説明

加熱剥離型粘着シート

【課題】粘着剤が被着体に残ることがなく、しかも初期粘着力、保存(保管)寿命、及び加熱後の易剥離性に優れた加熱剥離型粘着シートを提供する。
【解決手段】シート基材の片面又は両面に、粘着性高分子体、硬化性樹脂、重合開始剤及び架橋剤を主成分とする粘着剤組成物層を形成したものとしており、保存時及び貼付け時には粘着性能を保有しており、剥離要求時には加熱することにより、熱重合硬化して易剥離するものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貼付け後、短時間での加熱処理により被着体より容易に剥離することができる加熱剥離型粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被着体に貼り付け後、加熱前は剥離不可能な粘着シートとして、加熱後は粘着剤層中に入っている熱膨張性微小球が膨張し、被着体との接触面積を減少させ、容易に被着体から剥離することが可能な加熱剥離型粘着シートが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平3−64381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の加熱剥離型粘着シートは、熱膨張性微小球が膨張するだけのため、粘着剤が被着体に残るという課題を有し、その課題の解決を図るための材料、プロセスの開発が強く望まれていた。
【0004】
そこで、本発明は、上記従来の加熱剥離型粘着シートの課題を解決すると共に、初期粘着力、保存(保管)寿命、及び加熱後の易剥離性に優れた加熱剥離型粘着シートを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の加熱剥離型粘着シートは、シート基材の片面又は両面に、粘着性高分子体、硬化性樹脂、重合開始剤及び架橋剤を主成分とする粘着剤組成物層を形成したものとしており、保存時及び貼付け時には粘着性能を保有しており、剥離要求時には加熱することにより、熱重合硬化して易剥離するものとしている。
本発明において、前記粘着性高分子体は、メタクリル系又はアクリル系粘着性高分子体であるものとしている。
【0006】
本発明において、前記硬化性樹脂は、多官能樹脂であるものとしている。
本発明において、前記重合開始剤は、剥離要求時における粘着剤組成物の熱ラジカル重合を開始可能なアゾ系開始剤であるものとしている。
【0007】
本発明において、前記架橋剤は、イソシアネート系架橋剤であるものとしている。
【0008】
本発明において、前記多官能樹脂は、5官能以上15官能以下のラジカル重合可能樹脂であるものとしている。
本発明において、前記アゾ系開始剤のアゾ基当たりの活性化エネルギー(ΔE)が1.25×105J/mol以上であるものとしている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加熱剥離型粘着シートは、以上のように構成されているので、粘着剤が被着体に残ることがないものとなり、しかも初期粘着力、保存(保管)寿命、及び加熱後の易剥離性に優れたものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の加熱剥離型粘着シートを実施するための最良の形態について、詳細に説明する。
本発明の加熱剥離型粘着シートは、シート基材の片面又は両面に、粘着性高分子体、硬化性樹脂、重合開始剤及び架橋剤を主成分とする粘着剤組成物を塗工することにより、粘着剤組成物層を形成したものとしており、保存時及び貼付け時には粘着性能を保有しており、剥離要求時には加熱することにより、重合開始剤からラジカルが発生し、ラジカル反応が起こり粘着剤が硬化し、易剥離するものとしている。
【0011】
本発明における粘着剤組成物は、粘着性高分子体を有機溶剤に溶解させてから、硬化性樹脂、重合開始剤及び架橋剤を配合するものとしている。
【0012】
本発明において、粘着性高分子体は、メタクリル系又はアクリル系粘着性高分子体からなり、これらの重量平均分子量は、10万〜200万としているが、50万〜150万とするのが好ましく、100万〜150万とするのがより好ましい。前記粘着性高分子体の重量平均分子量が10万より小さいと、加熱後粘着剤の糊残りが発生するため好ましくなく、粘着性高分子体の重量平均分子量が200万を超えると、アクリル酸系及びメタクリル酸系粘着剤は粘着シートの特性上特に問題は無いが、粘着剤の粘性が高くなり過ぎるため、量産的に製造することは難しく好ましくない。アクリル系粘着性高分子体の主成分は、通常、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と極性基含有単量体との共重合体、例えば、アクリル酸2−エチルヘキシルとアクリル酸との共重合体、アクリル酸イソオクチルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとの共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシルとアクリル酸とメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとの三元共重合体等が使用されるが、特にこれらに限定されるものではない。なお、粘着性高分子体を溶解させる有機溶剤としては、酢酸エチル、トルエン、キシレン等が用いられる。
