説明

加水分解性官能基を有するポリマーの架橋ポリマーの製造方法及び加水分解性官能基を有するポリマーの架橋ポリマー

【課題】 金属アルコキシドのような加水分解性金属官能基を有するポリマーの硬化物を得る方法であって、高価な装置を必要とせず、紫外線や電子線などを長時間に渡って照射する必要がなく、さらに速やかに硬化物を得ることを可能とする架橋ポリマーの製造方法、並びに該製造方法により得られた架橋ポリマーを提供することにある。
【解決手段】 金属原子に加水分解性の官能基が結合されている加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)を、活性酸素を発生させる物質(B)の存在下で硬化させる、加水分解性官能基を有するポリマーの架橋ポリマーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシドのような加水分解性金属官能基を有するポリマーの架橋ポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加水分解性金属官能基を有するポリマーは、コーティング剤、グリース、粘着剤、接着剤、シーリング材、エラストマーなどの材料として汎用されている。中でも、アルコキシシリル基のような金属元素がケイ素である加水分解性シリル基を有するポリマーを架橋させた硬化物では、非常に硬くて脆い硬化物から柔軟性や弾力性に富んだ硬化物に至る、非常に幅広い物性の硬化物を得ることができる。しかもグリースのような非常に粘調な物質や、粘着性物質として用い得る硬化物を得ることも可能である。
【0003】
しかしながら、従来より知られている加水分解性シリル基含有化合物を含む組成物を、特に利便性に優れた一液型の接着剤や一液型シーリング材として用いる場合、空気中の湿気により重合または架橋するため、貯蔵時に湿気を遮断する必要があった。そのため、貯蔵時に、空気中の湿度を低く保ったり、あるいは気密性容器を用いて保管する必要があった。
【0004】
従って、上記加水分解性シリル基含有化合物を含む組成物を用いた接着剤等は、通常、気密性容器に封入され、開封後には短時間で使用しなければならなかった。そのため、長時間解放系で上記接着剤などを用いることができず、例えば、生産ラインなどで用いられている一般的な塗布装置で安定に使用することは困難であった。すなわち、一般的な塗布装置では、接着剤の貯蔵や供給時に湿気を遮断するような工夫が施されていないのが普通である。また、一部の塗布装置では、構造上、湿気を遮断する構造を追加することができないものもある。
【0005】
他方、生産ラインなどに用いられるには、生産性を考慮して、混合が不要であり、速やかに接着力を発現する接着剤が求められる。従って、加水分解性シリル基含有化合物を用いた接着剤では、加水分解性シリル基含有化合物と、該化合物の加水分解・縮合反応を促進する化合物とを共存させた一液型接着剤が好ましい。しかしながら、このような一液型の接着剤は、貯蔵安定性が不十分であるという問題があった。
【0006】
他方、貯蔵安定性に優れた接着剤を構成するように、上記加水分解・縮合反応を促進するための化合物を選択した場合には、速やかな重合または架橋反応が起こり難いという問題があった。
【0007】
すなわち、加水分解性シリル基含有化合物と、加水分解・縮合反応を促進する化合物とを共存させた一液型の接着剤として、貯蔵安定性に優れ、かつ速やかに重合または架橋反応が進行する組成物を得ることは困難であった。
【0008】
上記課題を解決する方法として、アルコキシシリル基またはアルキルアルコキシシリル基を有するシラン化合物と、芳香族オニウム塩触媒とからなり、貯蔵安定性に優れかつ速やかに重合または架橋反応が進行する組成物が下記の特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の方法では、下記の非特許文献1に記載されているように、芳香族オニウム塩触媒に輻射線が照射され、芳香族オニウム塩触媒が活性化され、プロトン酸が発生し、発生したプロトン酸がアルコキシシリル基またはアルキルアルコキシシリル基の加水分解
・縮合反応を促進する。
【0009】
また下記の特許文献2にも、酸生成物質としてのオニウム塩を含み、アルコキシシリル基を有するポリマーの湿気硬化を促進させ得る湿気硬化型組成物が開示さている。ここでは、オニウム塩が、感光性を示し、光を照射すると、直ちに酸を遊離する旨が示されている。
【0010】
しかしながら、芳香族オニウム塩触媒は、アルコキシシリル基またはアルキルアルコキシシリル基を有するシラン化合物に対する溶解性が乏しい。シラン化合物が重合体である場合には、特に上記触媒の溶解性は低く、組成物が不透明となる。従って、組成物に輻射線が透過し難くなり、輻射線が照射された表面部分のみが架橋または硬化し、内部まで十分に硬化を進行させることが困難であった。そのため、加水分解可能の上記シランと、芳香族オニウム塩触媒との組み合わせに制限があった。
【0011】
また、下記の非特許文献2には、光により活性化されるベンゾインスルフォネートとアクリロイル基を含有する加水分解可能なシランとを組み合わせ、光架橋させる方法が開示されている。
【0012】
ベンゾインスルフォネートは、アクリロイル基を光重合させる増感剤であると共に、加水分解性シリル基の加水分解・縮合反応を光開始させることが知られている。しかしながら、アクリロイル基の光重合または加水分解性シリル基の加水分解・縮合反応を完了するには、長時間に渡り紫外線を照射し、かつ大きな照射エネルギーが必要であった。
【0013】
下記の特許文献3には、加水分解性基を有するシラン化合物を、加水分解・部分縮合させてなるポリシロキサンポリマーと、活性化学線により塩基を発生する塩基発生剤とからなる感光性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、紫外線照射後に、通常50〜150℃の温度に加熱しなければならず、室温で速やかに高分子量化させることはできなかった。
【特許文献1】特開昭53−97098号公報
【特許文献2】特表平2001−515533号公報
【特許文献3】特開平6−273936号公報
【非特許文献1】Radiation Curing in Polymer Science and Technology,vol2,Elsevier Applied Science,London,1993
【非特許文献2】H.Inoueら,J.Photopolym.Sci.,12巻,129−132頁,1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した従来技術の現状に鑑み、加水分解性金属官能基を有するポリマーの硬化物を得る方法であって、湿気硬化反応に依存せず、紫外線や電子線などを長時間にわたって照射する必要がなく、さらに速やかに硬化物を得ることを可能とする架橋ポリマーの製造方法、ならびに該製造方法により得られた架橋ポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の第1の発明は、金属原子に加水分解性の官能基が結合されている加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)を、活性酸素を発生させる物質(B)の存在下で硬化させることを特徴とする、加水分解性官能基を有するポリマーの架橋ポリマーの製造方法である。
