説明

加熱用ノズル

【課題】本発明の目的は、加熱対象の部品のみを加熱するために好適な加熱用ノズル、プリント基板組立体の製造方法及びプリント基板上の部品の加熱方法を提供することである。
【解決手段】加熱用ノズルは、プリント基板6上の部品7に被せられる部品加熱部21と、部品加熱部21に温風を供給する供給流路22と、部品加熱部21から温風を回収する回収流路23とを具備する。回収流路23における流量が供給流路22における流量より多い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱用ノズルに関し、特に、プリント基板上の部品の加熱に好適な加熱用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、特許文献1に開示されたリフローノズルを示す。リフローノズルは、ノズル101と、ノズル101を覆うカバー102及び103とを備える。カバー103の先端縁には、シール部材104が全周にわたって設けられている。カバー103は、基板105に密着される。ノズル101は、半田107を溶融し得る温度及びワーク106を基板105から浮上させ得る圧力の不活性ガスGを基板105とワーク106の間に供給する。リフローノズルは、ワーク106を基板105に半田付けするため、又は、ワーク106を基板105から取り外すために使用される。
【0003】
特許文献2は、半導体チップ部品を基板に半田付けするための半田付け装置を開示している。半田付け装置は、先端が開口端をなす筒状の内側ケースと、内側ケースの外側に設けられた筒状の外側ケースと、内側ケース内に非酸化性ガスを供給する供給管と、内側ケースと外側ケースの間から非酸化性ガスを回収する回収管とを備えている。内側ケースには、ヒータが取り付けられている。内側ケースの先端は、半田ごてのように半導体チップ部品のリード線及び半田を加熱する。非酸化性ガスにより、半田の周囲に非参加性雰囲気が形成される。
【0004】
【特許文献1】特開2001−196735号公報
【特許文献2】実開平6−60173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、加熱対象の部品のみを加熱するために好適な加熱用ノズル、プリント基板組立体の製造方法及びプリント基板上の部品の加熱方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加熱用ノズルは、プリント基板上の部品に被せられる部品加熱部と、部品加熱部に温風を供給する供給流路と、部品加熱部から温風を回収する回収流路とを具備する。回収流路における流量が供給流路における流量より多い。
【0007】
本発明のプリント基板組立体の製造方法は、プリント基板上の部品に部品加熱部を被せるステップと、部品を加熱するステップとを具備する。加熱するステップにおいて、回収流路における流量が供給流路における流量より多くなるように、供給流路を介して部品加熱部に温風を供給し、回収流路を介して前記部品加熱部から温風を回収する。
【0008】
本発明のプリント基板上の部品の加熱方法は、プリント基板上の部品に部品加熱部を被せるステップと、部品を加熱するステップとを具備する。加熱するステップにおいて、回収流路における流量が供給流路における流量より多くなるように、供給流路を介して部品加熱部に温風を供給し、回収流路を介して部品加熱部から温風を回収する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加熱対象の部品のみを加熱するために好適な加熱用ノズル、プリント基板組立体の製造方法及びプリント基板上の部品の加熱方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
添付図面を参照して、本発明の実施例に係る加熱用ノズル、加熱用ノズルを備えた加熱装置、プリント基板組立体の製造方法及びプリント基板上の部品の加熱方法を以下に説明する。
【0011】
(実施例1)
図2は、本発明の実施例1に係る加熱装置1を示す。加熱装置1は、例えば、温風式スポットリフロー装置である。加熱装置1は、リフローノズルのような加熱用ノズル2と、ポンプ3と、ポンプ4を備える。加熱用ノズル2は、部品加熱部21と、部品加熱部21に接続された供給流路22と、部品加熱部21に接続された回収流路23とを備える。ポンプ3は、供給流路22に設けられ、供給流路22を介して部品加熱部21に温風を供給する。ポンプ4は、回収流路23に設けられ、回収流路23を介して部品加熱部21から温風を回収する。
【0012】
