説明

加熱装置、ガラスシステム、処理装置およびプログラム

【課題】省エネルギー化、小型化および簡素化が図られた加熱装置、ガラスシステム、ガラスシステムを処理するための処理装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】 加熱装置100は、一つ又は複数のガラス管10と、ガラス管10の周囲に設けられた抵抗体12と、抵抗体12に電気を流すことで抵抗体12が発熱する。ガラス管10の内部にミスト化された水又は水を供給する水供給部72が設けられている。ガラス管10内にて水を加熱して過熱水蒸気を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱機能を有する加熱処理装置、ガラスシステム、処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過熱水蒸気を生成する方法として、水蒸気に加熱した空気又は燃焼ガスを混合する方法(特許文献1,2参照)や、水蒸気を電磁誘導により加熱する方法(特許文献3,4参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−069168号公報
【特許文献2】特開2000−74307号公報
【特許文献3】特開2003−297537号公報
【特許文献4】特開2006−071180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水蒸気に加熱空気又は燃焼ガスを混合して製造する方法によれば、空気を加熱する手段等が必要であり、装置のサイズの小型化に限界がある。また、電磁誘導などによる加熱についても、発振器のスペースを確保する必要があると共に、発振器などの電磁誘導装置の費用が高く、製造原価を引き上げている。
【0005】
本発明は、省エネルギー化、小型化および簡素化が図られた加熱装置、ガラスシステム、ガラスシステムを処理するための処理装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.加熱装置
本発明の加熱装置は、
一つ又は複数のガラス管と、
前記ガラス管の周囲に設けられた抵抗体と、
前記抵抗体に電気を流すことで当該抵抗体が発熱するものである。
【0007】
本発明の加熱装置によれば、熱が発生する抵抗体がガラス管に一体となった状態で設けられているためエネルギー損失が小さい。したがって、省エネルギー化を図ることができる。また、加熱するに当たって、圧力容器などの特殊の設備を設ける必要がないため、簡素化および小型化も図ることもできると共に、コストを低減することができる。
【0008】
本発明において、
前記ガラス管の内部にミスト化された水又は水蒸気を供給する水供給部とを含み、前記水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成するためのものである。
【0009】
本発明によれば、短時間かつ小さな設備で、過熱水蒸気を生成することができる。
【0010】
2.ガラスシステム
本発明のガラスシステムは、
本発明の加熱装置と、
前記抵抗体に流れた電流の電流値を測定する電流測定部と、
前記ガラス管の温度を測定する温度測定部と、
前記抵抗体の大きさに基づく昇温プログラムデータを記憶した記憶部と、
前記電流測定部により測定された電流値と前記温度測定部により測定された前記ガラス管の温度とに基づき、前記昇温プログラムデータを参照して、前記ガラス管の状態を導出するための処理部とを含む。
【0011】
本発明によれば、抵抗体の大きさに基づく昇温プログラムデータを有するため、抵抗体の大きさごとに処理装置を別途作成する必要がなく、処理装置自体の汎用性を向上させることができる。
【0012】
また、所定の電流が流れた場合に、所定の温度が上昇していない場合には、温度測定部が破損していると認識することができる。したがって、温度測定部の破損状態の確認が容易となる。
【0013】
本発明において、前記記憶部は、前記抵抗体の抵抗値と前記抵抗体の大きさとの間の関係データを有することができる。本発明によれば、処理装置により、抵抗体の抵抗値から抵抗体の大きさを認識することができ、抵抗体の大きさの入力作業を省略することができる。
【0014】
本発明において、前記温度測定部は、熱電対であることができる。熱電対であることで、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0015】
