説明

加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子とその製造方法及び熱可塑性樹脂発泡成形体とその製造方法

【課題】リサイクル樹脂などの発泡剤を含まない樹脂を混合して押出発泡した場合でも高発泡倍数の発泡成形体が得られ、また押出機内で食い込み変動が生じ難い加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤が6〜20質量%含有された加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子。樹脂供給装置内で溶融された熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を得る溶融押出法によって、前記発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡成形体などの熱可塑性樹脂を加熱溶融し発泡させて発泡成形体を製造する押出成形、射出成形、混練成形、カレンダー成形等に好適に使用可能であり、発泡倍数が高く、発泡倍数のバラツキも少ない発泡成形体を得ることが可能な加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子とその製造方法及び熱可塑性樹脂発泡成形体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の押出成形方法では、原料となる熱可塑性樹脂を押出機に供給して加熱溶融させ、その溶融樹脂に高圧ガスを注入した後、押出発泡成形を行っており、その製造設備には高圧ガス注入設備が必要であった。
また、それとは別の押出成形方法として、懸濁重合法又はシード重合法によってポリスチレン系樹脂粒子を製造し、その後発泡剤を含浸させる所謂重合含浸法によって製造された発泡性熱可塑性樹脂粒子(発泡ビーズとも称される)を押出機に供給し、加熱溶融後に押し出すことで、該樹脂粒子に含まれる発泡剤により発泡させて押出発泡成形を行う方法も行われている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
特許文献1には、発泡剤と60℃以上押出成形温度以下の沸点を有しSp値が7.2〜9.3である炭化水素を含有するスチレン系樹脂を押出シートの内外両面とも気泡が破壊されない温度でサーキュラーダイより押出した後、これを挟圧して内面を融着させる発泡スチレン系樹脂シートの製造方法が開示されている。
また特許文献2には、重量平均分子量が3.65×10以上であるポリスチレンを膨張剤とともにシート状に溶融押出成形し、冷却して得た密度が0.04〜0.2g/cmの発泡スチレンシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭54−53172号公報
【特許文献2】特開昭59−147028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に開示されたように、発泡性熱可塑性樹脂粒子(発泡ビーズ)を押出機に供給し、加熱溶融後に押し出すことで、該樹脂粒子に含まれる発泡剤により発泡させて押出発泡成形を行う方法では、これまで重合含浸法によって製造された真球に近い球状の発泡性熱可塑性樹脂粒子(以下、重合含浸法ビーズと記す。)が用いられていた。しかし、重合含浸法ビーズは、該ビーズを加熱して所定の発泡倍数に予備発泡し、得られた予備発泡粒子を型内発泡成形して発泡成形体を製造するために製造されたものであり、重合含浸法ビーズに、リサイクル樹脂などの発泡剤を含まない樹脂を混合して押出発泡した場合には、高発泡倍数の発泡成形体が得られないという問題があった。
【0006】
また、前記重合含浸法ビーズは、真球に近い球状をなしており、これを押出機のホッパーに供給して押出発泡を継続して行う場合、押出機内で食い込み変動が生じ易く、発泡成形体の厚みが変動したり発泡バラツキが生じ易いという問題があった。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、リサイクル樹脂などの発泡剤を含まない樹脂を混合して押出発泡した場合でも高発泡倍数の発泡成形体が得られ、また押出機内で食い込み変動が生じ難い加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤が6〜20質量%含有されたことを特徴とする加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を提供する。
【0009】
本発明の加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子において、樹脂供給装置内で溶融された熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を得る溶融押出法によって製造されたものであることが好ましい。
【0010】
本発明の加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子において、前記発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子が略球状をなしていることが好ましい。
【0011】
また本発明は、前記発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子と、発泡剤含有量が有効発泡限界値未満である非発泡性熱可塑性樹脂粒子とが混合されたことを特徴とする加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を提供する。
【0012】
前記非発泡性熱可塑性樹脂粒子は、非球形をなしていることが好ましい。
【0013】
また本発明は、樹脂供給装置内で溶融された熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を得る溶融押出法によって、熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤が6〜20質量%含有された発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を製造することを特徴とする加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0014】
