説明

加熱配管及びこれを用いた尿素SCRシステム用配管

【課題】簡素な構造を有すると共に加熱効率の優れた加熱配管の提供を目的とし、特に、加熱効率の優れた尿素SCRシステム用配管を提供することを目的とする。
【解決手段】金属管1と、この金属管1の両端に接合されたニップル2と、このニップル2の先端に接合された非導電性材質からなる接続継手3と、前記金属管1の外周に被覆された保護チューブ7と、前記金属管1に通電するため前記ニップル2外周に取り付けられた通電端子6と、これら通電端子6に電圧を印加するため接続された導線4とを備えてなる加熱配管。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱効率に優れた加熱配管に関し、特に、寒冷地向け自動車用の尿素SCRシステムに好適な尿素SCRシステム用配管に関する。
【背景技術】
【0002】
輸送する気体や液体の温度低下を防いだり、或いは加熱する目的で、樹脂やゴムからなるホースやパイプに発熱体を取り付けた発熱ホースやパイプが従来より提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、何れの従来例に係る発熱ホースやパイプも、発熱体が編組体に構成されたり、裸銅線と発熱繊維等により構成されたものであった。
【0003】
そのため、前記発熱体やこの発熱体を含むホースやパイプの形成が複雑である上、発熱体に発生した熱をホースやパイプを介して内部の気体や液体に伝熱させる間接加熱であるため、加熱効率が悪いという問題点を有していた。
【0004】
一方、自動車用等のエンジン排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)が、人体に対して気管支炎や肺水腫等を引き起こしたり、光化学スモッグや酸性雨等の環境問題の原因ともなって規制の対象になっている。この様な有害な窒素酸化物(NOx)を浄化する技術として、排気ガス浄化技術の一つである尿素SCR
(Selective Catalytic Reduction:選択的触媒還元)システムが注目されている。
【0005】
この尿素SCRシステムは、窒素酸化物(NOx)の排出が多いディーゼル車両にて多く採用されつつあり、アンモニア(NH3)が窒素酸化物(NOx)と化学反応することで窒素(N2)と水(H2O)に還元されることを応用した技術である。具体的には、エンジン運転状態に応じて必要量の尿素水溶液を噴射供給し、前記尿素水溶液を加水分解して得られるアンモニアによりNOxを還元浄化させると共に、前記アンモニアを酸化させて窒素と水に分解するものである。
【0006】
ところが、前記尿素水溶液の凝固点は約−11℃であるため、寒冷地向けのディーゼル車両においては、この尿素水溶液の輸送用に凍結防止のためヒータ付配管が用いられている。この従来例に係るヒータ付配管について、以下添付図7を参照しながら説明する。図7は従来例に係るヒータ付配管の詳細を示し、(A)は正面断面図、(B)は側断面図を示す。
【0007】
この従来例に係るヒータ付配管は、尿素水溶液を移送するナイロンチューブ38の略全長に沿ってコード状ヒータ40及びリード線42が夫々配設されると共に、その中間部周囲に、アルミニウム等からなる均熱層44、ガラスファイバー等からなる保温層46、ポリエステル等からなる防湿層48、ポリ塩化ビニル等からなる保護カバー50が順次配設された構成をなしており、前記配管の端部に位置する前記ヒータ40は、所定長さの部位が折り返して多重化されている(特許文献4参照)。
【0008】
【特許文献1】実開昭59−71599号公報
【特許文献2】実開昭63−23796号公報
【特許文献3】特開2004−162827号公報
【特許文献4】特開2005−214403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来例に係るヒータ付配管も前記発熱ホースやパイプと同様、発熱体を含む配管構成が複雑な上、発熱体に発生した熱を配管を介して尿素水溶液に伝熱させる間接加熱であるため加熱効率が悪いという問題点を有していた。
【0010】
