説明

加工食品の製造方法

【課題】
未成熟な野菜類及び/又は果実類を用いても、完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを充分にもった、上等な加工食品を作ることである。
【解決手段】
液状を呈する固液混合物に太陽光や太陽光類似光を当て、固液混合物を熟成して完熟する。この時、糖度も上がるが、固液混合物が完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを持つ。上等な加工食品を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未熟な野菜類及び/又は果実類を用いた、ジュース、ソース、ジャムなどの様々な加工食品の製造方法に関する技術分野である。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、茶葉、リンゴ、モモ、ナシ、サクランボ、イチゴ、ブドウ、コケモモ、柑橘類、トマト、ニンジンなどの様々な野菜類及び/又は果実類を使って、数多くの国で、ジュース、ソース、ジャムなどの様々な加工食品が製造されている。
【0003】
2〜3世紀頃に酒造りと共に中国から渡来した壷酢がある。黒酢(壷酢)は暖めると発酵が早くなる。黒酢を入れた壷に太陽を当てて、太陽の熱エネルギー(熱線・赤外線)で壷を暖めて発酵する(例えば、特許文献1参照。)。がある。
【0004】
果実飲料に遠赤外線を照射して熟成する(例えば、特許文献2参照。)。がある。
【0005】
【特許文献1】 特開2005−198596号公報
【特許文献2】 特開昭64−55173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
野菜類及び/又は果実類を常法により粉砕、搾汁して生果汁を得ている。
【0007】
この場合、一般的な野菜類及び/又は果実類の収穫の方法では、完熟した野菜類及び/又は果実類のみを収穫する事は非常に難しく手間のかかるものである。
【0008】
加工工場まで野菜類及び/又は果実類を輸送しなければならないので、収穫から加工するまでに数日間から数週間の時間がかかる。完熟した野菜類及び/又は果実類を収穫した場合には、収穫時がその野菜類及び/又は果実類の最高の状態であるので、加工するまでに野菜類及び/又は果実類の状態が段々と悪くなる。
【0009】
よって、野菜類及び/又は果実類を未成熟な状態で収穫し、野菜類及び/又は果実類を常法により粉砕、搾汁して生野菜汁及び/又は生果汁を得て、ジュース、ソース、ジャムなどの様々な加工食品が製造されている。
【0010】
この場合、野菜類及び/又は果実類が未成熟であるので風味や香りが充分でなく、糖度も低く、上等なジュース、ソース、ジャムなどの加工食品を作ることができない。
【0011】
生野菜汁及び/又は果汁の濃縮に、加熱濃縮法と冷凍濃縮法がある。
【0012】
加熱濃縮法は、加熱によって生野菜汁及び/又は果汁の水分を除去する方法である。加熱濃縮法は、糖度を高めることができるが、加熱によって生野菜汁及び/又は果汁の品質が損なわれる危険がある。
【0013】
冷凍濃縮法では生野菜汁及び/又は果汁の品質の低下を防ぐ事ができるが、糖度を高めることが困難である。糖度を上げるには冷凍温度を非常に下げなければならないので、製造コストが非常にかかってしまう。
【0014】
その他の生野菜汁及び/又は果汁の濃縮法として、逆浸透濃縮法と真空濃縮法がある。
【0015】
逆浸透濃縮法は、逆浸透膜による生野菜汁及び/又は果汁の濃縮方法である。逆浸透膜は海水から淡水化する装置にも使われている。逆浸透濃縮法は、生野菜汁及び/又は果汁に浸透圧以上の圧力をかけ、逆浸透膜を通して生野菜汁及び/又は果汁の水分を除去する、生野菜汁及び/又は果汁の濃縮方法である。
【0016】
真空濃縮法は、生野菜汁及び/又は果汁を入れた容器の中を真空又は大変に気圧の低い状態にすると、生野菜汁及び/又は果汁の沸点が低くなり、低い温度で煮沸ができ、生野菜汁及び/又は果汁の水分を除去する、生野菜汁及び/又は果汁の濃縮方法である。
【0017】
加熱濃縮法、冷凍濃縮法、逆浸透濃縮法、真空濃縮法などの現在用いられている様々な濃縮法では糖度を上げて生野菜汁及び/又は果汁を濃縮することはできるが、風味や香りを上げるための生野菜汁及び/又は果汁の熟成は見られない。
【0018】
加熱濃縮法、冷凍濃縮法、逆浸透濃縮法、真空濃縮法などの現在用いられている様々な濃縮法では、生野菜汁及び/又は果汁の風味や香りを最上の状態に上げることができない。
【0019】
本特許願の課題は、未成熟な野菜類及び/又は果実類を用いても、完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを充分にもった、上等なジュース、ソース、ジャムなどの加工食品を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
野菜類及び/又は果実類を破砕し、生野菜汁及び/又は果汁の液状を呈する固液混合物(固体と液体との混合物)を得る。
【0021】
固液混合物を加熱濃縮法、冷凍濃縮法、逆浸透濃縮法及び真空濃縮法から選択される一種以上の濃縮法で加工して、固液混合物を濃縮する。
【0022】
又は、固液混合物の濃縮法を用いず、固液混合物の濃縮はしない。
【0023】