本発明において、通信ネットワークに接続するための送受信部を含むことができる。これにより、温度測定部の破損状態など、遠隔地にある者に迅速に伝えることができる。
【0016】
3.処理装置
本発明の処理装置は、
本発明のガラスシステムのガラス管の状態を導出するためのガラスシステム用処理装置であって、前記抵抗体の大きさに基づく昇温プログラムデータを記憶した記憶部を有し、電流測定部により測定された電流値と温度測定部により測定された前記ガラス管の温度とに基づき、前記昇温プログラムデータを参照して、前記ガラス管の状態を導出する。
【0017】
本発明によれば、抵抗体の大きさに基づく昇温プログラムデータを有するため、抵抗体の大きさごとに処理装置を別途作成する必要がなく、処理装置自体の汎用性を向上させることができる。
【0018】
また、所定の電流が流れた場合に、所定の温度が上昇していない場合には、温度測定部が破損していると認識することができる。したがって、温度測定部の破損状態の確認が容易となる。
【0019】
本発明において、前記記憶部は、前記抵抗体の抵抗値と前記抵抗体の大きさとの間の関係データを有することができる。これにより処理装置により、抵抗体の抵抗値から抵抗体の大きさを認識することができ、抵抗体の大きさの入力作業を省略することができる。
【0020】
4.プログラム
本発明のプログラムは、コンピュータに、記憶部から本発明のガラスシステムの抵抗体の大きさに基づく昇温プログラムデータを読み出すステップと、前記電流測定部により測定された電流値と前記温度測定部により測定されたガラス管の温度とに基づき、前記昇温プログラムデータを参照して、前記ガラス管の状態を導出するステップとを実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】加熱装置の構成例を模式的に示す図である。
【図2】加熱装置の部分を模式的に示す斜視図である。
【図3】加熱装置の配列を説明するための図である。
【図4】変形例に係る電極のレイアウトを説明するための図である。
【図5】変形例に係る加熱装置を模式的に示す図である。
【図6】ガラスシステムの構成例を模式的に示す図である。
【図7】ガラスシステムの機能ブロックを模式的に示す図である。
【図8】変形例に係るガラスシステムの構成例を模式的に示す図である。
【図9】ガラスシステムの処理フローのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
1.加熱装置
加熱装置100は、図1および図2に示すように、複数のガラス管10と、ガラス管10の各々の周囲に設けられた抵抗体12とを含む。抵抗体12には、電気を流すための配線が施されており、抵抗体に電気を流すことで、その抵抗体が発熱する。
【0024】
抵抗体12は、導電材からなる膜により構成することができる。導電材の材質としては、銅などの金属やITOなどの金属酸加物を適用することができる。

ガラス体10には、抵抗体12に電流を流すための複数の電極(たとえば2つの電極)14a,14bが設けられる。ガラス体10の材質は特に限定されず、公知のものを適用することができる。
【0025】
複数のガラス管10は、接続部16により接続され、連結されている。接続部16は、導電材からなる管(たとえば金属管)や絶縁材からなる管により構成することができる。導電材からなる管の材料としては、たとえばニッケルとクロムの合金、カーボン繊維などを挙げることができる。絶縁材からなる管の材料としては、たとえばセラミックなどを挙げることができる。接続部16は、U字状からなってもよいし、又は、直線状であってもよく、ガラス管10の配列の仕方によって形状を決めることができる。
【0026】
ガラス管10の本数は、特に限定されないが、たとえば、8本とすることができる。ガラス管10の配列の仕方としては、図3に示すように、たとえば、円状、たとえば、リボルバー式拳銃の弾倉の穴、又は、レンコンの穴の配列のように並べることができる。図3において、8本のガラス管10−1〜10−8は、接続部16a,16bにより接続することができる。接続部16aは、ガラス管10の一方の側の口を接続するものであり、接続部16bは、ガラス管10の他方の側の口を接続するものである。図3において、なお、ガラス管10の配列は、図4に示すように、直線状に配列してもよい。
【0027】
連結されたガラス管10の一方の入口には、水、好ましくはミスト化された水又は水蒸気を供給する供給装置がある。この供給装置としては、加湿器や噴霧器などを挙げることができる。
