説明

加工食品の製造方法

【課題】食品の腐敗に関与する初動菌の発生を抑制し、更には、保存中に増殖する耐熱
性菌に対して抗菌性を発揮し、加熱殺菌後の耐熱性菌の発育を抑制することができ、かつ
食品の風味や味に影響を与えない加工食品の製造方法に関する。
【解決手段】グルコースオキシダーゼを作用させてから、カタラーゼを作用させる。グル
コースオキシダーゼを作用させた後、加熱しながら或いは加熱処理を行った後にカタラー
ゼを作用させる。初動菌発生抑制剤として、グルコースオキシダーゼ及び徐放化したカタ
ラーゼを含む。更には、カタラーゼと油脂を混合して粉末化することで徐放化とする。油
脂が、ステアリン酸、パルミチン酸、グリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステ
ルから選ばれる1種又は2種以上である。更に初動菌発生抑制剤と静菌剤を併用して加工
食品に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品など各種製品組成物の腐敗に関与する細菌を殺菌するための製剤(殺菌剤)、またさらにその増殖を抑制するための製剤(抗菌剤)に関する。また本発明は、食品などの各種製品組成物の腐敗に関与する初動菌の低減方法、並びに初動菌を低減し且つその増殖を抑制するための方法に関する。さらに本発明は、初動菌が低減された加工食品等の各種製品組成物の製造方法、ならびに初動菌が低減され且つその増殖が抑制された各種製品組成物の製造方法に関する。
【0002】
なお、本発明では、加熱殺菌処理直後に残存する耐熱性菌のことを初動菌と言う。
【背景技術】
【0003】
従来より、加工食品の製造時や保存中における、腐敗に関与する菌の発生やその増殖を抑制するために、種々の保存料、抗菌剤、ならびに静菌剤が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1にはリゾチームとショ糖脂肪酸エステルを含有する抗菌剤が、耐熱性菌、特にBacillus属の菌に対して高い抗菌性を有すること;特許文献2にはHLB10以上のショ糖脂肪酸エステルとグリシンとグルコン酸塩を併用した食品用保存剤;ならびに特許文献3にはHLB5のショ糖脂肪酸エステル、卵白リゾチーム及びグリシンを併用した保存性の良好なフラワーペースト剤が記載されている。しかし、これらの保存料は、保存中に増殖する菌の抑制には効果を示すものの、食品の腐敗に関与する初動菌については抑制効果が低かった。
【0005】
一方、グルコースオキシダーゼは、抗菌力のある酵素系保存剤であり、カタラーゼと一緒に用いられることが知られている。
【0006】
例えば、特許文献4には、タンパク質を含む食品を、ブドウ糖、グルコースオキシダーゼ、およびペルオキシダーゼ若しくはカタラーゼと接触させて食品の腐敗を防止する方法が;特許文献5には、蛋白分解酵素、グルコース、グルコースオキシダーゼ、及びパーオキシダーゼ及び/又はカタラーゼを食品に配合して食品を保存する方法が;特許文献6には、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼおよびグルコースを含む水溶液をゲル化するか、或いは担体に吸収させた酸素吸収ユニットを用いて食品を保存する方法が記載されている。
【0007】
一般に、グルコースオキシダーゼは、下記に示す反応により、グルコースをグルコン酸へ酸化触媒する作用を有し、その際に過酸化水素が発生することが知られている。この反応で生じた過酸化水素は、カタラーゼの作用により水と酸素に分解される。
【0008】
【化1】

【0009】
この反応式に示す通り、上記の反応により酸素量が1/2に低減するため、グルコースオキシダーゼとカタラーゼを組み合わせて、脱酸素剤または酸素除去剤としての用途も知られている(例えば、特許文献7〜9などを参照)。
【0010】
しかしながら、これらの文献にはいずれも上記保存料や脱酸素剤がグルコースオキシダーゼとカタラーゼとの混合物の形態で開示されているにすぎず、また商業的にも両者を単純に混合した酵素製剤が市販されている。
【特許文献1】特開2002−234808号公報
【特許文献2】特開2000−201660号公報
【特許文献3】特開平2−60560号公報
【特許文献4】特公昭55−23071号公報
【特許文献5】特開昭57−74076号公報
【特許文献6】特開昭47−29545号公報
【特許文献7】特開昭61−271959号公報
【特許文献8】特開平1−171466号公報
【特許文献9】特開昭49−80260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述するように、従来よりグルコースオキシダーゼとカタラーゼとを混合した酵素製剤は、抗菌力のある保存剤として知られているが、本発明者らの知見によると、グルコースオキシダーゼとカタラーゼを同時期に作用させると抗菌力が弱まるという問題点がある。また、カタラーゼを作用させずにグルコースオキシダーゼのみを作用させると、本酵素によって生成した過酸化水素を除去するための手段が別途必要となる。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑み、特に、加熱処理して製造される各種製品について、加熱処理時に残存する初動菌を低減するために有効に用いられる殺菌剤、ならびに初動菌の低減とその後の増殖を抑制するために有効に用いられる抗菌剤を提供することを目的とする。また、本発明は、食品などの各種製品組成物の腐敗に関与する初動菌を有効に低減するための方法、並びに初動菌を低減し且つその増殖を抑制するための有効な方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、初動菌が低減された各種製品組成物を製造する方法、ならびに初動菌が低減され且つその増殖が抑制された各種製品組成物を製造する方法を提供することを目的とする。特に本発明は、食品に適用した場合であっても食品の風味や味に影響を与えない方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねていたところ、各種製品組成物に対して、グルコース存在下で、グルコースオキシダーゼを作用させてからカタラーゼを作用させること、つまり、グルコースオキシダーゼとカタラーゼとを時間差をつけて作用させることにより、生じた過酸化水素の作用により加熱殺菌処理直後に残存する腐敗に関与する初動菌を有効に減少させることができ、しかも処理後にはこの過酸化水素を有効に除去することができることが判った。とくに、グルコースオキシダーゼを作用させた後、加熱しながら或いは加熱処理を行った後にカタラーゼを作用させると好ましいことが判った。
【0014】
また、本発明者らは、上記所望の効果を発揮する製剤として、カタラーゼを徐放性として、グルコースオキシダーゼとともに配合剤として製剤化したものが好ましいこと、中でも徐放性カタラーゼとして、油脂とカタラーゼを混合して粉末状や顆粒状に調製したものが好ましいことを見いだした。
【0015】
更には、本発明者らは前記グルコースオキシダーゼと徐放性カタラーゼに加えて静菌剤を併用することにより、加熱殺菌後の保存中に増殖する耐熱性菌に対しても抗菌性を発揮し、長期にわたって腐敗を防止できることを見出し、さらにこれを加工食品に適用してもその風味や味に影響を与えないことを確認した。
【0016】
本発明はかかる知見に基づいて完成されたものであり、以下の態様を有する。
【0017】
(1)殺菌剤及び抗菌剤
項1.グルコースオキシダーゼ及び徐放化したカタラーゼを含むことを特徴とする殺菌剤。
項2.徐放化したカタラーゼが、カタラーゼと油脂を混合して製剤化してなるものである、項1に記載の殺菌剤。
項3. 油脂が、高級脂肪酸、ショ糖脂肪酸エステル、及びモノグリセライドからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、項2に記載の殺菌剤。なお、ここで高級脂肪酸としては、ステアリン酸やパルミチン酸を含む炭素数6〜18の飽和または不飽和の高級脂肪酸を、モノグリセライドとしては炭素数8〜18のグリセリン脂肪酸エステルを好適に挙げることができる。
【0018】
項4.項1乃至3のいずれかに記載する殺菌剤および静菌剤を組み合わせてなる抗菌剤。
項5.抗菌剤が配合剤であることを特徴とする項4に記載する抗菌剤。
項6.抗菌剤が殺菌剤と静菌剤とからなるキットである項4に記載する抗菌剤。
項7.被験組成物に対して、項1乃至3のいずれかに記載する殺菌剤と静菌剤とを同時に添加するか、または殺菌剤を添加する前または添加した後に静菌剤を添加して用いられる、項4に記載する抗菌剤。
【0019】
(2)初動菌の低減方法
項8.被験組成物に過酸化水素を作用させてからカタラーゼを作用させる工程を有し、当該工程の過酸化水素の作用中または作用後に加熱処理(但し、加熱滅菌処理を除く)を施すことを特徴とする、初動菌の低減方法。
項9.被験組成物に過酸化水素を作用させた後、加熱しながら或いは加熱処理を行った後にカタラーゼを作用させる、項8に記載の方法。
項10.被験組成物に対する過酸化水素の作用を、グルコースの存在下でグルコースオキシダーゼを作用させることによって行う項8または9に記載する方法。なお、当該方法は、「被験組成物に、グルコースの存在下でグルコースオキシダーゼを作用させてからカタラーゼを作用させる工程を有し、当該工程の過酸化水素の作用中または作用後に加熱処理(但し、加熱滅菌処理を除く)を施すことを特徴とする、初動菌の低減方法。」と言い換えることもできる。
