説明

加熱調理器

【課題】清掃に手間が掛かるという問題を解消できる加熱調理器を提供する。
【解決手段】キャビネットと、キャビネットの上部に設けたIHヒータと、キャビネットの前面に開口する加熱庫10を有するロースタ部9と、キャビネットの前面に設けた操作部と、キャビネットの上部奥側に設けた排気口と、からなるIHクッキングヒータであって、ロースタ部は、前後方向に揺動可能に取り付けられたドア部と、ドア部を揺動可能に取り付けるためのレール部と、加熱庫の天面に設けた上部ヒータ22と、加熱庫の下部に設けた下部ヒータ23と、上部ヒータと下部ヒータとの間に設けた加熱トレイ40と、からなり、レール部は、加熱庫の底面よりも所定の間隔を隔てて下方に設け、下部ヒータは、レール部の間に設け、下部ヒータは、加熱庫の内部に露出しないように隠蔽したことにより、加熱庫の底面を平坦にして清掃の手入れを容易にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱庫の上下にヒータを有する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
ロースターの加熱室内に下電気ヒータ,上電気ヒータを備え、上記加熱室の外側部で発生させた飽和状態のスチームを上記加熱室内に導き、該加熱室内で飽和スチームを上記下電気ヒータに噴き付けて過熱状態のスチームを生成し、該過熱状態のスチームによる加熱と上記下電気ヒータ,上記上電気ヒータによる加熱との両方を組み合わせて、被調理物を最適に調理する加熱調理器(特開2009‐22790号公報(特許文献1))がある。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来の加熱調理器においては、上記ロースターにおける上記上電気ヒータおよび上記下電気ヒータは、上記加熱室内に剥き出しの状態で配置されている。したがって、上記加熱室内において、上記上電気ヒータおよび上記下電気ヒータのみによって食品を加熱する場合には、食品からの油が上記上電気ヒータおよび上記下電気ヒータに付着し、発煙や発火に至るという問題がある。そのため、上記上電気ヒータおよび上記下電気ヒータが汚れ、清掃に手間が掛かるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009‐22790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明の課題は、清掃に手間が掛かるという問題を解消できる加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明の加熱調理器は、キャビネットと、上記キャビネットの上部に設けたIHヒータと、上記キャビネットの前面に開口する加熱庫を有するロースタ部と、上記キャビネットの前面に設けた操作部と、上記キャビネットの上部奥側に設けた排気口と、からなるIHクッキングヒータであって、上記ロースタ部は、前後方向に揺動可能に取り付けられたドア部と、上記ドア部を揺動可能に取り付けるためのレール部と、上記加熱庫の天面に設けた上部ヒータと、上記加熱庫の下部に設けた下部ヒータと、上記上部ヒータと上記下部ヒータとの間に設けた加熱トレイと、からなり、上記レール部は、上記加熱庫の底面よりも所定の間隔を隔てて下方に設け、上記下部ヒータは、上記レール部の間に設け、上記下部ヒータは、上記加熱庫の内部に露出しないように隠蔽したことにより、上記加熱庫の底面を平坦にして清掃の手入れを容易にしたことを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、被加熱食材からの油が両ヒータに付着することに起因する発煙や発火がなく、両ヒータの汚れを防止することができる。
【0008】
また、上記加熱トレイは、板状であり当該加熱トレイ上で発生した油分が下方に滴下しないようにしてもよい。
【0009】
これによれば、一層清掃に手間が掛かるという問題を解消出来る。
【0010】
