説明

加熱調理器

【課題】
被調理物を収納した調理容器を吸引手段により真空にした後、加熱室内で加熱調理する加熱調理器において、前記調理容器内の調味液体や被調理物が吸引手段内に流入して該吸引手段を破損することを防止する。
【解決手段】
加熱室55と、被調理物1aを収納する調理容器1と、調理容器1内の気体を吸引する吸引手段56と、調理容器1と吸引手段56を接続する接続部4とを備え、吸引手段56により調理容器1内の気体を吸引し、吸引後の調理容器1を加熱室55内で加熱してその中の被調理物1aを調理する加熱調理器において、前記接続部4と吸引手段56との間に貯液手段560を設け、該貯液手段560と調理容器1は、加熱室55の外側で調理器本体50内に設置し、本体50から着脱自在とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被調理物を収納した調理容器を加熱室内で加熱調理するオーブンレンジ等の加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被調理物を加熱調理する場合、被調理物を密閉し、被調理物の周囲を真空または負圧にすることによって、被調理物への味のしみ込みを良くしたり、被調理物をふっくら仕上げることができたり、栄養素が外部に流出せずに調理できるといった効果があることが広く知られている。
【0003】
そこで、従来の加熱調理器において、特許文献1に示すように、調理器本体に調理室内を減圧する減圧手段を備え、調理室内の圧力を周囲の圧力より低くして加熱調理を行うことにより、たまご焼き,お好み焼き等を平面的なものから立体的なものに仕上げたり、沸点を下げることにより、含水量の多い被調理物を短時間で飲食可能な温度まで冷却させる等、今までの調理法では不可能だった調理を行うことができる調理器が提案されている。
【0004】
また、特許文献2に示すように、調理部内を加減圧する加減圧手段を備え、前記調理部内と関与して屈折迂回部分や抵抗体等を設けて圧力制御手段により加圧や減圧を行い、調理部内の圧力を制御することにより一定大気圧下で調理をする場合に比べてより効率良く、よりおいしく安全な調理を可能にすることができる調理レンジが提案されている。
【0005】
また、特許文献3に示すように、加熱室内に密閉可能な容器を設け、該容器内の圧力を減圧することにより容器内の沸点を下げ、被調理物の温度が沸点以上にならないように加熱して冷凍被調理物の解凍性能を高める構造の加熱調理器が提案されている。
【0006】
また、特許文献4に示すように、加熱物の種類に応じて加熱室内の圧力を変化させて沸点を変え、調理を行う加熱調理器において、加熱室と減圧手段とを連結する通路の途中に水分捕獲手段を設け、加熱室内の食品から発生した蒸気が減圧手段に入気しないよう、蒸気を冷却して液体にし、水分捕獲手段で確保するようにした加熱調理器が提案されている。
【0007】
さらに、特許文献5に示すように、真空槽に真空ポンプを連ねて真空状態を作る食品の冷却、加熱器具において、蒸気を冷却して液体にした後、ドレン溜めに水をため、バルブを開いて調理器外に水を取り出す調理器具も提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開昭59−41717号公報
【特許文献2】特開2001−311517号公報
【特許文献3】特開平8−327068号公報
【特許文献4】特開平4−165218号公報
【特許文献5】実開昭63−143222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の加熱調理器において、被調理物を収納する加熱室や調理容器に内部の気体を吸引する吸引手段を備えたものにおいては、加熱室や調理容器内の空間に被調理物を載置して吸引手段を作動させるため、吸引手段に被調理物や液体が流入する問題があった。
【0010】
例えば、特許文献1に記載された調理器では、調理室から減圧ポンプで空気を吸引する際、電磁弁を用いて調理室と減圧ポンプ間の流れを調整するが、調理室から被調理物や調味液を直接減圧ポンプに吸引することがあり、また、吸引部に被調理物や調味液が付着することがあった。
【0011】
また、加熱室全体を減圧ポンプで吸引する方式であるため、加熱室全体を溶接などで透き間のないように組み立ててドアと本体をしっかり固定する必要があり、また圧力に耐えられるように加熱室の壁面は変形の少ない材料で構成しなければならず、加熱室のコストが非常に高くなる。また、加熱室全体を吸引する形状のため、吸引に時間がかかるものであった。
