説明

加工面欠陥判定方法及び加工面品質検査方法

【課題】加工面の鋳巣の寸法計測に役立つ鋳巣の範囲を精度よく判定できる加工面欠陥判定方法及び信頼性の高い加工面品質検査方法を提供する。
【解決手段】2値化、輝度傾き抽出の処理ステップ102,103で加工面の原画像の2値化画像、輝度傾き抽出画像を得る。両画像を重ね合わせ処理ステップ105で重ね合わせて作成した欠陥検出用画像から鋳巣判定処理ステップで加工面の鋳巣の範囲を判定する。鋳巣判定処理ステップ106では、2値化画像中の鋳巣部分が拡大処理された2値化画像と輝度傾き抽出画像との論理積をとり、得られた鋳巣〔輝度傾き抽出画像における鋳巣(エッジの範囲)〕の範囲を判定結果として、2値化処理の閾値の高低に拘わらず精度のよい鋳巣範囲の判定を可能とした。同欠陥判定方法を品質検査方法に適用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工面を撮像して得られた濃淡画像からその加工面(被判定面)の欠陥、特に鋳巣を判定する加工面欠陥判定方法及び加工面品質検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加工面欠陥判定方法には次のような方法があった。
これは、加工面を撮像して得られた濃淡画像による原画像に対して、所定の閾値で2値化処理をして2値化画像を得ると共に、所定値以上の輝度値の傾きを抽出する輝度傾き抽出処理をして輝度傾き抽出画像を得る。そして、これら両画像を重ね合わせて欠陥検出用画像を得、この欠陥検出用画像における上記両画像の相互関係が複数種類のパターンの中の何れに該当するかを判定(パターン化)して、加工面の欠陥を判定する方法である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−185479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来技術では次のような課題がある。
すなわち上記従来技術では、鋳巣の判定を、2値化処理と輝度傾き抽出処理を用いてパターン化して行なっている。
2値化処理では鋳巣とノイズ(鋳巣以外の欠陥等)との境界を分別することは可能であるが、閾値の高低によって鋳巣の寸法が変動してしまう。これは、鋳巣(画像)の両端間の各位置における輝度変化の一例を示す図13において、閾値レベルが上下方向(輝度値の高低方向)に変化すると2値化処理による鋳巣の寸法(図中、2値化寸法と記す)が変動することからも分かる。
そこで、鋳巣の寸法の計測のために輝度傾き抽出処理を行なっている。
なお、図13中、エッジ処理寸法とは、上記輝度傾き抽出処理によって計測される鋳巣の寸法を指す。
【0005】
しかし、輝度傾き抽出処理ではノイズが入ることがあり、ノイズが入ると上記従来技術のパターン化による鋳巣の判定は困難になる。したがってこの場合は、2値化処理による2値化画像と輝度傾き抽出処理による輝度傾き抽出画像との間で論理積をとって(両画像を重ね合わせて重なり部分を鋳巣と判定して)、ノイズを除去する。
この方法によると、最終的には2値化画像によって鋳巣が判定されることになるので、上記のように2値化処理の際の閾値によって鋳巣の寸法が変動し、鋳巣の寸法が実際よりも小さく検出されてしまうことが少なくない。このため、鋳巣寸法から加工面(製品)の品質の良否を検査する場合に、不良品を良品と誤判定される虞がある。そこで従来、鋳巣を精度よく判定できる加工面欠陥判定方法の開発が課題となっていた。
【0006】
本発明は、上記のような実情に鑑みなされたもので、輝度傾き抽出処理でノイズが入った場合でも、2値化処理の際の閾値による影響を受けることなく精度よく鋳巣の範囲(領域、広がり)を判定でき、特に、鋳巣の寸法が実際よりも小さく検出されることのない加工面欠陥判定方法を提供することを課題とする。
また本発明は、加工面の品質の良否を精度よく検査できる加工面品質検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、加工面欠陥判定方法及び加工面品質検査方法を下記各態様の構成とすることによって解決される。