また、上記加熱トレイは、さらに断面波板形状としてもよい。
【0011】
これによれば、一層清掃に手間が掛かるという問題を解消出来る。
【発明の効果】
【0012】
以上より明らかなように、この発明の加熱調理器は、上ヒータ室に関する温度を検出する上ヒータ室温度センサと、下ヒータ室に関する温度を検出する下ヒータ室温度センサとに加えて、加熱庫内の温度を検出する加熱庫温度センサを設け、加熱制御部によって、上記上ヒータ室温度センサおよび上記下ヒータ室温度センサの検出温度に応じて上ヒータおよび下ヒータを駆動している際に、上記加熱庫内の温度が目標温度以上になると、上記上ヒータおよび上記下ヒータの少なくとも一つの出力を低減するので、油による発煙や発火の防止のために上記上ヒータと上記下ヒータとが室内に収納されている場合でも、上記加熱庫内の温度を調理に応じた所望の温度に保つことができ、調理の仕上がりを良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の加熱調理器の一例としてのIHクッキングヒータにおける斜視図である。
【図2】図1において前面パネルを取り除いた状態の正面図である。
【図3】図1における蒸気発生装置からの蒸気経路を模式的に示す図である。
【図4】図1のロースター部における加熱制御系のブロック図である。
【図5】図4における加熱制御部による制御結果を示す図である。
【図6】従来の制御結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態の加熱調理器の一例としてのIH(電磁誘導加熱)クッキングヒータにおける正面斜め上方から見た斜視図である。また、図2は、図1において前面パネルを取り除いた状態の正面図である。
【0016】
本IHクッキングヒータは、図1および図2に示すように、キャビネット1の上面に設けられたトッププレート2に、前面側に右IHヒータ3と左IHヒータ4との2つのIHヒータを所定の間隔をあけて配置している。さらに、そのIHヒータ3,4の中間で且つ後面側に中央IHヒータ5を配置している。トッププレート2の後面側の右側に吸気口6を設け、トッププレート2の後面側の左側に排気口7を設けている。また、トッププレート2の前面側には、IH用操作部8を配置している。ここで、「前面側」とは、ロースター部9の加熱庫10の開口側であり、「後面側」とは、加熱庫10の開口側と反対の側である。
【0017】
また、上記キャビネット1の前面側には、前面パネル11の中央部に蒸気発生装置12を配置すると共に、前面パネル11の左側には加熱庫10を配置している。加熱庫10と蒸気発生装置12との前面側には、レールユニット13a,13bによって前後方向に摺動可能に取り付けられた把手付きドア14を備えている。
【0018】
上記前面パネル11における加熱庫10の開口の周囲にはパッキン(図示せず)が取り付けられており、把手付きドア14を閉じた状態で、上記パッキンによって加熱庫10の開口の周囲がシールされる。尚、把手付きドア14を閉じた状態では、蒸気発生装置12の前面側と把手付きドア14との間には、通風用の隙間が設けられている。
【0019】
上記蒸気発生装置12は、水タンク15と、この水タンク15を加熱するヒータ部16とを備えている。このヒータ部16は、加熱部分が底板から円錐台形状に突出している。ヒータ部16によって水タンク15を加熱することにより、水タンク15内の水が沸騰して蒸気が発生する。こうして発生した蒸気が加熱庫10に供給され、加熱庫10では、蒸気発生装置12から供給された蒸気とシーズヒータ等の熱源とによって、食材が加熱調理される。
【0020】
また、上記前面パネル11における蒸気発生装置12の右側には、液晶表示部17および操作キー部18を有するロースター部9用の前面操作部19を配置している。
【0021】