【0012】
特許文献2に記載された調理レンジでは、特許文献1と同様に調理室内を減圧する際に調理室内から空気を吸引するため、圧力制御手段に調理室内の被調理物や調味液を吸引してしまうことがあり、また圧力調整手段に被調理物や液体が付着することがあった。
【0013】
また、加圧する状態と減圧する状態を繰り返すと、急激な沸点の変化から液体が突沸を起こして調味液が飛び散ることがあり、その場合には圧力調整手段に被調理物や調味液が付着したり、流入してしまうものであった。
【0014】
また、被調理物や調味液が飛散することにより、抵抗体や圧力調整手段に被調理物や調味液が詰まり、加減圧ができなくなってしまう問題があった。
【0015】
特許文献3に記載された加熱調理器では、加熱室内に収容した調理容器と吸引手段を接続して調理容器内を吸引するため、吸引手段に調理容器内の被調理物や調味液が直接流入することがあった。
【0016】
また、煮物調理など、調理容器に被調理物と調味液を満たして調理を行う場合には、特に吸引手段に調味液が流入することがあった。
【0017】
以上のように吸引手段に被調理物や調味液が付着して流入すると、吸引手段や弁に被調理物が詰まり、流路がふさがれることから、吸引手段による吸引が不可能になることがあった。
【0018】
また、調味液が吸引手段の内部に流入すると、防水加工を施していない吸引手段の場合には、吸引手段の内部が損傷されて故障を引き起こすことがあった。
【0019】
また、調味液に塩分等が含まれている場合は、吸引手段内の金属部分にさびの発生や、樹脂部分の劣化を引き起こすことがあった。
【0020】
また、吸引手段に防水加工を施し、吸引手段が故障しない場合でも、被調理物や調味液が吸引手段に至る流路に付着すると、付着した被調理物に雑菌が繁殖することがあり、被調理物衛生上好ましくなかった。
【0021】
また、一旦流路に付着した被調理物や調味液は洗浄することができなかった。
【0022】
一方、特許文献4に記載された加熱調理器では、加熱室から減圧手段により蒸気や液体を吸引しても、それらが減圧手段に届くことがないように、経路の途中に冷却手段を用いて経路を冷却し、液体になった水を水分捕獲手段に蓄積することができる構造になっている。しかし、水分捕獲手段に蓄積された水分を排出する方法については記載されておらず、水分捕獲手段に蓄積された水がそのまま排出されない状態で蓄積された場合には、水が腐敗するなどして非衛生的である。
【0023】
また、減圧手段への接続部が加熱室の側面に配置されているため、減圧手段によって吸引する経路を洗浄しにくい。そのため、吸引経路に食品などが付着すると、経路で雑菌が繁殖して食品を汚染することがある。
【0024】
また、特許文献5に記載された冷却,加熱器具では、真空ポンプの吸引経路を冷却して得られる水分を蓄積するドレン溜めにバルブが接続されており、バルブを開放することによってドレン溜め内にたまった水を排出することができる。
【0025】
しかし、前記したバルブは、ドレン溜めの下方に配置させる必要があるため、加熱装置全体の大きさが大きくなってしまう。
【0026】
また、表面積を広く取るために冷却装置が複雑な流路であることから、吸引経路を洗浄することが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1では、被調理物を収容する加熱室と、該加熱室を加熱する加熱手段と、前記被調理物を収納する調理容器と、該調理容器内の気体を吸引する吸引手段と、前記調理容器と吸引手段を接続する接続部とを備え、前記吸引手段により調理容器内の気体を吸引し、吸引後の調理容器を加熱室内で加熱してその中の被調理物を調理する加熱調理器において、前記接続部と吸引手段との間に液体を蓄積することができる貯液手段を設け、該貯液手段と前記調理容器は、前記加熱室の外側で加熱調理器の本体内に設置され、該本体から着脱自在であることとしたものである。
【0028】
請求項2では、前記吸引手段を操作する操作パネルを加熱調理器本体の前面に配置し、前記貯液手段と前記調理容器は、操作パネルの操作方向である加熱調理器の前方から着脱可能としたものである。
【0029】
請求項3では、前記貯液手段の通路断面積が、前記貯液手段への流入部,流出部の通路断面積よりも大きくなるようにしたものである。