従って、本発明は、簡素な構造を有すると共に加熱効率の優れた加熱配管の提供を目的とし、特に、加熱効率の優れた尿素SCRシステム用配管を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る加熱配管が採用した手段は、金属管と、この金属管の両端に接合されたニップルと、このニップルの先端に接合された非導電性材質からなる接続継手と、前記金属管の外周に被覆された保護チューブと、前記金属管に通電するため前記ニップル外周に取り付けられた通電端子と、これら通電端子に電圧を印加するため接続された導線とを備えてなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項2に係る加熱配管が採用した手段は、請求項1に記載の加熱配管において、前記金属管が蛇腹管で形成されてなることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項3に係る加熱配管が採用した手段は、請求項1または2に記載の加熱配管において、前記通電端子が、前記導線の一端を前記ニップルとこのニップルに外挿されたスリーブとの間に加締込んで形成されてなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項4に係る加熱配管が採用した手段は、請求項1〜3のうちの何れか一つの項に記載の加熱配管において、前記接続継手と通電端子との間の前記ニップル外周に、水の浸入を排除するための防水テープが巻き付けられると共に、少なくともこの防水テープと前記通電端子の外周が、防水性を有する被覆層によって被覆されてなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項5に係る加熱配管が採用した手段は、請求項1〜4のうちの何れか一つの項に記載の加熱配管において、前記保護チューブ及び/または前記被覆層が熱収縮チューブによって形成されてなることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項6に係る加熱配管が採用した手段は、請求項1〜5のうちの何れか一つの項に記載の加熱配管において、前記金属管がステンレス鋼から形成されてなることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項7に係る尿素SCRシステム用配管が採用した手段は、前記請求項1〜6のうちの何れか一つの項に記載の加熱配管を用い、前記導線の他端が車両用電源に接続されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に係る加熱配管によれば、金属管と、この金属管の両端に接合されたニップルと、このニップルの先端に接合された非導電性材質からなる接続継手と、前記金属管の外周に被覆された保護チューブと、前記金属管に通電するため前記ニップル外周に取り付けられた通電端子と、これら通電端子に電圧を印加するため接続された導線とを備えてなる。
【0019】
そのため、前記通電端子に導線を介して電圧印加することによって前記金属管に通電し、この金属管のジュール発熱による金属管自体の発熱が可能となるので、簡素な配管及び発熱構造によって加熱効率に優れた加熱配管を提供し得る。
【0020】
また、本発明の請求項2に係る加熱配管によれば、前記金属管が蛇腹管で形成されてなるので、可撓性を有すると共に加熱効率に優れた加熱配管を提供し得る。
【0021】
更に、本発明の請求項3に係る加熱配管によれば、前記通電端子が、前記導線の一端を前記ニップルとこのニップルに外挿されたスリーブとの間に加締込んで形成されてなるので、前記スリーブの内周とニップルの外周とが、前記導線の一端を介して塑性変形する結果、前記導線の一端はニップルの外周とスリーブの内周の変形に従って拘束される。
【0022】
そのため、この通電端子に何らかの力が作用したとしても、前記導線の一端が前記通電端子から外れることがなく、前記通電端子と金属管の電気的接続も確実なものとし得る。
【0023】
また更に、本発明の請求項4に係る加熱配管によれば、前記接続継手と通電端子との間の前記ニップル外周に、水の浸入を排除するための防水テープが巻き付けられると共に、少なくともこの防水テープと前記通電端子の外周が、防水性を有する被覆層によって被覆されてなる。
【0024】