【0013】
本発明において、硬化性樹脂は、多官能アクリル樹脂としており、その官能基は5個以上15個以下としているが、5個以上10個以下にするのが好ましい。前記多官能アクリル樹脂の官能基が5個未満であると、効果的な網目構造が十分発現せず、加熱後の粘着力が下がらないので好ましくなく、多官能アクリル樹脂の官能基が15個より多いと硬化性樹脂の主鎖の分子量が大きくなることで、動き難くなり、逆に反応性が落ちてしまうので好ましくない。なお、多官能アクリル樹脂の種類としては、エポキシアクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、ポリエーテルアクリル樹脂、ポリエステルアクリル樹脂が使用されるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0014】
本発明において、重合開始剤は、加熱によりラジカル活性種を発生させる化合物が好ましく、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等の有機系のアゾ系化合物等が挙げられる。このような重合開始剤の例としては、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2メチルプロピオンアミド)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)とポリエチレングリコールの重縮合物、アゾジカルボンアミド等のアゾ系化合物、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等のフッ化アルカン化合物、パラトルエンスルフォニルヒドラジド、ジフェニルスルフォン−3,3’−ジスルフォニルヒドラジド、アリルビススルフォニルヒドラジド等のヒドラジン系化合物、O−トルイレンスルフォニルセミカルバジド等のセミカルバジド系化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のN−ニトロソ系化合物等が挙げられる。
【0015】
本発明において、重合開始剤の活性化エネルギー(ΔE)は1.25×105J/mol以上としているが、粘着シート組成物の反応速度を主体的に支配する成分は、硬化性樹脂とアゾ重合開始剤である。上記のように選択された5官能基以上の官能基数を有する硬化性樹脂では、アゾ系重合開始剤が、本発明の新規粘着シート製品の性能上の特徴である、低温度(室温付近:使用温度、保存温度)での極めて小さい反応速度と、高温度(要求された剥離温度)での極めて大きな反応速度を兼ね備える必要があるから、この点からアゾ系重合開始剤・種が選択されている。製品性能の反応速度上の特徴を発揮させるためには、アゾ系重合開始剤の選択も重要である。この開始剤が本発明組成物のラジカル反応を開始させるのには、開始剤の活性化エネルギーが直接的に大きく寄与すること、また、上記、製品性能を発揮させている反応の安定性も同時に重要である。そのために、本発明者は、アゾ系化合物の大量数の実験検討を行い、反応の安定性(穏やかさ)をも加味して、本発明に使用するアゾ系重合開始剤の活性化エネルギーを選択してきている。このため、活性化エネルギーが、1.25×105J/mol以上のアゾ系開始剤を使用することが肝要であることを確認しているし、この値は、アゾ系開始剤の化学構造が対称形でなくても、また、高分子化された化合物でも有効であることが確認されている。また、1.50×105J/molのアゾ開始剤を使用しても満足すべき結果をえている。1.25×105J/mol未満のアゾ開始剤は、高温度・反応の安定性を欠き、加熱後の粘着力が下がらなかったり、粘着剤の糊残りが発生したり、前記低温保存、使用温度での寿命時間が短い等の製品性能上の欠点を産み出している。
【0016】
本発明において、架橋剤は、一般にアクリル系粘着剤の架橋剤として使用されるイソシアネート化合物系架橋剤、エポキシ化合物系架橋剤、アルミキレート化合物系架橋剤等が使用される。例えば、綜研化学社より販売されているポリイソシアネート架橋剤(商品名:L−45など)、エポキシ化合物系架橋剤(商品名:E−AXなど)、アルミキレート化合物系架橋剤(商品名:M−5Aなど)等が使用できるが、ここに挙げたものに限定されるものではない。
【0017】
本発明における粘着剤組成物は、通常、アクリル樹脂などに使用されるロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂等の粘着性付与剤を添加しても良い。
【0018】
また、本発明における粘着剤組成物は、通常使用される触媒や反応促進剤(加速剤)を添加しても良い。
