説明

加熱計測用熱電対システム

【課題】 熱電対に温度度検出とヒーター機能と試料保持機能を持たせ、温度制御機能、試料観察とデータ記録などに関する改善を図った加熱計測用熱電対システムを提供する。
【解決手段】
加熱計測切換部22にて加熱電源部23と計測部24を交互に切換ながら、加熱電源部23により試料6を保持した熱電対3に所定矩形波を通電して加熱し、計測部24により次の所定時に熱電対3からの熱起電力に基づくアナログ温度信号をA/D変換部25にてデジタル変換し、制御部21にて変換されたデジタル温度信号を受け、続いてこのデジタル値の温度データをデジタル通信部経由で温度調節部に送り、温度調節部27で受け温度調節するよう構成した加熱計測ユニット1と各種設定操作が出来る設定操作手段2とを備え、所定観察温度における試料の溶融状態や融体と固体の反応などを容易に直接観察出来るものとし、加熱電源部23により熱電対3に通電する所定矩形波をサイクルごとに正と負と交番して通電するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電対に試料保持機能とヒーター機能と温度検出機能を持たせたホットサーモカップル法において、温度制御機能、試料観察とデータ記録に関する改善を図った加熱計測用熱電対システムに関するものである。
【技術背景】
【0002】
従来の高温科学の研究において、溶融状態や融体と固体の反応などを直接観察する装置として、加熱用電源として商用周波数の半サイクルで熱電対を形成させたフィラメントを加熱し、残りの半サイクルのときにフィラメントに流れる加熱電流をシリコン整流器で遮断し、高速度リレーにより測温回路に接続させ、熱起電力を直流電圧測定装置で検出記録する方法がある。
非特許文献である熱測定13(2)1986記載のホットサーモカップル法では、耐熱耐蝕性のR熱電対を加熱用フィラメント兼温度測定素子とし、硬質ガラス製で冷却手段つきの試料容器に前記熱電対を取りつけ、この熱電対に観察対象の試料を保持し、この試料を加熱冷却しながら、実体顕微鏡などで観察し、例えば鉱物試料の溶融過程や凝固過程を直接観察し温度とともに記録出来、又はガラス形成系での液相線温度の決定が出来るものである。
【0003】
特許文献には、試料を加熱冷却し、温度を検出しながら試料の外観の変化を観察する高温観察装置として、特開2002−107317号公報(特許文献1)に示す如く、試料の加熱温度による変化を観察する高温観察装置であって、気密構造の高温室と、この高温室内の中央部に配置され且つ試料を載置する試料台と、この試料台上の試料を加熱、冷却する加熱手段及び冷却手段と、これらの加熱手段及び冷却手段によって加熱、冷却される試料の温度を検出する温度検出手段と、この温度検出手段の検出結果に基づいて加熱手段及び冷却手段を制御する制御手段と、この制御手段で温度制御された試料を高温室に設けられた観察窓を介して撮像する少なくとも一つの撮像手段と、この撮像手段で撮像された映像を映し出すモニタとを備えた高温観察装置がある。
【0004】
上記試料台は、試料を載置する基板と、この基板に断熱部材を介して連結された支持体とを有するものとし、上記加熱手段は、試料台両側の斜め上方で試料台を挟むように並設された2本の上側ヒーターと、試料台両側の斜め下方で試料台を挟む位置に並設され且つ両上側ヒーターの間隔よりも狭く配置された2本の下側ヒーターとを有するものとし、上記温度検出手段は熱電対を有し、熱電対を基板の裏面に形成された凹陥部に挿入したものである。
【0005】
また、特開2007−178412号公報(特許文献2)は、本出願人の発明に係るもので、該公報には、熱電対にヒーター機能と温度検出機能を持たせたホットサーモカップル法において、温度制御機能、資料観察とデータ記録に関する改善を図った加熱計測用熱電対システムが記載されている。