上記ロースター部9は、図2に示すように、加熱庫10と、この加熱庫10の上部に配置された例えばシーズヒータ等でなる上ヒータ20と、加熱庫10の下部に配置された例えばシーズヒータ等でなる下ヒータ21と、上ヒータ20を覆う金属板によって加熱庫10との間が仕切られた上ヒータ室22と、下ヒータ21を覆う金属板によって加熱庫10との間が仕切られた下ヒータ室23とを備えている。このように、上ヒータ20と下ヒータ21とを上ヒータ室22と下ヒータ室23との中に収納することによって、被加熱食材からの油が両ヒータ20,21に付着することに起因する発煙や発火がなく、両ヒータ20,21の汚れを防止することができる。
【0022】
また、上記前面操作部19の後側であって、上記蒸気発生装置12の右側には、右IHヒータ3用の右IHインバータ回路24、中央IHヒータ5用の中央IHインバータ回路25、左IHヒータ4用の左IHインバータ回路26が、積層されて配置されている。
【0023】
図3は、上記蒸気発生装置12によって発生した蒸気を加熱庫10に供給するための蒸気経路を模式的に示したものである。蒸気発生装置12の水タンク15は、その上部が蒸気チューブ27によって上ヒータ室22に接続されている。そして、蒸気チューブ27を介して上ヒータ室22に供給された飽和蒸気は、上ヒータ室22の下面に形成された蒸気供給孔28から加熱庫10内に噴出される。その際に、上ヒータ20を駆動して飽和蒸気をさらに加熱することによって、加熱庫10内に過熱蒸気を噴出することができる。
【0024】
すなわち、本実施の形態におけるロースター部9の機能としては、上ヒータ20と下ヒータ21とによるグリル調理およびオーブン調理、蒸気供給孔28からの過熱蒸気によるグリル調理およびオーブン調理、蒸気供給孔28からの飽和蒸気の凝縮による減塩調理、蒸気供給孔28からの飽和蒸気による蒸し調理等、多岐に亘る。
【0025】
ところで、本実施の形態においては、上記ロースター部9の上ヒータ20と下ヒータ21とを、上ヒータ室22と下ヒータ室23との中に収納している。したがって、上ヒータ室22内および下ヒータ室23内に設置した上,下温度センサの検知温度のみに基づいて加熱庫10内の温度を制御した場合には、加熱庫10内の温度と上,下温度センサによる検知温度とにはズレが生ずるために、加熱庫10内の温度管理が非常に難しい。そこで、本実施の形態においては、図3に示すように、上ヒータ室22内の温度を検出する上ヒータ室温度センサ29および下ヒータ室23内の温度を検出する下ヒータ室温度センサ30に加えて、加熱庫10内の温度を検出する加熱庫温度センサ31を設ける。
【0026】
そして、上記上ヒータ20および下ヒータ21によるグリル調理およびオーブン調理の際には、表1に示すごとく、
加熱負荷に応じて上ヒータ室22内温度,下ヒータ室23内温度および加熱庫10内温度の目標温度を予め設定し、加熱制御部32によって、上ヒータ室温度センサ29,下ヒータ室温度センサ30および加熱庫温度センサ31の検出温度に基づいて、加熱庫10内の温度が目標温度になるように上ヒータ20と下ヒータ21との駆動を制御するのである。
【0027】
【表1】

尚、その場合における上記加熱負荷は、上記加熱庫温度センサ31によって検出された加熱庫10内の温度が、表2に示すごとく、
予め設定された設定温度だけ上昇する間の経過時間に基づいて判定される。
【0028】
尚、表1に示す各目標温度および表2に示す加熱負荷判定用の温度や経過時間はほんの一例であり、この発明は、表1,表2の内容および以下に記載の温度等に何ら制限されるものではない。
【0029】
【表2】

図4は、上記ロースター部9の加熱制御系のブロック図を示す。以下、図4に従って、本実施の形態におけるロースター部9の加熱制御について説明する。
【0030】
上記加熱制御部32の負荷判定部33は、加熱庫温度センサ31からの検出信号とタイマ34からの計時信号とに基づいて、上記加熱負荷を判定する。そして、目標温度設定部35は、負荷判定部33によって判定された上記加熱負荷と、前面操作部19の操作キー部18から設定された加熱カテゴリ(グリルまたはオーブン)および設定温度とに応じて、メモリ36に格納された表1に従って、上ヒータ室22内温度,下ヒータ室23内温度および加熱庫10内温度の目標温度を設定する。
