説明

加圧型混練機及びその運転方法

【課題】従来より高負荷条件での混練が行える加圧型混練機及びその運転方法を提供する。
【解決手段】上部に材料を投入する開口を有し傾倒して開口から材料を排出する混合槽20と、混合槽20内に平行に設けられた二本のロータと、材料を加圧する加圧機構40とを備えた加圧型混練機10において、二本のロータから混合槽20の外部において互いに平行な二本の駆動軸27、28がそれぞれ駆動装置12まで延設され、駆動軸28の一が駆動装置12との繋がりを切るためのエアークラッチ34を有し、エアークラッチ34により駆動軸28の一と駆動装置12との繋がりを切ることで他の駆動軸27を中心軸として混合槽20が傾倒することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム等の高粘性材料を加圧下で混練するための加圧型混練機及びその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム等の高粘性材料をバッチ毎に加圧下で混練するための混練機として、主に、図5に示すような密閉式混練機80や図6に示すような加圧型混練機90が用いられている。
【0003】
密閉式混練機80は、混合槽81内(ケーシング内)に設けられた二本のロータ82に、それぞれ減速機を介して直接動力が伝達されることから、高負荷条件(材料の粘性が高い等の条件)においても混練することができる。しかし、密閉式混練機80は、混合槽81が固定されている(傾倒できない)ため、材料は混合槽81の下部に設けられた開口83からしか排出することができない。そのため、下に櫓84を組む等して密閉式混練機80の設置面を高くしなくてはならなかった。また、材料排出後に混合槽内に残っている残材の確認等を行うことが難しく、残材の対応に苦慮していた。
【0004】
一方、加圧型混練機90は、特許文献1記載のように、混合槽91内に設けられたロータ92へ動力を伝達する駆動軸93を中心軸として混合槽91を傾倒できることから、密閉式混練機80のように設置面を高くする必要がなく、また、材料排出後に混合槽91内に残っている残材の確認等も容易である。しかし、加圧型混練機90は、混合槽91を傾倒できるようにするため、混合槽91内に設けられた二本のロータ92に対し、一本の駆動軸93でしか駆動装置96からの動力を伝達することができず、途中にギヤ94を介することで、それぞれのロータ92に動力を伝達している。そのため、密閉式混練機80に比べ加圧型混練機90は、両ロータ92へ伝達されるトルクが小さく、高負荷がかかるときには材料(混合槽91内)を加圧するためのウェイト95の押付け圧を下げる等して対応していた。従って、加圧型混練機90は、密閉式混練機80に比べ材料の混練時間が長くなり、作業効率が悪かった。
【特許文献1】特開平10−58441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、従来より高負荷条件での混練が行える加圧型混練機及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の加圧型混練機は、上部に材料を投入する開口を有し傾倒して該開口から材料を排出する混合槽と、前記混合槽内に平行に設けられた二本のロータと、前記材料を加圧する加圧機構とを備えた加圧型混練機において、二本の前記ロータから前記混合槽の外部において互いに平行な二本の駆動軸がそれぞれ駆動装置まで延設され、前記駆動軸の一が前記駆動装置との繋がりを切るためのクラッチ機構を有し、前記クラッチ機構により前記駆動軸の一と前記駆動装置との繋がりを切ることで他の駆動軸を中心軸として前記混合槽が傾倒することを特徴としている。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の加圧型混練機の運転方法は、上部に材料を投入する開口を有し傾倒して該開口から材料を排出する混合槽と、前記混合槽内に平行に設けられた二本のロータと、前記材料を加圧する加圧機構とを備えた加圧型混練機の運転方法において、前記開口より材料を前記混合槽内に投入した後、前記加圧機構により前記材料を加圧しながら、前記混合槽の外部に設けられた駆動装置にそれぞれ繋がっている二本の駆動軸から伝達される動力により二本の前記ロータが回転することで前記材料を混練し、混練した後、前記駆動軸の一と前記駆動装置との繋がりを切り、他の駆動軸を中心軸として前記混合槽を傾倒させて前記開口から前記材料を排出することを特徴としている。
