説明

加熱調理器

【課題】焼き網を汁受け皿に載置して扉を開閉する際に生じる干渉音を、簡単な構成で防止することができる加熱調理器を提供すること。
【解決手段】本体内に前面が開口され天面と底面の両者又はいずれか一方にヒータが設けられた加熱室20と、加熱室20の前面開口部21を開閉する扉30及びこの扉30と連結されて加熱室20に出し入れ自在な汁受け皿31と、汁受け皿31上に載置する焼き網40とを有し、焼き網40と汁受け皿31の両者又はいずれか一方にマグネット60、70、80、90を設けたロースター8を備えた。このマグネット60、70、80、90は耐熱マグネットであり、挟み込み等により取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理器に係り、より詳しくは、ロースターの扉を開閉する際に衝撃により発生する焼き網と汁受け皿との干渉音を軽減することができる加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器のロースターは、調理物の汁などが垂れても調理庫内を汚さないように汁受け皿を備えており、この上に線材などで構成されて調理物を置く焼き網が載置されている。調理する際には開閉扉と連動して汁受け皿を引出し、調理物を載せた焼き網を置き、開閉扉と連動する汁受け皿を調理庫内へ押し込む。
このロースターは、調理中に開閉扉から煙漏れを防止するため、汁受け皿をレールに沿って庫内へ引き込み、係止機構により開閉扉と庫内開口面とを密着させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−284337号公報(第6頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、汁受け皿の庫内への引き込み時に係止する係止機構が設けられているため、扉の開閉時に汁受け皿に衝撃が加わり、汁受け皿に置いてあるだけで固定されていない焼き網が衝撃により干渉音が発生することがあり、使用者に取って不快感を生じさせる。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、焼き網を汁受け皿に載置して扉を開閉する際に生じる干渉音を、簡単な構成で防止することができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱調理器は、本体内に前面が開口され天面と底面の両者又はいずれか一方にヒータが設けられた加熱室と、加熱室の開口部を開閉する扉及びこの扉と連結されて加熱室に出し入れ自在な汁受け皿と、この汁受け皿上に載置する焼き網とを有し、
焼き網と汁受け皿の両者又はいずれか一方にマグネットを設けたロースターを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る加熱調理器によれば、調理物を載置する焼き網と汁受け皿の両者又はいずれか一方にマグネットを設けて吸着させるようにしたので、焼き網を汁受け皿に載置して扉を開閉する際に生じる干渉音を、確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の設置状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の斜視図である。
【図3】図2のロースターの分解斜視図である。
【図4】図3の要部の斜視図である。
【図5】図4のマグネット部の分解斜視図である。
【図6】図2の作用説明図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る加熱調理器のロースターの要部の斜視図である。
【図8】図7のマグネット部のイ−イ断面図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る加熱調理器のロースターの要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1、図2において、キッチンキャビネット1は、前面に扉2を有するキャビネット本体3と、この上面部に設けたキッチンカウンタートップ4とからなっている。
また、キッチンキャビネット1にビルトインされた例えば電磁誘導式の加熱調理器5は、天板組立体6を有する上部ユニット7と、ロースター8及び操作部9を有しキッチンキャビネット1内に収容される下部ユニット10とからなり、天板組立体6をキッチンカウンタートップ4の上面とほぼ面一に露出させ、ロースター8の前部及び操作部9をキャビネット本体3の前面とほぼ面一に露出させている。
【0010】
