説明

加熱炉及び加熱炉内の清掃方法

【課題】 炉床の下方における空間部内に設けられた炉床支柱により炉床を支持させた加熱炉において、加熱炉内において発生して炉床の上に堆積するスケールなどを除去させるにあたり、加熱炉に複雑な設備を設けなくても、炉床の上に堆積したスケールなどを短時間で効率よく清掃できるようにする。
【解決手段】 炉床10の下方における空間部S内に設けられた炉床支柱15により炉床を支持させた加熱炉1において、炉床を複数の区画に分割させると共に、分割された分割炉床10aを支持する炉床支柱の少なくとも一部に昇降装置14を設け、この昇降装置により炉床支柱を介して分割炉床を昇降させ、隣接する分割炉床間に上下方向の隙間を形成し、この隙間を通して加熱炉内の清掃を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉床の下方における空間部内に設けられた炉床支柱により炉床を支持させた加熱炉及びこのような加熱炉内を清掃させる加熱炉内の清掃方法に関するものである。特に、上記のような加熱炉内において発生して炉床の上に堆積するスケールなどを除去させるにあたり、加熱炉の内部などの構造を複雑にしなくても、炉床の上に堆積したスケールなどを短時間で効率よく清掃できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼片、鋼板等の被処理物を加熱炉内において順々に移動させて連続的に加熱処理する加熱炉として、ウォーキングビーム式やプッシャー式等の各種の加熱炉が使用されている。
【0003】
ここで、このような加熱炉においては、一般に、加熱炉内において被処理物を順々に搬送させて加熱処理させる場合に、被処理物の表面から離脱されたスケールなどが炉床の上に堆積されるようになり、安定して加熱炉を運転させるためには、このように炉床の上に堆積されたスケールなどを除去させることが必要になる。
【0004】
そして、従来においては、炉床の上に堆積されたスケールなどを除去させるにあたり、一般に、加熱炉の運転を停止させて、加熱炉内を十分に冷却させた後、人が加熱炉内に入って炉床の上に堆積されたスケールなどを除去するようにしていた。
【0005】
しかし、このように加熱炉の運転を停止させて、加熱炉内を十分に冷却させるのには長い時間が必要になると共に、加熱炉の運転を再開させるのに、加熱炉内の温度を十分に上昇させるのにも長い時間が必要になり、運転効率が大きく低下するという問題があり、また加熱炉内に人が入って炉床の上に堆積されたスケールなどを除去する作業は重労働であり、作業性や安全性の点でも問題があった。
【0006】
そして、従来においては、特許文献1に示されるように、スケールを掻き取るスクレーパーを備えたスケール除去コンベアと、このスケール除去コンベアによって掻き取られたスケールを回収するスケール回収手段を設けた自走台車によって、炉床の上に堆積されたスケールなどを機械的に除去するようにしたものが提案されている。
【0007】
しかし、このように自走台車にスケール除去コンベアやスケール回収手段を設けると、自走台車が大型化し、各種のビームを支持する支柱が数多く設けられた炉床においては、炉床に設けられた支柱が邪魔になって自走台車を適切に走行させることができず、炉床の上に堆積されたスケールなどを十分に除去することができないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2においては、炉床を貫通するように炉床にホッパーを設けると共に、このホッパーの下にスケール排出ダクトを設け、このスケール排出ダクトの下端部を水槽に浸漬させて水封させるようにし、上記のホッパーを下方に傾斜させて、加熱炉内において発生したスケールなどを上記のホッパーからスケール排出ダクトを通して水槽内に落下させ、このように落下されたスケールなどをコンベアで搬送させるようにしたものが提案されている。
【0009】
しかし、炉床全体に対して、下方に傾斜させたホッパーを設けると共に、このホッパーの下にスケール排出ダクトを連続して設け、このスケール排出ダクトの下端部を水槽に浸漬させて水封させる場合、加熱炉の内部などの構造が複雑になってその施工が非常に困難になり、設備コストが非常に高くつくと共に、加熱炉内における熱が、炉床を貫通するように設けられたホッパー及びスケール排出ダクトを通して水槽に導かれ、熱損失が非常に大きくなる等の多くの問題が存在した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−74575号公報
【特許文献2】特開2002−212627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、加熱炉内において被処理物を順々に搬送させて、被処理物を加熱処理させる加熱炉において、加熱炉内において発生して堆積されるスケールなどを除去する場合における上記のような様々な問題を解決することを課題とするものである。
【0012】
特に、本発明は、炉床の下方における空間部内に設けられた炉床支柱により炉床を支持させた加熱炉において、この加熱炉内において発生して炉床の上に堆積するスケールなどを除去させるにあたり、加熱炉に複雑な設備を設けなくても、炉床の上に堆積したスケールなどを短時間で効率よく清掃できるようにして、加熱炉の停止時間等を短くすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る加熱炉においては、上記のような課題を解決するため、炉床の下方における空間部内に設けられた炉床支柱により炉床を支持させた加熱炉において、上記の炉床を複数の区画に分割させると共に、分割された各分割炉床を支持する各炉床支柱の少なくとも一部に昇降装置を設け、この昇降装置により炉床支柱を介して分割炉床を昇降させるようにした。