【0028】
一つのガラス管10の長さは、たとえば、200mmとすることができる。
【0029】
ガラス管10に周囲に設けられた抵抗体12は、導電膜を成膜することで形成することができる。導電膜の成膜は、たとえばスパッタリングにより行うことができる。
【0030】
ガラス管10の周囲には、抵抗体12に電気を流すための電極14a,14bが設けられている。電極14a,14bの形状は、電極としての機能を実現することができるものであれば特に限定されず、たとえば、直線状に設けることができる。電極14a,14bは、抵抗体12の一辺および、その一辺に対向する辺に、ライン状に設けることができる。電極14a,14bは、ガラス管10に醜状に設けてもよいし、図5に示すように、ガラス管10の長手方向に沿って設けることもできる。電極14a,14bの材質は、電極としての機能を実現できるものであれば特に限定されないが、たとえば銅などの金属からなることができる。電極14a,14bには、電源部40により電流が供給される。
【0031】
抵抗体12に電気を流す電極14a,14bは、ガラス管10ごとに抵抗体12の両サイドに設けてもよい。また、複数のガラス管10を金属管からなる接続部16によって接続し、隣り合う抵抗体12をこの接続部16により電気的に接続することで、一方の端のガラス管10に電極14aを設け、他方の端のガラス管10に電極14bを設け、電流を流す態様であってもよい。この場合、複数のガラス管10の抵抗体12が1つの発熱体として実質的に機能することとなる。また、接続部16が金属管からなる場合には、引き出し配線を接続部16から引き出す態様、つまり電源から抵抗体12に電気を流すための導通部としての役割を果たさせることができる。
【0032】
2.ガラスシステム
ガラスシステム200は、図6〜図8に示すように、上記の加熱装置と、ガラス管10の温度を測定する温度測定部30と、抵抗体12に流れた電流の電流値を測定する電流測定部32と、電流測定部32により測定された電流値に基づきガラス管10の状態を導出する処理装置20とを含む。
【0033】
温度測定部30は、ガラス管10の温度を測定できるものであれば特に限定されず、たとえば熱電対により構成することができる。温度測定部30が熱電対からなる場合には、取り付けの容易さから、先端付近を粘着体(シール体など)に装着し、その粘着体を通じてガラス管30に取り付けてもよい。温度測定部30は、処理装置20との間でアンプA1を介して設けることができる。
【0034】
電流測定部32は、複数の電極14a,14b間に流れる電流を測定できるものあれば特に限定されず、公知のものを適用することができる。電流測定部32は、処理装置20との間でアンプA2を介して設けることができる。
【0035】
処理装置20は、電源部40などの構成要素を制御し、電流測定部32により測定された電流値と温度測定部30により測定されたガラス管10の温度とに基づき、ガラス管10の状態を導出する。処理装置20は、CPU、ROMおよびRAMなどを含む制御回路により実現することができる。処理装置20は、複数の制御回路により実現してもよい。
【0036】
電源部40は、商用周波数の交流ないしは直流電源を昇圧もしくは減圧する変圧器ないしは半導体デバイスにより、たとえば0~400V 前後に可変する装置を有している。
【0037】
ガラスシステム200は、さらに次の構成要素を含むことができる。
【0038】
ガラスシステム200には、温度設定スイッチ52および温度表示ランプ54が外部端子接続部(たとえばフォトカプラ)50を介して処理装置20に接続されている。温度設定スイッチ52は、ガラス管10の設定温度に対して高温側または低温側に設定を変更するためのものである。温度表示ランプ54は、温度設定スイッチ52による温度変更の程度を表示するランプ(たとえば発光ダイオード)である。
【0039】
AC/DCコンバータ44は、電源部40の交流電源を直流電源に変換するものである。変換された直流電源の経路は、処理装置に送られる経路と、DC/DCコンバータ46に送られ昇圧又は降圧されて処理装置20に送られる経路とがある。
【0040】