【0031】
そうした後、上記加熱制御部32は、上ヒータ駆動回路37を制御して上ヒータ20を駆動する一方、下ヒータ駆動回路38を制御して下ヒータ21を駆動する。そして、加熱庫温度センサ31によって検出された加熱庫10内の温度が上記目標温度以上になると、上ヒータ20および下ヒータ21の出力を低減するのである。具体的には、上ヒータ駆動回路37および下ヒータ駆動回路38の動作を停止する。あるいは、上ヒータ駆動回路37および下ヒータ駆動回路38のオン・オフ動作のデューティ比を下げる。あるいは、上ヒータ駆動回路37および下ヒータ駆動回路38がインバータ制御回路であれば、上ヒータ20および下ヒータ21の駆動周波数を低減するのである。
【0032】
図5は、上記上ヒータ室22内の目標温度が280℃であり、下ヒータ室23内の目標温度が225℃であり、加熱庫10内の目標温度が170℃である場合における加熱制御部32による制御結果を示す。図5から分かるように、加熱庫10内の温度が目標温度である170℃に至ると上ヒータ20および下ヒータ21の出力を低減するので、加熱庫10内の温度上昇が抑制されて目標温度170℃近傍で安定している。その結果、グリル調理の場合には、魚の表面および裏面に食欲をそそる焦げ目を付けることができる。また、オーブン調理の場合には、ケーキの表面が焦げたり、プリンに鬆が立ったりすることがなく、良い仕上がり状態を得ることができるのである。
【0033】
これに対して、上記加熱庫10内の温度を、上ヒータ室22内および下ヒータ室23内の温度のみで制御した場合には、図6に示すように、上ヒータ室22内の温度は目標温度280℃の近傍に、下ヒータ室23内の温度は目標温度225℃の近傍に制御されているが、加熱庫10内の温度は、目標温度170℃に至っても緩やかに上昇を続ける。したがって、グリル調理の場合には、魚の表面および裏面が焦げることがある。また、オーブン調理の場合には、ケーキの表面が焦げたりプリンに鬆が立ったりすることになる。
【0034】
ここで、図3に示すように、本実施の形態においては、被加熱食材39はトレイ40に対して直置きになっている。そして、トレイ40は、上ヒータ室22からの輻射熱と下ヒータ室23からの輻射熱とで加熱される。したがって、「付け焼き」のように焦げ易いために焼き能力を維持したままトレイ40の温度をあまり上昇させたくない場合には、表1に示された目標温度に拘わらず、下ヒータ21への投入電力を上ヒータ20への投入電力に対して大幅に低下させるようにする。例えば、上ヒータ20への投入電力の30%以下(0%も含む)に設定するのが望ましい。
【0035】
尚、本実施の形態においては、上記加熱庫10内の温度が上記目標温度以上になった場合には、上ヒータ20と下ヒータ21との両方の出力を低減するようにしている。しかしながら、この発明はこれに限定されるものではなく、上ヒータ20と下ヒータ21とのうちの少なくとも一つの出力を低減すればよい。
【0036】
また、本実施の形態においては、上記負荷判定部33によって判定された上記加熱負荷に応じて上ヒータ20および下ヒータ21を駆動して被加熱食材39に対する加熱調理を行うようにしている。ここで、上記加熱負荷が「無負荷」とは、加熱庫10内に被加熱食材39が無い状態を意味しており、加熱庫10内を予熱する場合や、加熱庫10内を加熱したまま食材39を取り出す場合に相当する。そこで、本実施の形態によれば、予熱→被加熱食材39投入→加熱したまま食材39の取り出しの一連動作に対して、上記「予熱」の場合には上記加熱負荷が「無負荷」の状態での加熱制御を行い、上記「被加熱食材39投入」の場合には上記加熱負荷が「小あるいは大」の状態での加熱制御を行い、上記「加熱したまま食材39の取り出し」の場合には上記加熱負荷が「無負荷」の状態での加熱制御を行うことで対処できる。すなわち、上記一連動作に対して、リアルタイムに加熱制御を切り換えることが可能になるのである。
【0037】