その結果、少なくとも前記防水テープより長手方向中央側に系外より水が浸入することがなくなり、金属管の外周に被覆された前記保護チューブと相まって、前記通電端子や導線或いはまたこれらの部材やスリーブ、金属管間の腐食を防止し得る。
【0025】
そして、本発明の請求項5に係る加熱配管によれば、前記保護チューブ及び/または前記被覆層が熱収縮チューブによって形成されてなるので、前記金属管の外周と防水テープ及び通電端子の外周とを、簡便な手段によって低コストに防水被覆し得る。
【0026】
また、本発明の請求項6に係る加熱配管によれば、前記金属管がステンレス配管からなるので、例え前記防水テープの存在にも拘わらず金属管の領域に水分が浸入したとしても、この金属管が腐食するのを防止できる。
【0027】
一方、本発明の請求項7に係る尿素SCRシステム用配管によれば、前記請求項1〜6のうちの何れか一つの項に記載の加熱配管を用い、前記導線の他端が車両用電源に接続されてなるので、簡素な構造を有すると共に加熱効率が格段に優れた尿素SCRシステム用配管を提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係る加熱配管を尿素SCRシステム配管に対して適用した実施の形態1につき、以下添付図1を参照しながら説明する。図1は、尿素SCRシステムに対して本発明に係る加熱配管を適用した実施の形態1に係り、図(a)は一部切欠き断面で示した構成図、図(b)は図(a)の一点鎖線で示す部分を拡大し被覆層を省略して示した詳細断面図である。
【0029】
先ず、本発明に係る加熱配管の構成について説明する。この加熱配管は所定長の金属管としてステンレス蛇腹管(以下、単に蛇腹管とも称す)1を有し、このステンレス蛇腹管1は、長手方向の中央部に形成されたステンレス鋼製の蛇腹1aと、この蛇腹1aの両端部に形成されたステンレス鋼製の直管部1bとからなる。
【0030】
このステンレス蛇腹管1の両端部は、前記蛇腹管1を構成する蛇腹1aの直管部1bに、ステンレス鋼製のニップル2が接合されている。前記ニップル2の先端には、その外周に図示しない雄ネジが設けられ、この雄ネジに非導電性材質からなる接続継手3が螺合して取付けられている。
【0031】
また、前記ニップル2の外周には、このニップル2と蛇腹1aの直管部1bとの接合部を覆う様にスリーブ5が外挿され、導線の一端4aを前記ニップル2とこのニップル2に外挿されたスリーブ5との間に挿入し、このスリーブ5に加締部5aを形成してなる通電端子6が取り付けられている。更に、前記ステンレス蛇腹管1の全長及びスリーブ5の一部の外周が保護チューブ7で被覆されている。
【0032】
そして、長手方向の前記接続継手3と通電端子6との間のニップル2外周には、水の浸入を排除するための防水テープ8が巻き付けられると共に、少なくともこの防水テープ8と前記通電端子6の外周が、防水性を有する被覆層10によって被覆されている。前記被覆層10は熱収縮チューブによって形成されるのが、簡便に防水性を有する被覆層を形成できる点から好ましい。
【0033】
前記通電端子6に接続された導線4は、一旦バンド9によって前記保護チューブ7両端の外周に固定された後、自動車用の電源11が接続される。そして、前記通電端子6からスリーブ2を介して前記ステンレス蛇腹管1に所定の電圧が印加されると、前記ステンレス蛇腹管1自体が自己発熱するのである。前記電源11としては、車両用バッテリや燃料電池等、車両に搭載された電気系統用電源を用いることができる。
【0034】
次に、この様な構成からなる本発明に係る加熱配管の製作手順について以下説明する。加熱配管の製作は、先ず、ニップル2の基部2aを、ステンレス蛇腹管1の直管部1bの外面を覆う様にして、蛇腹1aの先端に当接するまで嵌入して嵌合させた後、前記ニップル2の内面と直管部1の外面、ニップル2の蛇腹1a側の端面とこれに接する蛇腹面とをそれぞれロウ付けすることにより、ニップル2と蛇腹管1とを接合する。
【0035】
また、前記ニップル2の外径より少し大きな内径を有し、且つ前記ニップル2の全長より短めの長さを有するステンレス製のスリーブ5を準備する。そして、前記ニップル2と蛇腹管1との接合部の外周にこのスリーブ5を外挿し、摺動可能に緩く嵌合する。ここで、前記スリーブ5の内径と前記ニップル2の外径とは、後述する導線10の裸径より大きい隙間を有していることが肝要である。
