説明

加熱冷却装置

【課題】 加熱工程と冷却工程との交互の切り換え時に、熱エネルギー損失を極力小さくすることのできる加熱冷却装置を提供する。
【解決手段】 反応釜1のジャケット部2に、蒸気供給管8を接続すると共に、冷却流体管路5を接続する。ジャケット部2の下方にエゼクタ10とタンク13と循環ポンプ14からなる組み合わせポンプ4を連通する。タンク13と蓄熱タンク3の間を熱交換パイプ6によって連通する。蓄熱タンク3内には所定の蓄熱材を溜め置く。
反応釜1を加熱して温度上昇したタンク13内の熱量は、熱交換パイプ6を介して蓄熱材へ熱交換され蓄熱タンク3に蓄熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換室内を吸引手段で吸引しながら被熱交換物を加熱あるいは冷却する加熱冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱冷却装置は、熱交換室に熱交換流体供給管と吸引手段を接続し、吸引手段のタンク内に熱交換手段を取り付けることによって、タンク内流体の温度をできるだけ速やかに変更して加熱あるいは冷却の温度を時間遅れなく変更することができるものである。
【0003】
この加熱冷却装置においては、タンク内の流体の温度を熱交換手段で加熱したりあるいは冷却することによって変更するものであるが、加熱冷却装置として加熱工程と冷却工程を交互に繰り返す場合に、タンク内流体温度も同様に頻繁に上昇させたりあるいは下降しなければならず、このタンク内流体温度の変更に伴って熱エネルギー損失が大きくなってしまう問題があった。
【特許文献1】特開平10−2647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、加熱工程と冷却工程との交互の切り換え時に、熱エネルギー損失を極力小さくすることのできる加熱冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被熱交換物を加熱あるいは冷却する熱交換室を形成して、当該熱交換室に熱交換流体を供給する熱交換流体供給管を接続し、熱交換室を吸引手段と接続したものにおいて、吸引手段をエゼクタとタンクと循環ポンプで構成して、当該タンク内の流体と熱交換してタンク内流体の保有する熱量を蓄熱する蓄熱タンクを配置したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の加熱冷却装置は、吸引手段のタンク内流体の保有する熱量を蓄熱する蓄熱タンクを配置したことにより、蓄熱タンクに所定の熱量が蓄熱されていない場合は、吸引手段のタンク内の高温流体と熱交換して蓄熱タンクへ所定の熱量を蓄熱することができ、一方、蓄熱タンクが所定の熱量を蓄熱しており、吸引手段のタンク内流体温度が低い場合は、タンク内の低温流体と熱交換して所定の温度まで上昇させることにより、熱エネルギーの有効利用を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、吸引手段のタンク内流体の保有する熱量を蓄熱する蓄熱タンクを設けたものであるが、この蓄熱タンクは、吸引手段のタンク内流体の保有する熱量に応じて、1台あるいは複数台を配置することができる。
【実施例1】
【0008】
本実施例においては、熱交換室として反応釜1のジャケット部2を用いた例を示す。反応釜1の内部に入れた図示しない被熱交換物を、ジャケット部2に供給する加熱源としての加熱流体、あるいは、冷却源としての冷却流体によって熱交換するものである。
【0009】
反応釜1のほぼ全周にわたりジャケット部2を形成して、このジャケット部2に吸引手段としての組み合わせ真空ポンプ4と、加熱流体としての蒸気供給管8、及び、冷却流体供給管5を接続する。
【0010】
ジャケット部2の左側上部には、流量調節弁7を介在した蒸気供給管8を接続する。この蒸気供給管8から、所定圧力すなわち所定温度の加熱用蒸気が、ジャケット部2へ供給されることによって、反応釜1内の被加熱物を加熱することができるものである。
【0011】
ジャケット部2の下方に排出管9を接続して、組み合わせ真空ポンプ4のエゼクタ10と接続する。排出管9には、開閉弁11と蒸気トラップ12をそれぞれ並列に取り付ける。蒸気トラップ12は、排出管9から流下してくる蒸気と凝縮水としての復水の混合流体から復水だけを排出して蒸気は排出しないものであり、排出された復水は下方のエゼクタ10に吸引される。