固液混合物に太陽光及び/又は太陽光類似光を当て、光エネルギーのみ(赤色、橙色、黄色、緑色及び青色の発光ダイオードの光。)で固液混合物を熟成して完熟する。または、光エネルギー及び熱エネルギーの両者で固液混合物を熟成して完熟する。この時、糖度も上がり、固液混合物が完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを持つ。
【0024】
太陽光類似光とは、発光ダイオード(LED)、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯の光である。
【0025】
発光ダイオードは、赤、橙、黄、緑、青、などの赤外域から青色までの波長で発光するものがある。
【0026】
野菜類及び/又は果実類の熟成には、少なくとも3通りの熟成方法がある。
【0027】
赤色、橙色、黄色、緑色及び青色の発光ダイオードの光では、光エネルギーだけで、固液混合物を熟成する。
【0028】
赤外線(熱線)では、熱エネルギーだけで、固液混合物を熟成する。例えば、(特許文献1)特開2005−198596号公報や(特許文献2)特開昭64−55173号公報はこのケースである。例えば、赤外域限定の発光ダイオードによる固液混合物を熟成。
【0029】
太陽光、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯の光では、光エネルギーと熱エネルギーの両者を使って、固液混合物を熟成する。
【0030】
加熱濃縮法、冷凍濃縮法、逆浸透濃縮法及び真空濃縮法から選択される一種以上の濃縮法で加工しても、野菜類及び/又は果実類が熟成するシステムは壊れない。
【0031】
固液混合物を加熱濃縮法で加工して、固液混合物に太陽光や太陽光類似光を当て、固液混合物を熟成する食品の製造方法の特許願は、特願2006−064851で申請済みであるので、本特許願の固液混合物の濃縮法から、加熱濃縮法を除く。
【0032】
野菜類及び/又は果実類を破砕し、液状を呈する固液混合物を得、固液混合物を冷凍濃縮法、逆浸透濃縮法及び真空濃縮法から選択される一種以上の濃縮法で固液混合物を濃縮し、固液混合物に太陽光、赤外域限定以外の発光ダイオード、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯から選択される一種以上の光りを当てて、固液混合物を熟成し、完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを持つ加工食品を製造することができる、以上のことを特徴とするアルコール飲料以外の加工食品の製造方法である。
【0033】
野菜類及び/又は果実類を破砕し、液状を呈する固液混合物を得、固液混合物に太陽光、赤外域限定以外の発光ダイオード、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯から選択される一種以上の光りを当てて、固液混合物を熟成し、完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを持つ加工食品を製造することができる、以上のことを特徴とするアルコール飲料以外の加工食品の製造方法である。
【発明の効果】
【0034】
未成熟な野菜類及び/又は果実類を用いても、野菜類及び/又は果実類を破砕し、液状を呈する固液混合物を得て、固液混合物に太陽光、赤外域限定以外の発光ダイオード、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯から選択される一種以上の光りを当てて、固液混合物が熟成して完熟するので、完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを持つ、上等な加工食品を作ることができる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0035】
発明の実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
図1において、未成熟な野菜類及び/又は果実類を洗浄する、洗浄工程。
【0036】
図1において、野菜類及び/又は果実類を破砕し、液状を呈する固液混合物(固体と液体との混合物)を得る、破砕工程。
【0037】
図1において、液状を呈する固液混合物を冷凍濃縮法、逆浸透濃縮法及び真空濃縮法から選択される一種以上の濃縮法で固液混合物を濃縮する、濃縮工程。
【0038】
図1において、液状を呈する固液混合物を滅菌する、滅菌工程。
【0039】
図1において、液状を呈する固液混合物に太陽光、赤外域限定以外の発光ダイオード、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯から選択される一種以上の光りを当てて、固液混合物が熟成する、熟成工程。
【0040】
図1において、加工食品の完成。以上のことを特徴とするアルコール飲料以外の加工食品の製造方法である。
【0041】
また、液状を呈する固液混合物を濃縮する、濃縮工程が無い製造方法では、
図2において、未成熟な野菜類及び/又は果実類を洗浄する、洗浄工程。
【0042】
図2において、野菜類及び/又は果実類を破砕し、液状を呈する固液混合物(固体と液体との混合物)を得る、破砕工程。
【0043】
図2において、液状を呈する固液混合物を滅菌する、滅菌工程。
【0044】
図2において、液状を呈する固液混合物に太陽光、赤外域限定以外の発光ダイオード、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯から選択される一種以上の光りを当てて、固液混合物が熟成する、熟成工程。
