説明

加熱調理器

【課題】過熱水蒸気により被加熱物の脱脂,減塩を効率よく行うとともに、被加熱物を湿っぽくしたり、味を低下させることなく焼き上げる。
【解決手段】調理庫26内の上下に設けられ被加熱物を加熱する上・下ヒータ27a,27bと、被加熱物を載せる焼き網33と、焼き網33を載置した受け皿31と、調理庫26の前面側下部に開口した空気取入口45と、調理庫26の後方上部に開口した排気出口29と、を備えた加熱調理器において、ドア32の裏側に近い下ヒータ27bの前面部に焼き網33の横幅方向に沿った横長発熱部27b−1を設けるとともに、ドア32の裏側で、受け皿31の前面側上部と焼き網33の前面側下部との間に、下ヒータ27bの横長発熱部27b−1に接近するように金属製からなる横長のスチームタンク41を取り出し自在に配置し、該スチームタンク41の焼き網33側に蒸気噴出口43を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚等の被調理物を調理庫内に入れて上・下ヒータにより焼き上げる加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の加熱調理器においては、調理庫内に出し入れ自在に配置された受け皿に焼き網を載置し、該焼き網の上に魚等の被加熱物を載せ、それらを調理庫に収納して該調理庫の上下に設けた上・下ヒータにより加熱し、被加熱物を焼き上げるのが一般的である。
【0003】
このような加熱調理器においては、調理中に魚等の被加熱物から出る脂が受け皿に溜まり、調理庫内の温度が上昇すると溜まった脂による発煙や発火する恐れがあるため、それらを防ぐ目的で、受け皿に水を入れることが行われている。
【0004】
しかし、受け皿に水を入れるものでは、水が上・下ヒータによって熱せられて蒸発し、調理庫内に充満して焼き魚を湿っぽくし、味を低下させる問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1に示すように、器体の下面と外側面に夫々吸気口と該吸気口に連なる冷却ファンを設け、該冷却ファンを駆動することによって、吸気口から受皿の下面に冷却空気を流通させ、受皿に溜まった脂の温度が発火点以下の温度に保持されるようにし、受皿に水を張らなくても調理できるようにしたものがある。
【0006】
一方、近年は、健康志向の高まりから脱脂,減塩を目的として、調理庫内で過熱水蒸気を発生させ、該過熱水蒸気によって被加熱物を加熱することが行われており、それらは特許文献2から4に記載されている。
【0007】
特許文献2に記載されたものは、調理室内に焼き網を載せる受け皿を収納し、該受け皿の後部側に水を入れる蒸気供給手段と、蒸気供給手段に入れた水を加熱する貯水部加熱手段を設け、調理室の後部の外側に調理室内に熱風を送風して循環させる第2の加熱手段を設け、前記蒸気供給手段によって発生した蒸気を第2の加熱手段によって更に加熱して過熱水蒸気にし、該過熱水蒸気と高温の空気を調理室に送り込んで調理物を加熱調理するものである。
【0008】
また、特許文献3に記載されたものは、受け皿に水を貯留し、該受け皿の下に設けたスチームヒータで受皿の水を加熱して蒸気を発生させ、発生した蒸気をロースター庫内の上下ヒータの加熱によって過熱水蒸気とし、該過熱水蒸気を食品に当てて該食品に含まれる塩分や油脂分を効率よく除去しながら加熱調理を行うロースターである。
【0009】
さらに、特許文献4に記載されたものは、水を入れた受皿と焼き網との間に小孔群を有する蒸気抑制板を載置し、該蒸気抑制板によって下から熱を反射して過熱効率を高めるとともに、受皿内の水に対しては遮熱効果が働くようにし、水蒸気を蒸気抑制板に設けられた小孔群を介して徐々に排出することにより、調理物を水蒸気の影響を受けにくくして良好な状態に焼き上がるグリル調理器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−164080号公報
【特許文献2】特開2008−307077号公報
【特許文献3】特開2007−20612号公報
【特許文献4】特開平2−13728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年の加熱調理器においては、上記したように、被加熱物の脱脂や減塩を目的として、調理庫内で発生した水蒸気をさらに加熱して過熱水蒸気とし、該過熱水蒸気によって調理物を加熱する調理方法が好まれている。