本発明の加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、得られる発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子が略球状をなしていることが好ましい。
【0015】
本発明の加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、発泡剤が6〜20質量%含有された発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を製造した後、この発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子に、発泡剤含有量が有効発泡限界値未満である非発泡性熱可塑性樹脂粒子を混合する工程を含んでいてもよい。
【0016】
この加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、前記非発泡性熱可塑性樹脂粒子は、非球形をなしていることが好ましい。
【0017】
また本発明は、前記加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を押出機に供給し、加熱溶融して押出発泡成形体を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法を提供する。
【0018】
また本発明は、前記加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を射出成形機に供給し、加熱溶融して射出発泡成形体を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法を提供する。
【0019】
また本発明は、前記熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法によって製造された熱可塑性樹脂発泡成形体を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子は、熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤が6〜20質量%含有されたものなので、リサイクル樹脂などの発泡剤を含まない樹脂を混合して押出発泡した場合であっても高発泡倍数の発泡成形体を製造することができる。
また、溶融押出法によって得られた発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子は、従来の重合含浸法によって得られた真球に近い球状の発泡性熱可塑性樹脂粒子と比べ、加熱溶融発泡成形に用いる押出機内で食い込み変動が生じ難く、厚みや発泡度合が均一な発泡成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の製造方法に用いられる製造装置の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子)
本発明の加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子は、熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤が6〜20質量%含有されたことを特徴としている。
本発明の好適な実施形態において、加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子は、樹脂供給装置内で溶融された熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を得る溶融押出法によって製造されたものであることが好ましい。
【0023】
本発明において、熱可塑性樹脂の種類は限定されないが、例えばポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等を単独もしくは2種類以上混合して使用することができる。さらに樹脂製品として一旦使用されてから回収して得られた熱可塑性樹脂の回収樹脂を使用することもできる。特に非晶性であるポリスチレン(GPPS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)などのポリスチレン系樹脂が好適に用いられる。
【0024】
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられ、スチレンを50質量%以上含有するポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。また、前記ポリスチレン系樹脂としては、前記スチレンモノマーを主成分とする、前記スチレン系モノマーとこのスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体であってもよく、このようなビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性モノマーなどが挙げられる。
【0025】
