説明

加湿ガスの露点制御装置および露点制御方法

【課題】 加湿ガスの露点を連続的かつ迅速に制御することができる加湿ガスの露点制御装置および露点制御方法を提供する。
【解決手段】 本発明の加湿ガスの露点制御装置10は、加湿ガスを製造する蒸発部15の下流側に設けられ、加湿ガスの露点を制御する熱交換器40を備えた加湿ガスの露点制御装置であって、熱交換器40は、熱媒体である気体にミストを混入させる急速調整手段49を有している。また、本発明の加湿ガスの露点制御方法は、加湿ガスの露点制御装置10を用いた加湿ガスの露点制御方法であって、通過する加湿ガスの温度が上昇したことを検知して、熱媒体である気体にミストを混入させる。一時的に加湿ガスの温度が上昇したときに、気体にミストを混入させて瞬時に加湿ガスの温度を下げ、露点を連続的かつ迅速に制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、固体高分子型の燃料電池等に供給する加湿ガスの露点を高精度に制御する加湿ガスの露点制御装置および露点制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加湿ガスは、多くの分野で必要とされており、例えば、固体高分子型の燃料電池においては、必要不可欠な原料である。固体高分子型燃料電池のスタックは、一般的に、水素イオン伝導性の固体高分子を白金触媒を担持したカーボン電極で挟み込んで構成される発電素子、すなわち固体高分子電解質膜−電極接合体、および各電極面にそれぞれの反応ガスを供給するためのガス通路を形成するとともに、発電素子を両側から支持するガス分離部材を積層した構造を有している。そして、一方の電極に水素ガス(燃料ガス)を供給し、他方の電極に酸素あるいは空気すなわち酸化剤ガスを供給して、燃料ガスの酸化還元反応に用いられる化学エネルギーを、直接電気エネルギーとして取り出すようにしている。
【0003】
この燃料電池にあっては、アノード側で水素ガスがイオン化して固体高分子電解質膜中を移動し、電子は、外部負荷を通ってカソード側に移動し、酸素と反応して水を生成する一連の電気化学反応により電気エネルギーを取り出すことができる。この固体高分子電解質膜中を水素イオンが移動するため、固体高分子電解質膜が乾燥してしまうと、イオン伝導率が低下し、エネルギー変換効率が低下してしまうので、水分を供給する必要がある。
【0004】
このため、固体高分子型燃料電池には、反応ガスを加湿して供給しているが、反応ガスを高湿にすると、燃料電池の内部で結露が発生し、電極が短絡してしまうという問題がある。
【0005】
従来の固体高分子型燃料電池においては、例えば、特許文献1に示すように、燃料電池に加湿ガスを供給する流路にウォータージャケットを設け、このウォータージャケット内に、燃料電池から排出される冷却水を回している。加湿ガスがウォータージャケット内を通過することにより昇温され、または冷却を抑制されるので、結露の発生が防止されるとしている。
【特許文献1】特開2004−335313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、燃料電池の運転時に設定流量を変更すると、流量変更直後の加湿ガスの温度が一時的に不安定になり、設定温度に収束するまでに時間がかかるが、特許文献1の方式では、燃料電池の冷却水を用いて加湿ガスを昇温しているため、燃料電池の温度が安定するまでは、加湿ガスの温度を制御することができない。特に、加湿ガスの設定湿度が高い場合には、流路内の加湿ガスの温度は露点と等しくなるが、加湿ガスの温度が下がって結露が発生すると、加湿ガスの露点が下がってしまい、必要な水分量を供給することができなくなる。また、加湿ガスの温度が高い状態では、加湿ガスの露点が上昇して、必要以上の水分を供給してしまうことになる。また、小流量の加湿ガスと大流量の加湿ガスでは昇温特性が異なるため、同一の温度制御方法では露点調整の精度を維持できない場合があり、レンジアビリティ(ターンダウン比)に制約が生じてしまう。
【0007】
そこで本発明が解決しようとする課題は、加湿ガスの露点を設定範囲に対して高精度に制御することができる加湿ガスの露点制御装置および露点制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の加湿ガスの露点制御装置は、加湿ガスを製造する蒸発部の下流側に設けられ、加湿ガスの露点を制御する熱交換器を備えた加湿ガスの露点制御装置であって、前記熱交換器は、熱媒体である気体にミスト(液滴粒子または液体微粒子)を混入させる急速調整手段を有している。
