説明

加熱調理器

【課題】排気口から排気される排熱の温度を低下して、加熱終了後に脱煙,脱臭を行う触媒の効果を長く持続することができる加熱調理器を提供する。
【解決手段】調理庫8と、調理物15を載置する焼網14と、焼網14より上に位置する上発熱体9と、焼網14より下に位置する下発熱体10と、調理庫8に設けた排気出口8aと外気とを連結する排気通路17と、排気出口8aに設けられた空気浄化用触媒16と、調理物15の加熱中は常時通電され空気浄化用触媒16を加熱する触媒ヒータ20と、排気通路17に設けた排気ファン18と、を備えた加熱調理器において、空気浄化用触媒16に使用する基材は、単位体積あたり発泡金属板より重いワイヤメッシュを折り畳んだ成形材を使用したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーブン調理庫の排気出口付近に空気浄化用触媒を設けた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オーブン(ロースター部)を備える従来の加熱調理器として、オーブンで魚や肉など被調理物を加熱するときに、オーブンの調理庫で発生した煙や臭いが外部に排出されるのを抑制するため、調理庫の排気出口付近に、空気浄化用触媒とそれを加熱して活性化する触媒ヒータを備えた加熱調理器がある(特許文献1)。
【0003】
また、悪臭ガスとの接触面が多く、厚さを薄くしても無臭化性能が高い触媒の担体(基材)として、ニッケル−クロム系発泡金属板に白金系金属を焼付けた触媒が知られている(特許文献2)。このニッケル−クロム系発泡金属板が、加熱調理器のオーブン用の触媒の基材として多く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−61515号公報
【特許文献2】特開平6−261841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、オープンキッチン化が進み、IHクッキングヒータ等の加熱調理器のオーブンを使用する時に加熱調理器の排気口から排出される煙や臭いを低減し、排熱の温度も低くすることが強く望まれている。
【0006】
また、近年、調理に比較的大きな空間を必要とするパンやピザなどの調理に対応するため、オーブンの調理庫を従来よりも大きくする傾向がある。一方で、加熱調理器本体の大きさに変化はないため、オーブンと加熱調理器の外郭との間に排気の温度を下げる器材を新たに設けたり、既存の器材をより大きくしたりすることによって、加熱調理器の排気口から排出される煙や臭いの更なる低減,排熱の更なる低温化を図るのは非常に難しくなっている。
【0007】
本発明は、空気浄化用触媒の外形を変えずとも、排気の低温化性能を高めた加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、調理庫と、調理物を載置する焼網と、調理に用いる発熱体と、前記調理庫に設けた排気出口と外気とを連結する排気通路と、前記排気出口に設けられ、ワイヤメッシュを折り畳んで成型した基材を用いた空気浄化用触媒と、前記調理物の加熱中は常時通電され前記空気浄化用触媒を加熱する触媒ヒータと、前記排気通路内に設けた排気ファンと、を備えた加熱調理器である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排気口から排気される排熱の温度を低下することができる。また、加熱終了後に脱煙,脱臭を行う触媒の効果を長く持続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施例の加熱調理器の外観斜視図である。
【図2】一実施例のオーブンの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図1及び図2に従って説明する。
【0012】
図1において、1は加熱調理器の本体で、後部上面に吸排気通路となる開口部1aを有しており、システムキッチン7の中に上面から落とし込まれて設置されている。2は鍋等の容器で、被加熱物を入れて調理するものである。3は耐熱ガラス等からなるプレートで、本体1の上面に備えられ、容器2を載置するものである。4はオーブンで、後記する加熱コイル6の下方で本体1の左側または右側(本実施例では左側)に備えられている。5は操作部で、オーブン4の横に位置するように本体1の右側前面に配置され、電源の入り切りや加熱条件の設定等を行うものである。6は加熱コイルで、プレート3の下方で本体1内の上部に左右略水平に二つ配置され、容器2を誘導加熱する。
【0013】
図2の断面図を用いてオーブン4の構造を詳細に説明する。8は前面が開口した箱型の調理庫で、内部にシーズヒータ等の発熱体よりなる上発熱体9,下発熱体10が設置され、後方上部に排気出口8aを設けている。なお、この発熱体を何れか一方だけ設けた構成としても良い。11は受皿で、調理庫8内にその前面開口部から出し入れ自在に収納されており、前面に前記開口部を塞ぐオーブンドア12とハンドル13が取り付けられ、中に焼網14が載置されている。15は焼網14の上に載せられた魚等の調理物である。
【0014】
16は空気浄化用触媒で、調理庫8内で発生する煙や臭いを浄化するものであり、排気出口8aの近傍に取り付けられている。この空気浄化用触媒16の基材は、従来のニッケル−クロム合金の発泡金属板に代えて、より耐腐食性の良いステンレス(例えばSUS316)のワイヤメッシュ(例えば密度1.3g/cm3,線径0.2mm)を折り畳み、従来の空気浄化用触媒と略同等の外形(同じ体積)に成形したものである。そして、この基材に、触媒となるパラジウムを全体に付着固定させ、空気浄化用触媒16が構成される。
【0015】
空気浄化用触媒16をこのように構成することにより、排気との接触面積を従来と同程度に大きくできるとともに、排気が通過するときの圧力損失も従来と同程度に設定することができる。すなわち、従来の加熱調理器自体何ら設計変更せずとも、本実施例の空気浄化用触媒16に取り替えることができる。
【0016】
