説明

加熱炉の制御方法及び厚鋼板の製造方法

【課題】表面スケール疵を発生させることなく厚鋼板に適切な機械的特性を与えることが可能な、加熱炉の制御方法及び厚鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】R基の加熱炉が稼働中の連続加熱炉で複数のスラブを加熱し、スラブを圧延して厚鋼板を製造する際に、圧延後に厚鋼板に表面スケール疵が発生しない目標在炉時間を決定し、圧延能率及び目標在炉時間から、スラブに表面スケール疵が発生しない目標炉内スラブ数を計算し、スラブが加熱炉群に装入される際に加熱炉群内に存在するスラブ数を予測し、予測したスラブ数が、目標炉内スラブ数のα×R/(R−1)倍以上であれば少なくとも1基の加熱炉の加熱能力を低減し、それ以外の場合にはR基の加熱炉の加熱能力を維持し、予測したスラブ数が目標炉内スラブ数以下となるようにスラブの間隔を調整する加熱炉の制御方法とし、該制御方法で制御される加熱炉を用いて厚鋼板を製造する厚鋼板の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉の制御方法及び該加熱炉の制御方法を用いる厚鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
厚鋼板は、スラブを連続加熱炉(以下、単に「加熱炉」とも言う。)に装入して所定温度に加熱した後、圧延機で所定厚まで圧延する過程を経て、製造される。通常の製造ラインでは、1の圧延機に対し複数の加熱炉が設置される。これは加熱能力(加熱ピッチ)が圧延能力(圧延ピッチ)に比して小さいためであり、加熱炉は両ピッチ(加熱ピッチ及び圧延ピッチ)を吸収するためのバッファーとしての役割も果たす。
【0003】
加熱炉のバッファー機能を効率的に活用できれば、厚鋼板の生産能率をより向上させることができる。このために、加熱炉からのスラブを適切に抽出する順番を決定して、加熱炉の制御を行う発明が多数特許出願されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、加熱炉にスラブを装入する前後において、抽出順位を変更可能なスラブの範囲内で加熱後の圧延シミュレーションを行い、加熱制約を満たしながら圧延時間が最短となるようにスラブの抽出順を決定し、この決定した抽出順に基づいて圧延スケジュール計算を行ってスラブの個々の圧延時間を予測し、この圧延時間に基づいて在炉時間を予測し、この在炉時間に基づいて加熱炉の加熱制御を行う、加熱炉の加熱制御方法の発明が記載されている。加熱炉のバッファー機能を効率的に機能させることは、生産能率の向上につながるだけでなく、加熱炉に使用する燃料原単位の観点や環境保護の観点からも好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−32015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、バッファー機能を効率化した場合には厚鋼板の生産量の向上を図ることが可能になるが、この場合でも、鋼種によっては疵が発生する、あるいは適切な機械的特性を与えることはできないという問題が生じる場合があった。すなわち、スラブの在炉時間が長くなると表面スケール疵(アバタ)が発生しやすく、疵の手入れ・除去が必要となり却って厚鋼板の製造能率を下げることになる。一方、スラブの在炉時間が短くなると、機械的特性が悪化しやすく、所望の特性が得られ難くなるという問題が生じていた。
【0007】
このような問題は、圧延機のロール替えなど、イレギュラーの作業工程が入る場合に起こることが多い。イレギュラーの作業工程が入る場合であっても、在炉時間を適切に制御することにより、機械的特性を満足し、表面スケール疵が発生しない厚鋼板を製造することが可能になる。図4は、表面スケール疵が発生しない境目となる在炉時間T1(在炉時間がT1を超えると表面スケール疵が発生する)と機械的特性不足が生じない境目となる在炉時間T2(在炉時間がT2未満になると機械的特性不足が生じる)との関係を示す図である。図4において、Tは在炉時間である。在炉時間Tを、T2以上T1以下に制御することにより、機械的特性を満足し、表面スケール疵が発生しない厚鋼板を製造することが可能になる。
【0008】
一方で、環境保護の観点からは使用燃料を減少させることが好ましい。バッファー機能の効率化を行ったとしても燃料原単位の削減は高々数%、例えば特許文献1に記載の発明では従来の方法に比べて2%の燃料原単位の効率化しか図れない。環境保護の観点から、より高い燃料の効率的使用が望まれる。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、表面スケール疵が発生することがなく、厚鋼板に適切な機械的特性を与えることが可能な、加熱炉の制御方法及び厚鋼板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは従来とは別の観点から、加熱炉のバッファー機能の効率化を検討した。
