pg・h/mLの範囲での血漿ペプチド濃度対時間曲線における曲線下面積(本明細書では“AUC”)の値となる有効量にて投与される。より好ましくは、AUCの範囲は10pg・h/mL〜350pg・h/mLである。より好ましくは、AUCは20pg・h/mL〜300pg・h/mLの範囲内である。より好ましくは、AUCは50pg・h/mL〜250pg・h/mLの範囲内である。より好ましくは、AUCは70pg・h/mL〜200pg・h/mLの範囲内である。より好ましくは、AUCは90pg・h/mL〜150pg・h/mLの範囲内である。更に好ましくは、AUCは95pg・h/mL〜125pg・h/mLの範囲内である。他の好適なAUCの範囲は、5pg・h/mL〜20pg・h/mL,20pg・h/mL〜50pg・h/mL,50pg・h/mL〜70pg・h/mL,70pg・h/mL〜90pg・h/mL,90pg・h/mL〜100pg・h/mL,100pg・h/mL〜110pg・h/mL,110pg・h/mL〜120pg・h/mL,120pg・h/mL〜130pg・h/mL,130pg・h/mL〜150pg・h/mL,150pg・h/mL〜175pg・h/mL,175pg・h/mL〜200pg・h/mL,200pg・h/mL〜225pg・h/mL,225pg・h/mL〜250pg・h/mL,250pg・h/mL〜275pg・h/mL,275pg・h/mL〜300pg・h/mL,300〜350pg・h/mL又は350pg・h/mL〜400pg・h/mLである。
【0149】
従って、一態様では、本発明は、2μg〜60μgの1日用量範囲又は14μg〜420μgの1週用量範囲での、活性成分として治療有効量のPTHペプチド類似体を含む医薬製剤を提供し、該PTHペプチド類似体は、医薬的に許容可能な賦形剤、希釈剤若しくは担体又はそれらの組合せとの混合物にて、ホスホリパーゼC活性の低下を有するとともにアデニル酸シクラーゼ活性を維持する。有効用量は投与されるPTHペプチド若しくは類似体の製剤型及び投与経路により異なりうる。投与量が、本明細書で述べる好ましい用量範囲から生じうるのと同様の薬物動態学的或いは生物学的プロファイルを生じさせうるように、当業者は投与経路又は製剤を変更することにより、投与量を調節することができる。例示的な投与量は、水性製剤の皮下送達のための2〜100μgの1日用量、プロピレングリコール及び/又はエタノールで安定化された製剤の皮下送達のための0.5〜50μgの1日用量、吸入送達のための100〜3,000μgの1日用量並びに1日用量の3〜7倍での1週用量を含む。他の好適な投与量は、上述の用量範囲により生じるものと同様のバイオアベイラビリティ又は薬物動態プロファイルを生じさせる、任意の投与経路による任意の投与量を含む。
【0150】
(投与経路)
本発明のPTHペプチド類似体の投与は、自己投与を含む直接投与及び薬剤を処方する行為を含む間接投与を含む。例えば、本明細書で用いられるように、患者に薬剤を自己投与するように指示し、且つ/或いは患者に薬剤の処方箋を与える医師は、患者に薬剤を投与している。
【0151】
本発明に従って様々な投与経路が用いられ得、これは、経口、局所、経皮、経鼻、肺内、横断経皮(transpercutaneous)(機械的又はエネルギー手段により皮膚が破損している場合)、経直腸、口腔内、経膣、経移植リザーバー又は非経口を含む。非経口は、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内及び頭蓋内注射若しくは注入術を含む。より好ましくは、投与経路は、皮下、経皮(transcutaneous)、鼻腔内、経皮(transdermal)、経口又は吸入投与である。
【0152】
(製剤)
副甲状腺ホルモンの安定化溶液は、安定化剤、緩衝剤、防腐剤、抗菌剤などを含みうる。溶液又は組成物に組み込まれる安定化剤は、糖類、好ましくは、単糖類又は二糖類、例えば、グルコース、トレハロース、ラフィノース若しくはスクロース;糖アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール若しくはイノシトール及び多価アルコール、例えば、グリセリン若しくはプロピレングリコール又はそれらの組合せを含むアルコール、エタノール或いはポリオールを含む。好ましいポリオールはマンニトール又はプロピレングリコールである。ポリオールの濃度は、総溶液の約1〜約20wt%の範囲、好ましくは、約3〜約10wt%の範囲でよい。
【0153】
本発明の溶液又は組成物において用いられる緩衝剤は、医薬的に許容可能な任意の酸又は塩の組合せでよい。有用な緩衝系は、例えば、アセタート、タルトラート又はシトラート源である。好ましい緩衝系はアセタート又はタルトラート源、最も好ましいのはアセタート源である。緩衝剤の濃度は約2mM〜約500mM、好ましくは、約2mM〜約100mMである。
【0154】
本発明の安定化溶液又は組成物は、非経口的に許容可能な防腐剤も含みうる。そのような防腐剤は、例えば、クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、チメロサール及び硝酸・酢酸フェニル水銀を含む。好ましい防腐剤はm−クレゾール又はベンジルアルコールであり、最も好ましいものはm−クレゾールである。使用防腐剤の量は総溶液の約0.1〜約2wt%、好ましくは、約0.3〜約1.0wt%の範囲でよい。
【0155】
副甲状腺ホルモン組成物は、所望とあれば、選択副甲状腺ホルモン、上述のような緩衝剤及び安定化剤を混合することにより調製される無菌ホルモン水溶液の凍結乾燥から生じる、2重量%以下の水を含む粉末形態にて提供されうる。凍結乾燥粉末を調製する際に緩衝剤として特に有用なものはタルトラート源である。特に有用な安定化剤は、グリシン、スクロース、トレハロース及びラフィノースを含む。
【0156】
hPTH又は、より具体的には、Ostabolin−Cを含む使用可能状態の製剤は、室温で安定せず、冷蔵条件下(2〜8℃)で保存される必要がある。hPTHは水性媒体中にて加水分解、酸化及び脱アミドを受けるため、室温保存用の溶液製剤を開発することは困難である。該製剤は5℃で安定するが、該製剤は生理的pHに比較的近いpH約7.5にて安定することが好ましい。Ostabolin−C溶液は使用可能状態の製剤と比べ、pH7.5にて安定性が低いことを諸研究は示している。pH7.0超にて酸化及び脱アミドが共に生じる。そのようなものとして、冷蔵条件下でのpH7.0超の100%水性製剤は実現可能とはなり得ない。従って、本発明の製剤の安定性を評価するため、抗酸化物質であるメチオニン又はリポ酸と共に、エタノール/水又はプロピレン/水系の混合物が用いられた。
【0157】
hPTH製剤の安定性を維持するのに役立つ別の添加物はメチオニンである。メチオニンは潜在的抗酸化物質であってhPTHの安定性を向上させることが示されている。更に、ポリオールはペプチド及び蛋白質製剤を安定化する潜在力を有し、pH5.5での最大1Mの濃度のスクロースはhPTHの脱アミド及び酸化の割合を低下させることが見出されている。
【0158】
加えて、副甲状腺ホルモンは、非経口投与のために蛋白質を安定化し可溶化するために当該技術分野において用いられる典型的な緩衝剤及び賦形剤で製剤化される。緩衝剤も安定性に対する作用を有する。従前のモデルは、pH7超に対し、トリス緩衝液は対応するリン酸緩衝液よりはるかに低い脱アミド速度定数を有することを示した。その生理学的イオン強度のため、NaClの添加も製剤の正の作用を有する。当該技術分野において認知されている医薬担体及びその製剤が、Martin,“Remington’s Pharmaceutical Sciences,”第15版;Mack Publishing Co.、イーストン(Easton)(1975)に述べられている。hPTH製剤に対する安定化添加剤の更なる詳細は、実施例15及び16に示されている。
【0159】
また、PTHペプチド類似体は、任意の投与経路、例えば、経口(舌下を含む)、局所、経皮(パッチ、軟膏(ointments)、クリーム、ゲル、軟膏(salves)などによる皮膚を通した組成物の経皮吸収)、鼻腔内、経直腸又は肺送達用の乾燥粉末、エアロゾル若しくはミストとして吸入による投与に好適な組成物に配合されうる。
【0160】
そのような形態の本発明の化合物は、エアロゾルを生成し、或いは、例えば、定量吸入器、鼻噴霧器、ドライパウダー吸入器、ジェット噴霧器又は超音波ネブライザーのような装置を用いて乾燥粉末薬剤を投与するための従来の手段により投与されうる。そのような装置は開口部の周囲に装着されるマウスピースを任意に含みうる。しかし、本発明は、PTHペプチド類似体が全身又は局所的に得られるようにするあらゆる形態の投与を包含するということが理解される必要がある。
【0161】
本明細書で述べる製剤を、その主要機能が外部環境とのガス交換である任意の部分、組織又は器官に投与する通常の意味に加え、本発明を目的として、「肺内」は気道に付随する組織又は腔、特に、洞を含むものとする。肺内投与では、活性剤、手動ポンプ噴霧、ネブライザー又は加圧定量吸入器並びに乾燥粉末薬剤を含むエアロゾル製剤が企図される。このタイプの好適な製剤は、開示化合物を有効なエアロゾルとして維持するため、帯電防止剤のような他の作用物質も含みうる。
【0162】
エアロゾルを送達するための薬物送達デバイスは、既述のようなエアロゾル医薬製剤を含む、計量バルブを備えた好適なエアロゾルキャニスターと、該キャニスターを保持するとともに薬物送達を許容するように適合されたアクチュエータハウジングとを含む。薬物送達デバイスにおける該キャニスターは、該キャニスターの総容積の約15%以上を示すヘッドスペースを有する。肺内投与を目的とする高分子化合物は、溶媒、界面活性剤及び推進剤の混合物中に溶解、懸濁或いは乳化されることが多い。該混合物は計量バルブで密閉されたキャニスター内に加圧下にて維持される。
【0163】
経口投与可能な組成物は、所望とあれば、1つ以上の生理的に適合可能な担体及び/又は賦形剤を含み得、固体又は液体でよい。患者への鼻腔内投与は、治療有効量のPTHペプチド類似体を患者の鼻道又は鼻腔の粘膜に投与することを含む。経鼻投与用の医薬組成物は、例えば、スプレー式点鼻薬、点鼻薬、懸濁液、ゲル、軟膏、クリーム又は粉末を含みうる。
【0164】
本明細書で述べるペプチドの医薬的に許容可能な組成物は、本発明の方法に従って用いられうる。本明細書で述べる医薬組成物は1つ以上の医薬的に許容可能な賦形剤を任意に含みうる。そのような医薬的に許容可能な賦形剤は当該技術分野において周知であり、例えば、塩類(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素ニナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ及び三ケイ酸マグネシウム)、界面活性剤、水溶性高分子(例えば、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール400、ポリアクリラート、カルボキシメチルセルロースナトリウム、蝋及びポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体)、防腐剤、抗菌剤、抗酸化剤、抗凍結剤、湿潤剤、粘性剤、張性改質剤、研和剤、吸収促進剤、浸透促進剤、pH改質剤、粘膜接着剤、着色剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、懸濁剤、溶剤、共溶剤、緩衝剤(例えば、リン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム及び飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物)、血清蛋白質(例えば、ヒト血清アルブミン)、イオン交換剤、トコフェロール(tacopherol)ポリエチリングリコール1000スクシナート(TPGS)mygly oil,labrosol,labrofac、エタノール、充填剤、例えば、ラクトース スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む糖類;セルロース調製物、例えば、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、ジャガイモ澱粉、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)並びにこれらの賦形剤の組合せを含む。所望とあれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸若しくはその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムのような崩解剤が添加されうる。そのような担体又は賦形剤の更なる例は、限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類、澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン及びポリエチレングリコールのような高分子化合物を含む。
【0165】
本発明の製剤に用いるのに好適な界面活性剤の例は、限定されないが、コール酸及びコール酸塩、デオキシコール酸及びデオキシコール酸塩、タウロコール酸及びタウロコール酸塩、ポリビニルピロリドン、PEG化合物、例えば、コカミン、ステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、水添ラノリン、ラノリン、ラウラート及びオレアート、ラウリン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、クオタニウム界面活性剤、硫酸ナトリウム、グリセリル化合物、パルミチン酸及びその誘導体並びにオレイン酸及びその誘導体を含む。
【0166】
本発明の医薬組成物内に含まれる賦形剤は、治療用途における該組成物の予期される投与経路に基づいて選択される。従って、経口、経舌、舌下、口腔及び頬部内投与用に設計される組成物は、当該技術分野において周知の手段によって必要以上の実験を行うことなく、例えば、不活性希釈剤又は食用担体を用いて作製されうる。該組成物はゲラチンカプセルに封入され、或いは錠剤に圧縮されうる。経口治療投与を目的として、本発明の医薬組成物は賦形剤と合体され、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハース、チューインガムなどの形態にて用いられうる。
【0167】
錠剤、ピル及びカプセルのような固形投与形態は1つ以上の結合剤、充填剤、懸濁剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、着香剤、防腐剤、緩衝剤、湿潤剤、分解物質、発泡剤及び他の賦形剤も含みうる。そのような賦形剤は当該技術分野において公知である。充填剤例は、ラクトース一水和物、無水ラクトース及び種々の澱粉である。結合剤例は、種々のセルロース及び架橋ポリビニルピロリドン、微結晶性セルロース及びケイ化(silicifized)微結晶性セルロース(SMCC)である。圧縮される粉末の流動性に作用する物質を含む好適な潤滑剤は、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びシリカゲルである。甘味料例は、任意の天然又は人工甘味料、例えば、スクロース、キシリトール、サッカリンナトリウム、シクラマート、アスパルターム及びaccsulfame Kである。着香剤例は、バブルガム風味、果実風味などである。防腐剤例は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸及びその塩、パラヒドロキシ安息香酸の他のエステル、例えば、ブチルパラベン、アルコール、例えば、エチル又はベンジルアルコール、フェノール化合物、例えば、フェノール或いは第四級化合物、例えば、塩化ベンザルコニウムである。好適な希釈剤は、医薬的に許容可能な不活性充填剤、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、第二リン酸カルシウム、糖類及び/又は前記任意の混合物を含む。希釈剤例は、微結晶性セルロース、ラクトース、例えば、ラクトース一水和物、無水ラクトース、第二リン酸カルシウム、マンニトール、澱粉、ソルビトール、スクロース及びグルコースを含む。好適な崩壊剤は、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉及び加工澱粉、クロスポビドン、グリコール酸ナトリウム澱粉並びにそれらの混合物を含む。発泡剤例は、例えば、有機酸と炭酸塩若しくは重炭酸塩とのような発泡性対である。好適な有機酸は、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸及びアルギン酸並びに無水物及び酸性塩を含む。好適な炭酸塩及び重炭酸塩は、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、グリシン炭酸ナトリウム、炭酸L−リシン及び炭酸アルギニンを含む。或いは、発泡性対の酸成分のみが存在しうる。
