説明

加圧接合装置及びそれを用いた圧電素子ユニットの製造方法

【課題】圧電素子形成部材の割れや欠けを防止することができる加圧接合装置及びそれを用いた圧電素子ユニットの製造方法を提供する。
【解決手段】基台42上の所定位置に固定基板14を位置決めした状態で保持する保持治具43と、保持治具43に保持された固定基板14の端面に対向して移動可能に配されて圧電素子形成部材13の先端部側の端面に当接される当接部材45と、当接部材45の両端部に当接部材45に沿って移動可能に配されて圧電素子形成部材13の両側端面にそれぞれ当接される一対のチャック部材46とを有し、基台42上の規定位置に圧電素子形成部材13を位置決めして保持する位置決め治具44と、圧電素子形成部材13を固定基板14側に押圧する加圧手段51と、を具備するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の圧電素子が一体的に形成される圧電素子形成部材を有する圧電素子ユニットの製造に用いられる加圧接合装置、すなわち、圧電素子形成部材と固定基板とを位置決めした状態で接合する加圧接合装置及びそれを用いた圧電素子ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子の変位を利用した装置としては、例えば、インク等の液滴をノズル開口から吐出させる液体噴射ヘッドが挙げられる。具体的には、ノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室に供給された液体に圧力を付与することでノズル開口から液滴として吐出させている。そして、このような液体噴射ヘッド等に利用される圧電素子としては、例えば、個別電極と共通電極とが圧電材料を挟んで交互に積層形成されたものがある。具体的には、例えば、電極と圧電材料とを交互に積層した圧電振動板(圧電素子形成部材)の非振動領域を固定基板に接合すると共に、圧電振動板の振動領域を櫛歯状に切り分けることによって複数の圧電振動子(圧電素子)を有する圧電振動子ユニット(圧電素子ユニット)として構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。そして、このような圧電素子ユニットは、各圧電素子の先端面を振動板に当接させた状態で固定されて使用される。
【0003】
【特許文献1】特開平11−129474号公報(第3〜4頁、第1〜2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような圧電素子ユニットは、一般的に、加圧接合装置によって圧電素子形成部材と固定基板とを相対的に位置決めした状態で接合することによって形成される。具体的には、例えば、図10に示すように、圧電素子ユニット100を構成する固定基板114を加圧接合装置上に所定の保持治具143によって保持する。また、略コ字形状を有する係合部材144に圧電素子形成部材113を係合させる。すなわち、圧電素子形成部材113の先端部側の端面及び両側端面に係合部材144を当接させる。一方、圧電素子形成部材113の基端部側の端面を押圧部材147で係合部材144側に向かって押圧する。これにより、圧電素子形成部材113が所定位置に位置決めされた状態で保持される。そして、このように固定基板114及び圧電素子形成部材113が保持された状態で、圧電素子形成部材113を固定基板114側に押圧し、固定基板114と圧電素子形成部材113との間の接着剤を硬化させることで両者を接合している。
【0005】
このように従来の加圧接合装置では、圧電素子形成部材の先端部側を係合部材に係合させている。このため、圧電素子形成部材を係合部材に係合させる際、或いは係合部材から圧電素子形成部材を取り外す際に、圧電素子形成部材に割れや欠けが生じてしまう虞がある。特に、圧電素子形成部材の先端面側の両角部において割れや欠けが生じやすい。