記憶部60には、抵抗体12と抵抗値との関係データ、抵抗体12の大きさなどに応じた昇温プログラムデータ、電流値と抵抗値との対応データ、電流値と温度変化との対応関係データ、電源を入れてから所定の温度までに上昇する時間、電源を切ってから所定の温度まで下降する時間、電源を遮断した後の最高到達温度、電源を投入した状態で破損する温度や電源投入から破損するまでの時間などのデータ電流値とガラス管の昇温する温度との対応データなどが格納されている。これらの記憶部60のデータは、ガラスシステム200の昇温のための制御等のために適切な条件を導出するための基礎データとなるものである。特に、昇温プログラムデータには、ガラス管10の大きさおよび厚さなど、抵抗体12の大きさおよび厚さに応じた昇温のための条件が付与されており、電流を流す時間、その電流を流す時間に応じた電流値や電圧値などが設定されている。記憶部60は、ハードディスク、ROM、RAMなどの公知の記憶媒体により構成することができる。記憶部60の機能は、処理装置20内の記憶領域により実現してもよい。
【0041】
ディスプレイ62は、処理装置20に接続され、ガラス管10の表面温度、ガラス管10の通電電流値、ガラス管10の破損警報、熱電対32の断線警報などを表示する。ディスプレイは、タッチパネルディスプレイなど公知の表示装置を適用することができる。
【0042】
コンピュータ64は、処理装置20に接続され、基本設定温度、ガラス管のタイプ(厚さ、形状、大きさなど)、熱電対回路の温度補正を行う。
【0043】
送受信部66は、処理装置20に接続されている。送受信部66により、インターネットなどの通信網を通じて、管理端末との間で情報を送受信するものである。送受信部66は、公知の送受信機器を適用することができる。
【0044】
処理装置20は、アンプA3を介して、ソリッドステート・リレー42の制御出力を出力し、ソリッドステート・リレー42を制御する。ソリッドステート・リレー42は、電源部40の抵抗体12へ電源の投入と遮断とを行うものである。ソリッドステート・リレー40がゼロクロス機能を搭載することで、電源のノイズの低減と低音化を実現することができる。ゼロクロス機能を有するソリッドステート・リレー42は、電源の波形を認識し、0Vのところでオン・オフをすることができる。
【0045】
また、図示はしないが、光や音によりガラスシステム自身の異常状態(たとえば温度測定部の異常状態)を警告する警告部があってもよい。
【0046】
図5に示すように、ガラスシステム200は、ターミナル70を介して、複数のガラス管10を制御してもよい。
【0047】
3.動作
電源を入れる(S10)。次に、設定データを読み込む(S12)。つまり、処理装置20がガラス管10の大きさに基づく昇温プログラムを読み出す。この際、抵抗値と抵抗体12の大きさとの対応データを有する場合には、電源を入れた後に、抵抗値を図り、抵抗体12の大きさを認識してもよい。
【0048】
次に、ガラス管10の表面温度を計測する(S14)。この際、必要に応じて、周辺環境温度も測定する。その初期表面温度および必要に応じて周辺環境温度に基づき、電圧出力データを演算する(S16)。電圧を出力する前に、水供給装置から水をガラス管内に導入し、電圧を出力する(S18)。次に、抵抗体12を流れた電流値を計測し(S20)、正常であれば、電流を流し続ける。たとえば、ガラス管の数を8本とし、各ガラス管を金属でつなぐ形とした場合には、8本のガラス管の温度が同じになるまで電流を流し続けることとしてもよい。

所定時間を経過した後に表面温度を計測し(S22)、所定温度まで達すると共にガラス管内に導入されたミスト状の水が加熱され所定量の過熱水蒸気が生成した段階で電圧出力を遮断する(S24)。この制御を具体的に説明すると、第1番目のガラス管内では、たとえば100℃まで水蒸気を昇温し、次のガラス管ではたとえば150℃に昇温するなどして、ガラス管を経るごとに水蒸気を昇温し、最終的には300℃の水蒸気を生成することとしてもよい。なお、電圧出力を遮断した後、水供給装置からのガラス管内への水の供給も停止する。
【0049】
所定時間後に表面温度が所定温度まで達していない場合には、電圧出力データを再演算し(S16)、再度、電圧を出力する(S18)。温度を一定に保つために、電圧出力を遮断してから所定時間の経過をタイマーにて把握し(S26)、その所定時間を経過した後に、表面温度を計測する(S22)。
【0050】
抵抗体12を流れた電流値を計測して(S20)で、その通電電流値が異常値を示した場合には、電圧出力を停止する(S28)。また、温度測定部30に異常が発生した場合にも(S30)、電圧出力を停止する(S28)。
【0051】