ポンプ3の羽根車とポンプ4の羽根車とは、回転軸5に回転動力が供給されることにより、互いに同期して回転する。例えば、ポンプ3及びポンプ4の羽根車の両方が回転軸5に固定され、又は、ポンプ3及びポンプ4の羽根車が変速装置を介して回転軸5に接続されている。いずれの場合も、ポンプ3の羽根車の回転数とポンプ4の羽根車の回転数との比が一定に保持される。したがって、ポンプ3及びポンプ4の容量を適切に選ぶことで、回収流路23における流量が供給流路22における流量より多くなるように、ポンプ3が部品加熱部21に温風を供給し、ポンプ4が部品加熱部21から温風を回収することが可能である。
【0013】
図3は、部品加熱部21の断面図である。部品加熱部21は、筒24と、筒24の外側に設けられた筒25を備える。筒24及び筒25は、二重筒を形成している。筒24の内側の空間11は、供給流路22に接続されている。筒24と筒25に挟まれた空間12は、回収流路23に接続されている。
【0014】
図4は、実施例1に係るプリント基板組立体の製造方法及びプリント基板上の部品の加熱方法のフローチャートである。プリント基板組立体の製造方法及びプリント基板上の部品の加熱方法は、部品加熱部を加熱対象部品に被せるステップS1と、加熱対象部品を加熱するステップS2とを備える。以下、図3を参照しながら、実施例1に係る方法を説明する。
【0015】
ステップS1において、筒24がプリント基板6上の加熱対象部品7を取り囲むように、部品加熱部21を加熱対象部品7に被せる。筒24が加熱対象部品7を取り囲むとき、加熱対象部品7が空間11に配置され、又は、加熱対象部品7が空間11とプリント基板6の間に配置される。
【0016】
ステップS2において、回収流路23における流量が供給流路22における流量より多くなるように(空間12が負圧になるように)、ポンプ3が部品加熱部21に温風を供給し、ポンプ4が部品加熱部21から温風を回収する。ポンプ3からの温風は、供給流路22を通って空間11に流入し、加熱対象部品7に到達する。加熱対象部品7を加熱した後の温風及び雰囲気が、ポンプ4によって空間12に吸い込まれる。空間12に吸い込まれた温風及び雰囲気は、回収流路23をポンプ4に向かって流れる。
【0017】
したがって、加熱対象部品7を加熱する際に、加熱対象部品7の近隣に実装された近隣部品8が温風により加熱されることが防がれる。このような意図されない加熱によって近隣部品8をプリント基板6に接続する半田接続部における接続信頼性が低下することや近隣部品8に不具合が生じることが防がれる。
【0018】
プリント基板組立体の製造方法においては、加熱対象部品7が加熱されることでクリーム半田が溶融し、溶融した半田が凝固することで加熱対象部品7がプリント基板6に実装される。あるいは、加熱対象部品7が加熱されることで熱硬化性接着剤が熱硬化して加熱対象部品7がプリント基板6に固定され、又は、加熱対象部品7のプリント基板6への固定を補強する樹脂(アンダーフィル)が熱硬化する。このようなステップを経て、プリント基板6とプリント基板6に実装された加熱対象部品7とを備えるプリント基板組立体が製造される。
【0019】
プリント基板上の部品の加熱方法においては、加熱対象部品7が加熱されることで加熱対象部品7をプリント基板6に固定している半田が溶融し、加熱対象部品7がプリント基板6から取り外される。
【0020】
実施例1においては、回転軸5を用いてポンプ3及びポンプ4の羽根車の回転を同期させる代わりに、供給流路22及び回収流路23の各々に流量計と流量調節弁とを設けて回収流路23における流量を供給流路22における流量より多くしてもよい。
【0021】
(実施例2)
本発明の実施例2に係る加熱装置1は、部品加熱部21のみが実施例1に係る加熱装置1と異なる。図5は、実施例2に係る部品加熱部21の断面図を示す。実施例2に係る部品加熱部21においては、実施例1に係る部品加熱部21の外周に遮熱板27が追加されている。遮熱板27は、遮熱板27と筒25の間に隙間が形成されるように、筒25の外側に設けられている。例えば、遮熱板27は筒状である。この場合、筒24、筒25及び遮熱板27は、三重筒を形成する。
【0022】
実施例2に係るプリント基板組立体の製造方法及びプリント基板上の部品の加熱方法は、実施例1に係るプリント基板組立体の製造方法及びプリント基板上の部品の加熱方法と同様である。
【0023】
遮熱板27は、温風が近隣部品8に到達することを防止する。更に、遮熱板27は、温風により加熱される筒25からの輻射熱が近隣部品8に到達することを防止する。
【0024】
(実施例3)