【0009】
蒸発部からは、所定の温度、流量、湿度の加湿ガスが発生するが、設定変更があると、加湿ガスの露点が安定するまでに時間がかかり、一時的に露点が上昇することがある。また、熱媒体に気体のみを用いている場合、気体の熱容量は小さいため、気体の流量を増加させても、冷却可能な温度範囲には限界があり、加湿ガスの一時的な温度上昇を抑えることができない場合がある。
【0010】
ここで、急速調整手段によって気体にミストを混入すると、気体の温度が瞬時に下がり、加湿ガスの一時的な温度上昇を抑えた後、元の温度に回復する。すなわち、気体にミストを混入すると、ミストが気化して周囲の気体から気化熱を奪うので、気体の温度が瞬時に下がる。一方、ミストが気体となることにより、熱容量はあまり増加しないので、熱媒体の温度は加湿ガスの温度を下げた後、冷却能に応じて短時間で元に戻り、過冷却が防止される。
【0011】
熱交換器に、熱媒体である気体を加熱する加熱手段を設けると、熱媒体である気体を加熱して、加湿ガスを保温することができる。特に、加湿ガスの流量が非常に小さい場合、流路からの放熱によって、通過する加湿ガスの温度が設定温度より下降する場合があるが、加熱手段を用いて気体を加熱し、流路の放熱分の熱量を補填することにより、設定温度が保持される。
【0012】
また、加湿ガスの流量変更により一時的に温度が下降する場合には、温度の下降分に見合う熱量を加えるように加熱手段を作動させ、一時的な温度の下降を防止することができる。
【0013】
熱交換器に、熱媒体として液体または気体を供給可能な熱媒体切替手段を設けると、設定流量に応じて、熱媒体を切り替えることができる。加湿ガスの流量が大きいときは、流路内を通過する加湿ガスの速度が大きくなり、熱交換器近傍での滞留時間が短くなるので、熱媒体の熱容量が小さいと、冷却能力が足りなくなり、設定温度まで下げることができなくなる。そこで、熱媒体を気体から液体に切り替え、熱媒体の熱容量を大きくすることにより、加湿ガスを十分に冷却して設定温度に調整することができる。
【0014】
また、加湿ガスの流量が小さいときは、流路内を通過する加湿ガスの速度が小さくなり、熱交換器近傍での滞留時間が長くなるので、熱媒体の熱容量が大きいと、加湿ガスが必要以上に冷却され、温度が下がり過ぎてしまう。そこで、熱媒体を液体から気体に切り替え、熱媒体の熱容量を小さくすることにより、加湿ガスが過度に冷却されることを防止して、設定温度に調整することができる。
【0015】
本発明の加湿ガスの露点制御方法は、加湿ガスを製造する蒸発部の下流側に設けられ、熱媒体である気体にミストを混入させる急速調整手段を有して加湿ガスの温度を制御する熱交換器を備えた加湿ガスの露点制御装置を用いた加湿ガスの露点制御方法であって、通過する加湿ガスの温度が上昇することを予測し、または通過する加湿ガスの温度が上昇したことを検知して、熱媒体である気体にミストを混入させる。
【0016】
加湿ガスの温度は、温度センサ等を用いて計測することができる。加湿ガスの温度が設定温度より所定温度だけ上昇すると、急速調整手段が作動して、熱媒体である気体にミストを混入させる。ミストが、熱媒体である気体の温度を下げることにより、流路内を通過する加湿ガスの温度が下がる。なお、加湿ガスの温度上昇は、設定温度を上昇させたときに予測することが可能であり、この場合も熱媒体である気体にミストを混入させることにより加湿ガスの温度を下げることができる。
【0017】
熱交換器に、熱媒体である気体を加熱する加熱手段を設け、通過する加湿ガスの温度が下降することを予測し、または通過する加湿ガスの温度が下降したことを検知して、熱媒体である気体を加熱すると、加湿ガスの温度が設定温度より低くなることが防止される。加湿ガスの温度が設定温度より所定温度だけ下降すると、加熱手段が作動して、熱媒体である気体を加熱する。熱媒体である気体が加熱されることにより、流路内を通過する加湿ガスの温度が上昇する。なお、加湿ガスの温度の下降は、設定温度を下降させたときに予測することが可能であり、この場合も加熱手段を作動させて加湿ガスの温度を上昇させることができる。
【0018】
