説明

加工現場で活性化されたバインダー樹脂を含む耐摩耗性複合材料

【課題】新たな複合シートを提供する
【解決手段】
本複合シートは、上面付近に実質的に垂直なファイバーを有する開繊ランダムファイバーウェブ、第一バインダー樹脂、および第二バインダー樹脂を含み、第一バインダー樹脂の融点が第二バインダー樹脂の融点より低く、第二バインダー樹脂の融点がウェブの融点より低く、樹脂がウェブファイバーと加工現場で活性化され、樹脂−ファイバーに富む領域を上面に形成し、耐摩耗性シートは80番研磨紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル耐久可能である。単一のバインダー樹脂を含む耐摩耗性シートおよび他の耐摩耗性シートも開示する。さらに、これらの耐摩耗性シートを作成する製造法をここに開示する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、広く耐摩耗性の複合シートおよび同シートの製造法に関する。特に、この発明は加工現場で活性化された樹脂で強化した複合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の織物、ニット地、または不織布をプラスチック・シート若しくは樹脂層と組み合わせるか、または樹脂を含浸させて熱成形および成型工程用の複合シートを形成することは既知である。例えば、そのような複合シートがザフィログル(Zafiroglu)の米国特許5,075,142号(特許文献1)および日本特許出願公開63−111050(特許文献2)と63−162238(特許文献3)に開示されている。宮川等の米国特許4,298,643号(特許文献4)には、布地の裏を熱可塑性シートに接着または積層した、露出パイル層を持つ特定の布地が開示されている。
【特許文献1】米国特許第5,075,142号明細書
【特許文献2】特開昭63−111050号公報
【特許文献3】特開昭63−162238号公報
【特許文献4】米国特許第4,298,643号明細書
【特許文献5】米国特許第4,773,238号明細書
【特許文献6】米国特許第4,876,128号明細書
【特許文献7】特開昭64−85614号公報
【特許文献8】特開昭64−85615号公報
【特許文献9】米国特許第6,063,473号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
成形可能な複合材料が多くの用途に広く利用されてきたが、運動靴部品、旅行鞄の隅部と表層、保護作業服、重袋等のような過酷な摩耗を受ける製品用には、かかる複合材料は改良が必要である。
【0004】
ビロード、ベロア、テリー織布、モケット、タフティング加工した織物等のようなパイル地は、各々、中のファイバーが織物の表面に普通垂直である表面層を持っている。ファイバー層を該ファイバーの層に付けたゴム弾性の糸で収縮、坐屈させてパイル状のファイバー群の層を形成したある種のステッチボンド(縫合)された布地は、ザフィログル(Zafiroglu)の米国特許4,773,238(特許文献5)号および4,876,128(特許文献6)号に開示されている。一般に、そのようなパイルまたはパイル状の布は複合シートに組み込まれることはない。日本特許出願公開64−85614(特許文献7)および64−85615(特許文献8)には、高さが8mmでパイルファイバー濃度が0.08g/cmのタフティング加工したモノフィラメントのパイルにゴム系樹脂を噴霧したものを含む床マットが開示されている。パイルファイバーと樹脂の配合物は樹脂を38重量%含み、その平均密度は0.13g/cmである。そのような床マットの耐摩耗性が上昇すればもっと有用になるはずである。
【0005】
ザフィログル(Zafiroglu)の「耐摩耗性複合シート」と題した米国特許6,063,473号(特許文献9)には、耐摩耗性の複合シートを製造するための、樹脂で固定した比較的薄手のパイルまたはパイル状の布地が開示されている。このシートには上部外面および下部面が含まれ、該上下面間に、平面状のファイバー網状組織が実質的に両面に平行になるよう配置されている。さらにこの複合シートは、平面状ファイバーの網状組織を通り抜け、該平面状ファイバーの網状組織から一般に垂直に突き出て複合シートの上部の外面まで届くパイル状のファイバーと、パイル状のファイバーを平面状ファイバーの網状組織に一般に垂直な位置に固定させる樹脂とから成る。上記米国特許6,063,473号によれば、パイル状のファイバー層は、高さが0.5〜3.0mmの範囲で、濃度が0.05〜0.5g/cmの範囲の垂直なパイル状のファイバーを有する。樹脂は、パイル状のファイバーの層を通して上部の外面から少なくとも0.5mmの深さまで、より好ましくは複合材料全体中にいきわたっている。パイル状の層の樹脂を含有する深層の密度は、少なくとも0.5g/cmである。この複合シートは、伸度が25%以下、圧縮度が25%以下で、全単位重量が150〜3,000g/mの範囲である。典型的には、シートは、樹脂を該複合材料の全重量当り30〜90%の範囲、好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも70%含む。上記米国特許6,063,473号の複合シートの垂直パイル状ファイバーの濃度は、約0.1〜0.35g/cmの範囲である。パイル状の層の樹脂を含む深層の密度は、約0.7〜1.0g/cmの範囲にある。パイル状ファイバー層の高さは、1〜3mmの範囲にあり、樹脂は好ましくは、パイル状の層全体にいきわたっている。この複合シートは、典型的に40−番[研磨紙使用]のワイゼンビーク(Wyzenbeek)[摩耗]試験で1,000サイクル当り50μ以下の摩耗量を示す。
【0006】
米国特許6,063,473号には、さらに複合シートの製造法および表面の少なくとも一部に耐摩耗性の複合シートを付着させた成形品が開示されている。米国特許6,063,473号により製造した複合材料は、高価なことがあり、また一つには、パイルまたはパイル状の織物を固定するのに多量の樹脂を使用したため、硬直し柔軟性がないこともある。従って、当該技術では猶、より柔軟で、エンボス加工(型押加工)可能で、製造費が高くない耐摩耗性の複合シートが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、80番研磨紙使用のワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル(回)耐久可能な耐摩耗性複合材料シートに関する。
【0008】
本発明は、更に、柔軟で、成形およびエンボス加工可能な耐摩耗性複合シートに関する。
【0009】
本発明は、更に、上面付近に実質的に垂直なファイバーを有する開繊ランダムファイバーウェブと少なくとも第一バインダー樹脂を含む耐摩耗性シートに関する。第一バインダー樹脂の融点は開繊ランダムファイバーウェブのウェブファイバーの融点より低く、また、樹脂とファイバーは上面に樹脂−ファイバーに富む領域を形成する。バインダー樹脂の総量は耐摩耗性シートの約30重量%以下を占める。更に、ファイバー樹脂およびウェブ・ファイバーは共染め可能である。好ましくは、バインダー樹脂の合計量は、耐摩耗性シートの約20重量%以下または耐摩耗性シートの約10重量%以下でよい。
【0010】
本発明は、更に、上面付近に実質的に垂直なファイバーを有する開繊ランダムファイバーウェブ、第一バインダー樹脂、および第二バインダー樹脂を含む耐摩耗性シートに関する。第一バインダー樹脂の融点は第二バインダー樹脂の融点より少なくとも40℃低く、第二バインダー樹脂の融点はウェブの融点より低い。樹脂はウェブ・ファイバーと共に加工現場で(その場で)活性化されて上面に樹脂−ファイバーに富む領域を形成する。
【0011】
本発明の一態様では、耐摩耗性シートは、上面付近に実質的に垂直なファイバーを有する開繊ランダムファイバーウェブと、該開繊ランダムファイバーウェブウェブ内でよく混和されているバインダー樹脂とを含む。上面の近くのウェブ・ファイバーとバインダー樹脂は、薄手の緻密化した層を形成する。バインダー樹脂のメルト・フローインデックスは、好ましくは10分当たり約5gより大きく、より好ましくは、10分当たり約10gより大きく、最も好ましくは、10分当たり約15gより大きいことが望ましい。
【0012】
本発明の別の態様では、第一バインダー樹脂の活性化は、開繊ランダムファイバーウェブ内のある勾配に従って行われる。
【0013】
本発明の別の態様では、耐摩耗性シートは、エンボス(型押)加工適性係数が約2ないし約6以下である。
【0014】
本発明の別の態様では、耐摩耗性シートはエンボス加工後、少なくとも一方向に少なくとも90%の回復下、少なくとも20%の伸びを示す。より好ましくは、該シートは、少なくとも一方向に、少なくとも90%の回復下、少なくとも30%の伸びを示すことが望ましい。
【0015】
本発明はさらに、(a)上面付近の実質的に垂直なファイバーを有する開繊ランダムファイバーウェブ、少なくとも第一バインダー樹脂、およびその融点が第一バインダー樹脂の融点より高く、開繊ランダムファイバーウェブのウェブファイバーの融点より低い第二バインダー樹脂を用意する工程、(b)少なくとも部分的に第一バインダー樹脂を活性化する工程、(c)該ウェブを強化する工程、(d)少なくとも部分的に第二バインダー樹脂を活性化してウェブの上面にファイバー−樹脂に富む領域を形成する工程から成ることを特徴とする耐摩耗性シートの製造法に関する。
【0016】
工程(c)は更に、ウェブをステッチボンドすることを含んでもよく、また、工程(d)はウェブを収縮することを含めてよい。工程(d)の後に、本製造法は熱圧工程を含め、薄手の緻密化した層を形成してもよい。さらに、工程(a)は、ウェブファイバーのまわりに低融点の鞘部を形成することで第一または第二バインダー樹脂を添加するか、あるいはウェブに固体微粉状のバインダー樹脂を散布することで、第一または第二バインダー樹脂を添加するかを含む。
【0017】
本発明は更に、(a)上面付近の実質的に垂直なファイバーとバインダー樹脂とを有する開繊ランダムファイバーウェブであって、該バインダー樹脂が開繊ランダムファイバーウェブとよく混和させてあり、かつ該バインダー樹脂の融点が開繊ランダムウェブファイバーの融点より低い開繊ランダムファイバーウェブを用意する工程、(b)少なくとも部分的にバインダー樹脂を活性化し、ウェブを冷却する工程、そして(c)該ウェブを熱圧して、ウェブ上に薄手の緻密化表皮(スキン)を形成する工程から成ることを特徴とする耐摩耗性シートの製造法に関する。