【0045】
図2において、加工食品の完成。以上のことを特徴とするアルコール飲料以外の加工食品の製造方法である。
【実施例1】
【0046】
発明の実施例を図面参照して説明する。
図1において、未成熟なリンゴを洗浄する、洗浄工程。
【0047】
図1において、リンゴを破砕し、液状を呈する固液混合物(固体と液体との混合物)を得る、破砕工程。
【0048】
図1において、液状を呈する固液混合物を真空濃縮法で濃縮する、濃縮工程。
【0049】
図1において、液状を呈する固液混合物を80℃で2分間滅菌する、滅菌工程。
【0050】
図1において、液状を呈する固液混合物に赤色と青色の発光ダイオードを2日間当てて、固液混合物が熟成する、熟成工程。
【0051】
図1において、完熟したリンゴジャム(加工食品)の完成。
【実施例2】
【0052】
図1において、未成熟なトマトを洗浄する、洗浄工程。
【0053】
図1において、トマトを破砕し、液状を呈する固液混合物(固体と液体との混合物)を得る、破砕工程。
【0054】
図1において、液状を呈する固液混合物を逆浸透濃縮法で濃縮する、濃縮工程。
【0055】
図1において、液状を呈する固液混合物を95℃で1分間滅菌する、滅菌工程。
【0056】
図1において、液状を呈する固液混合物に黄色と緑色の発光ダイオードを2日間当てて、その後太陽光を3日間当てて、固液混合物が熟成する、熟成工程。
【0057】
図1において、完熟したトマトソース(加工食品)の完成。
【実施例3】
【0058】
また、液状を呈する固液混合物を濃縮する、濃縮工程が無い製造方法では、
図2において、未成熟なフドウを洗浄する、洗浄工程。
【0059】
図2において、ブドウを破砕し、液状を呈する固液混合物(固体と液体との混合物)を得る、破砕工程。
【0060】
図2において、液状を呈する固液混合物を80℃で2分間滅菌する、滅菌工程。
【0061】
図2において、液状を呈する固液混合物に橙色の発光ダイオードを2日間当てて、その後太陽光を3日間当てて、固液混合物が熟成する、熟成工程。
【0062】
図2において、完熟したブドウジュース(加工食品)の完成。
【実施例4】
【0063】
図2において、未成熟なオレンジを洗浄する、洗浄工程。
【0064】
図2において、オレンジを破砕し、液状を呈する固液混合物(固体と液体との混合物)を得る、破砕工程。
【0065】
図2において、液状を呈する固液混合物を80℃で2分間滅菌する、滅菌工程。
【0066】
図2において、液状を呈する固液混合物に赤色の発光ダイオードを2日間当てて、その後高圧ナトリウムランプを3日間当てて、固液混合物が熟成する、熟成工程。
【0067】
図2において、完熟したオレンジジュース(加工食品)の完成。
【産業上の利用可能性】
【0068】
未成熟な野菜類及び/又は果実類を用いても、熟成工程をして、完熟した野菜類及び/又は果実類を用いるので、従来の加工食品と比べて、風味や香りが数段と向上した加工食品ができる。
【0069】
台風などで落ちた果実でも、完熟した風味や香りのある加工食品ができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の加工食品の製造方法の実施例を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明の加工食品の製造方法の実施例を説明するためのフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜類及び/又は果実類を破砕し、液状を呈する固液混合物を得、固液混合物を冷凍濃縮法、逆浸透濃縮法及び真空濃縮法から選択される一種以上の濃縮法で固液混合物を濃縮し、固液混合物に太陽光、赤外域限定以外の発光ダイオード、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯から選択される一種以上の光りを当てて、固液混合物を熟成し、完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを持つ加工食品を製造することができる、以上のことを特徴とするアルコール飲料以外の加工食品の製造方法。
【請求項2】
野菜類及び/又は果実類を破砕し、液状を呈する固液混合物を得、固液混合物に太陽光、赤外域限定以外の発光ダイオード、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯から選択される一種以上の光りを当てて、固液混合物を熟成し、完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを持つ加工食品を製造することができる、以上のことを特徴とするアルコール飲料以外の加工食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−79589(P2008−79589A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288090(P2006−288090)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【特許番号】特許第3959507号(P3959507)
【特許公報発行日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【出願人】(599015641)
【Fターム(参考)】