項11.被験組成物に、項1乃至3のいずれかに記載の殺菌剤または項4乃至7のいずれかに記載の抗菌剤を添加した後に、加熱処理(但し、加熱滅菌処理を除く)を施す工程を有する項8乃至10のいずれかに記載の方法。
項12.項8乃至10のいずれかに記載する初動菌の低減方法を静菌剤処理と同時に行うか、または過酸化水素の作用後および/またはカタラーゼの作用後に静菌剤処理を行うことを特徴とする、初動菌の低減および増殖抑制方法。なお、当該方法は、簡便には、被験組成物に項4乃至7のいずれかに記載の抗菌剤を添加した後に、加熱処理(但し、加熱滅菌処理を除く)を施すことによって実施することができる。
【0020】
(3)殺菌組成物の製造方法
項13.被験組成物に過酸化水素を作用させてからカタラーゼを作用させる工程を有し、当該工程の過酸化水素の作用中または作用後に加熱処理(但し、加熱滅菌処理を除く)を施すことを特徴とする、殺菌組成物の製造方法。
項14.被験組成物に過酸化水素を作用させた後、加熱しながら或いは加熱処理を行った後にカタラーゼを作用させる、項13に記載の方法。
項15.被験組成物に、グルコースの存在下で、グルコースオキシダーゼを作用させてから、カタラーゼを作用させることを特徴とする、殺菌組成物の製造方法。
項16.被験組成物に、グルコースの存在下で、項1乃至3のいずれかに記載の殺菌剤または項4乃至7のいずれかに記載の抗菌剤を添加する工程を有する項15に記載の方法。
項17.被験組成物に、グルコースの存在下で、グルコースオキシダーゼを作用させてからカタラーゼを作用させる工程を有し、当該工程のグルコースオキシダーゼの作用中または作用後に加熱処理(但し、加熱滅菌処理を除く)を施すことを特徴とする、殺菌組成物の製造方法。
項18.被験組成物にグルコースオキシダーゼを作用させた後、加熱しながら或いは加熱処理を行った後にカタラーゼを作用させる、項15乃至17のいずれかに記載の方法。
項19.被験組成物に、項1乃至3のいずれかに記載の殺菌剤または項4乃至7のいずれかに記載の抗菌剤を添加した後に、加熱処理(但し、加熱滅菌処理を除く)を施す工程を有する項15乃至18のいずれかに記載の方法。
項20.被験組成物に、項1乃至3のいずれかに記載の殺菌剤および静菌剤を添加した後に、加熱処理(但し、加熱滅菌処理を除く)を施す工程を有する、初動菌が低減され且つ細菌増殖が抑制された殺菌組成物の製造方法。
【0021】
項21.項20に記載する製造方法で得られた、初動菌が低減され且つ細菌増殖抑制された組成物。
項22.組成物が、加工食品である項21に記載の組成物。
【発明の効果】
【0022】
本発明の殺菌剤は、特に加熱処理して製造される各種製品について、加熱処理時に残存する初動菌を低減するのに有効に使用することができる。とくに本発明の殺菌剤と静菌剤を組み合わせた抗菌剤によれば、上記の初動菌の低減効果に加えて、その後の細菌の増殖を抑制することができるため、加工食品などを腐敗から防止して長期に保存することが可能となる。また、本発明の初動菌低減方法によれば、加工食品などの加熱処理直後に残存する腐敗に関与する初動菌の数を有意に減らすことができ、また静菌処理と併用することによって更にその増殖を抑制することができる。本発明の殺菌組成物の製造方法はこれらの方法を利用した方法であり、当該方法によれば、初動菌が低減され、またその増殖が抑制された各種製品組成物を製造することができる。とくに本発明の方法によれば、食品の風味や味に影響を与えないで保存性の高い加工食品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(1)殺菌剤および抗菌剤
本発明が提供する殺菌剤は、グルコースオキシダーゼと徐放化したカタラーゼを含有してなることを特徴とする。かかる構成を有する本発明の殺菌剤によれば、対象とする被験組成物にグルコースオキシダーゼを作用させてからカタラーゼを作用させること、言い換えれば、被験組成物に対してグルコースオキシダーゼとカタラーゼとを時間差をもって作用させることができる。
【0024】
本発明の殺菌剤は、細菌の耐熱性を減弱させて加熱によって死滅する菌の割合を高める作用を有する。このため、加熱処理と組み合わせて用いることによって初動菌を低減することができる。この意味で、本発明の殺菌剤は、初動菌低減剤と定義することができる。ここで、「初動菌」とは、80℃20分での加熱処理によって死滅しない耐熱性菌を意味する。かかる初動菌(耐熱性菌)は、例えば加工食品などの各種製品の製造で用いられる一般的な加熱処理(80℃20分)では死滅せずに残存し、保存中に増殖して、製品にpH低下、異臭発生、または外観変化などを伴う腐敗をもたらす細菌である。かかる細菌には、詳細にはバシラス属に属する細菌(B.stearothermopHilus、B.subtilis、B.cereus、B.coagulansなど)、クロストリジウム属に属する細菌(Cl.thermoaceticum、Cl.thermosulfricum、Cl.sporogenesなど)、およびDesulfotomaculum nigrificans、Alicyclobacillus acidocaldariusなどの耐熱性有芽胞菌が含まれる。
【0025】
また、本発明の殺菌剤は、加熱滅菌処理と組み合わせて用いることによって、当該殺菌剤を用いない場合と比べて、より緩和な加熱滅菌条件で、細菌、とくに耐熱性有芽胞菌を死滅させることができる。ここで加熱滅菌処理には、乾熱滅菌処理、プレート式滅菌処理、蒸気滅菌処理、加圧加熱滅菌処理(オートクレーブ処理、レトルト処理など)、電磁波を利用した滅菌処理(ジュール熱加熱滅菌処理、マイクロ波加熱滅菌処理)、赤外線加熱などが含まれる。
【0026】
グルコースオキシダーゼは、グルコースを分解し、グルコン酸と過酸化水素を生成させる酵素である。一方、カタラーゼは、過酸化水素を酸素と水に分解する酵素である。このため本発明の殺菌剤によれば、グルコースの存在下でグルコースオキシダーゼを作用させることによって、被験組成物に過酸化水素を作用させ、次いで時間差をつけてカタラーゼを作用させることにより、上記グルコースオキシダーゼの作用によって生じた過酸化水素を除去することができる。すなわち、本発明の殺菌剤によれば、グルコースオキシダーゼによって生じる過酸化水素の作用を損なうことなく有効にその殺菌作用を発揮させ、次いで過酸化水素を除去することができるため、過酸化水素の残存によって生じる被験組成物の変色や変質を防止することができる。
【0027】
なお、グルコースオキシダーゼおよびカタラーゼは、それぞれ上記の作用を有するものであれば、いずれもその由来を問うものではない。
【0028】
本発明で用いられるカタラーゼの徐放化方法は特に制限されない。一般的な徐放化方法を任意に用いることができる。例えば、油脂、多糖類、ガム質などによるコーティング、サイクロデキストリンによる包接化、酵母カプセル中への封入、マイクロカプセル化などを挙げることができる。好適にはカタラーゼと油脂とを混合して製剤化する方法を挙げることができる。
【0029】
カタラーゼの徐放化に用いられる油脂には、常温(25℃程度)で固体或いはペースト状を呈するものであれば特に制限されず、例えば、高級脂肪酸、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセライド等が包含される。好適には融点が40〜80℃程度で、また室温で水にほとんど溶けない油脂を例示することができる。
【0030】
ここで、高級脂肪酸は、一般に動植物油脂又はその硬化油脂を加水分解又は酵素により分解精製して得られたものであり、常温(25℃程度)で固体のものを挙げることができる。例えばカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸等の炭素数6〜18の飽和または不飽和の高級脂肪酸を好適なものとして挙げることができる。
【0031】
またショ糖脂肪酸エステルとしては、前述の融点を有し、室温でほとんど水に溶けない油脂であればいずれのものも使用可能である。例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖カプリル酸エステル、およびショ糖ジカプリン酸エステル等を例示することができる。またモノグリセライドとして好適には動物又は植物硬化油脂に由来するもので、炭素数8〜18のグリセリン脂肪酸エステル、例えば、コハク酸、酢酸、酒石酸、クエン酸などの有機酸モノグリライドやモノグリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0032】
カタラーゼと油脂との配合割合は、特に制限されないが、例えば、酵素活性が50000U/gであるカタラーゼを使用する場合、通常、カタラーゼ:油脂=1000:1〜1:1(重量比)の範囲から適宜選択使用することができる。好ましくは100:1〜1:1(重量比)、より好ましくは10:1〜1:1(重量比)の範囲である。なお、この配合割合に特に制限されることはなく、上記割合を目安として、使用するカタラーゼの活性に応じて適宜調整することができる。なお、カタラーゼの比活性(1U/g)は、1分あたり1μモルの過酸化水素を分解する能力として定義される。
【0033】
カタラーゼと油脂を混合して製剤化する方法としては、例えばカタラーゼと油脂の粉末同士を合わせて攪拌機で混合する方法や、油脂を加熱溶融させたところにカタラーゼを投入し、混合後、これを微細化して、粉末状、フレーク状(薄片状)、微粒子状、顆粒状或いは細粒状にする方法などを挙げることができる。