各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴及びそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、1つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではなく、一部の事項のみを取り出して採用することも可能である。
【0008】
以下の各項のうち、(1)項が請求項1に、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(4)項が請求項4に、各々対応する。
【0009】
(1) 加工面を撮像して得られた濃淡画像に基づく原画像を用いて前記加工面の欠陥を判定する加工面欠陥判定方法であって、前記原画像に対し、所定の閾値で2値化処理をして前記加工面の鋳巣を含む2値化画像を作成する2値化処理ステップと、前記原画像から所定値以上の輝度値の傾きを抽出する輝度傾き抽出処理をして前記加工面の鋳巣を含む輝度傾き抽出画像を作成する輝度傾き抽出処理ステップと、前記2値化画像と前記輝度傾き抽出画像とを重ね合わせて欠陥検出用画像を作成する重ね合わせ処理ステップと、前記欠陥検出用画像から前記加工面の鋳巣の範囲を判定する鋳巣判定処理ステップと、を備え、前記重ね合わせ処理ステップでは、前記2値化画像中の前記鋳巣部分が拡大処理された2値化画像と前記輝度傾き抽出画像とを重ね合わせて欠陥検出用画像を作成することを特徴とする加工面欠陥判定方法。
(2)前記鋳巣判定処理ステップでは、前記欠陥検出用画像において前記鋳巣部分が拡大処理された2値化画像と前記輝度傾き抽出画像との論理積をとることにより、前記加工面の鋳巣の範囲を判定することを特徴とする(1)項に記載の加工面欠陥判定方法。
(3)加工面を撮像して得られた濃淡画像に基づく原画像を用いて前記加工面の欠陥を判定する加工面欠陥判定方法であって、前記原画像に対し、所定の閾値で2値化処理をして前記加工面の鋳巣を含む2値化画像を作成する2値化処理ステップと、前記原画像から所定値以上の輝度値の傾きを抽出する輝度傾き抽出処理をして前記加工面の鋳巣を含む輝度傾き抽出画像を作成する輝度傾き抽出処理ステップと、前記2値化画像と前記輝度傾き抽出画像とを重ね合わせて欠陥検出用画像を作成する重ね合わせ処理ステップと、前記欠陥検出用画像から前記加工面の鋳巣の範囲を判定する鋳巣判定処理ステップと、を備え、前記鋳巣判定処理ステップでは、前記2値化画像及び前記輝度傾き抽出画像中に各々複数の鋳巣がある場合に、前記2値化画像中の特定の鋳巣に最も近い位置の輝度傾き抽出画像中の鋳巣を前記2値化画像中の特定の鋳巣に対応する輝度傾き抽出画像中の鋳巣と判別して、該鋳巣の範囲を判定することを特徴とする加工面欠陥判定方法。
(4)加工面を撮像して得られた濃淡画像に基づく原画像を用いて前記加工面の品質を検査する加工面品質検査方法であって、(1)項、(2)項又は(3)項に記載の加工面欠陥判定方法による加工面の鋳巣の範囲の判定結果から該鋳巣の寸法を計測して加工面の品質の良否を検査することを特徴とする加工面品質検査方法。
【発明の効果】
【0010】
(1)項に記載の発明によれば、輝度傾き抽出処理でノイズが入った場合でも、2値化処理の際の閾値による影響を受けることなく精度よく、特に、鋳巣の寸法が実際よりも小さく検出されることなく、鋳巣の範囲を判定できる。
(2)項に記載の発明によれば、簡単な論理演算により(1)項に記載の発明の効果を奏する加工面欠陥判定方法を提供できる。
(3)項に記載の発明によれば、加工面に多数の鋳巣が検出された場合に、迅速かつ精度よく、特に、鋳巣の寸法が実際よりも小さく検出されることなく、鋳巣の範囲を判定できる。
(4)項に記載の発明によれば、(1)項、(2)項又は(3)項に記載の加工面欠陥判定方法を用いて、加工面の品質の良否を精度よく検査可能な加工面品質検査方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図2】図1に示すフローチャートにおいて得られる原画像の一例を示す図である。
【図3】同じく2値化画像の一例を示す図である。
【図4】同じく輝度傾き抽出画像の一例を示す図である。