また、ポリスチレン系樹脂が主成分であれば、他の樹脂を添加してもよく、添加する樹脂としては、例えば、発泡成形体の耐衝撃性を向上させるために、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三次元共重合体などのジエン系のゴム状重合体を添加したゴム変性ポリスチレン系樹脂、いわゆるハイインパクトポリスチレンが挙げられる。あるいは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などが挙げられる。また、原料となるポリスチレン系樹脂としては、市販されている通常のポリスチレン系樹脂、懸濁重合法などの方法で新たに作製したポリスチレン系樹脂などの、リサイクル原料でないポリスチレン系樹脂(バージンポリスチレン)を使用できる他、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体を再生処理して得られたリサイクル原料を使用することができる。このリサイクル原料としては、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体、例えば、魚箱、家電緩衝材、食品包装用トレーなどを回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したリサイクル原料を用いることができる。また、使用することができるリサイクル原料は、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体を再生処理して得られたもの以外にも、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど)や事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンターなど)から分別回収された非発泡のポリスチレン系樹脂成形体を粉砕し、溶融混練してリペレットしたものを用いることができる。
【0026】
本発明の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子に用いられる発泡剤は、炭素数6以下の炭化水素、例えばプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素が好適であり、更には、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン単独もしくはこれらの混合物がより好適である。
【0027】
この発泡剤の含有量は、発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子中に6〜20質量%の範囲であり、7〜18質量%の範囲がより好ましく、8〜15質量%の範囲がさらに好ましい。
発泡剤の含有量が前記範囲未満であると、リサイクル樹脂などの発泡剤を含まない樹脂を混合して押出発泡した場合に発泡力が弱くなって高発泡倍数の発泡成形体が得られなくなる。発泡剤の含有量が前記範囲を超えると、樹脂中に発泡剤が全て含有されず、所定の発泡剤含有樹脂粒子を得ることが難しくなる。
一般に、重合含浸法ビーズは、真球に近い球状をなしており、喰い込み不良現象が発生しやすい。この原因は、スクリュー回転によってバレルとスクリューの間を樹脂が移動するためには、樹脂とバレル内壁との摩擦により樹脂の移動がなされるが、真球に近い形状ではあたかもベアリングボールのように作用し、樹脂とバレル間の摩擦が少なくなるため、樹脂の移動がスムーズに行われず、喰い込み不良が生じる。
しかし、本発明の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子は発泡剤の含有量が6質量%以上であるので、発泡剤の可塑化効果によって発泡剤含有樹脂粒子のガラス転移点が低下し、より低い温度で樹脂粒子の溶融が生じるので、樹脂とバレル間の摩擦が大きくなり、樹脂の移動がスムーズに行われ、食込み不良が生じ難くなる。
【0028】
本発明の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子において、前記熱可塑性樹脂には、発泡核剤として、タルク、珪酸カルシウム、合成あるいは天然に産出される二酸化ケイ素、エチレンビスステアリン酸アミド、メタクリル酸エステル系共重合体等の無機又は有機微粉末を添加することが望ましい。前記発泡核剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し1.5質量部以下が好ましく、0.1〜1.0質量部の範囲がより好ましい。
【0029】
本発明の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子において、前記熱可塑性樹脂には、発泡剤及び発泡核剤の他に、得られる発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の物性を損なわない範囲内において、結合防止剤、気泡調整剤、架橋剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤等の添加剤を添加してもよい。
【0030】
本発明の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の形状は、真球状であっても略球状であってもよく、特に限定されないが、卵形のような多少歪んだ略球状であることが好ましい。粒子形状が略球状であれば、取扱いが容易であり、加熱溶融発泡成形に用いる押出機内で食い込み変動が生じ難く、厚みや発泡度合が均一な発泡成形体を製造することができる。
また、本発明の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の粒径は、特に限定されないが、押出機や射出成形機内に供給する際の粒子流れや取扱い性が良好になるような粒径とすることが望ましく、通常は0.5〜20mmの範囲が好ましく、1〜15mmの範囲がより好ましい。
【0031】
本発明の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子は、単独で押出発泡成形や射出成形などの加熱溶融発泡成形用の樹脂材料として用いることもできるし、本発明の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子と、リサイクル樹脂などの発泡剤含有量が有効発泡限界値未満である非発泡性熱可塑性樹脂粒子とを混合して加熱溶融発泡成形用の樹脂材料として用いることもできる。なお「発泡剤含有量が有効発泡限界値未満である」とは、その非発泡性熱可塑性樹脂粒子に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤或いは別の揮発性発泡剤や反応形発泡剤などの発泡成分が全く含まれていないか、若しくは前記発泡成分を微量含むものの、それを加熱しても全く発泡しないか又は非常に低い発泡倍数の発泡成形体しか得られないような樹脂粒子のことをいう。
