説明

加熱蒸散器

【課題】薬液の種類(例えば、芳香の種類)と関連性のあるガイド体を容易に装着及び脱着することができ、それによりその薬液に対応したガイド体が使用者に視認されることで、薬液の効能を視覚的にもイメージさせることのできる加熱蒸散器を提供する。
【解決手段】蒸散器本体10の内部に発熱体を設けると共に、蒸散器本体の上部に蒸散口19を設け、そして蒸散器本体に、薬液を収納すると共に吸液芯が設けられた容器40が装着されて、当該吸液芯を発熱体により加熱することにより、前記吸液芯に吸い上げられた薬液が蒸散されて、前記蒸散口19から当該蒸散された薬液を外へ放出する加熱蒸散器Mであって、薬剤の用途を使用者に想起させるためこの用途に応じた装飾を施すためのガイド体が、蒸散19口を塞がないように蒸散器本体10の外面に着脱自在に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸散器本体の内部に設けられた発熱体により、薬液を収納する容器から突出して設けられた吸液芯を加熱することにより、吸液芯に吸い上げられた薬液を蒸散させる加熱蒸散器に関し、特に、芳香器具として有用な加熱蒸散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、香りを放つ器具として、特許文献1に記載された「香りディスプレイ」と呼ばれる、特定の芳香を放つ展示ディスプレイが知られている。この香りディスプレイは、食パン等の商品の外形を模して形作られた中空の疑似商品に吸気口と排気口とを形成すると共に、当該疑似商品の中空部内に、真の商品特有の香りを発生する香料と、当該香料より発する香りを排気口より放出する送風ファンと、が設けられたものである。
【0003】
この香りディスプレイによれば、食パン等の商品を模した外形と匂いにより、視覚と嗅覚とに同時に訴えながら真の商品の購買意欲等を刺激することができるとされる。
【0004】
【特許文献1】実開昭58−30437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、芳香剤を収容するケースで疑似商品をデザインした場合、中に入れる芳香剤の種類を変更したからといって、これに応じて装飾の種類を容易に変更する(取り替える)ことはできないため、例えば上記特許文献1では特定の商品価値しか演出できず、即ちその装飾された真の商品のみしか対応できず、改善の余地があった。
【0006】
また、家庭内等で薬液を雰囲気中に効果的に揮散させるものとして、加熱蒸散器が知られている。この蒸散器は、一般的に、蒸散器本体の内部に設けられた発熱体により、薬液を収納する容器から突出して設けられた吸液芯を加熱することにより、吸液芯に吸い上げられた薬液を蒸散させるものである。そして、その用途として芳香、消臭、殺虫、忌避等が挙げられ、近年では、様々な種類の薬液(芳香の種類)が用いられて多種多様なシーンで用いられるようになってきている。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、薬液の種類(例えば、芳香の種類)と装飾的に関連性のあるガイド体を容易に装着及び脱着することができ、それによりその薬液に対応したガイド体が使用者に視認されることで、薬液の効能を視覚的にもイメージさせることのできる加熱蒸散器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1) 蒸散器本体の内部に発熱体が設けられると共に、前記蒸散器本体の上部に蒸散口が設けられ、そして当該蒸散器本体に、薬液を収納すると共に吸液芯が設けられた容器が装着されて、当該吸液芯を前記発熱体により加熱することにより、前記吸液芯に吸い上げられた薬液が蒸散されて、前記蒸散口から当該蒸散された薬液が外へ放出される加熱蒸散器であって、
前記薬剤の用途を使用者に想起させるため当該用途に応じた装飾を施すためのガイド体が、前記蒸散口を塞がないように前記蒸散器本体の外面に着脱自在に設けられる
ことを特徴とする加熱蒸散器。
(2) 前記ガイド体が、前記蒸散器本体の正面を覆う正面板と、前記蒸散器本体の上面及び両側面の少なくとも一部をそれぞれ覆うように当該正面板の縁部から延出された側面板と、を有する面状のカバーとして構成される
ことを特徴とする上記(1)の加熱蒸散器。
(3) 前記蒸散器本体の正面に、係合孔が穿設されると共に、
前記ガイド体の正面板の内面に、前記係合孔に着脱自在に差し込み係合される割ピンが突設される
ことを特徴とする上記(2)の加熱蒸散器。