該システムは、加熱計測切換部にて加熱電源部と計測部を交互に切換ながら、加熱電源部により試料を保持した熱電対に半サイクル矩形波を通電して加熱し、計測部により次の半サイクル間に熱電対からの熱起電力に基づくアナログ温度信号をA/D変換部にてデジタル変換し、制御部にて変換されたデジタル温度信号を受けるとともにこれらを制御し、制御部のデジタル温度信号をD/A変換部にてアナログ変換し、このアナログ値を温度調節部で受け温度調節するよう構成した加熱計測ユニットと、各種設定操作が出来る設定操作手段とを備え、所定観察温度における試料の溶融状態や融体と固体の反応などを容易に直接観察出来るようにしたものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【非特許文献】森永健次、中島邦彦、太田能生、熱測定13(2)1986
【特許文献1】特開2002−107317号公報
【特許文献2】特開2007−178412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記非特許文献に記載のホットサーモカップル法は、試料量が微小で加熱手段としての熱電対の熱容量も小さいことから急速加熱、急速冷却が出来、1900Kの高温までの測定が出来るので、前記の如く幅広く観察記録が出来るが、温度上昇、温度降下などの温度制御や、観察記録等、手動であり、テクニックと忍耐が必要であり、測定時間も長く、測定者の負担が大であり、また加熱サイクルでは熱起電力の取り込みができないため測定回路時定数により、測定電圧にサグ(電圧降下)が発生し直読値に誤差が生じてしまうので、標準試料(NaCl)などで測定値の補正をする必要があるという欠点があった。
【0007】
また、ホットサーモカップル法で、供試材料の融体が強電解物質の場合、熱電対の加熱電流が一方向であると、該熱電対に形成される正極、負極が固定され、融体中のイオン及び電子の移動により各々の極性に応じて正極では陰イオンが電子を正極に放出して酸素、フッ素、塩素ガスなどが正極近傍に電解泡として付着し、負極では陽イオンに電子が付着されて水素ガスなどが負極近傍に電解泡として付着し、この電解泡の発生により、加熱時は熱伝達が阻害され、計測時には観察融体の温度を正しく伝達できなくなり、加熱制御が満足に行われなくなることがある。
【0008】
また、特許文献1に記載の高温観察装置は、熱電対を用いて温度検出を行うが、熱電対とは別にヒーターや試料台を設けたものであり、熱電対に温度検出機能とヒーター機能と試料保持機能の3機能を持たせたものでないので、試料台の熱容量が大であり試料の急速加熱・急速冷却は出来ず、また、試料の温度と検出温度とは差が生じやすく、本発明とは構成や内容が異なっている。従来の示差熱分析装置等の熱分析装置では試料の融点、凝固点、変態点における可視的データは得ることができず、更に操作の簡便性に欠けるところがある。また温度の検出は試料パンの外部温度を検出する仕組みになっているため、微妙な温度変化に対して敏感ではない欠点がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の加熱計測用熱電対システムは、熱電対にヒーター機能と、温度検出機能及び試料保持機能を持たせ、試料及び熱電対とも熱容量が微小となり試料の急速加熱・急速冷却が出来、温度測定の正確性と追随性が良くなり、また自動昇温、自動降温、温度維持、温度記録及びデータ記録などの各種設定も容易になるので、所定観察温度における試料の溶融状態や融体と固体の反応などを容易に、かつ、直接観察出来る加熱計測用熱電対システムを提供することが出来、また、加熱に矩形波を使用することで、制御部とのインターフェースが容易となり、回路がシンプルになり、また、A/D変換部による熱起電力相当の電圧を入力し信号デジタル化により、加熱サイクルで熱起電力の取り込みがなくても、次回測定サイクルまで測定値がホールドされ測定電圧にサグが発生せず、正確な測定が可能になり、デジタル化により熱電対による発生起電力の代わりに、加熱出力を発生せずに熱起電力相当の電圧を入力しシステムのキャリブレーションや保証が容易に出来、設定に応じて加熱計測制御、データ処理、条件設定が出来るという効果があるが、制御部のデジタル温度信号をアナログ変換するD/A変換部を必要とするためハードウェア、ソフトウェアともやや複雑になるものである。
【0010】