【0036】
次いで、通電端子6の形成作業に先立ち、予め用意した熱収縮性を有するEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)等からなる保護チューブ7を、蛇腹管1に接続されたニップル2から外挿し、蛇腹1aと前記スリーブ5の一部を覆う位置に装着しておく。
【0037】
そして、前記両端のニップル2の外周とスリーブ5の内周との間の隙間に、導線4の夫々の一端4aを挟み込んだ状態で、締結機(加締装置)により、前記スリーブ5の端部側の外周面をその長手方向の1箇所求心方向に加締込んで加締部5aを形成して、前記スリーブ5が導線4の一端4aを介してニップル2に固着された通電端子6を、ステンレス蛇腹管1の夫々の両端に形成する。
【0038】
このスリーブ5の端部側の加締めによって形成された通電端子6は、前記スリーブ5の内周とニップル2の外周とが、前記導線4の一端4aを介して加締込まれて塑性変形する結果、前記導線4の一端4aはニップル2の外周とスリーブ5の内周の変形に従って拘束される。
【0039】
そのため、この通電端子6に何らかの力が作用したとしても、前記導線4の一端4aが前記通電端子6から外れることがなく、前記導線4と通電端子6及びこの通電端子6とニップル2を介した金属管1との電気的接続も確実なものとし得る。
【0040】
その後、前記保護チューブ7を熱風加熱装置(オーブン)等により加熱処理して熱収縮させて、蛇腹1aの全周とスリーブ5の一部外面に密着させる。更に、前記導線4の通電端子6の部分に直接引張力等の負荷がかかって切断しない様に、前記導線4の通電端子6の近傍をバンド9によって保護チューブ7外周に固定しておく。前記バンド9としては、汎用の絶縁テープや結束バンド等を用いれば良い。
【0041】
そして、両端のニップル2に防水テープ8を夫々巻き付けた後、少なくともこれら両端の防水テープ8と前記通電端子6の外周に、熱収縮性を有するEPDM等からなる被覆層10を外挿し、前記保護チューブ7と同様、前記被覆層10を熱風加熱装置等により加熱処理して熱収縮させて、両端の防水テープ8と前記通電端子6の外面に密着させる。最後に、前記ニップル2の両端に接続継手3を螺合して製作完了する。
【0042】
その結果、前記防水テープ8と前記保護チューブ7及びこの被覆層10とによって、外部から水などが通電端子6や接続領域のニップル2とステンレス蛇腹管1との間に侵入することによる腐食の発生を有効に防止することができる。前記防水テープ8としてはブチルゴム等を用いるのが好ましい。また、前記接続継手3の螺合の際には、螺合部に接着剤を塗布しておくのも好ましい。
【0043】
次に、本発明に係る加熱配管を尿素SCRシステムに対して適用した実施の形態2につき、以下添付図2を参照しながら説明する。図2は、尿素SCRシステムに対して本発明の加熱配管を適用した実施の形態2に係り、一部切欠き断面で示した構成図である。
【0044】
但し、本発明の実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、通電端子の構成に相違があり、これ以外は上記実施の形態1と全く同構成であるから、上記実施の形態1と同一のものに同一符号を付して、以下その相違する点について説明する。
【0045】
即ち、上記実施の形態1に係る通電端子6が、ニップル2と蛇腹1aの直管部1bとの接合部を覆う様にスリーブ5が外挿され、導線の一端4aを前記ニップル2とこのニップル2に外挿されたスリーブ5との間に挿入して通電端子6が形成されていたのに対し、本発明の実施の形態2に係る通電端子6は、前記ニップル2の両端側にスリーブ5が外挿され、導線4の一端を前記ニップル2とこのニップル2に外挿されたスリーブ5との間に挿入して通電端子6が形成されている。
【0046】
この様に、前記通電端子6をニップル2の両端側に配置することによって、蛇腹管1はもとより、前記ニップル2の両端近傍までの広範囲に亘る通電加熱が可能となる。
【0047】
以上、図示の実施形態についてその概要説明を行ったが、更に、本発明の理解とその実施を容易にすべく、以下において他の実施形態との関連等を含め、本発明ついてより包括的な説明を加えることにする。
【0048】