まず、燃料の使用量を抜本的に低下させるため、加熱炉の使用有無をバッファーとして役立てることを検討した。複数の加熱炉のうち1台の使用を停止できれば、停止加熱炉以外の加熱炉における燃料使用量が多くなっても、加熱炉全体としての燃料使用量を大幅に減少させることが可能になる。
【0011】
加えて、1の加熱炉の使用を停止した場合、加熱炉全体で炉内に存在させることが可能なスラブ数(以下において、「炉内スラブ数」ということがある。)は、停止前に比べて少なくなる。スラブが加熱炉内で加熱される時間(以下において、「在炉時間」という。)と炉内スラブ数との間には、
炉内スラブ数[個] = 在炉時間[時間] × 圧延能率[個/時間]
という関係がある。ここで、「圧延能率」とは、単位時間当たりに圧延機によって圧延されるスラブ数をいう。例えば圧延能率が一定の場合、上記関係から、炉内スラブ数が少なくなると在炉時間が短くなるので、在炉時間が長いことを原因として発生していた表面スケール疵の発生を抑えることが可能になる。ここで、「圧延能率が一定」とは、順次圧延されるスラブが一定ペースで圧延されその圧延量がほぼ変わらないことをいう。
【0012】
一方、圧延能率が高い操業下においては、スラブ間隔を狭くしても、在炉時間が短くなり機械特性が不足することがある。このような場合には、使用する加熱炉の数を増やして在炉時間を長くすることにより、機械的特性を満足する厚鋼板を得ることができる。
【0013】
本発明は、これらの知見を基にして完成されたものであり、その要旨は、以下に示す通りである。以下、本発明について説明する。
【0014】
本発明の第1の態様は、R基(Rは2以上の整数)の加熱炉が稼働中である加熱炉群で複数のスラブを加熱し、加熱された複数のスラブを圧延機で圧延して厚鋼板を製造する際に加熱炉を制御する方法であって、スラブを圧延した後に厚鋼板に表面スケール疵が発生しない目標在炉時間を決定する工程と、圧延機の圧延能率と決定された目標在炉時間とから、スラブに表面スケール疵が発生しない目標炉内スラブ数を計算する工程と、スラブが加熱炉群に装入される際に該加熱炉群内に存在する炉内スラブ数を予測する炉内スラブ数予測工程と、予測された炉内スラブ数が、目標炉内スラブ数のα×R/(R−1)倍以上であるか否か(0.9≦α≦1.1)を判断する判断工程と、予測された炉内スラブ数が目標炉内スラブ数のα×R/(R−1)倍以上であると判断工程で判断された場合に、R基のうち少なくとも1基の加熱炉の加熱能力を低減する低減工程と、予測された炉内スラブ数が目標炉内スラブ数のα×R/(R−1)倍未満であると判断工程で判断された場合に、R基の加熱炉の加熱能力を維持して操業する維持工程と、低減工程又は維持工程後に、予測された炉内スラブ数が目標炉内スラブ数以下となるようにスラブの間隔を調整する工程と、を有することを特徴とする、加熱炉の制御方法である。
【0015】
ここに、「R基のうち少なくとも1基の加熱炉の加熱能力を低減する」とは、少なくとも1基の加熱炉の動作を完全に停止する形態、及び、少なくとも1基の加熱炉を他の加熱炉(加熱能力を低減する加熱炉が1基の場合には、R−1基の加熱炉)よりも低温で燃焼させる形態を含む概念である。
【0016】
本発明の第2の態様は、稼働中のR基(Rは正の整数)の加熱炉、及び、該R基の加熱炉よりも加熱能力が低い状態とされている少なくとも1基の加熱炉を有する加熱炉群で複数のスラブを加熱し、加熱された複数のスラブを圧延機で圧延して厚鋼板を製造する際に加熱炉を制御する方法であって、スラブを圧延した後に厚鋼板に機械的特性不足が発生しない目標在炉時間を決定する工程と、圧延機の圧延能率と決定された目標在炉時間とから、スラブに機械的特性不足が生じない目標炉内スラブ数を計算する工程と、スラブが加熱炉群に装入される際にR基の加熱炉内に存在する炉内スラブ数を予測する炉内スラブ数予測工程と、予測された炉内スラブ数が、目標炉内スラブ数のα×R/(R+1)倍以下であるか否か(0.9≦α≦1.1)を判断する判断工程と、予測された炉内スラブ数が目標炉内スラブ数のα×R/(R+1)倍以下であると判断工程で判断された場合に、加熱能力が低い状態とされている少なくとも1基の加熱炉の加熱能力を増大させて操業する増大工程と、予測された炉内スラブ数が目標炉内スラブ数のα×R/(R+1)倍よりも多いと判断工程で判断された場合に、R基の加熱炉の加熱能力を維持して操業する維持工程と、増大工程又は維持工程後に、予測された炉内スラブ数が目標炉内スラブ数以上となるようにスラブの間隔を調整する工程と、を有することを特徴とする、加熱炉の制御方法である。
【0017】
ここに、「該R基の加熱炉よりも加熱能力が低い状態とされている少なくとも1基の加熱炉を有する加熱炉群」とは、加熱炉群に、動作が完全に停止している加熱炉、又は、稼働しているR基の加熱炉のすべてよりも低温で燃焼させている加熱炉が、少なくとも1基存在していることをいう。