【0018】
工程(a)は更にファイバーをニードルパンチして開繊ランダムファイバーウェブを形成してもよく、あるいはファイバーの周囲にバインダー樹脂鞘部を形成してもよく、または工程(a)は、バインダー樹脂ファイバーを用意し、バインダー樹脂ファイバーをウェブファイバーと組み合わせて開繊ランダムファイバーウェブを形成する工程を含んでもよい。
【0019】
本発明は更に、(a)上面付近の実質的に垂直なファイバーと少なくとも第一バインダー樹脂とを有する開繊ランダムファイバーウェブであって、該バインダー樹脂が開繊ランダムファイバーウェブに添加されており、かつ該バインダー樹脂の融点がウェブファイバーの融点より低い開繊ランダムファイバーウェブを用意する工程、(b)ウェブ内のバインダー樹脂を少なくとも部分的に活性化する工程、そして(c)樹脂の重量%を30%未満に維持する工程から成ることを特徴とする耐摩耗性シートの製造法に関する。
【0020】
さらに、工程(a)の開繊ランダムファイバーウェブは、それに添加した第二バインダー樹脂を含む。本製造法は更に、第二バインダー樹脂を活性化する工程、およびウェブをステッチボンド加工し、収縮させることで開繊ランダムファイバーウェブを強化する工程を含んでもよい。
【0021】
本発明はさらに、ファイバーを、約30重量%未満の量であって、ファイバーの融点より10−50℃低い融点を有する固形の熱可塑性・非弾性系の樹脂と混和し、開繊された低密度のファイバー/樹脂複合シートを形成する製造法において、表面のファイバーはシートに対して主に垂直に配向し、シートの重さが150〜1500g/mで、厚さが1〜6mmであり、シートの形成中または形成後に複合材料を前記二成分の融点間の温度で加熱して樹脂を融解させ、ファイバーをその場で相互に接着させて密度を0.1〜0.7g/cc、厚さを1〜3mmにする製造法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1Aで図解し、以下詳細に論ずるように、本発明は、柔軟で、軽く、広い範囲で成形しやすく、またエンボス可能な改善された耐摩耗性複合材料に関する。本発明に係る複合材料10は、米国特許6,063,473号に記述のファイバー−オン−エンド又はパイル布地のような開繊ランダムファイバーウェブ若しくは構造12、またはニードルパンチ加工、スパンレース加工、単純カード加工、エアレイド,あるいはスパンレイド加工ウェブを有する布地を含む。図1Aの左側3分の2に示すように、ウェブ12はファイバー−オン−エンドループ、あるいは図1Aの右3分の1に示すようにファイバー−オン−エンド遊離端(フリーエンド)を有してもよい。米国特許6,063,473号全体が参照により本明細書に組み入れられる。これらの開繊ファイバーウェブの表面のファイバーは、好ましくは末端直立の形で主に垂直に配向しているか、あるいは脚部がウェブ中に下降しているループを持つことが望ましい。本発明の複合材料は、さらに開繊ランダムファイバーウェブ中によく混和されたファイバー状、フイブリル状、または粉末固体状樹脂14を含む。樹脂は、さらに開繊ランダムファイバーウェブのファイバーの芯の周囲に配置された鞘の形をしていてもよい。
【0023】
本発明の一態様によれば、樹脂は、図1Bで説明するように複合材料中、加工現場で活性化される。一態様によれば、融点が異なる、少なくとも二種の樹脂を複合材料に使用する。樹脂は、すべて他の処理工程以前に開繊ファイバーウェブ中に配合されていることが望ましい。最初の加熱工程で、融点がより低い第一樹脂が活性化され、好ましくは、第二樹脂がその場に仮止めされ、両樹脂が好ましくはファイバーウェブの上部またはその付近に位置するようにするので、その結果後の製造工程で、両樹脂が外れてウェブの中心または底部に向かって移動しないですむ。次の製造工程は、限定されないが、ステッチボンディングおよび/または収縮によりウェブの密度を増し、支持層をウェブに積層することを含む。嵩高化(バルキング)または収縮が終了後、第二の加熱工程で、残余の樹脂が活性化され、複合材料の上面に樹脂−ファイバーに富む層が形成される。本発明の構成では、単一または複数の樹脂系を使用しても、比較的にあまり樹脂を必要としないで、複合ウェブは、先行技術、すなわち米国特許6,063,473号に比して優れた柔軟性および成形適性が与えられる。本発明のすべての態様で、樹脂は複合材料中、合計30重量%未満使用する。
【0024】
発明の別の態様によれば、耐摩耗性複合材料は、図1Cで説明するように、複合ウェブ上部に形成された薄手の緻密化した、樹脂とファイバーのスキン(表皮)を含んでもよい。この薄手の緻密化したスキンは、熱圧を加えるか、または、第二加熱工程で生成できる。この薄手の緻密化したスキンは、複合ウェブの柔軟性を減少せずに摩耗抵抗を改善する。更に、複合材料内の樹脂の活性化は、複合材料の上部では樹脂の活性化が高く、複合材料の底部に向かっては樹脂の活性化がより低いという勾配に従って行っても良い。
【0025】
発明の別の態様によれば、複合材料は、開繊したファイバーウェブ中よく混和された単一の樹脂を含む。一態様では、樹脂がファイバー芯のまわりに鞘部を形成し、ついでこの鞘/芯ファイバーは、カード加工され、重ねられ、ニードルパンチしたウェブに形成される。別の態様では、樹脂は、カード加工し、ステープルファイバーと重ねた低デニールファイバー/フィブリルとして、開繊ファイバーウェブに添加されて、ニードルパンチしたウェブを形成する。図1Aおよび1Bで説明するように、これらのウェブは、上面にファイバー−オン−エンドループまたは遊離ファイバー端(フリーファイバーエンド)を有する。ウェブを加熱して部分的に樹脂を活性化させ、次いで冷却する。まだ柔軟な、活性化されたウェブは、その後、熱圧して更に樹脂を活性化させ、複合材料の上部に薄手の緻密化したスキンを形成してもよい。
【0026】
本発明の別の態様によれば、複合材料に使用した樹脂は、好ましくは低いメルトインデックスを有するので、短時間熱と圧力で処理すれば、薄手の緻密化したスキンを迅速に形成できるが、このとき、溶融した樹脂が流れて内部ファイバー交差を強化したり、あるいは複合材料の構造を強化したりすることがない。薄手の緻密化したスキンがこのように迅速に形成するので、複合材料の残部が固化するのを回避することで柔軟性が維持される。メルトインデックスは、熱可塑性のポリマーが、温度と圧力を規制した条件下で特定の毛細管を通過する重量の流速として定義される。メルトインデックスは、ASTM D1238規格またはISO 1133規格のいずれかにより測定できる。ASTM D1238では、既知の温度(例えば190℃)で10分間既知の力(例えば2.16kg)を負荷した時、直径0.0825インチ(2.1mm)の押し出し流度計(レオメーター)から押し出せる熱可塑性樹脂の量のg数を測定する。ISO 1133では、メルト・フローインデックスはメルト−容積−フロー・レート(MVR)またはメルト−重量−フロー・レート(MFR)のいずれかとして測定する。既知の温度(例えば160℃または190℃)で10分間、既知の力(例えば2.16kg)を負荷した時、直径2.095mm(0.0825インチ)の押し出し流度計(レオメーター)ダイから押し出せる量を、MVRはcmで表した容積で、MFRはgで表した重量で表す。ASTM D1238によるメルト・フローインデックスは、ISO 1133による重量フロー・レート(MFR)と等価である。メルトフロー・インデックスが高いと有利であると知られている点は、限定されないが、ヒートシール(溶封)で流れがより早いことと、硬化または活性化した樹脂の薄膜形成能力を含む。バインダー樹脂のメルトフローインデックスは、温度が160℃または190℃で、2.16kgの負荷で、好ましくは10分当たり約5gより大きく、より好ましくは、10分当たり約10gより大きく、最も好ましくは、10分当たり約15gをより大きいことが望ましい。
【0027】
本発明の別の態様によれば、本発明の複合材料は、一つにはバインダーが比較的低いメルトインデックスを有し、また一つには複合材料の中で使用された樹脂の量が少ないことと、また、活性化された樹脂が殆ど複合材料上部に集まり、強化層が実質的にバインダーを含まないという理由で、高度にエンボス加工しやすく、また高度に成形しやすい。本発明のさらに別の態様によれば、この複合材料はステッチボンド・強化糸が複合ウェブの底部のランダムファイバー層から分離してしまう程度までエンボス加工しやすく、また、成形しやすい。ステッチボンド・強化糸が弾性を有すると、それも複合材料に弾性を付加できる。
【0028】
好ましくは、ファイバーと共染出来る樹脂を選択するので、複合材料の表面が使用の間に使い古されても、使い古された範囲の色は材料の耐用年数も間は複合材料の残部と同じままである。
【0029】
本発明の上記の態様および他の利点を以下詳細に述べる。
上述のように、本発明によれば、複合材料は開繊ランダムファイバーウェブを含むが、それは、ファイバーが分離されている限り、完全に緊密に並列形に積み重ねられてさえいなければ、どんな構造のものも包含する。開繊ランダムファイバーウェブは、ステープルファイバーまたはフィラメントのファイバーから製造された大抵の不織布を含むが、この場合、ほとんどの個々のファイバーは、もし並列していても、少なくとも個々のファイバーの直径か断面ほどの距離だけお互いに離れて配置されているか、あるいは少なくとも一方向または一面に交差しているかであるので、該開繊ランダムファイバーウェブは、ファイバー、パルプ、パウダー、フィブリッド、ファイバー間のフィブリルのような微細固体形の樹脂または接着剤を取り込めるか、受け入れることができる。これら開繊ランダムファイバーウェブ不織布の例は、限定しないが、ニードルパンチ加工、スパンレイス加工、カード加工、エアレイド、あるいはスパンレイドウェブである。開繊ランダムファイバーウェブはさらにファイバー−オン−エンドあるいはパイル状ファイバーまたはウェブを含む。既に参照によってその全体が組み入れられている米国特許6,063,473号は、「パイル状のファイバー」またはウェブを、タフティング加工糸、ループパイル糸、カットパイル糸、座屈させた糸(バックルドヤーン)、テキスタイル・ファイバーの座屈させた不織布層から形成した反転U−字型ループ並びにビロード、ベロア、テリー織り布等のパイルファイバーと定義する。適切なパイル状のファイバーまたはウェブは、さらにブラッシング、シャリングか、その他同様に後処理で形成した開繊後のカットパイル、ベロア、またはビロードの織物を含む。微細固体形の樹脂または接着剤を取り込めるか、受け入れることができる限り、開繊ランダムファイバーウェブはさらに編織物布地を含んでもよい。適切な編織物布地は、ディミトリ・ザフィログル(Dimitri Zafiroglu)の「人造皮革用の複合シート」と題する米国特許5,707,710号に開示されている。米国特許5,707,710号全体を参照してここに組み入れることとする。適切な編織物は、一般に高度に加工(テクスチャー)した高融点糸で作られており、機械的方法または水流ニードリング法で開繊できる。より融点の低い糸も編むか織って編織物に形成出来る。