【0016】
なお、本明細書において、「活性酸素」とは、Ptをも溶解する活性度の高い酸素を意味し、このような活性酸素としては、原子状酸素、いわゆる裸の酸素をいうものである。
【0017】
本願の第2の発明は、金属原子に加水分解性の官能基が結合されている加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)を活性酸素の存在下で硬化させることを特徴とする、加水分解性官能基を有するポリマーの架橋ポリマーの製造方法である。
【0018】
第2の発明のある特定の局面では、硬化に際し、オゾンまたは酸素にエネルギー線が照射され、それによってオゾンまたは酸素分子の分解によって発生する活性酸素が用いられる。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明に係る加水分解性金属官能基を有するポリマーの架橋ポリマーの製造方法では、加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)を活性酸素を発生させる物質(B)の存在下で硬化させることにより硬化物が得られる。すなわち、活性酸素を発生させる物質(B)から発生した活性酸素により、加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)が活性酸素の作用により硬化する。
【0020】
同様に、第2の発明においても、活性酸素の存在下で加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)の硬化が行われ、例えばオゾンや酸素、β−ジケトン及び/または無水マレイン酸などにエネルギー線を照射することにより、活性酸素を発生させ、該活性酸素の作用により加水分解性金属官能基を有するポリマーの硬化が進行する。従って、第1の発明と同様に、架橋密度の高い硬化物を容易に得ることが可能となる。
【0021】
特に、第1,第2の発明では、加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)の種類を選択することにより、柔軟な硬化物から硬度の高い硬化物、あるいは耐湿性に優れた硬化物などの様々な物性を実現し得る硬化物を容易に得ることができる。
【0022】
また、第2の発明では、加熱を行わずとも、硬化物を得ることができるため、すなわち高温の加熱を必要としないため、硬化物の熱による膨張・収縮が生じ難く、寸法精度に優れた硬化物を得ることができる。さらに、加熱を伴わずに硬化させた場合には、硬化反応がゆっくりと進行するため、より緻密であり、硬い硬化物を提供することも可能となる。
【0023】
また、上記加水分解性金属官能基を有するポリマーが加水分解性ケイ素基を有する場合、硬化促進剤としてβ−ジケトンを用いることにより、硬化をより一層速やかに行うことができる。
【0024】
本発明に係る加水分解性官能基を有するポリマーの架橋ポリマーは、本発明の製造方法に従って得られたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下本発明の詳細を説明する。
【0026】
本発明において用いられる上記加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)とは、金属原子に加水分解性の官能基が結合した構造を有するポリマーである。ポリマー(A)は、1種類のみが用いられてもよく、複数種類が併用されてもよい。
【0027】
上記金属原子としては特に限定されず、例えば、Li、Be、B、C、Na、Mg、Al、Si、P、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、C
s、Ba、La、Hf、Ta、W、Hg、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th,Pa、U、Pu等が挙げられる。
【0028】
上記加水分解性の官能基としては特に限定されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、硝酸基、塩素基、有機酸基、錯体を形成する配位子などが挙げられる。
【0029】
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。上記錯体を形成する配位子としては、例えばエチレンジアミン、オキシン、ビピリジル、ブタジエン、シクロペンタジエン等の公知の配位子が挙げられる。なお、これらの配位子においては、水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。
【0030】
上記加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)の例としては、金属元素のアルコキシド、フェノキシド、ベンジルオキシド、硝酸塩、塩化物または有機酸塩が挙げられ、あるいは有機金属錯体も用いられる。また、上記加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)は、複数種の金属化合物から構成されてもよく、その場合には、少なくとも1種の金属化合物が、金属元素のアルコキシド、フェノキシド、ベンジルオキシド、硝酸塩、塩化物、有機酸塩または有機金属錯体であることが好ましい。
【0031】
上記金属元素の有機酸塩としては、例えば、上記金属とカルボン酸との塩が挙げられる。上記カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチル酸、イソブチル酸、バレリック酸、2−メチルブチル酸、トリメチル酢酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクチル酸、デカン酸、ラウリル酸、ミリスチリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、シュウ酸、コハク酸、イタコン酸、マレイン酸、グルタル酸等が挙げられる。
【0032】
上記加水分解性金属官能基の中でも、金属元素がSiである加水分解性金属官能基が好ましく用いられる。金属元素がSiである場合、重合または架橋後、硬くて脆い性質から柔軟性や弾力性に富んだ性質までの広い範囲に渡る様々な物性の硬化物を得ることができる。しかも、グリースのような非常に粘調な物質や、粘着性物質も硬化体として得ることができる。従って、金属元素がSiである加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)を用いることにより、コーティング材、グリース、粘着剤、接着剤、シーリング材、エラストマーあるいは離型剤などの様々な用途に本発明により得られる硬化物を用いることができる。
【0033】
中でも、上記加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)が、下記一般式(1)で表される分子骨格を1分子中に複数個有する化合物である場合には、特に工業的に有用である。
【0034】
【化1】