【0019】
さらに、本発明における粘着剤組成物には、増粘剤、チキソトロピー剤、充填剤等の通常使用される配合剤を添加しても良い。上記増粘剤としては、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム等が挙げられ、上記チキソトロピー剤としては、超微粉シリカ(日本アエロジル社製のアエロジル300など)等が挙げられる。上記充填剤としては、炭酸カルシウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、αーアルミナ、水和アルミナ等の無機粒子、ナイロンビーズ、アクリルビーズ、シリコーンビーズ等の有機粒子、塩化ビニリデンバルーン等の有機中空粒子、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ガラス等の有機又は無機系短繊維等が挙げられる。これらは、粘着シートの応力緩和性などの機械的特性等を改善するために加えられ、熱硬化性を阻害しない範囲で使用される。
【0020】
また、本発明における粘着剤組成物は、液状であり、ロールコーターやダイコーターなどによりシート基材上に塗工され、加熱乾燥して、1〜100μm厚に粘着剤組成物層を形成しているが、5〜50μm厚とするのが好ましく、10〜50μm厚とするのがより好ましい。この場合、前記粘着剤層の厚さが、1μmよりも小さいと、初期で十分な粘着力を得ることが認められず、また、前記粘着剤層の厚さが、100μmよりも大きいと、特性上、特に問題はないが、粘着シートの作製プロセス上、好ましくない。
【0021】
本発明において、シート基材は、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム、織布、不織布、紙、金属箔、発泡シートなどが使用され、形状は帯状とするなど任意であり、厚さは5〜500μmにしているが、10〜200μmにするのが好ましく、10〜100μmにするのがより好ましい。この場合、前記シート基材の厚さが、5μmよりも小さく、500μmより大きいいと特性上問題は無いが、粘着シートの作成プロセス上、好ましくない。
【0022】
次に、本発明の加熱剥離型粘着シートにおける熱重合硬化反応の特徴について述べる。
【0023】
本発明においては、メタクリル系又はアクリル系粘着性高分子体自体にも反応性の官能基が付加しており、加熱することにより、多官能アクリル樹脂どうし、粘着性高分子体どうし、多官能アクリル樹脂と粘着性高分子体がラジカル反応することにより、粘着剤が硬化し、剥離可能となる。さらに、被着体と粘着剤組成物表面との間に不均一な凹凸が発生するため、より短時間で剥離することが可能となる。
【0024】
すなわち、本発明の構成に従うと、主には硬化性樹脂成分で希釈された架橋粘着性高分子体が粘着性能を担い、逆に粘着剤高分子成分で希釈された多官能硬化性樹脂モノマーが開始剤の熱硬化によって重合硬化して、剥離作用を担っていると考えられる。短時間剥離を達成するには、一般的には種々な原因が考えられるが、本発明者は、本発明品の重合硬化過程で見られるミクロ不均一重合硬化反応プロセスが、短時間剥離作用を大きく助成していることを実験研究の結果見出している。被着体との界面に均一重合体を生じさせる静的均一重合に比べ、本発明の粘着剤層重合物は特に、図1に示したように、ラズベリー構造のモルフォロジーを有するミクロ不均一重合物を生成して、反応過程がミクロ不均一に進行している証拠を示している。また被着体の熱伝導性或いは粘着剤層の被着体への接着の均一、不均一などによって変動するが、この界面に生じた均一重合層とその表層中に凹体的にラズベリー層とが点在した不均一層も自ら、表面接触面積を減少させ、短時間剥離作用を助成することも確認している。また多官能硬化性樹脂モノマーの反応プロセスは、鎖成長反応の後期には、未反応基間の架橋反応が台頭してくる結果、架橋反応の活性化エネルギーは鎖成長反応のそれに比べて格別に大きいから、上記ミクロ不均一重合層の一因となりうることも同時に確認している。別々に論じてきたが、粘着性架橋高分子体成分の未架橋基が反応性多官能硬化重合樹脂の未架橋基との架橋反応で連結された場合も短時間剥離の助成となる。このミクロ不均一重合のもう一つの効果として、被着体表面への粘着層痕等転写残存も極めて少なくかつ寸法も小さいことが確認できている。
【0025】
さらに、本発明の加熱剥離型粘着シートは、次のような特徴を同時に発揮している。これは重合開始剤の特徴によるところが大きい。
【0026】
本発明の重合開始剤には、高温反応性のアゾ化合物が使用される。アゾ化合物の高温反応性と低温安定性の目安的尺度として適切な溶剤に溶解された状態での10時間半減期値が示されている。本発明の半減期値は該粘着剤組成物(乾燥後の)中で該アゾ系化合物の半減期であるから、本発明者は、実験研究の結果、前記溶剤中の10時間半減期を極めて大幅に改良することを見出している。限定的表現ではないが、この原因は架橋剤による粘着性高分子量の高分子架橋体と高分子量の硬化多官能樹脂との混合物中に該開始剤が存在する状況にあるから、これらの隣接高分子の障害効果により、該アゾ化合物の分解反応速度が大幅に低下されて、本発明品の保存(保管)寿命が1−6月の単位となる。また、前記10時間半減期値と本発明品の保存寿命値の関係は、該組成物構成成分によって大きく影響されるから、単純な比例関係にはなく、実験的に確立しなければならない。