【0030】
適切な重合体樹脂には、これに限定しないが、ポリエステル、ナイロン、ポリアミド、合成ゴム、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエーテルエステル、ポリウレタン、およびこれの共重合体および混合物などが含まれる。樹脂は開繊ランダムファイバーウェブと共染性があり、そのために、複合シートを使い古しても同じ色を維持できることが望ましい。樹脂は安価であって、製造時の取り扱いが簡単であることも望ましい。樹脂は、開繊ランダムファイバーウェブのファイバーと一体に形成することができる、つまり、樹脂がウェブファイバーの断面の一部を形成するのである。この発明で樹脂バインダー成分と紡織ファイバー成分のようにファイバー構造に複数の一体化した部分を有するようなファイバーは、「二成分」ファイバーと呼ばれることがある。例えば、融点がより低い鞘部を樹脂から形成することができ、ファイバーからは、より高融点の芯部を形成することができる。別の例で、樹脂は、ウェブファイバーと並列させ同時押出しできる。一種以上の樹脂ファイバーをウェブファイバー芯部を囲むように同時押出しできる。
【0031】
微細な形状の樹脂、例えばパウダー、短繊維、フィブリル、またはパルプも散布するか、振りかけるか、あるいは固型粒子が乾燥後ウェブに残る限り水溶液として添加するかすれば、開繊ランダムファイバーウェブ中にに配合できる。微細な形状の樹脂を使用する場合、樹脂がウェブの上部かその付近に残ることが望ましい。微細な形状の樹脂を開繊ランダムファイバーウェブの断面全体に分布させることは無用である。これで、樹脂が複合材料全体に、侵入し、後に活性化されて複合材料が不必要に硬直するのが回避される。
【0032】
本発明の一態様によれば、低いメルトフロー・インデックスまたは低い溶融粘度を有する低融点熱可塑性樹脂は、どの処理工程の前にも、該樹脂を微細な固形状で充分にブレンドするか混入させることにより、開繊ランダムファイバーウェブ中に配合する。好ましくは、二種の樹脂を使用する。第一樹脂は第二樹脂より低い融点を持つようにする。両樹脂とも開繊ランダムファイバーウェブ中のファイバーより低融点にし、また、もし使用した場合には、ウェブを収縮または嵩高化(バルキング)に用いた糸よりも低い融点のものにする。樹脂は、開繊ランダムファイバーウェブ中のファイバーの融点より20〜50℃低い融点を有するのが望ましい。両方の樹脂は、上述のように微細な形状で開繊ランダムファイバーウェブに添加できる。好ましくは、より低融点の樹脂は、開繊ランダムファイバーウェブ中のファイバーの鞘部として形成される。
【0033】
好ましくは、第一加熱工程で、樹脂を含む開繊ランダムファイバーウェブを両樹脂の融点の間にある温度に加熱するが、その結果、第一樹脂が融解するにつれて、それが第二樹脂をその場に保持し、開繊ランダムファイバーウェブを強化するのを助けるようにすることが望ましい。後に、ウェブは、強化糸の網目組織または実質的に樹脂を含まない織物またはフィルムでウェブを裏打ちして強化してもよい。より低融点の第一樹脂を先に活性化するので、強化工程中、より高融点の第二樹脂が実質的にウェブの上部の場所またはその付近に残るのが有利である。これで、第二樹脂がウェブ中を移動して複合材料が不必要に硬直するのが避けられる。第二樹脂を活性化して複合材料を形成するために、第二加熱工程を樹脂−ウェブに適用する。樹脂は、摩耗が起こることになる複合材料の上部かその付近にのみ集中させ、樹脂の必要量を減らすのが望ましい。樹脂−開繊ランダムファイバーウェブは、もし使用していれば、強化材を除くと、厚さが約0.5〜約3.0mmの範囲で、基本重量(坪量)が約100〜約1000g/mの範囲で、密度が約0.1〜約0.7g/cmの範囲内にあり、好ましくは、樹脂を全重量の約30%未満含む。
【0034】
一態様では、強化工程の後に、樹脂−ウェブは、シートに垂直な方向へファイバーを再配向させ、かつその密度を増加させるために座屈(バックル)または収縮させる。樹脂−開繊ランダムファイバーウェブの収縮および座屈は、ウェブがファイバー不織布の層である場合、様々な方法で遂行できる。例えば、収縮性成分または収縮性の成分の列を、樹脂−開繊ランダムファイバーウェブに断続的に付着させる。付着位置間の間隔は効率的な座屈を考慮して典型的に少なくとも1mmである。その後、該成分または成分の列が収縮させられるので、樹脂−開繊ランダムファイバーウェブの面積が著しく減少し、ファイバー群がその層の面から坐屈[湾曲]する。収縮性の成分を付着させる前に、出発原料ファイバー不織布の層を収縮性の成分の付着用に使用する装置に過剰供給して、該不織布層に余分のギャザー(ひだ)を寄せるか、あるいはその層を収縮させることができる。
【0035】
本発明で使用するのに多くの種類の収縮性成分が適当である。例えば、樹脂−開繊ランダムファイバー不織ウェブは、張力下、弾性糸でステッチボンドすることができる。加工(テクスチャー)ストレッチヤーン、被覆または単体スパンデックス糸などは、収縮性成分を縫い合わせるのに適当な糸である。縫合後に、張力を解いて樹脂−開繊ランダムファイバーウェブに所望の収縮および坐屈を引き起こす事が出来、および/または加熱して、縫い糸を収縮させることができる。縫い合わせる代わりに、ワープ、クロスワープ、フィルム等の形の延伸した弾性成分を断続的に、樹脂−開繊ランダムファイバーウェブに対して、水流交絡(ハイドロリック・エンタングルメント)、接着、またはホットポイント・ボンディングなどで付着できる。その後、伸長した成分に負荷した張力を解除し、ウェブに所望の収縮および坐屈を起こす事ができる。
【0036】
熱、湿気、化学薬品等で処理すると収縮する他の種類の収縮性成分は、該成分に最初、張力を負荷したり伸長したりせずに、ファイバー性不織布の層に断続的に付着できる。付着後、適切な処理で、収縮性成分の収縮を起こさせることができる。
【0037】
樹脂−開繊ランダムファイバーウェブの収縮と坐屈を実施する更に別の方法は、引っ張る方向に垂直な方向にネックインする伸縮性基材にウェブを断続的に付着させることを含む。例えば、ある基材は、一方向へ15%伸長すると、自動的に伸張方向と垂直な方向へ実質的に不可逆な、伸張%の二,三倍の収縮(つまり、ネックイン)を起こさせることができる。従って、伸長とネックイン操作以前にファイバー不織布の層を適切に伸縮性基材へ断続的に付着させ、次に組み合わせた層と基材に伸長力を適用すると、著しくファイバー不織布の層の面積が減少し、本発明の製造法が要求するように、ファイバー群を坐屈させることができる。
【0038】
本発明の製造法の他の態様では、樹脂−開繊ランダムファイバーウェブは、編織物の従来の糸から導かれ、これと収縮性成分で構成する。収縮性成分が収縮すると織物の面積が著しく減少し、布地の従来の糸がギャザーを寄せ、坐屈して布地の面から凸出する。別の態様では、開繊ランダムファイバーウェブは、弾性混合糸の収縮性芯の軸の周囲を緩く巻き付けられていたラッッピング糸から突き出るファイバーまたはファイバーのループを含む。
【0039】
更に、この製造法の他の態様では、開繊ランダムファイバーウェブは、収縮した実質的に結合していないファイバー不織布、収縮した混合糸の緩いラッピング糸、および/または坐屈した非弾性糸との組み合わせから導かれる。開繊ランダムファイバーウェブが部分的にまたは全部、編織物から誘導された坐屈した糸から形成されている態様では、編織物が充分きめが荒いので、糸が適度に坐屈することができる。典型的に、坐屈した成分は、坐屈以前、平らな部分の長さが少なくとも1mmである。さらに別の態様では、タフティング加工した布地を収縮させて、本発明の複合シート用に該タフティング加工したパイルファイバーの密度を上げる。
【0040】
別の態様では、様々な複合材料/収縮性糸を使用して製品を形成する。このような糸は、従来の非収縮性「ラッピング」糸または「カバー」糸で被覆した収縮性芯(例えば弾性糸か収縮性の糸による)を有する。ラッッピング糸またはカバー糸はどんな天然または合成繊維でもよい。ラップ部は弾性の芯が張力下にある間、従来の巻付け(ラッピング)、巻取り、堆積、被覆、空気ジェット交絡、またはインターミングリング(相互混合)法などで弾性の芯と組み合わせてよい。芯は任意の弾性または収縮性材料の糸またはモノフィラメントでよい。スパンデックス系糸の芯が望ましい。高収縮性ポリエステルPOYのような部分的に配向した糸(POY)の芯も望ましい。ラッピング糸を、張力下にある伸長された芯と緩く(例えば3巻き/インチ[118巻き/m]未満)組み合わせると、張力を解除した時に芯が収縮し、ラッピング糸が収縮して、芯に垂直に坐屈する。同様に、この混合糸が嵩高化可能(バルカブル)ラッピング糸と緩く組み合わされた収縮性糸の芯を有する場合、芯の収縮時、ラッピング糸は坐屈することになる。布地が、張力下、混合糸と編むか、織るか、またはステッチボンドされている場合、混合糸から張力を解除すると、糸が収縮し、ラッピング糸が坐屈して表層にパイル状のファイバーを形成する。この態様で、バインダーは固型で添加できるが、その際、被覆用糸成分の一部として低融点糸を用いるか、あるいは鞘/芯型の低溶融点/高融点糸でさえ、被覆用糸システムの全部又は一部として用いる。バインダーは亦、粉末かフィブリルの形で、収縮以前、最中、またはその後に、糸または形成済みのシート中に添加できる。
【0041】
収縮工程は、樹脂の添加前か添加中に実施することが望ましい。樹脂−開繊ランダムファイバーウェブを上述のように網目組織で強化すると、望ましい耐摩耗性複合材料を製造するのに、樹脂は全複合材料の僅か約30重量%以下で済むので、耐摩耗性複合材料の製造費が節減になる。これは既知の先行技術に対して著しい改善である。