【0034】
本発明の殺菌剤は、斯くして調製される徐放化されたカタラーゼ(徐放性カタラーゼ)とグルコースオキシダーゼを含有するものであればよく、その形状は特に問わない。好ましくは、上記徐放性カタラーゼの形状と同様に、粉末状、フレーク状(薄片状)、微粒子状、顆粒状或いは細粒状を挙げることができる。
【0035】
本発明の殺菌剤に配合するグルコースオキシダーゼおよび徐放性カタラーゼの量は、特に制限されない。これらの配合比としては、グルコースオキシダーゼの活性を1分間当り1μモルのぶどう糖を酸化する能力を1Uとし、カタラーゼの活性を1分間当り1μモルの過酸化水素を分解する能力を1Uと定義した場合に、活性比の割合に換算して、グルコースオキシダーゼ:カタラーゼ=1:10〜10:1を挙げることができる。好ましくは1:5〜5:1、より好ましくは1:3〜3:1である。
【0036】
なお、本発明の殺菌剤は、適用する被験組成物100gに対して、グルコースオキシダーゼの活性に換算して通常0.001〜1000U/100g、好ましくは0.01〜500U/100gの割合で、また、カタラーゼの活性に換算して通常0.001〜1000U/100g、好ましくは0.01〜500U/100gの割合で用いることができる。このような、徐放性カタラーゼとグルコースオキシダーゼを配合した殺菌剤は、簡単に製造することができるものの、商業上入手も可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のアートフレッシュ[登録商標] NO.500などを挙げることができる。
【0037】
被験組成物にグルコースオキシダーゼを作用させる条件は、グルコースオキシダーゼがグルコースをグルコン酸に分解して過酸化水素を発生しえる条件であれば特に制限されない。例えば、グルコースオキシダーゼによる作用は、通常pH2.5〜10、好ましくはpH2.5〜8、更に好ましくはpH4〜7.5、温度0〜90℃、好ましくは0〜80℃の条件下で行うことが好ましい。また被験組成物にカタラーゼを作用させる条件は、カタラーゼが過酸化水素を分解しえる条件であれば特に制限されないが、通常pH2.5〜10、好ましくはpH2.5〜9、更に好ましくはpH4〜8、温度0〜90℃、好ましくは30〜80℃の条件下で行うことが好ましい。
【0038】
本発明の殺菌剤には、上記グルコースオキシダーゼおよび徐放化されたカタラーゼに加えて、カルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩を配合することができる。カルシウム塩として具体的には酸化カルシウム、炭酸カルシウム、貝殻カルシウム、および骨カルシウムを、マグネシウム塩として具体的には塩化マグネシウム、および硫酸マグネシウムを挙げることができる。かかるアルカリ土類金属塩をグルコースオキシダーゼと組み合わせて配合することによって、本発明の殺菌剤の殺菌作用を増強させることが可能になる。
【0039】
本発明の殺菌剤は、静菌剤と組み合わせて用いることもできる。本発明の殺菌剤と静菌剤とを組み合わせて用いることにより、初動菌の低減効果に加えて、その増殖を抑制し、製品の腐敗を防止して保存性を高める効果を発揮することができる。このため、本発明の殺菌剤と静菌剤の組合せ物は抗菌剤として有用である。従って、本発明では、上記本発明の殺菌剤と静菌剤の組合せ物を抗菌剤と称する。
【0040】
静菌剤としては、制限されないが、リゾチーム、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ビタミンB、エタノール、アミノ酸、有機酸及び有機酸塩、リン酸塩、バクテリオシン、ラクトパーオキシダーゼ、植物抽出物、ポリリジン、しらこたん白、キトサン、およびナタマイシンを挙げることができる。ここでアミノ酸には、アラニン、グリシン、ベタイン、システイン、トリプトファン、またはフェニルアラニンが含まれる。また有機酸及び有機酸塩には、酢酸、アジピン酸、クエン酸、グルコン酸、アジピン酸、イタコン酸、グルコノデルタラクトン、α−ケトグルタル酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フィチン酸、フマル酸、リンゴ酸、ソルビン酸、安息香酸、プロピオン酸、及びこれらのアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩)、またはアルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩)を挙げることができる。有機酸及び有機酸塩として具体的には、氷酢酸(酢酸)、酢酸ナトリウム(無水)、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、フマル酸一ナトリウム、およびソルビン酸カリウム等を挙げることができる。バクテリオシンとは、ナイシン、ペディオシン、およびラクティシン等を挙げることが出来る。リン酸塩とは、メタリン酸及びその塩類、ピロリン酸及びその塩類、ポリリン酸及びその塩等が挙げられる。植物抽出物とは、既存添加物として指定されているイチジク葉抽出物、カラシ抽出物、クワ抽出物、酵素処理茶抽出物、シソ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、タデ抽出物、トウガラシ水性抽出物等が挙げられる。乳酸菌発酵物とは乳成分や大豆、トウモロコシ等を乳酸菌で発酵させた後、加熱殺菌や乾燥し粉末化したもので、これを更に水やエタノールで抽出したものを用いることができる。静菌剤は、これらの中から選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。中でも、グリシン、リゾチーム、酢酸ナトリウム、バクテリオシン、グリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上を使用するのが好ましい。
【0041】
本発明の抗菌剤は、上記グルコースオキシダーゼおよび徐放性カタラーゼを主成分とする殺菌剤と静菌剤とが混合されて一剤をなしている配合剤の形態を有してもいいし、また上記殺菌剤と静菌剤とが別個に製剤化されてなり、または別個の包装形態を有する組合せキットの形態を有してもよい。また、配合剤や組合せキットの形態を有していなくても、上記殺菌剤と静菌剤とが組み合わせて使用されるものであればよい。組み合わせて使用する態様としては、被験組成物に対して、殺菌剤と静菌剤とを同時に添加する方法、殺菌剤を添加した後に静菌剤を添加する方法、ならびに殺菌剤を添加する前に静菌剤を添加する態様を挙げることができる。
【0042】
本発明の抗菌剤は、前述する殺菌剤と同様に、加熱殺菌処理と組合せて用いることが好ましく、こうすることで初動菌を低減することができ、またその増殖を抑制することができる。加熱殺菌処理の時期は、グルコースオキシダーゼが作用できる限りにおいて特に制限されず、殺菌剤の添加と同時または殺菌剤の添加後を挙げることができる。
【0043】
殺菌剤と組み合わせて使用される静菌剤の割合は、特に制限されない。目安として、適用する適用する被験組成物100gに対して、グルコースオキシダーゼの活性に換算して通常0.001〜1000U/100g、好ましくは0.01〜500U/100gの割合、カタラーゼの活性に換算して通常0.001〜1000U/100g、好ましくは0.01〜500U/100gの割合で殺菌剤を用いる場合に、最終組成物100重量%に対して0.00001〜5重量%、好ましくは0.0001〜5重量%、より好ましくは0.0001〜3重量%の割合で静菌剤を用いる方法を挙げることができる。更には、抗菌剤中に含まれる殺菌剤(グルコースオキシダーゼ+徐放性カタラーゼ)と静菌剤の割合(重量比)としては、殺菌剤:静菌剤=1000:1〜1:100000,好ましくは、100:1〜1:10000,更に好ましくは、10:1〜1:10000を挙げることができる。
【0044】
(2)初動菌の低減方法
本発明は、加熱殺菌方法において初動菌(加熱殺菌処理直後に残存する菌)を低減する方法を提供する。
【0045】
当該方法は、対象とする被験組成物に過酸化水素を作用させてから、時間差をつけてカタラーゼを作用させ、当該過酸化水素の作用中または作用後に加熱殺菌処理を施すことによって実施することができる。
【0046】
ここで被験組成物としては、細菌の増殖による毒性発現や変質(腐敗や悪臭発生を含む)を防止する必要のあるものを広く挙げることができる。好ましくは、更に加熱処理が許容される組成物である。具体的には食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、日用品、飼料、およびペットフードを挙げることができる。好ましくは食品である。
【0047】
食品として好ましくは、製造工程で60℃以上の加熱処理がなされる食品を挙げることができ、例えば冷凍、冷蔵あるいは常温流通される調理加工品、半調理加工品を総称する加工食品である。
【0048】