【0012】
しかし、上記した特許文献1に記載された魚焼き器は、受皿に水を入れないで魚を焼くため、焼き上がった魚が湿っぽくなることはないが、脱脂,減塩の効果はほとんど期待できない。
【0013】
また、特許文献2に記載された加熱調理器は、受け皿後部の蒸気供給手段で発生した水蒸気を、調理室の後部外側に設けた循環式の第2の加熱手段で加熱し、過熱水蒸気として加熱室内に循環させるため、受け皿後部の蒸気供給手段で発生した水蒸気によって第2の加熱手段で生成した過熱水蒸気や高温空気が冷やされてしまい、非効率である。
【0014】
また、特許文献3に記載されたロースターは、受け皿の外側底面に設けたスチームヒータによって受け皿内の水を加熱し、そこで発生した蒸気を魚焼き用の上下ヒータによってさらに加熱して過熱水蒸気としているため、空気に比べて軽い過熱水蒸気はロースター庫内の上部に上昇し、食品を効率よく加熱することができないまま、ロースター庫の上部に設けられた開口より排気ダクトに排出され、非効率である。
【0015】
さらに、特許文献4に記載されたグリル調理器は、蒸気抑制板によって調理物は水蒸気の影響を受けにくくなるため、脱脂,減塩の効果はほとんど期待できない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、請求項1では、加熱調理器の本体内に配置され前面が開口した調理庫と、該調理庫の前面開口部を塞ぐドアと、前記調理庫内の上下に設けられ被加熱物を加熱する上・下ヒータと、該上・下ヒータの間に配置され前記被加熱物を載せる焼き網と、該焼き網を載置し前記下ヒータの下方に配置した受け皿と、を備えた加熱調理器において、前記ドアの裏側に近い前記下ヒータの前面部に前記焼き網の横幅方向に沿った横長発熱部を設けるとともに、前記ドアの裏側で、前記受け皿の前面側上部と前記焼き網の前面側下部との間に、前記下ヒータの横長発熱部に接近するように金属製からなる横長のスチームタンクを取り出し自在に配置し、該スチームタンクの前記焼き網側に蒸気噴出口を設けたものである。
【0017】
請求項2では、前記スチームタンクは、上面が開口し、金属製のタンク蓋によって前記開口部と前記蒸気噴出口の上面を覆うものである。
【0018】
請求項3では、前記スチームタンクの蒸気噴出口を前記焼き網の横幅方向に沿って複数個設けるとともに、前記蒸気噴出口を前記焼き網の下側に開口させたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1によれば、調理庫内に設けられ被加熱物を加熱する下ヒータを利用してスチームタンクの水を効率よく加熱し、蒸気噴出口から下ヒータに向けて水蒸気を噴出させ、下ヒータでさらに加熱して過熱水蒸気とし、被加熱物を加熱するため、被加熱物の脱脂,減塩を効率よく行うことができるとともに、調理物を湿っぽくしたり、味を低下させることなく焼き上げることができる。
【0020】
また、下ヒータの横長発熱部から横長のスチームタンク全体に熱が伝わり、中の水が効率よく加熱されて水蒸気を発生し、蒸気噴出口から下ヒータに向けて水蒸気を噴出するため、スチームタンクを専用に加熱するヒータを別途設ける必要がなく、現行の調理庫内のスペースを確保したまま、最低限のコストで過熱水蒸気の発生機構を提供することができる。
【0021】
また、スチームタンクは、受け皿を調理庫から引き出すだけで容易に調理庫の外に取り出すことができ、水入れ作業が容易であるとともに、掃除も容易である。
【0022】
さらに、スチームタンクが金属板によって成形されているので、長きにわたって耐熱性を保持し、蒸気噴出口から調理庫内に安定的に水蒸気を供給することができる。
【0023】
請求項2によれば、スチームタンクと蒸気噴出口がタンク蓋によって覆われているので、スチームタンク内に被加熱物から出る脂が滴下してスチーム用の水が汚れたり、蒸気噴出口に脂が付着して水蒸気の噴出を妨げることがない。
【0024】