【0014】
そして、本発明に係る加熱炉内の清掃方法においては、上記のような加熱炉において、上記の分割炉床を昇降装置により炉床支柱を介して昇降させ、隣接する分割炉床間に上下方向の隙間を形成し、この隙間を通して加熱炉内の清掃を行うようにした。
【0015】
ここで、上記の加熱炉においては、分割された各分割炉床を支持する各炉床支柱にそれぞれ昇降装置を設け、各昇降装置により炉床支柱を介して各分割炉床を個別に昇降させるようにすることができる。
【0016】
また、上記の加熱炉において、隣接する分割炉床間に上下方向の隙間を形成するにあたり、昇降装置により炉床支柱を介して隣接する一方の分割炉床を上昇させると共に、昇降装置により炉床支柱を介して隣接する他方の分割炉床を下降させるようにすると、分割炉床を昇降させる距離を少なくした場合においても、隣接する分割炉床間における隙間を十分に確保することができるようになる。
【0017】
なお、上記の加熱炉の種類は特に限定されないが、炉床に立設された支持部材の上に炉長方向に沿った固定ビームが設けられると共に、上記の炉床の下方における空間部内に設けられた移動フレームから炉床に設けられた貫通部を通して炉床の上方に突出された支持部材の上にウォーキング動作を行う駆動ビームが炉長方向に沿って設けられたウォーキングビーム式のものにおいては、予め炉床の下方に空間部が形成されている点で利用しやすい。なお、このウォーキングビーム式の加熱炉において、炉長方向に沿った固定ビームが分割された分割炉床間に連続して存在していると、上記のようにして分割された分割炉床を個別に昇降させる場合に、この固定ビームが邪魔になって、分割炉床を個別に昇降させることが困難になるため、固定ビームを各分割炉床に対応して分割させるようにする。
【発明の効果】
【0018】
本発明における加熱炉においては、上記のように炉床を複数の区画に分割させると共に、分割された各分割炉床を支持する各炉床支柱の少なくとも一部の炉床支柱に昇降装置を設け、昇降装置により炉床支柱を介して分割炉床を昇降させるようにしたため、上記の昇降装置により分割炉床を昇降させて、隣接する分割炉床間に上下方向の隙間を形成し、この隙間を通して加熱炉内の清掃を行うことができるようになる。
【0019】
この結果、本発明における加熱炉においては、加熱炉内において発生して炉床の上に堆積したスケールなどを除去させるにあたり、従来のように加熱炉に複雑な設備を設ける必要がなくなると共に、炉床の下から炉床の上に堆積したスケールなどを除去することができ、加熱炉の停止時間等を短くして、短時間で効率よく炉床の上に堆積したスケールなどを適切に清掃できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るウォーキングビーム式の加熱炉において、炉床を複数の区画に分割させた状態を加熱炉の内部状態を示した概略横断面説明図である。
【図2】上記の実施形態におけるウォーキングビーム式の加熱炉において、分割された分割炉床を支持する炉床支柱に昇降装置を設けた状態を示した概略縦断面説明図である。
【図3】上記の実施形態におけるウォーキングビーム式の加熱炉において、隣接する分割炉床の一方の分割炉床だけを昇降装置により下降させて、隣接する分割炉床間に上下方向の隙間を形成した状態を示した概略縦断面説明図である。
【図4】上記の実施形態におけるウォーキングビーム式の加熱炉において、隣接する分割炉床の一方の分割炉床を昇降装置により下降させると共に、他方の分割炉床を昇降装置により上昇させて、隣接する分割炉床間に上下方向の隙間を形成した状態を示した概略縦断面説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る加熱炉及びこの加熱炉内の清掃方法を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る加熱炉及び加熱炉内の清掃方法は下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0022】
この実施形態においては、ウォーキングビーム式の加熱炉を例にして説明するが、本発明の加熱炉は、ウォーキングビーム式のものに限られず、プッシャー式等の各種の加熱炉に適用できるものである。
【0023】
この実施形態におけるウォーキングビーム式の加熱炉1においては、図1及び図2に示すように、加熱炉1内に設けられた炉床10に、炉長方向及び加熱炉1の幅方向にそれぞれ所要間隔を介して複数の支持部材11を立設させ、炉長方向に沿うようにして固定ビーム12を炉長方向に沿って設けられた各支持部材11の上に取り付け、このように炉長方向に沿った固定ビーム12を加熱炉1の幅方向に所要間隔を介して複数設けている。
【0024】
また、上記の炉床10の下方における空間部Sに移動フレーム20を設け、この移動フレーム20から複数の支持部材21を炉床10に設けられた各貫通部13を通して炉床10の上方に突出させ、炉長方向及び加熱炉1の幅方向にそれぞれ所要間隔を介して複数の支持部材21を設け、炉長方向に沿うようにして駆動ビーム22を炉長方向に沿って設けられた各支持部材21の上に取り付け、このように炉長方向に沿った駆動ビーム22を、上記の固定ビーム12と適当な間隔を介するようにして加熱炉1の幅方向に所要間隔を介して複数設けている。
【0025】
