説明

加硫タイヤの製造方法、冷却装置、及び、加硫システム

【課題】加硫対象物の冷却を行う際に周囲へ油煙が広がることを抑えた加硫タイヤの製造方法、冷却装置、及び、加硫システムを提供することを課題とする。
【解決手段】加硫後のタイヤTSにポストキュアインフレーションを行う際、タイヤTSをポストキュアインフレータ2の下リム3Sに載置した後、下リム3Sに形成された貫通孔3Hから気体を吸引する。これにより、ポストキュアインフレーション(PCI)を行う際、加硫容器から出したタイヤを下リム3Sに載置した状態でもタイヤから油煙が放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油煙が建屋内に広がることを抑えた加硫タイヤの製造方法、冷却装置、及び、加硫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤなどのゴム製品を製造する際、加硫装置で加硫することが多い。
ところで、加硫した後に加硫装置の加硫容器(釜)を開けると釜から油煙が周囲に広がる。このため、作業環境の関係上、加硫装置が設置されている建屋では換気回数を多くする必要がある。
【0003】
釜から油煙が広がることを防止する対策として、特許文献1では、加硫中に釜内に空気を送り込みながら排気することにより、油煙を強制的に排出することが開示されている。
また、特許文献2では、加硫終了時、加硫装置の釜を開く前に釜内から白煙ガス(油煙を含むガス)を吸引し、更に、大気を導入することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭49−23284号公報
【特許文献2】特開平9−38966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、加硫容器から取り出した加硫対象物を冷却する際にも油煙が生じる。特許文献1、2では、この冷却を行う際に発生する油煙が周囲に広がることを抑制できない。
本発明は、上記事実を考慮して、加硫対象物の冷却を行う際に周囲へ油煙が広がることを抑えた加硫タイヤの製造方法、冷却装置、及び、加硫システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、加硫後のタイヤにポストキュアインフレーションを行う際、前記タイヤをポストキュアインフレータの少なくとも下リムに載置した後に、該下リムに形成された気体通路孔から気体を吸引する。
少なくとも下リムに載置した後に気体通路孔から気体を吸引するとは、下リムに載置する前から気体吸引していてもよいことを意味している。気体は、空気に限らず窒素ガス等の他の気体であってもよい。また、気体を吸引するとは、気体中に浮遊している油煙も吸引することになる。
タイヤの加硫では、タイヤが金型やブラダなどから離れたときに特に油煙が発生し易いが、ポストキュアインフレーション(PCI)を行う際、加硫容器から出したタイヤを下リムに載置した状態でもタイヤから油煙が放出される。請求項1に記載の発明では、加硫後のタイヤの冷却、すなわちポストキュアインフレーションを行う際、特にタイヤ内側から放出される油煙を、タイヤを下リムに載置した状態、更には載置する過程で、効率よく排出することができる。従って、この油煙が加硫容器の周囲に広がることが抑制され、環境負荷を低くすることができる。なお、油煙は、主に油分で構成されており、通常、白煙状に見える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記タイヤの上側に上リムを配置し、ポストキュアインフレーションを行いつつ前記気体通路孔から気体を排出する。
これにより、ポストキュアインフレーションを行っているときに、タイヤ内側面から放出される油煙を更に効率良く排出することができる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、タイヤ加硫用の加硫容器内で生タイヤを加硫し、少なくとも前記加硫容器を開いた後に前記加硫容器内の気体を吸引し、ポストキュアインフレーションを行う。
本明細書で、加硫対象物を加硫した加硫容器を開くとは、金型が、加硫中の加硫対象物に対する当接配置状態から該加硫対象物に対して離れていく状態のことをいう。また、少なくとも加硫容器を開いた後に加硫容器内の気体を吸引するとは、加硫容器を開く前から気体を吸引していてもよいことを意味する。また、本明細書で、加硫容器が開いた状態で加硫容器内の気体を吸引するとは、加硫容器内に残留している気体や、加硫容器の開いた部位から流出しようとする気体を吸引することを意味する。
加硫容器を開く形態は特に限定せず、上下方向に開く形態であってもよいし、左右方向に開く形態であってもよく、更には加硫容器の上部部材が加硫容器の下部部材にヒンジ結合されて開閉可能とされていてもよい。
【0009】
このように、請求項3に記載の発明では、少なくとも加硫容器を開いた後に加硫容器内の気体を吸引する。
従って、加硫中に、加硫容器内に気体を供給しつつ加硫容器内を排気する場合に比べ、高圧の気体を供給する必要がなく、また、加硫中の熱を排出する必要がないので省エネ効果が得られ、しかも、加硫タイヤをブラダや金型内壁から離脱させた際に発生する油煙を加硫容器内から効率良く排出することができ、この油煙が加硫容器の周囲に広がることが抑制される。
また、加硫容器を開く前にのみ加硫容器内の気体を吸引して更に加硫容器内に大気を導入する場合に比べ、製造時間を短縮することができ、しかも、加硫タイヤをブラダや金型内壁から離脱させた際に発生する油煙を効率良く排出することができ、この油煙が加硫容器の周囲に広がることが抑制される。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記加硫容器内の気体を吸引する際、加硫タイヤの中心軸側から吸引する。
請求項4に記載の発明では、加硫タイヤの踏面側から気体を吸引することに比べ、タイヤ周囲の気体を遥かに均等に吸引することができる。なお、吸引中心が中心軸上に位置していることが、気体を均等に吸引する上で最も好ましい。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記加硫容器を開く際、前記加硫容器内のブラダから加硫タイヤを上方へ引き抜く。
これにより、加硫容器を開く動作でブラダからタイヤを離脱させることができる。また、ブラダ表面及びタイヤ内面の少なくとも一方には、通常、離型剤が塗られており、加硫終了後にブラダからタイヤが離脱するとこの離型剤を含む油煙の発生量が多い。従って、ブラダからタイヤを離脱させた際に発生する油煙を効率良く排出することができる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、加硫後のゴムが載置されるとともに該ゴムの載置側に気体吸引口が形成された載置台を備え、前記載置台に載置された前記ゴムを冷却する。