請求項3によれば、スチームタンクンの蒸気噴出口を被加熱物を載せる焼き網の横幅方向に沿って複数個設け、かつ、焼き網の下側に開口させたので、スチームタンクから噴出した水蒸気を下ヒータによって過熱水蒸気とし、該過熱水蒸気を被加熱物の下部を含めて全体に噴出させることができ、被加熱物を良好に加熱して脱脂,減塩を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る加熱調理器をシステムキッチンに収納した状態の斜視図である。
【図2】図1のA−A(オーブン)断面図を示す説明図である。
【図3】本発明のスチームタンクと下ヒータの位置関係を示す説明図である。
【図4】同スチームタンクと下ヒータの位置関係を示す斜視図である。
【図5】図4のスチームタンクとタンク蓋を矢印イ方向から見た斜視図である。
【図6】本発明のスチームタンクからタンク蓋を開けた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施例を上記した図1から図6に従って説明する。
【0027】
尚、本実施例は、システムキッチンに嵌め込むビルトイン型でなく、キッチンに載置する据置型の加熱調理器であっても差し支えない。
【実施例1】
【0028】
図において、加熱調理器の本体2は、システムキッチン1の上面から落とし込んで設置され、設置後は本体2の後述するオーブン(ロースター)4と操作部パネル5がシステムキッチン1の前面部から操作できるようになっている。
【0029】
調理を行う際の調理鍋(図示せず)は、本体2の上面に配置された耐熱ガラス等からなるプレート3上に載置され、プレート3の周囲端面は、プレート枠14によって保護されている。
【0030】
プレート3には載置部6が描かれており、該載置部6に調理鍋を載置することにより調理可能となる。載置部6は、プレート3の上面手前の右に載置部右6a、左に載置部左6bが配置され、これら両載置部6a,6b間の奥(中央後部)に載置部中央6cが配置されている。そして、プレート3を挟んで各載置部6の下に位置するように、本体2内の上部に調理鍋を加熱するための加熱コイルユニット25が設置されている。
【0031】
本体2の内部には、上記した発熱部品である加熱コイルユニット25や、電子部品およびこれらの発熱部品を冷却するための冷却ファン(いずれも図示せず)が配置されている。
【0032】
本体2の後部上面には、前記冷却ファンの駆動によって外気を吸引する吸気口7と、発熱部品である加熱コイルユニット25や電子部品を冷却した後の廃熱を本体2外に排出する排気口8が設けられている。なお、排気口8からは、後述するオーブン4の廃熱も同時に排出される。
【0033】
オーブン4は魚や肉,ピザ等を焼くためのもので、本体2の前面部の左側若しくは右側に配置されている。本実施例では、本体2の左側に配置されている。なお、オーブンは、呼び名としてロースター,グリルと呼ぶこともある。
【0034】
次にオーブン4の詳細について説明する。
【0035】
調理庫26は、前面が開口した箱型をしており、内部の上部と下部にはシーズヒータ等の発熱体よりなる上・下ヒータ27(上ヒータ27a,下ヒータ27b)が設置されている。
【0036】
上ヒータ27aは、図示しないが、調理庫26の前後方向又は横幅方向に沿って適宜蛇行しながら配置されている。下ヒータ27bは、図3に示すように調理庫26の横幅方向に沿って蛇行しながら配置され、後述するドア32の裏側に近い前面部に、同じく後述する焼き網33の横幅方向に沿った横長発熱部27b−1を設けている。
【0037】
また、調理庫26の前面開口部は、後述する受け皿31の前面に着脱自在に連結されるドア32によって塞がれており、該ドア32の表側にハンドル11が取り付けられ、裏側に受け皿31が取り付けられている。
【0038】
調理庫26の後方上部には、排気出口29が設けられ、該排気出口29は排気通路35を介して本体2の後部上面に開口した排気口8に連通している。
【0039】
また、排気出口29の入り口側には調理庫26内で発生する煙や臭いを浄化する空気浄化用の触媒34と、触媒34を加熱するための触媒ヒータ37が配置され、途中には煙や臭いを強制的に排気口8を通して本体2外に排出するための排気手段36が設けられている。なお、排気手段36は、排気ファン36aと排気モータ36bとで構成されている。
【0040】
調理庫26の前面側下部とドア32との間には空気取入口45が設けられ、前記排気手段36が駆動すると、空気取入口45から調理庫26内に外気が流入し、下記する受け皿31の下面を冷却しながら排気通路35側に流れる。
