説明

加熱補助部材

【課題】被加熱物の焦げ付きを抑制するとともに、表面が平滑な加熱補助部材と同等の使用感を得られることが可能な加熱補助部材を提供する。
【解決手段】加熱補助部材は、マイクロ波の照射による誘導加熱が可能な導電性物質層を有する発熱体16、を備え、発熱体16の表面には複数の凹凸部が形成され、凹凸部の面積に対する凹部14の面積の割合である圧着面積比が5%以下であり、凹部14の深さが0.1mm以下である。このようにすれば、被加熱物の焦げ付きを抑制できるとともに、使用者が発熱体16の表面に触れても凹凸部を認識することは難しく、表面が平滑な発熱体を用いた加熱補助部材と同等の使用感を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物を電子レンジで加熱する際にその被加熱物に焦げ目やクリスピー感を付与するための加熱補助部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子レンジを用いて食品を加熱調理する方法が種々提案されている。例えば、特開2008−289692号公報(特許文献1)には、紙でできた容器の底面に発熱体が取り付けられた加熱補助部材としての電子レンジ用包装容器が開示されている。この電子レンジ用包装容器は、その内部にピザやお好み焼きなどの被加熱物を収容し、これを電子レンジにて加熱して使用される。すると、電子レンジの誘電加熱により発熱体が発熱し、この発熱によって被加熱物に焦げ目を付け、できたてのようなクリスピーな食感を付与することができる。
【0003】
また、特表平3−503243号公報(特許文献2)には、電子レンジのマイクロ波と相互作用して熱を発する金属層を含む加熱補助部材としての積層体が開示されている。当該積層体には、片面に多数の隆起が形成されている。このような隆起により加熱対象の食品と積層体との間に空間が形成され、当該食品から放出される水分などを効率的に外部へ排出できるとともに、十分な熱伝導を提供できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−289692号公報
【特許文献2】特表平3−503243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の加熱補助部材では、たとえば発熱体の表面が平滑である場合には加熱調理時に発熱体へ被加熱物が焦げ付く場合があった。一方、上述した特許文献2のように加熱補助部材の表面に複数の突起を形成した場合には、被加熱物である食材から発生した油脂が突起の間の空間(たとえば溝)に流れ落ちてしまい、当該油脂を利用して食材をカリカリ感やジューシー感を出しながら焼くことが難しかった。
【0006】
また、加熱補助部材の使用者によっては、当該加熱補助部材の表面に凹凸部が形成されていることで違和感を覚える場合もあった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、被加熱物の焦げ付きを抑制するとともに、表面が平滑な加熱補助部材と同等の使用感を得られることが可能な加熱補助部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、加熱補助部材の焦げ付きを防止するための構成について研究を進める中で、本発明を完成するに至った。すなわち、加熱補助部材を構成する発熱体において凹凸部を形成し、さらに当該凹凸部の面積に対する凹部の面積の割合である圧着面積比を5%以下、さらに凹部の深さを0.1mm以下という数値範囲とすることで、加熱補助部材における被加熱物の焦げ付きの発生を抑制できるとともに、使用者が発熱体の表面を触っても凹凸部を感じることはほとんどなく、表面が平滑な発熱体を用いた場合と同様の使用感を得られるという新たな知見を得た。上記のような知見に基づき完成された本発明に従った加熱補助部材は、マイクロ波の照射による誘導加熱が可能な導電性物質層を有する発熱体を備え、発熱体の表面には複数の凹凸部が形成され、凹凸部の面積に対する凹部の面積の割合である圧着面積比が5%以下であり、凹部の深さが0.1mm以下である。
【0009】
このようにすれば、上記発熱体が上記のような圧着面積比である凹凸部を含むので、発熱体に対する被加熱物の焦げ付きを抑制できるとともに、使用者が発熱体の表面に触れても凹凸部を認識することは難しく、表面が平滑な発熱体を用いた加熱補助部材と同等の使用感を得ることができる。
【0010】
また、上記のように微細な凹凸が発熱体に形成されているので、被加熱物である食材から発生した油脂が凹凸部の凹部に流れ落ちても、発熱体と被加熱物との間に油脂の膜を十分な厚さで形成することが可能である。したがって、当該油脂の膜を利用して、被加熱物をカリカリ感、ジューシー感を出しながら加熱調理することができる。
【0011】
さらに、発熱体に形成された凹凸部はその凹凸形状が微細であり、大きな凹凸部が形成された発熱体よりロール状に巻いた場合の巻太りが少ない。そのため、加熱補助部材の製造工程における発熱体のハンドリングが容易であるというメリットも得られる。
【0012】
上記加熱補助部材において、圧着面積比は0.1%以上5%以下であることが好ましく、また圧着面積比が1%以上4%以下であることがより好ましい。この場合、加熱補助部材における焦げ付きの発生を抑制できるとともに、表面が平滑な発熱体を用いた加熱補助部材と同等の使用感を確実に得ることができる。なお、圧着面積比の上限値を5%としたのは、当該上限値を超えると、凹凸感を感触、視覚で感じられる為に、加熱補助部材の使用時に違和感を感じやすく、また、加熱補助部材の製造時に発熱体をロール状に巻き取った際に巻き太りしやすいという理由による。また、圧着面積比の下限値を0.1%としたのは、凹凸形状による焦げ付き防止効果が得られにくくなるという理由による。
【0013】
また、凹部の深さは0.01mm以上0.1mm以下とすることが好ましい。この場合、上述した効果を確実に発揮できる。なお、凹部の深さの上限値を0.1mmとしたのは、当該上限値を超えると、凹凸感を感触、視覚で感じられる為に、加熱補助部材の使用時に違和感を感じやすく、また、加熱補助部材の製造時に発熱体をロール状に巻き取った際に巻き太りしやすくなるという理由による。また、凹部の深さの下限値を0.01mmとしたのは、凹凸形状による焦げ付き防止効果が得られにくくなるという理由による。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被加熱物の焦げ付きを抑制するとともに、表面が平滑な加熱補助部材と同等の使用感を得られることが可能な加熱補助部材を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る加熱補助部材の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示した加熱補助部材の部分断面模式図である。
【図3】図1に示した加熱補助部材の拡大断面模式図である。
【図4】図1に示した加熱補助部材を構成する発熱体の拡大平面模式図である。
【図5】図1に示した加熱補助部材の別の実施形態を示す部分断面模式図である。
【図6】図1に示した加熱補助部材の別の実施形態を示す部分断面模式図である。
【図7】図1に示した加熱補助部材の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図8】図1に示した加熱補助部材の別の実施形態を示す部分断面模式図である。
【図9】図1に示した加熱補助部材の別の実施形態を示す部分断面模式図である。
【図10】図1に示した加熱補助部材の別の実施形態を示す部分断面模式図である。
【図11】図10に示した加熱補助部材を構成する発熱体の表面の電子顕微鏡写真である。
【図12】本発明に係る加熱補助部材の実施形態を示す平面図である。
【図13】図12に示した本発明に係る加熱補助部材の実施形態を示す底面図である。
【図14】図12に示した加熱補助部材の折り畳んだ状態を示す斜視図である。
【図15】図12に示した加熱補助部材の使用状態を示す斜視図である。
【図16】別の実施形態に係る加熱補助部材の一部を示す平面模式図である。
【図17】図16の線分XVII−XVIIにおける断面模式図である。
【図18】本発明に係る加熱補助部材のさらに別の実施形態を示す平面図である。
【図19】本発明に係る加熱補助部材のさらに別の実施形態を示す平面図である。
【図20】本発明に係る加熱補助部材のさらに別の実施形態を示す底面図である。
【図21】フラップを有する加熱補助部材の実施形態を示す平面図である。
【図22】袋状に形成された加熱補助部材の被加熱物を入れる前の実施形態を示す斜視図である。
【図23】袋状に形成された加熱補助部材の被加熱物を入れた実施形態を示す斜視図である。
【図24】袋状に形成された加熱補助部材の展開図である。
【図25】袋状に形成された加熱補助部材の被加熱物を入れた別の実施形態を示す斜視図である。
【図26】複数の被加熱物を載置しやすいように設計された加熱補助部材の実施形態を示す平面図である。
【図27】本発明に係る加熱補助部材である電子レンジ用加熱容器の外観を示す斜視図である。
【図28】図27に示した電子レンジ用加熱容器の平面図である。
【図29】図27に示した電子レンジ用加熱容器の側面図である。
【図30】本発明に係る加熱補助部材である電子レンジ用加熱容器の外観を示す斜視図である。
【図31】図30に示した電子レンジ用加熱容器の平面図である。
【図32】図30に示した電子レンジ用加熱容器の側面図である。
【図33】本発明に係る加熱補助部材である電子レンジ用加熱容器の外観を示す斜視図である。
【図34】図33に示した電子レンジ用加熱容器の平面図である。
【図35】図33に示した電子レンジ用加熱容器の側面図である。
【図36】図37に開示した電子レンジ用加熱容器への食材群の配置を示す説明図である。
【図37】図33に開示した電子レンジ用加熱容器への他の食材群の配置を示す説明図である。
【図38】図33に開示した電子レンジ用加熱容器に蓋を被せた状態示す斜視図である。
【図39】図33に開示した電子レンジ用加熱容器を補助容器と共に使用する態様を示す説明図である。
【図40】本発明に係る加熱補助部材である電子レンジ用加熱容器の外観を示す斜視図である。
【図41】本発明に係る加熱補助部材である電子レンジ用加熱容器を示し、(A)は電子レンジ用加熱容器の平面図であり、(B)は側面図であり、(C)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0017】
(実施の形態1)
図1に示すように、本発明に従った加熱補助部材1は、支持部20と、支持部20の表面に形成された発熱体部26とを備える。発熱体部26は、発熱体16と接着剤19とからなる。発熱体16は接着剤19によって支持部20の表面に固定されている。なお、発熱体16と接着剤19と支持部20の平面形状は四角形状である。なお、支持部20の平面形状は、他の任意の形状とすることができる。たとえば、円形状、楕円形状、三角形状、五角形状などの多角形状とすることができる。また、発熱体16の形状も、四角形状としているが、他の任意の形状(たとえば、円形状、楕円形状、三角形状、五角形状などの多角形状)とすることができる。なお、発熱体16のサイズは、支持部20のサイズより小さくしているが、支持部20のサイズと同じにしてもよい。発熱体16は、支持部20の表面のほぼ中央部に配置されている。発熱体16の周囲では、支持部20の外周表面が露出した状態になっている。なお、支持部20を用いることなく、発熱体16のみにより加熱補助部材1を構成してもよい。
【0018】
また、本発明による加熱補助部材1では、発熱体16には凹凸部が形成されている。凹凸部は、たとえばエンボス加工によって形成されていてもよく、複数の凹部14と、当該凹部14の間に凸部25が形成されている。凹部14および凸部25は、発熱体16をロール加工やプレス加工することにより形成されている。複数の凹部14は、たとえばマトリックス状あるいは格子状に配置されていてもよいが、いわゆる梨地模様のようにランダムに配置されていてもよい。凹部14の深さHは0.1mm以下とすることができる。
【0019】
発熱体16は、電子レンジの電磁波、特にマイクロ波を照射することで、被加熱物に焦げ目を付けることができる程度まで発熱し、具体的には約170〜250℃まで発熱するように構成されている。この発熱体16は種々の構成をとることができるが、少なくともアルミニウムやニッケル、金、銀、亜鉛、白金などからなる金属薄膜を有した構成とすることができる。例えば、図3に示すように、発熱体16としては、紙18、接着剤15、アルミニウム(Al)蒸着層12、及びPETからなる樹脂層13といった積層構造のものを使用することができる。なお、樹脂層13としては、Al蒸着層12による発熱に対して耐熱性のあるフィルムであれば、特に種類を限定する必要はないが、金属薄膜の蒸着加工適性を有しているフィルムを使用するのが好ましく、例えば、厚さが9μm〜50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)が好適である。また、Al蒸着層12などの金属薄膜の厚みは50〜150オングストロームの範囲が好ましい。このような発熱体16の具体例としては、例えば、凸版印刷株式会社製のサセプター(登録商標)が商用的には入手可能である。
【0020】