【0168】
コーティングとして、或いは用量単位の物理的形態を改変するため、他の様々な物質が存在しうる。例えば、錠剤は、シェラック、砂糖又はその両方をコーティングされうる。シロップ又はエリキシル剤は、活性成分に加え、甘味剤としてスクロース、防腐剤としてメチル・プロピルパラベン、色素及び香味料、例えば、チェリー若しくはオレンジ香料などを含みうる。
【0169】
該組成物は任意の便利な形態をとり得、これは、例えば、錠剤、被膜錠剤、カプセル、ロゼンジ、水性又は油性懸濁液、溶液、乳剤、シロップ、エリキシル剤及び、使用前の水若しくは別の好適な液体ビヒクルとの再構成に好適な乾燥生成物を含む。該組成物は用量単位形態にて有利に調製されうる。本発明による錠剤及びカプセルは、所望とあれば、結合剤、例えば、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガントゴム又はポリビニル−ピロリドン;充填剤、例えば、ラクトース、砂糖、トウモロコシ澱粉、リン酸カルシウム、ソルビトール又はグリシン;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール又はシリカ;崩壊剤、例えば、ジャガイモ澱粉;或いは許容可能な湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムのような従来の成分を含みうる。錠剤は当該技術分野において周知の方法に従ってコーティングされうる。
【0170】
液体組成物は、懸濁剤、例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/砂糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル又は水素化食用脂;乳化剤、例えば、レシチン、ソルビタンモノオレアート又はアラビアゴム;食用油、例えば、植物油、例えば、ラッカセイ油、アーモンド油、ヤシ油、魚肝油、油状エステル、例えば、ポリソルベート80、プロピレングリコール又はエチルアルコールを含みうる非水性ビヒクル;並びに防腐剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはプロピル又はソルビン酸のような従来の添加剤を含みうる。液体組成物は、例えば、ゼラチンに都合よく封入され、用量単位形態にて製品が得られる。
【0171】
PTHペプチド類似体が大腸に送達されるように、経口送達用の製剤は遅延放出製剤にて製剤化されうる。遅延放出製剤は当該技術分野において周知であり、例えば、遅延放出カプセル又は時間型ピル(time pills)、浸透性送達カプセルなどを含む。
【0172】
非経口投与用の組成物は、注射可能な液体担体、例えば、発熱物質非含有無菌水、過酸化物非含有無菌オレイン酸エチル、無水アルコール若しくはプロピレングリコール又は無水アルコール/プロピレングリコール混合物を用いて製剤化され得、静脈内、腹腔内、皮下又は筋肉内注射されうる。注射用滅菌溶液は、必要に応じて上記に列挙した他の種々の成分と共に、必要量の活性化合物を適切な溶媒に組み入れ、次に、濾過滅菌することによって調製される。一般的に、分散液は、種々の滅菌活性成分を、塩基性分散媒及び上記に列挙したものからの必要な他の成分を含む無菌ビヒクルに組み入れることによって調製される。注射用無菌溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分の粉末と事前に濾過滅菌されたその溶液からの任意所望の追加成分とを生じさせる真空乾燥及び凍結乾燥法である。
【0173】
経直腸投与用の組成物は、ココアバター又は別のグリセリドのような従来の坐薬基剤を用いて製剤化されうる。
【0174】
局所投与用の組成物は、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、シャンプー、塗布、粉末(噴霧粉末を含む)、ペッサリー、タンポン、噴霧、浸漬、エアロゾル、注垂(pour−ons)及び滴下を含む。活性成分は、例えば、適宜に親水性又は疎水性基剤にて製剤化されうる。
【0175】
保存寿命を増強するため、本発明の組成物に抗酸化物質、例えば、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール又はヒドロキノンを組み入れることは有利でありうる。Ostabolin−Cを含む種々の製剤の薬物動態プロファイルが実施例17に詳述されている。
【0176】
(投薬レジメン)
本発明における投与は1回以上の周期からなりうる。これらの周期の間、破骨細胞及び骨芽細胞活性が生じる1期間以上並びに破骨細胞活性も骨芽細胞活性もない1期間以上がある。或いは、投与は中断しないレジメンにて行われ得、そのようなレジメンは長期的レジメン、例えば、持続的レジメンでありうる。
【0177】
本発明による組成物の投与量及び投与期間は、特定の患者の必要条件により異なることが理解されるであろう。的確な投薬レジメンは、特に、体重、年齢及び症状(ある場合)のような因子を考慮する担当医又は獣医によって決定される。組成物は、所望とあれば、1つ以上の更なる活性成分を組み入れうる。
【0178】
投薬レジメンの間、該ホルモンは、定期的(例えば、毎日又は毎週1回以上)、断続的(例えば、1日又は1週の間、不定期的)又は周期的(例えば、数日又は数週間後、投与を行わない期間が続く定期的)に投与されうる。定期的投与は、1日1回、2日毎に1回、3日毎に1回、4日毎に1回、5日毎に1回、6日毎に1回又は7日毎に1回(1回/週)を含みうる。好ましくは、PTHは骨粗鬆症患者において、3カ月から最長3年間に及ぶ期間、1〜7日間、1日1回投与される。更なる実施形態では、PTHは8日間も投与される。本発明は、PTHが週ベースで投与される実施形態も包含する。
【0179】
好ましくは、周期的投与は、少なくとも2回の骨再形成周期間の副甲状腺ホルモンの投与及び少なくとも1回の骨再形成周期間の副甲状腺ホルモンの中止を含む。周期的投与の別の好ましいレジメンは、少なくとも約12〜約24カ月間の副甲状腺ホルモンの投与及び少なくとも6カ月間の副甲状腺ホルモンの中止を含む。通常、副甲状腺ホルモンの投与の有益性は一定期間後に持続する。数カ月の投与の有益性は、更なる投与なしに、1年又は2年又はそれ以上も持続しうる。
【0180】
所望とあれば、PTHペプチド類似体化合物は、他の活性成分、例えば、骨強化剤と同時或いは逐次的に投与されうる。これらの活性成分は、例えば、骨再形成周期と相互作用することができ、且つ/或いは骨折修復に有用である他の薬剤又は組成物を含みうる。そのような薬剤又は組成物は、例えば、上述のような変形性関節症又は骨粗鬆症の処置に有用なものでよい。
【0181】
更なる態様では、本発明は、骨関連疾患、特に骨粗鬆症の処置又は予防の方法を提供し、それは、そのような処置を必要とするヒトを含む哺乳動物に、(a)約6〜24カ月の期間、有効量のPTHペプチド類似体;及び(b)PTHの投与が終了した後、約12〜36カ月の期間、有効量の骨吸収阻害剤を投与するステップを含む。該骨吸収阻害剤は、ビスホスホナート、例えば、アレンドロナート;又はエストロゲン様作用を有する物質、例えば、エストロゲン;又は選択的エストロゲン受容体モジュレーター、例えば、ラロキシフェン、タモキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、イドキシフェン若しくはレボルメロキシフェン;又はカルシトニン様物質、例えば、カルシトニン;又はビタミンD類似体;又はカルシウム塩でよい。
【0182】
上述のように、本発明の高用量のOstabolin−C及び他のPTH類似体は、著明な早期の骨形成及びBMD応答を付与するが、骨ミネラル化レベルを低下させ、また、皮質多孔性を増大させることによって骨強度の向上率を低下させる潜在力を有する被刺激骨吸収と関連する。より低用量のOstabolin−C及び他のPTH類似体も、低レベルにて骨形成の増大を生じさせるが、骨吸収刺激活性がない。より高用量の治療の早期有益性を得ると同時に副作用を最低限にするため、本発明の範囲内にある好適な処置レジメンは逐次療法である。そのような処置レジメンの一実施形態は、高用量のOstabolin−C又は他の好適なPTH類似体で処置を開始し、次に、1〜12カ月でよいが、好ましくは、3〜9カ月、最も好ましくは、4〜8カ月の期間後、より低レベルにて骨形成を維持するが、骨吸収の刺激を許容しない低用量に切り替える。逐次療法は低用量で処置を開始し、次に、高用量に切り替えてもよい。そのような投薬レジメンは、被刺激骨吸収による低下なしに、高用量処置によって生じる持続的骨形成及び早期骨形成の完全熟成を可能とするため、高用量及び低用量療法より優れている。それは、安全性及び忍容性に関わる有害事象の発生が低下するという点においても高用量療法より優れている。従って、そのような逐次療法は有効な治療法であると同時に副作用を最低限にする。
【0183】
そのような逐次療法は本明細書で開示されるすべての用量にて施行されうる。1つの好適な投薬レジメンは、35μg〜100μgのPTHペプチド類似体の用量範囲での第一の1日用量の水性製剤の前記ヒトへの皮下投与と、次に、第一期の終了後、第二期間、2μg〜35μgのPTHペプチド類似体の第二の用量の前記ヒトへの投与とを含む。
【0184】
ヒトへの投与では、調製物はFDAにより規定されている滅菌性、発熱性、全般的安全性及び純度基準を満たす必要がある。
【0185】
(キット)
本発明は、本発明の医薬組成物を含むとともに本発明の方法で用いられるキットも包含する。該キットは、例えば、本発明の製剤及び好適な担体を乾燥又は液状形態にて含むバイアルを含みうる。該キットは、該バイアルでのラベルの形態及び/又は該バイアルが包装されている箱の中に含まれる添付文書の形態にて、該化合物の使用及び投与のための使用説明書を更に含む。該使用説明書は該バイアルが包装されている箱に印刷することもできる。該使用説明書は、当該分野における従事者が該薬剤を投与することを可能とするため、十分な用量及び投与情報のような情報を含む。当該分野における従事者は、該薬剤を投与しうる如何なる医師、看護師又は技術者も、或いは該医薬組成物を自己投与しうる患者を包含すると予想される。
【0186】
一実施形態では、該キットは、本明細書で述べる医薬組成物の1日用量の約60日分の供給量を保持する性能を有するバイアル又はカートリッジを含むカートリッジアセンブリを収容する薬物送達用ペンを含む。更なる実施形態では、該ペンは、本明細書で述べる医薬組成物の1日用量の1,2,3,4,5,6,7又は8週分の供給量を保持する性能を有する。好ましい実施形態では、該ペンは、本明細書で述べる医薬組成物の1日用量の2又は4週分の供給量を保持する性能を有する。そのようなデバイスは、本明細書で述べる医薬組成物の自己投与に対して使用容易性を付与する。
【0187】
更なる実施形態では、該カートリッジは、注射前に使用者により再構成される医薬組成物の液体用量又は凍結用量を含みうる。薬物送達用ペン、液体又は凍結医薬投与製剤を保持するための同ペン用のカートリッジアセンブリ並びに注射用組成物を凍結し、密閉する方法は、米国特許第5,334,162号;第6,053,893号;及び第6,648,859号から明らかなように(それらの教示内容は参照して本明細書に組み込まれる)、当該技術分野において公知であることを医薬技術分野の当業者は認知する。
【0188】
以下の実施例は本発明を例示するものであって限定するものではない。
【実施例】
【0189】
(実施例1 [Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−hPTH−(1−31)−NHの合成及び精製)
その教示内容が参照して本明細書に組み込まれる米国特許第5,955,425号に述べられているように、Lys−Alloc,Glu−OA11が、それぞれ位置26,22において置換されたこのペプチドを合成し、精製した。Fmoc−Ser17の付加後、ペプチド樹脂をカラムから反応用バイアル(Minivial,Applied Science社)に移し、アルゴン下、ジクロロメタン(DCM)中のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.24mmol)、5%酢酸及び2.5%N−メチルモルホリン(NMM)の1.7ml溶液中に懸濁させ、次に、20℃で6時間、振盪し、アリル及びalloc保護基を除去した(Sole,N.A.ら(1993)Peptides:Chemistry,Structure,and Biology,Smith,J.及びHodges,R.(編)、ESCOM 93−94頁、参照して本明細書に組み込まれる)。次に、該ペプチド樹脂を、DMF(50ml)中0.5%ジエチルジチオカルバマート(DEDT)、0.5%NMMで、次に、DMF(50ml)及びDCM(50ml)で洗浄した。2ml DMF中の0.06mmolの1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)/0.12mmol NMMと共に20℃で14時間振盪することにより、該ペプチド(0.06mmol)を環化した(Carpino,L.A.(1993)J.Am.Chem.Soc.115,4397−4398)。該ペプチド樹脂を濾過し、次に、DMFで1回洗浄し、カラム内に詰め直し、懸濁液から気泡が除去されるまでDMFで洗浄した。上記の直鎖対応物として残りの合成を行った。但し、N末端Fmoc基を除去しなかった。上述のように、K試薬を用いてFmoc−ペプチドを該樹脂から切断した。上記の直鎖対応物としてHPLCを行い、最終HPLC前にFmoc基を除去した。
【0190】
本発明の方法において用いられうるPTHペプチド類似体の他の好適な安定化溶液は、米国特許第5,556,940号;第5,955,425号;第6,541,450号;第6,316,410号;及び第6,110,892号(それらの教示内容は参照して本明細書に組み込まれる)に述べられているように合成・精製されうる。
【0191】
(実施例2 [Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−hPTH−(1−31)−NHは、サルモデルにおいて骨梁及び皮質骨における成長を促進する)
ペプチド[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−hPTH−(1−31)−NH Ostabolin−C(商標)を、52週間、0,2,10及び25μg/kgの用量レベルにて皮下注射により、生殖腺無傷カニクイザル(4頭/性別/群)に連日投与した。処置開始時、サルは30〜40カ月齢(2.3〜3.5kg)であった。安楽死の15及び5日前にカルセイングリーンで標識した後、組織形態計測のために脛骨を保持した。DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)及びQCT(定量的コンピュータ断層撮影法)により測定した骨量は、腰椎、大腿骨及び脛骨において増加した。脊椎BMD(骨ミネラル密度)の変化は骨強度の有意な増大となった。ペプチド[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−hPTH−(1−31)−NHは全用量にて、脛骨近位端の海綿骨及び皮質内骨区画における骨の付着成長を実質的に増大させた。脛骨海綿骨容積は対照と比べ、ペプチド[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−hPTH−(1−31)−NH処置群において50%超増大し、脛骨骨幹中部では、髄質部の同時減少を伴う皮質幅及び関連皮質部の増大が認められた。2つの最大用量レベルにて皮質多孔性の極くわずかな増大が認められた。骨量の増加は、骨形成の増大及び、破骨細胞表面の有意な減少により測定される骨吸収の低下に関連するように思われた。骨形成指数の増加は骨吸収指数の低下(骨吸収マーカーの減少、破骨細胞表面積の縮小、最小限の皮質多孔性)と関連しており、これらの事象の脱共役と一致していた。この同化作用と抗異化作用との組合せは、骨粗鬆症の処置において有意な治療価値を有しうる。
【0192】
(実施例3 前臨床皮質多孔性データ)
種々の用量でのOstabolin C及び従来技術のPTHs 1−34を用いた、サル患者における皮質骨多孔性の増大に関する比較データを以下に示す。
【0193】
【表1】