所定の電流が流れているにもかかわらず、温度測定部30が測定した温度が昇温プログラム通りの温度とならない場合には、温度測定部30が故障していると認識する。この場合、送受信部66により、管理端末にその故障情報を送信することができる。
【0052】
目視などで抵抗体12が破損していないことなどを確認した場合には、抵抗値に基づきガラス管10の大きさを認識してもよい。つまり、抵抗体の厚さが同じ場合であれば、抵抗体の抵抗値から抵抗体の大きさを認識することができる。
【0053】
また、抵抗体12の大きさがわかっていれば、抵抗値を確認することで、抵抗体12の破損状況を確認することができる。
【0054】
これらの処理を処理装置20のコンピュータに実行させるプログラムは、処理装置20を構成するROMなどに格納することができる。
【0055】
4.作用効果
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
【0056】
(1)加熱容器にて水蒸気を発生させると共に、その加熱容器の内て加圧加熱を行うことで、過熱水蒸気を作る技術がある。この方法により過熱水蒸気を生成する場合には、加熱容器にて、沸点まで加熱させるが、その加熱容器の内圧を高くして沸点温度を上げることにより、水蒸気の温度を100度以上の温度にするという方法が一般的にとられている。
【0057】
この方法にて過熱水蒸気を作ろうとした場合、加熱容器にて沸点まで原水を加熱するエネルギーが大きく必要である。この場合、圧力を高めるための圧力容器が必要となるため、設備は大きく高価な物となり保守管理も所定期間(たとえば毎年)ごとに必要となり、利用者の負担は大きなものとなる。
【0058】
また、別の技術として、水を霧状にしてヒータ等にて加熱することで沸点までの時間を短縮させ、ここで作られた水蒸気を加熱し続けることにより、高温の加熱水蒸気を作り出すものがある。
【0059】
この方法で作られる過熱水蒸気は、圧力容器こそ必要ないが、ヒータの性能や断熱・熱の伝導・温度制御などの精度により、作り出される過熱水蒸気の高温化には高いエネルギーが必要な上、水蒸気を加熱するための加熱領域としてそれなりの距離が必要となり、設備の小型化には数多の課題を抱えている。
【0060】
また、従来から存在するボイラ式や数多な方法による再加熱方式では、過熱水蒸気をつくるための管と加熱装置が別体である事で熱損失が大きく、これらの熱エネルギーを保持するための保温設備などを付帯する必要があり、小型化が難しい。また、水蒸気の通る管を金属などで作り、金属自体を発熱させる方法も考えられるが、基本的な水に含まれる成分によっては、金属の腐食が発生したり、内部に堆積物が固形化して内圧が上昇するなどの危険性がある。この場合、別途圧力センサーなどで内圧を管理して、加熱を止めるプログラム等が必要となるため、装置の製造価格が大きくなる。
【0061】
本実施の形態においては、加熱部分である抵抗体12とガラス管10とが一体化されているため、その分だけ、熱損失を抑えることができる。ミスト化された噴霧水などをガラス管10内に加熱して水蒸気にし、そのガラス管10または連続するガラス管10にて加熱を続けて過熱水蒸気にするため、圧力容器や保温装置などの特殊な設備が不要なため、設備の簡素化が図ることもできる。また、投入される噴霧水の温度や環境温度を読み取り、必要な温度まで、設定した昇温速度および時間で昇温させ、必要な温度を維持することができる。さらに、電圧や電流の微妙な変化も可能となり、省電力化を図る上での最適化も容易である。
【0062】
発熱するガラス管10の中に微細な噴霧水を送り込むことで、短時間かつ小さな設備で、過熱水蒸気を生成することができる。この発熱するガラス管10は均等に発熱し、発熱機能を有するガラス管10の温度調整は1度単位で行うことができるため、発熱するガラス管10内の雰囲気を容易にコントロールすることが可能である。このように発熱するガラスという特殊なガラスは、環境温度から600℃近い温度までコントロールが可能であることから、当該管内に噴霧された霧を加熱することで、必要な温度の過熱水蒸気を小さなエネルギーと小規模設備で作り出すことを可能とする。
【0063】
つまり、本実施の形態によれば、エネルギー損失が少ないため、省エネルギー化を図ることができると共に、エネルギー損失の要素の影響が少ないため、その分だけガラス管10の雰囲気のコントロールが容易となり、小型で、簡素化され、省電力化を図ることができる。
【0064】