【図5】同じく拡大処理された2値化画像の一例を示す図である。
【図6】同じく拡大処理された2値化画像の他の例を示す図である。
【図7】同じく欠陥検出用画像の一例を示す図である。
【図8】同じく欠陥検出用画像の他の例を示す図である。
【図9】鋳巣判定処理(論理積演算)結果像の一例を示す図である。
【図10】本発明方法の第1実施形態の全体概略図である。
【図11】同じく第2実施形態の全体概略図である。
【図12】本発明方法の第3実施形態の説明図である。
【図13】2値化処理による鋳巣の両端間の各位置における輝度変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、各図間において、同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1は、本発明による加工面欠陥判定方法の一実施形態を示すフローチャートである。
この図1に示すように、ステップ101では原画像Aを取得する。すなわち、被判定面である鋳造品等の加工面をCCDカメラ等によって撮像し、その画像(デジタル画像)をメモリに保存する。そして、同メモリに保存された画像から欠陥判定する領域を抜き出し、原画像Aを得る。原画像Aは、所定の階調、例えば256(0〜255)階調の濃淡画像であり、その一例を図2に示す。鋳巣は、原画像A中において、通常、他の欠陥等よりも輝度値の低い(暗い)部分として現われる。
【0013】
ステップ102では、原画像Aに対して所定の閾値で2値化処理をして2値化画像Bを得る。図3は2値化画像Bの一例を示す。図3では、加工面に1つの鋳巣(画像)b1が検出された場合を例示する。
2値化処理する際の上記閾値は、処理結果画像(2値化画像B)に鋳巣以外のノイズを含まず、極力、鋳巣のみが抽出されるような値に、つまり、最終的に鋳巣の範囲の判定に好適な値に実験等によって選定される。
【0014】
ステップ103では、原画像Aに対し、所定値以上の輝度値の傾きを有する箇所を抽出(エッジ検出)する輝度傾き抽出処理(エッジ処理)を行ない、輝度傾き抽出画像(エッジ検出画像)Cを作成する。図4は輝度傾き抽出画像Cの一例を示す。図4では、加工面に1つの鋳巣(画像)c1が検出された場合を例示する。
上記の所定値としては、処理結果画像(輝度傾き抽出画像C)において、鋳巣部分のエッジ(輪郭)がそれ以外の部分のエッジに比べて鮮明に抽出されるような値に、つまり、最終的に鋳巣の範囲の判定に好適な値に、実験等によって選定される。
【0015】
ステップ104では、ステップ102で作成された2値化画像B中の鋳巣b1部分を拡大して鋳巣判定範囲(鋳巣b1の範囲を判定するための範囲)を広げるための鋳巣部分拡大処理を行なう。
【0016】
この鋳巣部分拡大処理方法としては、例えば次の2つの方法が挙げられる。
第1の鋳巣部分拡大処理方法としては、2値化処理で検出された鋳巣b1部分を、その形状に依存して膨張(例えば鋳巣b1形状と相似形状に膨張)させ、かつ、その鋳巣b1部分全体を包含する範囲まで自動的に拡大する膨張処理を施す方法が挙げられる。
図5は、この第1の鋳巣部分拡大処理方法による鋳巣部分拡大処理を行なって得られた2値化画像Baの一例を示す。図中のb2は、上記膨張処理による鋳巣b1部分の拡大範囲であり、この鋳巣部分拡大範囲b2が上記の鋳巣判定範囲となる。
【0017】
第2の鋳巣部分拡大処理方法としては、2値化画像B中の鋳巣b1の中心座標(x,y)を求め、同座標(x,y)を中心として上下、左右方向に四角形状〔(x−α,y−β),(x+α,y+β):α,βは拡大する範囲〕に所定寸法(画素の整数倍)まで拡張処理をする方法が挙げられる。
図6は、第2の鋳巣部分拡大処理方法により鋳巣部分拡大処理を行なって得られた2値化画像Bbの一例を示す。図中のb3は、上記拡張処理による鋳巣b1部分の拡大範囲であり、この鋳巣部分拡大範囲b3が上記の鋳巣判定範囲となる。拡大範囲b3は、判定したい鋳巣の寸法に応じて定められている。例えば、判定したい最大寸法の鋳巣全体が拡大範囲b3内に包含する大きさに定められている。
【0018】