【0030】
請求項4では、前記貯液手段は、前記調理容器側の流入部と前記吸引手段側の流出部に挟まれた密閉空間であり、前記流入部と流出部は前記貯液手段の高さ中心よりも上方に配置されていることとしたものである。
【0031】
請求項5では、前記貯液手段には、内部の水位を検出できる検出手段と、その水位情報を使用者に知らせる報知手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の請求項1によれば、調理容器の吸引口から被調理物や液体を吸引した場合でも、吸引した被調理物や液体は吸引手段に達する前に貯液手段に蓄積されて吸引手段まで到達しないため、吸引手段の故障や流路の目詰まりを防ぐことができる。
【0033】
また、貯液手段は加熱調理器本体から取り外すことができるため、吸引した被調理物や液体を取り出すとともに、貯液手段を洗浄することができ、貯液手段を清潔に保ち、吸引手段の故障を防ぐことができる。
【0034】
また、吸引手段に悪影響を与えることなく吸引口から水を直接吸引することができるため、吸引口から積極的に水や洗浄液を吸引することによって調理容器から接続部を介して貯水手段までの流路を洗浄することができ、流路を清潔に保ち、流路の目詰まりなどを防止することができる。
【0035】
また、加熱室の外部に調理容器と貯液手段を配置したため、加熱調理器で調理を行っている間でも調理容器の吸引などの操作が可能である。
【0036】
また、貯液手段を着脱することによって溜まった水を排水する構造であるため、バルブの開閉で排水する構造に比べて落差を必要とせず、本体の高さを最低限に抑えることができる。
【0037】
また、加熱室内を吸引するのではなく調理容器を吸引するものであるため、加熱室の構造を複雑にする必要がなく、従来の加熱調理器にも低コストで搭載することができる。
【0038】
また、必要以上に空気を吸引する必要がないため、吸引にかかる時間を短時間に抑えることができる。
【0039】
また、調理容器内の真空状態を維持したままで調理容器を加熱調理器の本体から着脱可能であるため、調理容器内を吸引した後、取り外して冷蔵庫に入れることなどにより、加熱調理器を使用している状態でも食品の保存を可能にすることができる。
【0040】
請求項2によれば、貯液手段と調理容器は加熱調理器本体の前方から着脱可能であり、また、吸引手段を操作する操作パネルも加熱調理器本体の前面にあるため、吸引や着脱の操作がすべて加熱調理器本体の前面で行うことができ、使いやすい。
【0041】
請求項3によれば、貯液手段の通路断面積が接続部の通路断面積よりも大きいため、接続部と吸引手段を直接同形のチューブで接続した場合に比べて接続部と吸引手段の間に貯水できる容量が大きく、吸引手段の故障を防止しやすい。
【0042】
請求項4によれば、貯液手段に液体が流入する流入部と、貯液手段から空気が流出する流出部が貯液手段の高さ中心よりも上方に存在するため、貯液手段から液体が吸引手段に流れることを防止するとともに、より多くの被調理物や液体の吸引にも対応できる。
【0043】
請求項5によれば、検出手段によって貯液手段内部の水位を検出でき、かつ使用者に貯液手段内部の水位を報知できるため、貯液手段から液体があふれて吸引手段に流れることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の加熱調理器を、マグネトロンなどで構成される高周波加熱手段を有する電気式オーブンレンジを例にとって説明する。なお、本発明は、電気オーブン,電子レンジなどの加熱調理器にも適用できる。
【実施例1】
【0045】
本発明による第一実施例の斜視図を図1に、側面断面図を図2に、上面断面図を図3にそれぞれ示す。
【0046】
本実施例において、加熱調理器本体50は、加熱室55と機械室551,熱風ユニット58を備え、全体がキャビネット501で覆われた構造である。
【0047】
熱風ユニット58は、加熱室55の背面外側に設けられており、加熱手段であるヒータ582やファン581,ファンモータ等で構成され、ヒータ582で加熱された空気を加熱室55内に供給することにより、加熱室55内に載置された被調理物を加熱することができる。
【0048】
機械室551は、加熱室55の下部に設けられており、加熱手段であるマグネトロン