【0018】
本発明の第3の態様は、上記本発明の第1の態様及び/又は上記本発明の第2の態様にかかる加熱炉の制御方法によって制御される加熱炉と、該加熱炉の下工程側に配設された圧延機とを用いて厚鋼板を製造することを特徴とする、厚鋼板の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の態様では、厚鋼板に表面スケール疵が発生しないように加熱炉が制御される。表面スケール疵の発生が懸念され始める在炉時間T1は、厚鋼板の機械的特性不足が懸念され始める在炉時間T2よりも長く、表面スケール疵の発生が懸念される状態下では、厚鋼板の機械的特性不足は懸念されない。それゆえ、表面スケール疵の発生が懸念される場合に、厚鋼板に表面スケール疵が発生しないように加熱炉を制御することにより、表面スケール疵が発生することがなく、厚鋼板に適切な機械的特性を与えることが可能な、加熱炉の制御方法を提供することができる。また、本発明の第1の態様では、厚鋼板に表面スケール疵の発生が懸念される場合に、少なくとも1基の加熱炉の加熱能力が低減される。加熱能力を低減することにより、燃料使用量を低減することが可能になるので、本発明の第1の態様によれば、環境負荷を低減することも可能になる。
【0020】
本発明の第2の態様では、厚鋼板の機械的特性が不足しないように加熱炉が制御される。機械的特性不足が懸念され始める在炉時間T2は、表面スケール疵の発生が懸念され始める在炉時間T1よりも短く、機械的特性不足が懸念される状態下では、表面スケール疵の発生は懸念されない。それゆえ、厚鋼板の機械的特性不足が懸念される場合に、厚鋼板の機械的特性が不足しないように加熱炉を制御することにより、表面スケール疵が発生することがなく、厚鋼板に適切な機械的特性を与えることが可能な、加熱炉の制御方法を提供することができる。
【0021】
本発明の第3の態様では、本発明の第1の態様及び/又は本発明の第2の態様にかかる加熱炉の制御方法によって制御される加熱炉を用いて厚鋼板を製造する。本発明の第1の態様や本発明の第2の態様は上記効果を奏するので、本発明の第3の態様によれば、表面スケール疵が発生することがなく、厚鋼板に適切な機械的特性を与えることが可能な、厚鋼板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】厚鋼板の製造ライン10を説明する図である。
【図2】第1実施形態にかかる本発明の加熱炉の制御方法を説明するフローチャートである。
【図3】第2実施形態にかかる本発明の加熱炉の制御方法を説明するフローチャートである。
【図4】表面スケール疵が発生しない境目となる在炉時間T1と機械的特性不足が生じない境目となる在炉時間T2との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
通常、厚鋼板の仕様(スペック)は客先より指定され、メーカーはこれにしたがって厚鋼板を製造する。スペック(例えばスラブの材質など)から表面スケール疵の発生がない、あるいは機械的特性不足が生じないことが明らかな場合には、本発明を実施しないことも可能である。この場合は、圧延能率に合わせて加熱炉にスラブを装入する圧延能率優先の操炉により、厚鋼板の製造を行うことができる。これに対し、表面スケール疵の発生や機械的特性不足が懸念される場合には、本発明を実施することにより、懸念を排除することが可能になる。
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されるものではない。
【0025】
図1は、本発明を実施可能な厚鋼板の製造ラインを簡略化して示す図である。図1では、加熱炉よりも上工程側に配設されている設備、及び、圧延機列よりも下工程側に配設されている設備の記載を省略しており、圧延機列の記載も簡略化している。
【0026】
図1に示すように、厚鋼板の製造ライン10は、スラブ1、1、…を加熱する4基の加熱炉2a、2b、2c、2dを有する加熱炉群2と、該加熱炉群2の下工程側に配設された圧延機3a、3a、…、及び、圧延機3b、3b、…を有する圧延機列3と、加熱炉群2の動作を制御可能な制御手段4と、を有している。制御手段4には、加熱炉群2の動作制御を実行可能なCPU4aと、該CPU4aに対する記憶装置とが設けられている。CPU4aは、マイクロプロセッサユニット及びその動作に必要な各種周辺回路を組み合わせて構成され、CPU4aに対する記憶装置は、例えば、加熱炉群2の動作制御に必要なプログラムや各種データを記憶するROM4bと、CPU4aの作業領域として機能するRAM4c等を組み合わせて構成される。当該構成に加えて、さらに、CPU4aが、ROM4bに記憶されたソフトウエアと組み合わされることにより、厚鋼板の製造ライン10における制御手段4が機能する。
【0027】