ここで、本発明による加熱補助部材1における圧着面積比について説明する。図2および図4を参照して、発熱体16の表面に複数の凹部14がマトリックス状に配置されている場合を考える。凹部14の幅をY、1つの凹部14と当該凹部14に隣接する凸部25との合計幅をXとする。そして、圧着面積比を(Y×Y)/(X×X)×100(%)と定義する。つまり、圧着面積比とは、発熱体16の表面における一定面積に対する凹部14の面積の割合を示している。すなわち、圧着面積比が大きければ、凹部14の占有面積が相対的に大きいことを意味し、圧着面積比が小さければ逆に凹部14の占有面積が相対的に小さいことを意味する。上記圧着面積比は、5%以下とすることが好ましい。このようにすれば、被加熱物の焦げ付きを抑制できるとともに、使用者が発熱体の表面に触れても凹凸部を認識することは難しく、表面が平滑な発熱体を用いた加熱補助部材と同等の使用感を得ることができる。
【0021】
また、凹部14および凸部25の断面形状は、図2に示すようにほぼ矩形状としてもよいが、図5に示すように台形状としてもよい。この場合、凹部14の幅Yは、図5に示すように凹部14の上方端部(つまり凸部25の上部表面と同じレベル)にて測定する。
【0022】
また、図6に示すように、凸部25の断面形状が半円状(つまり凸部25が半球状の形状)である場合、凹部14と凸部25との合計幅Xは図6に示すように隣り合う1組の凸部25の中心間の距離とする。また、凹部14の幅Yは、凸部25の中心から所定の距離Lだけ離れた位置における、隣り合う凸部25の表面間の距離とする。なお、この距離Lは、たとえば凸部25の断面形状である半円の半径の50%といった値を用いることができる。
【0023】
また、発熱体16の平面形状において、複数の凹部14は、たとえばマトリックス状あるいは格子状に配置されていてもよいが、ランダムに配置されていてもよい。また、凹凸部はたとえばエンボス加工によって形成されていてもよい。凹部14の深さは0.1mm以下とすることができる。なお、図2、図5、図6などでは、発熱体16の裏面(支持部20と対向する下部表面)がほぼ平坦な状態となるよう記載されているが、これらの図面では模式的に当該裏面の形状を記載しており、当該裏面については発熱体16の表面(支持部20と対向する裏面と反対側の面)の凹凸形状に沿った凹凸形状など、任意の形状となっていてもよい。
【0024】
次に、図7を参照して、上述した本発明による加熱補助部材1の製造方法を説明する。図7に示すように、加熱補助部材1の製造工程では、まず発熱フィルム準備工程(S10)を実施する。具体的には、発熱体16となるべき導電体層を含むシート状部材である発熱フィルムを準備する。この発熱フィルムの構成としては、上記図3に示した発熱体16のような積層構造を有するフィルムを用いることができる。
【0025】
次に、図7に示すように加工工程(S20)を実施する。具体的には、準備した発熱フィルムに対して、たとえば、その表面に凹凸形状が形成されたロールでロール加工を行うことにより、当該ロールの表面に形成された凹凸形状を発熱フィルムに転写する。この結果、発熱体16(図1参照)を得ることができる。このような転写技術を用いると、ロール加工に用いるロール表面の凹凸形状を変更することで、発熱フィルムに任意の構成の凹凸形状部を形成することができる。また、凹凸形状部が形成された発熱フィルムについて、その凹凸形状はきわめて微細なものであり、凹部の深さも0.1mm以下となっている。そのため、当該凹凸形状部が形成された発熱フィルムをロール状に巻き取った状態においても、凹凸形状部が形成されていない平滑な発熱フィルムをロール状に巻き取った場合に比べて、巻き取り径が極めて大きくなるといった問題は発生しない。つまり、凹凸形状部が形成される前後で、発熱フィルムを巻き取ったロールの径の変化量は比較的小さく抑えられる。そのため、当該ロールの径が凹凸形状部の形成により大きくなることに起因して、製造工程での発熱フィルムのハンドリングが難しくなる、といった問題の発生を抑制できる。
【0026】
次に、図7に示す貼付け工程(S30)を実施する。具体的には、たとえば紙などからなる支持部20の表面に発熱体16を貼付ける。発熱体16は、たとえば接着剤19などを用いて支持部20に固定される。このようにして、図1に示す加熱補助部材1を得ることができる。
【0027】
なお、上記加工工程(S20)において、発熱フィルムをロール加工するときに、発熱フィルムを挟み込む1対のロールの両方について、それぞれの表面に凹凸加工を施しておけば、図8に示すように、発熱体16の表面および裏面の両方に、明確な凹凸形状を形成することができる。ここで、図8は、表面および裏面のそれぞれに明確な凹凸形状部が形成された発熱体16を用いた加熱補助部材1を示す。発熱体16は、接着剤19により支持部20の表面に固定されている。接着剤19は、発熱体16の裏面における凹凸形状部の凹部を充填するように配置されているので、接着剤19と発熱体16との接触面積は十分大きくなっている。そのため、発熱体16の支持部20に対する接着強度が向上している。
【0028】
一方、上記加工工程(S20)において、発熱フィルムをロール加工するときに用いる1対のロールの一方のみに凹凸加工を施しておけば、図9に示すように、発熱体16の一方の表面(支持部20と対向する裏面とは反対側の表面)に明確な凹凸形状部を形成できる一方で、発熱体16の裏面については、表面側の凹凸形状部の形状に沿った滑らかな曲面状の凹凸部が形成される。このような発熱体16を支持部20に接着剤19を用いて貼付けることでも、図1に示した加熱補助部材1を製造できる。
【0029】
また、ロールの一方にいわゆる梨地加工を施すことで、発熱体16の表面に図10および図11に示すような、ランダムな凹凸部が形成された(つまり梨地肌の)発熱体16を得ることができる。
【0030】
(実施の形態2)
図12〜図15を参照して、本発明による加熱補助部材の実施の形態2を説明する。図12に示すように、加熱補助部材1は、第1発熱体4が形成された第1支持部2と、第2発熱体5が形成された第2支持部3と、第1支持部2と第2支持部3とを連結する連結部6と、を備えている。第1支持部2及び第2支持部3は、後述する第1発熱体4及び第2発熱体5の支持体として機能するものである。第1支持部2と第2支持部3とはほぼ同一の形状および大きさに形成されている。
【0031】
第1支持部2及び第2支持部3は、当該第1支持部2及び第2支持部3が谷折り可能となるよう、その中央に折り目21,31が形成されている。なお、図13に示すように、この折り目21,31は、切り抜き部21a、31bと折曲線21b、31bとによって構成されており、その中央部には円形部21c,31c(平面形状がほぼ円形の開口部)が形成されている。このように、折り目21,31の少なくとも一部を切り抜き部21a,31aとすることによって、折曲線21b,31bだけで折り目21、31を形成する場合に比べ、加熱使用時に第1支持部2と第2支持部3が広がった状態に戻ろうとするのをより効果的に防止することが可能となる。また、第1支持部2及び第2支持部3は、紙、不織布、織布、スポンジ、ウレタンなどによって形成することができるが、この中でも特に、被加熱物F(図15参照)からの油分や水分を吸収するという観点からは紙、不織布、織布などによって形成することが好ましい。また、加熱補助部材1を複数回使用した後に廃棄するという観点からは、紙、不織布などによって第1支持部2及び第2支持部を形成することが好ましい。
【0032】
連結部6は、図12に示すように、第1支持部2の左端と、第2支持部3の右端とを2カ所において連結しており、各連結部6は所定間隔をあけて複数の(図12では2つの)連結体62として形成されている。この各連結体62は、その中央に折り目61が形成されており、この折り目61に沿って連結体62が谷折りとなるよう屈曲可能となっている。この連結体62を屈曲させることによって、第2支持部3が第1支持部2に近づき(つまり第2支持部3が第1支持部2に重なるように移動し)第2支持部3に形成された第2発熱体を被加熱物Fと接触させるよう構成されている。
【0033】
連結体62の長さ、すなわち、第1支持部2と第2支持部3との間隔は、第1支持部2及び第2支持部3によって挟持する被加熱物Fによっても変わってくるが、例えば、被加熱物Fが切り身魚や切り落としの肉片の場合は5mm以上50mm以下とすることが好ましい。また、ブロック肉や厚切りパン、魚や鰯、鯵などの魚丸ごと1匹を被加熱物Fとする場合は、当該間隔は15mm以上100mm以下とすることが好ましい。この範囲内とすることで、被加熱物Fの形状に対して加熱補助部材1をフィットさせることができる。なお、この連結体62の材質としては、特に限定されるものではないが、紙、不織布等を挙げることができる。
【0034】
そして、第1支持部2上には第1発熱体4が,第2支持部3上には第2発熱体5がそれぞれ形成されている。各発熱体4,5は、基本的に実施の形態1において説明した発熱体16と同様の構成を備えている。また、第1発熱体4と第2発熱体5とは、互いに同様の構成を備えている。つまり、第1発熱体4および第2発熱体5は、シート状であって、第1発熱体4と第2発熱体5とはほぼ同一の形状・大きさとなっている。そして、第1発熱体4および第2発熱体5における圧着面積比は5%以下であり、凹部の深さが0.1mm以下である。
【0035】
この場合、本発明による加熱補助部材1と同様に、第1発熱体4および第2発熱体5での被加熱物の焦げ付きを防止できるとともに、発熱体の表面に触れても平滑な場合とほとんど差を感じることがなく、表面が平滑な発熱体を用いた場合と同様の使用感を得られる。
【0036】
また、加熱補助部材1を繰返し使用する場合に、第1発熱体4や第2発熱体5からの発熱によって第1支持部2または第2支持部3が局所的に焦げ付くといった問題の発生を、フラットな形状の発熱体を用いる場合よりも抑制することができる。このため、加熱補助部材1の繰返し使用回数を増大させることができる。
【0037】
第1発熱体4および第2発熱体5の大きさは第1支持部2および第2支持部3よりも一回り小さい寸法に形成されている。そして、第1発熱体4および第2発熱体5は、接着剤などによってそれぞれ第1支持部2および第2支持部3の中央部に接着されることによって支持されている。図12からわかるように、第1支持部2および第2支持部3の外周縁部には第1発熱体4および第2発熱体5によって覆われておらず露出した領域が設けられている。
【0038】
次に、上述した加熱補助部材1の使用方法を説明する。
まず、加熱補助部材1は、使用前においては、図14に示したように、第1支持部2及び第2支持部3が折り目21、31にて谷折り方向に折り曲げられ、さらに各連結体62も折り目61にて谷折り方向に折り曲げられた状態で袋状、箱状の包装容器(図示しない)内に収容されている。
【0039】
このように包装容器内に収容された加熱補助部材1を包装容器から取り出し、加熱補助部材1を図12のように広げる。そして、被加熱物Fを第1支持部2の第1発熱体4上に載置せる。そして、図15に示すように、連結体62を折り目61に沿って屈曲させて、第2支持部3を被加熱物Fの上に被せる。このとき、被加熱物Fの上面には第2発熱体5が接触している。また、第2支持部3が折り目31に沿って折れ曲がっているため、被加熱物Fに対して第2発熱体5がより広い面積で接触している。また、加熱補助部材1は、第2支持部3や連結体62が折れ曲がった状態で包装容器に収容されていたため、この連結体62と第2支持部3の折れ曲がった状態でくせが付いている。これにより、図15のように第1支持部2と第2支持部3とで被加熱物Fを挟持した状態から、図12のような第1支持部2と第2支持部3とが広がった状態へと戻ってしまうことを防止することができる。
【0040】
このように、被加熱物Fを第1支持部2及び第2支持部3で挟持した状態、すなわち、被加熱物Fの下面に第1発熱体4を接触させ、被加熱物Fの上面に第2発熱体5を接触させた状態で、電子レンジを使用して誘電加熱を行う。これにより、被加熱物F自体が誘電加熱により加熱されるとともに、第1発熱体4及び第2発熱体5が誘電加熱されて約170〜250℃まで発熱し、被加熱物において発熱体と接触している面を約160〜210℃まで加熱する。これにより被加熱物Fの底面及び上面に同時に焦げ目が付く。
【0041】
なお、第1発熱体4と第2発熱体5とが接触すると過加熱となる可能性があるが、第1支持部2と第2支持部3との互いに接触しやすい部分である外周縁部は露出している(すなわち発熱体4、5が形成されていない)ため、当該外周縁部においては第1発熱体4と第2発熱体5とは接触することがない。そのため、過加熱を確実に防止することができる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0043】
例えば、図16および図17に示すように、第1支持部2の外周縁部において、第1発熱体4の周囲を囲むように壁部7を形成することができる。このように壁部7を形成することによって、加熱することで被加熱物Fから出てくる油分や水分を壁部7によって堰き止めることができる。この結果、電子レンジ内が汚れることを防止することができる。なお、この壁部7は、特に限定されるものではないが、例えば、紙、不織布、織布、スポンジ、ウレタン等によって形成することができる。また、当該壁部7を、油分や水分を吸収するような材質によって構成することがより好ましい。油分や水分を吸収するような材質の例としては、たとえば上述した紙、不織布、織布、スポンジ、ウレタン等を挙げることができるが、これら以外の材料であっても油分や水分を吸収可能であれば壁部7の材質として利用することができる。なお、この壁部7の高さは、被加熱物Fによっても変わってくるが、油分や水分を堰き止めることができつつ被加熱物Fにフィットすることができるという観点から、約5mm以下とすることが好ましい。
【0044】