上部ユニット7は、上部が開口された本体ケース11の上面に天板組立体6が設けられており、天板組立体6の下方、すなわち本体ケース11内の左右及び後方中央には例えば誘導加熱コイルの如き加熱手段(図示せず)が配設され、天板組立体6の上面の加熱手段に対応した位置には調理容器の載置部12、13、14が設けられている。
なお、天板組立体6の後方には吸気口と排気口が設けられており、この上面にはこれを覆うようにスリット形状のカバー15が設置されている。
【0011】
下部ユニット10は、本体ケース11の前部左右に操作部9を設けると共に、本体ケース11内にはロースター8を構成する加熱室20を備えている。なお、操作部9は、加熱手段による加熱調理等を行うときに操作するもので、複数の操作スイッチや表示部が設けられている。
【0012】
図3において、加熱室20は、本体ケース11内に設けられて前面が開口された前面開口部21を有し、内方にはグリル(例えば魚焼き)22が設けられ、加熱室20の天面と底面には上ヒータ(図示せず)及び下ヒータ23が設けられている。そして、加熱室20の前面開口部21には後述の汁受け皿31と連結されて前面開口部21を開閉する扉30が設けられている。
【0013】
加熱室20内に設けられたグリル22には、前面開口部21を通して出し入れ可能な磁性材からなる汁受け皿(グリル皿)31が設けられており、扉30の背面下部に着脱可能に取り付けられて扉30の開閉と共に加熱室20内を前後方向に移動するようになっている。
汁受け皿31は、底面31aと側面31bとからなり、側面31bの上方縁部には外側に張り出して周囲を囲むフランジ31cが設けられている。
【0014】
この汁受け皿31の上には、これに載置する焼き網40が設けられている。
焼き網40は、図4に詳述するように、磁性材からなる線材を左右両側で前側にほぼ直角に折り曲げてほぼコ字状の載置枠部41を形成し、さらに前側をほぼ直角に下方に折り曲げて垂直部42a、42bを形成したのち、後側にほぼ直角に折り返して脚部43a、43bを形成したもので、それぞれの折り曲げ部は曲線状をなしている。上記のほぼコ字状の載置枠部41は、後枠部41aと左右枠部41b、41cとからなる。
そして、垂直部42a、42bのやや後側の上下には、載置枠部41の左右枠部41b、41cを直線状に連結する第1の線材44、及び脚部43a、43bの両側を直線状に連結する第2の線材45が設けられており、また、脚部43a、43bの後端部付近には両側を直線状に連結する第3の線材46が設けられている。
【0015】
載置枠部41の前側に位置する第1の線材44と、後側に位置する後枠部41aとの間には、載置枠部41の左右枠部41b、41cと平行に複数の線材47が取り付けられて、調理物を載置する載置部48を形成している。
【0016】
そして、焼き網40にはマグネット部60、70が設けられて、汁受け皿31に吸着するようにしてある。
例えば、焼き網40の脚部42a、42bの間に設けた第2の線材45、及び脚部43a、43bの後端部に設けた第3の線材46のほぼ中央部に、第1のマグネット部60、及び第2のマグネット部70を設けたものである。
【0017】
第1のマグネット部60は、図5に示すように、第2の線材45のほぼ中央部に平面状の第1のマグネット支持部材61を取り付け、その下部に例えば平面状で矩形をなす幅広の第1のマグネット62(例えば耐熱性が250℃の耐熱性マグネット)を位置させ、これらを上蓋63と下蓋64により挟み込んだものである。上下の蓋63、64には、第1のマグネット支持部材61と第1のマグネット62とを挟み込むための凹部65、及び第2の線材45を挟み込むための溝部66が設けられており、これらの凹部65及び溝部66によって第1のマグネット支持部材61及び第1のマグネット62を挟み込んで固定し、第1のマグネット部60を形成したものである。
【0018】
また、第2のマグネット部70は、第3の線材46のほぼ中央部に平面状のマグネット支持部材71を取り付けて、第1のマグネット部60の場合と同様に、その下部に例えば平面状で矩形をなす幅広の第2のマグネット72(例えば耐熱性が250℃の耐熱性マグネット)を位置させ、これらを凹部と溝部(図示せず)を備えた上蓋73、下蓋74により挟み込んで固定したものである。
【0019】
そして、焼き網40を汁受け皿31に載置したときに、第1、第2のマグネット部60、70が汁受け皿31の底面31aに吸着するようにしたものである。
なお、第1、第2のマグネット部60、70は汚れないように非磁性材料で覆うようにしてもよく、この場合、非磁性材料は第1、第2のマグネット部60、70と反応することはない。
【0020】
上記のように構成した加熱調理器の作用について説明する。