式(1)中、Xは加水分解性を有する官能基または配位子である。
【0035】
なお、上記一般式(1)で表される分子骨格を1分子中に複数個有する化合物には、加水分解性基(X)が同じ珪素原子を介して複数個結合した分子骨格を有するものも含まれる。
【0036】
上記加水分解性基(X)は、珪素原子と加水分解性基(X)との結合が加水分解反応により切断されうる官能基である。上記加水分解性基(X)としては特に限定されず、公知の官能基を用いることができ、例えば、アルコキシ基、オキシム基、アルケニルオキシ基、アセトキシ基;塩素、臭素等のハロゲン基等が挙げられる。なかでも、貯蔵安定性と汎用性の観点から、アルコキシ基が好適である。上記アルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。ジアルコキシシリル基またはトリアルコキシシリル基の場合には、同じアルコキシ基を用いてもよいし、異なるアルコキシ基を組み合わせて用いてもよい。ポリマー(A)の加水分解性基(X)はすべて同じ種類であってもよいし、すべて種類が異なっていてもよい。
【0037】
上記一般式(1)で表される化合物としては特に限定されないが、例えば下記一般式(1−1)で表される珪素原子に加水分解性基(X)が2〜4個結合した分子骨格を有する化合物(A1)、下記の一般式(1−2)で表される分子骨格を1分子中に少なくとも1個以上有する化合物(A2)、あるいは下記の一般式(1−2)表される分子骨格を1分子中に少なくとも1個以上有し、かつ下記の一般式(1−3)、下記の一般式(1−4)、下記の一般式(1−5)、下記の一般式(1−6)、下記の一般式(1−7)及び下記の一般式(1−8)からなる群から選択された少なくとも1種の分子骨格を有する化合物(A3)などが挙げられる。但し、下記の一般式(1−2)においてmが1である場合、化合物(A2)は、一般式(1−2)で表される分子骨格を1分子中に少なくとも2個以上有する。
【0038】
【化2】