(4) 前記ガイド体が前記蒸散器本体の外面に装着された際に、当該ガイド体と当該外面との間に隙間が形成されるように前記ガイド体が構成される
ことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1つの加熱蒸散器。
(5) 前記薬液が芳香剤であり、このとき
前記ガイド体に、当該芳香剤の芳香の種類に応じた装飾が施される
ことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1つの加熱蒸散器。
(6) 前記芳香の種類が食品関連のものであり、このとき
前記ガイド体に、食品を想起させる装飾が施される
ことを特徴とする上記(4)の加熱蒸散器。
(7) 前記薬液を収納する容器と当該薬液の用途に応じたガイド体との組み合わせが複数組用意され、これら組み合わせが選択的に前記蒸散器本体に取り替えられる
ことを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか1つの加熱蒸散器。
(8) 前記容器は、本体口部に前記吸液芯を保持するための吸液芯保持栓を有し、
当該吸液保持栓は、前記本体口部に嵌挿される筒状部と、当該筒状部の上端部に形成されて、当該嵌挿時に当該本体口部の端部と係止する鍔部と、により構成され、
当該筒状部の内周面には軸方向に沿って、本体外部と本体内部とを連通させるための空気溝が1つ形成され、そして
前記空気溝の断面積が3〜4mmに設定されている
ことを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか1つの加熱蒸散器。
(9) 前記蒸散器本体が外装ケースを備え、
前記発熱体は、当該外装ケースの内部上方で且つ前記蒸散口の下側に位置され、貫通方向を前記蒸散器本体の上下方向に向けたリング形状の金属板を有して設けられると共に、
前記発熱体の下部に、前記容器の上端を螺合装着する容器ホルダが設けられ、
当該容器ホルダは、前記容器の上端が螺合装着された際に前記吸液芯が前記発熱体のリング形状の金属板の環状中心部に挿入されて位置決めできるように構成され、更に
前記容器ホルダと前記発熱体とのうちいずれか一方が、上下方向の相対位置を調節できるように、スライド自在に設けられており、そして
前記外装ケースの外面には、当該上下方向の相対位置を調節する操作部が設けられる
ことを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれか1つの加熱蒸散器。
(10) 前記蒸散器本体の背面に、通電用の差込プラグが突設されている
ことを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれか1つの加熱蒸散器。
【0009】
上記(1)の構成によれば、蒸散器本体の外面に着脱自在に薬剤の用途を使用者に想起させるためこの用途に応じた装飾を施すためのガイド体を設けたので、ガイド体を容易に交換することができて、薬液に対応した装飾効果を容易に得ることができる。即ち、1つの蒸散器本体に種々の異なったガイド体を取り付けることにより、単に薬液のみを取り替えるものと異なって、薬液に対応するように装置全体のイメージの一新を図ることができる。特に、イメージの一新を図る場合には、ガイド体の取り付け箇所を、装置を設置した際に正面となる箇所に設定するのが好ましい。このようにすれば、ガイド体により背面部を隠すことができるので、ガイド体を最小範囲に設けるだけですむ。また、装飾をガイド体だけに施せばよいので、蒸散器本体に特別な装飾を施す必要がない。また、ガイド体を設けたとしても、蒸散口を塞がないように設けるので、蒸散性能を損なうこともない。そして、ガイド体には、薬液の用途に応じた装飾が施されるので、薬液の種類とガイド体との統一感を演出することができる。即ち、薬液の種類と関連性のあるガイド体を装着することで、ガイド体が使用者に視認されることにより、薬液の効能を視覚的にもイメージさせることができるようになる。また、「塞がないように」とは、揮散口を完全に覆った場合でも、その覆った面に、蒸散を妨げないように隙間(開口)が設けられているものも含んでいる。
上記(2)の構成によれば、ガイド体を面状のカバーとして構成したので、簡易な構成でありながら、看板のような装飾効果を演出することができる。また、ガイド体には正面板と側板とを設けているので、単なるシート状のものにした場合と比較して、立体的な形態とすることができ、視覚的にも好ましい効果を演出することができる。