また、上記実施形態では第1支持部2および第2支持部3に形成された折り目21、31は一本ずつであるが、特に第1支持部2または第2支持部3における折り目21、31の本数は限定されるものではなく、二本以上とすることもできる。この折り目21、31の本数を多くすることで、曲面や凹凸面等を有し平坦ではない被加熱物Fにも各発熱体4、5を確実に接触させることができる。
【0045】
また、上記実施形態では、第1支持部2及び第2支持部3は、平面視が矩形状となっていたが、特にこの形状に限定されるものではなく、平面視を円形状などといったように、対象とする被加熱物Fに合わせた形状とすることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、第1支持部2,および第2支持部3の外周縁部が露出しているが、第1発熱体4または第2発熱体5をそれぞれ第1支持部2または第2支持部3と同じ大きさとし、第1支持部2および第2支持部3の外周縁部が露出しないように構成することもできる。また、図18に示すように、互いに接触しやすい端部である、第1支持部2の右端部や第2支持部3の左端部(つまり第1支持部2および第2支持部3において連結部6の位置する端部と反対側の端部)のうち少なくともどちらか一方のみを露出させることもできる。
【0047】
また、図19に示すように、第1支持部2および第2支持部3の4隅に突起部8を形成することもできる。例えば、この突起部8は第1支持部2および第2支持部3の裏面から凸状に第1支持部2および第2支持部3を押し込んで(プレス加工して)形成することができる。この突起部8を形成することで、各支持部2、3に支持された発熱体4、5同士が接触することを防止することができる。なお、この突起部8は、発熱体4、5が接触しないのであれば、その形成される位置や数は特に限定されない。たとえば、第1支持部2および第2支持部3の長辺(相対的に長い外周の辺)の中央部などに突起部8を形成してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、連結部6を介して第1支持部2と第2支持部3とが連結しているが、連結部6を省き、第1支持部2と第2支持部3とを直接連結することもできる。また、連結部6を構成する連結体62の数は特に限定されず、例えば図20に示すように3つの連結体62によって第1支持部2と第2支持部3とを連結することもできる。
【0049】
また、第1支持部2と第2支持部3とによって被加熱物Fを挟持した状態を保持するよう、第1支持部2と第2支持部3とを係合させる係合部を第1支持部2や第2支持部3の少なくともどちらか一方に形成することもできる。なお、この係合部の構成は、特に限定されるものではないが、例えば、図21に示すような、第2支持部3に形成された切欠部32と、第1支持部2に切込み23を入れることによって形成された係止部22と、によって構成することができる。この係止部22を切欠部32に係止させることで、第1支持部2と第2支持部3とで被加熱物Fを挟持した状態を維持することができる。
【0050】
また、上述した構成とは逆の構成、すなわち、第1支持部2に切欠部を形成し、第2支持部に係止部を形成することもできるが、被加熱物Fを積載した後の係止作業の作業性が良く、加熱時の係止部の外れも起こりにくいという観点から、第1支持部2に係止部22を、第2支持部3に切欠部32を形成することが好ましい。なお、これら係止部22や切欠部32の数は特に限定されるものではなく、たとえば図21に示すように係合部を複数形成してもよい。図21に示した加熱補助部材1では、複数の係合部として、2つの切欠部32と、2つの係止部22とが形成されている。特に加熱補助部材1のサイズが大きくなると、より確実に第1支持部2と第2支持部3との端部を係合させるために、複数の係合部を形成することが好ましい。
【0051】
また、この切欠部32を囲むように折り目33(図20参照)を形成してもよい。この折り目33を形成することで、第2支持部3の折り目33で囲われた領域が、第2支持部3のその他の部分に対して多少異なる動きをすることができる、すなわち、遊びを持たせることができる。これによって、電子レンジで被加熱物Fを加熱中に、係止部22と切欠部32との係合が外れることを防止することができる。また、図20に示すように、第2支持部3の4隅に切込み34を形成してもよい。この切込み34を形成することによって、第2支持部3自体の動きに遊びを持たせることで(つまり、第2支持部3の外周縁部が中央部に対して相対的に自由に変形できるようにすることで)、被加熱物Fの加熱中に第2支持部3が被加熱物Fを挟持した状態から開いた状態に戻ってしまうことを防止することができる。
【0052】
また、上記実施形態では、第1発熱体4と第2発熱体5の大きさや形状を同一としていたが、特にこれに限定されるものではなく、第1発熱体4と第2発熱体5の大きさや形状を異なるものにすることもできる。例えば、第2発熱体5の幅(図12の左右方向での幅)を第1発熱体4の幅(図12の左右方向での幅)よりも短くすることによって、第1発熱体4と第2発熱体5とが接触しにくくするように構成することができる。なお、特に限定されるものではないが、このときの第2発熱体5の幅は、第1発熱体4の幅よりも約5mmほど短くすることができる。
【0053】
また、図21に示すように、第2支持部3の上側外周縁部及び下側外周縁部にフラップ9を形成することができる。この各フラップ9は、切込み35及び折り目36によって画定されており、折り目36に沿って谷折りさせることができるように構成されている。そして、連結部6を折り目61に反って折り曲げて第1支持部2の上方に第2支持部3が配置され、被加熱物Fを挟持する状態とした場合に、フラップ9を第1支持部2側に約90度折り曲げることで、第1支持部2と第2支持部3との間に形成される隙間をフラップ9によって埋めることができる。これにより、加熱中に被加熱物Fから油や水などが飛散した場合であっても、フラップ9によってこの油や水を受け止めて電子レンジ内が汚れることを防止することができる。なお、このフラップ9は、同様の構成で第1支持部2に形成することもできるし、第1支持部2および第2支持部3の両方に形成することもできる。また、図21では、折り目36はミシン目によって形成されているが、フラップ9を谷折りさせることができれば特にミシン目に限定されるものではなく、例えば折曲線などによって形成することもできる。
【0054】
また、図21に示すように、第1支持部2および第2支持部3の四隅をそれぞれ囲むように円弧状の折り目37を形成することもできる。この結果、当該四隅の折り目37が補強部として作用することにより、加熱時に第1支持部2および第2支持部3が変形して反り返るのを防止することができる。なお、第1支持部2は被加熱物Fが載置されることで反り返りはあまり発生しないため、図21に示すように、第2支持部3のみに折り目37を形成してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、第1支持部2と第2支持部3とは、図12に示したような展開した状態と、図15に示したような第1支持部2の上方に第2支持部3が配置される状態との、2つの状態をとることができたが、展開した状態にならないような形態、すなわち、常に第1支持部2の上方に第2支持部3が配置されている形態を採用することもできる。このような例としては、図22及び図23に示すような、袋状の加熱補助部材1を挙げることができる。この袋状の加熱補助部材1は、第1発熱体4を支持する第1支持部2と、第2発熱体5を支持する第2支持部3と、を備えている。第1支持部2と第2支持部3とは、1辺の外周縁を残して、残りの3辺の外周縁同士が連結されることで袋形状を形成している。なお、この連結されていない部分は、被加熱物Fを加熱補助部材1内に入れるための開口部10(図23参照)を構成している。また、図24はこの袋状の加熱補助部材1を展開した図であるが、図24に示すように、第1発熱体4および第2発熱体5が互いに接触して過加熱となることを防止するため、第1支持部2および第2支持部3の外周縁部には第1発熱体4および第2発熱体5を形成しないことが好ましい。なお、第1支持部2の外周に、袋状を形成するためののりしろ部24が形成されているが、第2支持部3にのりしろ部24が形成されていてもよい。
【0056】
また、図22に示すように、被加熱物Fを加熱補助部材1の内部に入れていない状態では、第1支持部2と第2支持部3との間の距離は、被加熱物Fの厚さよりも小さいことが好ましい。そして、図23に示すように、被加熱物Fを加熱補助部材1の内部に入れて、第1発熱体4上に被加熱物Fを載置すると、第1発熱体4および第2発熱体5が被加熱物Fに接触した状態を保持したまま、第2支持部3が第1支持部2から離間する方向に移動する。このように、加熱補助部材1を袋状にした場合であっても、被加熱物Fの上下面に第1発熱体4および第2発熱体5を接触させることができるため、被加熱物Fの両面に同時に焦げ目を付けることができ、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
なお、上記変形例は、展開した状態にならない加熱補助部材1であっても上記実施形態と同様の効果を得ることができることを示す一例であり、少なくとも外周縁の一部が連結されていれば加熱補助部材1を袋状にすることには特に限定されない。例えば、図23の開口部10が形成された外周縁部の反対側の外周縁部も連結させないことによって、当該反対側の外周縁部に開口部10をもう一つ形成して筒状の加熱補助部材とすることができる。なお、加熱補助部材1を袋状にすることは、被加熱物Fから出る油や水が電子レンジ内に流れ出たり飛散したりすることを防止できるという効果を奏する点から好ましい。また、第1支持部2および第2支持部3の平面形状は、矩形状に限定されるものでもなく、種々の形状を採用することができる。
【0058】
また、図25に示すように、第1支持部2と第2支持部3との連結部分(たとえば第1支持部2を平面視したときの外周縁部のうち互いに対向する1組の縁部)に伸縮部11を形成することもできる。この伸縮部11は、例えば連結部分を一旦内側に折り曲げて蛇腹状にすることで形成することができる。このように伸縮部11を形成することで、被加熱物Fを加熱補助部材1内に入れた際に、伸縮部11が伸びることで第2支持部3全体が第1支持部2に対して実質的に平行状態を保持したまま上方に移動することができる。このため、第1発熱体4および第2発熱体5を被加熱物Fの全面に均等に接触させることができる。
【0059】
また、図26に示すように、第1支持部2、第2支持部3、第1発熱体4および第2発熱体5を、被加熱物Fを複数載置可能なサイズとすることもできる。これにより、同時に複数の被加熱物Fを加熱することが可能となる。この場合は、上述した実施形態と同様に1つの第1支持部2または第2支持部3につき1つの発熱体(第1発熱体4または第2発熱体5)が貼られていてもよいし、その他にも、1つの支持部(たとえば第1支持部2)につき2つ以上の発熱体が貼られていてもよい。
【0060】
上記各実施形態における加熱補助部材1は、第1発熱体4および第2発熱体5に上述したような凹凸形状が形成されているため、その機能が劣化することなく複数回使用することができる。また、上記各実施形態の第1支持部2および第2支持部3に形成された折り目21、31は、省略することができる。
【0061】
(実施の形態3)
図27〜図29は、本発明の一実施形態である加熱補助部材としての電子レンジ用加熱容器101(以下、単に「加熱容器101」という。)の外観を示している。この加熱容器101は、容器内に被加熱物としての食材を収容して、食材を電子レンジ(図示せず)にて加熱調理するためのものであり、食材を1回または複数回にわたり加熱調理した後は、使い捨てすることができるものとなっている。
【0062】
図示例の加熱容器101は、上面が開口したトレー状をなしており、食材を支持可能な底面部102と、底面部102の周縁から立ち上がる側面部103とを備えている。底面部102は、平面視においてほぼ円形状に形成されており、これにより、加熱容器101の輪郭形状を角部のない滑らかなものとしている。電子レンジのマグネトロン(図示せず)から発せられるマイクロ波は、容器の輪郭形状が角部のある角形状である場合は、角部にマイクロ波が集中する特性を有しているので、角部が優先的に照射され易くなる。そのため、本実施形態では、底面部102を円形状とすることにより、角部へのマイクロ波の集中をなくして、加熱容器101の底面部102および側面部103にマイクロ波が均一に照射されるようにしている。その結果、詳細は後述するが、底面部102および側面部103がマイクロ波の照射を受けて均一に発熱するようになっている。
【0063】
なお、底面部102の形状は、円形状の他にも、長円形状や楕円形状、コーナ部を丸めた多角形状など、角部のない略円形状のものであれば、種々の形状を想定できる。また、本実施形態では、底面部102および側面部103にマイクロ波が均一に照射されるように、底面部102を角部のない略円形状としているが、必ずしもこれに限られるものではなく、底面部102を角形状に形成してもよい。
【0064】
側面部103は、底面部102に一体に形成されており、底面部102を囲繞する所定の高さの周壁をなしている。これにより、卵などの固形性を有さない非固形状・半固形状の食材(流動性を有する食材)やチーズやバターなどの加熱により流動性を得る食材を加熱容器101内に収容した場合でも、食材が加熱容器101からこぼれないようになっている。
【0065】