【0012】
組み合わせ真空ポンプ4を、エゼクタ10とタンク13と循環ポンプ14を順次に循環路15で連通して形成する。タンク13の上部には、冷却流体としての冷却水を補給する冷却水補給管16を接続する。循環路15の一部を分岐して余剰水排出管17を接続する。
【0013】
タンク13の左側に蓄熱タンク3を配置する。蓄熱タンク3内には図示はしないが蓄熱材としての水や熱媒などを溜め置く。蓄熱タンク3の内部とタンク13の内部を熱交換パイプ6で連通する。蓄熱タンク3内の蓄熱材を熱交換パイプ6へ通過させることによって、タンク13内の流体の保有する熱量を蓄熱材で吸収して蓄熱タンク3へ蓄熱したり、あるいは反対に、蓄熱タンク3内の保有熱を熱交換パイプ6を介してタンク13内の流体へ伝熱することができるものである。
【0014】
蓄熱タンク3の右側上部には、蓄熱タンク3内へ蓄熱材を補給する蓄熱材補給管18を接続する。また、蓄熱タンク3の上下には、蓄熱材を補助的に加熱したりあるいは冷却するための熱交換流体供給管19と熱交換流体排出管20をそれぞれ接続する。
【0015】
反応釜1内の被加熱物を加熱する場合は、蒸気供給管8から加熱に適した温度の蒸気をジャケット部2へ供給することによって、蒸気が反応釜1内の被加熱物に熱を与えて加熱する。加熱により蒸気の凝縮した復水と一部の蒸気は排出管9を通り蒸気トラップ12から復水だけがエゼクタ10に吸引されタンク13に至る。
【0016】
一方、組み合わせ真空ポンプ4の循環ポンプ14を駆動して、エゼクタ10の発生する吸引力で排出管9を介してジャケット部2内を所定の圧力状態、例えば、大気圧以下の真空状態、とすることにより、100℃以下の温度の蒸気で反応釜1を加熱することがでまる。
【0017】
タンク13内に復水が流入するにつれてタンク13内の流体温度が上昇する。タンク13内の流体温度が所定値以上に上昇すると、熱交換パイプ6を介して蓄熱材をタンク13内へ供給して、タンク13の余剰熱を吸収する。吸収した熱量は、蓄熱タンク3内の蓄熱材に蓄熱される。
【0018】
反応釜1を加熱から冷却へと切り換える場合は、蒸気供給管8からの蒸気の供給を停止すると共に、冷却流体供給管5から冷却流体をジャケット部2へ供給することによって、ジャケット部2内は大気圧以下の真空状態であり、冷却流体が反応釜1の熱を奪って直ちに蒸発気化することによって反応釜1を気化冷却する。この場合、タンク13内の流体温度は、熱交換パイプ6によって熱交換され所定温度まで低下しているために、加熱から冷却への切り換えを時間遅れなく行うことができる。
【0019】
さらに、反応釜1を冷却から加熱へと切り換える場合は、蓄熱タンク3に蓄熱していた熱量を熱交換パイプ6を介してタンク13内の流体へ伝熱することによって、タンク13内の流体温度を加熱に適した温度まで上昇させてから加熱工程へと切り換えることができる。
【0020】
このように、蓄熱タンク3に所定の熱量を蓄熱しておき、加熱工程への切り換え時に使用することによって、熱エネルギーの有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の加熱冷却装置の実施例を示す構成図。
【符号の説明】
【0022】
1 反応釜
2 ジャケット部
3 蓄熱タンク
4 組み合わせポンプ
5 冷却流体供給管
6 熱交換パイプ
8 蒸気供給管
9 排出管
10 エゼクタ
12 蒸気トラップ
13 タンク
14 循環ポンプ
15 循環路
19 熱交換流体供給管
20 熱交換流体排出管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被熱交換物を加熱あるいは冷却する熱交換室を形成して、当該熱交換室に熱交換流体を供給する熱交換流体供給管を接続し、熱交換室を吸引手段と接続したものにおいて、吸引手段をエゼクタとタンクと循環ポンプで構成して、当該タンク内の流体と熱交換してタンク内流体の保有する熱量を蓄熱する蓄熱タンクを配置したことを特徴とする加熱冷却装置。


【図1】
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【公開番号】特開2007−50324(P2007−50324A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236022(P2005−236022)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】