上記(3)の構成によれば、ガイド体の正面板の内面に割ピンを突設したので、割ピンを蒸散器本体の外装カバーの正面の係合孔に差し込むだけで、ガイド体を容易に装着することができる。また、割ピンを係合孔に差し込んで係合させる構造としているので、装着又は脱着が容易であると共に、その装着又は脱着を何回繰り返しても、係合部分にガタツキが生じることがなく、耐久性も十分に確保することができる。
上記(4)の構成によれば、ガイド体が取り付けられた際に、蒸散器本体との間に隙間が形成されるので、加熱蒸散器より発生させられた熱気流(上昇気流)を下方から上方へ向けて案内するため、その都度蒸散器本体に供給される気流で蒸散器本体の過熱を防止し容器に収納された薬液の漏れを防止することができる。
上記(5)の構成によれば、芳香の種類と装飾の一体感を演出することができ、匂いと視覚効果で特定の雰囲気を醸し出すことができる。
上記(6)の構成によれば、食品の匂いとその食品と関連性のある視覚効果とで、使用者にリラックス効果を与えることができる。
上記(7)の構成によれば、使用者が薬液とガイド体との組み合せを自由に選ぶことにより、種々の薬液の効能を視覚的にもイメージさせることができるようになる。
上記(8)の構成によれば、空気溝の断面積が3〜4mmとなるように設定させることで、空気溝を介した容器本体外部への薬液の多大なこぼれ(液こぼれ)を抑制すると共に、例えばキャップを外すときのキャップに溜った薬液の空気溝を介した容器本体内部への戻りを効率よく実現して吸液芯保持栓上面部における多大な薬剤の溜り(液だまり)を抑制することができる。
上記(9)の構成によれば、操作部を操作して、発熱体と容器ホルダの相対位置を調節することにより、発熱体による吸液芯に対する加熱面積を調節することができ、これにより、薬液の蒸散度合の強弱調節を行うことができる。
上記(10)の構成によれば、蒸散器本体の背面に設けた差込プラグを、例えば、壁に設けたコンセントに差し込むだけで、加熱蒸散器を設置することができる。
【0010】
薬液の例としては、芳香剤、消臭剤、殺虫剤、忌避剤等を例として挙げることができる。ガイド体は、薬液の用途に応じて用意されており、薬液が殺虫剤や忌避剤の場合は、例えば、対象害虫のマンガや夏をイメージする海や山の図柄が施されたものを使用する。また、薬液が消臭剤の場合は、例えば、青空や森林の図柄が施されたものを使用する。また、薬液が芳香剤の場合は、香りに応じた花、植物、食べ物、飲み物等の図柄が施されたものを使用する。
【0011】
そして、芳香剤の例としては、食品関連の香料を例として挙げることができる。例えば、食品であれは、ホットケーキ、ショートケーキ、クロワッサン、ワッフル、フランスパン、焼肉、ラーメン等の香料、飲料であれば、コーヒー、レモンティー、カフェラテ、ワイン、お茶等の香料を挙げることができる。また、これら香料の溶剤としては、ジプロピレングリコール等のグリコール類、3−メトキシー3−メチル−1−ブタノール等のアルコール類、等を挙げることができ、特に香料を溶解しやすい3−メトキシー3−メチル−1−ブタノールとジプロピレングリコールとを用いてこの2種混合を行うことでその持続時間を調整することが可能になる。
また、「ガイド体」とは、後述するように「薬液の用途を使用者に想起させるためこの用途に応じた装飾が施されたもの」及び「加熱蒸散器により発生させられた熱気流(上昇気流)を案内するもの」を意味するものとする。
【0012】
この芳香剤を用いた場合のガイド体としては、食品を想起させる装飾、例えば、シェフ、コック、板前、メニューの看板、レストラン、ファーストフード店等の外観や種々の食品を表した図等の装飾が施されたものを使用する。
【0013】
また、ガイド体の取付方法は、差込、挟持、フック、嵌合によるもの等、種々の方法を採用することができ、加えてそのガイド体の大きさ、形状(板状、容器状、皿状等)、材質(樹脂、木材、紙材等)は所定の仕様に応じて適宜選択される。
【0014】
さらに、吸液芯は、合成樹脂繊維を熱硬化性樹脂によって接着し成形してなる、気孔率20〜80%(好ましくは、50〜70%)に設定された材料である。その吸液芯の材料としてはポリエステル、ポリアクリル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等が採用できるが、吸液芯保持栓への挿入し易さ等を考慮するとポリエステルが好ましい。吸液芯の直径が2〜5mmが好ましく、この範囲のうち3mmがより好ましい。2mmより細いと強度が小さくなり、逆に5mmより太くなると薬剤の揮散量の調整が難しくなるからである。