側面部103には、その上端から下端にかけて径方向外側に突き出る複数の山部130と径方向内側に凹む複数の谷部131とが、側面部103の全周にわたって、側面部103の周方向に沿って交互に繰り返して設けられている。この山部130および谷部131は、上方ほど幅広になるように形成されていて、側面部103は、その横断面(水平方向の断面)が波形状に形成されている。
【0066】
側面部103は、上記した山部130および谷部131が複数設けられて、その表面が凸凹状になっているために、表面が平滑な場合と比較すると、その表面積が大きくなっている。その結果、後述するように、マイクロ波の照射により発熱して食材を熱伝導により側方から加熱する側面部103の伝熱面積が大きくなるために、食材への加熱力が高まっている。さらに、加熱後においては、側面部103は、広い表面積を有することから、発生した熱が効率良く放熱されて、その温度が比較的早く低下するようになっている。加えて、複数の山部130および谷部131が側面部103を補強するため、加熱容器101の強度が向上するので、保型性にも優れたものとなり、食材(特に、流動性を有する食材)を収容した場合に、食材を安定した状態で保持することが可能である。
【0067】
周回する山部130のピッチ、すなわち、隣り合う2つの山部130の間の間隔は、4個/10cm以上20個/10cm以下の範囲であることが好ましく、8個/10cm以上17個/10cm以下がより好ましい。ピッチが4個/10cm未満であると、側面部103の表面がフラットな場合と表面積があまり変わらないため、食材に対する加熱力があまり上がらず、また、側面部103の補強が十分でないからである。
【0068】
また、山部130および谷部131の高低差h(図28参照)は3mm以上10mm以下の範囲であることが好ましい。上記のような数値範囲とした理由は、以下のとおりである。すなわち、高低差hが3mm未満であると、表面の凹凸が小さすぎて、側面部103の表面がフラットな場合と表面積があまり変わらないため、食材に対する加熱力があまり上がらず、さらに、側面部103の補強が十分でないからである。一方、高低差hが10mmを越えると、表面の凹凸が大きくなりすぎて、実用的ではないからである。
【0069】
底面部102および側面部103には、食材と接触する側の面に、マイクロ波の照射を受けて発熱する導電性物質層104が設けられている。この導電性物質層104は、上述した本発明の実施の形態1における発熱体16のAl蒸着層12と同様に、電子レンジによる加熱の際に発熱して高温(約170℃〜250℃)になる。この結果、熱伝導により、食材を下方および側方より加熱し、必要に応じてこれに接触する食材の表面に焦げ目や焼き目を付けたりするなどして、食材を加熱調理することができる。導電性物質層104を含む発熱体により上記加熱容器101は構成されている。発熱体における圧着面積比は5%以下となっている。そのため、本発明の実施の形態1における加熱補助部材と同様に、繰り返し利用が可能であり、耐久性に優れた加熱容器101を得ることができる。
【0070】
ここで、加熱容器101の大きさ(底面部102の直径d)は、特に限定されるものではなく、その用途に応じて種々の大きさに設定することができる。例えば、この加熱容器101を、例えばお弁当などにコンパクトに収納して料理を提供するのに用いる場合には、底面部102の直径dは約3cm〜5cm程度であることが好ましい。また、夕食時などの一品料理を作るのに用いる場合には、底面部102の直径dは約5cm〜25cm程度であることが好ましい。ただし、底面部102の直径dが小さすぎると(例えば3cmより小さいと)、加熱容器101が小さすぎて調理がしにくい。一方、底面部102の直径dが大きすぎると(例えば25cmを超えると)、加熱容器101の保形性が低下して変形し易くなる可能性がある。
【0071】
また、加熱容器101の深さ、すなわち、側面部103の高さH(図29参照)も、特に限定されるものではなく、その用途に応じて種々の大きさに設定することができるが、1cm以上が好ましい。高さHが1cm未満であれば、加熱容器101内に収容した食材(特に、流動性を有する食材)がこぼれるなどして調理しにくい。さらに、側面部103の高さHが低いと、後述するように、側面部103によりマイクロ波が加熱容器101内に進入するのを防ぐ遮断効果がほとんど発揮されず、食材に照射するマイクロ波の量を抑制できないからである。一方、高さHが高ければ高いほど、側面部103によるマイクロ波の遮断効果が発揮されるので好ましいが、お弁当などに収納する場合には、最大で約2cm〜4cm程度に抑える必要がある。また、その他の用途においても、側面部103の高さHが高すぎると(例えば10cmを超えると)、サイズが大きくなりすぎて(嵩張って)持ち運びがしにくくなる可能性がある。
【0072】
以上のことを考慮すると、加熱容器101の大きさ、具体的には、底面部102の外周長(本実施形態ではπ×d)に対する加熱容器101の深さ(側面部103の高さH)の比は、1/60以上3/4以下の範囲にあることが好ましく、1/20以上1/2以下の範囲にあることがより好ましい。たとえば、加熱容器101は、その寸法が、加熱容器101の下面(底面部102)の直径d(図28に示す)が9cmに、上面の直径D(図30に示す)が10.5cmに、側面部103の高さH(図29に示す)が4cmに、山部130および谷部131の高低差h(図29に示す)が4mmに、それぞれ設定されていてもよい。
【0073】
本実施形態では、上記した底面部102および側面部103は、実施の形態1における図3に示す構造と同様に、紙からなる平坦なシート材(図3の紙18)の少なくとも一方の面に、接着剤15を介して導電性物質層104と、導電性物質層104を保護する耐熱性フィルム層である樹脂層13とを積層して形成した1枚の発熱体16(発熱シート)により構成される。この発熱体16には、あらかじめ表面に凹凸形状部が形成されている。そして、本発明の実施の形態1に示したように、圧着面積比が5%以下、凹部の深さが0.1mm以下となるように凹凸形状が形成されている。したがって、このような構成の加熱容器101によっても、本発明の実施の形態1などに示す加熱補助部材1と同様の効果を得ることができる。そして、円形にカットした所定の大きさの発熱体16を、折り目110(図28に示す)に沿って、紙18が最表面となるように側面部103を折り起こして底面部102の周囲に立ち上げた状態にする。さらに、側面部103の全周にわたって、外折りおよび内折りの折り目111,112(図28に示す)に沿って、山折りおよび谷折りを交互に繰り返し行うことにより、一体形成されている。このような成形に際しては、例えば、プレス加工機などを利用することができる。
【0074】
シート材(図3の紙18に相当するベース部材)を構成する紙の材質や厚さは、特に限定されるものではないが、紙厚が坪量20g/m〜120g/m程度の薄紙を使用するのが好適である。厚みの薄い薄紙を使用することにより、電子レンジによる加熱調理の完了後に、導電性物質層104から伝達される熱がこもらずに効果的に外気に放熱されるので、導電性物質層104(側面部103)の温度の早期低下を促進することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、あらかじめ凹凸部が形成された発熱体16(図3参照)自体を成形することにより、加熱容器101が作製されているが、これに限られるものではなく、例えば、紙などからなる容器(図示せず)を作製した後に、別に作製した耐熱性フィルム層である樹脂層13上に蒸着によりアルミニウム薄膜などの導電性物質層104を形成した構成の発熱用のシート(図示せず)を、所定の形状にカットして上記容器の底面や側面に接着などにより貼り付けることで、加熱容器101を作製するようにしてもよい。
【0076】
次に、上記した構成の加熱容器101を用いて食材を加熱調理する方法を説明する。まず、加熱容器101の底面部102上に、所望の料理を構成する種々の食材を載せる。その際、焦げ目や焼き目を付けたい食材については底面部102上に直に載せる。
【0077】
そして、食材を収容した加熱容器101を電子レンジ内に載置して、電子レンジによる加熱を所定の時間行う。このようにして電子レンジによる加熱が行われると、電子レンジから放出されるマイクロ波は食材および加熱容器101に照射される。これにより、食材は、マイクロ波照射によりその内部から加熱される。さらに、加熱容器101の底面部102および側面部103に設けられた導電性物質層104がマイクロ波の照射を受けて発熱し高温になる結果、導電性物質層104からの熱伝導によって下方および側方からも加熱される。このとき、導電性物質層104は、これに接触する食材の表面を直に加熱するので、望みに応じて食材に焼き目や焦げ目が付けられる。
【0078】
ここで、電子レンジから加熱容器101に照射されたマイクロ波のうち、側面部103に外側から到達したマイクロ波は反射され、加熱容器101内への侵入(食材への照射)が遮断されている。また、側面部103に内側から到達したマイクロ波は反射されるが、側面部103(導電性物質層104)の表面は、複数の山部130および谷部131により凸凹状に形成され、さらに加熱容器101を構成する発熱体の表面にも小さな凹凸部が形成されているので、マイクロ波は側面部103(導電性物質層104)の表面で反射されて四方八方に拡散するので、側面部103が平滑に形成されている場合と比較すると、食材に照射されるマイクロ波の量が減少する。
【0079】
このように、本実施形態の加熱容器101では、側面部103に導電性物質層104が設けられているとともに、側面部103が横断面波形状に形成されていることで、食材に直接作用するマイクロ波の量、すなわち、マイクロ波照射による食材の内部加熱を抑制した状態で食材を加熱調理することができる。そのため、その抑制効果により、食材内部の水分の蒸散量を減らすことができ、その結果、加熱調理後の食材は、ふっくらとした柔らかな食感が付与される。
【0080】
また、たとえば、バターを加熱容器101の底面部102上に乗せた後、よくかき混ぜた卵2個にすりつぶしたジャガイモ1個、牛乳100mlを混ぜ込んだものを加熱容器101内に流し込み、600Wで約4分間、電子レンジで加熱する、とった調理に本発明による加熱容器101を用いてもよい。この場合、本実施形態の加熱容器101で加熱調理した卵のオムレツは、見た目にもふっくらとおいしそうに焼け、柔らかな食感を感じることができる。このように本実施形態の加熱容器101を使用すると、従来のフライパンやオーブンなどによる加熱に近い状態を実現することが可能となっている。なお、このような調理に用いる加熱容器101は、その寸法が、たとえば加熱容器101の下面(底面部102)の直径d(図28に示す)が12.4cmに、上面の直径D(図29に示す)が15.3cmに、側面部103の高さH(図29に示す)が4cmに、山部130および谷部131の高低差h(図28に示す)が4mmに、それぞれ設定されていてもよい。
【0081】
また、本実施形態の加熱容器101では、側面部103が凸凹状になっていることで、側面部103の表面積が大きくなるので、加熱時には、導電性物質層104による伝熱面積が大きくなるために、食材への加熱力が高まる。そのため、しっかりと食材に熱を通すことができる。一方、加熱調理後においては、導電性物質層104は、広い表面積を有することから、発生した熱が効率よく放熱されて、その温度が比較的早く低下する。加えて、シート材としての紙18が厚みの薄い薄紙で構成されていることにより、導電性物質層104から伝達される熱がこもらずに効果的に放熱される。そのため、加熱調理後短時間で、火傷などの心配なく側面部103を手で摘まむことができ、加熱容器101を持ち運びすることができる。
【0082】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記した実施形態に限定されない。例えば、本実施形態では、加熱容器101はその上面が開口しており、上面から食材にマイクロ波の照射が可能となっているが、この上面開口を塞ぐ取外し可能な蓋をさらに備えるように構成してもよい。蓋としては、たとえば、下面が開口しており、食材上に被さる平面視略円形状の蓋体部と、蓋体部の周縁から垂れ下がる垂下壁部とを備える構造のものを用いてもよい。垂下壁部は、上記した加熱容器101の側面部103と同様、その全周にわたり周方向に沿って、複数の山部と谷部とが交互に繰り返す横断面波形状に形成されていてもよく、蓋体部および垂下壁部には、食材と対向する側の面に、マイクロ波の照射を受けて発熱する導電性物質層104が設けられていてもよい。蓋の構成および製造方法は、上述した加熱容器101の構成および製造方法と同様とすることができる。また、蓋の大きさは、加熱容器101の大きさとほぼ同じか、それよりも少し大きく設定されていてもよい。
【0083】
このように蓋を用いれば、加熱容器101の上面開口が蓋により覆われるので、食材の上方から照射されるマイクロ波は、蓋の導電性物質層により反射されるため、加熱容器101内への侵入が抑制される。よって、食材へのマイクロ波の照射をほぼ遮断することが可能になる。そして、蓋の蓋体部および垂下壁部に設けられた導電性物質層がマイクロ波の照射により発熱して高温になるので、その熱伝導により食材は下方および側方からだけでなく、上方からも加熱されるようになる。その結果、食材はマイクロ波照射による内部加熱ではなく導電性物質層104からの熱伝導による外部加熱により加熱されるようになるので、食材内部の水分の蒸散量を減らすことができ、より従来のフライパンやオーブンなどによる加熱に近い状態を実現することが可能である。
【0084】
(実施の形態4)