【0008】
ロータが回転するための駆動力を供給する駆動装置としては、特に限定はされないが、モータだけでもよいし、モータと減速機とを含めたものであってもよい。
【0009】
本発明に用いられるクラッチ機構としては、特に限定はされないが、空気圧によりクラッチを作動させるエアークラッチ、油圧によりクラッチを作動させる油圧クラッチ、電磁力によりクラッチを作動させる電磁クラッチ等が例示できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来より高負荷条件での混練が行える加圧型混練機及びその運転方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上部に材料を投入する開口を有し傾倒して開口から材料を排出する混合槽と、混合槽内に平行に設けられた二本のロータと、材料を加圧する加圧機構とを備えた加圧型混練機において、
二本のロータから混合槽の外部において互いに平行な二本の駆動軸がそれぞれ駆動装置まで延設され、駆動軸の一が駆動装置との繋がりを切るためのエアークラッチを有し、エアークラッチにより駆動軸の一と駆動装置との繋がりを切ることで他の駆動軸を中心軸として混合槽が傾倒することを特徴とする加圧型混練機。
【実施例】
【0012】
図1〜図5に示すように、本発明の実施例の加圧型混練機10は、据付ベース11並びに据付ベース11上に配設された、駆動装置12、混合槽20、加圧機構40及び混合槽20を傾倒する傾倒機構50を有している。
【0013】
混合槽20内に設けられているロータ25、26を駆動する駆動装置12は、駆動モータ13と、駆動モータ13の回転軸14に入力軸16が連結されている減速機15とからなっている。減速機15は、入力軸16から入力された動力を出力する二本の出力軸17、18を並設している。両出力軸17、18は、減速機15内に設けられたギヤの作用により、互いに逆回転で同期するようになっている。また、駆動モータ13及び減速機15はそれぞれ据付ベース11上に固定されている。
【0014】
混合槽20は、投入された材料を内部で混練するための空間を有する槽部21と、槽部21の両側方に設けられ、槽部21から延びている継合片22によって槽部21と連結され、槽部21に設けられているロータ25、26を回転可能に支持する軸受部23とを有する。槽部21は、水平方向に延びる略円柱状の二本のロータ25、26が内部に平行に設けられ、二本のロータ25、26の直上にあたるところに周囲を立壁36で囲われている略矩形の開口24が設けられている。
【0015】
両ロータ25、26のうち、手前側(図2の右側)は第一ロータ25であり、奥側(図2の左側)は第二ロータ26である。また、両ロータ25、26の外周面にはノグ37が螺旋状に突設されている。なお、両ロータ25、26のノグ37は、ロータ回転時(互いのロータは逆回転する)に、互いのノグ37が緩衝しないようになっている。両ロータ25、26の長さ方向の一端からは出力軸17、18と繋がる丸棒状の駆動軸27、28が槽部21の側壁29を貫通して槽部21の外部へと延設されている。また、他端からは同じく丸棒状のロータ軸31、32が、側壁29と相対する槽部21の側壁30を貫通して槽部21の外部へと延設されている。また、各ロータ25、26並びにそのロータ25、26から延設されている、駆動軸27、28及びロータ軸31、32の軸線はそれぞれ同一直線である。
【0016】
両駆動軸27、28は、互いに平行である。また、共に一方の軸受部23を貫通している。さらに、混合槽20の側方にあり、混合槽20の傾倒時には、混合槽20と共に傾倒するギヤボックス33内を通っている。両駆動軸27、28のうち、第一ロータ25に設けられている第一駆動軸27は、混合槽20の両側方に設けられた一対で混合槽20を支承する支承部38、39の一である第一支承部38を貫通し、軸継手19によって出力軸17の一と繋がっている。また、第二ロータ26に設けられている第二駆動軸28は、エアークラッチ34を介して他の出力軸18と繋がっている。エアークラッチ34は、小口面が相対する二つの円筒物からなり、一方の円筒物は、空気圧によって摺動し、相対する小口面から突出する複数(図4においては4つであるが、特に限定はされない)の継合ピン35を有し、他方の円筒物の相対する小口面には、継合ピン35が挿脱されるピン孔35aが継合ピント35と同数だけ凹設されている。ピン孔35aに継合ピン35が挿入され、両円筒物間を継合ピン35が跨ぐことによりクラッチが繋がり、ピン孔35aから継合ピン35が抜出されることによりクラッチが切れる。