【0032】
本発明の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子と非発泡性熱可塑性樹脂粒子とを混合して用いる場合、その混合比率は特に限定されず、例えば、本発明の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子100質量部に対し、非発泡性熱可塑性樹脂粒子1〜1000質量部の範囲で混合することが好ましい。本発明の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子は、発泡剤を多く含有しているため、リサイクル樹脂などの非発泡性熱可塑性樹脂粒子を多量に添加した場合でも十分な発泡力が得られ、高発泡倍数の発泡成形体を製造することができる。これによってリサイクル樹脂の再利用が容易になり、低コストの製品を提供することができるようになる。
【0033】
前記非発泡性熱可塑性樹脂粒子の粒子形状は、非球状であることが好ましく、例えば円柱状、角柱状、饅頭形、厚板状又は不定形の粒子であることがより好ましい。前記非発泡性熱可塑性樹脂粒子の粒子形状を非球状とすることによって、本発明の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子と混合して加熱溶融発泡成形に用いる場合に、押出機内での食い込み変動が一層生じ難くなり、厚みや発泡度合が均一な発泡成形体を製造することができる。
前記非発泡性熱可塑性樹脂粒子の粒径は、特に限定されないが、押出機や射出成形機内に供給する際の粒子流れや取扱い性が良好になるような粒径とすることが望ましく、通常は0.5〜10mmの範囲が好ましく、1〜5mmの範囲がより好ましい。
【0034】
本発明の加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子は、熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤が6〜20質量%含有されたものなので、リサイクル樹脂などの発泡剤を含まない樹脂を混合して押出発泡した場合であっても高発泡倍数の発泡成形体を製造することができる。
また、溶融押出法によって得られた発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子は、従来の重合含浸法によって得られた真球に近い球状の発泡性熱可塑性樹脂粒子と比べ、加熱溶融発泡成形に用いる押出機内で食い込み変動が生じ難く、厚みや発泡度合が均一な発泡成形体を製造することができる。
【0035】
(発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の製造方法)
以下、図面を参照して本発明に係る発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の製造方法の実施形態を説明する。
本発明の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の製造方法は、樹脂供給装置内で溶融された熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を得る溶融押出法によって、熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤が6〜20質量%含有された発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を製造することを特徴とする。
【0036】
図1は、本発明の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の製造方法に用いられる製造装置の一例を示す構成図である。本例の製造装置は、樹脂供給装置としての押出機1と、押出機1の先端に取り付けられ多数の小孔を有するダイ2と、押出機1内に樹脂原料等を投入する原料供給ホッパー3と、押出機1内の溶融樹脂に発泡剤供給口5を通して発泡剤を圧入する高圧ポンプ4と、ダイ2の小孔が穿設された樹脂吐出面に冷却水を接触させるように設けられ、室内に冷却水が循環供給されるカッティング室7と、ダイ2の小孔から押し出された樹脂を切断できるようにカッティング室7内に回転可能に設けられたカッター6と、カッティング室7から冷却水の流れに同伴して運ばれる発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を冷却水と分離すると共に脱水乾燥して発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を得る固液分離機能付き脱水乾燥機10と、固液分離機能付き脱水乾燥機10にて分離された冷却水を溜める水槽8と、この水槽8内の冷却水をカッティング室7に送る高圧ポンプ9と、固液分離機能付き脱水乾燥機10にて脱水乾燥された発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を貯留する貯留容器11とを備えて構成されている。
【0037】
なお、押出機1としては、スクリュを用いる押出機またはスクリュを用いない押出機のいずれも用いることができる。スクリュを用いる押出機としては、例えば、単軸式押出機、多軸式押出機、ベント式押出機、タンデム式押出機などが挙げられる。スクリュを用いない押出機としては、例えば、プランジャ式押出機、ギアポンプ式押出機などが挙げられる。また、いずれの押出機もスタティックミキサーを用いることができる。これらの押出機のうち、生産性の面からスクリュを用いた押出機が好ましい。また、カッター6を収容したカッティング室7も、樹脂の溶融押出による造粒方法において用いられている従来周知のものを用いることができる。
【0038】