以下、本発明による加熱補助部材の実態の形態4を説明する。図30〜図32は、本発明の一実施形態である加熱補助部材としての電子レンジ用加熱容器201(以下、単に「加熱容器201」という。)の外観を示している。この加熱容器201は、本発明の実施の形態1に開示した発熱体16により構成されたものであり、容器内に食材を収容して、食材を電子レンジ(図示せず)にて加熱調理するためのものであって、食材の加熱調理を複数回実施した後は、使い捨てすることができるものとなっている。この発熱体16には、あらかじめ表面に凹凸形状部が形成されている。そして、本発明の実施の形態1に示したように、圧着面積比が5%以下、凹部14の深さが0.1mm以下となるように凹凸形状が形成されている。したがって、このような構成の加熱容器201によっても、本発明の実施の形態1などに示す加熱補助部材1と同様の効果を得ることができる。
【0085】
図30に示した加熱容器201は、基本的には本発明の実施の形態3における加熱容器101と同様の構成を備えるが、その外形が異なっている。すなわち、図30〜図32に示した加熱容器201は、発熱体が図30に示すように、上方が開口したトレー状をなしており、食材を配置可能な底部202と、底部202の周縁から立ち上がる側壁部203とを備えている。底部202は、平面視において直線状部分202aと円弧状部分202bとで周縁が形成された略俵形状に形成されている。これにより、加熱容器201の輪郭形状を角部のない滑らかなものとしている。なお、底部202の形状は、俵形状の他にも、コーナ部を丸めた多角形状など、直線状部分と円弧状部分とで周縁が形成された形状のものであれば、種々の形状を想定できる。
【0086】
側壁部203は、底部202の周縁で立ち上げられて底部202を囲むように底部202と一体に形成されており、底部202を囲綾する所定の高さの周壁をなしている。これにより、卵などの固形性を有さない非固形状あるいは半固形状の食材(流動性を有する食材)やチーズやバターなどの加熱により流動性を得る食材を加熱容器201内に収容した場合でも、食材が加熱容器201からこぼれないようになっている。
側壁部203には、図31に示すように、外側に突き出る複数の山部230a、230bと内側に凹む複数の谷部231a、231bとが、底部202の周縁に沿って交互に繰り返す波板形状に形成されている。底部202の円弧状部分202bで立ち上がる円弧領域203bは、図32に示すように、底部202と隣接する一端から他端までにかけての範囲、すなわち全領域が波板形状に形成されている。円弧領域203bにおける波板形状は、底部202から離れるほど底部202の周縁に沿った方向に幅広になるように形成されており、側壁部203は、底部202に略平行な横断面(水平方向の断面)が波形状に形成されている。
一方、底部202の直線状部分202aで立ち上がる直線領域203aは、山部230aおよび谷部231aが底部202からの距離に係わらず略同じ幅になるように波板形状に形成されている。このとき、直線領域203aの山部230aの配列ピッチは、円弧領域203bの山部230aの配列ピッチよりも広くなるように形成されている。また、直線領域203aは、底部202から距離L1だけ離れた位置、すなわち、円弧領域203bよりも底部202から離れた位置から波板形状に形成されている。このとき、直線領域203aは、底部202と波板形状に形成された位置との間の距離L1の範囲が略平板形状に形成されている。ここで、本実施形態に係る直線領域203aは、略平板形状に形成された部分、すなわち、底部202と隣接する一端と波板形状に形成された領域との間の距離L1が、直線領域の底部202と隣接する一端から他端までの距離L2の1/10以上4/5以下になるようにするのが好ましく、1/4以上3/4以下になるようにするのがより好ましい。なお、本実施形体では、たとえば距離L1は13mm、距離L2は37mmである。
【0087】
側壁部203は、上記した山部230a,230bおよび谷部231a,231bが複数設けられて、実施の形態3に示した加熱容器101と同様に、その表面が凸凹状になっているために、表面が平滑な場合と比較すると、その表面積が大きくなっている。その結果、後述するように、マイクロ波の照射により発熱して食材を熱伝導により側方から加熱する側壁部203の伝熱面積が大きくなるために、食材の加熱力が高まっている。さらに、加熱後においては、側壁部203は、広い表面積を有することから、発生した熱が効率良く放熱されて、その温度が比較的早く低下するようになっている。加えて、複数の山部230a、230bおよび谷部231a、231bが側壁部203を補強するため、加熱容器201の強度が向上するので、保塑性にも優れたものとなる。そのため、食材(特に、流動性を有する食材)を収容した場合に、食材を安定した状態で保持することが可能である。
【0088】
円弧領域203bにおける山部230bの配列ピッチ、すなわち、隣り合う2つの山部230bの頂点同士の間隔は、4個/10cm以上20個/10cm以下の範囲であることが好ましく、8個/10cm以上17個/10cm以下とすることがより好ましい。一方、直線領域203aにおける周回する山部230bのピッチ、すなわち、隣り合う2つの山部230bの頂点同士の間隔は、4個/10cm以上10個/10cm以下の範囲であることが好ましく、8 個/10cm以上17個/10cm以下であることがより好ましい。
【0089】
また、円弧領域203bにおける山部230bおよび谷部231bの高低差hbは0.1mm以上20mm以下の範囲であることが好ましく、3mm以上10mm以下の範囲であるのがより好ましい。一方、直線領域203aにおける山部230bおよび谷部231bの高低差haは0.1mm以上20mm以下の範囲であることが好ましく、3mm以上10mm以下の範囲であるのがより好ましい。
【0090】
底部202および側壁部203の断面構造および平面形状は、基本的に実施の形態3に示した加熱容器101の場合と同様である。
【0091】
また、ここで、本実施形態における加熱容器201は、底部202の円弧状部分202bの曲率半径Rがたとえば40mm 、底部202の長手方向の長さL3がたとえば155mmであるが、加熱容器201の大きさは、特に限定されるものではなく、その用途に応じて種々の大きさに設定することができる。
【0092】
以下、プレス加工機を用いた加熱容器201の製造方法について説明する。まず、プレス加工機の雄型と雌型との間に複数枚の発熱体16(発熱シート)を重ねて配置する。 このとき、例えば、50枚の発熱シートが重ねて配置される。
【0093】
次に、雄型と雌型とで重ねられた複数枚の発熱シートを挟んでプレス成形する。雄型及び雌型は、発熱シートと接する面が完成した加熱容器201の内面及び外面の各々と同形状に形成されている。すなわち、雄型及び雌型は、直線領域203aの波板形状の部分及び円弧領域203bに接する面が波形状に形成されており、直線領域203aの略平板形状に形成された部分及び底部202に接する面が略平面形状に形成されている。これら雄型及び雌型は、発熱シートを完全に挟み込んだ状態で、概ね重ねて配置した発熱シートの枚数分だけ間隔が空くようになっている。
【0094】
そして、プレス成形された発熱シートは、複数の加熱容器201が重なった状態でプレス加工機から取り出される。
【0095】
本実施形態では、側壁部203は、底部202の直線状部分202aで立ち上がる直線領域203aが円弧状部分202bで立ち上がる円弧領域203bよりも、底部202から離れた位置から波板形状に形成されている。これにより、加熱容器201は、直線領域203aの剛性を波板形状の部分により向上させるとともに、直線領域203aの波板形状でない部分によりプレス加工時等に引張応力が生じ難くすることができる。このため、加熱容器201は、発熱シートを折り曲げて形成されるとともに、底部に直線状部分202aを有する容器であっても、プレス加工時等に破れ難く、かつ、使用時に歪み難い。また、加熱容器201は、プレス加工時に破れ難いため、多量の枚数の発熱シートを重ね、まとめてプレス加工することができ、加熱容器201の生産性を向上させることができる。
【0096】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、その製造方法について、本実施形態では、紙シートの片面に、接着層、導電性物質層204、耐熱性フイルム層を積層してなる発熱シートを成形することにより、加熱容器201が作製されているが、これに限られるものではなく、実施の形態3において例示した他の方法(例えば、紙などからなる容器(図示せず)を作製した後に、別に作製した耐熱性フイルム層上に蒸着によりアルミニウム薄膜などの導電性物質層204を形成した構成の発熱用のシート(図示せず)を、所定の形状にカットして前記容器の底面や側面に接着などにより貼り付けることで、加熱容器201を作製する方法)を採用してもよい。
【0097】
(実施の形態5)
図33〜図37を参照して、本発明による加熱補助部材としての加熱容器301を説明する。加熱容器301は、基本的に本発明の実施の形態4に示した加熱容器201と同様の構成を備える。すなわち、この加熱容器301は、本発明の実施の形態1に開示した発熱体16により構成されたものであり、容器内に食材を収容して、食材を電子レンジ(図示せず)にて加熱調理するためのものであって、食材の加熱調理を複数回実施した後は、使い捨てすることができるものとなっている。この発熱体16には、あらかじめ表面に凹凸形状部が形成されている。そして、本発明の実施の形態1に示したように、圧着面積比が5%以下、凹部の深さが0.1mm以下となるように凹凸形状が形成されている。したがって、このような構成の加熱容器301によっても、本発明の実施の形態1などに示す加熱補助部材1と同様の効果を得ることができる。
【0098】
また、図示例の加熱容器301は、上面が開口したトレー状をなしており、食材を支持可能な底部302と、底部302の周縁から立ち上がる側壁部303とを備えている。底部302は、平面視において略直線と曲線とを相互に接続した長手方向を有する略俵形状に形成されており、これにより、加熱容器301の輪郭形状を角部のない滑らかなものとしている。そのため、本実施形態では、底部302を俵形状とすることにより、実施の形態4における加熱容器201と同様に、角部のマイクロ波の集中という問題点を回避している。その一方で俵形状は、直線状部分302aと曲線としての円弧(半円)状部分302bが相互に接続されて形成されており、円弧状部分302bの各点から加熱容器301の中心Caまでの距離Lbは、直線状部分302aの各点から加熱容器301の中心Caまでの距離Laに等しいかあるいはそれよりも長くなっている。このため、加熱容器301の底部全体で見た場合に、側壁部303からの加熱の程度に差が生じることとなる。具体的には、円弧の中心Cb付近では、底部302からの加熱に加えて円弧状の側壁部303からも囲まれるような態様で加熱がなされる。これに対し、加熱容器301の中心Caの領域では、底部302および2つの直線状部分302aの側壁部303からの加熱はなされるが、円弧状部分302bからは遠いため、円弧の中心Cbの領域と比較すると加熱の程度は低くなる。以上のことから、当該俵形状の加熱容器301においては、加熱容器301の長手方向の両端領域で高い加熱効果が得られ、逆に中心領域においては加熱効果が低くなり、いわゆる加熱ムラを実現することができる。
【0099】
なお、底部の平面形状の一部を形成する直線は、厳密な意味での直線に限定されるものではなく、直線とほぼ同一視できるような線も含む趣旨である。このため、底部の平面形状は厳密な意味で上記した俵形状(直線と曲線との組みあわせ)に限定されるものではなく、ほぼ直線と同一視できるような線と曲線とを組み合わせたような、例えば楕円形状やその他の長円形状であってもよい。
【0100】
側壁部303は、底部302に一体に形成されており、底部302を囲続する所定の高さの周壁をなしている。これにより、卵などの固形性を有さない非固形状・半固形状の食材(流動性を有する食材)やチーズやバターなどの加熱により流動性を得る食材を加熱容器301内に収容した場合でも、食材が加熱容器301からこぼれないようになっている。
側壁部303には、その上端から下端にかけて径方向外側に突き出る複数の山部330a、330bと径方向内側に凹む複数の谷部331a、331bとが、側壁部303の全周にわたって、側壁部303の周方向に沿って交互に繰り返して設けられている。円弧状部分302bにおける山部330bおよび谷部331bは、上方ほど幅広になるように形成されていて、側壁部303は、その横断面(水平方向の断面)が波形状に形成されている。一方、直線状部分302aにおける山部330aおよび谷部331aは、底部から上端に向かって略平行に形成されている。
【0101】
実施の形態4の場合と同様に、側壁部303は、上記した山部330a、330bおよび谷部331a,331bが複数設けられて、その表面が凸凹状になっているために、表面が平滑な場合と比較すると、その表面積が大きくなっている。その結果、後述するように、マイクロ波の照射により発熱して食材を熱伝導により側方から加熱する側壁部303の伝熱面積が大きくなるために、食材の加熱力が高まっている。さらに、加熱後においては、側壁部303は、広い表面積を有することから、発生した熱が効率良く放熱されて、その温度が比較的早く低下するようになっている。
【0102】
加えて、複数の山部330a、330bおよび谷部331a、331bが側壁部303を補強するため、加熱容器301の強度が向上するので、保型性にも優れたものとなり、食材(特に、流動性を有する食材)を収容した場合に、食材を安定した状態で保持することが可能である。