加熱炉群2によって加熱された後、圧延機列3によって圧延されるスラブ1、1、…に関する情報は、制御手段4の入力ポート4dを介して、入力信号としてCPU4aへと到達する。CPU4aは、入力信号及びROM4bに記憶されたプログラムを用いて計算することにより、スラブを圧延した後に厚鋼板に表面スケール疵が発生しない目標在炉時間、及び、スラブに表面スケール疵が発生しない目標炉内スラブ数や、スラブが加熱炉2aへと装入される際に加熱炉群2内に存在するスラブ数(予測炉内スラブ数)や、スラブを圧延した後に厚鋼板に機械的特性不足が生じない目標在炉時間、及び、スラブに機械的特性不足が生じない目標炉内スラブ数等を、決定・計算・予測する。そして、計算・予測された、予測炉内スラブ数及び目標炉内スラブ数が、所定の関係を満たすか否かがCPU4aにおいて判断され、判断結果に基いて、加熱炉群2の動作指令が決定される。その後、決定された動作指令が、出力ポート4eを介して加熱炉群2へと出力され、加熱炉群2を構成する各加熱炉2a、2b、2c、2dの動作が制御される。
【0028】
1.第1実施形態
図2は、第1実施形態にかかる本発明の加熱炉の制御方法(以下において、「第1の制御方法」という。)を説明するフローチャートである。以下、図1、図2、及び、図4を参照しつつ、第1の制御方法について説明する。
【0029】
図2に示すように、第1の制御方法は、目標在炉時間決定工程(S11)と、目標炉内スラブ数計算工程(S12)と、炉内スラブ数予測工程(S13)と、判断工程(S14)と、低減工程(S15)と、維持工程(S16)と、スラブ間隔調整工程(S17)と、を有している。
【0030】
目標在炉時間決定工程S11(以下において、「S11」という。)は、圧延機列3を用いてスラブ1、1、…を圧延した後に、厚鋼板に表面スケール疵が発生しない目標在炉時間T1を決定する工程である。目標在炉時間は、過去の厚鋼板製造で得られた経験則から求めればよい。例えば、同スペックごとにT1のデータを蓄積したデータテーブルをROM4bに記憶しておき、目標在炉時間を決定する際に、ROM4bに記憶されたプログラムを用いて計算することにより、T1を決定すればよい。
【0031】
目標炉内スラブ数計算工程S12(以下において、「S12」という。)は、S11で決定された目標在炉時間T1と圧延機列3の圧延能率から、スラブ1、1、…に表面スケール疵が発生しない目標炉内スラブ数S1を計算する工程である。ここで、S1は現状の操炉状態で表面スケール疵が発生しない最大スラブ数を表す。
圧延機列3の圧延能率(個/時間)は、圧延温度(スラブ加熱温度)、圧下量などの製造条件や圧延機列3の圧延ロールを交換する作業に伴う圧延停止などの作業条件などによって決まる。S12では、これらの製造条件や作業条件などを加味した圧延能率を求め、求めた圧延能率を用いてS1を計算すればよい。圧延能率は様々な要因に起因する。計算が困難な場合は、圧延停止などの作業条件のみを勘案して圧延能率を求めてもよい。上述のように、目標炉内スラブ数S1=目標在炉時間T1×圧延能率という関係が成立するため、圧延能率が求まれば、目標炉内スラブ数を容易に計算することができる。
【0032】
炉内スラブ数予測工程S13(以下において、「S13」という。)は、スラブ1、1、…が加熱炉群2に装入される際に加熱炉群2内に存在する炉内スラブ数E1を予測する工程である。S13では、スラブ1、1、…が加熱炉群2に装入されるまでに加熱炉群2に装入されるスラブ数、加熱炉群2中に存在しているスラブ数、及び、スラブ1、1、…が加熱炉群2に装入されるまでに加熱炉群2から搬出されるスラブ数から、炉内スラブ数E1を容易に予測できる。
【0033】
判断工程S14(以下において、「S14」という。)は、S12で計算された目標炉内スラブ数S1と、S13で予測された炉内スラブ数E1とが、下記式1の関係を満たすか否かを判断する工程である。
E1≧S1×α×R/(R−1) …(式1)
式1において、αは0.9≦α≦1.1の係数であり、Rは加熱炉群2に含まれる稼働中の加熱炉数(厚鋼板の製造ライン10ではR=4)である。0.9≦α≦1.1とするのは、炉内スラブ数E1の予測誤差を修正するためである。上記式1の関係を満たす場合には、後述する低減工程(S15)が行なわれる。これに対し、上記式1の関係を満たさない場合には、後述する維持工程(S16)が行なわれる。実際の操業では、αは経験に基づき決定すればよい。
【0034】