(実施例4 前臨床毒性データ)
以下の表は、従来技術のPTH,1−34、テリパラチド、Forteo(登録商標)が、Ostabolin−C(商標)より腎毒性が高いことを示し、その相違はおそらく異なる高カルシウム血症状態に関連している。以下に示すように、PTH−(1−34)はサル及び、おそらく、ラットにおいて石灰化腎毒性を誘発する。サルに対する無毒性量(NoAEL)は確定しなかった。Ostabolin−C(商標)はサルにおいてのみ腎毒性を示し、無毒性量(NoAEL)が確定した。Ostabolin−C(商標)はPTH−(1−34)より少なくとも4倍安全である。
【0194】
【表2】

(実施例5 OSTABOLIN−C(商標)の臨床試験)
低骨ミネラル密度(BMD)を有する閉経後女性におけるOstabolin−C(商標)の安全性、忍容性及び有効性を検討するため、4カ月間の第II相臨床試験を行った。本試験由来の比較データは、Ostabolin−C(商標)の使用が、現行の治療法、1−34 PTH、テリパラチド、Forteo(登録商標)の使用に優る多くの利点を有することを示す。臨床プロトコルは、低骨ミネラル密度(BMD)を有する閉経後女性におけるOstabolin−C(商標)の安全性、忍容性及び有効性を検討するための16週間第II相無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間用量設定試験である。本試験では、患者261名がプラセボ群及び4つの実薬投与群の4カ月間連日投与を受けた。実薬投与群は、7.5,15,30及び45μgの用量でのOstabolin−C(商標)の連日投与を含んだ。Ostabolin−C(商標)は、予め充填されたシリンジ内に供される無色透明液体として調合され、皮下(SC)注入される。患者は、割り振られた用量のOstabolin−C(商標)7.5,15,30及び45μg或いはプラセボの0.1ml注射剤を、腹部の四分円(rotating quadrants of the abdomen)に16週間連日、皮下自己投与する。患者は中等度の骨粗鬆症を有する閉経後女性(少なくとも5年間)であった。
【0195】
本試験の主要エンドポイントは、二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)により評価し、基準受診(Baseline visit)からの変化により測定する腰椎における平均BMDの変化を含む。基準受診(Baseline visit)は処置を受ける前の患者の最初の受診である。二次有効性エンドポイントは基準受診(Baseline visit)からの変化により測定する以下の項目を含む。
DEXA:
・平均大腿骨頸BMD
・平均転子BMD
・平均全股関節BMD
・平均橈骨BMD(遠位端及び骨幹中部)
・骨ミネラル含量(BMC)
・骨面積
骨形成及び吸収マーカー:
・血清オステオカルシン
・血清I型プロコラーゲンアミノ末端プロペプチド(P1NP)
・骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)
・血清C−テロペプチド(CTx)
・血清N−テロペプチド(NTx)
他の測定:
・胸椎、腰椎側部及び左前後腰部X線写真
・身長
(実施例6 臨床結果−低用量(7.5,15及び30μg)Ostabolin−C(商標)の効果)
実施例5における上述のようなOstabolin−C(商標)の7.5,15及び30μgの1日用量の投与は、従来技術のPTHsの使用に関して従前認められた負の随伴作用なしに、脊椎、股関節及び手根を含む身体の複数部位において強固な骨同化作用を示す。橈骨中部における前例のないBMDの増大並びに高カルシウム血症のより低い発症及び重症度は、これらを高度に魅力的な用量とする。
【0196】
図1に示すように、15週コースにわたる7.5,15及び30μgの1日用量のOstabolin−C(商標)の投与は、腰椎BMDの増大をもたらす。図3,4及び5は、15週間のOstabolin−C(商標)投与後の腰部、大腿骨頸及び転子BMDの軽度の増大を示す。
【0197】
図6及び7は、7.5,15及び30μgのOstabolin−C(商標)の連日投与が、皮質骨、特に手根(橈骨遠位端及び骨幹中部)に対する予想外の正の作用を有することを示す。7.5,25及び30μgの1日用量にて骨吸収の負の作用を伴わず、橈骨中部において統計的に有意な効果があった。歴史的に、PTHは骨吸収を増大させることが知られており、これは皮質多孔性を高め、橈骨皮質骨におけるBMDを低下させる(Neerら、2001)。Neerにおいて述べられているように、従来技術のForteo(登録商標)PTH 1−34の投与はプラセボと比べ、橈骨遠位端及び骨幹中部におけるBMDの低下(皮質多孔性の増大)をもたらした。対照的に、本発明の投与量及び製剤、即ち、7.5,15及び30μgのOstabolin−C(商標)の投与は、プラセボ及びテリパラチド、Forteo(登録商標)と比べ、橈骨遠位端及び骨幹中部における皮質BMDを実際に増大させる。これは前例のない知見であり、3作用用量(7.5,15及び30μg)に対してプラセボとの統計的有意差を示す。図8〜13は、本発明のPTHsが骨形成及び骨吸収マーカーに対して有する作用を示す。骨形成マーカーは、P1NP、オステオカルシン及びBSAPを含み、骨吸収マーカーは、NTx及びCTxを含む。プラセボと比べ、Ostabolin−C(商標)が15及び30μgにて投与されると、骨形成マーカーはより高い変化(%)を有する。
【0198】
図11〜13における骨吸収マーカーは、Ostabolin−C(商標)投与後に骨吸収のある程度の増大があるが、この増大は従来技術のテリパラチド、Forteo(登録商標)PTH投与後の増大より少ない。
【0199】
7.5,15及び30μgのOstabolin−C(商標)の連日投与は、当該技術分野において公知のPTHsと比べ、はるかに低い高カルシウム血症の発現率を有することも示された。図14は、最大30μgを含むOstabolin−C(商標)の用量に対する異常な血清カルシウムパーセントに関し、プラセボとの著明な差異がなかったことを示す。それと比べると、テリパラチド、Forteo(登録商標)は同等の用量にてはるかに高い作用を有することが示されている。Forteo(登録商標)を服用した患者では、プラセボ群における2%と比べ、20μg群患者の11%及び40μg群患者の28%において少なくとも1回、高カルシウム血症が認められた(Neerら、2001)。本発明のPTHペプチドの低用量投与(7.5,15及び30μg)は、プラセボと比べ、高カルシウム血症の発現率の有意な増加をもたらさなかった。5%のプラセボ群及び30μg用量投与群において少なくとも1回、高カルシウム血症が認められ、純増とならなかった。これは、20μgにて投与されたForteo(登録商標)に関して認められた11%と対照的である。
【0200】
従って、上記の結果は、7.5,15及び30μgの1日用量でのOstabolin−C(商標)の投与が、20μgでのForteo(登録商標)の投与を上回る多くの利点を提供することを示す。予想外の結果は、プラセボと比べた橈骨遠位端及び骨幹中部における皮質BMDの増大、従来技術のPTHより少ない骨吸収並びに高カルシウム血症のより低い発現率及び重症度を含むとともに、脊椎及び股関節を含む様々な部位におけるBMDの増大により測定されるような同化作用による骨成長を維持することである。
【0201】
(実施例7 前臨床結果−高用量(45μg)Ostabolin−C(商標)の効果)
Ostabolin−C(商標)の45μgの1日用量の投与は、脊椎及び股関節を含む様々な部位において骨を構築する前例のない能力を示し、わずかに軽度の高カルシウム血症シグナルを伴った早期の効果発現を有した。これは、従来技術のテリパラチド、Forteo(登録商標)1−34 PTHを上回る改善である。
【0202】
図1及び2は、Ostabolin−C(商標)45μgの投与が腰椎におけるBMDの増大をもたらすことを示す。図2は、Forteo(登録商標)20及び40μgの投与による腰椎BMDの増大を示す。
【0203】
図3,4及び5並びに以下の表は、Ostabolin−C(商標)45μgの1日用量が、股関節、大腿骨頸及び転子における骨形成に対する正の作用を有することを示す。これは前例のない知見であり、15週目における45μgでの統計的に有意であって臨床的に意義のある有益性を示す。以下の表は、少なくとも12カ月間のコースにわたるテリパラチド、Forteo(登録商標)(20μg)と、15週間でのOstabolin−C(商標)(45μg)との投与を比較した、股関節、大腿骨頸及び転子BMDの変化を示す。以下に示すように、股関節及び転子では、Ostabolin−C(商標)45μgの投与は、少なくとも12カ月のコースにわたるForteoの投与で得られた結果と同様の結果を15週にて達成した。大腿骨頸に関しては、Ostabolin−C(商標)はより短い期間にてBMDのはるかに大きい増大を示す。
【0204】
【表3】