図1に示す製造装置を用い、発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を製造するには、まず、原料のポリスチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂、発泡核剤、必要に応じて添加される難燃剤などの所望の添加剤を秤量し、原料供給ホッパー3から押出機1内に投入する。原料の熱可塑性樹脂は、ペレット状や顆粒状にして事前に良く混合してから1つの原料供給ホッパーから投入してもよいし、あるいは例えば複数のロットを用いる場合は各ロットごとに供給量を調整した複数の原料供給ホッパーから投入し、押出機内でそれらを混合してもよい。また、複数のロットのリサイクル原料を組み合わせて使用する場合には、複数のロットの原料を事前に良く混合し、磁気選別や篩分け、比重選別、送風選別などの適当な選別手段により異物を除去しておくことが好ましい。
【0039】
押出機1内に熱可塑性樹脂、及び必要に応じて発泡核剤などの添加剤を供給後、樹脂を加熱溶融し、その溶融樹脂をダイ2側に移送しながら、発泡剤供給口5から高圧ポンプ4によって発泡剤を圧入して溶融樹脂に発泡剤を混合し、押出機1内に必要に応じて設けられる異物除去用のスクリーンを通して、溶融物をさらに混練しながら先端側に移動させ、発泡剤を添加した溶融物を押出機1の先端に付設したダイ2の小孔から押し出す。
【0040】
ダイ2の小孔が穿設された樹脂吐出面は、室内に冷却水が循環供給されるカッティング室7内に配置され、且つカッティング室7内には、小孔から押し出された樹脂を切断できるようにカッター6が回転可能に設けられている。発泡剤添加済みの溶融物を押出機1の先端に付設したダイ2の小孔から押し出すと、溶融物は粒状に切断され、冷却水と接触して急冷され、略球状の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子となる。
【0041】
形成された発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子は、カッティング室7から冷却水の流れに同伴して固液分離機能付き脱水乾燥機10に運ばれ、ここで発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を冷却水と分離すると共に脱水乾燥する。乾燥された発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子は、貯留容器11に貯留される。
【0042】
得られた発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子には、必要に応じてジンクステアレート等の粉末状金属石鹸類を表面に塗布してもよい。これにより発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子同士のブロッキングを防止することができ、該発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の取り扱い、特に、加熱溶融発泡成形を実施する際に用いる押出機や射出成形機への樹脂粒子の供給をスムーズに行うことがができる。
【0043】
本製造方法によって、熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤が6〜20質量%含有された本発明に係る加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子が得られる。
本製造方法によれば、前記発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を効率よく得ることができ、加熱溶融発泡成形に用いる押出機内で食い込み変動が生じ難い略球状の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を得ることができる。
【0044】
(加熱溶融発泡成形)
本発明に係る前記発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子は、単独で、或いは前記非発泡性熱可塑性樹脂粒子と混合した状態で、押出発泡法や射出成形法などの加熱溶融発泡成形用の樹脂材料として用いられる。
【0045】
押出発泡法や射出成形法などの加熱溶融発泡成形法に用いられる装置及び製造工程は、従来周知の装置及び製造工程を用いることができる。例えば、押出発泡法では、前記樹脂材料を押出機に供給し、押出機内で加熱溶融し、発泡剤含有溶融樹脂として押出機先端のダイから押出発泡させ、冷却することによって熱可塑性樹脂発泡シートを製造する。また射出成形法では、装置内で加熱溶融させた発泡剤含有溶融樹脂を所望形状のキャビティを有する成形型のキャビティ内に射出し発泡成形して所望形状の発泡成形体を製造する。
【0046】
前記加熱溶融発泡成形によって製造される発泡成形体の密度及び発泡倍数は、特に限定されないが、通常は密度が0.5g/cm以下(発泡倍数2倍以上)とされ、密度が0.020〜0.5g/cm(発泡倍数2〜50倍)の範囲内とするのが好ましい。
【0047】
なお、本発明において発泡成形体の密度及び発泡倍数とは、JIS K7122:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定した発泡成形体密度のことである。
<発泡成形体の密度>
50cm以上(半硬質および軟質材料の場合は100cm以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出した。
密度(g/cm)=試験片質量(g)/試験片体積(cm
なお、前記測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃×50%±5%または27℃±2℃×65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
【0048】
<発泡成形体の発泡倍数>
また、発泡成形体の発泡倍数は次式により算出される数値である。
発泡倍数=1/密度(g/cm
【実施例】
【0049】
[実施例1]
(発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の作製)