なお、このとき、吸液芯の直径を3mmとした場合には、リング形状の発熱体の内径を10mm前後とし、且つその発熱温度を80℃〜110℃、より好ましくは90℃前後とするとよい。このように設定した場合には吸液芯表面と発熱体内周面との距離が3.5mm前後となり、このことにより吸液芯の劣化が少なく持続的な蒸散が可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、薬液の種類(例えば、芳香の種類)と関連性のあるガイド体を容易に装着及び脱着することができ、それによりその薬液に対応したガイド体が使用者に視認されることで、薬液の効能を視覚的にもイメージさせることのできる加熱蒸散器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は実施形態の加熱蒸散器の外観構成を示す斜視図であり、図2は蒸散器本体の内部構成を示す断面図であり、図3は蒸散器本体における蒸散度合の強弱機構の説明図で、(a)は蒸散器本体の上面概略図、(b)は弱側に設定した際の(a)のA−A矢視断面図、(c)は強側に設定した際の(a)のA−A矢視断面図であり、図4(a)は蒸散器本体に装着するガイド体の正面図、(b)は同背面図であり、図5(a)は蒸散器本体に薬液(例:芳香剤)入り容器と装着体を取り付けた状態を示す右側面図、(b)は同左側面図、(c)は同上面図、(d)は同下面図、図6は薬液の種類とガイド体の種類を複数組用意して蒸散器本体にセットする場合の説明用の模式図であり、図7(a)は蒸散器本体に装着する別のガイド体の一例を示す正面図、(b)は同背面図であり、図8は容器の構成を説明するための分解斜視図である。
【0017】
図1及び図5に示すように、この加熱蒸散器Mは、蒸散器本体10と、蒸散器本体10に装着される容器40と、蒸散器本体10の外面に着脱自在に取り付けられるガイド体50と、を備えて構成される。
なお、容器40には前述の薬液が収納されており、また容器40の底部から外部上方に延出する吸液芯41が設けられており(図8参照)、この吸液芯41は容器40の上端口部で支持されている。また、この容器40を、以下単に「薬液入り容器」または「容器」とも言う。
【0018】
蒸散器本体10には、図2に示すように、樹脂製の外装カバー11の内部上方に発熱体21が設けられ、そして発熱体21の下方に、薬液入り容器40の上端を螺合装着するための容器ホルダ15が設けられ、容器ホルダ15の下側には、薬液入り容器40(図8参照)を取り付けるための空所(スペース)12が設けられている。そして、空所12の上側の容器ホルダ15や発熱体21等が収容される部分が、外装カバー11のドーム形状の頭部13で覆われ、発熱体21の真上の外装カバー11の頭部13上に蒸散口19が設けられている。
【0019】
外装カバー11の内部下方には、樹脂製の本体フレーム14が下側から挿入固定されており、その本体フレーム14に形成された支持筒部14aに、容器ホルダ15が、上下方向スライド自在に取り付けられている。この容器ホルダ15は、薬液入り容器40の上端口部に設けられた後述するネジ45(図8参照)を螺合するためにネジ突起16が内周面に形成された円筒体として形成されており、その上端にある鍔部(フランジ部)で支持筒部14aから下方に抜けないように保持され、そして、その下方へ抜け止めされた位置より上側に向けてスライドできるようになっている。この容器ホルダ15の上部には、吸液芯(図8参照)41が突き出すための開口17が設けられ、容器ホルダ15の更に上側には、発熱体21を外側から覆うように半筒状の保護壁18が一体に設けられている。
【0020】
発熱体21は、貫通方向を上下方向に向けたリング形状の金属板を有して設けられ、蒸散口19の下側に位置されており、本体フレーム14上に取付けられた基板20に支持されている。また、この基板20には、使用中に点灯するLEDランプ22が取り付けられており、外装カバー11の頭部13の上面部には、このLEDランプ22が外部から視認されるように、このランプ22のための露出孔が設けられている。
【0021】
そして、容器ホルダ15に薬液入り容器40の上端が螺合装着されることにより、吸液芯41がその発熱体21のリング形状の金属板の環状中心部に挿入されて位置決めされ、この状態で発熱体21に電気が通電され、この通電の結果、発熱体21により吸液芯41が加熱されることにより、吸液芯41に吸い上げられた薬液が蒸散されると共に熱気流(上昇気流)が発生して、蒸散口19からこの蒸散された薬液がこの上昇気流に乗って外へ放出されるようになっている。
