説明

加温便座及び便器

【課題】この発明は、電力浪費のない加温便座及びこれを設置した便器を得ることを目的としたものである。
【解決手段】この発明は、便座の上部内側に、カーボンを通電層とした電熱シートを設置すると共に、前記電熱シートの回路にセンサーによる自動開閉スイッチを介装したことを特徴とする加温便座により、目的を達成することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、便器使用時に、予め便座を加温し、便器の使用心地を良くすることを目的とした加温便座及び便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来便座を加温することについては考慮されているが、冬季などに電熱スイッチを入れたままにしたり、便座に腰かけた時にスイッチが入るようにする方式などが知られている。
【0003】
また便座の上に装着する便座暖房装置、或いは温度過昇防止装置を備えた発熱体を便座の裏面に設置する提案もある。
【特許文献1】特開平11−89752
【特許文献2】特開2007−252942
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の発明中、上置型の便座暖房装置にあっては、本来の便座の上へセットする為に、余分の労力、時間を要するのみならず、発熱線を熱源とする為に、発熱部が面とならず、発熱量を制御する温度制御器を必須条件とし、かつ常時接続を保つ為の電力浪費は免れないなどの問題点がある(引用文献1)。
【0005】
また他の発明としては、非使用時の省エネルギーができるようにすると共に、温度が上りすぎることがないように、サーモスタットをつけるなどの提案があるが、省エネルギーであっても、常時通電していると共に、サーモスタットなどの器具を必須要件とする問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、電熱シート又は定温電熱シートを用いると共に、センサースイッチを設け、使用者が便所内に入室して居る時のみ通電するようにして、前記従来の問題点を解決したのである。
【0007】
即ちこの発明は、便座の上部内側に、カーボンを通電層とした電熱シートを設置すると共に、前記電熱シートの回路にセンサーによる自動開閉スイッチを介装したことを特徴とする加温便座であり、便座の上部内側の身体の当接する面の対応面に、カーボンを通電層とした定温電熱シートを設置すると共に、前記定温電熱シートの回路にセンサーによる自動開閉スイッチを介装したことを特徴とする加温便座である。
【0008】
また、電熱シートは、耐熱性の合成樹脂フィルムにカーボン粒子層又はカーボン織布層による電熱層を設けると共に、前記電熱層に電極を設置し、その上部に耐熱性の合成樹脂フィルムを被着したものであり、センサーは便所に入った人を感知し得るように、便器又は便器の近辺に設置したものである。
【0009】
更に、便所内に、人の入室を検知して、電熱シートの回路のスイッチをON−OFFするセンサーを設置すると共に、請求項1又は2記載の便座を設置したことを特徴とする便器である。
【0010】
本願発明においては、電熱シートを使用するので、便座に身体が接触する面の対応面のほぼ全面積に電熱シートを貼着すると共に、カーボン層を発熱層としたので、通電と同時に発熱し、着座直前の通電であっても、冷たさを感じない程度に加温することができる(通電後1秒〜3秒で昇温する)。
【0011】
身体の当接する面とは、例えば図1(a)の電熱シート3の設置部のような面をいう。即ち便座の前部、後部は身体が当接しないので、設置してない。当然のこと乍ら、電熱シート3の設置部の位置的精度をいうものでなく、ほぼの設置位置をいうものである。
【0012】
また便器使用後、便所を出ると自動的にスイッチOFFとなるので、電力浪費を未然に防止することができる。
【0013】
前記電熱シートは、必要とする加温の温度を自由に制御できる。例えば20℃〜200℃の如何なる上限温度にも対応できる。従って、便座の加温についても、例えば30℃〜50℃の好ましい温度を上限にして加温できるので、過熱のおそれはない。
【0014】
また便器使用者が便所に入室すれば、センサーによって、電熱シートの回路をONにするので、入室後便座に腰掛ける迄に要する時間が3秒〜5秒かかるとすれば、腰掛けるまでに便座を所定の温度(例えば36℃)に加温することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、便器を使用する直前にスイッチを入れるので電力の浪費がなく、便座の上面裏側へカーボンを通電層とする電熱シートを設置したので、発熱と同時に便座の電熱シートの設置部を全面加温できると共に、遠赤外線を放射して、身体当接面部のみならず、身体内部まで加温する効果がある。従って加温が短時間に確実に行われる。また定温電熱シートを使用すると、不慮の事故により便座に過熱を生じるおそれはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明は、耐熱性合成樹脂フィルムに、カーボン織布を重ね、該カーボン織布上に電極を設置し、前記カーボン織布の全面に耐熱性合成樹脂フィルムを被覆して一体的に接着すると共に、前記電極に電線を夫々接続して、この発明の電熱シートを構成した。