具体的には、炒め物(ピラフ、チャーハン、焼きそば、焼きうどん、スパゲティー)、肉類を原料とする弁当(牛カルビ,牛丼などの牛肉類、生姜焼き肉などの豚肉類、鶏の照り焼き、鶏の唐揚げ、鶏重などの鶏肉類)、山菜、たけのこなどを原料とする弁当(山菜まぜこはんなど)、むすび類、ピザパイ、キャベツサラダ、卵サラダ、マカロニサラダ、ポテトサラダ、白あえ、ハンバーグ、ミートボール、シューマイ、グラタン、茶碗蒸しなどの調理済み食品、ソーセージ、ハム、焼き豚、豚カツ、ミートボール、しゅうまい、ぎょうざ等の惣菜、畜肉加工品、調味みそ、ごまだれ、ドレッシング、ソース、ホワイトソース、マヨネーズ、たれ等の調味料類、蒲鉾、竹輪、はんぺん等の水産練り製品、柴漬け、梅干し、たくあん、浅漬け、キムチ等の二次殺菌した漬物類、カスタードクリーム、小豆あん、フラワーペースト等の餡類、大判焼き、あんまん、にくまん、パン、ドーナツ、カステラ等の製菓類、イチゴジャム、マーマレード等のジャム類、塩辛、みりん干し、一夜干し等の水産加工品、卵焼き、厚焼き卵、伊達巻き、オムレツ、スクランブルエッグ等の卵製品、うどん、そば、焼きそば等の麺類、卵サンド、ハムサンド等のサンドイッチ類、調理パン(ハム、タマゴ、野菜、サラダなどを具材とするサンドもの)、赤飯むすび、鮭おむすび、梅入りおむすび等のおむすび類、米飯加工品、イカ佃煮、のり佃煮等の佃煮類、おでん、昆布煮、野菜の煮物等の煮物類、えびフライ、牡蠣フライ、コロッケ等のフライ揚げ物食品類、豆腐、厚揚げ、いなり等の豆腐加工食品類等、無糖コーヒー、ミルクコーヒー、カフェオレ、コーヒー牛乳等のコーヒー飲料、ミルクティー、紅茶、ストレートティー、レモンティー等の紅茶飲料、緑茶、ウーロン茶、ブレンド茶等の茶系飲料、牛乳、ミルクセーキ等の乳飲料、ココア、ホットチョコレート等のカカオ飲料、しるこ、甘酒、飴湯、しょうが湯の飲料等のpHが5以上の中性飲料、果汁飲料、炭酸飲料、酸性乳飲料等のpHが5未満の酸性飲料、ドーナツ、スポンジケーキ、マドレーヌ、蒸しパン、あんパン、クリームパン、ホットケーキ、シュークリーム等の菓子類、アイスクリーム、プリン、ババロア、ヨーグルト、フルーツゼリー、コーヒーゼリー、杏仁豆腐等のデザート類、プロセスチーズ、ホイップクリーム、コーヒーホワイトナー等の乳類、ファットスプレッド、マーガリン等の油脂類、レトルトカレーやトマトジュース缶詰などのレトルトや缶詰食品類が挙げられる。
【0049】
本発明の初動菌の低減方法は、通常上記各種組成物の製造工程で行われる。被験組成物に対して、まず過酸化水素を作用させ、この作用中または作用後に加熱処理を行う。これにより過酸化水素を作用させないで加熱処理する場合に比して、加熱処理直後に残存する菌(初動菌、耐熱性菌)の量を有意に低減させることができる。カタラーゼは、加熱処理の前後を問わず、被験組成物に過酸化水素を作用させた後に、時間差をもって作用するように用いればよい。好ましくは、被験組成物に過酸化水素を作用させた後、加熱しながら或いは加熱処理を行った後にカタラーゼを作用させる方法を挙げることができる。
【0050】
被験組成物100gに対して用いられる過酸化水素の量としては、0.00001〜10g、好ましくは0.0001〜1g、より好ましくは0.001〜0.1gを挙げることができる。また被験組成物100gに対して用いられるカタラーゼの量としては、その活性に換算して通常0.001〜1000U/100g、好ましくは0.01〜500U/100gの割合を挙げることができる。
【0051】
なお、過酸化水素による作用は、特に条件を選ばず行うことができ、例えば、通常pH2.5〜10、温度0〜90℃の条件下で行うことができる。また、カタラーゼによる作用は、通常pH2.5〜10,好ましくはpH2.5〜9、更に好ましくはpH4〜8、温度0〜90℃、好ましくは30〜80℃の条件下で行うことが好ましい。
【0052】
被験組成物に過酸化水素を作用させる方法としては、被験組成物に過酸化水素を直接添加する方法を挙げることができるが、それ以外に酵素反応等によって過酸化水素を発生させる方法を用いることもできる。かかる方法として、被験組成物に、グルコースの存在下でグルコースオキシダーゼを作用させる方法を挙げることができる。ここでグルコースは、被験組成物に含まれていればそれを用いることができ、また被験組成物に含まれていなければ別途添加すればよい。グルコースオキシダーゼを作用させるにあたり、被験組成物中の、またはそれに配合するグルコースの量としては、被験組成物100gあたり最小量として0.001gを挙げることができる。またグルコースオキシダーゼの量は、被験組成物100gに対して、グルコースオキシダーゼの活性に換算して通常0.001〜1000U/100g、好ましくは0.01〜500U/100gの割合を挙げることができる。
【0053】
簡便には、本発明の初動菌の低減方法は、被験組成物に上記本発明の殺菌剤を添加することによって行うことができる。なお、この場合も当該被験組成物中にグルコースが含まれていなければ、グルコースを上記の割合で別途添加して行うことができる。本発明の殺菌剤の使用量としては、適用する被験組成物100gに対して、グルコースオキシダーゼの活性に換算して通常0.001〜1000U/100g、好ましくは0.01〜500U/100gの割合、また、カタラーゼの活性に換算して通常0.001〜1000U/100g、好ましくは0.01〜500U/100gの割合を挙げることができる。
【0054】
本発明の方法で採用される加熱処理は、殺菌する対象の微生物(細菌)の種類によって異なるが、耐熱性有芽胞菌を死滅させるには十分でない加熱処理を挙げることができる。制限はされないが、例えば、被験組成物の中心温度が60℃で20分間以上、中心温度が120℃で4分間未満に相当する加熱条件下での処理を挙げることができる。
【0055】
本発明の初動菌の低減方法は、静菌剤処理と組み合わせて行うこともできる。こうすることで、被験組成物に残存する初動菌を低減し、かつ初動菌の増殖を抑制することにより、被験組成物の保存性を高めることができる。
【0056】
初動菌の低減方法と静菌剤処理との組合せ態様は特に制限されない。例えば、被験組成物に対して、過酸化水素の作用の前に静菌剤処理を行う方法、過酸化水素の作用と同時に静菌剤処理を行う方法、過酸化水素の作用の後に静菌剤処理を行う方法を挙げることができる。またカタラーゼの作用の後に静菌剤処理を行ってもよい。具体的には、被験組成物に上記本発明の殺菌剤と静菌剤とを同時または前後して添加して加熱処理を行う方法、被験組成物に上記本発明の殺菌剤を添加して加熱処理を行い、その後静菌剤を添加する方法を挙げることができる。
【0057】
静菌剤処理には、前述する静菌剤を用いることができる。好ましくはグリシン、リゾチーム、酢酸ナトリウム、バクテリオシン、グリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の組合せである。当該静菌剤の被験組成物に対する使用割合としては、また最終組成物100重量%に対して静菌剤が0.00001〜5重量%、好ましくは0.0001〜5重量%、より好ましくは0.0001〜3重量%となるような割合を挙げることができる。また、被験組成物に対して適用される殺菌剤(グルコースオキシダーゼ+徐放性カタラーゼ)と静菌剤の割合(重量比)としては、殺菌剤:静菌剤=1000:1〜1:100000、好ましくは100:1〜1:10000、更に好ましくは10:1〜1:10000を挙げることができる。
【0058】
(3)殺菌組成物の製造方法
本発明は、殺菌組成物の製造方法を提供する。
【0059】
当該方法は、対象とする被験組成物に過酸化水素を作用させてから、時間差をつけてカタラーゼを作用させ、当該過酸化水素の作用中または作用後に加熱殺菌処理を施すことによって実施することができる。
【0060】
ここで被験組成物としては、細菌の増殖による毒性発現や変質(腐敗や悪臭発生を含む)を防止する必要のあるものを広く挙げることができる。好ましくは、さらに加熱処理が許容される組成物である。具体的には食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、日用品、飼料、ペットフードを挙げることができる。好ましくは食品である。食品として好ましくは、製造工程で60℃以上の加熱処理を有する食品を挙げることができ、例えば冷凍、冷蔵あるいは常温流通される調理加工品、半調理加工品を総称する加工食品である。具体的には上記(2)に記載したものを挙げることができる。
【0061】
本発明の製造方法によれば、上記各種組成物の製造工程において、被験組成物に対してまず過酸化水素を作用させ、この作用中または作用後に加熱処理を行うことにより、過酸化水素を作用させないで加熱処理する場合に比して、加熱処理直後に残存する菌(初動菌、耐熱性菌)の量を有意に低減させることができる。カタラーゼは、加熱処理の前後を問わず、被験組成物に過酸化水素を作用させた後に、時間差をもって作用するように用いればよい。好ましくは、被験組成物に過酸化水素を作用させた後、加熱しながら或いは加熱処理を行った後にカタラーゼを作用させる方法を挙げることができる。
【0062】
被験組成物100gに対して用いられる過酸化水素の量としては、0.00001〜10g、好ましくは0.0001〜1g、より好ましくは0.001〜0.1gを挙げることができる。また被験組成物100gに対して用いられるカタラーゼの量としては、その活性に換算して通常0.001〜1000U/100g、好ましくは0.01〜500U/100gの割合を挙げることができる。
【0063】
なお、過酸化水素による作用は、制限されないが、通常pH2.5〜10、温度0〜90℃の条件下で、またカタラーゼによる作用は、制限されないが、通常pH2.5〜10、好ましくは2.5、更に好ましくは4〜8、温度0〜90℃、好ましくは30〜80℃の条件下で行うことが好ましい。