本発明の実施例3に係る加熱装置1は、部品加熱部21のみが実施例1に係る加熱装置1と異なる。図6は、実施例3に係る部品加熱部21の断面図を示す。実施例3に係る部品加熱部21においては、実施例1に係る部品加熱部21に導風板28が追加されている。導風板28は、空間11に設けられ、面28aを備える。面28aは、筒24及び筒25の共通な軸Sに平行な直線と斜めに交差する。面28aは、軸Sに対して平行でも垂直でもない。供給流路22の空間11に接続される部分は、軸Sに沿って延びている。
【0025】
実施例3に係るプリント基板組立体の製造方法及びプリント基板上の部品の加熱方法は、実施例1に係るプリント基板組立体の製造方法及びプリント基板上の部品の加熱方法と同様である。
【0026】
供給流路22を通って空間11に流入した温風の一部は、そのまま直進して加熱対象部品7に到達する。温風の他の一部は、面28aに当たって進行方向を変えて加熱対象部品7に到達する。したがって、加熱対象部品7の温度が均一になるように加熱対象部品7が加熱される。
【0027】
なお、実施例3に係る部品加熱部21に実施例2に係る遮熱板27を追加しても良い。
【0028】
(実施例4)
本発明の実施例4に係る加熱装置1は、部品加熱部21のみが実施例1に係る加熱装置1と異なる。図7は、実施例4に係る部品加熱部21の断面図を示す。実施例4に係る部品加熱部21においては、実施例1に係る部品加熱部21に筒26が追加されている。筒26は、筒25の外側に設けられている。筒24、筒25及び筒26は、三重筒を形成する。筒25と筒26に挟まれた空間13は、供給流路22に接続されている。
【0029】
実施例4に係るプリント基板組立体の製造方法及びプリント基板上の部品の加熱方法は、図4に示すように、部品加熱部を加熱対象部品に被せるステップS1と、加熱対象部品を加熱するステップS2とを備える。以下、図7を参照しながら、実施例4に係る方法を説明する。
【0030】
ステップS1において、プリント基板6上の加熱対象部品7が空間11とプリント基板6の間に配置されるように部品加熱部21を加熱対象部品7に被せる。このとき、空間12とプリント基板6の間に加熱対象部品7が配置される。
【0031】
ステップS2において、回収流路23における流量が供給流路22における流量より多くなるように(空間12が負圧になるように)、ポンプ3が部品加熱部21に温風を供給し、ポンプ4が部品加熱部21から温風を回収する。ポンプ3からの温風は、供給流路22を通って空間11及び空間13に流入し、加熱対象部品7に到達する。加熱対象部品7を加熱した後の温風及び雰囲気が、ポンプ4によって空間12に吸い込まれる。空間12に吸い込まれた温風及び雰囲気は、回収流路23をポンプ4に向かって流れる。
【0032】
したがって、加熱対象部品7を加熱する際に、加熱対象部品7の近隣に実装された近隣部品8が温風により加熱されることが防がれる。さらに、温風が空間11及び空間13の両方から加熱対象部品7に吹き付けられるため、加熱対象部品7の温度が均一になるように加熱対象部品7が加熱される。
【0033】
なお、実施例4に係る部品加熱部21に実施例2に係る遮熱板27を追加しても良い。遮熱板27は、遮熱板27と筒26の間に隙間が形成されるように、筒26の外側に設けられる。遮熱板27が筒状である場合、筒24、筒25、筒26及び遮熱板27は、四重筒を形成する。遮熱板27は、温風が近隣部品8に到達することを防止する。更に、遮熱板27は、温風により加熱される筒26からの輻射熱が近隣部品8に到達することを防止する。
【0034】
また、実施例4に係る部品加熱部21に実施例3に係る導風板28を追加しても良く、実施例4に係る部品加熱部21に、実施例2に係る遮熱板27及び実施例3に係る導風板28の両方を追加しても良い。
【0035】
(実施例5)
実施例5に係る加熱装置1は、実施例1乃至4のいずれかに係る加熱装置1において供給流路22及び回収流路23の接続先を入れ替えたものに相当する。実施例5に係る加熱装置1においては、部品加熱部21における温風の流れが逆になる。
【0036】
図8は、実施例1に係る加熱装置1において供給流路22及び回収流路23の接続先を入れ替えた場合における部品加熱部21の断面図である。回収流路22が空間12に接続され、回収流路23が空間11に接続されている。ポンプ3からの温風は、供給流路22を通って空間12に流入し、加熱対象部品7に到達する。加熱対象部品7を加熱した後の温風及び雰囲気が、ポンプ4によって空間11に吸い込まれる。空間11に吸い込まれた温風及び雰囲気は、回収流路23をポンプ4に向かって流れる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明に関連するリフローノズルを示す。