【0103】
図33に示す実施形態においては、直線状部分302aと円弧状部分302bとで山部330a、330bおよび谷部331a、331bのピッチを変えている。すなわち、直線状部分302aのピッチの方が円弧状部分302bのピッチよりも大きくなっている。これは、円弧状部分302bの表面積を広くすることで側壁部303での発熱を増大させ、ひいては食材に対する加熱力を向上させるためである。これと同時に、円弧状部分302bの側壁部303の面積が広いため、外部から照射されるマイクロ波が側壁部303で或る程度遮断され、食材への直接の照射量を低減することができる。これは、食材から水分が過剰に失われてしまうのを抑制することにつながる。
【0104】
底部302および側壁部303には、本発明の実施の形態4における加熱容器と同様に、食材と接触する側の面に、マイクロ波の照射を受けて発熱する導電性物質層が設けられている。この導電性物質層は、電子レンジによる加熱の際に発熱して高温(約170℃〜 250℃)になることで、熱伝導により、食材を下方および側方より加熱し、必要に応じてこれに接触する食材の表面に焦げ目や焼き目を付けたりするなどして、食材を加熱調理するために設けられたものである。
【0105】
ここで、加熱容器301の大きさ(底部302の直線状部分の長さと円弧状部分の直径d)は、特に限定されるものではなく、その用途に応じて種々の大きさに設定することができる。例えば、この加熱容器301を、例えばお弁当などにコンパクトに収納して料理を提供するのに用いる場合には、俵形状の長手方向の長さは3cm以上5cm以下程度であることが好ましい。また、夕食時などの一品料理を作るのに用いる場合には、より多くの種類の食材を入れて調理することになるため、俵形状の長手方向の長さは5cm以上25cm以下程度であることが好ましい。ただし、底部302の長手方向の長さが短すぎると(例えば3cmより小さいと)、加熱容器301が小さすぎて調理がしにくく、一方、底部302の長手方向の長さが長すぎると(例えば25cmを超えると)、加熱容器301の保形性が低下して変形し易くなる可能性がある。この場合に、長手方向の寸法とこれに直交する方向の寸法の比は、4:1〜3:2の範囲とするのが適度な加熱ムラを実現する観点からより好ましい。
【0106】
また、加熱容器301の深さ、すなわち、側壁部303の高さHも、特に限定されるものではなく、その用途に応じて種々の大きさに設定することができるが、1cm以上が好ましい。高さHが1cm未満であれば、加熱容器301内に収容した食材(特に、流動性を有する食材)がこぼれるなどして調理しにくい上に、側壁部303の高さHが低いと、後述するように、側壁部303によりマイクロ波が加熱容器301内に進入するのを防ぐ遮断効果がほとんど発揮されず、食材に照射するマイクロ波の量を抑制できないからである。一方、高さHが高ければ高いほど、側壁部303によるマイクロ波の遮断効果が発揮されるので好ましいが、お弁当などに収納する場合には、最大で約2cm〜4cm程度に抑える必要がある。また、その他の用途においても、側壁部303の高さHが高すぎると(例えば10cmを超えると)、嵩張って持ち運びがしにくくなる可能性がある。
【0107】
以上のことを考慮すると、加熱容器301の大きさ、具体的には、底部302の外周長(本実施例では、直線状部分長×2+円弧状部分長×2)に対する加熱容器301の深さ(側壁部303の高さH)の比は、1:100〜3:10の範囲にあることが好ましい。また、本実施形態に係る加熱容器301は、薄い紙を用いた発熱体16(発熱シート)により形成されるため、多数の発熱シートを重ね合わせた状態で切断およびプレスすることにより、少ない工程で大量の加熱容器301を製造することが可能である。この点は、加熱容器301の形状が底部302と側壁部303とからなるシンプルな形状に起因して得られる利点である。
【0108】
次に、上記した構成の加熱容器301を用いて食材を加熱調理する方法を説明する。まず、加熱容器301の底部302上に、図36に示すように、所望の料理を構成する種々の食材を載せる。図示例では、加熱容器301の中央部に卵を載せ、長手方向の両端領域にそれぞれ生のブロッコリー3切れと厚切りベーコン2切れを載せている。また、食材をふっくらと仕上げるために、大さじ1杯の水も加えている。なお、図36に示される加熱容器301の寸法は、加熱容器301の底部302の長手方向の長さが約16cm、幅が約8cm、そして側壁部303の高さH(図36に示す)が約3.5cmとなっている。また、円弧状部分302bの山部330bおよび谷部331bの高低差h(図34に示す)が4mmに、それぞれ設定されている。
【0109】
そして、食材を収容した加熱容器301を電子レンジ内に載置して、電子レンジによる加熱を所定の時間行う。図示例では、600Wで約2分30秒間、電子レンジにて加熱した。このようにして電子レンジによる加熱が行われると、電子レンジから放出されるマイクロ波は食材および加熱容器301に照射される。これにより、食材は、マイクロ波照射によりその内部から加熱されるとともに、加熱容器301の底部302および側壁部303に設けられた導電性物質層304がマイクロ波の照射を受けて発熱し高温になる結果、導電性物質層304からの熱伝導によって下方および側方からも加熱される。このとき、導電性物質層304は、これに接触する食材の表面を直に加熱するので、望みに応じて食材に焼き目や焦げ目が付けられる。
【0110】
ここで、電子レンジから加熱容器301に照射されたマイクロ波のうち、側壁部303に外側から到達したマイクロ波は反射され、加熱容器301内への侵入(食材への照尉)が遮断されている。また、側壁部303に内側から到達したマイクロ波は反射されるが、側壁部303(導電性物質層)の表面は、複数の山部330a、330bおよび谷部331a、331bにより凸凹状に形成されているので、マイクロ波は側壁部303(導電性物質層)の表面で反射されて四方八方に拡散する。そのため、側壁部303が平滑に形成されている場合と比較すると、食材に照射されるマイクロ波の量が減少する。
【0111】
このように、本実施形態の加熱容器301では、側壁部303に導電性物質層304が設けられているとともに、側壁部303が横断面波形状に形成されていることで、食材に直接作用するマイクロ波の量、すなわち、マイクロ波照射による食材の内部加熱を抑制した状態で食材を加熱調理することができる。そのため、その抑制効果により、食材内部の水分の蒸散量を減らすことができ、その結果、加熱調理後の食材は、ふっくらとした柔らかな食感が付与される。
【0112】
上記に加えて、火の通りにくいブロッコリーや厚切りベーコンに対しては、底部302および円弧状に取り囲む側壁部303の両方からの十分な加熱が行われると共に、卵に対しては底部302および直線状部分302aの側壁部303からある程度抑制された加熱が行われる。このため、適度な加熱ムラが実現でき、すべての食材を適切に加熱することが可能となる。本実施形態においては、ブロッコリーと厚切りベーコンに十分火が通っているが、卵は理想的な半熟状態となった。
【0113】
さらに図37は、上記と同じ加熱容器を使用し、その中央部に玉ねぎ中1/2個を載せ、長手方向の両端領域にそれぞれ生のジャガイモ中1/2個とかぼちゃ適量を載せている。また、上記の場合と同様に食材をふっくらと仕上げるために、大さじ1杯の水も加えている。これを600Wで約4分間、電子レンジで加熱した。本実施形態の加熱容器301で加熱調理した結果、火の通りにくいジャガイモおよびかぼちゃはふっくらと調理でき、一方、火の通りやすい玉ねぎは適度な硬さで調理できた。このように本実施形態の加熱容器301を使用すると、従来のフライパンやオーブンなどによる加熱に近い状態を実現することが可能となっている。
【0114】
また、本実施形態の加熱容器301では、側壁部303が凸凹状になっていることで、側壁部303の表面積が大きくなるので、加熱時には、導電性物質層304による伝熱面積が大きくなるために、側壁部303から食材-の加熱力が高まっており、しっかりと食材に熱を通すことができる。一方、加熱調理後においては、導電性物質層304は、広い表面積を有することから、発生した熱が効率よく放熱されて、その温度が比較的早く低下する。加えて、加熱容器301を構成する発熱体が厚みの薄い薄紙を構成要素として含んでいることにより、導電性物質層304から伝達される熱がこもらずに効果的に放熱される。そのため、加熱調理後短時間で、火傷などの心配なく側壁部303を手で摘まむことができ、加熱容器301を持ち運びすることができる。
【0115】
以上、本発明の第1の実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記した実施形態に限定されない。例えば、本実施形態では、加熱容器301はその上面が開口しており、上面から食材にマイクロ波の照射が可能となっているが、図38に示すように、この上面開口を塞ぐ取外し可能な蓋309をさらに備えるように構成してもよい。
【0116】
図38に示した蓋309は、下面が開口しており、食材上に被さる平面視略俵形状の蓋体部390と、蓋体部390の周縁から垂れ下がる垂下壁部391とを備えている。蓋体部390および垂下壁部391には、加熱容器301と同様に、食材と対向する側の面に、マイクロ波の照射を受けて発熱する導電性物質層が設けられている。つまり、蓋309も加熱容器301と同様に図3などに示した発熱体16により構成されている。図示した蓋309の垂下壁部391は平面状の形状となっているが、加熱容器301に形成されているような山部および谷部を形成するようにしてもよい。そうすることで、食材-照射されるマイクロ波の量を制御することができるからである。また、蓋309を構成する発熱体としては、加熱容器301のように表面に凹凸形状が形成されてはいないものを用いてもよい。蓋309の大きさは、加熱容器301の大きさとほぼ同じか、それよりも少し大きく設定されている。
【0117】
この実施形態によると、加熱容器301の上面開口が蓋309により覆われるので、食材の上方から照射されるマイクロ波は、蓋309の導電性物質層304により反射されるため、加熱容器301内へのマイクロ波の侵入が抑制される。そのため、食材へのマイクロ波の照射をほぼ遮断することが可能になる。そして、蓋309の蓋体部390および垂下壁部391に設けられた導電性物質層がマイクロ波の照射により発熱して高温になるので、その熱伝導により食材は下方および側方からだけでなく、上方からも加熱されるようになる。その結果、食材はマイクロ波照射による内部加熱ではなく導電性物質層304からの熱伝導による外部加熱により加熱されるようになるので、食材内部の水分の蒸散量を減らすことができ、より従来のフライパンやオーブンなどによる加熱に近い状態を実現することが可能である。
【0118】
図39は、当該実施形態に係る加熱容器301と補助容器321とを示す図である。この補助容器321は、概略形状は加熱容器301に対応しているが、寸法は加熱容器301より一回り大きなものとなっている。このため、加熱容器301を内部に収容して保持できるようになっている。この補助容器321の役割は、加熱容器301の形状を維持することである。なぜなら、加熱容器301自体は上記したように、基本的には薄い紙をベースにした発熱体16から形成されているため、加熱容器301内に流動性の高い食材を入れた場合に、側壁部303が倒れてしまうことも考えられる。これでは、流動性の高い食材を用いた調理に不都合である。そのため、当該補助容器321内に加熱容器301を収容し、補助容器321の剛性によって加熱容器301の変形を防ごうとするものである。
【0119】
上記のような目的のために、補助容器321はマイクロ波を通す材料であれば、厚手の紙や耐熱性プラスチックなどによって形成することができる。補助容器321の具体的な形状は、加熱容器301の形状にある程度対応していれば特に限定されものではなく、加熱容器301の側壁部303に形成された山部330a、330b及び谷部331a,331bに対応するような凹凸を側面部に設けても良いし、単純な平面で側面部を形成するようにしてもよい。
【0120】
次に、図40を参照しながら、本実施形態に係る加熱容器301の変形例について説明する。図40に示した加熱容器341の基本構成は図33などに示した加熱容器301と共通である。しかしながら、図40に示した加熱容器341では、直線状部分302aにおける側壁部343aに山部および谷部が形成されていない点が異なっている。このように、直線状部分302aにおける側壁部343aに山部および谷部が形成されていない場合には、当該側壁部343aの表面積が大きくなることはないので、この部分での発熱が抑制されることで加熱容器341の中央部の加熱も抑制される。これにより、さらに適度な加熱ムラを実現することが可能となる。
【0121】
次に、図41を参照しながら、本発明に係る加熱容器の他の変形例について説明する。図41に示した加熱容器351は、底部352の平面形状が角部を丸めた長方形となっている点で、図33などに示した加熱容器301と異なっている。具体的には、底部352の長辺(長手方向)の長さが約12cmで、短辺の長さが約6.5cmとなっている。また、側壁部353の高さは約4.5cmとなっている。また、平面視において底部352の各角部は丸められているが、その半径は約2cmとなっている。
【0122】
このように形成された加熱容器351の場合にも、上記の加熱容器301と同様に、適度な加熱ムラを生じさせることができる。すなわち、加熱容器351の中央領域の食材は底部352および2つの側壁部353から加熱されるのに対して、長手方向の両端領域の食材に対しては底部352および3つの側壁部353から加熱がされる。このため、中央領域の食材に対する過加熱が防止されると同時に、両端領域の食材に対しては十分な加熱がなされることとなる。