また、単位体積あたりの重量が発泡金属板より重いワイヤメッシュを折り畳んで空気浄化用触媒16を成型することで、従来の空気浄化用触媒と同じ外形(同じ体積)であっても、重量をより重くすることができる。例えば、空気浄化用触媒の外形を88×58.5×6mmとしたとき、従来の空気浄化用触媒は約16グラムであったのに対し、本実施例の空気浄化用触媒16は約40グラムとなる。すなわち、外形や圧力損失を変えることなく、重量を約2.5倍にすることができる。なお、空気浄化用触媒16の重量を従来よりも重くしたことの効果については後述する。
【0017】
17は排気通路で、その入口側は排気出口8aに接続されており、出口には排気口19が形成され、本体1の後部上面開口部1aに連なっている。18は排気ファンで、空気浄化用触媒16より後の排気通路17内に設けられモータ23で回転して、調理庫8内で発生する臭いや煙を空気浄化用触媒16を通して強制的に排気口19に排気するものである。20は空気浄化用触媒16を加熱するための触媒ヒータで、調理庫8内で空気浄化用触媒16の近傍に設置されており、この空気浄化用触媒16を加熱するものである。21はサーミスタ等の温度検知手段で、調理庫8内の温度を検知するものであり、調理庫8の前面開口部側の上部と、受皿11の側面下部に設けられている。22は冷却通路で、受皿11の下部に設けられており、吸引ファン24の回転により風を流し、受皿11を冷却するものである。25は冷却通路22への空気取入口で、調理庫8の前面下部付近に設けられている。26は防熱板で、触媒ヒータ20の下面(触媒ヒータ20を挟んで空気浄化用触媒16を設けた反対側)に設けて触媒ヒータ20の熱を効率良く空気浄化用触媒16側に反射させ、空気浄化用触媒16の温度を早く触媒の活性化する温度に到達させるために設けたものである。
【0018】
本発明は以上の構成よりなるもので、その動作についてサンマ5尾を焼いたときを例に説明をする。
【0019】
使用者がオーブン4の焼網14上にサンマ5尾の調理物15を載せて操作部5を操作すると、図示されていない制御手段によって上、下発熱体9,10および触媒ヒータ20が通電を開始する。なお、このとき焼網14を載置する受皿11内には水を張らなくともよい。
【0020】
調理物15の加熱が開始するとモータ23が駆動して、同軸の排気ファン18が回転し、調理物15から発生する煙が調理庫8の後方上部に設けた排気出口8aから排出して空気浄化用触媒16を通る間に脱煙,脱臭され、排気通路17を通して本体1の後部上面の開口部1aから排出される。また、モータ23の駆動によって吸引ファン24も回転し、調理庫8の前面下部の空気取入口25から冷却通路22内に室内の冷たい空気を吸引し、その冷却通路22内を流通させる間に受皿11を冷却するので、調理時に受皿11内には水を張らなくともよい。そして、受皿11を冷却した後、空気吐出口22aを通して排気口19に至り、本体1の開口部1aから排出される。
【0021】
空気浄化用触媒16を加熱する触媒ヒータ20は、空気浄化用触媒16を常に良好な活性化状態を保つために、調理物15の加熱開始から加熱終了するまでの間、連続して通電されている。そのため、一般的な調理を加熱する間、空気浄化用触媒16の温度は、加熱開始から上昇を続け、加熱が終了するときに最高温度に到達し、加熱終了後は下降する。空気浄化用触媒16の基材にワイヤメッシュを折り畳んで成形したものは、従来の触媒に使用していた基材の発泡金属板に比べ、同じ形状(体積)でも重量が2.5倍以上重いため、温まり難く、冷め難くなっている。
【0022】
空気浄化用触媒16の温度は、調理物15の加熱開始から加熱終了の間、連続して通電される触媒ヒータ20の発熱と調理物15を加熱する上、下発熱体9,10の発熱によって加熱開始から約6分で触媒が活性化する温度300℃に到達する。従来の同じ形状の発泡金属板の触媒に比べ重量が増えたことで活性化する温度まで上昇するのに約1分遅くなっている。しかし、加熱初期は調理物15から発生する煙や臭いも少ないので、前記1分の遅れによる排出口19から排気される煙や臭いの増加は無い。
【0023】
調理物15の加熱中の空気浄化用触媒16の温度上昇率は発泡金属板の触媒を使用していた時よりも遅く、そのため、調理物15の加熱終了時の空気浄化用触媒16の最高温度は発泡金属板の触媒を使用していた時よりも約20〜30℃低く、排気口19から連通する本体1の後部上面開口部1aから排気される排熱の温度も同様に低下する。
【0024】
また、空気浄化用触媒16は従来の発泡金属板の触媒に比べ冷め難いため、調理物15の加熱を終了した後、従来に比べ触媒を活性化している温度を約1分間長く維持できる。そのため、調理庫8内に飛び散った油などが、調理庫8の温度が冷めるまでの間、煙となって排気されるのを防止することができる。
【0025】
上記した本実施例の加熱調理器によれば、空気浄化用触媒の大きさを変えずとも排気の低温化性能を高め、排気口から排気される排熱の温度を低下させることができると共に、加熱終了後に脱煙,脱臭を行う触媒の効果を長く持続することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 本体
3 プレート
4 オーブン
8 調理庫
8a 排気出口
9 上発熱体
10 下発熱体
16 空気浄化用触媒
19 排気口
20 触媒ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理庫と、
調理物を載置する焼網と、
調理に用いる発熱体と、
前記調理庫に設けた排気出口と外気とを連結する排気通路と、
前記排気出口に設けられ、ワイヤメッシュを折り畳んで成型した基材を用いた空気浄化用触媒と、
前記調理物の加熱中は常時通電され前記空気浄化用触媒を加熱する触媒ヒータと、
前記排気通路内に設けた排気ファンと、
を備えたことを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−21693(P2012−21693A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159265(P2010−159265)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】