【図2】図2は、実施例1に係る加熱装置を示すブロック図である。
【図3】図3は、実施例1に係る部品加熱部の断面図である。
【図4】図4は、実施例1に係るプリント基板組立体の製造方法及びプリント基板上の部品の加熱方法のフローチャートである。
【図5】図5は、実施例2に係る部品加熱部の断面図である。
【図6】図6は、実施例3に係る部品加熱部の断面図である。
【図7】図7は、実施例4に係る部品加熱部の断面図である。
【図8】図8は、実施例5に係る部品加熱部の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…加熱装置
11、12、13…空間
2…加熱用ノズル
21…部品加熱部
22…供給流路
23…回収流路
24、25、26…筒
27…遮熱板
28…導風板
28a…面
3、4…ポンプ
5…回転軸
6…プリント基板
7…加熱対象部品
8…近隣部品
101…ノズル
102、103…カバー
104…シール部材
105…基板
106…ワーク
107…半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板上の部品に被せられる部品加熱部と、
前記部品加熱部に温風を供給する供給流路と、
前記部品加熱部から温風を回収する回収流路と
を具備し、
前記回収流路における流量が前記供給流路における流量より多い
加熱用ノズル。
【請求項2】
前記供給流路に第1ポンプが設けられ、
前記回収流路に第2ポンプが設けられ、
前記第1ポンプの第1羽根車は、前記第2ポンプの第2羽根車に同期するように回転する
請求項1の加熱用ノズル。
【請求項3】
前記部品加熱部は、
第1筒と、
前記第1筒の外側に設けられた第2筒と、
前記第2筒の外側に設けられた遮熱板と
を備え、
前記供給流路又は前記回収流路の一方は、前記第1筒の内側の第1空間に接続され、
前記供給流路又は前記回収流路の他方は、前記第1筒及び前記第2筒に挟まれた第2空間に接続される
請求項1又は2の加熱用ノズル。
【請求項4】
部品加熱部は、
第1筒と、
前記第1筒の外側に設けられた第2筒と、
前記第1筒の内側の第1空間に設けられた導風板と
を備え、
前記供給流路は、前記第1空間に接続され、
前記回収流路は、前記第1筒及び前記第2筒に挟まれた第2空間に接続され、
前記導風板は、前記第1筒の軸に平行な直線に斜めに交差する面を備える
請求項1又は2の加熱用ノズル。
【請求項5】
前記部品加熱部は、
第1筒と、
前記第1筒の外側に設けられた第2筒と、
前記第2筒の外側に設けられた第3筒と
を備え
前記供給流路又は前記回収流路の一方は、前記第1筒の内側の第1空間と、前記第2筒及び前記第3筒に挟まれた第3空間とに接続され、
前記供給流路又は前記回収流路の他方は、前記第1筒及び前記第2筒に挟まれた第2空間に接続される
請求項1又は2の加熱用ノズル。
【請求項6】
プリント基板上の部品に部品加熱部を被せるステップと、
前記部品を加熱するステップと
を具備し、
前記加熱するステップにおいて、回収流路における流量が供給流路における流量より多くなるように、前記供給流路を介して前記部品加熱部に温風を供給し、前記回収流路を介して前記部品加熱部から温風を回収する
プリント基板組立体の製造方法。
【請求項7】
前記供給流路に第1ポンプが設けられ、
前記回収流路に第2ポンプが設けられ、
前記加熱するステップにおいて、前記第1ポンプの第1羽根車を、前記第2ポンプの第2羽根車に同期するように回転させる
請求項6のプリント基板組立体の製造方法。
【請求項8】
プリント基板上の部品に部品加熱部を被せるステップと、
前記部品を加熱するステップと
を具備し、
前記加熱するステップにおいて、回収流路における流量が供給流路における流量より多くなるように、前記供給流路を介して前記部品加熱部に温風を供給し、前記回収流路を介して前記部品加熱部から温風を回収する
プリント基板上の部品の加熱方法。
【請求項9】
前記供給流路に第1ポンプが設けられ、
前記回収流路に第2ポンプが設けられ、
前記加熱するステップにおいて、前記第1ポンプの第1羽根車を、前記第2ポンプの第2羽根車に同期するように回転させる
請求項8のプリント基板上の部品の加熱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−170481(P2009−170481A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3894(P2008−3894)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】