【0064】
被験組成物に過酸化水素を作用させる方法としては、被験組成物に過酸化水素を直接添加する方法を挙げることができるが、それ以外に酵素反応等によって過酸化水素を発生させる方法を用いることもできる。かかる方法として、被験組成物に、グルコースの存在下でグルコースオキシダーゼを作用させる方法を挙げることができる。ここでグルコースは、被験組成物に含まれていればそれを用いることができ、また被験組成物に含まれていなければ別途添加すればよい。グルコースオキシダーゼを作用させるにあたり、被験組成物中の、またはそれに配合するグルコースの量としては、被験組成物100gあたり最小量として0.001gを挙げることができる。またグルコースオキシダーゼの量は、被験組成物100gに対して、グルコースオキシダーゼの活性に換算して通常0.001〜1000U/100g、好ましくは0.01〜500U/100gの割合を挙げることができる。
【0065】
簡便には、本発明の殺菌組成物の製造方法は、被験組成物に上記本発明の殺菌剤を添加することによって行うことができる。なお、この場合も当該被験組成物中にグルコースが含まれていなければ、グルコースを上記の割合で別途添加して実施することができる。本発明の殺菌剤の使用量としては、適用する被験組成物100gに対して、グルコースオキシダーゼの活性に換算して通常0.001〜1000U/100g、好ましくは0.01〜500U/100gの割合、また、カタラーゼの活性に換算して通常0.001〜1000U/100g、好ましくは0.01〜500U/100gの割合を挙げることができる。
【0066】
本発明の方法で採用される加熱処理は、殺菌する対象の微生物(細菌)の種類によって異なるが、耐熱性有芽胞菌を死滅させるには十分でない加熱処理を挙げることができる。例えば、制限されないが、被験組成物の中心温度が60℃で20分間以上、中心温度が120℃で4分間未満に相当する加熱条件下での処理を挙げることができる。
【0067】
また本発明の殺菌組成物の製造方法は、加熱処理の有無に拘わらず、被験組成物に、グルコースの存在下で、グルコースオキシダーゼを作用させてから、時間差をつけてカタラーゼを作用させることによっても実施することができる。
【0068】
本発明の方法による殺菌組成物の製造は、上記の作用と静菌剤処理とを組み合わせて行うことによって実施するができる。こうすることで、被験組成物に残存する初動菌が低減され、かつ初動菌の増殖が抑制されることにより、保存性の高い殺菌組成物を製造することができる。
【0069】
静菌剤処理との組合せ態様は特に制限されない。例えば、被験組成物に対して、過酸化水素の作用の前に静菌剤処理を行う方法、過酸化水素の作用と同時に静菌剤処理を行う方法、過酸化水素の作用の後に静菌剤処理を行う方法を挙げることができる。またカタラーゼの作用の後に静菌剤処理を行ってもよい。具体的には、被験組成物に上記本発明の殺菌剤と静菌剤とを同時または前後して添加して加熱処理を行う方法、被験組成物に上記本発明の殺菌剤を添加して加熱処理を行い、その後静菌剤を添加する方法を挙げることができる。
【0070】
静菌剤処理には、前述する静菌剤を用いることができる。好ましくはグリシン、リゾチーム、酢酸ナトリウム、バクテリオシン、グリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の組合せである。当該静菌剤の被験組成物に対する使用割合としては、また最終組成物100重量%に対して静菌剤が0.00001〜5重量%、好ましくは0.0001〜5重量%、より好ましくは0.0001〜3重量%となるような割合を挙げることができる。
【0071】
斯くして調製された殺菌組成物は、初動菌が低減され、かつ初動菌の増殖が抑制されていることにより保存性が高く、しかも過酸化水素が実質的に残存しないことから、過酸化水素による悪影響(例えば、色調の退色、風味の劣化、油脂の酸化など)がない。かかる殺菌組成物としては、具体的には食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、日用品、飼料、ペットフードを挙げることができる。好ましくは、製造工程で60℃以上の加熱処理が行われる加工食品、例えば冷凍、冷蔵あるいは常温流通される調理加工品、半調理加工品を総称する加工食品である。
【0072】
なお、加工食品の製造に際しては、その効果を妨げない範囲において、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、レシチン等の乳化剤、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、グアーガム、タラガム、キトサン、マクロホモプシスガム、アラビアガム、ペクチン、ローカストビーンガム等のガム質、デンプン、カゼインナトリウム、乳清タンパク質濃縮物、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC),メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、等の高分子化合物及びその分解物、アスパラギン酸、アルギニン、アルギングルタミン酸塩、イソロイシン、グルタミン、グルタミン酸、グルタミン酸カリウム等のアミノ酸及びその塩類、リン酸、メタリン酸、ポリリン酸、ピロリン酸等のリン酸類及びその塩類、しらこたんぱく抽出物、ホオノキ抽出物、タデ抽出物、ローズマリー抽出物、クローブ抽出物等の動・植物由来の抽出物、大豆多糖類、乳糖、ミネラル類、ビタミン類、糖アルコール類、香料、着色料等を配合することができる。
【0073】
加工食品の製造に際して、殺菌剤及び静菌剤の添加方法は、常法に従って行うことができ、加工食品の種類や用いる容器の種類等によって、公知の方法を適宜利用することができる。例えば、加工食品として赤飯を製造する場合、もち米計量、洗米後、本発明の殺菌剤および静菌剤を添加して、ささげ豆を入れて水漬けした後、セイロ蒸し、塩打ち、再度蒸し、冷却、容器充填する方法を用いることができる。また加工食品として野菜入り煮物を製造する場合には、たけのこ、こんにゃく、にんじんなどの野菜を水洗加工し、本発明の殺菌剤および静菌剤を添加し、味付けのための加熱調理を行い、容器に充填する方法を用いることができる。しかし、これらの事例に制約されず、一般的な調理加工方法により目的とする加工食品を得ることができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の内容を以下の実験例、実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、文中、「部」は「重量部」および「%」は「重量%」を意味する。なお、下記の実験例および実施例において、被験試料中の過酸化水素濃度は、高感度過酸化水素計(SUPER ORITECTOR MODEL 5:セントラル科学(株)製)を用いて規定の測定法に従って測定した。
【0075】
実験例1
ぶどう糖0.5%を含む蒸留水にBacillus cereus の耐熱性有芽胞菌を懸濁し(添加菌数:2500CFU/ml)、その水溶液を20分かけて80℃まで加熱した時の菌数の推移を調査した。
【0076】
具体的には、上記水溶液を3検体作成し、第1検体には、グルコースオキシダーゼ(以下、GOという)およびカタラーゼ(以下、CTという)をそれぞれ0.1%および0%(GO:CT=10:0)、また第2検体にはGOおよびCTをそれぞれ0.05%づつ(GO:CT=5:5)添加した。また第3検体は、コントロール用にGOおよびCTのいずれも添加しなかった(無添加区)。なお、グルコースオキシダーゼ(GO)として、グルコースオキシダーゼ製剤(1000U/g)を用い、カタラーゼ(CT)として、カタラーゼ製剤(20000U/g)を用いた。図1に、Bacillus cereusの菌数と温度との関係を示す。図1中、左縦軸に菌数(コロニーフォーミングユニット、CFU/ml)、右縦軸に温度(℃)、横軸に加熱時間(min)を示す。
【0077】
図1に示されるように、グルコースオキシダーゼ(GO)を添加した場合(第1検体)、無添加区(第3検体)と比べて、菌数の減少が観察された。このことから、グルコースオキシダーゼ(GO)による処理を加熱処理と併用することにより、耐熱性有芽胞菌の1種であるBacillus cereusに対する殺菌効果が高まり、加熱処理後の初動菌の数を有意に低減できることが判る。一方、グルコースオキシダーゼ(GO)をカタラーゼ(CT)を併用した場合(第2検体)には、その効果が少なく加熱後の菌数は無添加区と同等のレベルであった。
【0078】
実験例2
実験例1で用いたカタラーゼ(CT)4部とグリセリン脂肪酸エステル1部とを合わせて溶融混合し、これを顆粒化して徐放性カタラーゼ(徐放性CT)を調製した。なお、この徐放性CTは、CTがグリセリン脂肪酸エステルでコーティングされている(コーティングCT)。この徐放性CT(顆粒)とグルコースオキシダーゼ粉末(GO)とを、それぞれCT0.01%およびGO0.05%となる割合(重量比1:5)で混合して、本発明の殺菌剤1(徐放性CT顆粒+GO粉末との混合品)を調製した。
【0079】
