説明

加熱素子を持つ転がり軸受

本発明は、少なくとも1つの加熱される軸受レース(02)を持つ転がり軸受(01)、及びや焼ばめを行いながら枠素子に転がり軸受(01)を取付ける方法に関する。電気加熱素子(08)が、加熱される軸受レース(02)の表面部分によく伝熱接触して取付けられ、加熱される軸受レース(02)が加熱の際熱膨張し、次の冷却の際この熱膨張が焼ばめを行いながら枠素子への転がり軸受の取付けを可能にするように、加熱素子(08)により発生される熱量が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼ばめにより軸又は類似の枠素子に取付けられる転がり軸受に関する。更に本発明は、摩耗が少なく精密な作動のため、始動段階中にはまだ利用不可能な高い作動温度を必要とする転がり軸受に関する。更に本発明は転がり軸受の取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受の取付けの際、焼ばめ方法がしばしば使用される。例えば転がり軸受を軸に取付ける場合、転がり軸受がまず加熱される。熱膨張のため、転がり軸受は少し大きい内径を持つ。これに反し軸は室温のままであるか、又は一層小さい外径をもつようにするため場合によっては冷却される。転がり軸受がまず僅かな内径増大により軸上へ押しはめられるように、軸及び転がり軸受が寸法を設定されている。転がり軸受を押しはめた後、軸受が冷えて、内径を縮小する。転がり軸受と軸は今や摩擦により互いに結合され、これを焼ばめともいう。作動中に転がり軸受が温度上昇すると、転がり軸受及び軸は、空間的な接近及びその間の熱伝導のため、同時に温度上昇する。熱膨張係数が同じ又は類似である限り、転がり軸受及び軸はほぼ同じ程度膨張するので、摩擦結合が維持される。このような結合は、それが大きい力を吸収でき、それ以外の結合個所を必要としない、という利点を持っている。
【0003】
転がり軸受の加熱は従来加熱板、溶接バーナ、炉、誘導加熱装置等により行われる。加熱後転がり軸受の温度は、その結果起こる内径の増大が押しはめによる取付けを可能にするほど、高くなければならない。しかし温度は、軸受が損傷又は破壊するほど高くてはならない。特にこの場合、場合によっては入れられている潤滑剤に注意せねばならない。転がり軸受が取付け温度に達すると、取付け過程を速く行わねばならない。なぜならば、転がり軸受は熱源の除去後速やかに冷却し、内径が縮小し始めるからである。軸への取付け中に転がり軸受が既に冷却して、最終的な位置に達する前にもはや移動不可能であると、軸受は大抵の場合使用不可能になる。軸受は、しばしば損傷又は破壊によってのみ軸から外すことができる。若干の場合軸も使用不可能になる。
【0004】
転がり軸受の加熱は、費用のかかる装置において制御可能な加熱板により行うことができ、小さい公差範囲を守りながら温度を予め選ぶことができる。これに反し簡単な加熱板、炉又は溶接バーナを使用すると、高すぎる温度による転がり軸受の破壊の危険、又は低すぎる温度のため取付けが不成功になる危険が著しく高まる。転がり軸受の焼ばめを行う公知の方法では、常に外部加熱装置を頼りにしているが、このことは転がり軸受に対してずっと前から存在するこの結合法の欠点である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の基礎になっている課題は、軸又は類似の枠素子上に焼ばめされる軸受レースを外部の装置なしに取付け温度に加熱でき、必要な場合特定の期間にわたってもこの温度に保持できる、転がり軸受を提供することである。別の課題は、転がり軸受の後になっての作動中に、始動段階においても最適な温度を保証し、特に軸受における付加的な熱供給を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によればこの課題は、請求項1に示されている対象の特徴によって解決される。
【0007】
本発明の重要な局面は、加熱すべき軸受レースへの電気加熱素子の合体である。その点で失われる加熱素子が重要である。なぜならば、それは転がり軸受の加熱のためにのみ利用可能だからである。この発明の利点は、特に、不成功な取付けの危険が著しく少なくされていることである。なぜならば、取付けに成功する前に加熱を終了してはならないからである。公知の方法では、転がり軸受を取付けのため外部の加熱装置から取外さねばならず、それにより冷却が始まる。本発明によれば、軸受レースにある電気加熱素子は、まず所定のよく再現可能な温度への加熱を可能にし、必要な場合取付けの終了まで継続する熱供給を可能にする。
【0008】
特定の前提条件において、本発明により、軸に摩擦結合している転がり軸受を損傷なしに再び取外すことも可能である。そのために転がり軸受が十分膨張して枠素子から取外し可能に成るまで、合体されている加熱素子により転がり軸受を加熱できるほど、転がり軸受と枠素子との間の温度勾配が大きくなければならない。この大きい温度勾配は、転がり軸受と枠素子との間の小さい熱伝導又は転がり軸受へ与えられる大きい熱出力によって生じる。枠素子は更に冷却することができる。
【0009】
好ましい実施形態では、加熱素子が厚膜加熱抵抗として構成されている。このような厚膜加熱抵抗は安価に製造可能なので、本発明による転がり軸受の費用は著しくは増大しない。