ところで、上記「加熱したまま食材39の取り出し」のごとく、例えば200℃でのオーブン調理が上記加熱負荷「小」の被加熱食材に対して行われている場合に上記加熱負荷が「無」に急激に変化した場合には、上述のように最終的には「無負荷」の状態での加熱制御が行われるとは言え、上記加熱負荷が変化した時点では上ヒータ室22内温度および下ヒータ室23内温度の目標温度が実際の加熱負荷に対して高めに(上ヒータ室22:275℃,下ヒータ室23:255℃)設定されることになる。したがって、把手付きドア14を閉じた場合には、加熱庫10内の温度が急速に上昇して、加熱庫10内の温度は目標温度200℃に対して好ましい範囲の±10%を超えてハンチングしてしまう。
【0038】
そこで、上記加熱制御部32は、目標温度修正部41によって、メモリ36に格納された表1を参照して、加熱庫10内の温度が目標温度200℃よりも高く設定されたオーバーシュート検知温度(220℃)までオーバーシュートした場合に、上ヒータ室22の目標温度を上記275℃よりも低い例えば225℃に修正する。同様に、下ヒータ室23の目標温度を上記255℃よりも低い例えば205℃に修正するのである。こうすることによって、加熱庫10内温度のハンチングを、目標温度200℃に対して±10%以内に抑制することができる。したがって、加熱庫10内温度を目標温度200℃に急速に収束させることができるのである。以後、上述のようにして、負荷判定部33によって上記加熱負荷が「無」と判定された後は、上記加熱負荷が「無負荷」の状態での加熱制御に移行するのである。
【0039】
尚、本実施の形態においては、上記加熱庫10内の温度が上記オーバーシュート検知温度までオーバーシュートした場合に、上ヒータ室22および下ヒータ室23の両方の目標温度を下方に修正するようにしている。しかしながら、この発明はこれに限定されるものではなく、上ヒータ室22と下ヒータ室23とのうちの少なくとも一つの目標温度を下方に修正すればよいのである。
【0040】
また、上述したように、上記ロースター部9の機能として、蒸気供給孔28からの飽和蒸気の凝縮による減塩調理がある。この場合、グリル調理時において、蒸気発生装置12で発生された飽和蒸気を蒸気チューブ27によって上ヒータ室22に供給し、蒸気供給孔28から加熱庫10内に噴出し、被加熱食材39中で飽和蒸気を凝縮させることによって凝縮水中に被加熱食材39の表面の余分な塩分や油脂分を溶融除去するのである。その際に、上ヒータ室22内の温度が低過ぎると上ヒータ室22内で蒸気が結露してしまって被加熱食材39に供給できず、減塩処理ができない。これに対し、上ヒータ室22内の温度が高過ぎると上ヒータ室22内で蒸気が蒸発してしまって被加熱食材39に供給できず、やはり減塩ができない。
【0041】
そこで、本実施の形態においては、上記目標温度設定部35は、表1に示すごとく、上記減塩処理時における加熱庫10内温度の目標温度を、オーブン調理時における加熱庫10内温度の目標温度よりも低い温度に設定するようにしている。したがって、上ヒータ室22に供給された飽和蒸気が、上ヒータ室22内で凝縮したり、蒸発したりすることを防止でき、的確に被加熱食材39に供給して減塩処理を行うことができるのである。
【0042】
尚、上記蒸気供給孔28から加熱庫10内への飽和蒸気の噴出しは、上記減塩調理のみに限定されるものではなく、蒸気の供給量等を調整することによって料理の仕上がりをしっとりさせることができる。
【0043】
また、本実施の形態においては、上記加熱制御部32は、調理メニューに応じたシーケンス制御を行うようになっており、その際に被加熱食材39の量(加熱量)に応じて異なるシーケンス制御を行う。そこで、加熱制御部32は、加熱庫温度センサ31によって検出された加熱庫10内温度が、予め設定されてメモリ36に格納された上記下側設定温度としての110℃から上側設定温度としての150℃まで上昇する間の第1経過時間と、210℃から230℃まで上昇する間の第2経過時間とを、タイマ34からの計時信号に従って計測し、この計測結果に基づいて加熱量を判定する加熱量判定部42を有している。