実験例1と同様に、ぶどう糖0.5%を含む蒸留水にBacillus cereus の耐熱性有芽胞菌を懸濁し(添加菌数:5600CFU/ml)、その水溶液を20分かけて80℃まで加熱した時の菌数の推移を調査した。具体的には、上記水溶液を4検体作成し、第1検体には、GOおよびCTをそれぞれ0.05%および0%(GO:CT=5:0)、第2検体にはGOおよびCTをそれぞれ0.05%および0.01%(GO:CT=5:1)、第3検体には上記本発明の殺菌剤1(徐放性CT顆粒+GO粉末との混合品)をGOおよびCTの割合がそれぞれ0.05%および0.01%(GO:CT=5:1)となるように添加した。また第4検体には、コントロール用にGOおよびCTのいずれも添加しなかった(無添加区)。図2に、Bacillus cereusの菌数と温度との関係を示す。図2中、左縦軸に菌数(コロニーフォーミングユニット、CFU/ml)、右縦軸に温度(℃)、横軸に加熱時間(min)を示す。
【0080】
図2からわかるように、徐放化していないカタラーゼ(CT)とグルコースオキシダーゼ(GO)を併用した場合は、菌数の減少が穏やかであったが(第2検体)、グルコースオキシダーゼ(GO)と徐放性カタラーゼ(徐放性CT)とを併用した本発明の殺菌剤1の場合(第3検体)には菌数の減少の程度が大きく、グルコースオキシダーゼ(GO)のみを用いた場合(第1検体)の菌数減少量に近づいた。
【0081】
このことより、グルコースオキシダーゼ(GO)にカタラーゼ(CT)を単に併用するのではなく、グルコースオキシダーゼ(GO)に徐放化したカタラーゼ(徐放性CT)を併用することにより、耐熱性有芽胞菌の1種であるBacillus cereusに対する殺菌効果が高まり、加熱処理後の初動菌の数を有意に低減することができることが判る。
【0082】
実験例3
ぶどう糖0.5%を含む蒸留水に、(1)グルコースオキシダーゼ(GO)0.05%単独、または(2)実験例2で調製した本発明の殺菌剤1(徐放性CT顆粒+GO粉末との混合品)をGO0.05%およびCT0.01%となるような割合で添加し、加熱したときの過酸化水素の発生量を、下記の方法に従って調べた。
【0083】
<過酸化水素量の測定>
試料を5g秤量し、45ml抽出用溶液(リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、臭素酸カリウム、蒸留水)を加え、試料をストマッカー(30 sec)により破砕、ろ過後、試料とする。なお、一連の操作は氷冷しながら行う。続いて調製した試料について、高感度過酸化水素計(SUPER ORITECTOR MODEL 5:オリエンタル酵母工業株式会社)にて、過酸化水素量の測定を行う。
【0084】
結果を、図3に示す。図3中、左縦軸には温度(℃)、右縦軸には過酸化水素量(ppm)、横軸に反応時間(分)を示す。
【0085】
その結果、グルコースオキシダーゼ(GO)のみ添加した場合には、80℃加熱後も過酸化水素が残存したが、これに徐放性カタラーゼ(徐放性CT)を併用すると、80℃加熱後には過酸化水素は検出限界(定量限界1ppm、検出限界0.1ppm)以下に低減していた。これより、グルコースオキシダーゼと徐放性カタラーゼとを併用することによって、グルコースオキシダーゼとぶどう糖との反応によって生じた過酸化水素を十分に除去できることが確認された。
【0086】
実験例4
カタラーゼ(CT、活性200000〜600000U/g)0.4部とグリセリン脂肪酸エステル1部とを合わせて溶融混合し、これを粉末化して徐放性カタラーゼ(徐放性CT)を調製した。これに4.5部のグルコースオキシダーゼ粉末(GO、活性10000〜30000U/g)および44.1部のデキストリンを配合して、本発明の殺菌剤2(GO粉末+徐放性CT粉末混合品)を調製した。
【0087】
本発明の殺菌剤2(GO+徐放性CT、粉末)を用いて、耐熱性有芽胞菌の1種であるバチルス属に属する細菌(Bacillus cereus、Bacillus coagulans)、およびクロストリジウム属に属する細菌(Clostridium sporogenes)に対する殺菌効果を評価した。
【0088】
(1)バチルス属に属する細菌に対する殺菌効果
200mlイオン交換水にグルコースを0.5%添加して溶解し、これにBacillus cereus(1.0×10CFU/ml)、またはBacillus coagulans(1.3×10CFU/ml)を添加して混合した。これに、本発明の殺菌剤2(GO+徐放性CT)を0.05%(GO:0.0045%、CT:0.0004%含有)の割合で添加し、90℃の温浴を用いて加熱した。加熱時間70分にわたって経時的にサンプリングして菌数を測定した。コントロールとして、本発明の殺菌剤を添加しない系についても同様に試験を行った。Bacillus cereusに対する結果を図4に、Bacillus coagulansに対する結果を図5にそれぞれ示す。この結果からわかるように、本発明の殺菌剤は、耐熱性有芽胞菌であるバチルス属に属する細菌に対して殺菌効果を発揮し、加熱処理後の初動菌の数を有意に低減することができる。
【0089】
(2)クロストリジウム属に属する細菌に対する殺菌効果
実験に際してクロストリジウム属に属する細菌(Clostridium sporogenes ATCC3584)は、予めGAM半流動高層培地(日水製薬製)にて35℃で静置培養して、これを前培養液とした。
【0090】
200mlイオン交換水にグルコースを0.5%添加して溶解した滅菌水に、上記前培養液を1%(Clostridium sporogenes 3.2×10CFU/ml)添加して混合した。これに、本発明の殺菌剤2(GO+徐放性CT)を、0.05%(GO:0.0045%、CT:0.0004%含有)の割合で添加し、80℃の温浴を用いて20分間加熱した。加熱後直ちに流水中で冷却して菌液をサンプリングし、GAM寒天培地(日水製薬製)にて、35℃、嫌気条件下で2日間培養して、菌数を測定した。コントロールとして、本発明の殺菌剤を添加しない系についても同様に試験を行った。結果を図6に示す。結果からわかるように、本発明の殺菌剤は、耐熱性有芽胞菌であるクロストリジウム属に属する細菌に対して殺菌効果を発揮し、加熱処理後の初動菌の数を有意に低減することができる。
【0091】
実験例5
耐熱性有芽胞菌の一種であるBacillus coagulansを、グルコースの存在下でグルコースオキシダーゼを作用させた後に加熱滅菌処理し、滅菌効果(耐熱性有芽胞菌の耐熱性)を評価した。
【0092】
(1)殺菌剤の調製
カタラーゼ(5500U/g)5部とグリセリン脂肪酸エステル2部とを合わせて溶融混合し、これを粉末化して徐放性カタラーゼを調製した。なお、この徐放性カタラーゼは、カタラーゼがグリセリン脂肪酸エステルでコーティングされている。この徐放性カタラーゼに、粉末状のグルコースオキシダーゼ(2000U/g)とデキストリンと混合して、グルコースオキシダーゼ9%、カタラーゼ0.8%、グリセリン脂肪酸エステル2%、及びデキストリン88.2%からなる粉末状の本発明の殺菌剤3(GO粉末+徐放性CT粉末混合品)を調製した。
【0093】
(2)滅菌効果(耐熱性有芽胞菌の耐熱性)の評価
1%グルコース水溶液に、B.coagulans(NBRC 12583)を 1.0×104 CFU/mlとなるよう添加し十分に混合し、これを試験管に10mlずつ分注して、各試験管の溶液中に上記調製した本発明の殺菌剤3を0.05%(GO:0.0045%、CT:0.0004%含有)添加し、直ちに90℃に設定した湯浴に移し、80℃に達温を確認した後、2分間加熱処理した。次いで、オートクレーブにより、(1)95℃5分間、(2)100℃5分間、(3) 105℃5分間、の滅菌処理条件にて殺菌を行った。なお、比較のため、上記操作において殺菌剤を添加せず、それ以外は同様に処理した検体を用意した(殺菌剤無添加区)。
【0094】
各検体について、オートクレーブ(滅菌処理)の前後で、試料中のB.coagulans菌数を測定した。なお、菌数の測定は、採取した試料を標準寒天培地(日水製薬製、pH7.0)に植菌して、35℃で48時間培養して菌数をカウントすることで行った。
【0095】
(1) 95℃5分間で滅菌した結果を図7(A)に、(2)100℃5分間で滅菌した結果を図7(B)に、(3)105℃5分間で滅菌した結果を図7(C)に示す。図7(A)〜(C)からわかるように、殺菌剤無添加区と比較して、殺菌剤添加区では、オートクレーブ処理後の菌数が有意に減少することが確認された。特に105℃5分のオートクレーブ処理の場合、殺菌剤無添加区では菌が残存していたの対して、殺菌剤添加区では菌が全て死滅することが確認された。この試験より、レトルト殺菌前に、グルコースの存在下でグルコースオキシダーゼを反応させて過酸化水素を作用させることで、耐熱性有芽胞菌、B.coagulansの耐熱性が減少し、レトルト殺菌時の殺菌温度、および殺菌時間の緩和が可能であることが判明した。
【0096】
実施例1:卵焼き
実験例1で用いたグルコースオキシダーゼ粉末(GO)90部と実験例2で調製した顆粒状の徐放性カタラーゼ(徐放性CT)10部を混合し、本発明の本発明の殺菌剤4(徐放性CT顆粒+GO粉末との混合品)を調製した。
【0097】
全卵70部、でん粉3部、水27部を混合し、卵焼きミックスを調製した。この卵焼きミックスにBacillus sereusを6×10CFU/mlとなるよう植菌し、これに本発明の殺菌剤4を0.02部添加し、80℃にて20分間加熱し、卵焼きを調製した(実施例1)。比較例1として、本発明の殺菌剤4を添加しない以外は上記と同様にして卵焼きを調製した。加熱後の卵焼き中の菌数を測定した。結果を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