【0010】
更にこのような厚膜加熱抵抗は、それが同時に電流絶縁作用を持つか、又は付加的な機能として転がり軸受におけるか又は転がり軸受の電流絶縁を行うように、構成することができる。この場合最初に設けられる電流絶縁をこの多機能膜により代えることができる。
【0011】
温度表示手段例えば膜温度計が加熱される軸受レースに設けられているのがよい。それにより軸受レースがいつ必要な温度に達したかがわかるので、不必要な待ち時間なしで取付けを行うことができる。
【0012】
好ましい実施形態では、温度監視装置特にヒューズまたはサーモスタットが加熱素子に合体されて、温度監視及び/又は温度制御のため加熱素子と共同作用する。
【0013】
限界温度を上回る際、ヒューズが電流回路を遮断するのがよい。同様に所定の限界温度を上回りかつ/又は下回る際、サーモスタットが加熱素子へのエネルギ供給を遮断又は開始するのがよい。
【0014】
それにより転がり軸受が熱くなりすぎて損傷又は破壊することがないようにすることができる。これは、公知の転がり軸受において、特に限定された温度範囲に加熱する高価な装置を使用できないときに、非常に容易に行うことができる。
【0015】
特別な実施形態では、後の作動中にも転がり軸受への電気エネルギの供給が可能である。それにより始動段階においても転がり軸受の最適な温度を保証することが可能である。これは、例えば使用される潤滑剤が作動温度において初めて必要な粘度を持ち、かつ/又は作動温度において初めて転がり軸受に必要な動作状態が現われる時に必要である。
【0016】
別の実施形態では、加熱される軸受レースの表面に溝が形成され、この溝に加熱素子が設けられている。この溝により、加熱素子と軸受レースとの間の熱伝導のための面積が増大されるので、軸受レースの加熱が一層速くかつ効果的に行われる。更にそれにより加熱素子を大きくかつ大出力に構成することができる。
【0017】
特別な実施形態では、厚膜加熱抵抗が加熱される軸受レースの転動面にある。それにより特に平たい軸受レースでも、軸受レースへの熱伝達のために十分大きい面積を利用することができる。その場合厚膜加熱抵抗は、続く作動の際転動体の運動による軸受の損傷なしに摩滅するように、形成される。
【0018】
補足すれば、請求項12に、上記の課題を解決するための方法が示されている。この方法の特別な利点は、加熱装置の複雑な取扱いなしに、転がり軸受を取付けることができる点にある。その前提条件は、加熱される軸受レースの熱伝導率が取付け温度まで軸受レースの加熱を可能にすることである。大抵の転がり軸受は鋼から成り、これらの軸受にこの前提条件が与えられている。しかし特別な場合基本温度まで外部熱源による付加的な加熱も行うことができるので、合体される加熱素子により付加加熱のみが行われる。
【0019】
転がり軸受が枠素子にくっつくまで厚膜加熱抵抗に電気エネルギが供給されるように、本発明による方法を実施するのが有利である。それにより、転がり軸受が早く冷えすぎて取付けを不成功にすることはない。
【0020】
本発明の必死例が図面に示されており、以下詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図示した例では、転がり軸受01は玉軸受として構成されて、内側軸受レース02と外側軸受レース03から成る従来の構造を持っている。転動体として動作する玉02は、保持器06内で案内されている。保持器06の部分は鋲07により互いに結合されている。内側軸受レース02の端面に厚膜加熱抵抗08が印刷されている。このような厚膜加熱抵抗の幾何学的形状は、それぞれの保持体に十分合わせることができる。それによりこの実施例では、厚膜加熱抵抗を円環として形成し、軸受レース02の端面において熱伝達のために最適な形状とすることができる。取付けに必要な加熱は、本発明によれば厚膜加熱抵抗08に通電することによって、この厚膜加熱抵抗によって行われる。転がり軸受を加熱するために加熱板または誘導加熱装置のような外部装置を必要としない。従ってこのような軸受は、このような取付けを自身で行い、従って転がり軸受を加熱する適当な装置を使用しない、組立工又は最終顧客によっても取付けることができる。厚膜加熱抵抗08に給電する適当な電源しか必要でない。給電回路の普通のコンセント又は自動車用蓄電池を電源として使用することができる。
【0022】
厚膜加熱抵抗08は両端に電気接触子09を持っている。厚膜加熱抵抗08の電気接続のため、導線11が接触子09に接続されている。鋼から製造される内側軸受レースに厚膜加熱抵抗を直接印刷することにより、内側軸受レース02への良好な伝熱接触が行われる。電流が導線11を経て厚膜加熱抵抗08を通って流れると、まず厚膜加熱抵抗が加熱され、その結果内側軸受レース02も加熱される。加熱によって内側軸受レースが膨張するので、その内径が大きくなる。取付け温度に達すると、取付けを開始することができる。公知の方法とは異なり、軸受が引続き加熱されるので、時間の重圧なしに取付けを行うことができる。転がり軸受01は、周到に軸又は他の枠素子に取付けることができる。軸上の位置に転がり軸受01が比較的長時間留まった後、この位置で軸も加熱されることによってのみ、時間限定が行われる。