【0027】
また、本発明の加熱剥離型粘着シートは、別の特徴として、加熱することにより、多官能アクリル樹脂どうし、粘着性高分子体どうし、多官能アクリル樹脂と粘着性高分子体がラジカル反応するため、分子量の小さい樹脂及び粘着剤が非常に少ないことを実験的に確認した。そのため、粘着剤の糊残りが少ない。
【0028】
本発明において、剥離要求時に加える加熱条件は、反応時間の短い高温度で加熱して、反応を加速させて行うし、対照的に、粘着シートの保存、使用温度は室温に近い、40℃以下の温度で行うのが普通である。このため、用途、使用条件により異なるが、加熱・剥離処理温度は、70〜200℃、望ましくは、100〜170℃、さらに望ましくは、120〜160℃である。この温度を低温側にずらして設計、設定すると保存寿命を短くすることとなり、高温側にずらすと、時間にもよるが、構成有機材料面の過熱劣化が現れてくる。また、この処理時間は10分以下が望ましく、さらには0.5分ないし3分が望ましい。この条件の達成のためには、実施例に示した組成物、構成種の選択の他に、配合量の選択、添加物を用いることなどの調整が必要である。
【0029】
本発明の加熱剥離型粘着シートは、このようにして得られ、電気・電子部品等の被着体に貼り合わせた場合、優れた初期粘着性と、加熱時の易剥離性を示す。
【実施例】
【0030】
本発明の加熱剥離型粘着シートについて、実施例によって具体的に説明する。但し、本発明の加熱剥離型粘着シートはこれに限定されるものではない。
【0031】
[実施例1〜25]
表1−1〜表1−6に示した重量平均分子量のブチルアクリレートを主成分とするアクリル系粘着性高分子体で官能基としてビニル基を付加又は付加せず、酢酸エチルに溶解させた固形分20重量%の粘着剤100重量部に、表1−1〜表1−6に示した各重量部の硬化性樹脂、重合開始剤及び架橋剤を配合した。そして、コロナ処理が施された100μm厚のポリエステル又はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、乾燥後の厚みが表1−1〜表1−6に示したように1〜50μmとなるように塗布し、60℃で2分間乾燥して加熱剥離型粘着シートを得た。なお、この加熱剥離型粘着シートは、40℃で3日間放置し、エージングさせた。
【0032】
続いて、この加熱剥離型粘着シートのステンレス板に対する初期粘着力(180°ピール力)を測定したところ、表2−1、表2−2に示す結果となった。
【0033】
次に上記加熱剥離型粘着シートの粘着面にSUS430BA板を貼り付けた状態のまま、150℃で30秒間、150℃で60秒間又は150℃で90秒間、鉄板で加熱処理を行い、冷却後粘着力が低下したことを確認した。
【0034】
この加熱剥離型粘着シートをステンレス板に貼り合わせた後、上記ステンレス板を150℃で30秒間、熱板で加熱し、上記ステンレス板に対する上記加熱剥離型粘着シートの粘着力を測定したところ、表2−1、表2−2に示す結果となり、粘着剤表面に凹凸が見られ、被着体より容易に剥離することができた。
【0035】
また、剥離後の被着体表面をカラー3Dレーザ顕微鏡VK−9710(キーエンス社製)により観察したところ、被着体面には粘着剤残りが認められず、優れた加熱剥離性を示していることを確認した。
【0036】
保存(保管)寿命を確認したところ、実施例21を除いて40℃において3ヶ月以上良好であることを確認した。なお、実施例21においても、30℃で十分な保存寿命が確認された。
【0037】
保存(保管)寿命の確認方法:
1)各温度(150℃、120℃、90℃、60℃、40℃、30℃)で時間毎に粘着力を測定する。ブランクに対して各温度の粘着力が50%のところをプロットし近似曲線を引いて、30℃ないし40℃での保存(保管)寿命を確認した。
(粘着力測定方法:JIS−Z−0237)
2)ビニル基のFT−IRピーク1407cm−1(FT−IR:島津製作所製 FT−IR8400)の吸光度を測定し、各温度(150℃、120℃、90℃、60℃、40℃、30℃)で時間毎のビニル基の強度を測定する。ブランクに対して各温度でビニル基強度50%のところをプロットし近似曲線を引いて、30℃ないし40℃での保存(保管)寿命を確認した(参照文献:赤外吸光図説総覧、発行所:三共出版株式会社、著者:堀口博)。
【0038】
上記の2つの方法により、保存(保管)寿命を確認した。
【0039】
以上の結果から、本発明の加熱剥離型粘着シートは、良好な初期粘着性と保存(保管)寿命及び加熱後の易剥離性を兼ね備えており、加熱剥離型粘着シートとしての機能を兼ね備えていることが確認できた。
【0040】
【表1−1】