表1より、グルコースオキシダーゼ(GO)と徐放性カタラーゼ(徐放性CT)を含む本発明の殺菌剤4を添加することにより、卵焼きに含まれる細菌(Bacillus sereus)は殆ど死滅していることが判った。
【0100】
実施例2:ゆで卵
食塩2%とぶどう糖0.5%を含む水溶液に、表2に示す割合で、本発明の殺菌剤4と静菌剤(酢酸ナトリウムおよびグリシン)を添加し、醸造酢にてpH5としたものを、ゆで卵の浸漬液とした(実施例2)。また比較のため、表2に示すように静菌剤a(酢酸ナトリウムおよびグリシン)または静菌剤b(酢酸ナトリウム、グリシンおよびポリリジン)だけを配合した浸漬液(pH5)(比較例2-1、比較例2-2)、または何も添加しない浸漬液(比較例2-3)を用意した。
【0101】
これらの各浸漬液にBacillus sereusを6×10CFU/mlとなるよう植菌し、ゆで卵を入れ80℃にて20分間加熱殺菌した。殺菌直後に、ゆで卵の浸漬液の細菌検査を行なった。結果を表2に示す。
【0102】
【表2】

【0103】
本発明の殺菌剤4と静菌剤aを添加した浸漬液(実施例2)は、静菌剤aまたはbだけを添加した浸漬液(比較例2-1〜2-2)、ならびに無添加の浸漬液(比較例2-3)に比べて殺菌効果が高く、有意にゆで卵浸漬液の初動菌数が低減されていた。また、これらの浸漬液に含まれる過酸化水素はいずれも検出限界(定量限界1ppm、検出限界0.1ppm)以下であった。
【0104】
実施例3:里芋の煮物
薄口醤油11部、みりん7部、酒1部、水81部に、実施例1で調製した本発明の殺菌剤4を0.05部と静菌剤として酢酸ナトリウム製剤(製品名:サンキーパー[商標]NO.309F、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.4部を添加した調味液(実施例3)を調製した。また比較例として、薄口醤油11部、みりん7部、酒1部、水81部に上記静菌剤0.4部だけを添加した調味液(比較例3-1)、および殺菌剤および静菌剤のいずれも添加しない調味液(比較例3-2)を調製した。これらに、おのおの里芋を加え、強火で12分、その後、弱火で20分間加熱し里芋の煮物を調理した。里芋の煮物を25℃で保存し、3日後の菌数を測定した。結果を表3に示す。
【0105】
【表3】

【0106】
この結果から、本発明の殺菌剤4と静菌剤を併用することにより、里芋の保存日数が延びた。また、里芋の煮物調理後に含まれる過酸化水素は検出限界(定量限界1ppm、検出限界0.1ppm)以下であった。なお、菌数が、106 CFU/mlを超えるものは腐敗が進んでいると考えられる。
【0107】
実施例4:パンフィリング
グルコースオキシダーゼ(GO)70部と実験例2で調製した顆粒状の徐放性カタラーゼ(徐放性CT)30部とを混合し、本発明の殺菌剤5(徐放性CT顆粒+GO粉末との混合品)を調製した。
【0108】
グラニュー糖17部、全脂粉乳8.3部、無塩バター5部、コーンスターチ4.5部、薄力粉2部、全卵3.5部、香料0.2部、着色料0.05部(カロチンベースNO.9400)0.1部、水59.2部に上記殺菌剤B0.05部と静菌剤としてグリシン0.5部を添加し、85℃20分間加熱調理し、パンフィリングを調製した(実施例4)。比較例として、上記調製に際して殺菌剤5を使用しないで静菌剤(グリシン)1部だけを添加して(比較例4-1)、または殺菌剤5および静菌剤のいずれも使用しないでパンフィリングを調製した(比較例4-2)。これらのパンフィリングを25℃で保存し、保存後1日目と2日目の細菌数を測定した。結果を表4に示す。
【0109】
【表4】

【0110】
表4からわかるように、本発明の殺菌剤5及び静菌剤を併用することにより、パンフィリングの細菌数の経時的増加を有意に抑えることができた。また、パンフィリング調製後(加熱直後)における、過酸化水素はいずれも検出限界(定量限界1ppm、検出限界0.1ppm)以下であった。
【0111】
実施例5:カレー
実験例4と同様にして、カタラーゼ(CT)0.4部とグリセリン脂肪酸エステル1部とを合わせて溶融混合し、これを粉末化して徐放性カタラーゼ(徐放性CT)を調製した。これに4.5部のグルコースオキシダーゼおよび44.1部デキストリン配合して、本発明の殺菌剤6(GO粉末+徐放性CT粉末混合品)を調製した。これを用いて、カレーに対する殺菌効果並びに防腐効果(日持ち向上効果)を評価した。
【0112】
具体的には、市販のレトルトカレー(グルコース最終濃度0.1%)を滅菌済の容器に移し、耐熱性有芽胞菌液 B.cereus IFO 15305(約3.0×107 CFU/ml)を各種菌数濃度(添加菌数:102CFU/g、103CFU/g、104 CFU/g、105 CFU/g)になるよう添加した後、よく混合した。各検体につき、チャック付ポリラミネート袋に100gずつ2つに分け、一つはそのままヒートシールし(無添加区)、他の一つには本発明の殺菌剤6(GO粉末+徐放性CT粉末混合品)を最終濃度0.05%(GO:0.00045%、CT:0.0004%含有)になるように添加、混合してヒートシールした。これらを常温にて20分おき、次いで85℃達温より30分加熱した。加熱後、すぐに流水中で冷却し、各ラミネート袋より10gづつサンプリングして、初動菌数を測定した(加熱後0日目)。また25℃にて保存後1日目、2日目に、同様にサンプリングして、カレー中の菌数を測定した。結果を図8に示す。
【0113】
図8からわかるように、無添加区では、いずれも加熱によって1日目まで菌の生育を抑制できていたが、2日目に菌数が顕著に増加した。これに対して、殺菌剤添加区では加熱による殺菌効果が上がり、加熱直後の菌数は無添加と比べて減少し、また、加熱後2日目においても菌数は減少していた。このことから、本発明の殺菌剤には、初動菌の減少効果と、経時的な細菌増殖を防止する効果(菌増殖抑制効果、防腐効果)があることがわかる。
【0114】
実施例6:グラタンソース
本発明の殺菌剤6(GO粉末+徐放性CT粉末混合品)を用いて、グラタンソースに対する防腐効果(日持ち向上効果)を評価した。
【0115】
具体的には、グラタンソースの材料(グルコース最終濃度0.5 %)に上記殺菌剤(表5の試験区3と5)を添加して混合し、これを常温にて20分間静置した。なお、表5の試験区1、2および4のグラタンソースについてはそのまま常温にて20分間静置した。その後、火をかけて攪拌し、90℃に達してから3分間加熱し、熱時滅菌容器にいれて、試験区1以外のグラタンソースに静菌剤AまたはBを添加し混合した。これを15℃で保存して、経時的に菌数を測定した。結果を表5に示す。
【0116】
【表5】

【0117】
表5に示すように、本発明の殺菌剤と静菌剤を併用することで、経時的な細菌増殖を防止する効果(菌増殖抑制効果、防腐効果)が向上することがわかる。
【0118】
実施例7:蒲鉾
本発明の殺菌剤6(GO粉末+徐放性CT粉末混合品)を用いて、蒲鉾(直蒸し)に対する殺菌効果並びに防腐効果(日持ち向上効果)を評価した。試験は、本発明の殺菌剤単一使用による殺菌効果および防腐効果(試験1)と、本発明の殺菌剤と静菌剤との併用による殺菌効果および防腐効果(試験2)を調べた。
【0119】
まず、下記の処方に従って蒲鉾を調製した。
<蒲鉾処方>
(1)冷凍すり身(特A) 100.0 (kg)
(2)冷凍すり身(2級) 200.0
(3)食塩 9.0
(4)タンパク質製剤 12.0
(5)砂糖 6.0
(6)馬鈴薯澱粉 30.0
(7)みりん 10.0
(8)氷水 233.0
合計 600.0 kg。
【0120】
具体的には、まず冷凍すり身を空ずりし、食塩を添加し塩ずりした後、タンパク質製剤(エスプローゲン〔登録商標〕 K−169、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)を粉末のまま添加した。これに(5)〜(8)順に添加し、よくすり上げ、同時に表6および7に従って、各種製剤を添加した。次いでこれを15〜20gづつでケーシングし、90℃/40minでスチームした。氷中で冷却後、20℃保存にて保存し、経日的に菌数を測定した。結果を表6および7に合わせて示す。
【0121】
(1)試験1
本発明の殺菌剤6を0.01%(GO:0.0009%、CT:0.00008%含有)単独で使用
【0122】
【表6】

【0123】
(2)試験2
本発明の殺菌剤6〔0.01%(GO:0.0009%、CT:0.00008%含有)〕と静菌剤との併用
【0124】
【表7】

【0125】
表6に示すように、本発明の殺菌剤には殺菌効果と経時的な細菌増殖を防止する効果(菌増殖抑制効果、防腐効果)が認められるが、表7に示すように、静菌剤と併用することで、菌増殖抑制効果(防腐効果)がより向上することがわかる。また、蒲鉾中の過酸化水素濃度を測定したところ、いずれも1ppm以下であった。
【0126】
実施例8:麺つゆ
本発明の殺菌剤6(GO粉末+徐放性CT粉末混合品)を用いて、麺つゆに対する殺菌効果(初動菌低減効果)、並びに味に対する影響を調べた。
【0127】
(1)殺菌効果の評価
市販の麺つゆ(2倍濃縮)200g、滅菌水199g、および冷蔵有芽胞菌液B.cereus IFO 15305(約3.0×107CFU/g)1.0 mlをよく混合した。これから10mlサンプリングして初発菌数を測定した。次いで100ml容バイアル瓶に50mlづつ分注し、これに上記殺菌剤を0.01%(GO:0.0009%、CT:0.00008%)添加し、混合後、常温にて20分静置した。これを80℃で40分間加熱し、10mlサンプリングして菌数を測定した。結果を図9に示す。