【0044】
ところで、上記加熱量判定部42によって、上記第1経過時間を計測している第1加熱量判定期間または上記第2経過時間を計測している第2加熱量判定期間、あるいは、上記第1加熱量判定期間近傍または上記第2加熱量判定期間近傍に、ロースター部9の把手付きドア14が開かれた場合には、加熱庫10内温度が変動して正確な加熱量判定が不可能になる。そこで、本実施の形態においては、加熱量判定部42は、把手付きドア14に取り付けられたスイッチ等で成るドア開閉検出部43からの検出信号に基づいて、以下のようにして加熱量判定を行うのである。
【0045】
すなわち、上記ドア開閉検出部43からの検出信号に基づいて、上記第1加熱量判定期間または上記第2加熱量判定期間、あるいは、上記第1加熱量判定期間近傍または上記第2加熱量判定期間近傍に、把手付きドア14が開かれるのを監視している。そして、把手付きドア14が開かれた場合には、上記下側設定温度および上記上側設定温度を、把手付きドア14が開かれたことの影響が無くなる程度に予め設定された時間だけ高温側にシフトして経過時間を計測するのである。こうすることによって、把手付きドア14の開閉によって被加熱食材39の加熱量に誤差が生ずることを防止できる。
【0046】
また、上記第1加熱量判定期間または上記第1加熱量判定期間近傍、あるいは、上記第2加熱量判定期間または上記第2加熱量判定期間近傍の何れにおいても、把手付きドア14の開閉のために加熱量判定が行えない場合には、上記加熱量の判定結果を予め設定されてメモリ36に格納されている最小量に設定する。こうして、上記加熱量の判定ができなかった場合でも、加熱調理を行うことができるようにする。
【0047】
尚、上記実施の形態においては、上記負荷判定部33と上記加熱量判定部42とを個別に設けている。しかしながら、両判定部33,42とも、加熱庫10内温度が上記下側設定温度から上記上側設定温度まで上昇する間の経過時間を、タイマ34からの計時信号に基づいて計測するようにしている。そこで、負荷判定部33と上記加熱量判定部42とを一つに統合することも可能である。
【0048】
また、上記実施の形態においては、上記加熱制御部32は、上ヒータ室温度センサ29によって検出された上ヒータ室22内の温度および下ヒータ室温度センサ30によって検出された下ヒータ室23内の温度に基づいて、上ヒータ20および下ヒータ21を駆動するようにしている。しかしながら、この発明はこれに限定されるものではなく、上ヒータ室22の温度および下ヒータ室23の温度に基づいて、上ヒータ20および下ヒータ21を駆動しても構わない。要は、上ヒータ室22に関する温度および下ヒータ室23に関する温度に基づいて駆動すればよいのである。
【0049】
また、上記実施の形態においては、上記前面パネル11の中央部に蒸気発生装置12を配置し、前面パネル11の左側にロースター部9を配置している。しかしながら、この発明は、これらの配置を特定するものではなく、例えば、前面パネル11の中央部にロースター部9を配置し、前面パネル11の左側あるいは右側に蒸気発生装置12を配置しても差し支えない。
【0050】
また、上記実施の形態においては、上記過熱蒸気あるいは飽和蒸気による調理を行う際には、蒸気発生装置12からの蒸気を上ヒータ室22に供給するようにしている。しかしながら、この発明はこれに限定されるものではなく、下ヒータ室23に供給するようにしても差し支えない。こうすれば、下ヒータ室23の蒸気供給孔からから立ち上る蒸気によって被加熱食材39を包み込んで調理することができるので、過熱蒸気によるグリル調理およびオーブン調理、飽和蒸気による蒸し調理や減塩調理等を、上ヒータ室22に蒸気を供給する場合よりも効果的に行うことができ、さらに良い仕上がりを得ることができる。
【0051】