本発明は、熱電対に温度検出とヒーター機能と試料保持機能を持たせたものにおいて、温度制御機能、試料観察とデータ記録などに関する改善を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1では、観察対象の試料を保持している熱電対に、可変直流を使用し所定タイミングでスイッチングを行い、前記熱電対に所定矩形波で電圧を印加し、加熱電流を流して前記熱電対と試料を加熱し、所定時間後前記加熱電流を遮断し、温度測定タイミングの測温信号にて前記熱電対の熱起電力を検出して温度測定し、前記試料を所定観察温度にする加熱計測ユニットと、該加熱計測ユニットに対し、予め設定された昇温勾配に従い自動で昇温を行う自動昇温、予め設定された降温勾配に従い自動で降温を行う自動降温、所定観察温度の維持、所定点での温度記録及び開始や終了時のデータ記録などの設定操作が出来る設定操作部を設け、前記所定観察温度における試料の溶融状態や融体と固体の反応などを容易に直接観察出来るものとし、前記加熱計測ユニットを、前記熱電対に通電して加熱する加熱電源部と、前記熱電対の熱起電力を計測する計測部と、所定タイミングでスイッチングを行い前記加熱電源部と前記計測部を切換える加熱計測切換部と、前記計測部が計測した熱起電力に基づくアナログ温度信号をデジタル変換するA/D変換部と、該変換されたデジタル温度信号を受けるとともにこれらを制御する制御部と、該制御部のデジタル温度信号を伝送するデジタル通信部と、該デジタル通信部からのデジタル値を受け温度調節する温度調節部とで構成し、前記設定操作部による設定に基づき、前記制御部は前記加熱計測切換部にて前記加熱電源部と前記計測部を交互に切換えながら、前記加熱電源部により前記熱電対に所定矩形波を通電して加熱し、前記熱電対からの温度に対するアナログ値の熱起電力信号を前記計測部を経由して前記A/D変換部にてデジタル変換して受けて温度データとしパソコンに出力するなど制御し、続いて前記デジタル値の温度データをデジタル通信部経由で温度調節部に送り、該温度調節部で前記設定操作部による設定と前記デジタル値の温度データを演算して温度調節やPID制御を行わせ、また、前記制御部は加熱計測制御、データ処理、条件設定を行わせることができるようにしたものである。
【0012】
請求項2では、前記加熱電源部により前記熱電対に通電する所定矩形波の1サイクル内の通電時間を適度な測温タイムが確保できる範囲で加熱目的に応じて可変とするものである。
【0013】
請求項3では、前記加熱電源部により前記熱電対に通電する所定矩形波をサイクルごとに正と負と交番して通電するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上の構成としたので、請求項1によれば、前記熱電対にヒーター機能と、温度検出機能及び試料保持機能を持たせ、試料及び熱電対とも熱容量が微小となり試料の急速加熱・急速冷却が出来、温度測定の正確性と追随性が良くなり、また自動昇温、自動降温、温度維持、温度記録及びデータ記録などの各種設定も容易になるので、所定観察温度における試料の溶融状態や融体と固体の反応などを容易にかつ直接観察出来る加熱計測用熱電対システムを提供することが出来る。
【0015】
また、加熱に矩形波を使用することで、制御部とのインターフェースが容易となり、回路がシンプルになり、また、A/D変換部による熱起電力信号デジタル化により、加熱サイクルで熱起電力の取り込みがなくても、次回測定サイクルまで測定値がホールドされ測定電圧にサグが発生せず、正確な測定が可能になり、デジタル化により熱電対による発生起電力の代わりに、加熱出力を発生せずに熱起電力相当の電圧を入力しシステムのキャリブレーションや保証が容易に出来、設定に応じて加熱計測制御、データ処理、条件設定が出来る。
【0016】
さらに、前記デジタル通信部にて制御部のデジタル温度信号を温度調節部に伝送し、該デジタル値を受け温度調節するものとしたので、デジタル温度信号をアナログ変換するD/A変換部を必要とせずハードウェア、ソフトウェアともシンプルになり、精度が向上する。
【0017】
請求項2によれば、前記加熱電源部により前記熱電対に通電する所定矩形波の1サイクル内の通電時間を適度な測温タイムが確保できる範囲で加熱目的に応じて可変としたから、目的に応じて自由に加熱デューティを変更出来、例えば試料の熱容量が大きい場合に加熱デューティを大きくして急速加熱したり、試料の熱容量が小さい場合に加熱デューティを小さくしてユックリ加熱したりすることが出来る。
【0018】