そして、上記の移動フレーム20の下にウォーキングビーム駆動手段23を設け、このウォーキングビーム駆動手段23により、移動フレーム20を上下方向に往復移動させると共に炉長方向に往復移動させて、この移動フレーム20に設けられた各駆動ビーム22をウォーキング動作させるようにしている。
【0026】
そして、加熱炉1の導入口2に設けられた扉2aを開けて、被処理物Wを加熱炉1内に導入し、上記のように各駆動ビーム22をウォーキング動作させて、被処理物Wを炉長方向に順々に移動させながら加熱処理し、加熱炉1の取出し口3に設けた扉3aを開けて、このように加熱処理された被処理物Wを加熱炉1内から取り出すようにしている。
【0027】
ここで、この実施形態における加熱炉1においては、上記の炉床10を複数の区画に分割させると共に、このように分割された各分割炉床10aを昇降装置14が設けられた各炉床支柱15によって昇降自在に保持させている。
【0028】
また、上記のように分割された分割炉床10aを個別に昇降装置14によって昇降させる場合に、上記の固定ビーム12が炉長方向に沿って連続して設けられていると、固定ビーム12が邪魔になって、分割炉床10aを個別に昇降させることができなくなるため、炉長方向に沿った固定ビーム12を各分割炉床10aに対応した位置において分割させている。
【0029】
そして、この加熱炉1において、上記のように被処理物Wを順々に搬送させて加熱処理させた結果、被処理物Wの表面から離脱されたスケールなどが炉床10の上に堆積された場合、炉床10の上に堆積されたスケールなどを除去するようにしている。
【0030】
ここで、この加熱炉1においては、炉床10の上に堆積されたスケールなどを除去するにあたり、この加熱炉1の運転を停止させて、加熱炉1内の温度をある程度低下させた時点で、図3に示すように、隣接する分割炉床10aの一方の分割炉床10aを昇降装置14により下降させて、隣接する分割炉床10a間に上下方向の隙間を形成し、この隙間を通してバキューム等の清掃装置(図示せず)を下降された分割炉床10aの上に導き、この清掃装置により下降された分割炉床10aの上に堆積されたスケールなど吸引させて、下降された分割炉床10aの上から除去する。
【0031】
そして、上記のようにして下降させる分割炉床10aを順々に変更させて、各分割炉床10aの上に堆積されたスケールなどを上記の清掃装置により吸引させて除去し、炉床10の上に堆積されたスケールなど清掃するようにする。
【0032】
なお、上記のように隣接する分割炉床10aの一方の分割炉床10aを昇降装置14により下降させるだけではなく、図4に示すように、隣接する分割炉床10aの一方の分割炉床10aを昇降装置14により下降させると共に、他方の分割炉床10aを昇降装置14により上昇させるようにすることもできる。このようにすると、各分割炉床10aを昇降装置14によって昇降させる距離を少なくした場合においても、隣接する分割炉床10a間における隙間を十分に確保することができるようになる。
【符号の説明】
【0033】
1 加熱炉
2 導入口, 2a 扉
3 取出し口, 3a 扉
10 炉床, 10a 分割炉床
11 支持部材
12 固定ビーム
13 貫通部
14 昇降装置
15 炉床支柱
20 移動フレーム
21 支持部材
22 駆動ビーム
23 ウォーキングビーム駆動手段
S 空間部
W 被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉床の下方における空間部内に設けられた炉床支柱により炉床を支持させた加熱炉において、上記の炉床を複数の区画に分割させると共に、分割された分割炉床を支持する炉床支柱の少なくとも一部に昇降装置を設け、この昇降装置により炉床支柱を介して分割炉床を昇降させることを特徴とする加熱炉。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱炉において、分割された各分割炉床を支持する各炉床支柱にそれぞれ昇降装置を設け、各昇降装置により炉床支柱を介して各分割炉床を個別に昇降させることを特徴とする加熱炉。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の加熱炉において、隣接する分割炉床の炉床支柱に昇降装置を設け、昇降装置により炉床支柱を介して隣接する一方の分割炉床を上昇させると共に、昇降装置により炉床支柱を介して隣接する他方の分割炉床を下降させることを特徴とする加熱炉。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の加熱炉において、炉床に立設された支持部材の上に炉長方向に沿った固定ビームを設けると共に、上記の炉床の下方における空間部内に設けられた移動フレームから炉床に設けられた貫通部を通して炉床の上方に突出された支持部材の上に、ウォーキング動作を行う駆動ビームを炉長方向に沿って設け、上記の炉長方向に沿った固定ビームを分割炉床に対応して分割させたことを特徴とする加熱炉。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の加熱炉内を清掃するにあたり、上記の分割炉床を昇降装置により炉床支柱を介して昇降させ、隣接する分割炉床間に上下方向の隙間を形成し、この隙間を通して加熱炉内の清掃を行うことを特徴とする加熱炉内の清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−92262(P2013−92262A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232577(P2011−232577)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】