60や、マイクロ波を加熱室55内に照射するアンテナ602、またそれらを制御する制御手段57が配置されている。そして、マグネトロン60によって発生したマイクロ波を、アンテナ602を介して加熱室55内に照射することにより、加熱室55内に載置された被調理物を加熱することができる。
【0049】
また、本実施例の特徴として、機械室551の下部の空間に調理容器1や貯液手段560,空気などを吸引する吸引手段56が設置されており、吸引手段56を駆動させることにより調理容器1内の空気を吸引することが可能である。
【0050】
吸引手段56は、気体を吸引することができる真空ポンプであり、ダイヤフラム式のポンプが一般的であるが、ロータリー式などでもよく、方式は問わない。
【0051】
ここで、調理容器1と貯液手段560は、加熱調理器本体50の前方から着脱可能である。
【0052】
機械室551の下部には調理容器接続手段54が配置されており、調理容器1を例えば加熱調理器本体50の前方から加熱調理器本体50の内部に押し込むことにより、調理容器1の容器接続部4を調理容器接続手段54に接続することができる。
【0053】
調理容器1は、その中に被調理物である食品1aを収納した後、前記したように加熱調理器本体50にその前方から収納し、背面側上部に設けた容器接続部4を調理容器接続手段54に接続して吸引手段56を駆動することにより、容器接続部4,調理容器接続部手段54,チューブ53,貯液手段560を介して調理容器1内の空気を吸引し、食品1aの周囲を真空状態にする。
【0054】
この真空状態によって、食品1aへの味のしみ込みが良くなるとともに、食品1aの長期保存を可能にすることができる。また、食品1aの周囲を真空状態にした後、加熱調理を行うことにより、食品1aの酸化を防止すると共に、食品1aの調理時間を短縮できる。さらに調理容器1内の熱伝導が良いため低温での調理が可能となり、食品1aをやわらかく仕上げることができ、食品1aの栄養素の破壊を防いで調理することができる。
【0055】
また、食品1aを入れた調理容器1を密閉して加熱することにより、他の調理法では流出してしまう栄養素を摂取しやすくすることができる。
【0056】
また、調理容器1内を真空にする構造であるため、加熱室55を溶接や一体構造で製造する場合に比べて低コストで真空調理を実現できる。
【0057】
また、従来の加熱調理器に吸引手段56から調理容器1までの装置を組み込むことによって真空調理を容易に可能にし、さらに加熱室55全体を吸引する場合に比べて吸引に時間がかからない。
【0058】
本発明による実施例の特徴として、吸引手段56と調理容器1との間に貯液手段560が配置されている。吸引手段56と調理容器接続手段54は、貯液手段560を介してチューブ53で接続されており、調理容器接続手段54に調理容器1の容器接続部4を接続して吸引手段56を作動させることにより、調理容器1内の空気を吸引することができる。
【0059】
また、貯液手段560も調理容器1と同様に加熱調理器本体50の前方から調理器本体50の下部に着脱可能となっており、調理容器1の横に配置されている。
【0060】
上記のように、調理容器1と吸引手段56との間に貯液手段560が接続されていることにより、調理容器1から被調理物や調味液が容器接続部4を通って吸引手段56側へ流入してきた場合でも、被調理物や調味液は貯液手段560に溜まり、吸引手段56には到達しない。
【0061】
また、貯液手段560が着脱可能であることから、調理容器1と貯液手段560を用いて調理容器接続手段54やチューブ53内を容易に洗浄することができる。
【0062】
よって、本実施例の構造による加熱調理器本体50は、吸引手段56の破壊を防止し、吸引経路をより清潔に保って真空調理を可能にする。
【0063】
また、貯液手段560の側面には検出手段562が配置されており、この検出手段562によって貯液手段560に溜まっている液体の量を検出することができるとともに、貯液手段560に溜まっている液体の量を使用者に報知することができる。
【0064】
また、本実施例では、検出手段562として水を検出する水センサを貯液手段560の側面に設け、水センサを設置した位置まで水位が上昇したら液晶表示で使用者に報知する。検出手段562は赤外線センサや圧力センサなど他の水位を検出するセンサでも良く、ブザー音や液晶表示,LED表示などを用いて水位を使用者に報知すればよい。また、センサの位置も、貯液手段560の側面に限らず上面や下面でも良い。
【0065】