【0042】
発明の別の実施例によれば、圧力は、第二の加熱工程と共に、例えば熱盤(プラテン)、熱ロール、熱ベルト等を、収縮後の樹脂−開繊ランダムファイバーウェブの上部に対して適用するが、その際冷たいプレートを底部に当てて、プレスするか、あるいは第二加熱工程直後にプレスする。
【0043】
熱および圧力が加えられたため、複合材料には、摩耗に耐え、複合材料を曲げた時にひびが入るのを防ぐ薄手の緻密化したスキンが設けられる。この薄手の緻密化したスキンは、表面に高いストレスを生ずることなく、繰り返し曲げ、または、屈曲できるので、ある種のポリウレタンのような高価な高伸長性樹脂の利用を必要とせずに、複合材料に高度な屈曲ひび割れ抵抗をもたらすのである。複合材料の残りの厚さ部分は、密度がより低いので、複合材料はより高い可撓性および柔軟性を有する利点がある。
【0044】
さらに、以下実施例2、6および7に説明するように、樹脂が好ましい低いメルトインデックスを有するために、短時間、熱と圧力を複合材料に加えるだけで薄手の緻密化したスキンが生成する。かけた時間が短いので、熱が複合材料の厚み部分全体を通して伝導出来ず、複合材料の厚み部分を通して温度勾配が生ずる。この温度勾配のために、樹脂の活性化はこれに似た勾配に従って起こり、ホットプレートの近くで活性化度が高く、冷たいプレートの近くで活性化度が低くなる。この活性化勾配は、複合材料内に樹脂活性化が急激に局所的差異を起こすのを防ぎ、したがって、曲げたり屈曲する時に複合材料の内部にストレスが高い領域が発生するのを最小限にとどめる。
【0045】
本発明の耐摩耗性の複合シートは、様々な品物に使用するのに適当である。本シートは様々な形の品物に成型することができ、単一層か多層として使用することができ、あるいは様々な手段で色々な形の品物の表面に付着できる。例えば、本発明の複合シートは、靴の甲革、作業用手袋、自動車エンジンのタイミングベルト、革様の衣服、屋内運動用の保護パッド、婦人用ハンドバッグ、旅行鞄類、鞍、座席面などの使用に適している。本発明の中でより耐摩耗性の複合シートは、靴の爪先、踵、および/または靴底;コンクリートの床上でよく引きずられる工業用バッグの底部;相互作用する機械部品の座面、サッカーボール、耐久作業用ブーツ、グローブ、モータサイクル運転者用服のパッド等のような特により過酷な摩耗条件にさらされる製品に適している。
【0046】
ここに使用した、布地またはファイバー層の基本重量(坪量)または単位重量は、ASTM D3776−79法により測定する。樹脂入り布地の密度は、その単位重量および測定した厚さから決める。過剰供給比、収縮比、ギャザー量合計はここに報告するパラメーターであって、ファイバー層を処理後、どの程度元のファイバー層が収縮するか、あるいはギャザーが寄せられるかの尺度である。
【0047】
坐屈した不織布のファイバー層を使用する本発明の態様にのみ適用する過剰供給比と言う言葉は、出発原料ファイバー不織布の層の元の面積の、最初の処理工程(例えばステッチ−ボンド工程)の直ぐ上流の層の面積に対する比として定義する。過剰供給のために、不織布の層は、それが処理工程に供給されている方向に坐屈、ギャザー、または圧縮する。収縮比は、不織布の層が特定の処理工程(例えばステッチ−ボンド工程、ファイバー層が断続的に付着されていた糸から張力の解除)の結果該不織布の層が一層収縮する大きさの尺度である。収縮比は、特定の処理工程に入る時のファイバー層の面積を該特定の処理工程を経て出る時のファイバー層の面積で除したものである。ギャザの合計は過剰供給と収縮比の積として定義する。もとの面積の割合はギャザの合計の逆数であり、ファイバー層の最終面積の、出発原料ファイバー層の元面積に対する比と等価である。
【0048】
試料の摩耗抵抗を決定するために、イリノイ州キャンカキーのJ.K.テクノロジーズ社製ワイゼンビーク(Wyzenbeek)「精密摩耗テスト・メーター」(Wyzenbeek “Precision Wear Test Meter,” manufactured by J.K. Technologies Inc.of Kankakee,Ill)を試験装置の振動ドラムの周囲を80番(または40番)エメリークロスで包んで使用する。ドラムは、6ポンド(2.7kg)の負荷の下、毎分90サイクルで試料面上を端から端まで往復振動する。測定試験は、ASTM D4157−82の一般法に従って行なわれる。所定の摩耗サイクルの前後で試料の厚さを前述の厚さゲージで測定して、1,000サイクル当り摩滅した mm厚さを測定する。ここで注意することは、40番ペーパーで得た厚さの摩耗速度は、普通80番ペーパーの摩耗速度の約4〜8倍の大きさであることである。
【0049】
試料の可撓性または屈曲抵抗は、バリー屈曲計(スイス、ショエネンワードのバリー・シュウファブリケン社製)(Bally Flexometer (Bally SchuhFabriken AG,Schoenenwerd,Switzerland)を用いる国際革化学者連合(International Union of Leather Chemists Association)のIUF 20法に基づいて決める。複合材料試料(65mm×40mm)を屈曲させ、予め規定した屈曲数に達した後、損傷具合を調べた。10以上の小さなひびが試料に最初に現われたサイクル数を記録した。典型的には、乾燥条件下で10以上の小さなひびを生じないで最低10,000回屈曲すれば、合格と見なされる。
【0050】
上に述べ、後に実施例8で更に詳細に述べるように、本発明の有利な態様は本発明の耐摩耗性複合ウェブの成形適性とエンボス適性を含む。成形適性係数Mは図2Aに従って定義するが、同図は本発明の複合材料の一部が任意の形、例えば図示のようにドームまたは半円形に成形・形成中であることを示す。成形適性係数Mは、成型された形に沿って測定した弧の長さYの、成型された形の基底の直線長さXに対する比として定義される。成形適性係数は、少なくとも約1.3より大きく、より好ましくは約1.5より大きく、最も好ましくは2.0より大きいことが望ましい。換言すれば、M=1.3、好ましくは、M=1.5、そして最も好ましくは、M=2.0。任意の形とは、多角形、円形、放物線状等どんな形も含む。
【0051】
エンボス加工適性係数Eは、図2Bに従って定義されるが、同図は本発明の複合材料の一部がエンボス加工中であるのを示す。エンボス加工適性係数Eは、複合材料の圧縮されていない厚さTの複合材料の圧縮した厚さZに対する比として定義される。エンボス加工適性係数Eは約2より大きく、好ましくは約3より大きく、さらに好ましくは、約4より大きいことが望ましく、また約6より大きくてよい。換言すれば、E=2、好ましくは、E=3、好ましくは、E=4またはE=6。図2Bでは、エンボス加工された複合シートは比較的平らな底面を有するように示されるている。しかし、底面はどんな形を有していてもよい、例えば、エンボス加工複合シートは波状形でもよい。
【0052】
本発明で思考した態様の中に下記のものが含まれている。
【0053】
1.上面付近に実質的に垂直なファイバーを有する開繊ランダムファイバーウェブと開繊ランダムファイバーウェブ内でよく混和されている固形バインダー樹脂を含む耐摩耗性シートにおいて、バインダー樹脂の融点が開繊ランダムファイバーウェブ中のウェブファイバーの融点より低く、上面付近のウェブファイバーとバインダー樹脂が薄手の緻密化層を形成し、該耐摩耗性シートが80番研磨紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル耐久可能であることを特徴とする耐摩耗性シート。
2.耐摩耗性シートを前記バインダー樹脂の融点を越える温度に加熱したプレートと非加熱のプレートの間でプレス加工することにより薄手の緻密化層を形成することを特徴とする思考態様1の耐摩耗性シート。
3.バインダー樹脂が樹脂−ファイバーを含み、樹脂−ファイバーおよびウェブファイバーがニードルパンチされて開繊ランダムファイバーウェブを形成することを特徴とする 思考態様1の耐摩耗性シート。
4.バインダー樹脂がウェブファイバーの断面の一部を形成することを特徴とす思考態様1の耐摩耗性シート。
5.バインダー樹脂およびウェブファイバーをニードルパンチされて、開繊ランダムファイバーウェブを形成するすることを特徴とする思考態様4の耐摩耗性シート。
6.約2より大きいエンボス加工適性係数を有することを特徴とする、思考態様1の耐摩耗性シート
7.約6未満のエンボス加工適性係数を有することを特徴とする、思考態様1の耐摩耗性シート。
8.ファイバー樹脂およびウェブファイバーが共染可能であることを特徴とする思考態様1の耐摩耗性シート。
9.ファイバー樹脂が耐摩耗性シートの30重量%未満を構成することを特徴とする思考態様1の耐摩耗性シート。
10.上面付近に実質的に垂直なファイバーを含む開繊ランダムファイバーウェブと、少なくとも第一バインダー樹脂とを含む耐摩耗性シートにおいて、該第一バインダー樹脂の融点が開繊ランダムファイバーウェブ中のウェブファイバーの融点より低く、樹脂とファイバーが上面に樹脂−ファイバーに富む領域を形成し、バインダー樹脂の合計量が耐摩耗性シートの約30重量%以下を構成し、該耐摩耗性シートが80番研磨紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル耐久可能であることを特徴とする耐摩耗性シート。
11.開繊ランダムファイバーウェブがウェブにステッチボンドされた糸で強化されることを特徴とする思考態様10の耐摩耗性シート
12.ステッチボンドされた開繊ランダムファイバーウェブを収縮することを特徴とする思考態様11の耐摩耗性シート
13.複合シートが更に樹脂−ファイバー領域の上面に薄手の緻密化層を含むことを特徴とする思考態様10の耐摩耗性シート。
14.第一バインダー樹脂がウェブファイバーの断面の一部を形成することを特徴とする思考態様10の耐摩耗性シート。
15.第一バインダー樹脂が粉末の形で開繊ランダムファイバーウェブに添加されることを特徴とする思考態様10の耐摩耗性シート。
16.更に第二バインダー樹脂を含み、第二バインダー樹脂の融点がウェブファイバーの融点より低く、第一樹脂バインダーの融点より高いことを特徴とする思考態様10の耐摩耗性シート。
17.第二バインダー樹脂がウェブファイバーの断面の一部を形成することを特徴とする思考態様16の耐摩耗性シート。