(2)一般的な技術で導電皮膜を有する発熱するガラスの温度制を行おうとした場合、発熱するガラスにある温度を維持させようとすることから、あらかじめ発熱するガラスに一定の電圧をかけて、温度上昇を計測して、求める温度に成った時点での電圧と電流を暖めたいガラスに供給し続ける方法で温度の管理を行う方法を取るか、100Vなどの一般単相電流を発熱するガラスの電極に供給し、温度の上昇が求める温度に成ったことを確認する為の熱電対とそれに繋がる温度調節機により、発熱するガラスに供給された電気を遮断し、温度上昇を止める方法による温度管理が一般的である。
【0065】
これらの方法にて温度管理を行なった場合で、先のように電圧などを減圧されて求める温度になるようにあらかじめ計測された一定の電圧と電流にて加熱された場合に、当該ガラスの温度が低い場合等、求める温度までの昇温時間がかかる場合や、環境温度が低い場合等、求める温度に達しない。
【0066】
また、この方法だと、一定の電圧と電流を供給する場合には、毎回寸法が違う発熱するガラスに対して、あらかじめ暖めるガラスの電極間抵抗値を計測し、供給する電圧と電流を決定し、対応する制御装置を製作する必要がある。
【0067】
一方、温度調節機にて管理された場合には、設定した温度を維持する為に電源の供給時間をコントロールする事により当該発熱するガラスの温度を調節しているが、設定された温度に達するまでは電源が供給され、温度が達成された事を熱電対が温度調節機に伝えた時に電源の供給が経たれる。
【0068】
この制御方法は一般的なものであるが、保温効果の高いガラスなどの温度管理を行なおうとした場合などには、通電時に発熱し、温度上昇が始まる、希望の温度に達して温度調節機が電源の供給を遮断した後にも温度が上昇することになり、また、温度が下降し始めて、温度調節機が発熱するガラスに通電を始めると、再度設定温度以上になると言う結果が毎回繰り返される。
【0069】
これら、温度にむらが生じ常にガラス面の温度は上下し、結果として電力のロスが起こっているという課題を抱えている。
【0070】
つまり、要求温度を維持するための方法として、電源の供給の入り切りで行なう場合や、一定の電源を供給し続ける装置と方法では、少ない電力で一定の温度を、環境の変化に応じて対応する事も出来ない場合や、発熱するガラスの面積により変化する抵抗値を計測し、1枚毎に温度設定をする為の適切な電圧と電流を供給する装置を設ける必要があるという課題がある。また、一般的な技術では発熱体全般として、単に温度が上がると電源が切れる、もしくは温度がそれ以上上昇しない電源を供給するという方式を使用しており、発熱するガラスという特殊な製品の温度制御装置の使用分野が狭小的な状態となっているという課題があった。
【0071】
本実施の形態においては、昇温プログラムの対応テーブルを有するため、異なる寸法の発熱するガラスに対して、装置や方法を変更すること無く対応し、環境温度の変化にも対応して、希望の温度を維持し、また、安定した環境の場合には一定の温度を保つ機能をもち、少ない電力での温度維持を可能とする機能をもつ。
【0072】
発熱するガラスという特殊な製品の温度管理を環境温度から600℃近い温度まで、コントロールし、ガラス面積が異なる場合においても、自動的に状況を把握し、計算、判断を行い、制御をすることができる。
【0073】
発熱するガラスの温度をコントロールすることは、今まで市場に存在する、塗膜式や蒸着式の導電皮膜の性能が向上し、30℃前後までしか昇温しなかったガラスが、発熱するガラス性能の向上により、600℃近くまで昇温するため、その用途が増えた事で益々求められている。このように用途が広がり、発熱体としてのガラスを利用しようとした場合に、従来の温度コントロールの方法をそのまま発熱するガラスに使用しているが、その形状や大きさ、厚さや要求温度がそれぞれ異なり、それぞれに対応する制御装置と方法が異なり、都度開発を求められ、対応を行なう形で製作されて来たが、昇温速度に問題があったり、温度が不安定になったり、消費電力が大きかったり、制御装置の都度開発費用がかかるなどの問題は避けられない状況である。このような状況もさらに考慮すると、本実施の形態は大変有用なものである。以上のように、本実施の形態によれば、ガラスシステムを制御する処理装置の汎用性を向上することができる。
【0074】
(3)所定の電流が流れているにもかかわらず、温度測定部30が測定した温 度が昇温プログラム通りの温度とならない場合には、温度測定部30が故障していると認識することができる。
【0075】