【0041】
受け皿31は、調理庫26内にその前面開口部から出し入れ自在に収納されており、前面左右にドア32を取り付けるための引掛部31bが設けられ、中に焼き網33が載置され、その上に魚等の被加熱物30を載せる。
【0042】
ドア32の裏側で、受け皿31の前面側上部と焼き網33の前面側下部との間には、下ヒータ27bの横長発熱部27b−1に接近するように金属製からなる横長のスチームタンク41と、該スチームタンク41の上面開口部を覆うタンク蓋42が取り出し自在に配置されている。なお、スチームタンク41と横長発熱部27b−1とは略同一長さに設定されている。
【0043】
次に、スチームタンク41とタンク蓋42の詳細を図4から図6によって詳細に説明する。
【0044】
スチームタンク41は、下部に50〜100cc程度の水を溜める水溜め部41aと、水溜め部41aの上面からドア32側に逆L状に拡開し、上面が開口した蒸気流路部41bとで構成されている。そして、スチームタンク41の底面全体が受け皿31に接触して冷やされないように、一部を受け皿31の立ち上げ部31aに載置したり、またはスチームタンク41の長手方向両端上部に引っ掛け部(図示せず)を設けて、該引っ掛け部を焼き網33の前面端部に底面が浮いた状態で係止することにより固定される。
【0045】
また、スチームタンク41は、焼き網33の下側で下ヒータ27bと対向する蒸気流路部41bの上部に切り欠きや穴によって形成された複数の蒸気噴出口43(図では切り欠き2個)が焼き網33の横幅方向に沿うように設けられ、その上面を加熱中に被加熱物から出る脂が付着することがないようにタンク蓋42の周縁部によって覆われている。
【0046】
タンク蓋42は、被加熱物から滴下する脂が周囲からスムーズに受け皿31に流れ落ちるように中央頂部が高い略傘状に成形されており、焼き網33側がスチームタンク41に開閉自在に軸支されてドア32側が開くようになっており、反対側の略中央部に開閉つまみ部42aが設けられている。但し、このタンク蓋42は、スチームタンク41と完全に分離して上から被せるようにしてもよい。
【0047】
また、スチームタンク41及びタンク蓋42は、上・下ヒータ27a,27bの発熱によって調理庫26が300℃程度まで上昇することから、耐熱性のよい金属板、例えば鉄板やステンレス板を絞り加工によって成形し、その表面に防錆用としてフッ素樹脂処理や耐熱性のある無電解によるニッケルメッキ等が施されている。
【0048】
また、スチームタンク41は、ドア32と反対側の水溜め部41aの面を下ヒータ27bの横長発熱部27b−1に接近させており、前記水溜め部41aの面に横長発熱部27b−1からの受熱面積を増やすために縦長の凹部44を横長方向に沿って設けており、横長発熱部27b−1からの熱が中の水に効率よく伝わり、水蒸気の発生量が増大するようにしている。尚、スチームタンク41の水溜め部41aは、下ヒータ27bの横長発熱部27b−1の温度が600℃程度まで上昇することから直接接触させると変色する恐れがあり、4mm程度の隙間を保持して下ヒータ27bの横長発熱部27b−1に接近させるのがよく、また、凹部44は、熱伝導の良い金属であれば設ける必要はなく、凹部の代わりに複数個の凹凸にして下ヒータ27bからの受熱面積を増やすこともできる。
【0049】
本実施例は、以上の構成からなり、次に動作について被加熱物30として鳥肉を焼く場合の動作例を説明する。
【0050】
まず、ドア32のハンドル11を手前に引いて受け皿31とともにスチームタンク41を前面に露出させ、該スチームタンク41を調理庫26から取り出して開閉つまみ部42aに手をかけてタンク蓋42を開け、水溜め部41aに水約50cc供給する。このとき、水溜め部41aと蒸気流路部41bとの境界線41cが水位の上限の役目を果たし、水を少なく入れたり、多く入れすぎることがなくなる。
【0051】
次に、焼き網33の上に下ごしらえをした鶏肉を載せ、ドア32を閉じて調理を開始する。なお、調理が開始すると、排気手段36が駆動し、空気取入口45から受け皿31の下面に外気が流入するので、受け皿31は冷やされる。従って受け皿31には水を入れなくとも良いが、水を入れても調理は可能である。