18.第二バインダー樹脂が粉末の形で開繊ランダムファイバーウェブに添加されることを特徴とする思考態様16の耐摩耗性シート
19.耐摩耗性のウェブが約2より大きなエンボス加工適性係数を有することを特徴とする思考態様10の耐摩耗性シート。
20.エンボス加工適性係数が約6未満であることを特徴とする思考態様19の耐摩耗性シート
21.ファイバー樹脂およびウェブファイバーが共染可能であることを特徴とする思考態様10の耐摩耗性シート。
22.バインダー樹脂の合計量が耐摩耗性シートの約20重量%以下を構成することを特徴とする思考態様10の耐摩耗性シート。
23.バインダー樹脂の合計量が耐摩耗性シートの約10重量%以下を構成することを特徴とする思考態様22の耐摩耗性シート。
24.上面付近に実質的に垂直なファイバーを有する開繊ランダムファイバーウェブ、第一バインダー樹脂、および第二バインダー樹脂を含む耐摩耗性シートにおいて、該第一バインダー樹脂の融点が第二バインダー樹脂の融点より低く、第二バインダー樹脂の融点がウェブの融点より低く、樹脂がウェブファイバーと加工現場で活性化されることで、樹脂−ファイバーに富む領域が上面に形成され、該耐摩耗性シートが80番研磨紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル耐久可能であることを特徴とする耐摩耗性シート。
25.第一バインダー樹脂が開繊ランダムファイバーウェブ内でよく混和されることを特徴とする思考態様24の耐摩耗性シート。
26.上面付近に実質的に垂直なファイバーを有する開繊ランダムファイバーウェブと少なくとも第一バインダー樹脂を含む耐摩耗性シートにおいて、該第一バインダー樹脂の融点が開繊ランダムファイバーウェブのウェブファイバーの融点より低く、樹脂とファイバーが樹脂−ファイバーに富む領域を上面に形成し、バインダー樹脂のメルトフローインデックスが10分当り約5gより大きく、該耐摩耗性シートが80番研磨紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル耐久可能である耐摩耗性シート。
27.複合シートが更に樹脂−ファイバー領域の上面に薄手の緻密化層を含むことを特徴とする思考態様26の耐摩耗性シート。
28.薄手の緻密化層が、耐摩耗性シートを第一バインダー樹脂の融点より高い温度に加熱された成形用具と、受け具間でプレスすることで形成されることを特徴とする思考態様27の耐摩耗性シート。
29.バインダー樹脂のメルトフロー・インデックスが10分当たり約10gより大きい思考態様26の耐摩耗性シート。
30.バインダー樹脂のメルトフロー・インデックスが10分当たり約15gより大きいことを特徴とする思考態様27の耐摩耗性シート。
31.上面付近に実質的に垂直なファイバー有する開繊ランダムファイバーウェブと少なくとも第一バインダー樹脂を含む耐摩耗性シートにおいて、該第一バインダー樹脂の融点が開繊ランダムファイバーウェブのウェブファイバーの融点より低く、樹脂とファイバーが上面に樹脂−ファイバーに富む領域を形成し、第一バインダーの活性化は開繊ランダムファイバーウェブ樹脂内の勾配に従って行われ、該耐摩耗性シートが80番研磨紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル耐久可能であることを特徴とする耐摩耗性シート。
32.上面付近に実質的に垂直なファイバーを有する開繊ランダムファイバーウェブと少なくとも第一バインダー樹脂を含む耐摩耗性シートにおいて、該第一バインダー樹脂の融点が開繊ランダムファイバーウェブのウェブファイバーの融点より低く、樹脂とファイバーが上面に樹脂−ファイバーに富む領域を形成し、該耐摩耗性シートが80番研磨紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル耐久でき、該耐摩耗性シートが約2より大きいエンボス加工適性係数を有することを特徴とする耐摩耗性シート。
33.エンボス加工適性係数が約6未満であることを特徴とする思考態様32の耐摩耗性シート。
34.エンボス加工適性係数が約5.0であることを特徴とする思考態様32の耐摩耗性シート。
35.上面付近に実質的に垂直なファイバーを有する開繊ランダムファイバーウェブと少なくとも第一バインダー樹脂を含む耐摩耗性シートにおいて、該第一バインダー樹脂の融点が開繊ランダムファイバーウェブのウェブファイバーの融点より低く、樹脂とファイバーが上面に樹脂−ファイバーに富む領域を形成し、該耐摩耗性シートが80番研磨紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル耐久でき、該耐摩耗性シートがエンボス加工後少なくとも一方向に少なくとも90%の回復下、少なくとも20%の伸びを示すことを特徴とする耐摩耗性シート。
36.少なくとも一方向に少なくとも90%の回復下、少なくとも30%の伸びを示すことを特徴とする思考態様35の耐摩耗性シート。
37.(a)上面付近に実質的に垂直なファイバー、少なくとも第一バインダー樹脂、および第二バインダー樹脂を有する開繊ランダムファイバーウェブであって、第二バインダー樹脂の融点が第一バインダー樹脂の融点より高く、開繊ランダムファイバーウェブのウェブファイバーの融点より低い開繊ランダムファイバーウェブを用意する工程;
(b)少なくとも部分的に第一バインダー樹脂を活性化する工程;
(c) 該ウェブを強化する工程;
(d) 少なくとも部分的に第二バインダー樹脂を活性化してウェブの上面にファイバー−樹脂に富む領域を形成する工程から成ることを特徴とする耐摩耗性シートの製造法
38.工程(c)がウェブをステッチボンドすることを含むことを特徴とする思考態様37の製造法。
39.工程(c)の後に更にウェブを収縮する工程を含むことを特徴とする思考態様37の製造法。
40.工程(d)の後に更に熱圧して薄手の緻密化層を形成する工程を含むことを特徴とする思考態様37の製造法。
41.工程(a)が該バインダー樹脂をウェブファイバーの断面の一部として形成することにより第一バインダー樹脂を添加することを特徴とする思考態様37の製造法。
42.工程(a)が第一バインダー樹脂を微細固体形でウェブ上に散布することにより第一バインダー樹脂を添加することを特徴とする思考態様37の製造法。
43.工程(a)が第二バインダー樹脂を添加するにあたり、該バインダー樹脂をウェブファイバーの断面の一部として形成することを含むことを特徴とする思考態様37の製造法。
44.工程(a)が第二バインダー樹脂を添加するにあたり、該第二バインダー樹脂を微細固体形でウェブ上に散布することを含むことを特徴とする思考態様37の製造法。
45.更に樹脂の重量%を30%未満に維持する工程を含むことを特徴とする思考態様37の製造法。
46.更に、約2より大きなエンボス加工適性係数で耐摩耗性シートをエンボス加工する工程を含むことを特徴とする思考態様37の製造法。
47.更に、耐摩耗性シートのウェブファイバーと樹脂を同時に染色する工程を含むことを特徴とする思考態様37の製造法。
48.(a)上面付近に実質的に垂直なファイバーとバインダー樹脂を有する開繊ランダムファイバーウェブであって、該バインダー樹脂が開繊ランダムファイバーウェブ内でよく混和させてあり、かつ該バインダー樹脂の融点が開繊ランダムファイバーウェブのウェブファイバーの融点より低い開繊ランダムファイバーウェブを用意する工程;
(b)少なくとも部分的にバインダー樹脂を活性化し、ウェブを冷却する工程;そして
(c) 該ウェブを熱圧して、ウェブ上に薄手の緻密化スキンを形成する工程から成ることを特徴とする耐摩耗性シートの製造法。
49.工程(a)が、開繊ランダムファイバーウェブを形成するためにファイバーをニードルパンチする工程を含むことを特徴とする思考態様48の製造法
50.工程(a)がファイバーの断面の一部としてバインダー樹脂を形成する工程を含むことを特徴とする思考態様48の製造法。
51.工程(a)がバインダー樹脂ファイバーを用意し、該バインダー樹脂ファイバーをウェブファイバーと組み合わせて開繊ランダムファイバーウェブを形成する工程を含むことを特徴とする思考態様48の製造法。
52.組み合わせる工程がファイバーをニードルパンチすることを含むことを特徴とする思考態様51の製造法。
53.(a)上面付近の実質的に垂直なファイバーと少なくとも第一バインダー樹脂とを有する開繊ランダムファイバーウェブであって、該バインダー樹脂が開繊ランダムファイバーウェブに添加されており、かつ該バインダー樹脂の融点が開繊ランダムファイバーウェブ内のウェブファイバーの融点より低い開繊ランダムファイバーウェブを用意する工程;
(b)ウェブ内のバインダー樹脂を少なくとも部分的に活性化する工程;そして
(c) 樹脂の重量%を30%未満に維持する工程から成ることを特徴とする耐摩耗性シートの製造法。
54.更にウェブを熱圧して、ウェブ上に薄手の緻密度化したスキンを形成する工程を含むことを特徴とする思考態様53の製造法。
55.更に工程(a)の開繊ランダムファイバーウェブに、第二バインダー樹脂が添加されることを含むことを特徴とする思考態様53の製造法。
56.更に第二バインダー樹脂を活性化する工程を含むことを特徴とする思考態様55の製造法。
57.更に開繊ランダムファイバーウェブを強化する工程を含むことを特徴とする思考態様53の製造法。
58.強化工程がウェブをステッチボンドすることを含むことを特徴とする思考態様57の製造法。
59.更に開繊ランダムファイバーウェブを収縮する工程を含むことを特徴とする思考態様58の製造法。
60.ファイバーを、ファイバーの融点より10−50℃低い融点を有する、約30重量%未満の量の固形の熱可塑性・非弾性系の樹脂と混和し、開繊された低密度のファイバー/樹脂複合シートを形成する製造法において、表面のファイバーはシートに対して主に垂直に配向し、シートの重さが150〜1500g/mで、厚さが1〜6mmであり、シートの形成中または形成後に複合物を前記二成分の融点間の温度で加熱して樹脂を融解させ、ファイバーをその場で相互に接着させて密度を0.1〜0.7g/cc、厚さを1〜3mmにする製造法。
【0054】
本発明は、ここにその代表的な態様の実施例で説明する。別記しない限り、部、比率、および%はすべて重量による。元々SI(国際単位)で得られていない重量と寸法の単位はすべてSI単位に変換した。