ステップ105では、ステップ104で鋳巣部分拡大処理が行なわれた2値化画像Ba又はBbとステップ103で作成された輝度傾き抽出画像Cとを重ね合わせて、欠陥検出用画像Da又はDbを作成する。
上記の重ね合わせは、2値化画像Ba又はBbと輝度傾き抽出画像Cとの間で位置ずれを生じさせないように位置を合わせて行われる。
【0019】
図7は、第1の鋳巣部分拡大処理方法により得られた2値化画像Baと輝度傾き抽出画像Cとをステップ105にて重ね合わせて作成された欠陥検出用画像Daの一例を示す。
この図7中、破線で示す円71は、図5に示す鋳巣部分拡大範囲b2の輪郭を示す。したがって実際には、円71内は図5と同様に輝度値の低い部分(黒色部分)となっている。この円71の内側部分が鋳巣判定範囲となって、次ステップ106において鋳巣判定処理が行なわれる。
図8は、第2の鋳巣部分拡大処理方法により得られた2値化画像Bbと輝度傾き抽出画像Cとをステップ105にて重ね合わせて作成された欠陥検出用画像Dbの一例を示す。
この図8中、破線で示す四角形81は、図6に示す鋳巣部分拡大範囲b3の輪郭を示す。したがって実際には、四角形81内は図6と同様に輝度値の低い部分(黒色部分)となっている。この四角形81の内側部分が鋳巣判定範囲となって、次ステップ106において鋳巣判定処理が行なわれる。
【0020】
ステップ106では、ステップ105で重ね合わせ処理して得られた上記欠陥検出用画像Da又はDbに対して鋳巣判定処理を行なって上記加工面の鋳巣の範囲の判定をする。
ここで、鋳巣の範囲の判定とは、鋳巣の検出(有無の検出)のみならず、検出された鋳巣について、その寸法の計測を精度よく行ない得るために、鋳巣の領域ないし広がりについて判定をすることを指す。
すなわちステップ106では、ステップ102でその存在が検出され(図3中の鋳巣b1参照)、ステップ103でそのエッジが検出された鋳巣(図4中の鋳巣c1参照)について、精度よくその範囲(領域、広がり)の判定をする。
鋳巣判定処理は、上記の欠陥検出用画像Da又はDb(図7、図8参照)において2値化画像Ba又はBbと輝度傾き抽出画像Cとの論理積をとることにより行なわれる。
図9は、ステップ106において鋳巣判定処理、ここでは論理積演算を行なって得られた画像(鋳巣判定処理結果画像)Eの一例を示す図である。この図9中の91は、その存在と共に寸法の計測を精度よく行ない得るようにその範囲(領域、広がり)が明確に判定された鋳巣を示す。
なお、本実施形態において鋳巣判定処理は、上記欠陥検出用画像Da又はDb中の円71又は四角形81の内側部分(鋳巣判定範囲として設定された部分)における2値化画像Ba又はBb(図5、図6参照)と輝度傾き抽出画像Cとの間で行なわれる。
【0021】
以上述べた本発明の実施形態のうち、ステップ104の鋳巣部分拡大処理に第1の鋳巣部分拡大処理方法を適用した第1実施形態の全体の概略を示せば図10の通りである。同じく第2の鋳巣部分拡大処理方法を適用した第2実施形態の全体の概略を示せば図11の通りである。
【0022】
図12は本発明の第3実施形態の説明図、詳しくは同第3実施形態における鋳巣判定処理の説明図である。この図12は、第3実施形態における欠陥検出用画像の一例の要部を示している。
この第3実施形態では、図1中のステップ104における鋳巣部分拡大処理は行なわず、鋳巣判定処理ステップ106においては以下の処理を行なう加工面欠陥判定方法である。なお、その他の処理については第1、第2実施形態と同様に行なう。
すなわち、鋳巣判定処理ステップ106では、2値化画像及び輝度傾き抽出画像中に各々複数の鋳巣(画像)がある場合に、2値化画像中の特定の鋳巣に最も近い位置の輝度傾き抽出画像中の鋳巣を2値化画像中の上記の特定の鋳巣に対応する輝度傾き抽出画像中の鋳巣と判別して、該鋳巣の範囲を判定する。
具体的には、2値化画像及び輝度傾き抽出画像中に各々複数の鋳巣がある場合に、2値化画像においては各鋳巣の中心座標を検出する。また、輝度傾き抽出画像においては同輝度傾き抽出画像中の各鋳巣の中心座標を検出する。そして、2値化画像中の特定の鋳巣の中心座標に最も近い位置にその中心座標を有する輝度傾き抽出画像中の鋳巣を2値化画像中の上記の特定の鋳巣に対応する輝度傾き抽出画像中の鋳巣と判別して、同鋳巣の範囲を判定する。
【0023】
例えば、いま、2値化処理による2値化画像中にn個の鋳巣(画像)があり、各鋳巣の中心座標が鋳巣1=(x1,y1)、鋳巣2=(x2,y2)、鋳巣3=(x3,y3)、…鋳巣n=(xn,yn)であるとする。また、輝度傾き抽出処理(エッジ処理)による輝度傾き抽出画像中にN個の鋳巣(画像)があり、各鋳巣の中心座標が鋳巣1=(a1,b1)、鋳巣2=(a2,b2)、鋳巣3=(a3,b3)、…鋳巣N=(aN,bN)であるとする。
このような場合、図1中の鋳巣判定処理ステップ106では、2値化画像中の鋳巣1〜nの各中心座標と輝度傾き抽出画像中の各鋳巣1〜Nの各中心座標との距離ln(n=1、2、3、…)を、各々下式[数1]により求める。
そして、求められた距離ln群中、その値lnが最も小さくなる中心座標を有する2値化画像中の鋳巣と輝度傾き抽出画像中の鋳巣とを対応付ける。そして、2値化画像中の特定の鋳巣は、輝度傾き抽出画像中においては同特定の鋳巣と上記のように対応付けられた輝度傾き抽出画像中の鋳巣(詳しくは鋳巣のエッジ)がその範囲を示すと判別し、上記の特定の鋳巣の範囲を判定する。このような判別、判定を、2値化画像中のn個全ての鋳巣について行ない、全鋳巣の範囲を各々判定する。
【0024】
【数1】

【0025】
以上述べた第1〜第3実施形態によれば、次のような効果を奏する。
すなわち、加工面を撮像して得られた濃淡画像による原画像を用いて加工面の欠陥を判定、特に鋳巣寸法の計測等のために鋳巣の範囲を判定する場合、原画像の2値化処理において適宜の閾値を設定すれば鋳巣とノイズの分別は可能である。しかし、閾値の高低によって鋳巣の範囲の判定結果(ひいては鋳巣寸法の計測値等)が変動してしまう(図13参照)。一方、原画像に対する輝度傾き抽出処理(エッジ処理)によれば鋳巣の範囲(エッジ両端間の広がり)の判定が可能であるが、鋳巣以外のエッジも多く検出されノイズが入りやすい。
そこで、両処理画像を重ね合わせ、それらの重なり部分を鋳巣と判定することが考えられる。しかしこれによると、最終的には2値化画像中の鋳巣によって鋳巣の範囲が判定されることになり、上記のように2値化処理の際の閾値の高低によって鋳巣の範囲が変動する。このため、鋳巣の検出を確実にしたい等の理由で閾値を低く設定すると、鋳巣の範囲が実際よりも狭く判定されてしまう。
第1〜第3実施形態によれば、2値化処理する際の閾値を低くしても同2値化処理によって検出された鋳巣に対応するエッジ処理による鋳巣のエッジが検出されている限り、そのエッジの範囲を2値化処理による鋳巣の範囲として検出する。したがって、上記のような鋳巣の範囲が実際よりも狭く判定されるということはなくなり、精度よく鋳巣の範囲を判定できる。また、鋳巣の範囲を精度よく判定できることによれば、加工面の鋳巣の寸法計測に極めて役立つ。
【0026】
上記の第1〜第3実施形態では、加工面の鋳巣の範囲を判定する方法について説明したが、このような方法による鋳巣の範囲の判定結果に基づいて鋳巣の寸法を計測し、加工面の品質の良否を検査することも可能である。
図1中のステップ201〜204は、同上第1〜第3実施形態による鋳巣の範囲の判定結果を用いて鋳巣の寸法を計測し、加工面の品質の良否を検査する加工面品質検査方法の一例を示す。
この例では、ステップ201において、第1〜第3実施形態による鋳巣の範囲の判定結果を用いて鋳巣の寸法を計測する。
ステップ202では、ステップ201で計測された鋳巣の寸法が予め定められた許容値以下か否かを判断する。
ステップ203では、ステップ202における判断結果がYES(鋳巣の寸法が許容値以下)であれば、判断対象となっている加工面が良好である旨をディスプレイ等に表示する。
ステップ204では、ステップ202における判断結果がNO(鋳巣の寸法が許容値を超える)であれば、判断対象となっている加工面が不良である旨をディスプレイ等に表示して、検査を終了する。
このような加工面品質検査方法によれば、上記のように精度よく鋳巣の範囲を判定できる加工面欠陥判定方法を用いて加工面の品質の良否を検査するようにしたので、精度よく、特に、鋳巣寸法が実際よりも小さい値に計測されることなく鋳巣寸法を計測できる。したがって、不良品を良品と誤判定することがなく、信頼性の高い加工面品質検査を行なうことができる。