(4)本実施の形態によれば、計測した電流値から漏電しているかどうか判断することができる。したがって、破損状態の確認も容易である。
【0076】
4.変形例
(1)加熱装置が加熱する液体は、水の他に、pHを調製した水やアルコール、アンモニアなどであってもよい。
【0077】
(2)上記の実施の形態においては、ガラス管10が複数設けられていたが、一つのガラス管から構成させてもよい。
【0078】
本実施の形態は、本発明の範囲内において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、たとえば、過熱水蒸気を生成する装置として、広く産業に適用される。
【符号の説明】
【0080】
10 ガラス管
12 抵抗体
14a 電極
14b 電極
16 接続部
20 処理装置
30 温度測定部
32 電流測定部
40 電源部
42 ソリッドステート・リレー
44 AC/DCコンバータ
46 DC/DCコンバータ
50 外部端子接続部
52 温度設定スイッチ
54 温度表示ランプ
60 記憶部
62 タッチパネルディスプレイ
64 コンピュータ
66 送受信部
70 ターミナル
72 水供給装置
100 加熱装置
200 ガラスシステム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ又は複数のガラス管と、
前記ガラス管の周囲に設けられた抵抗体と、
前記抵抗体に電気を流すことで当該抵抗体が発熱する加熱装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ガラス管の内部にミスト化された水又は水蒸気を供給する水供給部とを含み、
前記水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成するための加熱装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された加熱装置と、
前記抵抗体に流れた電流の電流値を測定する電流測定部と、
前記ガラス管の温度を測定する温度測定部と、
前記抵抗体の大きさに基づく昇温プログラムデータを記憶した記憶部と、
前記電流測定部により測定された電流値と前記温度測定部により測定された前記ガラス管の温度とに基づき、前記昇温プログラムデータを参照して、前記ガラス管の状態を導出するための処理部とを含むガラスシステム。
【請求項4】
請求項3において、
前記記憶部は、前記抵抗体の抵抗値と前記抵抗体の大きさとの間の関係データを有するガラスシステム。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記温度測定部は、熱電対であるガラスシステム。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかにおいて、
通信ネットワークに接続するための送受信部を含むガラスシステム。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載のガラスシステムのガラス管の状態を導出するためのガラスシステム用処理装置であって、
前記抵抗体の大きさに基づく昇温プログラムデータを記憶した記憶部を有し、
電流測定部により測定された電流値と温度測定部により測定された前記ガラス管の温度とに基づき、前記昇温プログラムデータを参照して、前記ガラス管の状態を導出する処理装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記記憶部は、前記抵抗体の抵抗値と前記抵抗体の大きさとの間の関係データを有する処理装置。
【請求項9】
コンピュータに、
記憶部から請求項3〜6のいずれかに記載のガラスシステムの抵抗体の大きさに基づく昇温プログラムデータを読み出すステップと、
前記電流測定部により測定された電流値と前記温度測定部により測定されたガラス管の温度とに基づき、前記昇温プログラムデータを参照して、前記ガラス管の状態を導出するステップとを実行させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−15291(P2013−15291A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149607(P2011−149607)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(511163850)
【Fターム(参考)】