低減工程S15(以下において、「S15」という。)は、S14で肯定判断がなされた場合(上記式1の関係を満たす場合)に行なわれる工程である。S15では、加熱炉群2を構成する4基の加熱炉のうち少なくとも1基の加熱炉の加熱能力を低減する(加熱能力を低減する加熱炉数が1基の場合、1基の加熱炉の動作を停止して稼働させる加熱炉数を3基にする、又は、再度の操業に対応しやすくするため1基の加熱炉を低温で燃焼させて3基の加熱炉の燃焼温度は維持する)。S15で加熱炉の加熱能力を低減することにより、圧延能率が一定であれば在炉時間を短くすることが容易になるので、表面スケール疵の発生を防止することが可能になる。なお、圧延能率が一定でない場合でも、上述のE1、S1の任意の時間内における平均値を算出できれば、その平均値より同様の計算ができる。この場合も在炉時間の短縮化により、表面スケール疵の防止が可能となる。さらに、加熱炉の加熱能力を低減することにより、燃料の使用量を低減することが容易になるので、環境負荷を低減することも可能になる。なお、上述の「低温で燃焼」とは、具体的には、加熱炉ではスラブを通常1050〜1250℃程度に均熱加熱するのに対し、燃料使用量を低減させて、これらの温度にまで加熱することはできないが、再操業を容易にできる温度まで加熱炉内の温度を低減させることをいう。
【0035】
維持工程S16(以下において、「S16」という。)は、S14で否定判断がなされた場合(上記式1の関係を満たさない場合)に行なわれる工程である。上記式1の関係を満たさない場合には、上記式1の関係を満たす場合と比較して、在炉時間は短い。そのため、上記式1の関係を満たさない場合には、加熱炉の加熱能力を低減せずに維持することができる。ただし、加熱炉の加熱能力を維持し、且つ、スラブ間隔も維持すると、表面スケール疵が発生する場合もある。そこで、S14で肯定判断がなされた場合のみならず、S14で否定判断がなされた場合においても、後述するスラブ間隔調整工程(S17)が行なわれる。
【0036】
スラブ間隔調整工程S17(以下において、「S17」という。)は、S15又はS16の後に、炉内スラブ数E1が目標炉内スラブ数S1以下となるように、不図示のスラブ間隔調整手段を用いてスラブ1、1、…の間隔を調整する工程である。スラブと加熱炉との物理的距離の関係は、下記式2で表すことができる。なお、1の連続加熱炉でスラブを複数の列並べて使用している場合には、下記式2の右辺第2項も加算して計算する。
(平均スラブ幅+平均スラブ間隔)×スラブ数
=加熱炉長さ×使用加熱炉数{+加熱炉長さ×増加列数} …(式2)
S17でスラブ間隔を調整することにより、スラブ数が目標炉内スラブ数S1以下になれば、表面スケール疵の発生はない。また、表面スケール疵の発生が懸念される状態下では、機械的特性不足は懸念されない。したがって、S11乃至S17を有する第1の制御方法によれば、表面スケール疵が発生することがなく、厚鋼板に適切な機械的特性を与えることが可能な、加熱炉の制御方法を提供することができる。また、S14で肯定判断がなされた場合には、少なくとも1基の加熱炉の加熱能力が低減されるので、第1の制御方法によれば、環境負荷を低減することも可能になる。
【0037】
<第1の制御方法:例1>
例えば、上記第1の制御方法において、S12で計算された目標炉内スラブ数S1が90であり、S13で予測された炉内スラブ数E1が130であり、α=1である場合、予測炉内スラブ数E1は目標炉内スラブ数S1を大きく超え、その数は目標炉内スラブ数S1の4/3倍(=120)以上である。このような場合、スラブが加熱炉内に長時間に亘り滞留することになるので、圧延後に表面スケール疵が発生する。そこで、これを避けるために、例えば、S15において、稼働中の4基の加熱炉2a、2b、2c、2dのうち、1基の使用を停止させる。または、例えば、S15において、稼働中の4基の加熱炉2a、2b、2c、2dのうち、1基の加熱炉を低温で燃焼させ、当該1基の加熱炉の加熱能力を他の3基の加熱炉と同等の加熱能力に変更する際に変更しやすいように操業する。
【0038】
加熱炉1基の使用を停止する場合、使用停止する加熱炉からは優先的にスラブを抽出し、当該加熱炉中のスラブ数をゼロにする。3基での操炉となれば、加熱炉群全体で加熱できるスラブ数は少なくなる。圧延能率が一定であれば在炉時間は短くなる。また、操炉数も減るので加熱炉群全体で燃料の使用量も大きく減少させることができ、環境にも優しい。
【0039】
ただし、加熱炉を1基停止させたとしても、単純計算で加熱炉内のスラブ数(130×3/4=97.5)が目標炉内スラブ数S1(=90)を下回るわけではない。そこで、第1の制御方法では、S17でスラブ間隔の調整を行うことで、適正な加熱炉内スラブ数とし、表面スケール疵を解消する。
【0040】
<第1の制御方法:例2>
例えば、上記第1の制御方法において、S12で計算された目標炉内スラブ数S1が90であり、S13で予測された炉内スラブ数E1が100であり、α=1である場合、予測炉内スラブ数E1は目標炉内スラブ数S1を超すが、その数は目標炉内スラブ数S1の4/3倍(=120)未満である。このような場合も、圧延後に表面スケール疵が発生するが、スラブが上記例1の場合ほど加熱炉内に長時間に亘り滞留することにならない。そのため、この場合には、稼働中の4基の連続加熱炉の1基の加熱能力を、わざわざ低減する必要はない。そこで、上記式1を満たさない場合には、S17でスラブ間隔の調整を行うことで、適正な加熱炉内スラブ数とし表面スケール疵を解消すれば十分である。