【0039】
【化3】

【0040】
【化4】

【0041】
【化5】

【0042】
【化6】

【0043】
【化7】

【0044】
【化8】

【0045】
【化9】

なお、式(1−1)において、mは、2、3または4の整数を表し、Rは炭化水素基を表し、Xは加水分解性を有する官能基を表す。
【0046】
式(1−2)において、mは1、2または3の整数を表し、Rは炭化水素基を表し、Xは加水分解性を有する官能基を表す。
【0047】
上記一般式(1−1)または一般式(1−2)において、Rで表される炭化水素基(以下、炭化水素基Rともいう)としては、特に限定されず、例えば、脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。これらの炭化水素基の少なくとも一部をアミノ基、水酸基、エーテル基、エポキシ基、重合性不飽和基、ウレタン結合、ウレア基、イミド基、エステル結合、カーボネート結合、イソシアネート基、オキセタニル基、イミノ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン基;シロキサン結合等の反応を阻害しない官能基または結合に置換させてもよい。また、これらの官能基または結合は炭化水素基Rに複数種類置換させてもよい。
【0048】
式中、R’は水素原子、脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基を表す。なお、これらの炭化水素基はアミノ基、水酸基、エーテル基、エポキシ基、重合性不飽和基、ウレタン結合、ウレア基、イミド基、エステル結合等の架橋反応を阻害しない官能基または結合を有していてもよい。
【0049】
上記化合物(A2)としては、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、ブチレングリコール等のアルキレングリコールをモノマーユニットとするポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリオレフィン等のポリマーやこれらのポリマーの共重合体であって、一般式(1−2)で表される分子骨格を有する重合体等が挙げられる。なお、これらのポリマーはオリゴマーであってもよい。
【0050】
上記化合物(A2)に含有される一般式(1−2)で表される分子骨格としては、例えば、ジメトキシメチルシリル基、シクロヘキシルジメトキシシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジメトキシオクチルシリル基、ジエトキシビニルシリル基、クロロメチル(ジイソプロポキシ)シリル基、ジメトキシフェニルシリル基、ジエトキシフェニルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシプロピルシリル基、イソブチルジメトキシシリル基、オクチルジメトキシシリル基、オクタデシルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、イソブチルジエトキシシリル基、オクチルジエトキシシリル基、ビニルジメトキシシリル基、ビニルジエトキシシリル基、アリルジエトキシシリル基、(3−クロロプロピル)ジメトキシシリル基、クロロメチルジエトキシシリル基、ビス(2−メトキシエトキシ)ビニルシリル基、3−グリシドキシプロピルジメトキシシリル基、ジエトキシ(3−グリシドキシプロピル)シリル基、ジメトキシ[2−(7−オキサビシクロ[4,1,0]−ヘプト−3−イル)エチル]シリル基、クロロジメトキシシリル基、クロロジエトキシシリル基、クロロビス(1,3−ジメチルブトキシ)−シリル基、クロロジエトキシシリル基、3−(トリエトキシシリル)−プロピオニトリル基、4−(トリエトキシシリル)−ブチロニトリル基、3−(トリエトキシシリル)−プロピルイソシアネート基、3−(トリエトキシシリル)−プロピルチオイソシアネート基、フェニルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリプロポキシシリル基、トリブトキシシリル基、1,2−ビス(メチルジクロロシリル)、ジアセトキシジフェニルシリル基、メチルトリス(エチルメチルケトオキシム)シリル基、メチルトリス(N,N−ジエチルアミノキシ)シリル基、ビス(エチルメチルケトオキシム)メチルイソプロポキシシリル基、ビス(エチルメチルケトオキシム)エトキシメチルシリル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)トリメチルシリル基、トリス(1−メチルビニロキシ)ビニルシリル基、メチルトリイソプロペノキシシリル基、エチルトリアセトキシシリル基、メチルトリアセトキシシリル基、ジアセトキシジメチルシリル基、トリアセトキシビニルシリル基、テトラアセトキシシリル基、ジアセトキシメチルフェニルシリル基、ジメトキシエチ
ルメチルケトオキシムメチルシリル基等が挙げられる。
【0051】
上記化合物(A2)において、一般式(1−2)で表される分子骨格は、ポリマー末端に位置していてもよいし、ポリマーの側鎖に位置していてもよい。また、ポリマー末端と側鎖の両方に位置していてもよい。また、ポリマーの構造としては、直鎖状構造、星形・櫛形・デンドリマー等の多分岐構造、グラフト構造、環状構造、ラダー構造、カテナン構造またはこれらを組み合わせた構造であってもよい。ポリマーに含まれるセグメント構造としては、単一のモノマーユニットからなる構造、複数のモノマーユニットがランダム状に並んだ構造、交互に並んだ構造、ブロック状に並んだ構造等であってもよい。
【0052】
上記化合物(A2)は、更に、重合性不飽和基を有していてもよい。上記重合性不飽和基としては、スチリル基、(メタ)アクリル基等のアニオン重合性基;スチリル基、ビニロキシ基等のカチオン重合性基;ラジカル重合性不飽和基等が挙げられる。中でも、ラジカル重合性不飽和基がより好ましい。
【0053】
上記ラジカル重合性不飽和基とは、ラジカルの攻撃を受け生成したラジカルが、連鎖反応的に別の不飽和基に攻撃しラジカルが生成するような化学反応性を有する炭素−炭素二重結合以上の官能基を言う。かかるラジカル重合性不飽和基としては、メタクリロイル基またはアクリロイル基であることが更に好ましい。
【0054】
上記化合物(A2)は、上記一般式(1−2)で表される分子骨格及び/またはラジカ
ル重合性基を、複数個及び/または複数種組み合わせた化合物であってもよい。また、複
数の化合物(A2)を組み合わせて用いてもよい。かかる上記一般式(1−2)で表される分子骨格と上記ラジカル重合性基を併せ持つ化合物(A2)としては、例えば、N−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロペニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビンルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルジメチルイソペンテニルオキシシラン、ビニルジメチル−2−((2−ジエトキシ)エトキシ)シラン、ビニルトリス(1−メ
チルビニルオキシ)シラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、フェニルビニ
ルジエトキシシラン、ジフェニルビニルエトキシシラン、6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、オクタ−7−エニルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0055】
上記化合物(A3)としては、例えば、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、トリス(トリメトキシシリル)ベンゼン、トリス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリル)ビフェニル、ビス(トリエトキシシリル)ビフェニル、トリス(トリメトキシシリル)ビフェニル、トリス(トリエトキシシリル)ビフェニル、ビス(トリメトキシシリル)ナフタレン、ビス(トリエトキシシリル)ナフタレン、トリス(トリメトキシシリル)ナフタレン、トリス(トリエトキシシリル)ナフタレン、ビス(メチルジメトキシシリル)ベンゼン、ビス(メチルジエトキシ
シリル)ベンゼン、トリス(メチルジメトキシシリル)ベンゼン、トリス(メチルジエトキシシリル)ベンゼン、ビス(メチルジメトキシシリル)ビフェニル、ビス(メチルジエトキシシリル)ビフェニル、トリス(メチルジメトキシシリル)ビフェニル、トリス(メチルジエトキシシリル)ビフェニル、ビス(メチルジメトキシシリル)ナフタレン、ビス(メチルジエトキシシリル)ナフタレン、トリス(メチルジメトキシシリル)ナフタレン、トリス(メチルジエトキシシリル)ナフタレン、トリス(ジメチルメトキシシリル)ベンゼン、トリス(ジメチルメトキシシリル)ビフェニル、トリス(ジメチルメトキシシリル)ナフタレン、ビス(トリメトキシシリルエチニル)ベンゼン、ビス(メチルジエトキシシリルエチニル)ベンゼン、トリス(トリメトキシシリルエチニル)ベンゼン、トリス(メチルジメトキシシリルエチニル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ベンゼン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)ベンゼン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)ベンゼン、トリス(メチルジメトキシシリルプロピル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(メチルジメトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(メチルジメトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(メチルジメトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、ビス(メチルジメトキシシリル)ペンタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、ビス(メチルジメトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリメトキシシリル)オクタン、ビス(メチルジメトキシシリル)オクタン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ヘキサメトキシジシラン、メチルジメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、メチルジエトキシジシラン、ジメトキシテトラメチルジシロキサン、トリメトキシトリメチルジシロキサン、テトラメトキシジメチルジシロキサン、ペンタメトキシメチルジシロキサン、ヘキサメトキシジシロキサン、ジメトキシヘキサメチルトリシロキサン、トリメトキシペンタメチルトリシロキサン、テトラメトキシテトラメチルトリシロキサン、ペンタメトキシトリメチルトリシロキサン、ヘキサメトキシジメチルトリシロキサン、ヘプタメトキシメチルトリシロキサン、オクタメトキシトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメトキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメトキシシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラエトキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタエトキシシクロテトラシロキサン、オキタキス(トリメトキシシリルエチニル)−T8−シルセスキオキサン、オキタキス(メチルジメトキシシリルエチニル)−T8−シルセスキオキサン、オキタキス(ジメチルメトキシシリルエチニル)−T8−シルセスキオキサン等の低分子化合物、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリシラザン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド等のポリマーやオリゴマー及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0056】
上記一般式(1)で表される化合物のうち市販されているものとしては、例えば、鐘淵化学工業社製の商品名MSポリマーとしてMSポリマーS−203、S−303、エピオン Sタイプ等、サイリルポリマーとしてサイリルSAT−200、MA−903、MA−447等、旭硝子社製のエクセスターESS−2410、ESS−2420、ESS−3630、チッソ社製のアセトキシ末端ポリジメチルシロキサン(PS363.5)、ジメチルアミノ末端ポリジメチルシロキサン(PS383)、エトキシ末端ポリジメチルシロキサン(PS393)、ステアリロキシ末端ポリジメチルシロキサン(PS053.5)、トリエトキシシリル変性ポリ(1,2−ブタジエン)(PS078.5)、(N−トリメトキシシリルプロピル)ポリアザミド(PS075)、(N−トリメトキシシリルプロピル)ポリエチレンイミン(PS076)、(N−トリメトキシシリルプロピル)−O−ポリエチレンオキサイドウレタン(PS077)等が挙げられる。
【0057】
(第1の発明に係る製造方法)
第1の発明に係る架橋ポリマーの製造方法では、上記加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)を、活性酸素を発生させる物質(B)の存在下で硬化させる。
【0058】
活性酸素を発生させる物質(B)とは、前述した活性酸素を発生し得る物質である限り、特に限定されるものではない。
【0059】
上記活性酸素を発生させる物質としては、(NH4228やK228のような過硫
酸化合物、過酸化水素のような過酸化物、HOCl、CaOCl2などのハロゲン酸化合
物あるいは過ハロゲン酸化合物などが挙げられる。これらの化合物は、水の存在下で原子状の酸素を放出する。
【0060】
上記活性酸素を発生させる物質(B)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、上記過硫酸化合物の中では、(NH4228が水に対する溶解度がK228よりも高いため、少量の水でかつ短時間に原子状酸素を高率よく放出し、
硬化反応を早期に完了させることができ望ましい。
【0061】
さらに、第1の発明では、(C)R−SH化合物(但し、Rはアルキル基、アリール基、置換アルキル基、置換アリール基から選ばれる。)を存在させると、S原子が酸化−還元を繰り返し、Hラジカルを引き抜き、水と反応し、H3+を形成し、それによって加水分解性金属化合物同士のアルキル金属加水分解縮合をもたらし、架橋と金属−酸素結合が進行する。
【0062】
従って、例えば、加水分解性シリル基を有するポリマーの中でも通常の湿気硬化反応を期待し難いイソブチレンポリマーなどを主鎖とする疎水性が高いポリマーであっても速やかに架橋ポリマーとすることができる。
【0063】
本発明においては、上記活性酸素を発生させる物質(B)は、ポリマー(A)1モルに対し、1/10モル以下の割合で用いられることが好ましい。すなわち、ポリマー(A)1モルに対し、1/10モル以下の少ない量の物質(B)を用いることにより、本発明に従ってポリマー(A)の硬化物を得ることができる。
【0064】
本発明においては、上記活性酸素を発生させる物質(B)から生じた活性酸素により、上記硬化が行われるものであり、従って、活性酸素を発生させる物質(B)はさほど多く用いずともよい。
【0065】
特に、ポリマー(A)は、Siを金属元素とする化合物である場合、上記活性酸素を発生させる物質(B)の割合を少なくすることにより、硬化物の柔軟性を高めることができる。
【0066】
第1の発明に係る架橋ポリマーの製造方法は、上記ポリマー(A)を、上記活性酸素を発生させる物質(B)の存在下で硬化させればよい。例えば、ポリマー(A)に、上記活性酸素を発生させる物質(B)を接触させればよく、その方法は特に限定されない。
【0067】
(第2の発明)
第2の発明に係るポリマー(A)の硬化物の製造方法では、上記ポリマー(A)が活性酸素の存在下で硬化される。好ましくは、オゾンまたは酸素にエネルギー線を照射すること等により、活性酸素を発生させ、それによってポリマー(A)を、活性酸素の作用により、第1の発明の場合と同様に硬化させることができる。
【0068】
オゾンまたは酸素を用いる場合、オゾンまたは酸素は、上記ポリマー(A)1モルに対し、1/10モル以下の割合で用いればよい。また、上記エネルギー線としては、上記活性酸素を発生し得る適宜のエネルギー線を用いることができる。このようなエネルギー線としては、紫外線などを挙げることができる。
【0069】
(好ましい硬化促進化合物)
本発明において、上記加水分解性金属官能基が、Siのアルコキシドである場合、硬化促進剤としてβ−ジケトン、例えばアセチルアセトンが好ましく用いられる。アセチルアセトンを用いることにより、Siのアルコキシドの本発明に従った硬化反応を速やかに促進することができる。上記β−ジケトンの使用量は、加水分解性ケイ素官能基の1モル当量に対し、0.001〜0.1の範囲であることがより好ましい。0.001未満では、硬化促進効果が充分でないことがあり、0.1を超えると反応の制御が難しくなることがある。
【0070】
(ポリマー(A)の硬化物)
上記製造方法により、本発明の加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)の硬化物が得られる。この硬化物は、用いられるポリマー(A)によっても異なるが、柔軟性を有する硬化物や、硬度の高い硬化物、あるいは耐湿性に優れた硬化物などをポリマー(A)の種類に応じて本発明の製造方法に従って容易に得ることができる。
【0071】
従って、本発明の製造方法によれば、様々な物性のポリマー(A)の硬化物を容易にかつ安価に得ることができる。
【0072】
本発明に係る加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)の硬化物は、ポリマー(A)の選択、並びに後述する他の成分の添加等により、様々な物性を有するように構成され得る。従って、本発明によって得られる加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)は、半導体用絶縁皮膜などの電子技術分野における層間絶縁膜、あるいは導電膜などを形成する用途、接着剤、コーティング材、グリース、粘着剤、シーリング材、離型剤などの幅広い分野において用いられ得る。
【0073】
(活性酸素をUV分解反応により得る方法)
本発明に係る加水分解性金属官能基を有するポリマーの架橋ポリマーの製造方法では、上記ポリマー(A)を上記活性酸素を発生させる物質(B)または酸素の存在下で硬化させるに際し、必要に応じて、硬化を促進する硬化促進化合物(C)を添加してもよい。
【0074】
このような硬化促進化合物(C)は、用いられる加水分解性金属化合物の種類により適宜選択され得る。このような硬化促進化合物(C)として、光の照射により、ポリマー(A)を活性酸素の存在下で、反応、重合また架橋促進させる性質を有する硬化促進化合物(C)が挙げられる。
【0075】
本願発明者等は、ある特定の硬化促進化合物(C)を用いれば、ポリマー(A)の重合または架橋反応が促進されることを見出した。
【0076】
上記硬化促進化合物(C)としては、例えば下記の一般式(2)で表される分子骨格を有する化合物(C1)が挙げられる。
【0077】
【化10】