請求項3によれば、前記加熱電源部により前記熱電対に通電する所定矩形波をサイクルごとに正と負と交番して通電し、該熱電対に形成される正極、負極がサイクルごとに交番するものとしたので、融体中のイオン及び電子の移動により1サイクル目の正極時に陰イオンが電子を正極に放出しかけても、つぎのサイクルの負極時に電子を陰イオンに戻し、逆に1サイクル目の負極時に陽イオンに電子が付着されかけても、つぎのサイクルの正極時に陽イオンから電子がその極に戻されるので電解泡の発生を防止し、加熱時は熱電対から融体への熱伝達が阻害されず、計測時には観察融体の温度を正しく伝達できるので、加熱制御が満足に行われる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 本発明の一実施形態に係る加熱計測用熱電対システムの構成図である。
【図2】 同加熱計測用熱電対システムの加熱計測ユニットのブロック構成図である。
【図3】 同加熱計測用熱電対システムの加熱計測原理を示すタイミング図である。
【図4】 同加熱計測用熱電対システムの加熱計測原理を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の一実施例を図により説明する。
図1において、本発明の加熱計測用熱電対システムの加熱計測ユニット1は各種加熱制御や温度計測などの設定操作用の設定操作部2と、耐熱耐蝕性の例えばR熱電対からなる熱電対3に接続されている。熱電対3は熱電対ホルダー4に取付けられた状態で硬質ガラス製で冷却手段つきの観察用チャンバー5内に装着され、観察対象の微小の試料6を保持している。観察用チャンバー5には内部の熱電対3と試料6を観察出来る観察窓が設けられており、この観察窓に対向して熱電対3と試料6の状態を観察するための実体顕微鏡7が設けられている。この実体顕微鏡7を介して観察映像を表示記録するために、順にCCDカメラ8、テロップ装置9、ビデオシステム10、ディスプレイ11が接続されている。更にこれらを制御すると共にデータを記録するために前記加熱計測ユニット1とテロップ装置9及びビデオシステム10にパソコン12が、またパソコン12には記録の印刷用にプリンター13が接続されている。
【0021】
次に、前記設定操作部2では、昇温(例えば10℃/分、100℃/分、500℃/分の3種、予め設定された昇温勾配に従い自動で昇温を行う)、降温(例えば10℃/分、100℃/分、500℃/分の3種、予め設定された降温勾配に従い自動で降温を行う)、温度維持、温度記録(例えば5点)、データ記録(例えば開始、終了の2点)などの設定操作が出来る。これらの設定に基づき加熱計測ユニット1は熱電対3にて観察用チャンバー5内で試料6を保持させ、加熱又は冷却させながら温度測定して、試料6のPID温度制御を行う。従って熱電対3に試料保持機能と、ヒーター機能及び温度検出機能を持たせている。
【0022】
また、前記実体顕微鏡7にて観察用チャンバー5内の試料6の所定部分を拡大して詳細に観察するとともに、CCDカメラ8にてその映像を高速撮影し、テロップ装置9にて試料6や温度など所定のテロップを加え、ビデオシステム10にてテロップつきの映像データを記録し、ディスプレイ11にてこの映像データを観察することが出来る。
【0023】
前記パソコン12はこれらテロップ装置9及びビデオシステム10を制御すると共に、データ記録システムとして映像データ及び加熱計測ユニット1のPID温度制御状況や設定温度、測定温度など、温度記録をトレンドデータとして取り込み、ファイルに保存するなど観察記録を記録保存することが出来る。またパソコン12はプリンター13にて観察記録を印刷させることが出来る。
【0024】
図2に示す如く、前記加熱計測ユニット1は前記熱電対3に通電して加熱する加熱電源部23と、熱電対の熱起電力を計測する計測部24と、所定タイミングでスイッチングを行いこれら加熱電源部23と計測部24を切換える加熱計測切換部22と、計測部23が計測した熱起電力に基づくアナログ温度信号をデジタル変換するA/D変換部25と、変換されたデジタル温度信号を受けるとともにこれらを制御する例えばマイコンからなる制御部21と、制御部21のデジタル温度信号を伝送するデジタル通信部26と、このデジタル通信部26からのデジタル値を受け温度調節する温度調節部27とで構成されている。