図8〜13は、本発明のPTHsが骨形成及び骨吸収マーカーに対して有する作用を示す。骨形成マーカーは、P1NP、オステオカルシン及びBSAPを含み、骨吸収マーカーは、NTx及びCTxを含む。プラセボと比べ、Ostabolin−C(商標)が45μgにて投与されると、骨形成マーカーはより高い変化(%)を有する。Ostabolin−C(商標)が45μgにて投与されると、骨形成マーカー増大の強固な作用がある。図11〜13における骨吸収マーカーは、Ostabolin−C(商標)投与後に骨吸収のある程度の増大があるが、この増大は従来技術のテリパラチド、Forteo(登録商標)PTH投与後の増大より少ない。
【0205】
従って、上記の結果は、45μgの1日用量でのOstabolin−C(商標)の投与が、20及び40μgでのrhPTH 1−34 テリパラチド、Forteo(登録商標)の投与を上回る多くの利点を提供することを示す。予想外の結果は、従来技術のPTHより少ない骨吸収及びより低い高カルシウム血症の発現率を伴う、脊椎及び股関節におけるBMDの増大を含む。
【0206】
(実施例8 Ostabolin−Cの薬物動態(PK)評価)
本試験のこの部分の目的は、低骨ミネラル密度を有する閉経後女性患者に1日1回皮下(sc)投与された場合のOstabolin−Cの安定状態条件下での薬物動態を評価することであった。
【0207】
本試験は、閉経後女性患者における第II相多施設無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間用量設定試験であった。スクリーニング処置及び2週間のプラセボ慣らし相(run−in phase)後、プラセボ又はOstabolin−C(7.5,15,30又は45μg)を16週間、1日1回、患者に投薬した。PKパラメータを求め、それらを先行試験と比較するため、全処置群由来の患者のサブセットに対し、Ostabolin−Cの測定のため、血液を採取した。
【0208】
本試験の全試験期間は22週間であり、これは、2週間のプラセボ慣らし(run−in)を含む6週間のスクリーニング期間、次に、16週間の処置を含んだ。本試験のこの構成要素のための患者のサブセットを、ベースライン及び第12週における追加の血液採取を除き、他の全患者と同様に処置した。
【0209】
(データ処理及びPK分析)
1つ(ベースライン2時間時点)を除き、プラセボ患者由来の値はすべて、検出アッセイレベル(即ち、10pg/ml)以下であった。非常に限定された例外を有し、先行試験におけるプラセボ患者由来の値もすべて、検出レベル以下であった。従って、この1つの値は実験誤差であると考えられ、このプラセボ患者のPKパラメータを計算しなかった。
【0210】
ベースライン又は第12週時における投与前のサンプルは得られなかった。全先行試験では、処置前値は検出レベル以下であり、40μg及びそれ以下の用量での24時間時点は検出レベル以下であった。従って、観察可能な値を期待せず、PKを計算するため、基準受診(Baseline visit)の処置前値をゼロに設定した。
【0211】
第12週時における投与前では、先行試験に基づき、やはり値は検出レベル以下であって、投与後24時間値がこれを実証するであろうと予想した。24時間時点の2値のみが検出レベル以上であり、即ち、患者030−003のベースライン時における投与後24時間及び患者030−0004の第12週時における投与後24時間であった。これらの両方の24時間時点の値は検出アッセイレベルをわずかに上回った。また、これらの患者は共に、前日、投与後4時間及び6時間時点では検出レベル以下の値を有していた。従って、これらの値はアーチファクトであって実際の値ではない可能性が高い。第12週時における患者032−0001の有効な24時間時点サンプルは得られなかった。しかし、第12週時における投与後6時間時点は検出レベル以下であり、従って、24時間時点の値も検出レベル以下であると想定し、AUC(0−24)値を推定した。従って、PKパラメータを計算するため、第12週時の投与前値もゼロに設定した。
【0212】
ベースライン及び第12週時において推定した薬物動態パラメータは以下の通りである。
−ゼロ時間から4時間までの薬物濃度−時間曲線下領域(AUC(0−4)
−ゼロ時間から24時間までの薬物濃度−時間曲線下領域(AUC(0−24)
−最大観察薬物濃度(Cmax
−最大薬物濃度時間(Tmax
患者のこのサブセットに含まれる患者が極く少数であり、採取に用いる時点が限定されたため、追加のPKパラメータを計算しなかった。
【0213】
各時間由来の台形領域の単純な総和により、AUC値を推定した。Excel(登録商標)スプレッドシートにおいて単純な統計、即ち、平均(AVG)及び標準偏差(STD)を用いて、各用量群由来のデータを概略した。特に、低用量及び関連低血中レベルに関し、また、遅い時間点において、検出のアッセイ限界の直上値対直下値がAUC算出に対する不相応な影響を有しうることに留意する必要がある。これにより、算定数のばらつきが増加する。
【0214】
(PK値)
次の表は推定PKパラメータを概略したものである。
【0215】
【表4】

本試験のこのパートに実際に参加した患者が極く少数であり、また、Cmax,Tmax及びAUCの値がベースラインと第12週とで酷似しているように思われたため、すべての時期の値を平均化し、これらのパラメータの別の推定値を得た。下記表を参照されたい。安定状態の動態があるべき平衡に達した際、ベースラインと第7日との同様のPK値が、この用量範囲を含む以前の2つの第1相試験において認められていた。
【0216】
【表5】

注意−患者032−0001の有効な24時間時点サンプルは得られなかったが、6時間時点が検出レベル以下であったため、24時間時点の値も検出レベル以下であると想定し、AUC(0−24)値を推定した。
【0217】
【表6】