式(2)において、nは2、3、4または5の整数を表し、kはn以下の整数を表し、Yは酸素、硫黄もしくは炭素原子を表し、Zは水素基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン基、アルコキシル基、アルキルチオ基、カルボニルオキシ基、または、オキソ基を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0078】
但し、Yが炭素のときはZのうち少なくとも1つは芳香環または不飽和結合を有する基である。Yが炭素である場合には、金属原子がSiである加水分解性金属官能基に対しては充分な反応性が期待できない場合がある。しかし、Zが芳香環または不飽和結合を有する基であれば芳香環または不飽和結合上のπ電子により一般式(2)で表される分子骨格が活性化されて、金属原子がSiである加水分解性金属官能基に対しても充分な反応性を発揮することができる。
【0079】
上記硬化促進化合物(C1)としては、中でも、下記一般式(2−1)で表される分子骨格を有する化合物(C1a)であることが好ましい。
【0080】
【化11】

式(2−1)において、nは2、3、4または5の整数を表し、Yは酸素、硫黄もしくは炭素原子を表し、Zは水素基、炭化水素基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン基、アルコキシル基、アルキルチオ基、カルボニルオキシ基、または、オキソ基を表す。
【0081】
上記一般式(2−1)で表される分子骨格は、酸素もしくは硫黄原子Yに対し、カルボニル基が2個結合した化合物であって、原子Yの置換基として原子Yの価数に応じ適宜、水素基、炭化水素基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン基、アルコキシル基、アルキルチオ基、カルボニルオキシ基、または、オキソ基であるZを有する。
【0082】
上記Zとしての炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。なお、これらの炭化水素基はアミノ基、水酸基、エーテル基、エポキシ基、重合性不飽和基、ウレタン結合、ウレア基、イミド基、エステル結合等の架橋反応を阻害しない官能基または結合を有していてもよい。
【0083】
上記一般式(2−1)で表される分子骨格としては、例えば、下記の一般式(2−2A)、下記の一般式(2−2B)、下記の一般式(2−2C)、下記の一般式(2−2D)で表される官能基が挙げられる。
【0084】
【化12】

【0085】
【化13】

【0086】
【化14】

【0087】
【化15】

また、環状構造を有する硬化促進化合物(C2)としては、例えば下記の一般式(2
−3)で表される環状化合物や、下記の一般式(2−3)のような同じ環状鎖の中に複数個の同種または異種の上記一般式(2)で表される分子骨格を有する化合物などが挙げられる。さらに、複数個の同種または異種のこれら環状化合物を、適当な有機基で結合してなる化合物や、複数個の同種または異種のこれら環状化合物をユニットとして少なくとも1個以上含む双環化合物等も挙げられる。
【0088】
【化16】