【0025】
以下、前記加熱計測ユニット1の作用について説明する。前記設定操作部2による設定に基づき、制御部21は加熱計測切換部22にて加熱電源部23と計測部24を交互に切換ながら、加熱電源部23により熱電対3に所定矩形波を通電して加熱し、計測部24により次の所定時間に熱電対3からの熱起電力に基づくアナログ温度信号をA/D変換部25経由してデジタル変換して受けて温度データとしパソコン12に出力するなどの制御をする。続いて制御部21からこのデジタル温度信号をデジタル通信部26経由で温度調節部27に送り、温度調節部27で設定操作部2による設定温度とこのデジタル温度信号を演算して温度調節やPID制御を行わせる。以上により制御部21は加熱計測制御、データ処理、条件設定を行うとともに、パソコン12へデータを送ることが出来る。
【0026】
本発明における加熱計測は、加熱計測切換部22にて加熱電源部23と計測部24を図3に示す加熱・計測タイミングで交互に切換ながら、加熱電源部23からの0〜12V可変直流を使用し300Hzでスイッチングを行い熱電対3に所定矩形波で電圧を印加して加熱電流を流して加熱する。次に残り所定時間で熱電対3に流れる加熱電流を整流器(図示略)で遮断し、計測部24では高速度リレーにより測温回路(図示略)に接続させ、温度測定タイミングの測温信号にて熱電対の熱起電力を直流電圧測定装置(図示略)で検出する。
【0027】
前記熱電対3の加熱に矩形波を使用することで、制御部21とのインターフェースが容易となり、回路がシンプルになっている。また、A/D変換部25による熱起電力信号デジタル化によるメリットとして、次の2つの効果がある。1.従来のホットサーモカップル法は加熱サイクルでは熱起電力の取り込みができないため測定回路時定数により、測定電圧にサグ(電圧降下)が発生し直読値に誤差が生じてしまうが、デジタル化により、次回測定サイクルまで測定値をホールドすることにより正確な測定が可能になる。2.デジタル化により熱電対による発生起電力の代わりに、加熱出力を発生せずに熱起電力相当の電圧を熱電対ホルダー先端より入力しシステムのキャリブレーションや保証が容易にできる。(従来は標準試料(NaCl)などで測定値の補正をする必要があった)
【0028】
また、前記デジタル通信部26にて制御部21のデジタル温度信号を温度調節部27に伝送し、該デジタル値を受け温度調節するものとしたので、デジタル温度信号をアナログ変換するD/A変換部を必要とせずハードウェア、ソフトウェアともシンプルになり、精度が向上する。
【0029】
また、図3及び図4に示すごとく、前記加熱電源部23により前記熱電対3に通電する所定矩形波の1サイクル内の通電時間tを適度な測温タイムが確保できる範囲で加熱目的に応じて可変とすると、目的に応じて自由に加熱デューティを変更出来、例えば試料6の熱容量が大きい場合に加熱デューティを大きくして急速加熱したり、試料6の熱容量が小さい場合に加熱デューティを小さくしてユックリ加熱したりすることが出来る。
【0030】
また、図4に示す如く前記加熱電源部23により前記熱電対3に通電する所定矩形波をサイクルごとに正と負と交番して通電し、該熱電対に形成される正極、負極がサイクルごとに交番するものとすると、融体中のイオン及び電子の移動により1サイクル目の正極時に陰イオンが電子を正極に放出しかけても、つぎのサイクルの負極時に電子を陰イオンに戻し、逆に1サイクル目の負極時に陽イオンに電子が付着されかけても、つぎのサイクルの正極時に陽イオンから電子がその極に戻されるので電解泡の発生を防止し、加熱時は熱電対から融体への熱伝達が阻害されず、計測時には観察融体の温度を正しく伝達できるので、加熱制御が満足に行われる効果がある。
【0031】
また、前記加熱計測ユニット1を観察対象の試料6に熱電対3にて温度変化を与えつつ、変化する試料6の温度を熱電対3にて計測し、温度変化に基づく試料の温度特性を前記実体顕微鏡7にて観察し、計測及び観察にて得られたデータを取込んで熱分析を行うものとすると、自動昇温、自動降温、あるいは定温加熱過程において発生する試料6の吸熱、発熱反応はトレンド記録データ上に特異な変曲線を描くため、これにより試料の熱的変態点を検出することが可能となり、かつその状態観察が目視で可能となり、また、試料6の吸熱、発熱反応などは極めて微妙な温度変化を捉える必要があるが、本法では試料6に温度検出部である熱電対3が直接接触しており、極めて敏感にこれを検出出来る。