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、圧電素子形成部材の割れや欠けを防止することができる加圧接合装置及びそれを用いた圧電素子ユニットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、個別電極と共通電極とが圧電材料層を挟んで交互に複数積層されてなりその先端部側が複数のスリットによって櫛歯状に切り分けられて圧電素子の列が形成される圧電素子形成部材と、該圧電素子形成部材の基端部側が接合される固定基板と、を具備する圧電素子ユニットを形成する際に用いられ、前記圧電素子形成部材と前記固定基板とを位置決めした状態で加圧接合する加圧接合装置であって、基台上の所定位置に前記固定基板を位置決めした状態で保持する保持治具と、前記保持治具に保持された前記固定基板の端面に対向して移動可能に配されて前記圧電素子形成部材の前記先端部側の端面に当接される当接部材と、前記当接部材に沿って移動可能に当該当接部材の両端部に配されて前記圧電素子形成部材の両側端面にそれぞれ当接される一対のチャック部材とを有し、前記基台上の規定位置に前記圧電素子形成部材を位置決めして保持する位置決め治具と、前記圧電素子形成部材を前記固定基板側に押圧する加圧手段と、を具備することを特徴とする加圧接合装置にある。
かかる本発明の加圧接合装置では、位置決め治具を構成する当接部材とチャック部材とがそれぞれ独立しているため、これら当接部材及びチャック部材が圧電素子形成部材に接触することによる圧電素子形成部材の割れや欠けの発生を防止することができる。
【0008】
ここで、前記チャック部材の前記圧電素子形成部材側の面が、当該圧電素子形成部材側が凸となる曲面で形成されていることが好ましい。これにより、圧電素子形成部材とチャック部材との接触面積が小さく抑えられるため、圧電素子形成部材にチャック部材が接触することによる割れや欠けの発生をさらに確実に防止することができる。
【0009】
また、前記当接部材が、前記圧電素子の列方向両端部近傍で前記圧電素子形成部材に当接する突出部を有することが好ましい。これにより、圧電素子形成部材の割れや欠けの発生をさらに確実に防止することができる。
【0010】
また、前記位置決め治具が、前記圧電素子形成部材の基端部側の端面に当接して当該圧電素子形成部材を前記当接部材側に押圧する押圧部材をさらに有することが好ましい。これにより、圧電素子形成部材を規定位置にさらに正確に位置決めして良好に保持することができると共に、圧電素子形成部材の変形も防止することができる。
【0011】
さらに本発明は、このような加圧接合装置を用いた圧電素子ユニットの製造方法であって、前記保持治具によって所定位置に位置決めした状態で前記固定基板を前記基台上に保持し、前記当接部材及び一方の前記チャック部材を前記規定位置に合わせて移動して固定し、前記圧電素子形成部材を、その先端側の端面が前記当接部材に当接し且つその側端面が前記一方のチャック部材に当接するように前記固定基板上に接着剤を介して配置し、他方の前記チャック部材を前記圧電素子形成部材の側端面に当接させて前記圧電素子形成部材を規定位置に位置決めし、当該圧電素子形成部材を前記規定位置に位置決めした状態で、前記加圧手段によって前記圧電素子形成部材を前記固定基板側に押圧して前記接着剤によって前記圧電素子形成部材と前記固定基板とを接合することを特徴とする圧電素子ユニットの製造方法にある。
かかる本発明の製造方法では、当接部材及びチャック部材が圧電素子形成部材に接触することによる圧電素子形成部材の割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0012】
ここで、前記圧電素子形成部材と前記固定基板とを接合後、前記当接部材及び前記チャック部材のそれぞれを前記圧電素子形成部材の外側に向かって移動させてから前記圧電素子形成部材と前記固定基板との接合体を前記基台上から取り外すことが好ましい。これにより、接合体を基台上から取り外す際にも、圧電素子形成部材が当接部材及びチャック部材に接触して割れや欠けが発生するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る加圧接合装置を用いて製造した圧電素子ユニットの概略斜視図であり、図2は、図1のA−A′断面図である。図1及び図2に示すように、圧電素子ユニット10は、複数の圧電素子11がその幅方向に並設された列12を有する圧電素子形成部材13と、圧電素子形成部材13の先端部側が自由端となるようにその基端部側が接着剤20によって接着される固定基板14とを有する。
【0014】