熱交換器に、熱媒体として液体または気体を供給可能な熱媒体切替手段を設け、通過する加湿ガスの設定流量が閾値を超えた場合に熱媒体を液体に切り替え、閾値以下の場合に熱媒体を気体に切り替えると、加湿ガスの流量に応じて熱媒体の熱容量を変更することができる。設定流量が大きくなったときは、熱媒体を液体に切り替えることにより、熱容量を大きくして、十分に冷却できるようにし、逆に流量が小さくなったときは、熱媒体を気体に切り替えることにより、熱容量を小さくして、過冷却を防止する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば次の効果を奏する。
(1)本発明の加湿ガスの露点制御装置は、加湿ガスを製造する蒸発部の下流側に設けられ、加湿ガスの露点を制御する熱交換器を備えた加湿ガスの露点制御装置であって、熱交換器は、熱媒体である気体にミストを混入させる急速調整手段を有しているので、一時的に加湿ガスの温度が上昇したときに、気体にミストを混入させて瞬時に加湿ガスの温度を下げ、露点を設定範囲に対して高精度に制御することができる。
(2)熱交換器に、熱媒体である気体を加熱する加熱手段を設けると、熱媒体である気体を加熱して、加湿ガスを保温するので、加湿ガスが小流量の場合の露点低下を防止し、加湿ガスの露点を設定範囲に対して高精度に制御することができる。
(3)熱交換器に、熱媒体として液体または気体を供給可能な熱媒体切替手段を設けると、設定流量に応じて熱媒体を切り替え、熱容量を変えることができ、露点の制御範囲が広がるので、加湿ガスの露点を設定範囲に対して高精度に制御することができる。
(4)本発明の加湿ガスの露点制御方法は、通過する加湿ガスの温度が上昇することを予測し、または通過する加湿ガスの温度が上昇したことを検知して、熱媒体である気体にミストを混入させるので、熱媒体の温度を瞬時に下げて流路内を通過する加湿ガスの温度を下げ、加湿ガスの露点を設定範囲に対して高精度に制御することができる。
(5)通過する加湿ガスの温度が下降することを予測し、または通過する加湿ガスの温度が下降したことを検知して、熱媒体である気体を加熱すると、加湿ガスの温度が設定温度より低くなることが防止され、加湿ガスの露点を設定範囲に対して高精度に制御することができる。
(6)熱交換器に、熱媒体として液体または気体を供給可能な熱媒体切替手段を設け、通過する加湿ガスの設定流量が閾値を超えた場合に熱媒体を液体に切り替え、閾値以下の場合に熱媒体を気体に切り替えると、加湿ガスの流量に応じて熱媒体の熱容量を変更することができ、加湿ガスの露点を設定範囲に対して高精度に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施の形態の加湿ガスの露点制御装置の構成を示す説明図である。図1に示すように、本発明の一実施の形態の加湿ガスの露点制御装置10は、加湿ガスを製造する蒸発部15の下流側に設けられ、加湿ガスの露点を制御する熱交換器40を備えている。熱交換器40は、熱媒体である気体にミストを混入させる急速調整手段の一例であるミスト発生手段49と、熱媒体である気体を加熱する加熱手段の一例であるエアヒータ46と、熱媒体として液体または気体を供給可能な熱媒体切替手段39とを備えている。以下、詳しく説明する。
【0021】
蒸発部15は、原水を供給する水供給手段11と、原料ガスを供給するガス供給手段12と、水供給手段11から供給された原水を貯留する貯水槽13および貯水槽13内の原水を加熱する加熱ヒータ14を有し、貯水槽13内で原水を加熱するとともに、ガス供給手段12から供給された原料ガスを通過させて水蒸気を発生させる。
【0022】
水供給手段11は、原水タンクに貯留された原水を、ポンプを用いて蒸発部15に供給する。原水供給管(図示せず)は、貯水槽13の内壁に沿って配置され、加熱された原水を貯水槽13内に供給する。
【0023】
ガス供給手段12は、原料ガス、例えば、水素を貯留しているガスボンベから、流量調節弁を介して蒸発部15の貯水槽13の下部に水素を供給する。
【0024】
蒸発部15の加熱ヒータ14は、棒状に形成され、貯水槽13内に縦方向に配置されている。加熱ヒータ14は、電熱線を、マグネシア(MgO)等の絶縁粉末を充填した金属円管の内部に配置したもので、通電により加熱され、原水に熱を加える。加熱ヒータ14は、貯水槽13内に1本または複数本配置することができる。
【0025】
貯水槽13の上部には、発生した加湿ガスが流出する加湿ガス配管38が接続され、熱交換器40は、加湿ガス配管38の上流側に設けられている。