【0027】
なお、上記第1、第2実施形態では、いずれも2値化画像及び輝度傾き抽出画像に1つの鋳巣(画像)が検出された場合を例示しているが、両画像に各々複数の鋳巣が検出される場合もある。このような場合においても、必要に応じ、各々の鋳巣(画像)に対して図1に示す処理(ステップ104〜106)を行なえば、各鋳巣について、その範囲を精度よく判定できる。
【符号の説明】
【0028】
102:2値化処理ステップ、103:輝度傾き抽出処理ステップ、104:鋳巣部分拡大ステップ、105:重ね合わせ処理ステップ、106:鋳巣判定処理ステップ、A:原画像、B,Ba,Bb:2値化画像、C:輝度傾き抽出画像、Da,Db:欠陥検出用画像、E:鋳巣判定処理。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工面を撮像して得られた濃淡画像に基づく原画像を用いて前記加工面の欠陥を判定する加工面欠陥判定方法であって、
前記原画像に対し、所定の閾値で2値化処理をして前記加工面の鋳巣を含む2値化画像を作成する2値化処理ステップと、
前記原画像から所定値以上の輝度値の傾きを抽出する輝度傾き抽出処理をして前記加工面の鋳巣を含む輝度傾き抽出画像を作成する輝度傾き抽出処理ステップと、
前記2値化画像と前記輝度傾き抽出画像とを重ね合わせて欠陥検出用画像を作成する重ね合わせ処理ステップと、
前記欠陥検出用画像から前記加工面の鋳巣の範囲を判定する鋳巣判定処理ステップと、を備え、
前記重ね合わせ処理ステップでは、前記2値化画像中の前記鋳巣部分が拡大処理された2値化画像と前記輝度傾き抽出画像とを重ね合わせて欠陥検出用画像を作成することを特徴とする加工面欠陥判定方法。
【請求項2】
前記鋳巣判定処理ステップでは、前記欠陥検出用画像において前記鋳巣部分が拡大処理された2値化画像と前記輝度傾き抽出画像との論理積をとることにより、前記加工面の鋳巣の範囲を判定することを特徴とする請求項1に記載の加工面欠陥判定方法。
【請求項3】
加工面を撮像して得られた濃淡画像に基づく原画像を用いて前記加工面の欠陥を判定する加工面欠陥判定方法であって、
前記原画像に対し、所定の閾値で2値化処理をして前記加工面の鋳巣を含む2値化画像を作成する2値化処理ステップと、
前記原画像から所定値以上の輝度値の傾きを抽出する輝度傾き抽出処理をして前記加工面の鋳巣を含む輝度傾き抽出画像を作成する輝度傾き抽出処理ステップと、
前記2値化画像と前記輝度傾き抽出画像とを重ね合わせて欠陥検出用画像を作成する重ね合わせ処理ステップと、
前記欠陥検出用画像から前記加工面の鋳巣の範囲を判定する鋳巣判定処理ステップと、を備え、
前記鋳巣判定処理ステップでは、前記2値化画像及び前記輝度傾き抽出画像中に各々複数の鋳巣がある場合に、前記2値化画像中の特定の鋳巣に最も近い位置の輝度傾き抽出画像中の鋳巣を前記2値化画像中の特定の鋳巣に対応する輝度傾き抽出画像中の鋳巣と判別して、該鋳巣の範囲を判定することを特徴とする加工面欠陥判定方法。
【請求項4】
加工面を撮像して得られた濃淡画像に基づく原画像を用いて前記加工面の品質を検査する加工面品質検査方法であって、
請求項1、2又は3に記載の加工面欠陥判定方法による加工面の鋳巣の範囲の判定結果から該鋳巣の寸法を計測して加工面の品質の良否を検査することを特徴とする加工面品質検査方法。


【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図13】
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【図2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−68473(P2013−68473A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206173(P2011−206173)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】