注意:N=患者数;ベースラインと第12週との組合せ由来のデータ、各患者は各パラメータに対して2値を有していた。
【0218】
maxは本試験及び以前の試験において用量依存的であるように思われるため、ベースライン及び第12週にて求めた、本試験における全用量由来のTmaxを平均化し、全体的な推定値0.34時間と0.21時間のSTDとを得た。
【0219】
(考察)
本試験に関与した極く限られた数の患者は、本試験のデータから導き出される結果の統計的信頼度を限定的にする。しかし、本データは先行試験と基本的に一致する。
【0220】
先行試験において認められるように、蓄積作用の証拠はなかった。12週間の投与後のPKパラメータは、ベースラインでの第1日におけるPKパラメータに酷似していた。
【0221】
Tmaxは用量から独立しており、すべての用量及び時期由来の全体的平均は0.34時間であった(srd=0.21時間)。
【0222】
Cmax及びAUC値は用量と共に増加した。平均化データにおいてCmax値とAUVC値との大まかな用量関係がある。
【0223】
(実施例9 腎性骨ジストロフィーの処置)
末期腎疾患は腎性骨ジストロフィー(ROD)(病因の詳細については、Primer on Metabolic Bone Diseases and Disorders of Mineral Metabolism 第74章を参照されたい)として知られている骨疾患と必ず関連している。RODは、高循環濃度のPTH(二次性副甲状腺機能亢進症)及び過活性骨組織を特徴とする高回転型にて存在しうる。この病状は、骨痛、筋力低下、骨外性石灰化及び変形並びに小児における発育遅延と関連している場合が多い。これらの障害を処置するのにPTH濃度の低下が必要であると考えられている。無形成骨症としても知られている低回転型の疾患は、正常或いは低循環濃度のPTHを特徴とし、二次性副甲状腺機能亢進症を効果的に制御するための治療、例えば、ビタミンDステロール、カルシウムベースのリン酸結合剤及びカルシウム模倣薬の使用増加に起因し、発現率が上昇している。組織学的に、その骨表面は骨芽細胞活性がほとんど或いは全くない休眠状態にある。この組織学的状態の臨床的帰結は、骨折及び思春期前小児における発育遅延のリスク増大を含む。
【0224】
現在、無形成骨症は処置が困難である。副甲状腺ホルモン濃度を低下させることが無形成症をもたらす治療の重要な目標の1つであるため、副甲状腺ホルモンの使用は禁忌である。高カルシウム血症は現行の治療法に頻発する合併症であり、これは外因性PTHの使用により増悪しうる。従って、この背景において正常レベルの骨形成活性の回復は達成困難であり、満たされていない有効な治療法の必要性がある。環化又は直鎖状PTH(1−31)類似体で例示されるが、他の環状及び直鎖状のより小さいサイズの類似体並びにPTHrPの類似体も含むPTH受容体のアゴニストは、骨形成を増大させることが示されているが、他のPTH断片及び天然ホルモンに関して認められる骨吸収を刺激する傾向を有さない。このタイプのPTH受容体アゴニストは骨芽細胞機能及び骨形成を刺激し、従って、高カルシウム血症のリスクの悪化なしに無形成骨症を有効に処置することができうる。低用量のこれらの作用物質の使用は、最小限の骨吸収刺激活性で正常な骨芽細胞活性の回復を付与し、無形成骨症の予防及び処置に特に有効となりうる。このタイプのPTH受容体アゴニストが、カルシウム模倣薬、ビタミンDステロール或いは無形成骨症の発症及び/又は重症度を増大させることが知られている他の薬剤と併用され、この発症又は増悪を阻止する具体的な処置シナリオが作成されうる。
【0225】
PTH受容体アゴニストは無形成骨症の発症を予防するため、無形成骨症を発症するリスクが高い透析患者において用いられうる。上述のタイプのPTH受容体アゴニストは、無形成骨症に起因する骨折の特に高いリスクを有する骨粗鬆症及び腎疾患患者を処置するのにも用いられうる。
【0226】
(実施例10 ラット発癌性試験)
従来技術のPTHsは、2年コースにわたって投与されると、動物において骨肉腫を生じさせる。Ostabolin−C(商標)及びPTH 1−30を含む本発明のPTHペプチドを、0.5,5,30及び50μg/kg/日の用量にて104週間、ラットに皮下投与する。被験物品を皮下投与する。投与後の腫瘍の発現率及び形態の分析は、2年コースにわたる本発明のPTHペプチドの投与が、同様の期間の従来技術のPTHペプチドの投与と比べ、より低い発現率の骨肉腫を生じさせうることを示しうる。この相違は、異なるアミノ酸配列及び/又はPTH分子によって活性化される異なるシグナル伝達経路に起因しうる。
【0227】
(実施例11 OSTABOLIN−CとFORTEOとの比較)
下記の表は、Dealら(2005)J.Bone Min.Res.20,1905−1991頁に由来するOstabolin−CとForteoとのデータの比較を示す。下記に示すように、Ostabolin−C 30μgによる骨吸収刺激は、LS(腰椎)−BMDに対する同様の作用にかかわらず、Forteo 20μgの予想される作用の約50%である。血清カルシウム及び高カルシウム血症の発現率に対するOstabolin−C 30μgの作用は、共に低下している。骨形成及びBMDに対するOstabolin−C 45μgの作用は、骨吸収及びカルシウムに対する同様の作用にかかわらず、Forteo 20μgの作用より大きい。Ostabolin−C 30μg及び45μg用量は共に、Forteoと比べて向上した治療域を有する。これらの結果を図15,16及び17にも示す。
【0228】
【表7】

1 LS−BMD Tスコア<−2.5のサブセット由来データ
2 Dealら(2005)J.Bone Min.Res.20,1905−1991頁のグラフ化データから推定。
【0229】
(実施例12 患者の体重に基づいて投与される用量による副作用の分析)
μg/kg暴露がOstabolin−Cの作用を分析する有効な方法であることを確認するため、累積応答及び副作用プロファイルを評価した。Ostabolin−C暴露を増大させ、腰椎BMDの3%以上の変化を達成した患者の割合を見ることにより、累積応答を分析した。この分析は、個々の患者ベースでのOstabolin−C暴露の作用の評価が、μg/kg暴露の増大に基づいて形成した用量群由来の線形回帰分析と同様のパターンをたどることを示す(腰椎に関する図23〜25参照)。頭痛、悪心及び高カルシウム血症に対する、図31,32に示す累積発現率分析に示されるように、副作用プロファイルについても同様の傾向が示された。概して、暴露増大は副作用及び高カルシウム血症のより高い発現率と関連していた。
【0230】
より高い副作用率と暴露増大との関連と合わせた有効性エンドポイントの線形回帰分析は、Ostabolin−Cへの暴露が、コホート全体への1日1回投与によって生じうる範囲より狭い範囲に維持されうる場合、観察される臨床プロファイルは優れうるという可能性をもたらした。そのような方法は、低暴露を排除することによって低有効性反応を減少させ、また、高暴露を排除することによって無用或いは過度の反応を減少させうる。
【0231】
(実施例13 用量最適化−体重カットオフによる2つの用量強度)
実施例5において述べたように、Ostabolin−Cの皮下用製剤の第II相試験由来の4カ月データの分析は、高用量のOstabolin−Cが、特に、股関節においてForteoより高い有効性を有するが、ある程度の高カルシウム血症も示すことを明示している。実施例5由来のデータは、低用量のOstabolin−CがForteoと同様の有効性を有し、且つ高カルシウム血症を生じさせないことも示している。これらの結果に基づき、本発明者らは、第II相の高用量及び低用量の両方の好ましい臨床所見を併せ持ち、優れた有効性を有するとともに忍容性が高い用量となる用量を同定するため、分析を行った。
【0232】
試験集団における用量暴露の範囲を狭める1つの方法は、単一体重カットオフによる2つの用量強度を用いることである(即ち、カットオフ未満の体重がある患者は全員、低用量(30μg)を受け、一方、体重カットオフを上回る患者は全員、高用量(45μg)を受ける)。この用量最適化方法のOstabolin−C暴露に対する影響を図33〜36に示す。
【0233】
下記に示す表に認められる実際の単回用量暴露分布と対照的に、68kgでの体重カットオフの作用は30及び45μg用量群における暴露の拡大を低下させる。
【0234】
【表8】

本試験の30及び45μgコホート由来の実際のデータを用いてサブグループ分析を行うことにより、用量最適化方法の効果を評価した(即ち、30μg用量群由来の体重カットオフ未満の患者全員と、45μg用量群由来の体重カットオフ超の患者全員とを組み合わせることによる新たなサブグループの編成。下記の表に示す)。
【0235】
第II相臨床試験に参加した患者から様々な新規サブグループを編成した。第II相由来の群は上記に示され、各群は、7.5μg,15μg,30μg,45μg又はプラセボのいずれかの単回用量を受けた。患者の体重に基づいて30μg及び45μg用量群を再編成し、100を超える新規サブグループを編成した。互いに比較的近い用量から新規サブグループを編成するこの手法は、第II相試験を行う新規の方法である。
【0236】
当初、30又は45μgを投与された105名の患者につき、0.5kg単位の複数の体重カットオフを用いることにより、新たな群を編成した。例えば、1つの新たな群は59kgにて体重カットオフを有し、つまり、当初の低用量(30μg)群由来の体重59kg未満の全患者と、当初の高用量(45μg)群由来の体重59kg超の全患者とが新たなコホートを形成したということである。この新規コホートは用量/59kgの体重カットオフを表し、体重59kg未満の患者は低用量(30μg)を受け、体重59kg超の患者は高用量(45μg)を受ける群を示す。68kgの体重カットオフを用いて別例を示すことができる。そのような群は、体重68kg未満であって当初低用量(30μg)を受けた患者全員と、体重68kg超であって当初高用量(45μg)を受けた患者全員とを含みうる。この方法を用いることにより、用量/0.5kg単位の体重カットオフを変えることによって100超の別個のコホートを編成した。用量/体重カットオフとして68kg及び59kgを用いて、これらの新規用量/体重カットオフコホートから作成したデータの概要を下記の表に示す。
【0237】
【表9−1】

