説明

加熱冷却装置

【課題】 加熱から冷却への切り換え時の温度制御性を向上させることができる加熱冷却装置を提供する。
【解決手段】 反応釜1のジャケット部2の右側に、冷却流体熱交換エゼクタ5を介在して補助冷却用循環通路3を接続する。冷却流体熱交換エゼクタ5の出口側を、冷却流体集合管4を介してジャケット2と接続すると共に、冷却流体戻し管16を介してタンク8と接続する。
加熱から冷却へと切り換える場合に、補助冷却用循環通路3内の冷却流体を、冷却流体集合管4と冷却流体戻し管16からタンク8内へ供給しながら、ジャケット部2へ供給することによって、温度制御性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換室内で被熱交換物を直接に又は間接に熱交換して、被熱交換物を加熱又は冷却する加熱冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱冷却装置は、熱交換室をエゼクタと連通して、当該エゼクタにタンクを介して循環ポンプと接続すると共に、当該タンクへ冷却水を供給することによるタンク内水温の制御部を設けることによって、蒸気の急凝縮に起因するハンマー現象に伴う振動や衝撃を防止することができるものである。
【0003】
この加熱冷却装置においては、加熱から冷却への切り換え時に、初期の冷却流体の温度を精度良く所定値に維持することができず、その結果として加熱冷却装置の温度制御性を悪化させる問題があった。これは、加熱から冷却へ切り換える場合に、冷却用循環通路に加熱用循環通路の循環流体の一部が残留しており、この残留流体の温度を精度良く所定値に維持することができないためである。
【特許文献1】特公平5−34054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、冷却用循環通路に残留している循環流体の温度を精度良く所定値に維持することによって、加熱から冷却への切り換え時の温度制御性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被熱交換物を加熱あるいは冷却する熱交換室を、加熱用あるいは冷却用の循環通路でエゼクタと連通して、当該エゼクタにタンクを介して循環ポンプと接続し、当該タンクに冷却流体を補給する冷却流体補給管を接続したものにおいて、冷却用循環通路の一部を分岐して補助冷却用循環通路を接続して、当該補助冷却用循環通路によって、エゼクタとタンクと循環ポンプを通過する冷却流体の一部を循環させるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の加熱冷却装置は、冷却用循環通路の一部を分岐して補助冷却用循環通路を接続したことにより、この補助冷却用循環通路から、冷却用循環通路と同一温度の冷却流体を、すなわち、精度良く所定温度値に維持された循環流体を、熱交換室へ供給することができ、加熱から冷却への切り換え時の温度制御性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、冷却用循環通路の一部を分岐して補助冷却用循環通路を接続し、当該補助冷却用循環通路によって、エゼクタとタンクと循環ポンプを通過する冷却流体の一部を循環させるものであるが、補助冷却用循環通路をループ状に配置することで、冷却流体を循環させるのに適する。
【実施例1】
【0008】
本実施例においては、熱交換室として加熱や冷却を行う反応釜1を用いた例を示す。反応釜1の内部に入れた図示しない被熱交換物を、ジャケット部2に供給する加熱源としてのスチームや、冷却源としての冷却水によって加熱あるいは冷却するものである。
【0009】
反応釜1のほぼ全周にわたりジャケット部2を形成し、ジャケット部2の右下部に排出管19を取り付けてエゼクタ6と接続する。排出管19には、開閉弁20と、蒸気は排出することがなく復水だけを自動的に出口側へ排出することのできる蒸気トラップ21を並行に配置して、エゼクタ6のノズル部12の吸引部と接続する。エゼクタ6のディフューザ部7をタンク8に接続する。タンク8の側方を循環通路9で循環ポンプ10と接続し、更に管路11でエゼクタ6のノズル部12と連通する。
【0010】
管路11を分岐して補助冷却用循環通路3を接続する。この補助冷却用循環通路3には、ジャケット部2へ供給する冷却流体の温度を任意に制御するための冷却流体熱交換エゼクタ5を取り付ける。冷却流体熱交換エゼクタ5は、加熱あるいは冷却用の流体を供給管22から供給することによって、内部を通過する冷却流体の温度を任意に制御することができるものである。この冷却流体熱交換エゼクタ5は、後述する冷却流体集合管4の直近に配置する。
【0011】
冷却流体集合管4は、冷却流体熱交換エゼクタ5から供給される所定温度の冷却流体の一部を、管路14を介してジャケット部2へ供給すると共に、冷却流体戻し管16からタンク8へ戻すものである。
【0012】
タンク8内の冷却水が循環ポンプ10で循環され、管路11からエゼクタ6のノズル部12を通ってタンク8内へと循環すると共に、補助冷却用循環通路3と冷却流体集合管4、及び、冷却流体戻し管16を通ってタンク8に流下して循環する。タンク8の左側上部には、冷却水補給管13を接続する。
【0013】
反応釜1のジャケット部2に、加熱用の蒸気供給管15を接続する。蒸気供給管15には供給する蒸気の圧力を制御するための圧力制御弁17を取り付ける。また、循環ポンプ10の吐出側には、余剰流体排出管23を接続して、タンク8内の液位を所定範囲に維持することができるようにする。
【0014】
反応釜1内の図示しない被熱交換物を加熱する場合は、蒸気供給管15から加熱に適した温度の蒸気をジャケット部2へ供給することによって、蒸気が反応釜1内の被熱交換物に熱を与えて加熱する。加熱により蒸気の凝縮した復水及び凝縮しなかった蒸気の一部は、排出管19と蒸気トラップ21あるいは開閉弁20を通ってエゼクタ6に吸引されタンク8に至る。
【0015】
一方、反応釜1内の被熱交換物を冷却する場合は、循環ポンプ10を駆動して補助冷却用循環通路3内の冷却流体を冷却流体集合管4、及び、冷却流体戻し管16からタンク8へ供給すると共に、エゼクタ6にも冷却流体を供給してエゼクタ6で吸引力を発生させることにより、ジャケット部2内を所定の圧力状態、例えば、大気圧以下の真空状態、とすることにより、冷却流体が反応釜1内の被熱交換物の熱を奪って蒸発することにより、その蒸発潜熱によって被熱交換物を気化冷却することができるものである。
【0016】
このように、加熱から冷却へと切り換える場合に、補助冷却用循環通路3内の冷却流体を、冷却流体集合管4と冷却流体戻し管16からタンク8内へ供給しながら、ジャケット部2へ供給することによって、タンク8及び循環通路9と同一温度の冷却流体を、すなわち、精度良く所定温度値に維持された循環流体を、ジャケット部2へ供給することができ、温度制御性を向上させることができる。
【0017】
ジャケット部2で被冷却物の熱を奪って蒸発気化した気化蒸気及び冷却流体の残りは、開閉弁20並びに蒸気トラップ21からエゼクタ6に吸引されタンク8に至る。
【0018】
補助冷却用循環通路3に取り付けた冷却流体熱交換エゼクタ5によって、補助冷却用循環通路3からジャケット部2へ供給する冷却流体の温度を更に精度良く所定温度に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の加熱冷却装置の実施例を示す構成図。
【符号の説明】
【0020】
1 反応釜
2 ジャケット部
3 補助冷却用循環通路
4 冷却流体集合管
5 冷却流体熱交換エゼクタ
6 エゼクタ
8 タンク
10 循環ポンプ
12 ノズル部
13 冷却水補給管
14 管路
15 蒸気供給管
16 冷却流体戻し管
19 排出管
20 開閉弁
21 蒸気トラップ
23 余剰流体排出管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被熱交換物を加熱あるいは冷却する熱交換室を、加熱用あるいは冷却用の循環通路でエゼクタと連通して、当該エゼクタにタンクを介して循環ポンプと接続し、当該タンクに冷却流体を補給する冷却流体補給管を接続したものにおいて、冷却用循環通路の一部を分岐して補助冷却用循環通路を接続して、当該補助冷却用循環通路によって、エゼクタとタンクと循環ポンプを通過する冷却流体の一部を循環させることを特徴とする加熱冷却装置。


【図1】
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【公開番号】特開2009−222281(P2009−222281A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66159(P2008−66159)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】