【0041】
【表1−2】

【0042】
【表1−3】

【0043】
【表1−4】

【0044】
【表1−5】

【0045】
【表1−6】

【0046】
【表2−1】

【0047】
【表2−2】

【0048】
[比較例1〜6]
表3に示した重量平均分子量のブチルアクリレートを主成分とするアクリル系粘着性高分子体で官能基としてビニル基を付加し、酢酸エチルに溶解させた固形分20重量%の粘着剤100重量部に、表3に示した各重量部の硬化性樹脂及び重合開始剤を配合し、ポリエステルフィルム上に乾燥後の厚みが表3に示したように3〜20μmとなるように塗布、乾燥して加熱剥離型粘着シートを得た。次に上記の加熱剥離型粘着シートの粘着面にSUS430BA板を貼り付けた状態のまま、150℃で90秒間加熱処理を行い、冷却後粘着力が低下したことを確認した。
【0049】
この粘着剤組成物をコロナ剥離処理が施された100μm厚のポリエステルフィルム上にコーターにより20μm厚に塗工して、60℃で2分間加熱乾燥し、120μm厚の加熱剥離型粘着シートを得た。なお、この加熱剥離型粘着シートを40℃で3日間放置し、エージングさせた。
【0050】
続いて、この加熱剥離型粘着シートのステンレス板に対する初期粘着力(180°ピール力)を測定したところ、表4に示す結果となった。
【0051】
この加熱剥離型粘着シートをステンレス板に貼り合わせた後、上記ステンレス板を150℃で30秒間、熱板で加熱し、上記ステンレス板に対する上記加熱剥離型粘着シートの粘着力を測定したところ、表4に示す結果となり、粘着力低下が殆ど見られなかった。
【0052】
さらに、比較例1〜6においても、本発明の実施例1〜24と同様に保管(保存)寿命を確認したところ、表4に示す結果を得た。比較例1〜6では、本発明の実施例1〜24と比較して粘着力低下が殆ど見られないが、粘着力低下が見られることには変わりがないので、その粘着力低下が保持される期間を保管(保存)寿命とした。
【0053】
なお、比較例1〜6における保管(保存)寿命の確認は、本発明の実施例1〜24との比較のために行ったが、比較例1〜6は加熱剥離型粘着シートとしての機能を兼ね備えていないので、余り意味のないものである。
【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の加熱剥離型粘着シートの粘着剤組成物層の熱重合硬化状態を示す顕微鏡写真(3000倍)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート基材の片面又は両面に、粘着性高分子体、硬化性樹脂、重合開始剤及び架橋剤を主成分とする粘着剤組成物層を形成したものとしており、保存時及び貼付け時には粘着性能を保有しており、剥離要求時には加熱することにより、熱重合硬化して易剥離するものとしたことを特徴とする加熱剥離型粘着シート。
【請求項2】
前記粘着性高分子体がメタクリル系又はアクリル系粘着性高分子体であることを特徴とする請求項1記載の加熱剥離型粘着シート。
【請求項3】
前記硬化性樹脂が多官能樹脂であることを特徴とする請求項1記載の加熱剥離型粘着シート。
【請求項4】
前記重合開始剤が、剥離要求時における粘着剤組成物の熱ラジカル重合を開始可能なアゾ系開始剤であることを特徴とする請求項1記載の加熱剥離型粘着シート。
【請求項5】
前記架橋剤がイソシアネート系架橋剤であることを特徴とする請求項1記載の加熱剥離型粘着シート。
【請求項6】
前記多官能樹脂が5官能以上15官能以下のラジカル重合可能樹脂であることを特徴とする請求項3記載の加熱剥離型粘着シート。
【請求項7】
前記アゾ系開始剤のアゾ基当たりの活性化エネルギー(ΔE)が1.25×105J/mol以上であることを特徴とする請求項4記載の加熱剥離型粘着シート。

【図1】
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【公開番号】特開2009−161620(P2009−161620A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340676(P2007−340676)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(592182791)株式会社スミロン (10)
【Fターム(参考)】