また、貯液手段560は、加熱調理器本体50の前面から見える位置に配置されていることから、貯液手段560の前方に透明窓を設けることにより、その透明窓が検出手段
562の役目を果たし、使用者が目視によって貯液手段560内部の水位を確認することが可能である。
【0066】
本発明による第一実施例における吸引手段56,貯液手段560,調理容器1の関係を示した模式図を図4に、従来の吸引手段56,調理容器1の関係を示した模式図を図5に示す。
【0067】
調理容器1に調味液体10を容器接続部4に接するほど多量に入れてしまった場合や、容器接続部4に調味液体10が付着した場合、調理容器接続手段54と容器接続部4を接続し、吸引手段56を作動させることにより、調理容器1内の調味液体10は調理容器接続手段54とチューブ53を通って吸引手段56側に流入する。また、調理容器1内の食品が容器接続部4に付着した場合も、食品が調理容器接続手段54やチューブ53内に流入する。
【0068】
ここで、図5に示す従来の加熱調理器のように吸引手段56と調理容器1が直接チューブ53で接続されていた場合には、調理容器接続手段54から流入してきた調味液体10は、直接吸引手段56に浸入する。
【0069】
この時、吸引手段56が防水仕様になっていない場合には、調味液体10が流入して吸引手段56が破損することがあった。
【0070】
また、吸引手段56が防水仕様であっても、吸引手段56の内部に流入した調味液体
10が乾燥して成分が固体化すると、管路が目詰まりし、吸引手段56が動作しなくなることがあった。
【0071】
また、調味液体10が吸引手段56に流入しないように、調理容器1と吸引手段56の間にフィルタのような抵抗体を設けた場合には、吸引手段56による空気吸引を阻害することがあった。
【0072】
また、調味液体10がチューブ53や吸引手段56内に付着すると、調味液体10に含まれる成分が腐敗して経路を汚染し、衛生上好ましくないものであった。
【0073】
また、固形の食品が調理容器接続手段54やチューブ53内に流入すると、管路が詰まって空気の吸引を阻害することがあった。また、管路が詰まった場合には加熱調理器本体50を分解しなければ管路を清掃することができなかった。
【0074】
しかし、図4に示す本発明による加熱調理器のように、吸引手段56と調理容器接続手段54の間に貯液手段560を配置することによって、調理容器接続手段54から調味液体10が流入してきたとしても、貯液手段560に蓄積されるため、吸引手段56に直接調味液体10が流入することがなく、また調理容器1内の空気の吸引を阻害することがなく、吸引手段56の破損を防止することができる。
【0075】
また、調理容器1内に水を入れて貯液手段560まで積極的に吸引することによって、容器接続部4や調理器容器続手段54,チューブ53の内部を洗浄することができる。
【0076】
本実施例による加熱調理器の貯液手段560の詳細を図6に示す。
【0077】
貯液手段560は、吸引手段56と調理容器1の間の吸引経路にあたり、調理容器1に接続した貯液手段流入部563から空気や液体を吸引し、吸引手段56に接続した貯液手段流出部564から空気を排出する。
【0078】
そのため、貯液手段560は、吸引手段56を駆動して調理容器1内を真空に吸引しても空気の漏れがないように密閉されている。
【0079】
本実施例の貯液手段560は、前面が開放された形で樹脂の一体構造で成型されており、その中に貯液容器561を収納する。
【0080】
貯液容器561は、貯液手段560の開放部に設置されたパッキン565を介して貯液手段560に密着するため、貯液手段560は調理容器1に接続された貯液手段流入部
563と吸引手段56に接続された貯液手段流出部564を除いて空気の漏れがない密閉構造になっている。
【0081】
また、貯液容器561はポリエチレンやポリプロピレンのような樹脂で成型されており、その材料の弾性によって貯液手段560の開放部にきっちり固定できる構造となっている。よって、貯液手段560の内部の圧力が変動しても、貯液容器561は貯水手段560にきっちり固定されているため、貯液手段560内部の密閉性が保たれる。
【0082】
本発明による第一実施例の加熱調理器における貯液手段560の構造の別構造を図7に示す。
【0083】
貯液容器561を貯液手段560に固定する方法としては、上記構造のように貯液容器561の弾性を利用する他に、図7に示すように止め具566を用いて固定する構造でも良い。