なお、図5(d)に示すように、本体フレーム14下面部の正面側には正面側空気孔33が2箇所設けられ、一方その背面側には背面側空気孔34が3箇所設けられている。これにより、例えば正面側空気孔33又は背面側空気孔34片方のみが設けられたときと比較して、蒸散器本体10内部に均一な気流が発生して薬液の結露を効果的に抑制することができる。
【0022】
そして、図3(a)に示すように、外装カバー11の一方の側面には、加熱蒸散器MをON/OFFするためのスイッチ31が設けられ、また他方の側面には、容器ホルダ15の上下方向の位置を調節するための操作部32が設けられている。
【0023】
この操作部32は、図3(b)、(c)に示すように、容器ホルダ15と連結されており、図3(b)のように下方(矢印Y1方向)にスライドさせると、容器ホルダ15が下方に移動することで、発熱体21に対する吸液芯41の挿入量が小さくなり、その結果、発熱体21による吸液芯41に対する加熱量が減り、吸液芯41に吸い上げられた薬液の蒸散量が減少する。また、図3(c)のように上方(矢印Y2方向)にスライドさせると、容器ホルダ15が上方に移動することで、発熱体21に対する吸液芯41の挿入量が大きくなり、その結果、発熱体21による吸液芯41に対する加熱量が増え、吸液芯41に吸い上げられた薬液の蒸散量が増加することになる。
このように、この操作部32は、蒸散の強弱機構の調節スイッチの役目を果たすことになる。
なお、容器ホルダ15はネジ突起16を有した構造であるので、容器ホルダ15への容器40の螺合具合を調整することによってもその蒸散量の増減を調整することができる。即ち、容器ホルダ15の中心軸線方向の高さ寸法等は、前述の調整等に支障がなく実施可能な範囲であれば任意であり限定されない。
【0024】
また、蒸散器本体10の背面には、通電用の差込プラグ23が突設され、蒸散器本体10の外装カバー11の頭部13の正面13aには、ガイド体50を装着するための係合孔58が、横方向に所定の間隔をおいて2個設けられている。
そして、蒸散器本体10の背面が、差込プラグ23が差し込まれるコンセントの表面に沿った形状(例えば平坦面)にされることにより、差込プラグ23のコンセントの抜けを防止することができると共に、蒸散口19が外装カバー11の頭部13上に設けられているので、その背面が蒸散口19とコンセントの面との距離を規制する役目を果たして、例えばコンセントが設置された壁面の汚れを防止できることになる。
【0025】
ガイド体50は、任意の造形と任意の図柄が施された樹脂成形品より構成されるものであり、蒸散器本体10の正面全体を覆う正面板51と、蒸散器本体10の上面及び両側面の少なくとも一部をそれぞれ覆う上面板53及び両側面板52とを有する面状のカバーとして構成されている。この場合、上面板53には、蒸散口19を塞がないようにするため、開口53aが設けられる。
なお、この開口53aに代えて格子状の切欠きとして設ける等、ガイド体50が蒸散口19を塞がないように構成されていればよい。
【0026】
また、側面板52は、蒸散器本体10の側面に位置するスイッチ31や操作部32を塞がないように正面板51の側縁部から延出している。そして、図4又は図7にガイド体50の具体例を示すように、ガイド体50の正面板51の内面(背面)には、蒸散器本体10の正面に設けた係合孔58に着脱自在に差し込み係合される2つの割ピン55が突設され、これらの割ピン55が係合孔58に差し込まれることで、ガイド体50を蒸散器本体10の正面(外面)に装着できるようになっている。
なお、このときには、ガイド体50が蒸散器本体10の正面に装着された際にガイド体50とその正面と間に隙間が設けられるように割ピン55のデザイン(例えば段部等)、寸法等が決定される。また、ガイド体50が蒸散器本体10の正面に装着されることで蒸散器本体10が床面等に対し起立できるようにすると好ましいが、特にこれに限らず、蒸散器本体10自体がそのまま起立できるようにしてもよく、又は薬剤入り容器40が装着されることで起立できるようにしてもよい。
【0027】
一方、薬液入り容器40は、内部に薬液が収納されており、上端口部から吸液芯41が外部上方へ突出し、不使用時にキャップ42で栓がされるものである。即ち、図8に示すように、薬剤入り容器40は、薬液を収納すると共に上部先端部に口部44を有する容器本体43と、不用時に栓をするためのキャップ42と、容器本体43に収納された薬液を毛細管現象により容器本体43外部に吸上げるための吸液芯41と、この吸液芯41を容器本体43の口部44に保持するための樹脂製の吸液芯保持栓46と、により構成される。