式中、nは2、3、4または5の整数を表し、Yは酸素、硫黄もしくは炭素原子を表し、Zは水素基、炭化水素基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン基、アルコキシル基、アルキルチオ基、カルボニルオキシ基、または、オキソ基を表し、Aは有機基を表す。
【0089】
上記化合物(C2)としては、Yが酸素の場合にあっては、例えば、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、ブチル酸無水物、イソブチル酸無水物、バレリック酸無水物、2−メチルブチル酸無水物、トリメチル酢酸無水物、ヘキサン酸無水物、ヘプタン酸無水物、デカン酸無水物、ラウリル酸無水物、ミリスチリル酸無水物、パルミチン酸無水物、ステアリル酸無水物、ドコサン酸無水物、クロトン酸無水物、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、オレイン酸無水物、リノレイン酸無水物、クロロ酢酸無水物、ヨード酢酸無水物、ジクロロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、クロロジフルオロ酢酸無水物、トリクロロ酢酸無水物、ペンタフルオロプロピオン酸無水物、ヘプタフルオロブチル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、2,2−ジメチルコハク酸無水物、イソブチルコハク酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、ヘキサヒドロ−4−メチルフタル酸無水物、イタコン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、2−メチルマレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、グルタル酸無水物、1−ナフチル酢酸無水物、安息香酸無水物、フェニルコハク酸無水物、フェニルマレイン酸無水物、2,3−ジフェニルマレイン酸無水物、フタル酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物、4,4'−(ヘキサフルオロプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,
4,5−ベンゼンテトラカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸無水物等;マレイン酸無水物とラジカル重合性二重結合を持つ化合物の共重合体;マレイン酸無水物と(メタ)アクリレートの共重合体;マレイン酸無水物とスチレンの共重合体;マレイン酸無水物とビニルエーテルの共重合体等が挙げられる。
【0090】
上記化合物(C2)のうち市販されているものとしては、例えば、旭電化社製のアデカハードナーEH−700、アデカハードナーEH−703、アデカハードナーEH−705A;新日本理化社製のリカシッドTH、リカシッドHT−1、リカシッドHH、リカシッドMH−700、リカシッドMH−700H、リカシッドMH、リカシッドSH、リカレジンTMEG;日立化成社製のHN−5000、HN−2000;油化シェルエポキシ社製のエピキュア134A、エピキュアYH306、エピキュアYH307、エピキュアYH308H;住友化学社製のスミキュアーMS等が挙げられる。
【0091】
上記化合物(C2)としては、Yが硫黄の場合にあっては、例えば、ジアセチルスルフィド、チオ酢酸無水物、チオプロピオン酸無水物、チオブチル酸無水物、チオイソブチル酸無水物、チオバレリック酸無水物、チオトリメチル酢酸無水物、チオヘキサン酸無水物、チオヘプタン酸無水物、チオデカン酸無水物、チオラウリル酸無水物、チオミリスチル
酸無水物、チオパルミチン酸無水物、チオステアリル酸無水物、チオドコサン酸無水物、チオクロトン酸無水物、チオアクリル酸無水物、チオメタクリル酸無水物、チオオレイン酸無水物、チオリノレイン酸無水物、チオクロロ酢酸無水物、チオヨード酢酸無水物、チオジクロロ酢酸無水物、チオトリフルオロ酢酸無水物、チオクロロジフルオロ酢酸無水物、チオトリクロロ酢酸無水物、チオペンタフルオロプロピオン酸無水物、チオペンタフルオロブチル酸無水物、チオコハク酸無水物、チオメチルコハク酸無水物、チオイソブチルコハク酸無水物、チオイタコン酸無水物、チオマレイン酸無水物、チオグルタル酸無水物、チオフェニルコハク酸無水物、チオフェニルマレイン酸無水物、チオフタル酸無水物、チオ安息香酸無水物、チオジグリコール酸無水物、チオ乳酸無水物等が挙げられる。
【0092】
上記化合物(C2)としては、Yが炭素の場合にあっては、例えば、2,4−ペンタンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、3−クロロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1−ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン等のジケトン類;ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルマロネート、テトラエチル−1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸等のポリカルボン酸エステル類;メチルアセチルアセトネート、エチルアセチルアセトネート、メチルプロピオニルアセテート等のα−カルボニル−酢酸エステル類;3−フェニル−2,4−ペンタンジオン、3−ベンジル−2,4−ペンタンジオン、ジエチルベンジルマロネート、ジエチルアリルマロネート、ジエチルジアリルマロネート、ジエチルエチリデンマロネート、トリアセチルメタン、トリエチルメタントリカルボキシレート等が挙げられる。
【0093】
なかでも、上記化合物(C2)としては、カルボン酸無水物が光によって効果的に活性酸素を発生させてポリマー(A)の重合または架橋反応が速やかに起こすことができることから特に優れている。
【0094】
上記化合物(C)のポリマー(A)100重量部に対する配合量は0.01〜30重量部であることが好ましい。0.01重量部未満であると、ポリマー(A)に対する反応性が低くなることがあり、30重量部を超えると、得られる硬化物に酸化物による着色が見られることがある。
【0095】
以下、本発明の具体的な実施例を挙げることにより、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0096】
(実施例1)
下記構造式K1で示される末端シラン変性ポリプロピルエーテル樹脂(鐘淵化学社製、MSポリマー 品番:S−303)8.8gと、無水マレイン酸0.5gとを乾燥容器中において20mlのサンプル瓶に仕込み、50度の温度で融解混合し、続いて窒素置換を行った。窒素置換後、サンプル瓶を開放した状態で、高圧水銀灯(東芝社製、品番:H400−F、照射される光の中心波長は316nm)を用いて紫外線を9分照射した。そのまま一昼夜放置したところ、高い粘性のゲル体を得ることができた。上記ゲル体を150mlのテトラヒドロフラン(THF)中に移し、膨潤溶解液を得た。この膨潤溶解液を、1日後に金網で濾別し、乾燥し、8.2gの透明な、柔軟性を有する弾性体を得た。ゲル収率は82%であった。
【0097】
【化17】