調理時には、図3に示すように、扉30の取っ手30aに手を掛けて汁受け皿31及び汁受け皿31に載置された焼き網40を引き出す。そして、焼き網40の下に例えばアルミホイル(図示せず)を敷き、焼き網40の載置部48に調理物である例えば魚を載置し、図2のように扉30を閉じる。この際、焼き網40は、第1、第2のマグネット部60、70により汁受け皿31に固定されているので、閉じた際の衝撃で干渉音は生じない。
この状態で、図2に示すように、操作部9の操作スイッチを操作し、調理物である魚を、天面と底面に設けた上、下のヒータによって加熱して、調理する。
調理後、図6に示すように、扉30を引いて汁受け皿31及び焼き網40を引き出す。この際、焼き網40は第1、第2のマグネット部60、70により汁受け皿31に固定されているので、開いた際の衝撃で干渉音は生じない。
【0021】
上記の説明では、汁受け皿31及び焼き網40を磁性材で構成した場合を示したが、焼き網は非磁性材であってもよい。また、第1、第2のマグネット部60、70を焼き網40に取り付けるのに、マグネット62、72を上蓋63、73、下蓋64、74により挟み込んで固定した場合を示したが、圧着、ねじ止め、インサート、溶接、カシメ、蓋をする等により取り付けるようにしてもよい。
【0022】
また、上記の説明では、焼き網40の第2の線材45及び第3の線材46のほぼ中央部に第1のマグネット部60、及び第2のマグネット部70を設けたが、取り付け位置はこれに限定するものではなく、焼き網40の第2の線材45及び第3の線材46に沿ってそれぞれ複数箇所、任意の位置に設けるようにしてもよい。
【0023】
本発明の実施の形態1によれば、焼き網40の汁受け皿31側に第1、第2のマグネット部60、70を設けて固定するようにしたので、調理物を置いた焼き網40を受け皿31に載置して扉8を開閉する際に、衝撃があっても、焼き網40と汁受け皿31との間で干渉音が生じることはない。こうして、干渉音を簡単な構造で防止することができる。
なお、受け皿31に敷いたアルミホイルの浮きは焼き網40の線部材で抑えることもできるが、本実施の形態によれば、さらに第1、第2のマグネット部60、70により焼き網40を汁受け皿31に固定するようにしたので、より確実に抑えることができる(以下の実施の形態においても同様である)。
【0024】
実施の形態2.
実施の形態1では焼き網40側にマグネット部60、70を設けた場合を示したが、本実施の形態2では汁受け皿31側にマグネット部80、90を設けて、焼き網40を吸着させるようにしたものである。
すなわち、図7に示すように、汁受け皿31の焼き網40の第2の線材45及び第3の線材46(図4参照)に対応する部分の底面31aに、マグネット部80、90を設けて焼き網40を吸着させるようにしたものである。
【0025】
より詳しくは、汁受け皿31上に焼き網40を載置した場合、例えば、焼き網40の垂直部42a、42b近傍に設けた第2の線材45のほぼ中央部、及び脚部43a、43bの後端部に設けた第3の線材46のほぼ中央部にそれぞれ対応させて、汁受け皿31の底面に第3のマグネット部80及び第4のマグネット部90を設けたものである。
【0026】
第4のマグネット部90は、焼き網40の第3の線材46のほぼ中央部に対応する部分の汁受け皿31の底面31aに、図8に示すように、皿内に突出するようにして、また長辺は線材方向に配向するようにして矩形状に形成された底面凸部31dを設け、底面凸部31dの裏側凹部31eより矩形状の第3のマグネット81(例えば耐熱性が250℃の耐熱性マグネット)を挿入して圧着して取り付けたものである。
また、第3のマグネット部80は、焼き網40の第2の線材45のほぼ中央部に対応する部分の汁受け皿31の底面31aに、第4のマグネット部90の場合と同様に、皿内に突出するようにして、また長辺は線材方向に配向するようにして矩形状に形成された底面凸部(図示せず)が設けられ、底面31aの裏側凹部より矩形状の第3のマグネット(例えば耐熱性が250℃の耐熱性マグネット、図示せず)を挿入して圧着して取り付けたものである。
【0027】
上記の説明では、焼き網40の第2の線材45及び第3の線材46のほぼ中央部に対応する部分の汁受け皿31の底面31aに、第3のマグネット部80及び第4のマグネット部90を設けた場合を示したが、マグネットの取り付け位置はこれに限定するものではなく、焼き網40の第2の線材45及び第3の線材46に沿って複数箇所に任意に設けてもよい。
【0028】
実施の形態2によれば、焼き網40と汁受け皿31の汁受け皿31の側に磁性化部分である第3、第4のマグネット部80、90を設けて焼き網40を吸着するようにしたので、調理物を置いた焼き網40を汁受け皿31に載置して扉8を開閉する際に、衝撃があっても、焼き網40と汁受け皿31との間で干渉音が生じることはない。こうして、干渉音を安価な方法で軽減することができる。
【0029】
実施の形態3.