【0041】
2.第2実施形態
図3は、第2実施形態にかかる本発明の加熱炉の制御方法(以下において、「第2の制御方法」という。)を説明するフローチャートである。以下、図1、図3、及び、図4を参照しつつ、第2の制御方法について説明する。なお、第2の制御方法が実施される厚鋼板の製造ラインは、動作を停止している加熱炉、又は、表面スケール疵を解消する等の目的で他のすべての加熱炉の加熱能力よりも低い状態で稼働している加熱炉を少なくとも1基有していることを前提とする。
【0042】
図3に示すように、第2の制御方法は、目標在炉時間決定工程(S21)と、目標炉内スラブ数計算工程(S22)と、炉内スラブ数予測工程(S23)と、判断工程(S24)と、増大工程(S25)と、維持工程(S26)と、スラブ間隔調整工程(S27)と、を有している。
【0043】
目標在炉時間決定工程S21(以下において、「S21」という。)は、圧延機列3を用いてスラブ1、1、…を圧延した後に、厚鋼板に機械的特性不足が生じない目標在炉時間T2を決定する工程である。目標在炉時間は、過去の厚鋼板製造で得られた経験則から求めればよい。例えば、同スペックごとにT2のデータを蓄積したデータテーブルをROM4bに記憶しておき、目標在炉時間を決定する際に、ROM4bに記憶されたプログラムを用いて計算することにより、T2を決定すればよい。
【0044】
目標炉内スラブ数計算工程S22(以下において、「S22」という。)は、S21で決定された目標在炉時間T2と圧延機列3の圧延能率から、スラブ1、1、…に機械的特性不足が生じない目標炉内スラブ数S2を計算する工程である。ここで、S2は現状の操炉状態で機械的特性不足が生じない最小スラブ数を表す。
圧延機列3の圧延能率(個/時間)は、圧延温度(スラブ加熱温度)、圧下量などの製造条件や圧延機列3の圧延ロールを交換する作業に伴う圧延停止などの作業条件などによって決まる。S22では、これらの製造条件や作業条件などを加味した圧延能率を求め、求めた圧延能率を用いてS2を計算すればよい。圧延能率は様々な要因に起因する。計算が困難な場合は、圧延停止などの作業条件のみを勘案して圧延能率を求めてもよい。上述のように、目標炉内スラブ数S2=目標在炉時間T2×圧延能率という関係が成立するため、圧延能率が求まれば、目標炉内スラブ数を容易に計算することができる。
【0045】
炉内スラブ数予測工程S23(以下において、「S23」という。)は、スラブ1、1、…が加熱炉群2に装入される際に加熱炉群2内に存在する炉内スラブ数E2を予測する工程である。S23はS13と同様の工程であるため、ここでは説明を省略する。
【0046】
判断工程S24(以下において、「S24」という。)は、S22で計算された目標炉内スラブ数S2と、S23で予測された炉内スラブ数E2とが、下記式3の関係を満たすか否かを判断する工程である。
E2≦S2×α×R/(R+1) …(式3)
式3において、αは0.9≦α≦1.1の係数であり、Rは加熱炉群2に含まれる加熱炉のうち、加熱能力を低減していない加熱炉の数(例えば、厚鋼板の製造ライン10において、稼働を停止又は他の加熱炉よりも加熱能力を低減している加熱炉が1基、加熱能力を低減していない加熱炉が3基である場合には、R=3)である。上記式3の関係を満たす場合には、後述する増大工程(S25)が行なわれる。これに対し、上記式3の関係を満たさない場合には、後述する維持工程(S26)が行なわれる。なお、「他の加熱炉よりも加熱能力を低減している」とは、具体的には、加熱炉を停止している、又は、スラブを1050〜1250℃程度まで加熱できないが、同温度域まで容易に上昇させることができる温度に加熱炉内の温度を維持していることをいう。
【0047】
増大工程S25(以下において、「S25」という。)は、S24で肯定判断がなされた場合(上記式3の関係を満たす場合)に行なわれる工程である。S25では、加熱炉群2を構成する4基の加熱炉のうち少なくとも1基の加熱炉の加熱能力を増大する(動作を停止させている、又は、加熱能力を低減させている加熱炉数が1基の場合、当該1基の加熱炉の加熱能力を増大させて、例えば、4基の加熱炉すべての加熱能力を同程度にする)。S25で加熱炉の加熱能力を増大することにより、圧延能率が一定であれば在炉時間を長くすることが容易になるので、機械的特性不足の発生を防止することが可能になる。
【0048】
維持工程S26(以下において、「S26」という。)は、S24で否定判断がなされた場合(上記式3の関係を満たさない場合)に行なわれる工程である。上記式3の関係を満たさない場合には、上記式3の関係を満たす場合と比較して、在炉時間は長い。そのため、上記式3の関係を満たさない場合には、加熱炉の加熱能力を増大せずに維持することができる。ただし、加熱炉の加熱能力を維持し、且つ、スラブ間隔も維持すると、機械的特性不足が生じる場合もある。そこで、S24で肯定判断がなされた場合のみならず、S24で否定判断がなされた場合においても、後述するスラブ間隔調整工程(S27)が行なわれる。