【0026】
熱交換器40は、加湿ガス配管38の加湿ガス流路内に設けられた熱交換器本体41と、熱交換器本体41に熱媒体を供給する媒体供給管42と、熱交換器本体41から熱媒体を回収する媒体回収管43とを有している。熱媒体切替手段39は、媒体供給管42に設けられている。
【0027】
媒体供給管42の上流側端部には、空気等の気体を熱媒体として供給するガス媒体供給手段44が設けられ、ガス媒体供給手段44より直下流側の媒体供給管42には、流量計測機能を備えた流量調節弁45が設けられている。また、気体の熱媒体を加熱するエアヒータ46は、流量調節弁45より下流側の媒体供給管42に設けられている。これらによって、熱媒体切替手段39の気体供給部39aが構成されている。
【0028】
エアヒータ46より下流側の媒体供給管42には、逆止弁47が設けられ、熱媒体切替手段39の液体供給部39bは、逆止弁47の下流側の媒体供給管42に接続されている。
【0029】
液体供給部39bは、上流側から順に、冷却水供給手段48、急速調整手段の一例であるミスト発生手段49、開閉弁50および逆止弁51を有している。冷却水供給手段48は、流量調節機能を有している。ミスト発生手段49は、冷却水供給手段48から供給された水を圧縮空気で霧状に細分化して、媒体供給管42内に噴射することができる。なお、ミスト発生手段49は、ミストの噴射をパルス状に複数回行って必要な降温を行う。なお、ガス媒体供給手段44から媒体供給管42に空気を供給している状態で、冷却水供給手段48から媒体供給管42に水を噴出することによってもミストを発生させることができる。この場合は、ミスト発生手段49を特別に用意する必要はない。
【0030】
媒体回収管43の途中位置には、温度センサ52が設けられている。また、媒体回収管43の下流側端部は分岐して2つの排出部を形成しており、一方の排出部は排気口53となり、他方の排出部は排水口54となっている。排水口54は、冷却水を回収する冷却水回収タンク55に接続されている。
【0031】
液体供給部39bの開閉弁50を閉じ、ガス媒体供給手段44を作動させると、媒体供給管42に空気が流入する。媒体供給管42を通過する空気は、流量調節弁45で流量を調節し、エアヒータ46で温度を調節することができる。空気は、媒体供給管42から熱交換器本体41に流入し、媒体回収管43を通過して、排気口53から排出される。
【0032】
ガス媒体供給手段44を停止した状態で、液体供給部39bの開閉弁50を開き、冷却水供給手段48を作動させると、熱媒体切替手段39から媒体供給管42に冷却水が流入する。媒体供給管42には、逆止弁47が設けられているので、ガス媒体供給手段44側に冷却水が逆流することはない。媒体供給管42に流入した冷却水は、熱交換器本体41に流入し、媒体回収管43を通過して、排水口54から排出され、冷却水回収タンク55に貯留される。なお、冷却水回収タンク55は、冷却水供給手段48の水タンクと共用することができる。
【0033】
液体供給部39bの開閉弁50を開き、ガス媒体供給手段44を作動させた状態で、冷却水供給手段48とミスト発生手段49をパルス状に作動させると、媒体供給管42内を流れる空気に所定量のミストが混入される。媒体供給管42および熱媒体切替手段39には、逆止弁47,51がそれぞれ設けられているので、ミストが混入した空気は、逆流せずに熱交換器本体41に流入する。熱交換器本体41に流入したミストが混入した空気は、媒体回収管43を通過する。そして、ミストおよび流路内で発生したドレンは、排水口54から流出して冷却水回収タンクに貯留され、空気は排気口53から排出される。
【0034】
蒸発部15で発生した加湿ガスは、熱交換器本体41で所定温度に調整されて製品加湿ガスとなり、加湿ガス配管38の供給口56から使用機器に供給される。
【0035】
次に、本発明の加湿ガスの露点制御装置10を用いた加湿ガスの露点制御方法について説明する。熱媒体切替手段39は、加湿ガスの設定流量が閾値を超えたか否かによって、熱媒体を切り替える。
【0036】
加湿ガスの流量が多いときには、加湿ガス配管38内を流れる加湿ガスの通過時間が短いので、熱交換器40を流れる熱媒体の熱容量を大きくする必要があり、媒体として水を使用することが好ましい。すなわち、ガス媒体供給手段44とエアヒータ46を停止し、冷却水供給手段48を作動させる。そして、加湿ガスの温度が高い場合には、冷却水供給手段48の流量調節機能で水の流量を増加させ、加湿ガスの温度が低い場合には、水の流量を減少させて温度調整を行う。