なお、口部44の周方向に渡ってネジ45が形成され、またキャップ42の内部にはこのネジ45に対応したネジ溝(不図示)形成されており、このため不用時にこれらネジ42とネジ溝とが螺合されることで栓が行われることになる。また、本実施形態の場合、薬液としては、食品関係の香料を含んだ芳香剤を使用する。
【0028】
そして、この吸液芯保持栓46は、容器本体43に嵌挿される筒状部47と、この筒状部47の上端部に形成されて、筒状部47が容器本体43に嵌挿される時にその口部44の端部と係止する鍔部48とを有して構成されており、またこの筒状部47の内周面には軸方向に沿って、容器本体43の外部と内部とを連通させるための断面矩形状の空気溝49が1つ形成されている。
なお、空気溝49は、その断面積が3〜4mmとなるように設けられる。このように空気溝49の断面積が設定されることで、空気溝49を介した容器本体43外部への薬液の多大なこぼれ(液こぼれ)を抑制すると共に、例えばキャップ42を外すときのキャップ42に溜った薬液の空気溝49を介した容器本体43内部への戻りを効率よく実現して吸液芯保持栓46上面部における多大な薬剤の溜り(液だまり)を抑制することができる。
【0029】
そして、本実施形態のガイド体50としては、この芳香剤と関連するように、食品を想起させる装飾、シェフ(図4参照)又はレストランの前に設置されるメニューの看板(図7参照)を表した装飾が施されたものが使用される。
【0030】
ここで、例えば、図6に示すように、芳香剤40A〜40D(薬液入り容器40)やガイド体50A〜50D(50)を複数組用意し、その組の中から選んで蒸散器本体10にセットする場合は、(a)のように、使用する芳香剤(薬液入り容器40)をグループの中から例えば使用者の好みに応じて選択してキャップ42を外し、(b)のように蒸散器本体10にセットする。同様に(c)のように、選択した芳香剤に対応したガイド体50をグループの中から適宜選んで、(d)のように蒸散器本体10にセットする。このように、芳香剤とこの芳香剤に対応したガイド体とを組み合せながら、自由に取り替えを行うことができる。
【0031】
このように構成した加熱蒸散器Mによれば、蒸散器本体10の外面に着脱自在に薬剤の用途を使用者に想起させるためこの用途に応じた装飾を施すためのガイド体50を設けたので、ガイド体50を容易に交換することができて、薬液に対応した装飾効果を容易に得ることができる。即ち、1つの蒸散器本体10に種々の異なったガイド体50を取り付けることにより、単に薬液(薬液入り容器40)のみを取り替えるものと異なって、装置全体のイメージの一新を図ることができる。この場合、ガイド体50の取り付け箇所を、装置を設置した際に正面となる箇所に設定しているので、装置背面部を隠すことができ、ガイド体50を最小範囲に設けるだけですみ、ガイド体50のコストを最小限に抑えることができる。
【0032】
また、このようにガイド体50を装着又は脱着できるようにした場合、装飾をガイド体50だけに施せばよいので、蒸散器本体10に特別な装飾を施す必要がない。また、ガイド体50を設けたとしても、ガイド体50に設けられた開口53aにより蒸散口19を塞ぐことがないので、蒸散性能を損なうこともない
【0033】
そして、ガイド体50には、薬液の用途に応じた装飾を施してあるので、薬液の種類とガイド体50の統一感を出すことができる。即ち、薬液の種類と関連性のあるガイド体50を装着することで、ガイド体50が使用者に視認されることにより、薬液の効能を視覚的にもイメージすることができるようになる。
【0034】
また、本実施形態によれば、ガイド体50を面状のカバーとして構成しているので、簡易な構成でありながら、看板のような装飾効果を演出することができる。また、ガイド体50には正面板51と上面板53と両側面板52とを設けているので、立体的な形態とすることができ、視覚的にも好ましい効果を演出することができるが、製造コストを考慮して単にシート状として構成してもよい。
【0035】
また、本実施形態の場合、ガイド体50の正面板51の内面に割ピン55を突設したので、割ピン55を蒸散器本体10の外装カバー11の正面の係合孔58に差し込むだけで、ガイド体50を容易に装着することができる。また、割ピン55を係合孔58に差し込んで係合させる構造としているので、装着又は脱着が容易であると共に、その装着又は脱着を何回繰り返しても、係合部分にガタツキが生じることがなく、耐久性も十分に保証することができる。
【0036】