【0084】
以上の調理容器1と貯液手段560と吸引手段56を用いた構造において、実際に調理を行う場合の調理過程を以下に示す。
【0085】
まず、調理容器1内に調理を行いたい食品1aと調味液体10を収納してフタを閉める。
【0086】
次に、調理容器1を調理器本体50の前方から調理器本体50前方下側の所定位置に押し込むことによって、調理容器1に備えられた容器接続部4と、調理器本体50に備えられた調理容器接続手段54を接続する。その後、調理器本体50の操作パネル503のボタン504を押して調理器本体50に指示を出し、吸引手段56を作動させることにより調理容器1内部の空気が接続部やチューブ53,貯液手段560を通過して吸引され、調理容器1の内部の圧力が下がり、真空になる。
【0087】
ここで、被調理物である食品1aと調味液体10を収納した調理容器1の内部を真空にすることによって、食品1aの内部に含まれる空気を脱気し、食品1aの内部に調味液体10の浸透を促進することができる。
【0088】
よって、食品1aに味をしみ込ませる作業や、乾物に水を吸収させて柔らかく戻す作業が常圧の場合に比べて短時間で可能になる。そのため、野菜の浅漬けや乾物の戻しなど従来の加熱調理器ではなかった機能を本発明による加熱調理器では備えることができる。
【0089】
ここで、調理容器1の容器接続部4には、容器外部から内部への空気の流入を防止する逆止弁(図示せず)を備えており、調理容器1の接続を解除しても、調理容器1内の真空状態が保たれるため、加熱調理器本体50から取り外した状態でも調理容器1内を真空に保持することができる。
【0090】
また、調理容器1には、真空状態を解除するための真空解除弁(図示せず)も備えており、調理容器1内が真空状態の場合でも真空解除弁を操作して内部に空気を流入させることにより、フタの開閉を可能にする。
【0091】
よって、食品1aの周囲を真空に保持した状態で保存することができる。酸素を遮断した状態で保存すると、カビの発生や、雑菌の繁殖,油脂や栄養素の酸化を抑止することができる。そのため、食品1aを常圧の状態に比べて長期間保存することが可能である。
【0092】
また、調理器本体50への指示の方法は上述した操作パネル503上のボタン504によるものが一般的であるが、その他に音声操作や遠隔操作などによっても可能である。また、容器接続部4と調理容器接続手段54が接続されたことを検出することにより、調理容器1を調理器本体50に接続した時に自動で吸引手段56を作動させ、調理容器1内を真空にすることも可能である。
【0093】
また、調理容器1を収納する位置は本実施例では調理器本体50の前方下側であるが、上側や横方などどこでも良い。
【0094】
ここで、調理容器1に調味液体10を入れた際に容器接続部4に調理容器1内の調味液体10や食品1aが接触した場合、容器接続部4から調理容器接続手段54を介してチューブ53に調味液体10や食品1aが流入する。しかし、流入した調味液体10は、貯液手段流入部563から貯液手段560内に流入して蓄積されるが、貯液手段流出部564から流出することはなく、吸引手段56に到達しないため吸引手段56の破損を防止することができる。
【0095】
また、貯液手段560内部に溜まった調味液体10の量は検出手段562によって検出されるため、貯液手段560内部に調味液体10が多量に溜まっても、貯液手段流出部
564から流出する前に吸引手段56の駆動を停止し、使用者へ報知することにより貯液手段560から吸引手段56への調味液体10の流出を防止し、吸引手段56の破損を防止することができる。
【0096】
次に、内部を真空にした調理容器1を調理器本体50の前方から抜き取り、調理器本体50内の加熱室55内に載置し、操作パネル503の別のボタン504を押下して調理器本体50に調理方法を指示することにより、加熱調理を行う。
【0097】
このとき、調理容器1内を真空にした状態で加熱を行う真空調理であるため、食品1aに調味液体10の味のしみ込みが良くなる。また、食品1aを密閉して酸素を遮断し、調理を行うため栄養素の流出や破壊が少なく、さらに真空により熱伝達が良くなり、低温でも加熱調理が可能であることから、低温調理で食品1aをふっくら仕上げることができる。
【0098】
よって、従来家庭では不可能だった真空調理が本発明の加熱調理器によって可能になる。
【0099】