【0238】
【表9−2】

上記の表は、2つの用量/体重カットオフ(より多くの患者がより高用量を受けるため、より高い暴露プロファイルを生じさせる59kgと、より多くの患者がより低用量を受ける68kg)で得られた実際の臨床プロファイルを示す。該表に示すプロファイルは、これら2つのカットオフが30μgと45μgとの中間臨床プロファイルを生じさせることを示す。単純なサブグループ分析に関する1つの問題点は、少数の事象を有するエンドポイントが、これらの事象の1つが一方の体重カットオフから他方の体重カットオフに移ると、発現率の大幅な変化のため、観察プロファイルを歪めうることである。従って、本試験における最低体重患者(全員が高用量を受けるため、45μgプロファイルに対応する)から開始し、0.5kg単位で100kg(全員が低用量を受けるため、30μgプロファイルに対応する)を経てカットオフを増大させていった30及び45μg用量群由来のデータに、用量/体重カットオフ方法を体系的に適用した。このようにして得られた複数のカットオフプロファイルは、グラフ化されると、高カルシウム血症に対する作用に示されるように、個々の事象の作用を取り除くことができる。次に、図37〜40に示すように、臨床プロファイルに対する体重カットオフの作用をモデル化し、個々のデータポイントの歪曲作用を排除することができる。この手法を本試験の一次及び二次エンドポイントに適用した。
【0239】
この分析からいくつかの興味深い、予想外の結果を導き出すことができる。まず、図41〜43,49〜50に示すように、バイオマーカー(形成と吸収の両方)の変化が、60kgと70kgとの間の体重カットオフの変化に対して感受性が高いことである。
【0240】
これらの変化は同時発生的であるように思われるが、P1NP/CTx比もこのカットオフ範囲において著明なシフトを示し(図41〜43,49〜50参照)、既に確定している低用量での骨形成(P1NP)作用を示す。高カルシウム血症の発現率及び血清カルシウムの変化もこのカットオフ範囲において大幅な増大を示し、臨床プロファイルにおいて骨吸収の刺激と高カルシウム血症の発現との関連性を更に強固なものとする。
【0241】
異なる臨床的変数のモデル化曲線を比較することにより、特定の体重カットオフを投薬レジメンに適用した場合、Ostabolin−Cが臨床パラメータに差別的に作用するか否かを確定することが可能である。図44〜47,51に示すように、高カルシウム血症の発現率及び腰椎BMD応答者比の変化に関して、また、血清カルシウムの変化と腰椎BMDの変化との間にて言及するように、2つの異なる臨床的変数のS字形プロットが重なり合わない場合、差別的作用を推測することができる。これらの比較は、約68kgでのカットオフが血清カルシウム代謝に対する最小の影響にて最大のBMD有益性を付与することを示す。
【0242】
各部位における変化の大きさも異なるため、BMD応答者の定義の選択は異なるBMD部位で異なる。アクティブに処置された患者がBMD変化の全レベルにてプラセボより大きいBMD変化を有することを示した別個の分析に基づき、BMD「応答」の異なる定義を評価した(図46〜48)。
【0243】
従って、各BMD比に対してほぼ同数の応答者を生じさせた、腰椎、大腿骨頸及び全股関節BMDの応答定義を選択した(腰椎BMDでは3%以上、全股関節及び大腿骨頸BMDでは0%以上)。3つの異なるBMDパラメータのモデル化データの比較は、腰椎BMDと比べ、全股関節及び大腿骨頸BMDに作用するためには、漸進的に高い用量の暴露が必要であることを示す。これにより、治療を患者の個々のニーズに合うようにすることができる(図48参照)。
【0244】
このモデル化の重要な有益性は、個々の事象の作用が排除されるため、特定の体重カットオフ/用量暴露域に対する臨床プロファイルを高精度で提示することが可能であるということである。68kgカットオフに対して予想される高カルシウム血症及び腰椎BMDプロファイルを下記の表に示し、これは、モデル化した高カルシウム血症及び腰椎BMDの変化並びに68kg体重カットオフに対する実際の第II相データを比較したものである。複数の用量カットオフ及び異なる用量を用いることにより、更に狭い暴露域の作用をモデル化することも可能である。
【0245】
【表10】

Ostabolin−Cへのμg/kg暴露の作用の分析は、優れた有効性反応を付与するとともに有害作用の発現を最小にする用量最適化に対する簡易であるが強力な手法をもたらした。この投薬手法が、男性及び女性における骨粗鬆症の処置に対し、PTH類似体の使用への更なる柔軟性及び優れた臨床プロファイルを付与することが期待される。
【0246】
Ostabolin−Cについて上記に示したこれらの用量最適化の有益性は他の治療剤にも適用され、それらには、抗スクレロスチンMab、Wntシグナル伝達経路の負の調節因子の阻害剤、アクチビン受容体作動薬、PTH、完全長とその断片、PTH類似体、PTHrP及びPTHrP類似体を含む、その骨形成作用がPTHのその受容体に対する作用により媒介される治療剤並びに内在性PTH産生を刺激するカルシウム受容体拮抗薬、例えば、PTH、完全長とその断片、PTH類似体、PTHrP及びその類似体を含む、PTH受容体のアゴニストとして作用するものが含まれる。
【0247】
(実施例14 OSTABOLIN−C(商標)吸入パウダー第I相臨床試験)
閉経後女性におけるMTDを確定し、そのPKプロファイルを第II相皮下投与量と比較し、且つcAMP及び骨代謝回転のバイオマーカーに関する生物活性を評価するため、Ostabolin−C(商標)吸入パウダー(OCIP)を用いて第I相臨床試験を実施した。フォーカスグループでは骨粗鬆症患者に広く受け入れられているNektar T−326ドライパウダー吸入器(DPI)を用いてOCIPを投与した。漸増耐性用量を用いた。各コホートは無作為化され、アクティブ患者6名及びプラセボ患者2名を含んだ。患者は40歳超の閉経後健常女性であり、骨粗鬆症や他の骨疾患の既知の既往歴を有していなかった。
【0248】
臨床検査室において一次測定を行い、患者調査を行い、患者は如何なる有害作用についても述べることができた。加えて、ホルター心電図(EKG)及び肺活量測定法を用いて患者のバイタルサインを測定した。薬物動態、例えば、血中Ostabolin−C濃度、単回投与及び7日間の連日投与後のPKパラメータも測定した。P1NP、オステオカルシン、NTx、CTx及び尿中サイクリックAMPを含む骨マーカーの変化についても薬物動態をモニタリングした。
【0249】
本試験の全体的デザインは以下の通りである。
【0250】
【表11】

下記の表は投薬概要を示す。
【0251】
【表12】

下記の表は、OCIPの投与が、Ostabolin−Cを皮下投与した際に得られるPKパラメータと同様のPKパラメータを生じさせることを示す。
【0252】
【表13】

表示用量のOCIPに正規化されたAUC及びCmax値では、0.3mg〜1.0mg(4%)値を用いた;SCは30及び45ug値を用いた。
**Tmax及びT1/2は用量非依存的−患者全員を平均化
下記の表は、OCIPの投与第1日目と第7日目とにおけるPKパラメータが酷似していることを示す。
【0253】
【表14】

0.6mg用量のOCIPに正規化されたAUC及びCmax値では、0.3mg〜0.6mg(4%)値を用いた。
**Tmax及びT1/2は用量非依存的−患者全員を平均化
図55〜60は、OCIP投与で得られる薬物動態パラメータが、皮下投与で得られる薬物動態パラメータと同様であることを示す。該図は、OCIPのPKプロファイルが用量比例的であることも示す。これらの図は次の測定を含む:治療AUCレベル、治療Cmaxレベル、全体的なCmax及びtmax,cmax,4%OCIP製剤に対するAUC(0−4)並びに4%ocip製剤のpkプロファイル。
【0254】
概して、PK試験では、第II相試験では4%製剤を利用し、治療域が用量比例的であり、蓄積作用を伴わない単回及び反復投与になりうることが確認された。
【0255】
図55〜60のデータは、cAMP刺激を反復投与で維持することができ、また、骨形成バイオマーカーが肺への送達とともに増大するため、Ostabolin−Cの肺送達が生物活性的であることを示す。加えて、第1日目のPKパラメータはcAMPの変化を予測させる。該図は、第1日目における治療域内の尿中cAMPの増加も示し、それぞれ、第1日目、7日目、28日目における反復投与で一貫したcAMP反応があり、また、第1日目においてcAMPの生成がAUC及びCmaxと相関することを示す。
【0256】
該図は、P1NPレベルが28日目までにベースラインと比べ、25〜最大100%に増大し、また、オステオカルシンのレベルが28日目までにベースラインと比べ、25〜最大100%に増大したことも示す。該図はP1NPの増加がAUCと相関することも示す。該図はCTxの変化パーセントを示すことにより、OCIP投与が骨吸収マーカーに対する作用を有さなかったことも示す。従って、該データは、OCIPの投与により、強固な尿中cAMP及び骨バイオマーカー反応があることを示す。従って、特に、OCIP cAMP用量反応が皮下反応を上回り、バイオマーカー反応がcAMP反応と相関し、また、バイオマーカー反応が一貫しており、臨床的に関連するため、皮下投与と同程度の第II相での有効性となる可能性が高い。
【0257】
(有害事象プロファイル)
上述のようにOCIPを投与した患者の予備結果は、95%超が軽度であり、また、肺や心血管に関する有害事象(AE)がなかったという点において、AEプロファイルがPTHクラスの作用と一致することを示した。更に、重度の有害作用がなく、肺活量測定パラメータやバイタルサインへの影響がなかった。下記の表は有害事象の分布を示す。
【0258】
【表15】

下記の表における有害事象の概要は、大部分(95%超)の有害事象が軽度であったことを示す。重症とみなされる有害事象はなかった。
【0259】
【表16】

下記の表は、頭痛、悪心及び嘔吐を含む、体験した有害事象の概要を示す。
【0260】
【表17】

全般的に、OCIPは第II相の準備ができており、許容可能なばらつきを含む適切な過渡的PKプロファイルと、治療域を確定した治療有益性を予測する生物活性を有する。更に、皮下(SC)用製剤との同等性があり、後期相での奏効確率が高い。
【0261】
(実施例15 製剤)
安定な製剤を開発するためのOstabolin−C溶液に関する製剤スクリーニング試験について詳述する。従前の製剤はpH7.0超にて酸化及び脱アミドを受ける。抗酸化物質であるメチオニン又はリポ酸を含む、エタノール/水又はプロピレン/水系の混合物を評価し、それらの安定性を評価した。
【0262】
メチオニンを含む2つのエタノール/水製剤について検討した。第一のセットの試験では、pH7.0超の40%エタノール/60%水の混合物中のOstabolin−C溶液(hPTH #1)の安定性について検討した。酸化を制御するため、該製剤中に1mg/mlのメチオニンを含めた。該薬物及びメチオニンを水中に溶解し、0.1N NaOHでpHを7に調整し、次に、エタノールを加え、エタノールと水との目標比率を得た。Ostabolin−Cは40%エタノール/60%水系において優れた安定性を示した。hPTH#1の安定性データを下記の表に提示する。
【0263】
(pH7での1mg/mLのメチオニンを含む40%エタノール/水中のOstabolin−Cの溶液安定性(バッチ hPTH#1))
【0264】
【表18】

Ostabolin−Cは40%エタノール/60%水系において優れた安定性を示した。0.56〜0.59及び0.62〜0.65のRRTにて溶出する分解ピークは、2つの酸化的分解ピークである。それらは初期サンプルに存在し、40℃で保存した106日間のサンプルを除き、すべての条件下で安定性試験時に有意には変化しなかった。これらのデータはエタノールが該製剤を安定化していることを示唆する。他に唯一認められた分解物(RRT 0.90)は、40℃で15,45及び106日間の保存にて増加している加水分解産物である。加水分解産物は45日間/25℃で認められず、該製剤が強固であって、冷蔵条件下で2年間の保存寿命を予想しうることが示唆される。
【0265】
別の手法は、ペプチドの構造を更に安定化し、従って、安定性を高めるため、ジオール(プロピレングリコール)の使用について検討することであった。加えて、抗酸化物質であるリポ酸を含めた。リポ酸を水中に分散させ、pHを8.0に調整し、次に、薬物を加えることにより、試料溶液を調製した。溶液のpHをpH7.5に調整し、プロピレングリコールを加え、60%プロピレングリコール/40%水の最終溶液を得た。安定性データを下記の表に提示する。
【0266】
(pH7.5での5mg/mlのリポ酸を含む60%プロピレングリコール/40%水中のOstabolin−Cの安定性(hPTH#2))
【0267】
【表19】