【0123】
この時、本実施形態の加熱容器351は、角部が丸められているためにマイクロ波の集中を抑えることができ、角部が丸められていない加熱容器で生じるような過度の焦げなどの問題は発生しない。尚、角部を丸めるばあいの曲率半径は2cmに限定されるものではなく1cm以上3cm以下程度の範囲で選択が可能である。また、角部を丸める場合に円弧に限定されるものではなく、角部が生じないような任意の曲線を選択することも可能である。更に、本実施形態の加熱容器351では底部352が略長方形であるが、五角形やその他の多角形であってもよい。なお、当該実施形態に係る加熱容器351も、図40に示した加熱容器341と同様に直線状部分に対応する位置における側壁部に山部と谷部を形成しないようにしてもよい。
【0124】
以下、上述した実施の形態と重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。
【0125】
本発明に従った加熱補助部材1または加熱容器101、201、301、341、351は、マイクロ波の照射による誘導加熱が可能な導電性物質層を有する発熱体4、5、16、を備え、発熱体4、5、16の表面には複数の凹凸部が形成され、凹凸部の面積に対する凹部14の面積の割合である圧着面積比が5%以下であり、凹部の深さが0.1mm以下である。
【0126】
このようにすれば、上記発熱体4、5、16が上記のような圧着面積比であって浅い凹部を含む凹凸部を含むので、発熱体4、5、16に対する被加熱物Fの焦げ付きを抑制できるとともに、使用者が発熱体4、5、16の表面に触れても凹凸部を認識することは難しく、表面が平滑な発熱体を用いた加熱補助部材と同等の使用感を得ることができる。
【0127】
また、上記のように微細な凹凸が発熱体4、5、16に形成されているので、被加熱物Fである食材から発生した油脂が凹凸部の凹部14に流れ落ちても、発熱体4、5、16と被加熱物Fとの間に油脂の膜を十分な厚さで形成することが可能である。したがって、当該油脂の膜を利用して、被加熱物Fをカリカリ感、ジューシー感を出しながら加熱調理することができる。
【0128】
さらに、発熱体4、5、16に形成された凹凸部はその凹凸形状が微細であり、大きな凹凸部が形成された発熱体よりロール状に巻いた場合の巻太りが少ない。そのため、加熱補助部材1または加熱容器101、201、301、341、351の製造工程における発熱体4、5、16のハンドリングが容易であるというメリットも得られる。
【0129】
上記加熱補助部材1または加熱容器101、201、301、341、351では、凹凸部における凹部14の深さH(図2参照)は0.01mm以上0.1mm以下であってもよい。なお、凹部14の深さとは、凹部14に隣接する凸部の上部表面の位置から、凹部14の底面までの深さをいう。
【0130】
このように、凹部14の深さの範囲を設定することにより、上述のような加熱補助部材1での被加熱物Fの焦げ付きといった問題の発生を確実に抑制できる。なお、上記のように凹部14の深さの下限を0.01mmとしたのは、この値より凹部14の深さが小さいと、凹凸形状による焦げ付き防止効果が得られにくくなるという理由による。また、凹部14の深さの上限を上記のように0.1mmとしたのは、当該上限値を超えると、凹凸感を感触、視覚で感じられる為に、加熱補助部材の使用時に違和感を感じやすく、また、加熱補助部材の製造時に発熱体をロール状に巻き取った際に巻き太りしやすくなるという理由による。なお、凹部14の深さの下限値は、好ましくは0.02mm、より好ましくは0.05mmである。また、凹部14の深さの上限値は、好ましくは0.08mm、より好ましくは0.06mmである。
【0131】
上記加熱補助部材1または加熱容器101、201、301、341、351では、凹凸部において、凹部と凸部とからなる組が複数個周期的に配置されていてもよく、当該組が周期的に配置されるピッチは1mm以下であってもよい。この場合、上述した焦げ付き防止の効果を確実に得られるとともに、使用感も凹凸が形成されていない加熱補助部材と同等にすることができる。
【0132】
なお、上記ピッチは0.1mm以上1mm以下であってもよく、より好ましくは0.2mm以上0.8mm以下である。このように、ピッチの下限を0.1mmとしたのは、当該下限値より小さいピッチで発熱体に凹凸加工を精度良く行うのに困難が伴うという理由による。また、ピッチの上限を1mmとしたのは、当該上限値を超えると発熱体表面における凹部の相対的な割合が少なくなりすぎて凹凸形状による焦げ付き防止の効果が得られにくくなるという理由による。
【0133】
上記加熱補助部材1において、発熱体4、5、16は、第1発熱体4および第2発熱体5を含んでいてもよい。上記加熱補助部材1は、第1発熱体4が積層された第1支持部2と、第2発熱体5が積層された第2支持部3とを備えていてもよい。第1支持部2と第2支持部3とは、第1発熱体4上に載置された被加熱物Fに第2発熱体5が接触できるように、第1発熱体4と第2発熱体5とが対向して配置可能に連結されている。この場合、たとえば第1発熱体4上に被加熱物Fを配置して、当該被加熱物F上に第2発熱体5が接触するように、第1発熱体4および第2発熱体5を配置することができる。このため、被加熱物Fの両面に焦げ目を付与できる。
【0134】
上記加熱補助部材1において、第1支持部2と第2支持部3とは、第1発熱体4と第2発熱体5とが対向した状態を維持するように、複数箇所において連結されていてもよい。このようにすれば、第1支持部2と第2支持部3とが1箇所で連結されている場合より、第1支持部2と第2支持部3との間に被加熱物Fを挟んだ状態で確実に保持できる。
【0135】
上記加熱補助部材としての加熱容器101、201、301、341、351は、底面部102、202、302、352と当該底面部102、202、302、352の周縁から立ち上がる側面部103または側壁部203、303、353とを含む本体部を備えていてもよい。本体部は発熱体16により構成されていてもよい。この場合、カップ状の本体部の内部に被加熱物を配置して被加熱物を加熱することが可能な、繰り返し利用できる加熱補助部材を実現できる。
【0136】
上記加熱補助部材1または加熱容器101、201、301、341、351において、凹凸部における凸部25の断面形状が矩形状または円形状であってもよい。この場合、発熱体16の凹凸部をロール圧延加工やプレス加工などを用いて容易に形成することができる。
【0137】
上記加熱補助部材1において、第1支持部2と第2支持部3とは、第1発熱体4と第2発熱体5とが対向して配置できるように、屈曲可能に連結されていてもよい。
【0138】
この場合、上記加熱補助部材1を使用して被加熱物Fを電子レンジにて加熱すると、被加熱物Fは、第1発熱体4を介して第1支持部2上に載置されるため、その底面に焦げ目が付く。そして、第1支持部2と第2支持部3とは、屈曲可能に連結されているため、第1支持部2上の第1発熱体4上に載置された被加熱物Fに、第2支持部3上の第2発熱体5が接触することができる。このため、被加熱物Fの上面にも焦げ目を付与することができる。このように上記加熱補助部材1を使用することで、被加熱物Fの両面に同時に焦げ目を付与することができる。
【0139】
また、被加熱物Fの両面を同時に加熱することができるので、裏返す作業を行わなくてよく、当該作業に起因して被加熱物Fが崩れる心配がない。また、第1支持部2と第2支持部3とは連結されているため、電子レンジ内で加熱中に第2支持部3に支持された第2発熱体5が被加熱物F上から滑り落ちるなどといったことを防止することができる。
【0140】
また、このように加熱補助部材1を使用して被加熱物Fとしての魚などに焦げ目を付けることで、グリルなどで魚を焼くのに比べて煙の発生を低減することができる。なお、上記被加熱物Fとは、例えば、魚や肉、加熱調理後の冷めた食品、いわゆる冷凍食品、穀類、生野菜、鶏肉などを含む概念であるが、焦げ目を付けることが特に要望されている切り身の魚や、切り身の魚と同程度の大きさの生肉であることが好ましい。また、下ごしらえした鶏肉をこの加熱補助部材1で加熱することで唐揚げを作ることもできる。
【0141】
上記加熱補助部材1において、上記第1支持部2と上記第2支持部3とは、屈曲可能に直接的に互いの端部が連結されていてもよいし、屈曲可能な連結部6を介して連結されていてもよい。この場合、たとえば第1支持部2と第2支持部3とが、互いの端部が直接的に連結された構成においては、独立した連結部6を形成する場合より加熱補助部材1の構成を簡略化できる。このため、加熱補助部材1の製造コストを低減できる。また、第1支持部2と第2支持部3とを、屈曲可能な連結部6を介して連結する場合には、連結部6のサイズや配置を調整することにより、第1支持部2と第2支持部3とを直接連結した場合に比べて第1支持部2と第2支持部3との屈曲の反発力を小さくできる。このため、第1支持部2上の第1発熱体4上に載置された被加熱物Fに、第2支持部3上に支持された第2発熱体5がより接触し易くなるので、加熱補助部材1と被加熱物Fとの接触面積が増え、被加熱物Fの上面により多く焦げ目をつけることができる。
【0142】
上記加熱補助部材1において、第1支持部2と第2支持部3とが屈曲可能に連結された部分は、第1支持部2と第2支持部3とを接続するように配置されるとともに屈曲可能な連結部6を含んでいてもよく、当該連結部6は、たとえば図1に示すように、第1支持部2と第2支持部3とを部分的に連結するように形成されていてもよい。この場合、第1支持部2と第2支持部3とを直接連結した場合に比べて第1支持部2と第2支持部3との屈曲の反発力を確実に小さくできる。そのため、第1支持部2上の第1発熱体4上に載置された被加熱物に、第2支持部3上に支持された第2発熱体5がより接触し易くなるため、加熱補助部材1において被加熱物Fに接触する部分の面積(接触面積)を増やすことができる。
【0143】
上記加熱補助部材1において、連結部6は、第1支持部2と第2支持部3とを部分的に連結するとともに、図12などに示すように複数箇所に形成されていてもよい。この場合、連結部6を屈曲することで第2支持部3が第1支持部2上に重なるように配置されたときに、当該連結部6により第2支持部3を確実に保持できるように、連結部6の配置やサイズを設定する場合における設計の自由度を大きくできる。
【0144】
上記加熱補助部材1において、連結部6は、第1支持部2と第2支持部3との間隔に対応する長さ(たとえば図12における連結体62の左右方向における長さ)が5mm以上50mm以下であってもよい。また異なる観点から言えば、上記連結部6は、第1支持部2と第2支持部3とが被加熱物Fを挟持した状態において、第1支持部2と第2支持部3との間隔が5mm以上50mm以下となるように形成されていることが好ましい。
【0145】
この場合、被加熱物Fの厚さに合わせて、連結部6の長さを調整すればよく、魚の切り身などの表面に、上記第2支持部3上に支持された第2発熱体5がより接触し易くなる。
【0146】
上記加熱補助部材1において、第1支持部2及び第2支持部3のうち少なくともいずれか一方の支持部は、外周縁部において他方の支持部に向かって延びるように形成されたフラップ9を含んでいてもよい。
【0147】
この場合、上記フラップ9が形成されているため、加熱中に被加熱物Fの油や水が電子レンジ内へ飛散することを防止することができる。なお、このフラップ9は、第1支持部2に形成されていてもよいし、第2支持部3に形成されていてもよいし、さらには第1支持部2および第2支持部3の両方に形成されていてもよい。ここで、各支持部2、3を紙で形成した場合などは加熱中に変形してくることがある。たとえば、被加熱物Fが載置されていない上側の支持部である第2支持部3は特に変形する可能性があるが、この第2支持部3にフラップ9を形成することで、変形を抑制することができる。また、第1支持部2、すなわち、下側の支持部にフラップ9を形成することで、加熱中に被加熱物Fから流れ出てきた油や水を堰き止めて電子レンジ内の汚染を防止することができる。
【0148】
上記加熱補助部材1において、フラップ9は、上記一方の支持部(たとえば図21の第2支持部3)の外周縁部を折り曲げることで形成されていてもよい。この場合、フラップ9として別部材を第1支持部2または第2支持部3へ別途接続する場合より、加熱補助部材1の構成および製造工程を簡略化することができる。
【0149】
上記加熱補助部材1において、第1支持部2と第2支持部3とは、第1発熱体4と第2発熱体5とが対向した状態を維持するように、複数箇所において連結されていてもよい。このようにすれば、第1支持部2と第2支持部3とが1箇所で連結されている場合より、第1支持部2と第2支持部3との間に被加熱物Fを挟んだ状態で確実に保持できる。
【0150】
上記加熱補助部材1において、第1支持部2と第2支持部3とによって筒状体を形成するように、第1支持部2と第2支持部3とは互いの外周縁部同士が連結されていてもよい。このような筒状体とすることで、当該筒状体の内部に被加熱物Fを配置することにより、第1発熱体4および第2発熱体5を被加熱物Fに確実に接触させることができる。
【0151】