熱可塑性樹脂としてポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製、商品名「HRM10N」)を口径90mmの単軸押出機に、時間当たり160kgで連続供給した。押出機内温度としては、最高温度210℃に設定し、樹脂を溶融させた後、発泡剤として樹脂分中8質量%のペンタン(イソペンタン:ノルマルペンタン=20:80(質量比))を押出機の途中から圧入した。押出機内で樹脂と発泡剤を混練するとともに冷却し、押出機先端部での樹脂温度を170℃、ダイの樹脂導入部の圧力を15MPaに保持して、直径0.7mmでランド長さが4mmの小孔が80個配置されたダイより、このダイの吐出側に連結され30℃の水が循環するカッティング室内に、発泡剤含有溶融樹脂を押し出すと同時に、円周方向に10枚の刃を有する高速回転カッターで回転数2500rpmにて押出物を切断した。切断した粒子を循環水で冷却しながら、粒子分離器に搬送し、粒子を循環水と分離した。さらに、捕集した粒子を脱水・乾燥して発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を得た。得られた発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子は、変形、ヒゲ等の発生もなく、略球状であり、平均粒子径は約1.6mmであった。
【0050】
<発泡剤含有量の測定>
実施例(及び比較例)で得られた発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を15℃の保冷庫に72時間に亘って放置した後、発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子中の発泡剤量を、ガスクロマトグラフィーを用い、下記の条件で測定した。
ガスクロマトグラフィー(GC):島津製作所社製GC−14B
・検出器:FID・加熱炉:島津製作所社製PYR−1A
・カラム:信和化工社製(直径3mm×長さ3m)液相1スクワラン25%、
担体lShimalite60〜80NAW
・加熱炉温度:180℃
・カラム温度:70℃
本実施例1の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子中の発泡剤(ペンタン)含有量は8質量%であった。
【0051】
<平均粒子径の測定方法>
試料約50〜100gをロータップ型篩振とう機(飯田製作所社製)を用いて、ふるい目開き16.00mm、目開き13.20mm、目開き11.20mm、目開き9.50mm、目開き8.00mm、目開き6.70mm、目開き5.60mm、目開き4.75mm、目開き4.00mm、目開き3.35mm、目開き2.80mm、目開き2.36mm、目開き2.00mm、目開き1.70mm、目開き1.40mm、目開き1.18mm、目開き1.00mm、目開き0.85mm、目開き0.71mm、目開き0.60mm、目開き0.50mm、目開き0.425mm、目開き0.355mm、目開き0.300mmのJIS標準ふるいで10分間分級し、ふるい網上の試料質量を測定し、その結果から得られた累積質量分布曲線を元にして累積質量が50%となる粒子径(メディアン径)を平均粒子径とした。
【0052】
(押出発泡成形体の作製)
前記の通り得られた発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子100質量部と、粉末タルク40質量%をポリスチレンに練り込んだペレット(東洋スチレン社製「DSM−1401」)1.0質量部とをあらかじめ均一に混合し、この混合物をホッパーに充填し、一段目の口径50mmの単軸押出機と二段目の口径65mmの単軸押出機とを接続管を介し、接続してなるタンデム型押出機の一段目の押出機に連続的に供給した。
そして、混合物を一段目の押出機にて170〜220℃で溶融、混練した後、溶融状態の樹脂を一段目の押出機から接続管を介して二段目の押出機に連続的に供給した。
そして、二段目の押出機にて溶融状態の樹脂を、通水管を有するバレルによって樹脂温度159℃に冷却した後、二段目の押出機の先端に取り付けられたサーキュラ金型(口径φ80mm)から円筒状に押出発泡した。
次に、上記円筒状発泡体の内外周面の夫々に30℃のエアーを吹きつけ、円筒状発泡体の内外周面を冷却した後、通水管を有するマンドレルに連続的に供給して冷却した上で、円筒状発泡体をその円周上の任意の部分において押出方向に連続的に切断し展開することによって、発泡シートを1時間連続的に押し出した。この長尺状の発泡シートを巻き取り機によってロール状に巻き取った。1時間に亘って、厚みが2.2mmで発泡倍数12倍且つ幅が700mmの均一な発泡シートが得られた。
【0053】
<押出機電流値の測定>
押出の安定性の評価は、前述した押出発泡成形体の作製において使用した押出機の電流値の変動幅に基づいて評価した。
1時間の連続運転中の一段目単軸押出機のモーター電流値を記録計に記録し、最大値、最小値を求め、その中心値±5%以内に最大値、最小値が含まれる場合を良好(○)、それ以外を不良(×)として判定した。
本実施例1では一段目単軸押出機のモーター電流値は48.0〜51.0Aであり、押出の安定性判定は良好(○)であった。その結果を表1に記す。
前記押出機電流値の測定、及び押出の安定性の判定は、各実施例及び各比較例で以下同様に実施した。
【0054】
[実施例2]
実施例1で作製したペンタン8質量%を含有する発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子50質量部と、円柱状の再生ポリスチレン樹脂(非発泡性熱可塑性樹脂粒子)50質量部とを混合して押出機に供給したこと以外は、実施例1と同様に行ない発泡シートを押し出した。1時間に亘って、厚みが1.8mmで発泡倍数9倍且つ幅が700mmの均一な発泡シートが得られた。
前記発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の作製及び押出発泡成形体の作製において、実施例1と同様の測定・判定を行った。その結果を表1に記す。
【0055】
[実施例3]