【0037】
加湿ガスの流量が少ないときには、加湿ガス配管38内を流れる加湿ガスの通過時間が長いので、熱媒体として水を使用すると、最小流量に調整した場合でも温度の制御ができなくなる。この場合には、熱媒体として空気を使用する。すなわち、冷却水供給手段48を停止させて、ガス媒体供給手段44を作動させる。そして、加湿ガスの温度が高い場合には、流量調節弁45によって空気の流量を増やし、加湿ガス温度が低い場合には、流量を減らして温度調整を行う。
【0038】
また、加湿ガスの流量がさらに少ない場合には、加湿ガスが加湿ガス配管38を移動するときに熱量を奪われ、温度が低下することがある。この場合には、エアヒータ46を作動させて、加湿ガスを加熱しておくことにより、供給口56での温度が設定温度となるように調整することができる。
【0039】
本実施の形態の加湿ガス供給システムを用いた場合、熱媒体を空気から水に切り替えるとき、また、水から空気に切り替えるときに約10秒の時間が必要である。このため、熱媒体の切り替え直後には、温度が急激に変動することがあり、水と空気のみの切り替えでは、制御不可能となる状態が発生する。
【0040】
図2は、設定流量を小さくした場合の流量と時間との関係、および加湿ガスの温度と時間との関係を示すグラフである。横軸は時間を示し、縦軸は流量と、温度を示している。グラフ上の上側の線は流量の変化を示し、下側の線は温度の変化を示している。
【0041】
図2に示すように、設定流量を大流量Aから小流量Bに変更したとき、流量変更後の加湿ガスの温度が安定するまでに数十秒程度の時間が必要になる。特に、設定流量を小流量に変更した直後には、図中に二点鎖線C,Dで示すように、一時的に加湿ガスの温度が下降したり、上昇したりする現象を、本発明者等は実験により確認している。なお、加湿ガスの温度は、加湿ガス配管38の内部に設けた温度センサにより測定している。
【0042】
設定流量が小さいときに、熱媒体を空気から水に切り替えると、加湿ガスが冷却されすぎて、設定温度より低くなってしまうことがあり、また、熱媒体の変更に時間がかかり過ぎるため、温度変化に追随することができない。そこで、二点鎖線Cで示すように加湿ガスの温度が下降する場合には、エアヒータ46を作動させて空気の温度を上げ、二点鎖線Dで示すように加湿ガスの温度が上昇する場合には、空気中にミストを混入させることで、図中に実線E,Fで示すように、加湿ガスの一時的な温度変動を抑えて、温度を安定させることができる。
【0043】
ミスト発生手段49は、加湿ガスの上昇温度に合わせて、ミストをパルス状に複数回噴射する。具体的には、ガス媒体供給手段44を作動させて熱交換器本体41に空気を流入させている状態で、冷却水供給手段48とミスト発生手段49を作動させて、空気中に所定流量のミストを混入する。空気中にミストを噴射したときの気化熱により熱媒体である空気の温度を瞬時に下げることによって加湿ガスの熱を吸収し、図中に実線で示すように、温度を安定させることができる。なお、ミストの噴射を行っても熱媒体の熱容量はあまり増加しないので、温度降下の作用が長時間残ることはなく、熱媒体の温度が下がったままになることはない。
【0044】
図3は、設定流量を大きくした場合の流量と時間との関係、および加湿ガスの温度と時間との関係を示すグラフである。横軸は時間を示し、縦軸は流量と、温度を示している。グラフ上の上側の線は流量の変化を示し、下側の線は温度の変化を示している。
【0045】
図3に示すように、設定流量を小流量Gから大流量Hに変更したとき、流量変更後の加湿ガスの温度が安定するまでに数十秒程度の時間が必要になる。特に、設定流量を大流量に変更した直後には、図中に二点鎖線J,Kで示すように、一時的に加湿ガスの温度が上昇したり下降したりする現象を、本発明者等は実験により確認している。
【0046】
設定流量を大きくした直後に、熱媒体を空気から水に切り替えると、加湿ガスが冷却されすぎて、設定温度より低くなってしまうことがあり、また、熱媒体の変更に時間がかかり過ぎるため、温度変化に追随することができない。そこで、二点鎖線Jで示すように加湿ガスの温度が上昇する場合には、空気中にミストを混入させ、二点鎖線Kで示すように加湿ガスの温度が下降する場合には、エアヒータ46を作動させて空気の温度を上げることで、図中に実線L,Mで示すように、加湿ガスの一時的な温度変動を抑えて、温度を安定させることができる。熱媒体の空気から水への切り替えは、この後に行うことが好ましい。