以下検討した実施例は、すべて、典型的に80番[研磨]紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)試験で約3,000サイクル耐久可能であるので、つまり、複合材料が擦り切れないとして一般に合格とされている耐摩耗性複合材料に比較して優れている。更に、上述のように、10個以上の小さなひびを生じないでバリー屈曲試験を10,000回持続する複合材料は合格とみなされる。
【実施例1】
【0055】
開繊ランダムファイバーウェブ
4デニール/フィラメント(“dpf”)[1本のフィラメント当たり4.4x10−7kg/m]の鞘/芯ポリエステル90%および6dpf(1本のフィラメント当たり6.7x10−7kg/m)の高融点ステープルポリエステル10%のブレンドから成る、カード加工したウェブである。鞘/芯ポリエステルは、融点110℃の鞘部50%と融点235℃の芯50%から成る。カード加工ウェブの基本重量(坪量)は約23g/mである。
【0056】
樹脂
第一樹脂は、該開繊ランダムファイバーウェブの鞘/芯成分の融点110℃のポリエステル鞘成分である。
【0057】
第二樹脂は、開繊ランダムファイバーウェブ(「樹脂−ファイバーウェブ」)上に散布された融点126℃のポリエステル・パウダーである。
【0058】
第一加熱工程
樹脂−ファイバーウェブは、第一樹脂を融解し、第二樹脂を仮止めするために約5秒間、ほぼ120℃に加熱した室を通過させた。
【0059】
樹脂−ファイバーウェブは、ポリエステル鞘第一樹脂約19%、ポリエステル芯ファイバー約19%、ポリエステル・パウダー第二樹脂57−58%、および6−dpf(1本のフィラメント当たり6.7x10−7kg/m)ポリエステル・ステープルファイバー4%から成る。第一加熱工程後の樹脂−ファイバーウェブの基本重量(坪量)は、約61g/mである。
【0060】
強化工程
前記部分的に接合した樹脂−ファイバーウェブを、ゲージ14、1インチ(cpi)当たり14コース[5.5/cm]で2本のバー[針棒]を使用して、幅150インチ(381cm)のリバ(Liba)ステッチ−ボンド機でステッチ−ボンドした。バックバーは、1−0、3−4の繰り返しステッチパターンで220デニール/50フィラメント(50本のフィラメント当たり244x10−7kg/m)の強力加工(テキスチャー)ポリエステル糸を縫い付ける。フロントバーは70デニール(78x10−7kg/m)加工(テキスチャー)ポリエステルで空気交絡(エアタングル)した280デニールの(311x10−7kg/m)ライクラ糸Rを1−0、2−3の繰り返しステッチパターンで縫い付ける。樹脂−ファイバーウェブは29%過剰供給した。
【0061】
ステッチ−ボンドした樹脂−ファイバーウェブは、基本重量(坪量)が約160g/mで、第一樹脂約3%、第二樹脂20%、6−dpf(1本のフィラメント当たり6.7x10−7kg/m)と芯ポリエステルファイバーとの合計10%、およびステッチ−ボンド糸合計67%から成る。ステッチ−ボンドされた樹脂−ファイバーウェブの総計樹脂含量は、全重量の約23%に過ぎなく、上部ファイバー面の約70%である。従って、合計樹脂%が低い、つまり30%未満であるにも関わらず、上部ファイバー面は樹脂−ファイバーに富む。
【0062】
収縮/嵩高化(バルキング)(第二加熱)工程
ステッチ−ボンドされた樹脂−ファイバーウェブをその後、約190℃で約30秒間、織物のテンター枠で処理した。ウェブは、縦(機械)方向および横方向の両方に約2.3倍[つまり、約2.3分の1に]収縮した。最終複合材料の基本重量(坪量)は、約850g/m2であり、最終厚さは約2.04mmである。最終密度は全体の構造に基づくと約0.41g/cmで、ステッチ−ボンド糸を除いた構造に基づけば約0.19g/cmである。
【0063】
試験結果
実施例1に従って作成した試料は、80番研磨紙を用いたワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも6,000サイクル耐久可能で、バリー屈曲(Bally Flex)法では15,000サイクル耐久可能である。
【実施例2】
【0064】
開繊ランダムファイバーウェブ
実施例1と同一。
【0065】
樹脂
第二ポリエステル樹脂の量を約30%増加する以外は実施例1と同一。
【0066】
第一加熱工程
実施例1と同一。
【0067】
樹脂−ファイバーウェブはポリエステル鞘第一樹脂約16%、ポリエステル芯ファイバー約16%、ポリエステル・パウダー第二樹脂63−64%および6−dpfポリエステル・ステープルファイバー4%から成る。第一加熱工程後の樹脂−ファイバーウェブの基本重量(坪量)は、約75g/mである。
【0068】
強化工程
実施例1と同一であるが、より嵩高の不織布に適合するために糸の供給速度をリセットした。糸の消費量は実施例1より多かった。
【0069】
基本重量(坪量)が約260g/mで、第一樹脂約5%、第二樹脂21%、6−dpf(1本のフィラメント当たり6.7x10−7kg/m)と芯ポリエステルファイバーの合計8%およびステッチ−ボンド糸を68%から成る。ステッチ−ボンドした樹脂−ファイバーウェブの総計樹脂含量は、全複合材料重量の約26%に過ぎないが、上部ファイバー面の約81%である。従って、実施例1同様、樹脂%の合計が30%未満であるにも関わらず、上部ファイバー面は樹脂−ファイバーに富む。
【0070】
収縮/嵩高化(バルキング)(第二加熱)工程
実施例1と同様。
【0071】
最終複合材料の基本重量(坪量)は、約1152g/でm最終厚さは約2.93mmである。全構造に基づく最終密度は約0.41g/cmで、ステッチ−ボンド糸を除いた構造に基づけば約0.13g/cmである。
【0072】
試験結果
実施例2によって作成した試料は、80番研磨紙を用いたワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも4,500サイクル耐久可能で、バリー屈曲(Bally Flex)法では30,000サイクル耐久可能であ。
【0073】
熱圧工程の追加
収縮後の複合材料を、ギャップ2.0mmにセットして約1秒間220℃で一面だけから熱圧でプレスした。この熱圧した複合材料は、最終厚さ1.6mmで、上述のように薄手の緻密化したスキンを有する。この薄手の緻密化したスキンは樹脂およびファイバーに富む。この熱圧された複合材料は80番研磨紙を用いたワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で9,000サイクル耐久可能で、熱圧前の複合材料で行った同じ試験の結果の二倍である。
【実施例3】
【0074】
開繊ランダムファイバーウェブ
カード加工したウェブは、鞘/芯部ナイロンから成る。鞘/芯ナイロンは、融点140℃の鞘50%と融点225℃の芯50%から成る。カード加工したウェブの基本重量(坪量)は約26g/mである。
【0075】
樹脂
第一樹脂は、開繊ランダムファイバーウェブに散布した融点95℃のポリアミド・パウダーである(「樹脂−ファイバーウェブ」)。
【0076】
第二樹脂は、開繊ランダムファイバーウェブの鞘/芯成分の融点140℃を有するナイロン鞘成分である。
【0077】
第一加熱工程
樹脂−ファイバーウェブは、第一樹脂を融解し、第二樹脂を仮止めするために約5秒間ほぼ120℃に加熱した室を通過させた。樹脂−ファイバーウェブはナイロン鞘/芯約90%とポリアミド・パウダー樹脂約10%から成り、基本重量(坪量)は、約26g/mである。
【0078】
強化工程
部分的に接合した樹脂−ファイバーウェブを、ゲージ14、16CPI[1インチ当たりコース16][6.3/cm]で2本のバーを使用して、幅150インチ(381cm)のリバ(Liba)ステッチ−ボンド機でステッチ−ボンドした。バックバーは、1−0、3−4の繰り返しステッチパターンで270デニール/34フィラメント(34本のフィラメント当たり297x10−7kg/m)の部分的に配向した糸(POY)を縫い付ける。フロントバーは70デニール/34フィラメント(34本のフィラメント当たり79x10−7kg/m)加工(テキスチャー)ポリエステルを3−4、1−0の繰り返しステッチパターンで縫い付ける。樹脂−ファイバーウェブは9%過剰供給した。
【0079】
ステッチ−ボンドした樹脂−ファイバーウェブは、基本重量(坪量)が約155g/mで、第一低融点樹脂約2%、第二樹脂8%、ナイロン芯ファイバー8%、およびステッチ−ボンド糸合計82%を含む。ステッチ−ボンドした樹脂−ファイバーウェブの総計樹脂含量は、全重量の約10%に過ぎなく上部ファイバー面の約45%である。
【0080】
収縮/嵩高化(バルキング)(第二加熱)工程
ステッチ−ボンドした樹脂−ファイバーウェブは、その後、190℃で約30秒間、織物のテンター枠で処理した。ウェブは、縦(機械)方向に約30%横方向に約60%収縮した。最終複合材料の基本重量(坪量)は、約531g/mで、最終厚さは約1.52mmである。全構造に基づく最終密度は約0.35g/cmで、ステッチ−ボンド糸を除いた構造に基づけば約0.04g/cmである。
【0081】
試験結果
実施例3によって作成した試料は、80番研磨紙を用いたワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも6,000サイクル耐久可能で、バリー屈曲(Bally Flex)法では42,000サイクル耐久可能である。
【実施例4】
【0082】
開繊ランダムファイバーウェブ
カード加工したウェブは、鞘/芯ポリエステル4dpf(フィラメント当り4.4x10−7kg/m)ファイバーから成る。第一鞘/芯ファイバーはウェブの80%を構成し、そのポリエステル(PET)鞘部は融点180℃を有し、第二鞘/芯ファイバーはウェブの20%を構成し、そのポリエステル(PET)鞘部は融点110℃を有する。芯部の融点は225℃である。第一鞘/芯ファイバーは、鞘40%と芯60%から成る。第二鞘/芯ファイバーは、鞘50%と芯50%から成る。カード加工したウェブの基本重量(坪量)は約26g/mである。
【0083】
樹脂
第一樹脂は、融点110℃の第二鞘/芯[ポリエステルの]PET鞘部である。
【0084】
第二樹脂は、融点180℃の第二鞘/芯[ポリエステルの]PET鞘部である。
【0085】
第一加熱工程
樹脂−ファイバーウェブは、第一樹脂を融解し、第二樹脂を仮止めするために約5秒間ほぼ120℃に加熱した室を通過させた。
【0086】