【0052】
加熱は、加熱開始から主に下ヒータ27bによって鶏肉とスチームタンク41内の水を加熱する。加熱が行われると、鶏肉から脂が溶け出し始めるが、一般に言われている肉の脂類が溶け出す温度は、鶏肉は30〜32℃、豚肉は33〜46℃、牛肉が40〜50℃であり、肉の熱変成の温度は60〜70℃から始まる。
【0053】
よって、鶏肉の温度が肉の熱変成の温度を過ぎた後、今度は上ヒータ27aによる加熱が主となって焼き上げる。
【0054】
また、調理時に鶏肉から発生する煙や臭は、排気手段36によって触媒34を通して排気出口29から排気通路35を通って排気口8より本体2外に排出する。
【0055】
次に、鶏肉を焼いた場合の過熱水蒸気調理の動作を具体的に説明する。
【0056】
調理スタート時は、下ヒータ27bを最大定格の例えば1200Wで通電し、調理庫26及び鶏肉を温めると同時に、スチームタンク41内の水を加熱する。
【0057】
加熱開始から数分で鶏肉の温度は脂が溶け始める温度に到達し、同時にスチームタンク41の水溜め部41a内の水も下ヒータ27bの横長発熱部27b−1からの熱によって加熱され、水蒸気が発生し始める。
【0058】
このとき、スチームタンク41の水溜め部41aと下ヒータ27bの横長発熱部27b−1が、ともに略同一長さの横長で接近していることと、水溜め部41aの横長発熱部27b−1側に受熱面積を増やすための凹部44を設けていることにより、下ヒータ27bからの熱は水溜め部41a内の水に効率よく伝わり、水蒸気の発生量が増大する。
【0059】
発生した水蒸気は、蒸気流路部41bを通して蒸気噴出口43から高温に加熱された下ヒータ27bに直接当たり、100℃以上の過熱水蒸気に加熱される。
【0060】
過熱水蒸気は、排気手段36の作用により空気取入口45から取り入れた外気の流れに乗って、調理庫26の後方上部にある排気出口29に向かう中で、鶏肉の下面を前から奥へと、そして下面から上面へと向かって鶏肉の全体を過熱水蒸気で包んでいく。
【0061】
そして、鶏肉全体を包んだ過熱水蒸気は、鶏肉の表面全体で凝縮水滴になることによって発生する凝縮潜熱により、鶏肉を効率良く加熱する。
【0062】
また、鶏肉の周囲を一定の湿度で保持することで、鶏肉の表面で発生する凝縮潜熱による加熱が和らぎ、表面だけが著しく加熱されることなく鶏肉の内部も加熱されるようになる。
【0063】
そのため、鶏肉の表面と内部の温度差が緩和され、鶏肉の全体の温度を上昇させる。
【0064】
鶏肉の温度が上昇し、鶏肉に含まれる脂が溶ける温度に上昇すると脂が溶解し、さらに鶏肉の温度が上昇すると、肉の熱変成温度、つまり、たんぱく質が加熱によって凝固が始まる温度に達し、たんぱく質の凝固によって鶏肉全体が縮み、鶏肉の内部で溶けた脂が表面に流出する。表面に流出した脂は鶏肉の表面に付着している水滴と一緒に受け皿31に滴下して鶏肉から余分な脂は排除される。
【0065】
このとき、鶏肉の表面に流出した脂は鶏肉の表面に付着している水滴と一緒にスチームタンク41のタンク蓋42にも滴下するが、タンク蓋42は、中央頂部が高い略傘状に成形されているため、スチームタンク41内に入り込んだり、蒸気噴出口43に付着することなくスムーズに受け皿31に流れ落ちる。
【0066】
また、この加熱中は、上・下ヒータ27によって調理庫26内の温度は300℃程度まで上昇するが、スチームタンク41及びタンク蓋42が耐熱性のよい金属板を絞り加工によって成形され、その表面に防錆用として耐熱性のある無電解によるニッケルメッキが施されているため、熱変形等の不具合を生じることはない。
【0067】
調理は、その後、鶏肉全体が加熱されるまで、下ヒータ27bを主体にして加熱を続け、加熱が完了した後に上ヒータ27aを入れ、焼き色等を調整したところで自動調理が終了となる。
【0068】
その際、スチームタンク41の水溜め部41aに供給された水はほとんど使いきり、発生する蒸気は少なく、もしくは出なくなった状態となるので、調理後の食品が湿っぽくなることはない。
【0069】
なお、上記した本実施例においては、過熱水蒸気によって鶏肉の脱脂を行う調理について説明したが、塩鮭等の減塩もできることは言うまでもない。
【0070】
また、調理の際にスチームタンク41に入れる水は、被加熱物30の種類等によって50〜100cc程度給水するのがよい。