圧電素子形成部材13は、圧電材料層15と、共通電極又は個別電極となる電極層16、17とを交互に積層することにより形成され、例えば、ワイヤソー等によって複数のスリットである切り込み部18を形成することにより櫛歯状に切り分けられて圧電素子11の列12が形成されている。また、圧電素子11の列12の両外側には、各圧電素子11よりも広い幅を有する位置決め部19が設けられている。この位置決め部19は、圧電素子ユニット10を液体噴射ヘッドに組み込む際に、圧電素子ユニット10を高精度に位置決めするために設けられていて、圧電素子11と同様の圧電材料層15と電極層16、17を有するが外部電極と接続しないため駆動することのないダミー素子である。一方、固定基板14は、例えば、ステンレス鋼(SUS)等からなる板状部材からなり、圧電素子形成部材13の振動領域である先端部側が自由端となるように、圧電素子形成部材13の非振動領域である基端部側が接着剤20によって接着されている。
【0015】
そして、このような圧電素子ユニット10は、例えば、液体噴射ヘッドに搭載される。以下に、その一例としてインクジェット式記録ヘッドについて説明する。なお、図3は、インクジェット式記録ヘッドの概略を示す断面図である。図3に示すように、流路形成基板30には圧力発生室31が形成されており、この圧力発生室31はその幅方向で複数並設されている。また、各圧力発生室31の長手方向一端部側には、各圧力発生室31にインクを供給するためのリザーバ32がインク供給口33を介して連通されている。また、流路形成基板30の圧力発生室31の開口面側は振動板34で封止され、他方面側にはノズル開口35が穿設されたノズルプレート36が接合されている。振動板34上には、図示しないインクカートリッジやメインタンクからのインク供給を受けるサブタンクなどのインク貯留部に接続されるインク供給路37を有するヘッドケース38が固定されており、且つこのヘッドケース38には、上述した圧電素子ユニット10が高精度に位置決めされて固定されている。すなわち、圧電素子ユニット10は、各圧電素子11の先端面が振動板34上の各圧力発生室31に対応する領域に設けられた各アイランド部39に当接した状態で固定されている。
【0016】
このように構成されたインクジェット式記録ヘッドでは、インク貯留部に連通されるインク供給路を介してリザーバ32にインクが供給され、インク供給口33を介して各圧力発生室31に分配される。実際には、圧電素子11に電圧を印加することにより圧電素子11を収縮させる。これにより、振動板34が圧電素子11と共に引き上げられて圧力発生室31の容積が広げられ、圧力発生室31内にインクが引き込まれる。そして、ノズル開口35に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路からの記録信号に従い、圧電素子11に印加していた電圧を解除すると、圧電素子11が伸張されて元の状態に戻る。これにより、振動板34も変位して元の状態に戻るため圧力発生室31が収縮され、内部圧力が高まりノズル開口35からインク滴が吐出される。
【0017】
そして、このようにインクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドでは、圧電素子11の極めて微小な変形(伸縮)を利用してノズル開口35からインク滴を吐出させているため、液体噴射ヘッド等に用いられる圧電素子ユニット10は、極めて高精度に形成する必要がある。例えば、固定基板14と圧電素子形成部材13とを高精度に接合する必要がある。
【0018】
以下、固定基板14と圧電素子形成部材13とを接合に用いる本発明の加圧接合装置について説明する。図4は、加圧接合装置の概略斜視図であり、図5は、加圧接合装置の正面方向の一部断面図であり、図6は、図5のB−B′断面図である。
【0019】
図示するように、加圧接合装置40は、装置本体41上に設けられる基台42を有し、基台42上には固定基板14を保持する保持治具43が着脱自在に設けられている。本実施形態に係る加圧接合装置40では、保持治具43に複数、例えば、2つの固定基板14が保持され、複数の圧電素子ユニット10を同時に形成することができるようになっている。
【0020】
また、装置本体41上には、圧電素子形成部材13を所定位置に位置決めする位置決め治具44が設けられている。この位置決め治具44は、保持治具43に保持された固定基板14の端面に対向して配されて圧電素子形成部材13の先端部側の端面に当接される当接部材45と、この当接部材45の両端部に当接部材45に沿ってスライド可能に配されて圧電素子形成部材13の両側端面にそれぞれ当接される一対のチャック部材46(第1のチャック部材46A及び第2のチャック部材46B)とを有する。また、位置決め治具44は、本実施形態では、圧電素子形成部材13の基端部側に配されて圧電素子形成部材13を当接部材45側に押圧する押圧部材47をさらに有する。