本発明において対象となる金属管1については、実施形態ではステンレス蛇腹管を用いて説明したが、管形態としては蛇腹管に限定されることなく通常の剛性を有する金属配管を用いることができ、かつ管材質としてもステンレス鋼に限定されることはなく、他の金属またはその合金でもかまわない。例えば、ステンレス鋼管、アルミニウム合金管、真鍮管或いは銅管等を用いることができる。
【0049】
しかしながら、尿素SCRシステムに用いられる金属管1としては、ステンレス蛇腹管が可撓性を有するため車両に実装し易い上錆発生し難い点から好ましく、SUS316Lを用いた蛇腹管が耐粒界腐食性を有する点から更に好ましい。
【0050】
また、前記実施形態においては、保護チューブ7及び被覆層10の材質として、熱収縮性を有するEPDMを挙げた。この保護チューブ7及び被覆層10は、熱収縮による密着性が優れ、かつ熱収縮後において通電端子6や接続領域への水分の浸入などを確実に排除する防水性を有するものであれば、EPDM以外の他のゴム(シリコーンゴム、EPゴム、二トリルブタジエンゴム等)や樹脂(ポリエチレン、フッ素樹脂、ポリイミド、テフロン(登録商標)等)等を使用しても良い。
【0051】
更に、前記保護チューブ7及び被覆層10は、通電端子6や接続領域への水分の浸入などを確実に排除すると共に、通電された電気を系外に漏電させることのない電気絶縁性を有し、電食を防止し得るものであれば更に好ましい。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の実施の形態1において説明した尿素SCRシステム用の加熱配管を通電加熱した実施例を、従来例に係る市販の加熱導管を通電加熱した比較例と併せて、以下添付図3〜7を参照しながら説明する。
【0053】
図3〜7は本発明の実施例に係り、図3は凍結した尿素SCRシステム用配管を印加電圧4Vで通電加熱した実施例−1の昇温曲線、図4は同配管を印加電圧5Vで通電加熱した実施例−2の昇温曲線、図5は同配管を印加電圧6Vで通電加熱した実施例−3の昇温曲線を示す。図6,7は本発明の比較例に係り、図6は凍結した加熱導管を印加電圧6Vで通電加熱した比較例−1の昇温曲線、図7は同導管を印加電圧15Vで通電加熱した比較例−2の昇温曲線を示す。
【0054】
先ず、本発明の実施の形態において説明したステンレス蛇腹管を用い、この蛇腹管内及び蛇腹管外に熱電対を取り付けた状態の長さ1590mmの加熱配管を3本試作した。これらの配管に、規定濃度の尿素水溶液を注入した後封止して、−25℃に保持した冷蔵庫内に保管した。
【0055】
前記尿素水が凍結された後、これらの加熱配管を冷蔵庫から順次取り出して、前記熱電対の端子をその起電力が記録可能な電圧記録計に接続した後、印加電圧を夫々4V,5V,6Vに変えて前記起電力の時間的変化を記録した(実施例−1〜3)。
【0056】
図3〜5は、この実施例−1〜3における起電力を温度換算して示したものであり、印加電圧の上昇に従って電流値も上がるので、昇温時間も順次短縮されている。即ち、表1に示す如く、凍結した−25℃の尿素水溶液温度(金属蛇腹管内側温度)が融点−11℃に至るまでに要する時間は、印加電圧4Vであれば22分も要していたが、印加電圧6Vであれば7分15秒にしか過ぎなかった。
【0057】
【表1】

【0058】
一方、実施例と同一長さ1590mmを有する市販の加熱導管「日産ディーゼル品番:20420−01Z1C」(ニッタ・ムアー株式会社製)を2本準備し、この配管内に熱電対を取り付けた。これらの配管に、上記実施例と同様規定濃度の尿素水溶液を注入した後、凍結後冷蔵庫から順次取り出して、印加電圧を夫々6V,15Vに変えて起電力の時間的変化を記録した(比較例−1,2)。
【0059】
図6,7は、この比較例−1,2における起電力を温度換算して示したものである。即ち、印加電圧6Vの比較例−1においては凍結した尿素水溶液の昇温は殆ど認められず、印加電圧15Vの比較例−2において12℃程度の昇温が認められた。しかしながら、何れの比較例−1,2においても、表1に記載した通り、尿素水溶液の融点−11℃に到達することはなかった。従って、本発明に係る加熱配管の加熱効率の従来例に対する格段の優位性が認められた。
【0060】