上記加熱補助部材1において、第1支持部2と第2支持部3とによって袋状体を形成するように、第1支持部2と第2支持部3とは少なくとも一部を残して互いの外周縁部同士が連結されていてもよい(すなわち、第1支持部2と第2支持部3とは互いの外周縁部が間欠的に連結されていてもよい)。この場合、第1支持部2および第2支持部3の外周縁部には間欠的に自由端が形成されることになるので、第1支持部2および第2支持部3の外周縁部が連続的に連結部となっている場合より、第1支持部2および第2支持部3の変形の自由度を大きくできる(つまり、被加熱物Fの形状に沿うように第1支持部2および第2支持部3を容易に変形させることができる)。
【0152】
上記加熱補助部材1において、第1支持部2及び第2支持部3の少なくとも一方は、被加熱物Fの形状に沿うように構成されていてもよい。たとえば、上記加熱補助部材1において、第1支持部2と第2支持部3との少なくとも一方に、被加熱物Fの形状に沿うよう少なくとも1つの折り目(たとえば図13の折り目21または折り目31)が形成されていてもよい。
【0153】
この場合、例えば魚を三枚におろした皮側のように、被加熱物Fが曲面を有しているとき、折り目21または折り目31が当該曲面に沿うことで、より被加熱物Fの表面に広範囲に発熱体(第1発熱体4または第2発熱体5)を接触させることができる。
【0154】
上記加熱補助部材1において、図13に示すように、折り目21、31は第1支持部2と第2支持部3との連結部の延在方向に沿った方向に延びるように形成されていてもよい。また、上記加熱補助部材1において、折り目21、31は、折曲線212、312と切り抜き部211、311とから構成されていてもよい。このような折り目21、31が形成されることで、第1支持部2または第2支持部3を折り目21、31に沿って容易に屈曲させることができる。このため、被加熱物Fの形状に沿って、第1支持部2または第2支持部3を容易に変形させることができる。
【0155】
上記加熱補助部材1において、第1支持部2および第2支持部3の少なくとも一方の外周縁部に、第1発熱体4または第2発熱体5のいずれも形成しない領域を設けてもよい。この場合、各支持部の外周縁部は、もう一方の支持部と接触しやすいので、この外周縁部を露出させる、すなわち、この外周縁部に発熱体を形成しない領域を設けることで、第1支持部2に形成された第1発熱体4と、第2支持部3に形成された第2発熱体5とが直接接触することにより生じる過加熱を未然に防止することができる。
【0156】
上記加熱補助部材1において、第1支持部2及び第2支持部3の少なくとも一方は、油分及び/又は水分を吸収可能であってもよい。また、異なる観点から言えば、第1支持部2及び第2支持部3のうち少なくとも一方は、加熱することによって被加熱物Fから出た油分や水分を吸収する材質で形成されていることが好ましい。この場合、加熱されることで被加熱物Fから出た油分や水分によって電子レンジ内が汚れるのを防止することができる。なお、このような油分や水分を吸収する材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、紙、不織布、織布、スポンジ、ウレタン等を挙げることができる。
【0157】
上記加熱補助部材1において、第1支持部2及び第2支持部3の少なくとも一方に、第1発熱体4と第2発熱体5との接触を防ぐよう、突起部8が形成されてもよい。この場合、第1支持部2及び第2支持部3の少なくとも一方に突起部8を形成して第1発熱体4と第2発熱体5との接触を防ぐことができる。この結果、過加熱を防止することができる。
【0158】
上記加熱補助部材1において、第1支持部2には、第1発熱体4の周囲の少なくとも一部に壁部7が形成されていてもよい。また、上記加熱補助部材1において、第1支持部2には、第1発熱体4の周囲を取り囲む壁部7が形成されていてもよい。
【0159】
この場合、上記壁部7によって、加熱されることにより被加熱物Fから出た油分や水分が電子レンジ内に広がることを防止できる。また、この壁部7によって、第1支持部2と第2支持部3とが接触しにくくなり、未然に過加熱を防ぐことができる。さらに、壁部7を、当該第1支持部2の外周縁部全周にわたって(第1発熱体4の周囲全周を囲むように)形成する事で、より確実に油分や水分が電子レンジ内に広がることを防止することができる。また、この壁部7を、被加熱物Fからの油分を吸収する材質で形成することでよりその効果はさらに補強される。
【0160】
上記加熱補助部材1において、第1支持部2の端部及び第2支持部3の端部に、相互に係合する係合部(たとえば、図20および図21の第2支持部3に形成された切欠部32と、第1支持部2に切込み23を入れることによって形成された係止部22)が形成されていてもよい。
【0161】
この場合、第2支持部3に形成された第2発熱体5が被加熱物F上に接触した状態を確実に維持することができる。このため、被加熱物Fとの接触面積を増加させて表面全体に焦げ目を付与することができ、さらには、第1発熱体4と第2発熱体5との直接的な接触を効果的に防止することもできる。
【0162】
また、加熱補助部材1を箱や袋などの外装容器に収容する際は、第1支持部2、第2支持部3、を連結部6で折り曲げた状態で、かつ第1支持部2及び第2支持部3を折り目21、31から折り畳み、外装容器内にするのが好ましい。これによれば、第1支持部2や第2支持部3、連結部6は折れ曲がった状態でくせがつくため、電子レンジによる調理時に、加熱補助部材1を被加熱物Fの形状に沿ってより容易に屈曲させることができる。そのため、より広い面積で被加熱物Fに加熱補助部材1を接触させることができる。
【0163】
また、この発明に従った加熱補助部材の製造方法は、マイクロ波の照射による誘導加熱が可能な導電性物質層を有する発熱体となるべきシート状部材を準備する工程(図7の工程(S10))と、表面に凹凸形状が形成されたロールを用いて、シート状部材をロール加工することにより、シート状部材に凹凸部を形成することで発熱体4、5、16を形成する工程(図7の工程(S20))と、を備える。このようにすれば、本発明による加熱補助部材を容易に製造することができる。また、発熱体4、5、16に形成された凹凸部はその凹凸形状が微細であり、大きな凹凸部が形成された発熱体よりロール状に巻いた場合の巻太りが少ない。そのため、加熱補助部材の製造工程における発熱体4、5、16のハンドリングが容易であるというメリットも得られる。
【0164】
(実験例1)
本発明による加熱補助部材における目視および触覚による凹凸感の有無を確認するため、以下のような実験を行なった。
【0165】
(試料)
実験のための試料として、平面形状が四角形状であり、縦×横が30mm×60mmというサイズの発熱体を準備した。実施例の試料としては、発熱体として表面に後述する表1に示すような微細な凹凸加工が施されたものを用いた。実施例のサンプルは2種類準備した。なお、実施例2サンプルである発熱体における凹凸構造の平面形状は、図11に示した発熱体の凹凸構造と同様である。
【0166】
一方、比較例の試料として、発熱体としては凹凸加工は施されているが圧着面積比が本願発明の範囲外のもの(4種類)という比較例の発熱体を用いたサンプルを準備した。
【0167】
(実験内容)
準備した実施例1、実施例2および比較例1〜比較例4の試料について、目視および触覚による凹凸感の有無について確認した。
【0168】
(結果)
実験の結果を以下の表1に示す。
【0169】
【表1】

【0170】
なお、表1においては、各試料での発熱体における凹凸間隔(ピッチ)、圧着面積比、凹部の深さ(エンボス深さ)の設計値(加工に用いたロール表面に形成された凸部の高さの設計値であるエンボス深さ)、目視および触覚による凹凸感の有無について示している。
【0171】
表1からもわかるように、比較例のサンプルにおいては、いずれも凹凸部が目視でも触覚によっても検知されていた。一方、本発明の実施例では、凹凸感はなかった。
【0172】
(実験例2)
本発明による加熱補助部材における調理後のこびり付き難さを確認するための、以下のような実験を行なった。
【0173】
(試料)
上述した実験例1の比較例1および実施例1、実施例2のサンプルを準備した。さらに、新たな比較例5として、凹凸加工が施されていない発熱体を用いたサンプルも準備した。
【0174】
(実験)
準備したサンプルを用いてサワラの西京漬けを調理した。具体的には、株式会社東芝製の電子レンジ(型番:ER−G3)においてワット数を600W、加熱時間を3分という条件で調理した。そして、調理した後の加熱補助部材の状態を確認した。
【0175】
(結果)
実験の結果を表2に示す。
【0176】
【表2】

【0177】
表2からわかるように、比較例のサンプルにおいては、調理したサワラの西京漬けが表面にこびり付き、身を加熱補助部材からはがす時に身が崩れたり、あるいは加熱補助部材への焦げ付きが広い面積で発生したりしていた。
【0178】
一方、本発明の実施例のサンプルにおいては、いずれも西京漬けの身に崩れなどは発生せず、加熱補助部材への焦げ付き面積も比較例のサンプルより十分小さくなっていた。
【0179】
(実験例3)
本発明による加熱補助部材に用いる発熱体のシートについて、ロール状に巻き取った場合の巻き太り状態を確認するための、以下のような実験を行なった。
【0180】
(試料)
上述した実験例1と同様の比較例1〜4および実施例1、実施例2のサンプルを準備した。さらに、比較例5として、上記実験例2の比較例5のサンプルも準備した。
【0181】
(実験)
準備したサンプル(発熱体のシート)を、ロール状に巻き取った。そして、ロール状に巻いたサンプルの巻き太りの状態を、凹凸加工(エンボス加工)の無いシート(比較例5のサンプル)をロール状に巻いた場合と目視で比較した。
【0182】
(結果)
実験の結果を表3に示す。
【0183】
【表3】

【0184】
表3からわかるように、比較例1〜4のサンプルにおいては、エンボス加工(凹凸加工)の無いサンプルである比較例5のサンプルを巻き取った場合と比較して、巻き取ったロールの径が大きくなっていた(巻き太りが大きくなっていた)。
【0185】
一方、本発明の実施例のサンプルにおいては、いずれもロール状に巻いた場合のロール径は比較例5のサンプルと大差なく、ほとんど巻き太りの程度は比較例5と同等であった。
【0186】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本発明は、電子レンジを用いて魚や肉などの被加熱物を加熱するとともに焦げ目を付けるような調理を、焦げ付きなどを抑制し良好な使用感のもとで行なうことが可能な加熱補助部材に特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0188】
1 加熱補助部材、2 第1支持部、3 第2支持部、4 第1発熱体、5 第2発熱体、6 連結部、7 壁部、8 突起部、9 フラップ、10 開口部、11 伸縮部、12 蒸着層、13 樹脂層、14 凹部、15,19 接着剤、16 発熱体、18 紙、20 支持部、21,31,33,36,37,61 折り目、22 係止部、23,34,35 切込み、24 のりしろ部、25 凸部、32 切欠部、62 連結体62、100,200 領域、101,201,301,341,351 加熱容器、102 底面部、103 側面部、104,204,304 導電性物質層、130,230a,230b,330a,330b 山部、131,231a,231b、331a,331b 谷部、202,302,352 底部、202a,302a 直線状部分、202b 円弧状部分、203,303,343a,353 側壁部、203a 直線領域、203b 円弧領域、302b 円弧状部分、211,311 切り抜き部、212,312 折曲線、213,313 円形部、309 蓋、321 補助容器、390 蓋体部、391 垂下壁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波の照射による誘導加熱が可能な導電性物質層を有する発熱体を備え、
前記発熱体の表面には複数の凹凸部が形成され、
前記凹凸部の面積に対する凹部の面積の割合である圧着面積比が5%以下であり、
前記凹部の深さが0.1mm以下である、加熱補助部材。
【請求項2】
前記凹凸部は、凹部と凸部とからなる組が複数個周期的に配置されており、
前記組が周期的に配置されるピッチは1mm以下である、請求項1に記載の加熱補助部材。
【請求項3】
前記発熱体は、第1発熱体および第2発熱体を含み、
前記第1発熱体が積層された第1支持部と、
前記第2発熱体が積層された第2支持部とを備え、
前記第1支持部と前記第2支持部とは、前記第1発熱体上に載置された被加熱物に前記第2発熱体が接触できるように、前記第1発熱体と前記第2発熱体とが対向して配置可能に連結されている、請求項1または2に記載の加熱補助部材。
【請求項4】
前記第1支持部と前記第2支持部とは、前記第1発熱体と前記第2発熱体とが対向した状態を維持するように、複数箇所において連結されている、請求項3に記載の加熱補助部材。
【請求項5】
底面部と前記底面部の周縁から立ち上がる側面部とを含む本体部を備え、
前記本体部は前記発熱体により構成されている、請求項1または2に記載の加熱補助部材。
【請求項6】
前記凹凸部における凸部の断面形状が矩形状または円形状である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱補助部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−149830(P2012−149830A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9100(P2011−9100)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】