【0021】
当接部材45は、圧電素子形成部材13(固定基板14)側に突出して圧電素子形成部材13の先端面に当接する突出部48が設けられている。この突出部48は、圧電素子形成部材13の両端部近傍に対応する部分、すなわち、圧電素子形成部材13の位置決め部19が形成される部分に対応して設けられている。これにより、圧電素子形成部材13の圧電素子11が形成される領域に、当接部材45が当接することがなく、圧電素子11の先端部の欠けや割れ等の発生が防止される。一対のチャック部材46は、当接部材45の両端部に対応する位置に、この当接部材45に沿ってスライド可能に設けられている。また、各チャック部材46の圧電素子形成部材13と当接する側の面は、本実施形態では、圧電素子形成部材13側が凸となる曲面で構成されている。すなわち、各チャック部材46の圧電素子形成部材13との接触面積が小さくなるようにして、圧電素子形成部材13の割れ等の発生を抑制している。
【0022】
押圧部材47は、圧電素子形成部材13の基端部側の端面に対向して設けられて圧電素子形成部材13の端面に当接する当接部49を有し、この当接部49は、本実施形態では、圧電素子形成部材13の基端部側の端面と同一又はそれ以上の面積で形成されている。すなわち、押圧部材47の当接部49は、圧電素子形成部材13の基端部側の端面のほぼ全面に接触する大きさを有する。これにより、圧電素子形成部材13と固定基板14を接合する際に、圧電素子形成部材13がこの押圧部材47(当接部49)によって確実に支持され圧電素子形成部材13の変形が防止される。
【0023】
また、保持治具43が固定される基台42の両端部には、一対のスライド軸50が立設されており、この一対のスライド軸50には、圧電素子形成部材13を固定基板14側に押圧するための加圧部材(加圧手段)51が軸方向でスライド可能に固定されている。この加圧部材51は、例えば、スライド軸50に上下方向に移動可能に固定されるスライド部材52と、スライド部材52に設けられるスリット状のガイド孔53に挿通されて先端部が基台42側に突出した状態でこのスライド部材52に係合保持されるコマ部材54と、スライド部材52に固定されてコマ部材54の先端面を圧電素子形成部材13に当接させた状態でコマ部材54を圧電素子形成部材13側に押圧する付勢部材55とを具備する。
【0024】
ここで、本実施形態に係るスライド部材52は、スライド軸50に上下方向に移動可能に固定される支持板56と、この支持板56の下面側に固定されてコマ部材54が挿通されるガイド孔53が設けられたガイド板57と、支持板56の上面側に設けられて支持板56と共に付勢部材55を固定する固定板58とで構成されている。
【0025】
コマ部材54は、各保持治具43に保持された各固定基板14に対応して設けられており、例えば、本実施形態では、2つのコマ部材54が設けられている。すなわち、ガイド板57には、各固定基板14に対応して2つのガイド孔53が設けられており、各コマ部材54は、各ガイド孔53に挿通されてガイド板57に係合保持されている。具体的には、各コマ部材54は、基端部(上端部)側にフランジ部59を有し、ガイド孔53に挿通されるとその先端部がガイド板57の下側(基台側)に突出した状態で、フランジ部59がガイド板57の表面に係止されるようになっている。コマ部材54の保持治具43側の先端面には、弾性材料からなる弾性層60が設けられている。
【0026】
付勢部材55は、各コマ部材54に対応してそれぞれ独立して設けられている。また、付勢部材55は、各コマ部材54に対してそれぞれ複数設けられていることが好ましく、例えば、本実施形態では、各コマ部材54に対してそれぞれ2つの付勢部材55が所定間隔で設けられている。付勢部材55のコマ部材54と接触する先端部は、コマ部材54と点接触する形状となっていることが好ましい。例えば、本実施形態に係る付勢部材55は、筒状体61内に挿入された球状体62が、例えば、コイルばね等からなる弾性部材63によって付勢され筒状体61の先端部の開口から若干突出した状態で保持されてなる。
【0027】