【0049】
スラブ間隔調整工程S27(以下において、「S27」という。)は、S25又はS26の後に、炉内スラブ数E2が目標炉内スラブ数S2以上となるように、不図示のスラブ間隔調整手段を用いてスラブ1、1、…の間隔を調整する工程である。スラブと加熱炉との物理的距離の関係は、上記式2で表すことができる。なお、1の連続加熱炉でスラブを複数の列並べて使用している場合には、上記式2の右辺第2項も加算して計算する。
【0050】
S27でスラブ間隔を調整することにより、スラブ数が目標炉内スラブ数S2以上になれば、機械的特性不足の発生はない。また、機械的特性不足の発生が懸念される状態下では、表面スケール疵の発生は懸念されない。したがって、S21乃至S27を有する第2の制御方法によれば、表面スケール疵が発生することがなく、厚鋼板に適切な機械的特性を与えることが可能な、加熱炉の制御方法を提供することができる。
【0051】
<第2の制御方法:例1>
例えば、上記第2の制御方法において、稼働中の加熱炉が3基であり、当該3基よりも加熱能力を低減させている加熱炉が1基であり、S22で計算された目標炉内スラブ数S2が120であり、S23で予測された炉内スラブ数E2が84であり、α=1である場合、予測炉内スラブ数E2は目標炉内スラブ数S2を大きく下回り、その数は目標炉内スラブ数S2の3/4倍(=90)以下である。このような場合、加熱炉内のウォーキングビームの進行速度を低速にしない限り加熱時間(在炉時間)が不足し、圧延後に厚鋼板の機械的特性が不足する。そこで、これを避けるために、S25において、稼働停止中の1基の加熱炉を稼働させることにより、4基すべての加熱炉を同様に稼働させる。または、例えば、S25において、3基の加熱炉よりも低温で燃焼させていた1基の加熱炉の燃焼温度を増大させることにより、4基すべての加熱炉を同様に稼働させる。
【0052】
停止から稼働へと稼働状態を変更した加熱炉、又は、低温燃焼から高温燃焼へと稼働状態を変更した加熱炉には、優先的にスラブを装入し、当該加熱炉中のスラブ数を増加させる。4基での操炉となれば、加熱炉群全体のスラブ数は多くなる。
【0053】
ただし、加熱炉1基の稼働状態を変更したとしても、単純計算で加熱炉内のスラブ数(84×4/3=112)が目標炉内スラブ数S2(120)を上回るわけではない。そこで、第2の制御方法では、S27でスラブ間隔の調整を行うことで、適正な加熱炉内スラブ数とし、機械的特性不足を解消する。
【0054】
<第2の制御方法:例2>
例えば、上記第2の制御方法において、稼働中の加熱炉が3基であり、当該3基よりも加熱能力を低減させている加熱炉が1基であり、S22で計算された目標炉内スラブ数S2が120であり、S23で予測された炉内スラブ数E2が95であり、α=1である場合、予測炉内スラブ数E2は目標炉内スラブ数S2に満たないが、その数は目標炉内スラブ数S2の3/4倍(=90)を超える。このような場合も、圧延後に機械的特性不足が生じるが、スラブが上記例1の場合ほど加熱時間(在炉時間)は短くならない。そのため、この場合には、加熱能力が低い状態とされている加熱炉の加熱能力を、わざわざ増大する必要はない。そこで、上記式3を満たさない場合には、S27でスラブ間隔の調整を行うことで、適正な加熱炉内スラブ数とし機械的特性不足を解消すれば十分である。
【0055】
以上説明した第1の制御方法や第2の制御方法を用いて加熱炉群2を制御することにより、表面スケール疵が発生することがなく、厚鋼板に適切な機械的特性を与えることが可能になる。したがって、上記第1の制御方法及び/又は上記第2の制御方法によって動作を制御される加熱炉群2と、該加熱炉群2の下工程側に配設された圧延機列3とを用いて厚鋼板を製造する形態とすることにより、表面スケール疵が発生することがなく、厚鋼板に適切な機械的特性を与えることが可能な、厚鋼板の製造方法を提供することができる。
【実施例】
【0056】
厚鋼板の製造を行う実際の製造ラインを用いて本発明の効果を検証した。製造ラインには4基の連続加熱炉を備える加熱炉群が圧延機の上流側(上工程側)に設置され、1の加熱炉から抽出されたスラブを、続く圧延機で所定厚まで圧延した。厚鋼板は同一のスペックごとにまとめて処理されるため、スペックが異なる厚鋼板を製造するときに表面スケール疵の発生等のトラブルが生じやすい。よって、同スペックごとの厚鋼板におけるトラブルを目安に本発明の有用性を確かめた。なお、本願発明の効果を明確に調査するために、比較的表面スケール疵が出やすい引張強度400MPa級の一般的な鋼を用いた。
【0057】