そして、前述したように、ガイド体50が取り付けられた際に、蒸散器本体10との間に隙間が形成されるので、加熱蒸散器Mより発生させられた熱気流(上昇気流)を下方から上方へ向けて案内するため、その都度蒸散器本体10に供給される気流で蒸散器本体10の過熱を防止し容器40に収納された薬液の漏れを防止することができる。
【0037】
また、前述の説明のように、薬液として芳香剤を用いた場合には、芳香の種類と装飾の一体感を出すことができ、匂いと視覚効果で特定の雰囲気を醸し出すことができる。特に、本実施形態では、その芳香剤を食品関連の匂いにしているので、食品の匂いとその食品と関連性のある視覚効果とで、使用者にリラックス効果を与えることができる。
【0038】
さらに前述の説明のように、空気溝49の断面積が3〜4mmとなるように設定させることで、空気溝49を介した容器本体43外部への薬液の多大なこぼれ(液こぼれ)を抑制すると共に、例えばキャップ42を外すときのキャップ42に溜った薬液の空気溝49を介した容器本体43内部への戻りを効率よく実現して吸液芯保持栓46上面部における多大な薬剤の溜り(液だまり)を抑制することができる。
【0039】
さらに、本実施形態の場合、操作部32を操作して、発熱体21と容器ホルダ15との相対位置を調節することにより、発熱体21による吸液芯41に対する加熱面積を調節することができるので、薬液の蒸散度合の強弱調節を機械的な構成だけで容易に行うことができる。
【0040】
また、本実施形態の場合、蒸散器本体10の背面に差込プラグ23を設けたので、その差込プラグ23を壁に設けたコンセントに差し込むだけで、加熱蒸散器Mを簡単に設置することができる。
【0041】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0042】
例えば、上記実施形態では、容器ホルダ15を上下に動かすことで、発熱体21と吸液芯41の位置関係を調節するようにしたが、発熱体21側を上下に動かすようにしてもよい。
【0043】
また、発熱体21の発熱量を制御できるようにして、それにより、蒸散量を調節するように構成することもできる。
【0044】
また、上記実施形態では、蒸散器本体10に係合孔58を、ガイド体50に割ピン55をそれぞれ設ける構成としたが、その逆に蒸散器本体10に割ピンを、ガイド体に係合孔をそれぞれ設けるようにしてもよい。また、そのガイド体50の蒸散器本体10への取付方法を、この割ピンと係合孔とによる方法に限らず、片方又は両方における粘着材によるもの、挟持部材を用いるもの、引掛部材(フック等)を用いるもの、等としてもよく、適宜種々の方法を採用することができる。
【0045】
さらに、上記実施形態では、蒸散器本体10の背面に、通電用の差込プラグ23が突設されるとしてが、これに限らず先端部に差込プラグを有した延長コードを用いたものとしてもよい。この場合には、例えば畳、床、テーブル、調理台等の設置面上に蒸散器本体10を設置して加熱蒸散器Mを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態の加熱蒸散器の外観構成を示す斜視図である。
【図2】同加熱蒸散器における蒸散器本体の内部構成を示す断面図である。
【図3】同蒸散器本体における蒸散度合の強弱機構の説明図で、(a)は蒸散器本体の上面概略図、(b)は弱側に設定した際の(a)のA−A矢視断面図、(c)は強側に設定した際の(a)のA−A矢視断面図である。
【図4】(a)は前記蒸散器本体に装着するガイド体の具体例の正面図、(b)は同背面図である。
【図5】(a)は前記蒸散器本体に薬液(例:芳香剤)入り容器と装着体を取り付けた状態を示す右側面図、(b)は同左側面図、(c)は同上面図、(d)は同下面図である。
【図6】前記加熱蒸散器において、薬液の種類とガイド体の種類を複数組用意して蒸散器本体にセットする場合の説明用の模式図である。
【図7】(a)は蒸散器本体に装着する別のガイド体の一例を示す正面図、(b)は同背面図である。
【図8】容器の構成を説明するための分解斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
M 加熱蒸散器
10 蒸散器本体
11 外装カバー
15 容器ホルダ
19 蒸散口
21 発熱体
32 操作部
40,40A〜40D 薬液入り容器
41 吸液芯
42 キャップ
43 容器本体
44 口部
45 ネジ
46 吸液芯保持栓
47 筒状部
48 鍔部
49 空気溝
50,50A〜50D ガイド体
51 正面板