また、この付勢部材55とコマ部材54との間にも、例えば、コイルばね等からなる弾性部材64が介装されている。コマ部材54が圧電素子形成部材13に当接されていない状態では、コマ部材54と付勢部材55との間には所定の間隔が確保されており、コマ部材54はこの弾性部材64のみで付勢されている。
【0028】
以下、このような加圧接合装置40を用いた圧電素子ユニット10の製造手順について図7及び図8を参照して詳細に説明する。なお、図7は、圧電素子ユニットの製造工程を示す平面図であり、図8は、圧電素子ユニットの製造工程を示す断面図である。
【0029】
図7(a)に示すように、まず、固定基板14が所定位置に固定された保持治具43を基台42上に位置決め固定する。なお、上述したように本実施形態では、保持治具43には2つの固定基板14が保持されている。この保持治具43の位置決め方法は、特に限定されず、例えば、基台42上に基準となる基準ピン(図示なし)を設けておき、保持治具43をこの基準ピンに当接させることによって位置決めする。このとき、圧電素子形成部材13を位置決め保持するための位置決め治具44である当接部材45、チャック部材46及び押圧部材47は、各固定基板14に対応して基台42の外側に配置されている。
【0030】
次に、図7(b)に示すように、当接部材45と、一方のチャック部材、例えば、第1のチャック部材46Aとを移動させ、圧電素子形成部材13が固定される位置、すなわち図中点線で示す規定位置に合わせて固定する。勿論、第1のチャック部材46Aの替わりに第2のチャック部材46Bを移動させてもよい。
【0031】
次に、図7(c)に示すように、固定された当接部材45及び第1のチャック部材46Aに合わせて固定基板14上に圧電素子形成部材13を載置する。つまり、圧電素子形成部材13を、その先端面が当接部材45に当接し且つその側端面が第1のチャック部材46Aに当接するように固定基板14上に載置する。なおこのとき、固定基板14又は圧電素子形成部材13の何れか一方に接着剤を塗布しておき、固定基板14上に接着剤を介して圧電素子形成部材13を載置する。
【0032】
ここで、圧電素子形成部材13は、当接部材45及び第1のチャック部材46Aと実際に当接していてもよいが、これら圧電素子形成部材13と当接部材45及び第1のチャック部材46Aとの間には若干の隙間が存在していてもよい。
【0033】
次いで、図8(a)に示すように、第2のチャック部材46Bを移動させて上記規定位置に合わせて固定する。このとき、圧電素子形成部材13の位置が、上記規定位置よりも第2のチャック部材46B側であると、第2のチャック部材46Bが圧電素子形成部材13の側端面に当接し、第2のチャック部材46Bと共に圧電素子形成部材13が移動することになる。これにより、圧電素子形成部材13は、当接部材45に沿った方向(図中左右方向)で規定位置に正確に位置決めされる。
【0034】
次いで、本実施形態では、図8(b)に示すように、押圧部材47を圧電素子形成部材13側に移動させて規定位置に合わせて固定する。このとき、圧電素子形成部材13の位置が、上記規定位置よりも押圧部材47側であると、押圧部材47の当接部49が圧電素子形成部材13の基端部側の端面に当接して、押圧部材47と共に圧電素子形成部材13が移動することになる。これにより圧電素子形成部材13は、当接部材45とは直交する方向(図中上下方向)で規定位置に正確に位置決めされる。つまり、圧電素子形成部材13は、当接部材45の突出部48、各チャック部材46及び押圧部材47の当接部49と、それぞれ当接して、規定位置に正確に位置決めされる。
【0035】
本発明の加圧接合装置40では、このような手順で圧電素子形成部材13が規定位置に位置決めされるため、圧電素子形成部材13に当接部材45及びチャック部材46が接触することによる圧電素子形成部材13の割れや欠けの発生を防止することができる。特に、圧電素子形成部材13の当接部材45側の両角部の割れや欠けの発生を効果的に防止することができる。さらに、圧電素子形成部材13の先端部側の端面に、当接部材45の突出部48のみが当接するため、圧電素子11が形成される領域に欠けや割れ等が発生するのを防止することができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、上述したように押圧部材47によって圧電素子形成部材13を所定の圧力で押圧することで、この押圧部材47と当接部材45の突出部48との間に圧電素子形成部材13を挟み込んで保持している。このため、圧電素子11の先端に当接部材45が当接することがない。したがって、圧電素子11の先端部を傷つけることなく圧電素子形成部材13を保持することができる。