【0071】
上記したように、本実施例によれば、調理庫26内に設けられ、被加熱物30を加熱する下ヒータ27bを利用してスチームタンク41の水を効率よく加熱し、蒸気噴出口43から下ヒータ27bに向けて水蒸気を噴出させ、下ヒータ27bでさらに加熱して過熱水蒸気とし、該過熱水蒸気で被加熱物30を加熱するため、被加熱物30の脱脂,減塩を効率よく行うことができるとともに、調理後の被加熱物30を湿っぽくしたり、味を低下させることなく焼き上げることができる。
【0072】
また、下ヒータ27bの横長発熱部27b−1から横長のスチームタンク41全体に熱が伝わり、中の水が効率よく加熱されて水蒸気を発生し、蒸気噴出口43から下ヒータ27bに向けて水蒸気を噴出するため、スチームタンク41を専用に加熱するヒータを別途設ける必要がなく、現行の調理庫26内のスペースを確保したまま、最低限のコストで過熱水蒸気の発生機構を提供することができる。
【0073】
また、スチームタンク41は、受け皿31を調理庫26から引き出すだけで容易に調理庫26の外に取り出すことができ、水入れ作業が容易であるとともに、掃除も容易である。
【0074】
さらに、スチームタンク41が金属板によって成形されているので、長きにわたって耐熱性を保持し、蒸気噴出口43から調理庫26内に安定的に水蒸気を供給することができる。
【0075】
また、スチームタンク41と蒸気噴出口43がタンク蓋42によって覆われているので、スチームタンク41内に被加熱物30から出る脂が落ちてスチーム用の水が汚れたり、蒸気噴出口43に脂が付着して水蒸気の噴出を妨げることがない。
【0076】
さらに、スチームタンク41の蒸気噴出口43を、被加熱物30を載せる焼き網33の横幅方向に沿って複数個設けるとともに、焼き網33の下側に開口させたので、スチームタンク41から噴出した水蒸気を下ヒータ27bによって過熱水蒸気とし、該過熱水蒸気を被加熱物30の下部を含めて全体に噴出させることができ、被加熱物30を良好に加熱して脱脂,減塩を効率よく行うことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 システムキッチン
2 本体
3 プレート
4 オーブン
27 上・下ヒータ
27b−1 横長発熱部
31 受け皿
33 焼き網
36 排気手段
41 スチームタンク
41a 水溜め部
41b 蒸気流路部
42 タンク蓋
43 蒸気噴出口
44 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理器の本体内に配置され前面が開口した調理庫と、
該調理庫の前面開口部を塞ぐドアと、
前記調理庫内の上下に設けられ被加熱物を加熱する上・下ヒータと、
該上・下ヒータの間に配置され前記被加熱物を載せる焼き網と、
該焼き網を載置し前記下ヒータの下方に配置した受け皿と、
を備えた加熱調理器において、
前記ドアの裏側に近い前記下ヒータの前面部に前記焼き網の横幅方向に沿った横長発熱部を設けるとともに、
前記ドアの裏側で、前記受け皿の前面側上部と前記焼き網の前面側下部との間に、前記下ヒータの横長発熱部に接近するように金属製からなる横長のスチームタンクを取り出し自在に配置し、該スチームタンクの前記焼き網側に蒸気噴出口を設けたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記スチームタンクは、上面が開口し、金属製のタンク蓋によって前記開口部と前記蒸気噴出口の上面を覆うことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記スチームタンクの蒸気噴出口を前記焼き網の横幅方向に沿って複数個設けるとともに、前記蒸気噴出口を前記焼き網の下側に開口させたことを特徴とする請求項1または2記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−246815(P2010−246815A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101526(P2009−101526)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】