【0047】
このようにして、設定温度や設定流量の変更に迅速に対応して安定性の高い加湿ガスを供給することができる。なお、前記実施の形態においては、回収管を用いて原水を補助タンクに回収したが、回収管の代わりに排水口を設けて使用することも可能である。また、加湿ガスの温度は、加湿ガス配管38の内部に設けた温度センサにより測定してフィードバック制御を行っているが、設定温度を変更したときに予測して制御することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、固体高分子型燃料電池に供給する加湿ガスの露点を高精度に制御する加湿ガスの露点制御装置として利用でき、これ以外に高湿度の気体を精度よく製造する加湿装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態の加湿ガスの露点制御装置の構成を示す説明図
【図2】設定流量を小さくした場合の流量と時間との関係、および加湿ガスの温度と時間との関係を示すグラフ
【図3】設定流量を大きくした場合の流量と時間との関係、および加湿ガスの温度と時間との関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0050】
10 加湿ガスの露点制御装置
11 水供給手段
12 ガス供給手段
13 貯水槽
14 加熱ヒータ
15 蒸発部
38 加湿ガス配管
39 熱媒体切替手段
39a 気体供給部
39b 液体供給部
40 熱交換器
41 熱交換器本体
42 媒体供給管
43 媒体回収管
44 ガス媒体供給手段
45 流量調節弁
46 エアヒータ(加熱手段)
47 逆止弁
48 冷却水供給手段
49 ミスト発生手段(急速調整機能)
50 開閉弁
51 逆止弁
52 温度センサ
53 排気口
54 排水口
55 冷却水回収タンク
56 供給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加湿ガスを製造する蒸発部の下流側に設けられ、加湿ガスの露点を制御する熱交換器を備えた加湿ガスの露点制御装置であって、
前記熱交換器は、熱媒体である気体にミストを混入させる急速調整手段を有していることを特徴とする加湿ガスの露点制御装置。
【請求項2】
前記熱交換器は、熱媒体である気体を加熱する加熱手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の加湿ガスの露点制御装置。
【請求項3】
前記熱交換器は、熱媒体として液体または気体を供給可能な熱媒体切替手段を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の加湿ガスの露点制御装置。
【請求項4】
加湿ガスを製造する蒸発部の下流側に設けられ、熱媒体である気体にミストを混入させる急速調整手段を有して加湿ガスの露点を制御する熱交換器を備えた加湿ガスの露点制御装置を用いた加湿ガスの露点制御方法であって、
通過する加湿ガスの温度が上昇することを予測し、または通過する加湿ガスの温度が上昇したことを検知して、熱媒体である気体にミストを混入させることを特徴とする加湿ガスの露点制御方法。
【請求項5】
前記熱交換器に、熱媒体である気体を加熱する加熱手段を設け、通過する加湿ガスの温度が下降することを予測し、または通過する加湿ガスの温度が下降したことを検知して、熱媒体である気体を加熱することを特徴とする請求項4に記載の加湿ガスの露点制御方法。
【請求項6】
前記熱交換器に、熱媒体として液体または気体を供給可能な熱媒体切替手段を設け、通過する加湿ガスの設定流量が閾値を超えた場合に熱媒体を液体に切り替え、閾値以下の場合に熱媒体を気体に切り替えることを特徴とする請求項4または5に記載の加湿ガスの露点制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−189215(P2006−189215A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2464(P2005−2464)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000233697)株式会社日鉄エレックス (51)
【Fターム(参考)】