【0037】
次に、図9に示すように、例えば、駆動モータを用いた駆動装置、油圧ポンプあるいは電磁ポンプ等で構成される加圧手段(図示なし)によって加圧部材51(スライド部材52)を所定位置まで下降させ、コマ部材54によって各圧電素子形成部材13を固定基板14側に所定圧力で加圧する。具体的には、コマ部材54が付勢部材55の先端部の球状体62に当接するまでスライド部材52を下降させて固定すると、コマ部材54が付勢部材55及び弾性部材64によって圧電素子形成部材13側に付勢され、その結果、圧電素子形成部材13はコマ部材54によって固定基板14側に所定圧力で加圧される。そして、このように圧電素子形成部材13を固定基板14側に加圧したまま、例えば、150℃〜200℃程度の温度下で接着剤20(図2参照)を加熱硬化させる。
【0038】
このように接着剤20を加熱硬化させる際には、その熱によって圧電素子形成部材13が変形する虞がある。しかしながら、本実施形態では、圧電素子形成部材13が、その基端部側の端面の略全面に押圧部材47の当接部49が当接した状態で保持されているため、熱による圧電素子形成部材13の変形を抑えることができる。
【0039】
その後、図示しないが圧電素子形成部材13と固定基板14との接合体を加圧接合装置40から取り外す。このとき、当接部材45、各チャック部材46及び押圧部材47のそれぞれを、圧電素子形成部材13の外側に向かって移動させる。すなわち、これら当接部材45、チャック部材46及び押圧部材47を圧電素子形成部材13から引き離してから、圧電素子形成部材13と固定基板14との接合体を基台42上から取り外すことが好ましい。これにより、上記接合体を基台42上から取り外す際に、圧電素子形成部材13が当接部材45及びチャック部材46に接触して割れや欠けが発生するのを防止することができる。
【0040】
なお、取り外された圧電素子形成部材13と固定基板14との接合体は、例えば、ワイヤソー等によって圧電素子形成部材13の先端部側が櫛歯状に切り分けられて、図1に示すような圧電素子ユニット10が製造される。
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、圧電素子形成部材13を高精度に位置決めして固定基板14に接合することができると共に、圧電素子形成部材13の変形や、欠け等の発生を防止することができる。したがって、高品質な圧電素子ユニット10を形成することができ、この圧電素子ユニット10をインクジェット式記録ヘッドに組み込む際、各圧電素子11の先端部を振動板34のアイランド部39に確実に当接させることができる(図3参照)。よって、例えば、ドット抜け等の印刷不良の発生を防止したインクジェット式記録ヘッドを実現することができる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明はこのような実施形態に限定されるものでない。例えば、上述の実施形態では、圧電素子形成部材13を押圧する押圧部材47を設け、この押圧部材47と当接部材45とで、圧電素子形成部材13を挟持するようにしたが、例えば、一対のチャック部材46A,46Bで圧電素子形成部材13を挟持するようにしてもよい。この場合、押圧部材47は設けられていなくてもよい。例えば、圧電素子形成部材13を固定基板14上に載置する際、圧電素子形成部材13を当接部材45及び一方のチャック部材46に確実に当接させることができれば、押圧部材47が設けられていなくても、圧電素子形成部材13を規定位置に正確に位置決めした状態で保持することができる。また、例えば、上述の実施形態では、各チャック部材46の圧電素子形成部材13と当接する当接面が曲面で構成されている例を説明したが、勿論、これらチャック部材46の当接面は平面で構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】圧電素子ユニットの一例を示す概略斜視図である。
【図2】圧電素子ユニットの一例を示す断面図である。
【図3】圧電素子ユニットが搭載された液体噴射ヘッドの概略を示す断面図である。
【図4】一実施形態に係る加圧接合装置の概略斜視図である。
【図5】一実施形態に係る加圧接合装置の一部断面図である。