上記溶剤系におけるOstabolin−Cの安定性は極めて優れている。106日後の25℃及び5℃保存試料において有意な分解物ピークは見出されなかった。本発明者らが認めた唯一の分解は40℃での加水分解産物であった。106日後の25℃保存試料及び5℃試料においてある程度の効力低下を認めた。しかし、分解は認められず、この効力低下はバイアルへの薬物の付着に起因しうる。hPTH#1もhPTH#2も優れた安定性を示し、両製剤とも冷蔵保存下で2年間安定するであろう。
【0268】
(実施例16 安定性の増強)
これまでに行った安定性試験は、プロピレングリコール/水又はエタノール/水のいずれかの混合物により、Ostabolin−Cの冷蔵庫内安定製剤を得ることが可能であることを示す。他の潜在的安定性調整剤の添加を判定する。hPTHsが保存中に酸化を受けやすいことは周知である。メチオニンは潜在的抗酸化物質であってhPTHの安定性を向上させることが示されている。更に、ポリオールはペプチド及び蛋白質製剤を安定化する潜在力を有することは周知である。従前、スクロースのhPTH(1−34)の安定性に対する効果について検討した。pH5.5での最大1Mの濃度のスクロースは、hPTH(1−34)の脱アミド及び酸化の割合を低下させることが見出された。
【0269】
緩衝剤タイプも安定性に対する作用を有しうる。目的は、より生理的に関連するpH(pH7.5)にてこれらの溶液を検討することであった。従前、モデル化合物では、pH7超に対し、トリス緩衝液が対応するリン酸緩衝液よりはるかに低い脱アミド速度定数を有することが示された。最後に、これは生理学的イオン強度をより示すため、9mg/mlのNaClの添加作用について検討した。pH7.5での60%プロピレングリコール及び40%水からなる溶剤系におけるメチオニン、トリス緩衝液、スクロース及びNaClの存在下でのOstabolin−C溶液製剤に関する安定性データを検討する。
製剤の説明:
形態#1:pHをHClで7.5に調整した、60%プロピレングリコール及び40%水中の0.05Mトリス緩衝液中の250μg/mlのOstabolin−C
形態#2:pHをHClで7.5に調整した、60%プロピレングリコール及び40%水及び5mg/mlのメチオニン中の0.05Mトリス緩衝液中の250μg/mlのOstabolin−C
形態#3:pHをHClで7.5に調整した、60%プロピレングリコール及び40%水、5mg/mlのメチオニン及び200mg/mlのスクロース中の0.05Mトリス緩衝液中の250μg/mlのOstabolin−C
形態#4:pHをHClで7.5に調整した、60%プロピレングリコール及び40%水、5mg/mlのメチオニン、200mg/mlのスクロース及び9mg/mlのNaCl中の0.05Mトリス緩衝液中の250μg/mlのOstabolin−C
1リットル容量フラスコに600mlのプロピレングリコールを加えた。ミリQ水を加えることにより、該フラスコの内容物を1リットルにした。得られた溶液は60%プロピレングリコール及び40%水である。これを原液として用いて、不活性成分を加えて溶解し、薬物を加える前に得られた溶液のpHを約8.0に調整することにより、各バッチの製剤を調製した。薬物を加え、0.1N HClでpHを7.5に再調整した。
【0270】
安定性試験のため、全試験バッチを40℃,25°C及び5°Cで配置した。早期の安定性試験から、Ostabolin−Cの主要な分解ピークは、3つの酸化ピークOX1(RRT約0.59)、OX2(RRT約0.65)、OX3(RRT約0.7)、2つの加水分解ピーク(RRT約0.90(HYD1)及び0.98(HYD2))、3つの後期溶出ピーク(RRT1.01〜1.25;DEG1,DEG2及びDEG3)及び追加のピーク(RRT>1.4、勾配ウォッシュアウト時間の45分後に溶出;勾配溶出ピークGEP(#)として識別)であることが認められた。括弧内の番号は勾配の変化に伴って溶出するピークの数を示す。安定性分析時に認めた分解ピークを上記に明示した用語を用いて提示する。
【0271】
やはり、薬物はグラスに付着するように思われ、従って、100%の薬物は回収されない。分解ピーク面積の増大がなく、経時的に効力の低下が認められる。40℃及び25℃での前述の製剤の4週間の安定が完了し、下記の表にデータの概要を示す。
【0272】
【表20】

4つの被験製剤はすべて、40℃で4週間の保存後、5.3〜8.3面積パーセントの範囲のHYD1を示した。加水分解はスクロース及び塩化ナトリウムを含む製剤(形態#4)において最も低く、塩化ナトリウムの存在が加水分解を遅延或いは鈍化させることが示唆される。しかし、Ostabolinの効力は同一保存期間で65〜72の範囲であり、製剤により可変的な薬物の回収が示唆される。上記の表に示すように、全製剤が25℃で4週間の保存にて分解をほとんど示さなかった。加水分解は依然としてスクロース及びNaClを含む製剤(形態#4)において最も低い。他の製剤ははるかに高いレベルの加水分解を有し(約1面積%)、加水分解が塩化ナトリウムの存在又は反応媒体のイオン強度に影響されることが示唆される。
【0273】
酸化的分解に関しては、製剤#1〜4は高濃度(5mg/ml)の抗酸化物質メチオニンの存在にかかわらず、少パーセントの酸化的分解を示した。しかし、製剤中の抗酸化物質メチオニンの付加により、酸化的分解は50%鈍化した(形態#1対形態#2〜4)。興味深いことに、抗酸化物質を含む製剤において当初の3週間、酸化的分解は見出されなかった。しかし、40℃試料の4週間のデータの安定性分析では、全製剤が3つのすべての酸化分解物の存在を示すことが示された。
【0274】
25℃/4週間試料の安定性分析では、製剤#1〜2における酸化的分解が示された。加えて、2つの酸化的分解ピークのみが認められた。加水分解及び酸化的分解に加え、表においてDEG1として提示される後期溶出ピークも認められた。この分解ピークの面積パーセントは、40℃で4週間の保存期間にわたって1〜2%の幅があり、同一条件下での25℃では認められなかった。
【0275】
【表21−1】

【0276】
【表21−2】

上記試験に加え、スクロース(200mg/ml)及び塩化ナトリウム(9mg/ml)を加え、或いは加えない、pH調整を行わない水中Ostabolin、それぞれ、製剤#A,#Bの安定性を調べた。これらの製剤のpH測定値は約5.6である。
【0277】
40℃又は25℃での1週間の安定性データは、対照水試料(形態#A)に対して重度の分解を示した。主な分解産物は、酸化分解物及び酸化分解物の前に溶出している他の分解産物である。pH7.5系での安定性と異なり、RRT>1.0にてピークは認められなかった。スクロース及び塩化ナトリウムの存在下での同じ水製剤(形態#B)の安定性は有意に向上した。酸化分解物レベルは形態#Aと比べて有意に低下している。しかし、複数の後期溶出ピークが認められた。下記の表に安定性データの概要を示す。
【0278】
【表22】

これらのデータは、全体としてプロピレングリコール/水混合物がOstabolin−C(形態#A対形態#1)の溶液安定性を有意に高めることを示す。スクロース及びNaClの付加は更なる安定性を付与する(形態#1対形態#4及び形態#A対形態#B)。
【0279】
(実施例17 上記製剤の薬物動態プロファイル)
Ostabolin−Cの種々の製剤の以下の血漿薬物動態プロファイルを検討・比較した:ラットへの皮下、筋肉内及び静脈内投与(臨床製剤)、更に、皮下投与(前臨床製剤)を含む皮下投与(新規製剤)。以下は使用製剤の詳細を示す。
【0280】
次のように製剤を1回のみ調製した:バルク凍結乾燥ペプチドを、1:1の比率で0.01M酢酸(Fisher Scientific社、英国ラフバラ(Loughborough)から供与)中に溶解させ、投薬バイアルに再分注し、急速冷凍した(約−70℃)。該バイアルを−20℃未満で凍結乾燥し、必要とするまで凍結保存した。注射用の凍結乾燥アリコートを注射用の水(Animalcare Ltd、英国ヨークから供与)で再構成した。該ペプチドを適量の精製水中に溶解させ、約2〜3mg/mLの濃度にした。リン酸緩衝食塩水(pH7.4)を加え、最終必要濃度を得た(pH約7.2)。該ペプチドが完全に溶解するように、ふたをしたバイアルを完全に混合した。用量調製の全体にわたって無菌法及びガラスバイアルを用いた。用量を滅菌濾過しなかった。臨床製剤(50mg/mLのマンニトール、0.166mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、0.4mg/mLの氷酢酸(pH4.5))。計算した量のマンニトール、酢酸ナトリウム三水和物及び氷酢酸を秤量し、次に、適正量の注射用の水中に溶解させた。被験物品を秤量し、溶液に加え、攪拌して溶解させた。初期pHに応じて、0.1N NaOH又はHCl(Covance社、ハロゲート(Harrogate)から供与)でpHを4.5に調整した。水を加えて必要量を得た。
【0281】
(新規製剤1(40%プロピレングリコール))
計算した量のリポ酸を秤量し、好適な容器に移し、次に、注射用の水に分散させた。1N NaOH(Merck Ltdの一事業部であるBDH Laboratory Supplies、英国プール(Poole)から供与)でpHを7.7に調整した。被験物品を秤量し、加え、攪拌して溶解させた。1N NaOHでpHを7.5に調整した。プロピレングリコールを加えて適正量を得た。記録した最終pHは6.6であった。
【0282】
(新規製剤2(水中40%エタノール(pH7.5)))
計算した量のDL‐メチオニンを秤量し、好適な容器に移し、注射用の水に分散させた。被験物品を秤量し、溶液に加えた。0.1N NaOHでpHを7.5に調整した。エタノールを加えて必要量を作製した。
【0283】
以下の用量レベルを選択した。
【0284】
【表23】

処置1=標準製剤(酸性化食塩水)
処置2=臨床製剤(50mg/mLのマンニトール、0.166mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、0.4mg/mLの氷酢酸(pH4.5))
処置3=新規製剤1(40%プロピレングリコール)
処置4=新規製剤2(水中40%エタノール(pH7.5))
対照=臨床製剤(ビヒクル)
処置5=臨床製剤
処置6=臨床製剤
【0285】
【表24】

対照2=臨床製剤(ビヒクル)
処置7=臨床製剤
処置8=臨床製剤
標準製剤と比べ、被験製剤におけるOstabolin−Cの相対バイオアベイラビリティは著明に高く、臨床製剤、新規製剤2、新規製剤1において、それぞれ、1.5,27.1,37.7倍高かった。臨床製剤として筋肉内投与したOstabolin−Cの相対バイオアベイラビリティは、全皮下(SC)投与製剤より著明に高く、標準製剤より約200倍高く、新規製剤1より5倍高かった。Ostabolin−Cは筋肉内(IM)対照動物(第八群)由来の血漿試料において定量化できなかった。
【0286】
雌ラットへの200μg/kgでのOstabolin−Cの約4分間の単回静注(IV)後、Ostabolin−Cの定量可能な最大血漿濃度は、注射終了後5分のtmaxにて生じた。しかし、注射終了後2分時点の血漿濃度は定量されず、610000pg/mL超であり、真のCmaxはこの早期時点にて生じたことが示唆される。
【0287】
4つの異なる製剤(標準、臨床、新規製剤1及び2)としてのOstabolin−Cの単回皮下(SC)投与後、血漿薬物濃度は速やかに上昇し、全製剤について投与後5分の初期血液サンプリング時間にて最大レベルに達した。臨床製剤の単回筋肉内(IM)投与は、わずかに遅い投与後10分のtmaxとなった。
【0288】
Ostabolin−Cの総血漿クリアランス(CL)は45.4mL/分/kgであり、肝血流に類似している。分布容積(VzとVss)は同様であり、それぞれ、0.471L/kg,0.479L/kgであり、Ostabolin−Cの広範な分布が示唆された。
【0289】
静脈内(IV)投与後のOstabolin−Cの毒物動態パラメータを下記に提示する。
【0290】
【表25】