また、両駆動軸27、28がギヤボックス33内を通ることにより、ギヤボックス33内に設けられたギヤの作用を両駆動軸27、28が受け、両ロータ25、26の互いの外周の位置決めが行われる。それによって、回転駆動時及び混合槽傾倒時において両ロータ25、26の外周面のノグ37が互いに緩衝することを防止している。
【0017】
両ロータ軸31、32は、互いに平行である。また、共に駆動軸27、28が貫通していない方の軸受部23を貫通している。両ロータ軸31、32のうち、第一ロータ25に設けられている第一ロータ軸31は、さらに支承部38、39のもう一方である第二支承部39を貫通している。
第一ロータ25から延設されている、第一駆動軸27及び第一ロータ軸31が混合槽20の両側方に設けられた一対の支承部38、39を通ることにより、混合槽20は第一ロータ25を回転中心として、図3、4のように傾倒可能である。すなわち、混合槽20は第一駆動軸27及び第一ロータ軸31を回転中心として傾倒可能となっている。なお、第二ロータ26に設けられているロータ軸は、第二ロータ軸32である。
【0018】
傾倒機構50は、軸受部23と第二支承部39との間の第一ロータ軸31上に設けられた傾倒ギヤ51と、傾倒ギヤ51の下方に位置し、傾倒ギヤ51に噛合うウォームギヤ52と、据付ベース11に固定され、ウォームギヤ52を回転軸54の先端部に取着し、混合槽20を傾倒するための駆動源である傾倒モータ53とからなっている。
【0019】
加圧機構40は、混合槽20の後方に立設している逆L字状の架台45の上面に載設されている油圧シリンダ41と、油圧シリンダ41のロッド42の先端に取着され、開口24から混合槽20内に挿入されることにより混合槽20内の材料を加圧するウェイト43とを有する。ウェイト43は、槽部21の垂直方向に位置している。また、ウェイト43が水平方向に変位しないよう、逆L字状の架台45の上面に設けられた二つのガイド孔46に挿通している二本のガイド棒44が、ロッド42と平行になるようにウェイト43の上面47から突設している。
【0020】
次に、本発明の実施例の加圧型混練機10の運転方法について説明する。
先ず、開口24から混練する材料を槽部21内に投入する。
次に、開口24の上方に保持されているウェイト43を油圧シリンダ41を作動することにより下降させ、開口24を塞ぐようにして開口24内に挿入し、槽部21内の材料を加圧することで槽部21内を加圧する。また、駆動モータ13を作動させることにより、二本の出力軸17、18から二本の駆動軸27、28を介して、それぞれ二本のロータ25、26に駆動力を伝達し、ロータ25、26が回転駆動して、材料の混練を行う。
なお、ウェイト43の下降による加圧の操作と、ロータ25、26の回転駆動の操作とは、同時に行ってもよいし、一方を他方より先に行ってもよい。
【0021】
材料の混練が終了したら、駆動モータ13の作動を止めると共に、油圧シリンダ41を作動させ、ウェイト43を槽部21の上方に上昇させる。
なお、ウェイト43の上昇による除圧の操作と、ロータ25、26の回転停止の操作とは、同時に行ってもよいし、一方を他方より先に行ってもよい。
次に、エアークラッチ34を操作することにより、出力軸18と第二駆動軸28との繋がりを切る。
その後、傾倒モータ53を作動させて、第一駆動軸27を中心軸として混合槽20を傾倒させ、槽部21内の材料を開口24から外部に排出する。
【0022】
本実施例の加圧型混練機10によれば、次の(a)〜(d)の効果が得られる。
(a)従来の加圧混練機と比べ、駆動軸を太くすることなく、ロータに伝達する動力を約二倍にすることができる。
(b)ロータに伝達する動力を従来の約二倍にできることで、より高負荷条件での混練が行え、作業効率の向上が図れる。