表1に、本願発明を適用しない比較例の場合の、表面スケール疵が大量発生する前後における製造数、疵発生数、疵発生率(手入れ不要の部分疵も含む)の結果を示す。表1に示したように、疵大量発生前は19.6%程度の疵発生率であったのに対し、疵大量発生後の操業条件では在炉時間が長期化したため、疵発生率は19.6%の3倍近い、57.4%にまで増大した。
【0058】
【表1】

【0059】
表2に、本願発明を適用した実施例の場合の、稼働加熱炉数が減少する前後における製造数、疵発生数、疵発生率(手入れ不要の部分疵も含む)を示す。表1における疵大量発生前と表2における稼働加熱炉数4の場合とが対応しており、表1における疵大量発生後と表2における稼働加熱炉数3の場合とが対応している。すなわち、表1の例では、稼働加熱炉数を4のまま維持すると表面スケール疵が大量に発生したため、第1の制御方法を実施することにより、稼働加熱炉数を4基から3基へと減少した場合の結果を示したのが、表2である。
【0060】
【表2】

【0061】
表2に示したように、稼働加熱炉数を4基とした場合には、表1に示した疵大量発生前と疵発生率は同程度(19.0%)であったが、第1の制御方法を実施して稼働加熱炉数を4基から3基に減少することにより、疵発生率は1/3以下の6.2%にまで低下した。これより、本発明によれば、表面スケール疵の発生を顕著に抑制することができることが分かる。また、稼働加熱炉数が少なくなるので、燃料使用量も抑えられる。
【符号の説明】
【0062】
1…スラブ
2…加熱炉群
2a、2b、2c、2d…加熱炉
3…圧延機列
3a、3b…圧延機
4…制御手段
10…厚鋼板の製造ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
R基(Rは2以上の整数)の加熱炉が稼働中である加熱炉群で複数のスラブを加熱し、加熱された複数のスラブを圧延機で圧延して厚鋼板を製造する際に加熱炉を制御する方法であって、
前記スラブを圧延した後に前記厚鋼板に表面スケール疵が発生しない目標在炉時間を決定する工程と、
前記圧延機の圧延能率と、決定された目標在炉時間とから、前記スラブに表面スケール疵が発生しない目標炉内スラブ数を計算する工程と、
前記スラブが前記加熱炉群に装入される際に該加熱炉群内に存在する炉内スラブ数を予測する炉内スラブ数予測工程と、
予測された前記炉内スラブ数が、前記目標炉内スラブ数のα×R/(R−1)倍以上であるか否か(0.9≦α≦1.1)を判断する判断工程と、
予測された前記炉内スラブ数が前記目標炉内スラブ数のα×R/(R−1)倍以上であると前記判断工程で判断された場合に、R基のうち少なくとも1基の加熱炉の加熱能力を低減する低減工程と、
予測された前記炉内スラブ数が前記目標炉内スラブ数のα×R/(R−1)倍未満であると前記判断工程で判断された場合に、R基の前記加熱炉の加熱能力を維持して操業する維持工程と、
前記低減工程又は前記維持工程後に、予測された前記炉内スラブ数が前記目標炉内スラブ数以下となるように前記スラブの間隔を調整する工程と、
を有することを特徴とする、加熱炉の制御方法。
【請求項2】
稼働中のR基(Rは正の整数)の加熱炉、及び、該R基の加熱炉よりも加熱能力が低い状態とされている少なくとも1基の加熱炉を有する加熱炉群で複数のスラブを加熱し、加熱された複数のスラブを圧延機で圧延して厚鋼板を製造する際に加熱炉を制御する方法であって、
前記スラブを圧延した後に前記厚鋼板に機械的特性不足が生じない目標在炉時間を決定する工程と、
前記圧延機の圧延能率と、決定された目標在炉時間とから、前記スラブに機械的特性不足が生じない目標炉内スラブ数を計算する工程と、
前記スラブが前記加熱炉群に装入される際にR基の前記加熱炉内に存在する炉内スラブ数を予測する炉内スラブ数予測工程と、
予測された前記炉内スラブ数が、前記目標炉内スラブ数のα×R/(R+1)倍以下であるか否か(0.9≦α≦1.1)を判断する判断工程と、
予測された前記炉内スラブ数が前記目標炉内スラブ数のα×R/(R+1)倍以下であると前記判断工程で判断された場合に、加熱能力が低い状態とされている少なくとも1基の前記加熱炉の加熱能力を増大させて操業する増大工程と、
予測された前記炉内スラブ数が前記目標炉内スラブ数のα×R/(R+1)倍よりも多いと前記判断工程で判断された場合に、R基の前記加熱炉の加熱能力を維持して操業する維持工程と、
前記増大工程又は前記維持工程後に、予測された前記炉内スラブ数が前記目標炉内スラブ数以上となるように前記スラブの間隔を調整する工程と、
を有することを特徴とする、加熱炉の制御方法。
【請求項3】
請求項1及び/又は請求項2に記載の加熱炉の制御方法によって制御される加熱炉と、該加熱炉の下工程側に配設された圧延機とを用いて厚鋼板を製造することを特徴とする、厚鋼板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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