また、上記実施の形態においては、この発明の加熱調理器をIHクッキングヒータに適用した場合を例に説明したが、これに限らずオーブンレンジ等に適用しても一向に構わない。また、上記実施の形態においては、この発明の加熱調理器を、シーズヒータ等でなる上ヒータ20および下ヒータ21による調理と、過熱蒸気あるいは飽和蒸気による調理との両方が可能なロースター部に適用している。しかしながら、この発明はこれに限定されるものではなく、上ヒータ20および下ヒータ21による調理のみ、上ヒータ20および下ヒータ21による調理と過熱蒸気あるいは飽和蒸気による調理との両方、過熱蒸気あるいは飽和蒸気による調理のみの何れに適用しても差し支えない。
【0052】
この発明の加熱調理器によれば、クッキングヒータ(IHヒータや電気ヒータ等の電気コンロあるいはガスコンロを用いたものを含む)やオーブンレンジ等において、スチームあるいは過熱蒸気を用いることにより、ヘルシーな調理を行うことができる。例えば、この発明の加熱調理器では、温度が100℃以上の過熱蒸気あるいは飽和蒸気を食品表面に供給し、食品表面に付着した過熱蒸気あるいは飽和蒸気が凝縮して大量の凝縮潜熱を食品に与えるので、食品に熱を効率よく伝えることができ、食品表面がパリッと焼き上がり、仕上がり状態の良い調理を行うことができる。また、凝縮水が食品の表面に付着して余分な塩分や油脂分と共に滴下することによって、食品中の塩分や油脂分を低減できる。さらに、加熱庫10内は過熱蒸気あるいは飽和蒸気が充満して無酸素状態となることにより、食品の酸化を抑制した調理が可能となる。
【符号の説明】
【0053】
3,4,5…IHヒータ、
6…吸気口、
7…排気口、
9…ロースター部、
10…加熱庫、
12…蒸気発生装置、
14…把手付きドア、
18…操作キー部、
19…ロースター部用前面操作部、
20…上ヒータ、
21…下ヒータ、
22…上ヒータ室、
23…下ヒータ室、
28…蒸気供給孔、
29…上ヒータ室温度センサ、
30…下ヒータ室温度センサ、
31…加熱庫温度センサ、
32…加熱制御部、
33…負荷判定部、
35…目標温度設定部、
36…メモリ、
37…上ヒータ駆動回路、
38…下ヒータ駆動回路、
39…被加熱食材、
40…トレイ、
41…目標温度修正部、
42…加熱量判定部、
43…ドア開閉検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットと、
上記キャビネットの上部に設けたIHヒータと、
上記キャビネットの前面に開口する加熱庫を有するロースタ部と、
上記キャビネットの前面に設けた操作部と、
上記キャビネットの上部奥側に設けた排気口と、
からなるIHクッキングヒータであって、
上記ロースタ部は、
前後方向に揺動可能に取り付けられたドア部と、
上記ドア部を揺動可能に取り付けるためのレール部と、
上記加熱庫の天面に設けた上部ヒータと、
上記加熱庫の下部に設けた下部ヒータと、
上記上部ヒータと上記下部ヒータとの間に設けた加熱トレイと、
からなり、
上記レール部は、上記加熱庫の底面よりも所定の間隔を隔てて下方に設け、
上記下部ヒータは、上記レール部の間に設け、
上記下部ヒータは、上記加熱庫の内部に露出しないように隠蔽したことにより、上記加熱庫の底面を平坦にして清掃の手入れを容易にしたことを特徴とするIHクッキングヒータ。
【請求項2】
上記加熱トレイは、板状であり当該加熱トレイ上で発生した油分が下方に滴下しないようにしたことを特徴とする請求項1に記載のIHクッキングヒータ。
【請求項3】
上記加熱トレイは、さらに断面波板形状であることを特徴とする請求項2に記載のIHクッキングヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−40760(P2013−40760A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−222017(P2012−222017)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【分割の表示】特願2009−48008(P2009−48008)の分割
【原出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】