【図6】一実施形態に係る加圧接合装置の断面図である。
【図7】一実施形態に係る圧電素子ユニットの製造工程を示す平面図である。
【図8】一実施形態に係る圧電素子ユニットの製造工程を示す平面図である。
【図9】一実施形態に係る圧電素子ユニットの製造工程を示す断面図である。
【図10】従来技術に係る加圧接合装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0044】
10 圧電素子ユニット、 11 圧電素子、 13 圧電素子形成部材、 14 固定基板、 20 接着剤、 40 加圧接合装置、 41 装置本体、 42 基台、 43 保持治具、 44 位置決め治具、 45 当接部材、 46 チャック部材、 47 押圧部材、 48 突出部、 49 当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別電極と共通電極とが圧電材料層を挟んで交互に複数積層されてなりその先端部側が複数のスリットによって櫛歯状に切り分けられて圧電素子の列が形成される圧電素子形成部材と、該圧電素子形成部材の基端部側が接合される固定基板と、を具備する圧電素子ユニットを形成する際に用いられ、前記圧電素子形成部材と前記固定基板とを位置決めした状態で加圧接合する加圧接合装置であって、
基台上の所定位置に前記固定基板を位置決めした状態で保持する保持治具と、
前記保持治具に保持された前記固定基板の端面に対向して移動可能に配されて前記圧電素子形成部材の前記先端部側の端面に当接される当接部材と、前記当接部材に沿って移動可能に当該当接部材の両端部に配されて前記圧電素子形成部材の両側端面にそれぞれ当接される一対のチャック部材とを有し、前記基台上の規定位置に前記圧電素子形成部材を位置決めして保持する位置決め治具と、
前記圧電素子形成部材を前記固定基板側に押圧する加圧手段と、
を具備することを特徴とする加圧接合装置。
【請求項2】
前記チャック部材の前記圧電素子形成部材側の面が、当該圧電素子形成部材側が凸となる曲面で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加圧接合装置。
【請求項3】
前記当接部材が、前記圧電素子の列方向両端部近傍で前記圧電素子形成部材に当接する突出部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加圧接合装置。
【請求項4】
前記位置決め治具が、前記圧電素子形成部材の基端部側の端面に当接して当該圧電素子形成部材を前記当接部材側に押圧する押圧部材をさらに有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の加圧接合装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の加圧接合装置を用いた圧電素子ユニットの製造方法であって、
前記保持治具によって所定位置に位置決めした状態で前記固定基板を前記基台上に保持し、
前記当接部材及び一方の前記チャック部材を前記規定位置に合わせて移動して固定し、
前記圧電素子形成部材を、その先端側の端面が前記当接部材に当接し且つその側端面が前記一方のチャック部材に当接するように前記固定基板上に接着剤を介して配置し、
他方の前記チャック部材を前記圧電素子形成部材の側端面に当接させて前記圧電素子形成部材を規定位置に位置決めし、
当該圧電素子形成部材を前記規定位置に位置決めした状態で、前記加圧手段によって前記圧電素子形成部材を前記固定基板側に押圧して前記接着剤によって前記圧電素子形成部材と前記固定基板とを接合することを特徴とする圧電素子ユニットの製造方法。
【請求項6】
前記圧電素子形成部材と前記固定基板とを接合後、前記当接部材及び前記チャック部材のそれぞれを前記圧電素子形成部材の外側に向かって移動させてから前記圧電素子形成部材と前記固定基板との接合体を前記基台上から取り外すことを特徴とする請求項5に記載の圧電素子ユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−238753(P2008−238753A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86084(P2007−86084)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】