発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の作製において、発泡剤(ペンタン)を12質量%となるように圧入し、ペンタン12質量%の発泡剤含有樹脂粒子を得た。この発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子100質量部を押出機に供給したこと以外は、実施例1と同様に行ない発泡シートを押し出した。1時間に亘って、厚みが2.5mmで発泡倍数14倍且つ幅が700mmの均一な発泡シートが得られた。
前記発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の作製及び押出発泡成形体の作製において、実施例1と同様の測定・判定を行った。その結果を表1に記す。
【0056】
[実施例4]
発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の作製において、発泡剤(ペンタン)を15質量%となるように圧入し、ペンタン15質量%の発泡剤含有樹脂粒子を得た。この発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子20質量部と、円柱状の再生ポリスチレン樹脂(非発泡性熱可塑性樹脂粒子)80質量部とを混合して押出機に供給したこと以外は、実施例1と同様に行ない発泡シートを押し出した。1時間に亘って、厚みが1.5mmで発泡倍数7倍且つ幅が700mmの均一な発泡シートが得られた。
前記発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の作製及び押出発泡成形体の作製において、実施例1と同様の測定・判定を行った。その結果を表1に記す。
【0057】
[実施例5]
(押出発泡成形体の製造)
実施例1で得られたペンタン8質量%を含有する発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子50質量部と、円柱状の再生ポリスチレン樹脂50質量部(非発泡性熱可塑性樹脂粒子)、タルク0.5質量部を押出機に供給し、押出機内で加熱溶融した後、押出樹脂温度120℃にてサーキュラダイに送り、50Φリップ1.7mmのサーキュラダイスリットからダイ先端温度110℃にて、1時間連続的に押出した。押出された管状発泡体をピンチロールで圧着した後切断して、発泡パネルを得た。1時間に亘って、厚みが5.0mmで発泡倍数15倍且つ幅が500mm、長さが600mmの均一な発泡パネルが得られた。
前記発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の作製及び押出発泡成形体の作製において、実施例1と同様の測定・判定を行った。その結果を表1に記す。
【0058】
[実施例6]
(射出発泡成形体の製造)
実施例1で得られたペンタン8質量%を含有する発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子をホッパーに充填し、型締力344kNの射出成形機(日本製鋼所社製J35AD)を用いて、シリンダー温度220℃、金型温度50℃、射出量22cc、射出時間15秒、冷却時間17秒で成形した結果、1時間に亘って、連続的に厚さ2mm、幅40mm、長さ80mmの均一な射出発泡成形体を得た。
前記発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の作製及び射出発泡成形体の作製において、実施例1と同様の測定・判定を行った。その結果を表1に記す。
【0059】
[比較例1]
発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の作製において、発泡剤(ペンタン)を5質量%となるように圧入し、ペンタン5質量%の発泡剤含有樹脂粒子を得たこと以外は、実施例1と同様に行ない発泡シートを押し出した。1時間の間、厚みが1.6〜2.1mmの範囲、発泡倍数8〜10倍の範囲で変化する不均一な発泡シートが得られた。
前記発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の作製及び押出発泡成形体の作製において、実施例1と同様の測定・判定を行った。その結果を表1に記す。
【0060】
[比較例2]
発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の作製において、発泡剤(ペンタン)を23質量%となるように圧入したこと以外は実施例1と同様にして、発泡剤含有樹脂粒子の製造を試みた。しかし、カッティング室に設けた覗き窓から確認したところ、樹脂中に発泡剤が充分に含有されず、発泡剤がダイの小孔より循環水中に気泡となって噴出したため製造を中止した。所定の発泡剤含有樹脂粒子を得ることができなかった。
【0061】
【表1】

【0062】
(実施例、比較例の結果)
本発明に係る実施例1においては、発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子(発泡剤含有量:8質量%)を押出発泡成形する際に、押出機内の食い込み変動が少なくなり、押出機電流値が安定しており、厚みや発泡倍数が均一な発泡シートを製造することができた。
また、実施例2に示したように、本発明に係る実施例1の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子(発泡剤含有量:8質量%)50質量部と、非発泡性熱可塑性樹脂粒子50質量部とを混合して押出発泡成形した場合でも、厚みや発泡倍数が均一な発泡シートを製造することができた。
また、実施例3に示したように、発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子(発泡剤含有量:12質量%)100質量部を押出発泡成形した場合でも、厚みや発泡倍数が均一な発泡シートを製造することができた。
また、実施例4に示したように、発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子(発泡剤含有量:15質量%)20質量部と、非発泡性熱可塑性樹脂粒子80質量部とを混合して押出発泡成形した場合でも、厚みや発泡倍数が均一な発泡シートを製造することができた。