【0023】
図示した例では、厚膜加熱抵抗08にサーモスタット12が合体されている。内側軸受レース02の温度が規定温度を上回ると、厚膜加熱抵抗へ至る電流回路が遮断される。それにより、転がり軸受が損傷するか又は破壊するほど、内側軸受レース02が高温にならないようにすることができる。サーモスタットの代わりに、厚膜加熱抵抗の電源の合体されているか又は外部の制御装置に接続されている温度センサも、厚膜加熱抵抗に合体することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】内側軸受レースの端面に厚膜加熱抵抗を持つ転がり軸受の側面図を示す。
【符号の説明】
【0025】
01 転がり軸受
02 内側軸受レース
03 外側軸受レース
04 転動体
06 保持器
07 鋲
08 厚膜加熱抵抗
09 電気接触子
11 電気導線
12 サーモスタット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの加熱される軸受レース(02)を持つ転がり軸受であって、電気加熱素子(08)が、加熱される軸受レース(02)の表面部分によく伝熱接触して取付けられ、加熱される軸受レース(02)が加熱の際熱膨張し、次の冷却の際この熱膨張が焼ばめを行いながら枠素子への転がり軸受の取付けを可能にするように、加熱素子(08)により発生される熱量が設定されていることを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
加熱素子(08)が厚膜加熱抵抗として構成されて、加熱される軸受レース(02)に印刷されていることを特徴とする、請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
加熱素子(08)が加熱される軸受レース(02)の端面に印刷されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の転がり軸受。
【請求項4】
加熱される軸受レース(02)の表面に溝が形成され、この溝に加熱素子(08)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の転がり軸受。
【請求項5】
加熱素子(08)が、所望の軸受温度を設定できるようにするため、枠素子への取付け後も電気エネルギを供給されることを特徴とする、請求項1〜4の1つに記載の転がり軸受。
【請求項6】
厚膜加熱抵抗(08)が軸受レース(02)の転動面に印刷され、かつ続く作動において軸受の損傷なしに転動体(04)により摩滅される材料から成っていることを特徴とする、請求項2に記載の転がり軸受。
【請求項7】
厚膜加熱抵抗(08)が電流絶縁として転がり軸受に設けられていることを特徴とする、先行する請求項1〜6の1つに記載の転がり軸受。
【請求項8】
温度センサ及び/又はサーモスタット(12)が加熱素子(08)に合体されていることを特徴とする、請求項1〜7の1つに記載の転がり軸受。
【請求項9】
更に温度表示手段特に膜温度計が加熱される軸受レース(02)に設けられて、取付け温度に達すると通報することを特徴とする、請求項1〜8の1つに記載の転がり軸受。
【請求項10】
更に温度監視装置特にヒューズまたはサーモスタットが加熱素子(08)に合体されて、温度監視及び/又は温度制御のため加熱素子と共同作用することを特徴とする、請求項1〜9の1つに記載の転がり軸受。
【請求項11】
所定の限界温度を上回る際、ヒューズが加熱素子へのエネルギ供給を中断し、かつ/又は所定の限界温度を上回りかつ/又は下回る際、サーモスタットが加熱素子へのエネルギ供給を遮断又は開始することを特徴とする、請求項10に記載の転がり軸受。
【請求項12】
焼ばめを行いながら枠素子に転がり軸受(01)を取付ける方法であって、次の段階を含む
転がり軸受の加熱される軸受レース(02)に厚膜加熱抵抗(08)を印刷し、
厚膜加熱抵抗(08)の給電により、軸受レースが膨張して枠素子への取付けを可能にするまで、軸受レース(02)を加熱し、
軸受レース(02)を枠素子に取付け、
焼ばめを行うため加熱される軸受レース(02)を冷却する
方法。
【請求項13】
転がり軸受が枠素子にくっつくまで、厚膜加熱抵抗(08)に電気エネルギを供給することを特徴とする、請求項12に記載の転がり軸受。

【図1】
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【公表番号】特表2009−518606(P2009−518606A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546096(P2008−546096)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【国際出願番号】PCT/DE2006/002151
【国際公開番号】WO2007/065412
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(506420843)シエフレル・コマンデイトゲゼルシヤフト (80)
【Fターム(参考)】