【0032】
なお、本実施例では、前記設定操作部2にて各種設定操作を行うよう記載したが、設定操作部2を設けず、同様の設定操作をパソコン12で行うものとしても良い。また加熱計測ユニット1とパソコン12を通信ケーブルで接続して、システム全体のリモート操作や、測定・設定温度の記録をしながら、試料6の溶融過程や凝固過程を実体顕微鏡7で直接観察し温度とともに記録出来るものとしても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 加熱計測ユニット
2 設定操作部
3 熱電対
6 試料
7 実体顕微鏡
8 CCDカメラ
9 テロップ装置
10 ビデオシステム
11 ディスプレイ
12 パソコン
13 プリンター
21 制御部
22 加熱計測切換部
23 加熱電源部
24 計測部
25 A/D変換部
26 デジタル通信部
27 温度調節部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象の試料を保持している熱電対に、可変直流を使用し所定タイミングでスイッチングを行い、前記熱電対に所定矩形波で電圧を印加し、加熱電流を流して前記熱電対と試料を加熱し、所定時間後前記加熱電流を遮断し、温度測定タイミングの測温信号にて前記熱電対の熱起電力を検出して温度測定し、前記試料を所定観察温度にする加熱計測ユニットと、該加熱計測ユニットに対し、予め設定された昇温勾配に従い自動で昇温を行う自動昇温、予め設定された降温勾配に従い自動で降温を行う自動降温、所定観察温度の維持、所定点での温度記録及び開始や終了時のデータ記録などの設定操作が出来る設定操作部を設け、前記所定観察温度における試料の溶融状態や融体と固体の反応などを容易に直接観察出来るものとし、前記加熱計測ユニットを、前記熱電対に通電して加熱する加熱電源部と、前記熱電対の熱起電力を計測する計測部と、所定タイミングでスイッチングを行い前記加熱電源部と前記計測部を切換える加熱計測切換部と、前記計測部が計測した熱起電力に基づくアナログ温度信号をデジタル変換するA/D変換部と、該変換されたデジタル温度信号を受けるとともにこれらを制御する制御部と、該制御部のデジタル温度信号を伝送するデジタル通信部と、該デジタル通信部からのデジタル値を受け温度調節する温度調節部とで構成し、前記設定操作部による設定に基づき、前記制御部は前記加熱計測切換部にて前記加熱電源部と前記計測部を交互に切換えながら、前記加熱電源部により前記熱電対に所定矩形波を通電して加熱し、前記熱電対からの温度に対するアナログ値の熱起電力信号を前記計測部を経由して前記A/D変換部にてデジタル変換して受けて温度データとしパソコンに出力するなど制御し、続いて前記デジタル値の温度データをデジタル通信部経由で温度調節部に送り、該温度調節部で前記設定操作部による設定と前記デジタル値の温度データを演算して温度調節やPID制御を行わせ、また、前記制御部は加熱計測制御、データ処理、条件設定を行わせることができるものとしたことを特徴とする加熱計測用熱電対システム。
【請求項2】
前記加熱電源部により前記熱電対に通電する所定矩形波の1サイクル内の通電時間を、適度な測温タイムが確保できる範囲で加熱目的に応じて可変としたことを特徴とする請求項1記載の加熱計測用熱電対システム。
【請求項3】
前記加熱電源部により前記熱電対に通電する所定矩形波をサイクルごとに正と負と交番して通電することを特徴とする請求項1又は2記載の加熱計測用熱電対システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−59089(P2011−59089A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225498(P2009−225498)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(501403472)テクセル株式会社 (2)
【Fターム(参考)】