また、実施例5に示したように、本発明に係る実施例1の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子(発泡剤含有量:8質量%)50質量部と、非発泡性熱可塑性樹脂粒子50質量部とを混合して押出発泡成形した場合でも、厚みや発泡倍数が均一な発泡パネルを製造することができた。
また、実施例6に示したように、本発明に係る実施例1の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子(発泡剤含有量:8質量%)を射出発泡成形する際に、射出成形機内の食い込み変動が少なくなり、厚みや発泡倍数が均一な射出発泡成形体を製造することができた。
一方、発泡剤含有量:5質量%とした比較例1では、押出発泡成形体の製造時に、押出機内の食い込み変動が発生し、押出電流値の変動幅が大きく、発泡シートの厚みや発泡倍数が不均一になり品質が安定しなかった。
また、発泡剤含有量:23質量%を試みた比較例2では、所定の発泡剤含有樹脂粒子を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡成形体などの熱可塑性樹脂を加熱溶融し発泡させて発泡成形体を製造する押出成形、射出成形、混練成形、カレンダー成形等に好適に使用可能であり、発泡倍数が高く、発泡倍数のバラツキも少ない発泡成形体を得ることが可能な加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子とその製造方法及び熱可塑性樹脂発泡成形体とその製造方法に関する。
【符号の説明】
【0064】
1…押出機(樹脂供給装置)、2…ダイ、3…原料供給ホッパー、4…高圧ポンプ、5…発泡剤供給口、6…カッター、7…カッティング室、8…水槽、9…高圧ポンプ、10…固液分離機能付き脱水乾燥機、11…貯留容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤が6〜20質量%含有されたことを特徴とする加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子。
【請求項2】
樹脂供給装置内で溶融された熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を得る溶融押出法によって製造されたものであることを特徴とする請求項1に記載の加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子。
【請求項3】
前記発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子が略球状をなしていることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子と、発泡剤含有量が有効発泡限界値未満である非発泡性熱可塑性樹脂粒子とが混合されたことを特徴とする加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子。
【請求項5】
前記非発泡性熱可塑性樹脂粒子が、非球形をなしていることを特徴とする請求項4に記載の加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子。
【請求項6】
樹脂供給装置内で溶融された熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を得る溶融押出法によって、熱可塑性樹脂に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤が6〜20質量%含有された発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を製造することを特徴とする加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
得られる発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子が略球状をなしていることを特徴とする請求項6に記載の加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
発泡剤が6〜20質量%含有された発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を製造した後、この発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子に、発泡剤含有量が有効発泡限界値未満である非発泡性熱可塑性樹脂粒子を混合する工程を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
前記非発泡性熱可塑性樹脂粒子が、非球形をなしていることを特徴とする請求項8に記載の加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を押出機に供給し、加熱溶融して押出発泡成形体を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱溶融発泡成形用の発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子を射出成形機に供給し、加熱溶融して射出発泡成形体を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法によって製造された熱可塑性樹脂発泡成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−207186(P2012−207186A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75787(P2011−75787)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(591129014)株式会社積水化成品北海道 (6)
【Fターム(参考)】