52 側面板
53 上面板
55 割ピン
58 係合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸散器本体の内部に発熱体が設けられると共に、前記蒸散器本体の上部に蒸散口が設けられ、そして当該蒸散器本体に、薬液を収納すると共に吸液芯が設けられた容器が装着されて、当該吸液芯を前記発熱体により加熱することにより、前記吸液芯に吸い上げられた薬液が蒸散されて、前記蒸散口から当該蒸散された薬液が外へ放出される加熱蒸散器であって、
前記薬剤の用途を使用者に想起させるため当該用途に応じた装飾を施すためのガイド体が、前記蒸散口を塞がないように前記蒸散器本体の外面に着脱自在に設けられる
ことを特徴とする加熱蒸散器。
【請求項2】
前記ガイド体が、前記蒸散器本体の正面を覆う正面板と、前記蒸散器本体の上面及び両側面の少なくとも一部をそれぞれ覆うように当該正面板の縁部から延出された側面板と、を有する面状のカバーとして構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の加熱蒸散器。
【請求項3】
前記蒸散器本体の正面に、係合孔が穿設されると共に、
前記ガイド体の正面板の内面に、前記係合孔に着脱自在に差し込み係合される割ピンが突設される
ことを特徴とする請求項2に記載の加熱蒸散器。
【請求項4】
前記ガイド体が前記蒸散器本体の外面に装着された際に、当該ガイド体と当該外面との間に隙間が形成されるように前記ガイド体が構成される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の加熱蒸散器。
【請求項5】
前記薬液が芳香剤であり、このとき
前記ガイド体に、当該芳香剤の芳香の種類に応じた装飾が施される
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の加熱蒸散器。
【請求項6】
前記芳香の種類が食品関連のものであり、このとき
前記ガイド体に、食品を想起させる装飾が施される
ことを特徴とする請求項4に記載の加熱蒸散器。
【請求項7】
前記薬液を収納する容器と当該薬液の用途に応じたガイド体との組み合わせが複数組用意され、これら組み合わせが選択的に前記蒸散器本体に取り替えられる
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の加熱蒸散器。
【請求項8】
前記容器は、本体口部に前記吸液芯を保持するための吸液芯保持栓を有し、
当該吸液保持栓は、前記本体口部に嵌挿される筒状部と、当該筒状部の上端部に形成されて、当該嵌挿時に当該本体口部の端部と係止する鍔部と、により構成され、
当該筒状部の内周面には軸方向に沿って、本体外部と本体内部とを連通させるための空気溝が1つ形成され、そして
前記空気溝の断面積が3〜4mmに設定されている
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱蒸散器。
【請求項9】
前記蒸散器本体が外装ケースを備え、
前記発熱体は、当該外装ケースの内部上方で且つ前記蒸散口の下側に位置され、貫通方向を前記蒸散器本体の上下方向に向けたリング形状の金属板を有して設けられると共に、
前記発熱体の下部に、前記容器の上端を螺合装着する容器ホルダが設けられ、
当該容器ホルダは、前記容器の上端が螺合装着された際に前記吸液芯が前記発熱体のリング形状の金属板の環状中心部に挿入されて位置決めできるように構成され、更に
前記容器ホルダと前記発熱体とのうちいずれか一方が、上下方向の相対位置を調節できるように、スライド自在に設けられており、そして
前記外装ケースの外面には、当該上下方向の相対位置を調節する操作部が設けられる
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の加熱蒸散器。
【請求項10】
前記蒸散器本体の背面に、通電用の差込プラグが突設されている
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の加熱蒸散器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−136374(P2009−136374A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313339(P2007−313339)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】