また、加熱調理の方法としては、調理容器1が耐熱ガラスのように耐熱性の高い素材の場合は、オーブンやグリルなどのヒータ加熱が可能であり、調理容器1がマイクロ波を透過させる樹脂などの素材の場合はマグネトロンから発生させるマイクロ波による加熱が可能である。
【0100】
また、調理方法の指示方法は、操作パネル503を用いて他の方法で行うことも可能である。また、加熱室55内に食品1aが載置されたことを検知する重量センサが加熱室
55の下方に設置されている場合、重量センサで検出した重量に応じてドアを閉めると自動で加熱調理を開始することも可能である。
【0101】
加熱調理が終了したら調理器本体50の加熱室55から調理容器1を取り出し、調理容器1の真空解除弁を操作して調理容器1の内部の真空を解除し、フタを開けて内部の食品1aと調味液体10を取り出し、加熱調理が終了する。
【0102】
以上が本発明の第一実施例による加熱調理器の加熱調理の手順である。
【0103】
本発明の加熱調理器は、加熱調理後に簡単に調理器本体50の吸引経路のお手入れが可能である。すなわち、調理容器1の容器接続部4に調理容器1内の食品1aである固形物や固形流動物が接触して調理容器接続手段54やチューブ53の内部に詰まった場合でも、調理容器1内に水を入れた調理容器1を接続し、調理容器1から貯液手段560までのチューブ53に水を流すことによって、内部を洗浄することが可能である。
【0104】
以下にその手順を示す。
【0105】
まず、調理容器1と貯液手段560の内部の貯液容器561を取り出し、貯液容器561に蓄積された調味液体10や食品1aを洗浄する。洗浄後の貯液容器561は貯液手段
560の内部に挿入し、貯液手段560の開口部に貯液容器561をはめこむことによって、貯液容器561を固定し、貯液手段560を密閉する。
【0106】
その後、水を入れた調理容器1を調理器本体50下部の所定の位置に収納し、容器接続部4と調理容器接続手段54を接続し、操作パネル503上のボタンを押下げして吸引手段56を駆動させることにより、容器接続部4,調理容器接続手段54,チューブ53に調理容器1内の水を流し、吸引経路を洗浄することができる。
【0107】
チューブ53を洗浄した後の洗浄水は、貯液手段560内部に溜まっているので、貯液容器561を取り出して再度洗浄することで、貯液手段560を清潔に保つことができる。
【0108】
以上のように、本発明による加熱調理器では、吸引手段56を破損することなく、調理容器接続手段54やチューブ53,貯液手段560を清潔に使用することができる。
【0109】
以上が本発明による第一実施例の加熱調理器を用いたお手入れの手順である。
【0110】
ここでは、低温で真空調理した場合の調理を示したが、調理の温度は低温に限らず、高温でも良い。100℃以上の高温で調理した場合は、内部で沸騰が起こり、調理容器1内の真空度が下がることがあるが、常時常圧の場合に比べて味のしみ込みや栄養素保持能力が高いなど、真空調理の効果は得られる。
【0111】
また、ここでは調理容器1内に食品1aと調味液体10を入れて真空調理した場合の調理を示したが、調味液体10を用いずに、調味料をまぶしたり、調味料を用いずに食品
1aだけを調理容器1に入れて加熱調理しても良い。
【0112】
調味液体10を用いない場合でも、食品1aから蒸発した水分や食品1aの一部が調理容器接続手段54からチューブ53に流入することがあり、貯液手段560を用いることにより、吸引手段56の破損を防ぐとともにチューブ53を清潔に洗浄できる効果が得られる。
【0113】
以上のように、本発明の第一実施例を用いることによって、家庭で簡単に、かつ清潔に真空調理を行うことができる加熱調理器を提供できる。
【実施例2】
【0114】
本発明による第二実施例の貯液手段560を図8に示す。
【0115】
本実施例において、貯液容器561は蓋を備えた容器構造であり、貯液手段流入部563と貯液手段流出部564を除いて密閉構造になっている。
【0116】
また、貯液手段560は、加熱調理器本体50の内部で、かつ加熱室55の下部に設置されており、加熱調理器本体50の前方に開口部を持っている。
【0117】
そのため、貯液容器561の蓋を閉め、貯液手段560の中に貯液容器561を収納することによって、貯液手段流入部563と貯液手段流出部564と貯液容器561が接続され、吸引手段56から調理容器1まで気体の漏れがない吸引経路が形成される。