(c)混合槽が傾倒できることにより、材料排出後の槽内確認が容易に行える。
(d)槽内確認が容易に行えることで、槽内残材の確認が容易にでき、適切な残材対応ができ、混合物の品質保証が図れる。
【0023】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で、例えば、次に述べる態様に変更して具体化することもできる。
図6(a)に示すように、傾倒モータ及びウォームギヤをそれぞれ傾倒シリンダ61及びラック62に変えた傾倒機構60に変更する態様。傾倒シリンダ61が伸縮することにより、傾倒シリンダ61の先端に取着しているラック62がその長さ方向に移動し、それによって、ラック62に噛合っている傾倒ギヤ51が回転し、混合槽20が傾倒する。
図6(b)に示すように、据付ベース11に対し傾動可能に取付けられた座板71上に垂直に設けられ、傾倒モータ72の駆動により回転するネジ棒73と、ネジ棒73に螺合し、継合片22に取着している耳部74とからなる傾倒機構70に変更する態様。ネジ棒73が回転することにより、ネジ棒73中での耳部74が螺合している位置が変位し、それによって耳部74が取着している継合片22を有する側が上昇し、混合槽20が傾倒する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例の加圧型混練機の平面図である。
【図2】同加圧型混練機の図1の切断線での断面図である。
【図3】混合槽を傾倒させた状態の同加圧型混練機の平面図である。
【図4】同加圧型混練機の図3の切断線での断面図である。
【図5】同加圧型混練機の混合槽付近の斜視図である。
【図6】本発明の別例の加圧型混練機の傾倒機構の斜視図である。
【図7】密閉式混練機の断面図である。
【図8】従来の加圧型混練機の平面図及び断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 加圧型混練機
12 駆動装置
20 混合槽
24 開口
25 第一ロータ
26 第二ロータ
27 第一駆動軸
28 第二駆動軸
34 エアークラッチ
40 加圧機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に材料を投入する開口(24)を有し傾倒して該開口(24)から材料を排出する混合槽(20)と、前記混合槽(20)内に平行に設けられた二本のロータ(25、26)と、前記材料を加圧する加圧機構(40)とを備えた加圧型混練機(10)において、
二本の前記ロータ(25、26)から前記混合槽(20)の外部において互いに平行な二本の駆動軸(27、28)がそれぞれ駆動装置(12)まで延設され、前記駆動軸(28)の一が前記駆動装置(12)との繋がりを切るためのクラッチ機構(34)を有し、前記クラッチ機構(34)により前記駆動軸(28)の一と前記駆動装置(12)との繋がりを切ることで他の駆動軸(27)を中心軸として前記混合槽(20)が傾倒することを特徴とする加圧型混練機。
【請求項2】
上部に材料を投入する開口(24)を有し傾倒して該開口(24)から材料を排出する混合槽(20)と、前記混合槽(20)内に平行に設けられた二本のロータ(25、26)と、前記材料を加圧する加圧機構(40)とを備えた加圧型混練機(10)の運転方法において、
前記開口(24)より材料を前記混合槽(20)内に投入した後、
前記加圧機構(40)により前記材料を加圧しながら、前記混合槽(20)の外部に設けられた駆動装置(12)にそれぞれ繋がっている二本の駆動軸(27、28)から伝達される動力により二本の前記ロータ(25、26)が回転することで前記材料を混練し、
混練した後、前記駆動軸(28)の一と前記駆動装置(12)との繋がりを切り、他の駆動軸(27)を中心軸として前記混合槽(20)を傾倒させて前記開口(24)から前記材料を排出することを特徴とする加圧型混練機の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−190014(P2009−190014A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36740(P2008−36740)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】