樹脂−ファイバーウェブはPET樹脂約42%とポリエステルステープルファイバー約58%から成り、基本重量(坪量)は、約26g/mと比較的低い。
【0087】
強化工程
部分的に接合した樹脂−ファイバーウェブを、ゲージ14、16CPI[1インチ当たりコース16][6.3/cm]で2本のバーを使用して、幅150インチ(381cm)のリバ(Liba)ステッチ−ボンド機でステッチ−ボンドした。バックバーは、1−0、3−4の繰り返しステッチパターンで270デニール/34フィラメント(34本のフィラメント当たり297x10−7kg/m)の部分的に配向した糸(POY)を縫い付ける。フロントバーは70デニール/34フィラメント(34本のフィラメント当たり78x10−7kg/m)加工(テキスチャー)ポリエステルを3−4、1−0の繰り返しステッチパターンで縫い付ける。樹脂−ファイバーウェブは9%過剰供給した。このステッチ−ボンドした樹脂−ファイバーウェブでは、強化糸がウェブの底部付近に位置している。
【0088】
ステッチ−ボンドした樹脂−ファイバーウェブは、基本重量(坪量)が約155g/mで、第一と第二PET鞘樹脂約8%、ポリエステル芯ステープルファイバー11%、およびステッチ−ボンド糸を合計81%含む。ステッチ−ボンドした樹脂−ファイバーウェブの総計樹脂含量は、全重量の約8%に過ぎなく上部ファイバー面の約42%(樹脂不含のステッチ−ボンド糸を除く)。
【0089】
収縮/嵩高化(バルキング)(第二加熱)工程
ステッチ−ボンドした樹脂−ファイバーウェブは、その後、190℃で約30秒間、織物のテンター枠で処理した。ウェブは、縦(機械)方向に約30%、横方向に約60%収縮した。最終複合材料の基本重量(坪量)は、約529g/mで、最終厚さは約1.52mmである。全構造に基づく最終密度は約0.35g/cmで、ステッチ−ボンド糸を除いた構造に基づけば約0.04g/cmである。
【0090】
試験結果
実施例4によって作成した試料は、80番研磨紙を用いたワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも5,000サイクル耐久可能、バリー屈曲(Bally Flex)法では32,000サイクル耐久可能である。
【実施例5】
【0091】
開繊ランダムファイバーウェブ
実施例4と同じ。
【0092】
樹脂
実施例4と同じ。
【0093】
第一加熱工程
実施例4と同じ。
【0094】
強化工程
部分的に接合した樹脂−ファイバーウェブを、ゲージ14、14.2CPI[5.6/cm]で1本のバーを使用して、幅150インチ(381cm)のリバ(Liba)ステッチ−ボンド機でステッチ−ボンドした。バーは、1−0、2−3の繰り返しステッチパターンで,70デニール/34フィラメント(34本のフィラメント当たり78x10−7kg/m)加工(テキスチャード)ポリエステルで被覆した280デニール(311x10−7kg/m)ライクラRを縫い付ける。樹脂−ファイバーウェブを32%過剰供給した。
【0095】
このステッチ−ボンドした樹脂−ファイバーウェブは、基本重量(坪量)が約80g/mで、第一と第二PET鞘樹脂約19%、ポリエステル芯ステープルファイバー21%、およびステッチ−ボンド糸合計60%を含む。ステッチ−ボンドした樹脂−ファイバーウェブの総計樹脂含量は、全重量の約19%に過ぎなく、上部ファイバー面の約60%である。
【0096】
収縮/嵩高化(バルキング)(第二加熱)工程
ステッチ−ボンドした樹脂−ファイバーウェブは、その後、190℃で約30秒間、織物のテンター枠で処理した。ウェブは、縦(機械)方向に約67%横方向に約67%収縮した。最終複合材料の基本重量(坪量)は、約763g/mで最終厚さは約2.87mmである。全構造に基づく最終密度は約0.265g/cmで、ステッチ−ボンド糸を除いた構造に基づけば約0.11g/cmである。
【0097】
試験結果
実施例5によって作成した試料は80番研磨紙を用いたワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも16,000サイクル耐久可能である。
【実施例6】
【0098】
開繊ランダムファイバーウェブ
開繊ランダムファイバーウェブは、低融点および高融点ステープルファイバーを有し、低密度でニードル−パンチした混合ウェブを含む。上に述べたように、この混合ウェブはさらに構造本体の中に下降してファイバー−オン−エンド)を形成するファイバーのループを有する。この混合ウェブは1.5デニール(1.6x10−7kg/m)、1.5インチ(3.81cm)のポリプロピレンを50%、15デニール(1.6x10−7kg/m)、1.5インチ(3.81cm)のポリエステルファイバーを50%含み、カード加工、ラップ(重ね)し、ニードル−パンチしたウェブに形成されている。このウェブは、基本重量(坪量)が490g/m、ニードル打ち込み密度が1平方インチ当り1,100(171/cm)と比較的高密度、厚さが5mmで、密度が約0.01g/cmである。鞘は融点が約160℃で、芯は融点が約230℃である。
【0099】
樹脂
この実施例で使用した単一の樹脂は融点が160℃の1.5デニールポリプロピレンである。
【0100】
第一加熱工程
このウェブを、スクリーンのような平面で押さえて210℃に加熱し、次いで冷却した。ウェブの厚さは3.8mmに減少し、密度は約0.13g/cmに増加する。加熱後のウェブの基本重量(坪量)は約490g/mである。ウェブは柔軟で、弾力性を保つ。
【0101】
強化工程
無し。
【0102】
第二加熱工程
ウェブの表面を再び融解するために、冷却したウェブを、ギャップを1.8mmにセットし約1秒間、片側からプラテン(圧盤)により210℃で、反対側はもう一つの室温のプラテンによりプレスした。熱圧後の複合材料は最終厚さが2.2mmであり、厚さ約0.2mmの薄手の緻密化したスキンを有する。この薄手の緻密化したスキンは樹脂とファイバーに富む。複合材料の最終密度は約0.25g/cmである。この実施例においては収縮工程がないので、ウェブの基本重量(坪量)は約490g/mのままである。
【0103】
試験結果
熱圧後の複合材料は、80番研磨紙を用いたワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で3,800サイクル耐久可能、バリー屈曲(Bally Flex)法では26,000サイクル耐久可能である。
【実施例7】
【0104】
開繊ランダムファイバーウェブ
開繊ランダムファイバーウェブは、低融点ステープルファイバーを有し、低密度でニードル−パンチしたウェブを含む。上に述べたように、このウェブはさらに構造本体中に下降してファイバー−オン−エンドを形成するファイバーのループを有する。このウェブは、1.5デニール(1.6x10−7kg/m)、1.5インチ(3.81cm)のポリエステルを含む。鞘/芯ファイバーは、融点120℃の鞘部50%と融点230℃の芯部50%から成る。これらのポリエステルファイバーは、カード加工、ラップ(重ね)し、ニードル−パンチしたウェブにした。このウェブは、基本重量(坪量)が475g/m、ニードル打ち込み密度が1平方インチ当り1,300(202/cm)と比較的高密度、厚さが6mmで密度が約0.08g/cmである。
【0105】
樹脂
この実施例で使用した唯一の樹脂は融点が120℃のポリエステル鞘部である。
【0106】
第一加熱工程
このウェブを、スクリーンのような平面で押さえて220℃に加熱し、次いで冷却した。ウェブの厚さは2.2mmに減少し、密度は約0.22g/cmに増加する。加熱後のウェブの基本重量(坪量)は約475g/mである。ウェブは柔軟で、弾力性を保つ。
【0107】
強化工程
無し。
【0108】
第二加熱工程
ウェブの表面を再融解するために、冷却したウェブを、ギャップを1.3mmにセットし約1秒間、片側からプラテン(圧盤)により220℃で、反対側は室温のもう一つのプラテンによりプレスした。熱圧後の複合材料は最終厚さが1.5mmであり、厚さ約0.2mmの薄手の緻密化したスキンを有する。この薄手の緻密化したスキンは樹脂とファイバーに富む。複合材料の最終密度は約0.37g/cmである。この実施例においては収縮工程がないので、ウェブの基本重量(坪量)は約475g/mのままである。
【0109】
試験結果
熱圧後の複合材料は、80番研磨紙を用いたワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で11,000サイクル耐久可能、バリー屈曲(Bally Flex)法では40,000サイクル耐久可能である。
【0110】
更に、この試料は全体を均等に染色できた。また115℃で優れた成形適性およびエンボス適性を有している。
【実施例8】
【0111】
実施例4に従って作成した耐摩耗性複合材料を、深彫りエンボス加工した。6インチx6インチ(15.2cm x 15.2cm)試料を相対する両端で押さえつけ、波状面を有するホットプレートで、試料を柔軟なシリコンゴムのシート底面に対して圧縮した。波状表面は、1インチ当たり7個(2.8/cm)の山であって、つまり1mm当たり2個の山が配置され、山幅は1.8mmであった。上のプレートは約205℃にセットし、5秒間、1,000psi(6.9MPa)の圧力で操作した。
【0112】
試料を相対する両端で押さえつけたので、試料はプレート上の山に追随するように伸長した。山は底のゴムシートに対して「底に達した」、つまり、山は、複合ウェブの圧縮された部分が実質的に固まる迄の間、ゴム・シートに対して試料を圧縮した。言いかえれば、樹脂、ステープルファイバー、ステッチボンド糸が実質的に一つの固体として一体化・融合した。
【0113】
予想外に、エンボス加工した試料は山の稜線に対して直角方向に高い弾力性を示す。エンボス加工した試料を、手で伸長前の長さの約1/3程長く引き延ばすと、試料は迅速に伸長前の長さに戻り、緩和時間はゼロか全く短かった。この操作を何度も繰り返したが、試料は顕著な塑性変形を示さなかった。エンボス加工した試料は、少なくとも一方向に少なくとも90%の回復下、少なくとも20%の伸びを示すことが望ましい。
【0114】