実施の形態1では焼き網40にマグネット部60、70を設け、実施の形態2では汁受け皿31にマグネット部80、90を設けた場合を示したが、本実施の形態3では、焼き網40及び汁受け皿31側の両者にマグネット部60、70、80、90を設けて、対向する一対のマグネットとし、焼き網40を汁受け皿31に強固に固定するようにしたものである。
図9に示すように、焼き網40の垂直部42a、42b近傍に設けた第2の線材45のほぼ中央部、及び脚部43a、43bの後端部に設けた第3の線材46のほぼ中央部に、第1のマグネット部60、及び第2のマグネット部70を設け、さらに、汁受け皿31の底面31aの第1のマグネット部60、及び第2のマグネット部70にそれぞれ対向する位置に、第1、第2のマグネット部60、70と極性を反対にして第3のマグネット部80、及び第4のマグネット部90を設けて、焼き網40と受け皿31とが引き合うようにしたものである。
【0030】
上記の説明では、焼き網40及び汁受け皿31の両者に、極性の異なる一対のマグネット部60と80、70と90をそれぞれ対向して設けて強固に固定したが、対向して配設された焼き網40側、及び汁受け皿31側の両者の線材方向に複数のマグネットを設けてさらに強固に固定するようにしてもよい。
【0031】
本実施の形態3によれば、調理物を載置する焼き網40と汁受け皿31のそれぞれに、第1、第2のマグネット部60、70、および第3、第4のマグネット部80、90を設けたので、調理物を置いた焼き網40を受け皿31に載置して扉30を開閉する際に、衝撃があっても焼き網40と汁受け皿31との間で干渉音が生じることはない。こうして、干渉音を簡単な構造で確実に防止することができる。
【0032】
上記の説明では、キッチンキャビネット1へビルトインした組み込み式加熱調理器に本発明を実施した場合を示したが、これに限定するものではなく、例えば、キッチンキャビネット1のキッチンカウンタートップ4等に載置される載置式の加熱調理器、あるいはガスを加熱源とする加熱調理器など、他の構造の加熱調理器にも本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0033】
8 ロースター、20 加熱室、21 前面開口部、23 ヒータ、30 扉、31 汁受け皿、31a 汁受け皿の底面、31d 底面凸部、31e 裏側凹部、40 焼き網、60 第1のマグネット部、61 マグネット支持部材、62 マグネット、63 上蓋、64 下蓋、70 第2のマグネット部、80 第3のマグネット部、90 第4のマグネット部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内に前面が開口され天面と底面の両者又はいずれか一方にヒータが設けられた加熱室と、
該加熱室の前面開口部を開閉する扉、及び該扉と連結されて前記加熱室に出し入れ自在な汁受け皿と、
該汁受け皿上に載置する焼き網とを有し、
該焼き網と前記汁受け皿の両者又はいずれか一方にマグネットを設けたロースターを備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記マグネットが、耐熱マグネットであることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記焼き網と前記汁受け皿の両者又はいずれか一方に、挟み込みまたは圧着によりマグネットを取り付けたことを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記焼き網を線材で構成し、該線材に平面状のマグネット支持部材を取り付けて該マグネット支持部材に平面状の前記マグネットを当接させ、前記マグネット支持部材と前記マグネットとを上蓋、下蓋により挟み込んで固定したことを特徴とする請求項3記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記汁受け皿の底面に、皿内に突出する底面凸部を設け、該底面凸部の裏側凹部にマグネットを圧着して取り付けたことを特徴とする請求項3記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記マグネットは、非磁性材料で覆われたことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記焼き網と前記汁受け皿の両者又はいずれか一方が磁性素材からなることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−217795(P2011−217795A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87008(P2010−87008)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】