処置6=静脈内(IV)臨床製剤
皮下(SC)及び筋肉内(IM)投与後のOstabolin−Cの薬物動態パラメータを下記に提示する。
【0291】
【表26】

処置1=皮下(SC)標準製剤(酸性化食塩水)
処置2=皮下(SC)臨床製剤(50mg/mLのマンニトール、0.166mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、0.4mg/mLの氷酢酸(pH4.5))
処置3=皮下(SC)新規製剤1(40%プロピレングリコール)
処置4=皮下(SC)新規製剤2(水中40%エタノール(pH7.5))
処置5=筋肉内(IM)臨床製剤
剖検にて新規製剤2を投与された動物(第四群)の一部の皮下注射部位において発赤又は赤色部分が記録され、概して、これは顕微鏡的に認められた所見と相関した。概して、皮下投与経路により処置された動物の顕微鏡所見は、頻度が低く、重要性が低かった。鬱血/出血の顕微鏡所見は注射時のわずかな機械的損傷と一致していた。筋肉内投与経路により処置された動物(対照及び臨床製剤、第五及び六群)において、微小レベルの筋炎/ミオパシーが記録された。これは注射に起因する軽度の機械的損傷と一致し、被験物品に関連するとは考えられない。
【0292】
4つの異なる製剤(標準、臨床、新規製剤1及び2)としてのOstabolin−Cの単回皮下(SC)投与後、血漿薬物濃度は速やかに上昇し、全製剤について投与後5分の初期血液サンプリング時間にて最大レベルに達した。臨床製剤の単回筋肉内(IM)投与は、わずかに遅い投与後10分のtmaxとなった。
【0293】
皮下(SC)及び筋肉内(IM)投与後、Ostabolin−Cの血漿濃度は、Cmax到達後、概して二相的に低下するように思われた。末端排泄半減期は、皮下(SC)投与後の臨床製剤及び新規製剤2に対して暫定的に求めることができたのみであり、それぞれ、42.4分、9.1分であった。該臨床製剤のt1/2の測定は、1半減期未満の持続時間にわたって測定したため、確固としたものであるとは考えられない。
【0294】
可能な場合に皮下投与製剤について算出した見かけのクリアランス(CL/F)及び分布容積(Vz/F)は製剤依存的であり、新規製剤2及び臨床製剤に対し、それぞれ、3850mL/分/kg,36600mL/分/kg及び50.6L/kg,2240L/kgであった。
【0295】
各皮下(SC)製剤の絶対バイオアベイラビリティは極く低く(2%未満)、標準製剤で最も低く(Fabs=0.04%)、新規製剤1で最も高かった(Fabs=1.6%)。他の皮下(SC)製剤(新規製剤2及び臨床製剤)は共に約1%のFabsを有していた。対照的に、筋肉内(IM)製剤の絶対バイオアベイラビリティははるかに高く、8.7%であった。
【0296】
標準製剤と比べ、被験製剤におけるOstabolin−Cの相対バイオアベイラビリティは著明に高く、臨床製剤、新規製剤2、新規製剤1において、それぞれ、1.5,27.1,37.7倍高かった。臨床製剤として筋肉内投与したOstabolin−Cの相対バイオアベイラビリティは、全皮下(SC)投与製剤より著明に高く、標準製剤より約200倍高く、新規製剤1より5倍高かった。静脈内(IV)投与後のOstabolin−Cの血漿濃度を図75に示し(処置6)、皮下及び筋肉内Ostabolin−Cの血漿濃度を図76及び77に示す(処置1〜5)。これらの図は新規製剤でのバイオアベイラビリティの上昇を示す。
【0297】
標準、臨床、新規1及び新規2製剤の皮下(SC)投与後のAUC0−tz及びCmax並びに臨床製剤の筋肉内(IM)及び静脈内(IV)投与後のOstabolin−CのAUC0−tz及びCmaxを図70〜74に示す。
全体として、皮下(SC)、筋肉内(IM)及び静脈内(IV)投与経路による雌ラットへの200μg/kgのOstabolin−Cの単回投与後、Ostabolin−Cの最大血漿濃度は全製剤の皮下(SC)投与後5分にて速やかに到達した。Tmaxは臨床製剤の筋肉内(IM)投与後10分にて生じた。算出可能な場合の末端排泄半減期は7.2〜42.4分の範囲であった。
【0298】
皮下(SC)投与後のOstabolin−Cの絶対バイオアベイラビリティは極く低く(2%未満)、標準製剤で最も低く(Fabs=0.04%)、新規製剤1で最も高かった(Fabs=1.6%)。筋肉内(IM)投与後の絶対バイオアベイラビリティは著明に高く、8.7%であった。
【0299】
本発明について、特に、その好ましい実施形態に関して示し、説明したが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の種々の変更が成されうることを当業者は理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における骨欠乏障害を処置するとともに、副甲状腺ホルモンの投与と関連する副作用を低減する方法であって、患者に対する有効量にて狭い治療域を有する副甲状腺ホルモンペプチド類似体又は他のペプチドを患者に投与するステップを含み、前記患者に対する有効量が患者の体重に基づいて決定され、異なる体重を示す患者に対して複数の有効用量があり、更に、前記有効量が所定の体重カットオフに基づいて算出される方法。
【請求項2】
前記PTHペプチド類似体が、PTH 1−84,PTH 1−34,PTH−(1−31)NH;PTH−(1−30)NH;PTH−(1−29)NH;PTH−(1−28)NH;Leu27PTH−(1−31)NH;Leu27PTH−(1−30)NH;Leu27PTH−(1−29)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH Ostabolin−C(商標);Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−34)NH;Leu27シクロ(Lys26−Asp30)PTH−(1−34)NH;シクロ(Lys27−Asp30)PTH−(1−34)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;Ala27又はNle27又はTyr27又はIle27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−32)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)OH;Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH;Cys22Cys26Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;Cys22Cys26Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH;シクロ(27−30)PTH−(1−31)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH;シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH;シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−29)NH;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−28)NH;Glu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−28)NH;並びにGlu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−31)NHからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PTHペプチド類似体が、PTH−(1−31)ペプチド類似体及びPTH−(1−30)ペプチド類似体からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記PTHペプチド類似体がOstabolin−C(商標)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記狭い治療域を有するペプチドが、抗スクレロスチンMab、Wntシグナル伝達経路の負の調節因子の阻害剤、アクチビン受容体作動薬、ホルモン、内在性PTH産生を刺激するカルシウム受容体拮抗薬からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記用量が高用量又は低用量である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記低用量が5〜30μgの範囲にある、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記低用量が30μgである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記高用量が45〜60μgの範囲にある、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記高用量が45μgである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記患者が、体重カットオフを下回る場合、低用量を投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記患者が、体重カットオフを上回る場合、高用量を投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
単一体重カットオフポイントが60〜70kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記単一体重カットオフポイントが68kgである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記低減される望ましくない副作用が、骨吸収、高カルシウム血症、平均血清カルシウム濃度の上昇、頭痛、悪心、背部痛、眩暈、四肢痛、冷感、疲労、軟便、熱感、下腹部痛、注射部位反応、関節痛、注射部位出血、咽喉痛、筋痙攣及び腹痛からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記PTHペプチド類似体が、0.25〜0.75μg/kgの1日用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記PTHペプチド類似体が、0.30〜0.50μg/kgの1日用量で投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記投与が、経口投与、局所投与、肺内投与、経皮(transdermal)投与、鼻腔内投与、経皮(transpercutaneous)投与、非経口注射又は皮下注射である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記投与が肺内投与である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記PTHペプチド類似体が、100μg〜2,000μgの1日吸入用量にて投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記PTHペプチド類似体が、300μg〜800μgの1日吸入用量にて投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記PTHペプチド類似体が、1週吸入用量として前記1日用量の3〜7倍にて投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記有効な薬物動態プロファイルが、
a)2分〜60分の前記PTHペプチド類似体の半減期、
b)30分〜4時間の前記PTHペプチド類似体の暴露時間、
c)2分〜30分の前記PTHペプチド類似体のTmax
d)10〜400pg/mlの前記PTHペプチド類似体のCmax;および
からなる群より選択される薬物動態パラメータを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記有効な薬物動態プロファイルが、2分〜60分の前記PTHペプチド類似体の半減期を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記半減期が15〜30分である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記有効な薬物動態プロファイルが、30分〜4時間の前記PTHペプチド類似体の暴露時間を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記暴露時間が1〜2時間である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記有効な薬物動態プロファイルが、2分〜30分の前記PTHペプチド類似体のTmaxを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記Tmaxが15〜30分である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記有効な薬物動態プロファイルが、10〜400pg/mlの前記PTHペプチド類似体のCmaxを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記Cmaxが50〜200pg/mlである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
患者の体重及び症状の呈示により決定される用量での単位用量形態の治療有効量の副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチド類似体並びに医薬的に許容可能な賦形剤、希釈剤若しくは担体又はそれらの組合せを含む医薬組成物であって、投与されると、有効な薬物動態プロファイル及びアデニル酸シクラーゼ活性の維持を生じさせると同時に、PTHの投与と関連する望ましくない副作用を低減する医薬組成物。
【請求項33】
前記患者が、所定の体重カットオフを上回る体重を有する場合、高用量を投与され、所定の体重カットオフを下回る体重を有する場合、低用量を投与される、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記体重カットオフが60〜80kgである、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記体重カットオフが68kgである、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記低用量が5〜30μgである、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記低用量が30μgである、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記高用量が45〜60μgである、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記高用量が45μgである、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
エタノール及び水を含む、約100〜500μg/mlの濃度のOstabolin−Cを含む医薬水溶液であって、pH6.0〜8.0を有し、滅菌されてヒト患者への非経口投与を行える状態にある医薬水溶液。
【請求項41】
40%エタノール及び60%水を含む、請求項40に記載の溶液。
【請求項42】
緩衝剤と、メチオニン、リポ酸、スクロース及びNaCl並びにそれらの混合物からなる群より選択される安定化剤とを更に含む、請求項40に記載の溶液。
【請求項43】
向上したバイオアベイラビリティを有する、約100〜500ug/mlの濃度のOstabolin−Cを含む医薬水溶液であって、プロピレン及び水を更に含み、pH6.0〜8.0を有し、滅菌されてヒト患者への非経口投与を行える状態にある医薬水溶液。
【請求項44】
緩衝剤と、メチオニン、リポ酸、スクロース及びNaCl並びにそれらの混合物からなる群より選択される安定化剤とを更に含む、請求項43に記載の溶液。
【請求項45】
前記緩衝剤がトリスである、請求項44に記載の溶液。
【請求項46】
前記緩衝剤の濃度が約2mM〜100mMの範囲にある、請求項45に記載の溶液。
【請求項47】
前記緩衝剤の濃度が約5mMである、請求項43に記載の溶液。
【請求項48】
前記Ostabolin−Cの濃度が250ug/mlである、請求項40又は44に記載の医薬溶液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図66】
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【図67】
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【図70】
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【図71】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【図78】
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【公表番号】特表2010−501476(P2010−501476A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522751(P2009−522751)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/010720
【国際公開番号】WO2008/016404
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(508069280)ゼロス セラピューティクス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】