【0128】
図9に示すように本発明の殺菌剤を添加することによって、同じ加熱条件でも加熱後の菌数に10倍以上の差が認められ、殺菌効率があがることが確認できた。このことから、本発明の殺菌剤を用いることにより、無使用の場合よりも短い加熱時間で同等の殺菌効果が得られ、加熱による食品の劣化を和らげることができるがわかる。
【0129】
(2)味に対する影響の評価
下記の処方に従って麺つゆを調製した。
<処方>
(1)水 450(g)
(2)濃口醤油 90
(3)みりん 90
(4)削りカツオ 15
(5)だし昆布 10
(6)干し椎茸 3。
【0130】
具体的には、削りカツオ以外の材料を鍋に入れて煮立て、これに削りカツオを入れて4分間煮た。次いでこれを布でこして流水で冷却した。これを2つにわけ(200g×2つ)、一方に本発明の殺菌剤を0.01%(GO:0.0009%、CT:0.00008%)添加混合し(殺菌剤添加区)、他方には殺菌剤を添加しないで(無添加区)、各々20分間静置した。これらを50gづつ、バイアル瓶に分注し、上記(1)の試験結果に基づいて細菌数が同じくなるように、無添加区は80℃で40分間、殺菌剤添加区は80℃で20分間、湯浴上で加熱した。これを流水で冷却し、加熱前と加熱後で、各試験区における味の評価を行った。味の評価は、パネラー10名で行った。結果を表8に示す。
【0131】
【表8】

【0132】
この結果からわかるように、本発明の殺菌剤の添加により、加熱時間を短縮することができ、また味の悪影響は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の殺菌剤によれば、加熱処理と併用することで食品の腐敗に関与する初動菌の発生を抑制できる。また本発明の殺菌剤と静菌剤を併用することで、更に加熱殺菌後の保存中の耐熱性菌の発育・増殖をも抑制することができ、長期に渡って腐敗を防止して保存することが可能となる。特に本発明の殺菌剤は、食品の風味や味に影響を与えないため、味や風味のよい加工食品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】グルコースオキシダーゼ製剤(GO:CT=10:0)(第1検体)、およびグルコースオキシダーゼ製剤とカタラーゼ製剤の併用(GO:CT=5:5)(第2検体)のバシルス属に属する菌(B.cereus)に対する抗菌効果を、初動菌の菌数と温度との関係を経時的に示した図である(実験例1)。
【図2】グルコースオキシダーゼ製剤(GO:CT=5:0)(第1検体)、グルコースオキシダーゼ製剤とカタラーゼ製剤の併用(GO:CT=5:1)(第2検体)、グルコースオキシダーゼ(粉末)と顆粒状の徐放性カタラーゼの混合品(GO:CT=5:1)(第3検体)のバシルス属に属する菌(B.cereus)に対する抗菌効果を、初動菌の菌数と温度との関係を経時的に示した図である(実験例2)。
【図3】グルコースオキシダーゼ製剤(GO:CT=5:0)またはグルコースオキシダーゼ(粉末)と顆粒状の徐放性カタラーゼの混合品(GO:CT=5:1)をグルコースと反応させた時に生じる過酸化水素発生量を経時的に示す図である(実験例3)。
【図4】実験例4における、本発明の殺菌剤(GO粉末+徐放性CT粉末混合品)のBacillus cereusに対する殺菌効果を示す。
【図5】実験例4における、本発明の殺菌剤(GO粉末+徐放性CT粉末混合品)のBacillus coagulans に対する殺菌効果を示す。
【図6】実験例4における、本発明の殺菌剤(GO粉末+徐放性CT粉末混合品)のClostridium sporogenesに対する殺菌効果を示す。
【図7】オートクレーブ処理による滅菌効果を、殺菌剤(グルコースオキシダーゼ+徐放性カタラーゼ)存在下と非存在下で比較した実験結果を示す(実験例2)。図(A)は95℃5分のオートクレーブ処理による結果、図(B)は100℃5分のオートクレーブ処理による結果、図(C)は105℃5分のオートクレーブ処理による結果を示す。
【図8】実施例5における、カレー中の菌数を経時的に示した図である。
【図9】実施例8における、麺つゆ加熱時の初動菌数を加熱前の菌数と対比した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコースオキシダーゼ及び徐放化したカタラーゼを含むことを特徴とする殺菌剤。
【請求項2】
徐放化したカタラーゼが、カタラーゼと油脂を混合して製剤化してなるものである、請求項1に記載の殺菌剤。
【請求項3】
油脂が、高級脂肪酸、ショ糖脂肪酸エステル、及びモノグリセライドからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項2に記載の殺菌剤。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載する殺菌剤および静菌剤を組み合わせてなる抗菌剤。
【請求項5】
抗菌剤が配合剤であることを特徴とする請求項4に記載する抗菌剤。
【請求項6】
抗菌剤が殺菌剤と静菌剤とからなるキットである請求項4に記載する抗菌剤。
【請求項7】
被験組成物に対して、請求項1乃至3のいずれかに記載する殺菌剤と静菌剤とを同時に添加するか、または殺菌剤を添加する前または添加した後に静菌剤を添加して用いられる、請求項4に記載する抗菌剤。
【請求項8】
被験組成物に過酸化水素を作用させてからカタラーゼを作用させる工程を有し、当該工程の過酸化水素の作用中または作用後に加熱処理(但し、加熱滅菌処理を除く)を施すことを特徴とする、初動菌の低減方法。
【請求項9】
被験組成物に過酸化水素を作用させた後、加熱しながら或いは加熱処理を行った後にカタラーゼを作用させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
被験組成物に対する過酸化水素の作用を、グルコースの存在下でグルコースオキシダーゼを作用させることによって行う請求項8または9に記載する方法。
【請求項11】
被験組成物に、請求項1乃至3のいずれかに記載の殺菌剤または請求項4乃至7のいずれかに記載の抗菌剤を添加した後に、加熱処理(但し、加熱滅菌処理を除く)を施す工程を有する請求項8乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項8乃至10のいずれかに記載する初動菌の低減方法を静菌剤処理と同時に行うか、または過酸化水素の作用後および/またはカタラーゼの作用後に静菌剤処理を行うことを特徴とする、初動菌の低減および増殖抑制方法。
【請求項13】
被験組成物に過酸化水素を作用させてからカタラーゼを作用させる工程を有し、当該工程の過酸化水素の作用中または作用後に加熱処理(但し、加熱滅菌処理を除く)を施すことを特徴とする、殺菌組成物の製造方法。
【請求項14】
被験組成物に過酸化水素を作用させた後、加熱しながら或いは加熱処理を行った後にカタラーゼを作用させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
被験組成物に、グルコースの存在下で、グルコースオキシダーゼを作用させてから、カタラーゼを作用させることを特徴とする、殺菌組成物の製造方法。
【請求項16】
被験組成物に、グルコースの存在下で、請求項1乃至3のいずれかに記載の殺菌剤または請求項4乃至7のいずれかに記載の抗菌剤を添加する工程を有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
被験組成物に、グルコースの存在下で、グルコースオキシダーゼを作用させてからカタラーゼを作用させる工程を有し、当該工程のグルコースオキシダーゼの作用中または作用後に加熱処理(但し、加熱滅菌処理を除く)を施すことを特徴とする、殺菌組成物の製造方法。
【請求項18】
被験組成物にグルコースオキシダーゼを作用させた後、加熱しながら或いは加熱処理を行った後にカタラーゼを作用させる、請求項15乃至17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
被験組成物に、請求項1乃至3のいずれかに記載の殺菌剤または請求項4乃至7のいずれかに記載の抗菌剤を添加した後に、加熱処理(但し、加熱滅菌処理を除く)を施す工程を有する請求項15乃至18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
被験組成物に、請求項1乃至3のいずれかに記載の殺菌剤および静菌剤を添加した後に、加熱処理(但し、加熱滅菌処理を除く)を施す工程を有する、初動菌が低減され且つ細菌増殖が抑制された殺菌組成物の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載する製造方法で得られた、初動菌が低減され且つ細菌増殖抑制された組成物。
【請求項22】
組成物が、加工食品である請求項21に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−149384(P2006−149384A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322953(P2005−322953)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】