なお、構造(K1)において、PPEはポリプロピルエーテルを示す。
【0098】
(比較例1)
実施例1で用いた末端シラン変性ポリプロピルエーテル樹脂25gに、硬化触媒としてジブチル錫ジアセテート1.5gと、水2g、テトラヒドロフラン7mlとを添加し、厚さ500μmのシートが得られるシート作製容器に流し込み、放置した。7日後に、透明硝子状のゲル固体膜が得られた。このゲル固体膜をシート作製容器から取出そうとしたところ、脆く、崩れ、不定形の塊状粒となった。ゲル収率は85重量%であった。
【0099】
(比較例2)
実施例1で窒素置換後に、直ちにサンプル瓶を密閉し、実施例1と同様にして紫外線を照射し、放置した。放置後7日〜30日経過後も、流動性の液体のままであり、変化は見られなかった。
【0100】
(実施例2)
比較例2で放置されたサンプル瓶を開封し、空気にさらし、室温で放置した。1日半後にゲル化が認められ、2日目には、完全に固体化した。この固体を150mlのTHFに移し、金網を用いて濾別乾燥し、7.6gのゲル体を得た。ゲル収率は86%であった。
【0101】
上記サンプル瓶を開封後に生成した反応ガスをガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果、反応ガス中において、CO2と、CH=CHと、C=Oと、C4〜C6の炭化
水素基が存在することが確認された。
【0102】
(実施例3)
実施例1において、サンプル瓶中に、下記の構造式(K2)で示されるジケトン類としてのジベンゾイルメタン0.6g(0.0002モル)をさらに添加したこと、並びに紫外線照射後に、テトラヒドロフラン中にゲル体を添加して得られた油溶解液を400μmの厚みのシートを作製するシート作製容器に流し込み、成膜したことを除いては、実施例1と同様とした。その結果、2時間後に固化し、透明な弾性シートを得ることができた。なお、この弾性シートを1cm角に切り出して得られた試験片に基づいて、ゲル収率を測定したところ、86%であった。
【0103】
【化18】

【0104】
(実施例4)
実施例1においてサンプル瓶中に、下記の構造式(K3)で示されるジケトン類としてのベンゾイルアセトン0.4g(0.0002モル)をさらに添加したこと、並びに紫外線照射後に、テトラヒドロフラン中にゲル体を添加して得られた油溶解液を400μmの厚みのシートを作製するシート作製容器に流し込み、成膜したことを除いては、実施例1と同様とした。その結果、30分後に固化し、透明な弾性シートを得ることができた。なお、この弾性シートを1cm角に切り出して得られた試験片に基づいて、ゲル収率を測定したところ、89%であった。
【0105】
【化19】

【0106】
(実施例5)
下記の構造式(K4)で示される加水分解性ケイ素官能基を有し主鎖がイソブチレンからなるポリマー(鐘淵化学社製、品名:EPION Sタイプ)25gと、ラウリルメルカプタン0.18gと、過酸化水素0.26gを25%水溶液に調整した溶液とをサンプル瓶に仕込み混合した。
【0107】
以下、硫化水素をより発生した発生期の酸素により、主鎖がイソブチレンからなるポリマーが架橋し硬化した。このようにして得られた架橋ポリマーでは、粘着性は認められなかった。なお、構造式中のPIBは、ポリイソブチレンを示す。
【0108】
【化20】

【0109】
(参考例)
ラウリルメルカプタン0.18g及び過酸化水素0.26gに代えて、紫外線架橋硬化触媒としてダイセル社製、商品名:DIA−CAT0.36gを用い、実施例1と同様にしてサンプル瓶に仕込み、同様にして紫外線を9分間照射した。40日放置したところ、高い粘性のゲル体を得ることができた。ゲル収率は、11.5%であった。
【0110】
(参考例)
ダイセル社製、商品名:DIA−CATに代えて、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製、商品名:ナイパーBMT‐M)0.3gを用い、紫外線照射時間を11分とし、さらに紫外線照射後110度の温度に3時間維持したことを除いては、参考例と同様とした。31日放置したところ、ゲル体を得ることができた。ゲル収率は2.8%であった。
【0111】
(比較例3)
実施例5で用いた鐘淵化学社製、品名:EPION Sタイプ20gと、ジブチル錫アセテート0.23gと、25%過酸化水素水とをサンプル瓶に仕込み混合し、そのまま開放した。20日後に、ゲル体が得られた。ゲル収率は、79%であった。このようにして得られたゲル体は透明であり、脆かった。
【0112】
(実施例6)
実施例5において、鐘淵化学社製、品名:EPION Sタイプの配合量を30gとして、ラウリルメルカプタンの配合量を0.16gとし、25%過酸化水素水に含まれる過酸化水素の配合量を0.2gとしたこと、さらに(NH4228を0.41gを配合したことを除いては、実施例5と同様とした。結果、1日後に弾力性を有するゲル体を得ることができた。ゲル収率は、74%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属原子に加水分解性の官能基が結合されている加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)を、活性酸素を発生させる物質(B)の存在下で硬化させることを特徴とする、加水分解性官能基を有するポリマーの架橋ポリマーの製造方法。
【請求項2】
金属原子に加水分解性の官能基が結合されている加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)を活性酸素の存在下で硬化させることを特徴とする、加水分解性官能基を有するポリマーの架橋ポリマーの製造方法。
【請求項3】
β−ジケトン及び/または無水マレイン酸にエネルギー線を照射し、活性酸素を発生させる、請求項2に記載の加水分解性官能基を有するポリマーの架橋ポリマーの製造方法。
【請求項4】
前記加水分解性金属官能基を有するポリマー(A)が加水分解性ケイ素基を有するポリマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加水分解性官能基を有するポリマーの架橋ポリマーの製造方法。
【請求項5】
硬化に際してβ−ジケトンを硬化促進剤として添加することを特徴とする、請求項4に記載の加水分解性官能基を有するポリマーの架橋ポリマーの製造方法。
【請求項6】
硬化に際してチオールをポリマーの硬化促進剤として添加することを特徴とする、請求項4または5に記載の加水分解性官能基を有するポリマーの架橋ポリマーの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法により得られたことを特徴とする、加水分解性官能基を有するポリマーの架橋ポリマー。


【公開番号】特開2006−36888(P2006−36888A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217753(P2004−217753)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】