以上説明した通り、本発明に係る加熱配管によれば、金属管と、この金属管の両端に接合されたニップルと、前記金属管に通電するため前記ニップル外周に取り付けられた通電端子と、これら通電端子に電圧を印加するため接続された導線とを備えてなるので、前記通電端子に導線を介して電圧印加することによって前記金属管に通電し、この金属管のジュール発熱による金属管自体の発熱が可能となり、簡素な配管及び加熱構造によって加熱効率に優れた可撓性配管を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】尿素SCRシステムに対して本発明に係る加熱配管を適用した実施形態を示し、(a)は一部切欠き断面で示した構成図、(b)は(a)の一点鎖線で示す部分を拡大し被覆層を省略して示した詳細断面図である。
【図2】尿素SCRシステムに対して本発明に係る加熱配管を適用した実施の形態2に係り、一部切欠き断面で示した構成図である。
【図3】本発明の実施例−1に係り、凍結した尿素SCRシステム用配管を印加電圧4Vで通電加熱した昇温曲線を示す。
【図4】本発明の実施例−2に係り、凍結した尿素SCRシステム用配管を印加電圧5Vで通電加熱した昇温曲線を示す。
【図5】本発明の実施例−3に係り、凍結した尿素SCRシステム用配管を印加電圧6Vで通電加熱した昇温曲線を示す。
【図6】本発明の比較例−1に係り、凍結した加熱導管を印加電圧6Vで通電加熱した昇温曲線を示す。
【図7】本発明の比較例−2に係り、凍結した加熱導管を印加電圧15Vで通電加熱した昇温曲線を示す。
【図8】従来例に係るヒータ付配管の詳細を示し、(A)は正面断面図、(B)は側断面図を示す。
【符号の説明】
【0062】
1:ステンレス蛇腹管(金属管), 1a:蛇腹, 1b:直管部,
2:(ステンレス)ニップル, 2a:ニップルの基部,
3:接続継手,
4:導線, 4a:導線の一端,
5:スリーブ, 5a:加締部,
6:通電端子,
7:保護チューブ, 8:防水テープ, 9:バンド,
10:被覆層, 11:電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管と、この金属管の両端に接合されたニップルと、このニップルの先端に接合された非導電性材質からなる接続継手と、前記金属管の外周に被覆された保護チューブと、前記金属管に通電するため前記ニップル外周に取り付けられた通電端子と、これら通電端子に電圧を印加するため接続された導線とを備えてなることを特徴とする加熱配管。
【請求項2】
前記金属管が蛇腹管で形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の加熱配管。
【請求項3】
前記通電端子が、前記導線の一端を前記ニップルとこのニップルに外挿されたスリーブとの間に加締込んで形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱配管。
【請求項4】
前記接続継手と通電端子との間の前記ニップル外周に、水の浸入を排除するための防水テープが巻き付けられると共に、少なくともこの防水テープと前記通電端子の外周が防水性を有する被覆層によって被覆されてなることを特徴とする請求項1〜3のうちの何れか一つの項に記載の加熱配管。
【請求項5】
前記保護チューブ及び/または前記被覆層が熱収縮チューブによって形成されてなることを特徴とする請求項1〜4のうちの何れか一つの項に記載の加熱配管。
【請求項6】
前記金属管がステンレス鋼から形成されてなることを特徴とする請求項1〜5のうちの何れか一つの項に記載の加熱配管。
【請求項7】
前記請求項1〜6のうちの何れか一つの項に記載の加熱配管を用い、前記導線の他端が車両用電源に接続されてなることを特徴とする尿素SCRシステム用配管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−31942(P2010−31942A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193776(P2008−193776)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000233619)株式会社ニチリン (69)
【Fターム(参考)】