如何なる特定の理論に限定されることなく、本発明の発明者等は、エンボス加工でステッチ−ボンドした糸が複合材料の底部まで押され、実際にステッチ−ボンドした糸一体が複合材料の底面で露出し、その結果ステッチ−ボンドした糸がエンボス加工複合材料に前記の弾力性を与えると考えている。これに比較して、実施例4により作成した第二試料は、類似の条件下、二つの平面プラテン間でプレスされた。ステッチ−ボンドした糸が複合材料の底を通してかすかに見えるが、このステッチ−ボンドした糸は依然樹脂とステープルファイバーで被覆されている。この第二試料は顕著な弾力性を示さない。
【0115】
このエンボス加工試料は、エンボス加工適性係数Eが少なくとも約5で、成形適性係数Mが少なくとも約1.5である。
【産業上の利用可能性】
【0116】
弾性のある耐摩耗性複合材料の利点は、限定されないが、この複合材料が保護すべき対象物の周りをしっかり包める能力であり、これは、複合材料を伸長させて対象物を囲み、張力を解除して、複合材料が保護対象物表面に追随することで出来る能力である。対象物は平面でもよいが、好ましくは曲面でよい。用途は、限定されないが、保護服/保護鞘の肘と膝部、自動車内のカーペット類、パイプ、パイプライン、エアダクト用保護被覆材などである。
【0117】
上述の開示において、当業者にこれらの形の本発明を完全かつ充分に記述する目的で特定の用語で説明するのに、本発明の特定の形式を選択したが、実質的に等価またはより優れた結果および/または成績をもたらす様々な代換および改修は、次に掲げる請求項の範囲と精神内に入ると見なされることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1Aは、バインダー活性化前の本発明による複合材料の好ましい態様の断面図である。図1Bはバインダー活性化後の図1Aの好ましい態様の断面図である。図1Cは、選択的に行われた表面緻密化の工程後の図1Aおよび1Bの好ましい態様の断面図である。
【図2】図2Aは、本発明による複合材料の成形適性を示す断面図である;図2Bは、本発明による複合材料のエンボス加工適性を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面付近に実質的に垂直のファイバーを有する開繊ランダムファイバーウェブと該ウェブのファイバーの融点より低い融点を有する第一バインダー樹脂を含む耐摩耗性シートにおいて、該バインダー樹脂とファイバーが樹脂−ファイバーに富む領域を上面付近に形成し、バインダー樹脂が耐摩耗性シートの約30重量%以下で、該耐摩耗性シートが80番研磨紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル耐久可能であることを特徴とする耐摩耗性シート。
【請求項2】
更に、ファイバーの融点より低く、第一樹脂バインダーの融点より高い融点を有する第二バインダー樹脂を含む請求項1記載の耐摩耗性シート。
【請求項3】
更に、薄手の緻密化層をウェブの上面付近に含み、該層が熱圧されたバインダー樹脂とウェブのファイバーから成ることを特徴とする請求項1または2に記載の耐摩耗性シート。
【請求項4】
開繊ファイバーウェブが樹脂バインダー成分とテキスタイルファイバー成分を有する二成分ファイバーを含むことを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の耐摩耗性シート。
【請求項5】
バインダー樹脂およびウェブファイバーが共染可能である前記請求項のいずれかに記載の耐摩耗性シート。
【請求項6】
バインダー樹脂が約5g/10分より大きいメルト・フローインデックスを有する前記請求項のいずれかに記載の耐摩耗性シート。
【請求項7】
(a) 上面付近に実質的に垂直なファイバーと該ウェブのファイバーの融点より低い融点を有する第一バインダー樹脂を含む開繊ランダムファイバーウェブであって、該第一バインダー樹脂が開繊ランダムファイバーウェブ内でよく混和されている該開繊ランダムファイバーウェブを用意する工程、
(b)少なくとも部分的に第一バインダー樹脂を活性化する工程、そして
(c) 該ウェブを強化する工程から成ることを特徴とする耐摩耗性シートの製造法
【請求項8】
開繊ランダムファイバーウェブがさらにファイバーの融点より低く、第一樹脂バインダーの融点より高い融点を有する第二バインダー樹脂を含み、更に第二バインダー樹脂を少なくとも部分的に活性化してウェブ上部にファイバー−樹脂に富む領域を形成する工程(d)を含む請求項7に記載の製造法。
【請求項9】
バインダー樹脂を活性化する工程が耐摩耗シートを熱圧して上面に薄手の緻密化層を形成する請求項7または8に記載の製造法。
【請求項10】
強化工程が少なくとも(i)ウェブをステッチボンドすることと(ii)ウェブを収縮することのうちの一つを含む、請求項7〜9のいずれかの請求項に記載の製造法。
【請求項11】
工程(a)が、微細な固形状の第一バインダー樹脂を開繊ランダムファイバーウェブのファイバー上に散布することを含む請求項7〜10のいずれかの請求項に記載の製造法。
【請求項12】
耐摩耗性シートを約2より大きいエンボス加工適性係数になるようにエンボス加工することを含む請求項7〜11のいずれかの請求項に記載の製造法。
【請求項13】
バインダー樹脂を活性化する工程が、ウェブ内のある位置では樹脂バインダーの活性化度がより低く、ウェブ内の別の位置に向かって樹脂バインダーの活性化度がより高い勾配をウェブの厚さ方向に亘って形成することを含む請求項7〜12のいずれかの請求項に記載の製造法。
【請求項14】
上面付近に実質的に垂直なファイバーを含む開繊ランダムファイバーウェブと開繊ランダムファイバーウェブ内でよく混和されている固形バインダー樹脂を含む耐摩耗性シートにおいて、バインダー樹脂の融点が開繊ランダムファイバーウェブ中のウェブファイバーの融点より低く、上面付近のウェブファイバーとバインダー樹脂が薄手の緻密化層を形成し、該耐摩耗性シートが80番研磨紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル耐久可能であることを特徴とする耐摩耗性シート。
【請求項15】
上面付近に実質的に垂直なファイバーを含む開繊ランダムファイバーウェブと、少なくとも第一バインダー樹脂とを含む耐摩耗性シートにおいて、該第一バインダー樹脂の融点が開繊ランダムファイバーウェブのウェブファイバーの融点より低く、樹脂とファイバーが上面に樹脂−ファイバーに富む領域を形成し、バインダー樹脂の合計量が耐摩耗性シートの30重量%未満を構成し、該耐摩耗性シートが80番研磨紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル耐久可能であることを特徴とする耐摩耗性シート。
【請求項16】
上面付近に実質的に垂直なファイバーを有する開繊ランダムファイバーウェブ、第一バインダー樹脂、および第二バインダー樹脂を含む耐摩耗性シートにおいて、該第一バインダー樹脂の融点が第二バインダー樹脂の融点より低く、第二バインダー樹脂の融点が開繊ランダムファイバーウェブのウェブファイバーの融点より低く、樹脂がウェブファイバーと加工現場で活性化されることで、樹脂−ファイバーに富む領域が上面またはその付近に形成され、該耐摩耗性シートが80番研磨紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル耐久可能であることを特徴とする耐摩耗性シート
【請求項17】
上面付近に実質的に垂直なファイバーを有する開繊ランダムファイバーウェブと少なくとも第一バインダー樹脂を含む耐摩耗性シートにおいて、該第一バインダー樹脂の融点が開繊ランダムファイバーウェブのウェブファイバーの融点より低く、樹脂とファイバーが樹脂−ファイバーに富む領域を上面に形成し、バインダー樹脂のメルト・フローインデックスが10分当り約5gより大きく、該耐摩耗性シートが80番研磨紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル耐久可能である耐摩耗性シート。
【請求項18】
上面付近に実質的に垂直なファイバー有する開繊ランダムファイバーウェブと少なくとも第一バインダー樹脂を含む耐摩耗性シートにおいて、該第一バインダー樹脂の融点が開繊ランダムファイバーウェブのウェブファイバーの融点より低く、樹脂とファイバーが上面に樹脂−ファイバーに富む領域を形成し、第一バインダーの活性化は開繊ランダムファイバーウェブ樹脂内の勾配に従って行われ、該耐摩耗性シートが80番研磨紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル耐久可能であることを特徴とする耐摩耗性シート。
【請求項19】
上面付近に実質的に垂直なファイバーを有する開繊ランダムファイバーウェブと少なくとも第一バインダー樹脂を含む耐摩耗性シートにおいて、該第一バインダー樹脂の融点が開繊ランダムファイバーウェブのウェブファイバーの融点より低く、樹脂とファイバーが上面に樹脂−ファイバーに富む領域を形成し、該耐摩耗性シートが80番研磨紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル耐久でき、該耐摩耗性シートが約2より大きいエンボス加工適性係数を有することを特徴とする耐摩耗性シート。
【請求項20】
上面付近に実質的に垂直なファイバーを有する開繊ランダムファイバーウェブと少なくとも第一バインダー樹脂を含む耐摩耗性シートにおいて、該第一バインダー樹脂の融点が開繊ランダムファイバーウェブのウェブファイバーの融点より低く、樹脂とファイバーが上面に樹脂−ファイバーに富む領域を形成し、該耐摩耗性シートが80番研磨紙を使用したワイゼンビーク(Wyzenbeek)摩耗試験で少なくとも約3,000サイクル耐久でき、該耐摩耗性シートがエンボス加工後少なくとも一方向に少なくとも90%の回復下、少なくとも20%の伸びを示すことを特徴とする耐摩耗性シート。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−522239(P2006−522239A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509460(P2006−509460)
【出願日】平成16年3月30日(2004.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/009657
【国際公開番号】WO2004/087393
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(500271041)キシミド・エル・エル・シー (1)
【Fターム(参考)】