【0017】
前記電熱シートは適宜の大きさ(例えば便座の上面裏側へ身体の接触する面積と同等の対応面積)にして設置し、電熱シートの回路に、手動スイッチとセンサーによる自動スイッチを介装し、便器の近辺(人の入室を検知できる範囲)に前記センサーを設置すれば、この発明の便器ができる。
【実施例1】
【0018】
この発明の実施例を図1、2に基づいて説明すれば、器体1の便座2の上面2aの裏側2bへ、電熱シート3を設置する。前記電熱シート3の回路4には、常時閉としてある手動スイッチ5と、センサー6によりONとなるセンサースイッチ7とを介装してある。前記センサー6は便器1の上部一側に設置されている。前記センサー6は、使用者が便所へ入室した場合に必ず検知できるような位置に設置する。
【0019】
前記実施例において、使用者が入室すると、センサー6が入室を検出して、センサースイッチ7をONにするので、電熱シート3に通電し、これを所定の温度(例えば40℃)に加温する。従って、便座2は35℃〜37℃に加温される。
【0020】
前記電熱シート3は、便座2の上面の裏側に設置するので、外観上はもとより、他物と接触したり、便座2の使用により損傷するおそれはない。前記電熱シート3は、耐熱性合成樹脂フィルム8(例えばテフロン(登録商標))の上面に、カーボン織布9を層着し、カーボン織布9の上面に+−の電極10、11(例えばアルミ箔製、銅箔製)を載せ、その上全面を耐熱性合成樹脂フィルム8で被着し、上下の耐熱性合成樹脂フィルム8、8の周縁を接着して作る。前記電極10、11はその一端+−の電線12、13へ接着固定する(例えば周回し、半田固定)。前記電線12、13のコード14にプラグ16を接続してあるので、容易に電源と接続することができる。前記において、電熱シート3の定温は、例えば電流を一定にした際に、上限温度が一定になるようにしてある。図中18は半田である。
【0021】
前記実施例においては、カーボン層としてカーボン織布を用いたが、カーボン織布に代えて、カーボン粒子を塗布し、カーボン層とすることができる。この場合には、カーボン粒子と、通電性接着剤とを使用することにより、耐熱性合成樹脂フィルム上へ一定の厚さ(例えばカーボン粒子一列分)に塗布することができる。
【実施例2】
【0022】
この発明の実施例を図1に基づいて説明すれば、器体1の便座2の上面2aの裏側2bへ電熱シート3を設置すると共に、電熱シート3の回路を作り、器体1の一側へセンサー6を設置すればこの発明の便器15ができる。図中17は断熱材である。
【0023】
前記便器15を便所へ設置して、手動スイッチ5をONにした後、便所へ使用者が入室すれば、前記センサー6が働いてセンサースイッチ7をONにするので、電熱シート3に通電し、これを加熱し、これにより便座2を適温に加温することができる。前記電熱シート3の発熱層は、カーボンとしたので、加熱により遠赤外線を放射し、身体を内部まで加温する。
【0024】
前記電熱シート3は通電後1秒〜3秒で昇温するので、2秒〜5秒で便座を加温することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)この発明の便器の実施例の平面図、(b)同じく便座の一部の断面拡大図。
【図2】(a)同じく電熱シートの実施例の一部を省略し、一部を破切した平面図、(b)同じく一部断面拡大図、(c)同じく電極と電線の接続を示す一部平面拡大図、(d)同じく一部断面拡大図、(e)同じく電熱シートの回路図。
【符号の説明】
【0026】
1 器体
2 便座
3 電熱シート
4 回路
5 手動スイッチ
6 センサー
7 センサースイッチ
8 耐熱性合成樹脂フィルム
9 カーボン織布
10、11 電極
12、13 電線
14 コード
15 便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座の上部内側に、カーボンを通電層とした電熱シートを設置すると共に、前記電熱シートの回路にセンサーによる自動開閉スイッチを介装したことを特徴とする加温便座。
【請求項2】
便座の上部内側の身体の当接する面の対応面に、カーボンを通電層とした定温電熱シートを設置すると共に、前記定温電熱シートの回路にセンサーによる自動開閉スイッチを介装したことを特徴とする加温便座。
【請求項3】
電熱シートは、耐熱性の合成樹脂フィルムにカーボン粒子層又はカーボン織布層による電熱層を設けると共に、前記電熱層に電極を設置し、その上部に耐熱性の合成樹脂フィルムを被着したことを特徴とする請求項1記載の加温便座。
【請求項4】
センサーは便所に入った人を感知し得るように、便器又は便器の近辺に設置したことを特徴とする請求項1記載の加温便座。
【請求項5】
便所内に、人の入室を検知して、電熱シートの回路のスイッチをON−OFFするセンサーを設置すると共に、請求項1又は2記載の便座を設置したことを特徴とする便器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate