説明

加熱冷却装置

【課題】 単位時間当りの熱交換量を十分に確保できる加熱冷却装置を提供する。
【解決手段】 反応釜1の外周にジャケット部2を、内部に着脱自在の多管式熱交換器3を配置する。ジャケット部2と多管式熱交換器3に蒸気供給管15並びに冷却水供給管14を接続する。反応釜1内側端部に、下方に向かうにつれて高さが低くなる凸状の抵抗板5を取り付ける。反応釜1内の中心部に攪拌翼16を取り付ける。攪拌翼16は、下方の攪拌翼22ほど大きくし、上方の攪拌翼23ほど小さくする。
蒸気供給管15からジャケット部2と多管式熱交換器3へ蒸気を供給して反応釜1を加熱し、一方、冷却水供給管14からジャケット部2と多管式熱交換器3へ冷却水を供給して反応釜1を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換室内で被熱交換物を間接的に熱交換して、被熱交換物を加熱又は冷却する加熱冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱冷却装置は、熱交換室をエゼクタと連通して、当該エゼクタにタンクを介して循環ポンプと接続すると共に、当該タンクへ冷却水を供給することによるタンク内水温の制御部を設けることによって、蒸気の急凝縮に起因するハンマー現象に伴う振動や衝撃を防止することができるものである。
【0003】
この加熱冷却装置においては、加熱又は冷却時に、単位時間当りの熱交換量を十分に確保することができないために、熱交換効率をある程度以上に向上させることができない問題があった。
【特許文献1】特公平5−34054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、単位時間当りの熱交換量を十分に確保できるようにして、熱交換効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被熱交換物を加熱あるいは冷却する熱交換室に吸引手段を接続すると共に、当該熱交換室に加熱用流体あるいは冷却用流体を供給するものにおいて、熱交換室の外周並びに熱交換室の内部に熱交換部材を配置して、当該熱交換部材を熱交換室に対して着脱自在としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の加熱冷却装置は、熱交換室の外周並びに内部の双方に熱交換部材を着脱自在に配置したことにより、熱交換するための面積を増大することができ、単位時間当りの熱交換量を十分に確保して、熱交換効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、熱交換室の外周並びに内部の双方に熱交換部材を配置するものであるが、この熱交換部材は、例えば、熱交換室が反応釜である場合は、外周の熱交換部材をジャケット部とし、一方、内部の熱交換部材を反応釜内部に取り付けた多管式の熱交換器とすることができる。
【実施例1】
【0008】
本実施例においては、熱交換室として加熱や冷却を行う反応釜1を用いた例を示す。反応釜1の内部に収納した図示しない被熱交換物を、熱交換部材としてのジャケット部2及び多管式熱交換器3に供給する加熱源としての蒸気や、冷却源としての冷却水によって加熱あるいは冷却するものである。
【0009】
ジャケット部2の左側に蒸気供給管15を接続し、ジャケット部2の右側に冷却水供給管14を接続する。それぞれの供給管14,15には、供給量を制御するためのバルブ17,18を取り付ける。
【0010】
反応釜1の外周のほぼ全周にわたり熱交換部材としてのジャケット部2を形成し、ジャケット部2の右下部に排出管19を取り付けて組み合わせ真空ポンプ4のエゼクタ6と接続する。排出管19には、開閉弁20と、蒸気は排出することがなく復水だけを自動的に出口側へ排出することのできる蒸気トラップ21を並行に配置して、エゼクタ6のノズル部12の吸引部と接続する。エゼクタ6のディフューザ部7をタンク8に接続する。タンク8の側方を循環通路9で循環ポンプ10と接続し、更に管路11でエゼクタ6のノズル部12と連通する。
【0011】
反応釜1の内部に熱交換部材としての直管状の多管式熱交換器3を着脱自在に配置する。多管式熱交換器3の上端は蒸気供給管15及び冷却水供給管14と接続し、一方、下端はジャケット部2内に開口する。この多管式熱交換器3は、銅パイプ等のように、伝熱効率に優れた材料で製作する。本実施例においては、多管式熱交換器3を、反応釜1の上方から着脱自在に取り付ける例を示したが、反応釜1の下方又は側方から着脱自在に多管式熱交換器3を取り付けることもできる。
【0012】
反応釜1内側端部で、多管式熱交換器3に対向する位置の上下方向に、下方に向かうにつれて高さが低くなる凸状の抵抗板5を取り付ける。また、反応釜1内の中心部に、反応釜1内の被熱交換物を攪拌する攪拌翼16を取り付ける。攪拌翼16は、下方の攪拌翼22ほど直径を大きくして吐出力も大きくし、上方の攪拌翼23ほど直径を小さくして吐出力も小さくなるように配置する。
【0013】
反応釜1内の被熱交換物を加熱又は冷却する場合は、攪拌翼16を回転駆動して、被熱交換物を攪拌するのであるが、被熱交換物は反応釜1内部を水平方向に旋回されると共に、下方の攪拌翼22を大きくし上方の攪拌翼23を小さくしたことによって反応釜1内部を垂直方向にも旋回される。このように、攪拌翼16,22,23により、被熱交換物を水平方向と垂直方向に旋回することで、被熱交換物は効率良く確実に旋回される。
【0014】
攪拌翼16,22,23で旋回される被熱交換物は、抵抗板5に衝突して乱流状態となることによって、多管式熱交換器3外表面、及び、ジャケット部2側との接触機会が増加して熱交換効率を向上することができる。
【0015】
下方の攪拌翼22を大きくし上方の攪拌翼23を小さくすると共に、下方に向かうにつれて高さが低くなる凸状の抵抗板5を取り付けたことにより、被熱交換物が抵抗板5に衝突して発生する乱流の発生量を、反応釜1内の上下方向で均一化することができ、被熱交換物への伝熱ムラを防止することができる。
【0016】
組み合わせ真空ポンプ4のタンク8内の冷却水が循環ポンプ10で循環され、管路11からエゼクタ6のノズル部12を通ってタンク8内へと循環する。タンク8の左側上部には、冷却水補給管13を接続する。循環ポンプ10の吐出側には、余剰水排出管25を接続して、タンク8内の液位を所定範囲に維持することができるようにする。
【0017】
反応釜1内の被熱交換物を加熱する場合は、蒸気供給管15から加熱に適した温度の蒸気をジャケット部2、並びに、着脱自在の多管式熱交換器3へ供給することによって、蒸気が反応釜1内の被熱交換物に熱を与えて加熱する。加熱により蒸気の凝縮した復水及び凝縮しなかった蒸気の一部は、排出管19と蒸気トラップ21あるいは開閉弁20を通って組み合わせ真空ポンプ4のエゼクタ6に吸引されタンク8に至る。
【0018】
一方、反応釜1内の被熱交換物を冷却する場合は、冷却水供給管14から冷却に適した温度の冷却水をジャケット部2、並びに、着脱自在の多管式熱交換器3へ供給すると共に、組み合わせ真空ポンプ4を駆動してエゼクタ6で吸引力を発生させることにより、ジャケット部2内並びに多管式熱交換器3内を所定の圧力状態、例えば、大気圧以下の真空状態、とすることにより、冷却水が反応釜1内の被熱交換物の熱を奪って蒸発することにより、その蒸発潜熱によって被熱交換物を気化冷却することができるものである。
【0019】
ジャケット部2並びに多管式熱交換器3で被冷却物の熱を奪って蒸発気化した気化蒸気及び冷却水の残りは、開閉弁20並びに蒸気トラップ21から組み合わせ真空ポンプ4のエゼクタ6に吸引されタンク8に至る。
【0020】
熱交換室としての反応釜1の外周並びに内部の双方に、熱交換部材としてのジャケット部2並びに多管式熱交換器3を配置したことにより、熱交換するための面積を増大することができ、単位時間当りの熱交換量を十分に確保して、熱交換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の加熱冷却装置の実施例を示す構成図。
【符号の説明】
【0022】
1 反応釜
2 ジャケット部
3 多管式熱交換器
4 組み合わせ真空ポンプ
5 抵抗板
6 エゼクタ
8 タンク
10 循環ポンプ
12 ノズル部
13 冷却水補給管
14 冷却水供給管
15 蒸気供給管
16 攪拌翼
19 排出管
20 開閉弁
21 蒸気トラップ
22,23 攪拌翼
25 余剰水排出管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被熱交換物を加熱あるいは冷却する熱交換室に吸引手段を接続すると共に、当該熱交換室に加熱用流体あるいは冷却用流体を供給するものにおいて、熱交換室の外周並びに熱交換室の内部に熱交換部材を配置して、当該熱交換部材を熱交換室に対して着脱自在としたことを特徴とする加熱冷却装置。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−68783(P2009−68783A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238608(P2007−238608)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】