【0118】
よって、貯液容器561を貯液手段560の中に収納して吸引手段56を駆動させることにより、調理容器1内の空気を吸引して真空にすることができ、本発明による真空調理が可能になる。
【0119】
上記した本実施例の構造によれば、貯液手段560の内部を気密構造にする必要がないため、従来の真空調理可能な加熱調理器よりも低コストで真空調理を実現できる。
【0120】
また、加熱室55の下部に貯液手段560と吸引手段56を配置しているため、従来の加熱調理器に貯液手段560と吸引手段56を追加して貯液容器561を用いて加熱調理を行うことにより、調理器内部の構造をほとんど変えずに真空調理を行うことができる。
【0121】
また、貯液手段560と吸引手段56は、従来の加熱調理器に後付で取り付けが可能であることから、既に使用されている加熱調理器に取り付けることにより、真空調理機能を追加可能である。
【0122】
以上のように、本発明の第二実施例の構造を用いることによって、より簡単に真空調理が可能な加熱調理器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の第一実施例によるオーブンレンジの斜視図である。
【図2】本発明の第一実施例によるオーブンレンジの側面断面図である。
【図3】本発明の第一実施例によるオーブンレンジの上面断面図である。
【図4】本発明の第一実施例によるオーブンレンジの吸引経路の概略図である。
【図5】従来のオーブンレンジの吸引経路の概略図である。
【図6】本発明の第一実施例によるオーブンレンジにおいて、貯液手段から貯液容器を取り出した状態の概略図である。
【図7】本発明の第一実施例によるオーブンレンジにおいて止め具をつけた状態の貯液手段の概略図である。
【図8】本発明の第二実施例によるオーブンレンジにおいて、貯液手段から貯液容器を取り出した状態の概略図である。
【符号の説明】
【0124】
1 調理容器
4 容器接続部
10 調味液体
50 調理器本体
53 チューブ
54 調理容器接続手段
55 加熱室
56 吸引手段
57 制御手段
60 マグネトロン
501 キャビネット
503 操作パネル
551 機械室
560 貯液手段
561 貯液容器
562 検出手段
563 貯液手段流入部
564 貯液手段流出部
565 パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収容する加熱室と、該加熱室を加熱する加熱手段と、前記被調理物を収納する調理容器と、該調理容器内の気体を吸引する吸引手段と、前記調理容器と吸引手段を接続する接続部とを備え、前記吸引手段により調理容器内の気体を吸引し、吸引後の調理容器を加熱室内で加熱してその中の被調理物を調理する加熱調理器において、前記接続部と吸引手段との間に液体を蓄積することができる貯液手段を設け、該貯液手段と前記調理容器は、前記加熱室の外側で加熱調理器本体内に設置され、該本体から着脱自在であることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記吸引手段を操作する操作パネルを加熱調理器本体の前面に配置し、前記貯液手段と前記調理容器は、操作パネルの操作方向である加熱調理器の前方から着脱可能であることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記貯液手段の通路断面積が、前記貯液手段への流入部,流出部の通路断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記貯液手段は、前記調理容器側の流入部と前記吸引手段側の流出部に挟まれた密閉空間であり、前記流入部と流出部は前記貯液手段の高さ中心よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記貯液手段には、内部の水位を検出できる検出手段と、その水位情報を使用者に知らせる報知手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−261576(P2008−261576A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105419(P2007−105419)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】