請求項6に記載の発明では、加硫後のゴムを冷却する際、載置台に載置されたゴム表面から発生する油煙を効率よく排出することができ、この油煙が冷却装置の周囲に広がることが抑制される。
載置台の周囲に側壁部が設けられていてもよい。これにより、側壁部の内側空間の気体を吸引し易いので、上記効果を更に顕著なものとすることができる。
なお、上記ゴムがタイヤである場合、載置台は、通常、ポストキュアインフレータを構成する下リムである。
【0013】
請求項7に記載の発明は、未加硫ゴムを加硫する加硫容器と、少なくとも前記加硫容器が開いた後に前記加硫容器内の気体を吸引する吸引手段と、請求項6に記載の冷却装置と、前記加硫容器内のゴムを前記冷却装置に移送する移送手段と、を備えている。
請求項3と同様、少なくとも加硫容器を開いた後に加硫容器内の気体を吸引するとは、加硫容器を開く前から気体を吸引していてもよいことを意味する。また、加硫容器を開く形態は特に限定せず、上下方向に開く形態であってもよいし、左右方向に開く形態であってもよく、更には加硫容器の上部部材が加硫容器の下部部材にヒンジ結合されて開閉可能とされた構成であってもよい。
【0014】
請求項7に記載の発明では、少なくとも加硫容器を開いた後に加硫容器内の気体を吸引手段で吸引し、加硫容器内のゴムを移送手段で請求項6に記載の冷却装置に移送して冷却する。
従って、加硫中に加硫容器内に気体を供給しつつ金型内を排気する場合に比べ、高圧の気体を必要としないので加硫装置を簡単化することができ、加硫中の熱を排出する必要がないので省エネ効果が得られ、しかも、加硫ゴムをブラダや金型内壁から離脱させた際に発生する油煙を効率良く排出することができる。
また、加硫容器を開く前にのみ加硫容器内の気体を吸引して更に加硫容器内に大気を導入する場合に比べ、製造時間を短縮することができ、しかも、加硫ゴムをブラダや金型内壁から離脱させた際に発生する油煙を効率良く排出することができるという効果を奏する。
【0015】
請求項8に記載の発明は、前記加硫容器が開いた後に前記吸引手段に気体の吸引を開始させる制御手段を備えている。
これにより、吸引手段による気体の吸引の開始操作を作業員が行わなくてもよい。
【0016】
請求項9に記載の発明は、少なくとも加硫容器上部に設けられ前記加硫容器の少なくとも一部を外側から覆うフード部を備え、前記吸引手段が前記フード部内の気体を吸引する。
これにより、少なくとも加硫容器を開いた後にフード部内或いはフード部下方から油煙が発生しても、この油煙を含む気体をほとんど吸引することが可能になり、油煙が周囲に広がることを更に抑制することができる。
【0017】
請求項10に記載の発明は、前記加硫容器の一部を構成する架台部を備え、前記架台部には、前記加硫容器が開いたときにエアーカーテンで前記加硫容器内を外部空間から仕切るエアーカーテン形成部が設けられている。
請求項10に記載の発明では、加硫容器を開いてもエアーカーテンによって油煙が周囲に広がることがより更に抑制される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、加硫対象物の冷却を行う際に周囲へ油煙が広がることを抑えた加硫タイヤの製造方法、冷却装置、及び、加硫システムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る加硫システムの構成を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るポストキュアインフレータの構成を説明する説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る加硫システムを構成する加硫装置の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る加硫システムを構成する加硫装置で、シリンダ部を下降させて金型を開いた状態を説明する側面断面図である。
【図5】図5(A)及び(B)は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る加硫システムを構成する加硫装置のエアーカーテン形成部の斜視図、及び、図5(A)の矢視5B−5Bの部分側面断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る加硫システムの加硫装置に設けられた吸引ラインの吸引系統、及び、エアーカーテン形成部への空気供給系統を示す模式図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る加硫システムの加硫装置で、シリンダ部、及び、シリンダ部から分岐した分岐管を説明する断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る加硫システムを構成する加硫装置のバキューム装置を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る加硫システムを構成する加硫装置の第2バキューム装置を示す斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る加硫システムを構成する加硫装置の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る加硫システム1は、タイヤを加硫する加硫装置10と、加硫装置10から取り出されたタイヤを冷却するポストキュアインフレータ2と、加硫装置10からポストキュアインフレータ2へタイヤを移送する移送部7と、を備えている。
【0021】
(ポストキュアインフレータ、及び、移送部)
図2に示すように、ポストキュアインフレータ2は、ポストキュアインフレーションの対象となる空気入りタイヤ(タイヤTS)を載せる下リム3Lを備えている。この下リム3Lには、上下方向に貫通して下端面と上端面とに連通する貫通孔3Hが形成されている。更に、ポストキュアインフレータ2は、下リム3Lに載置された空気入りタイヤTSの上側に配置される上リム3Uを備えている。
また、ポストキュアインフレータ2は、貫通孔3Hの下端に一端で接続された接続配管4Tと、接続配管の他端に接続された三方バルブ5Xと、を備えている。そして、三方バルブ5Xの残り2つの接続口のうち、1つの接続口には加圧ライン4Pが接続され、もう1つの接続口には分岐配管4Bが接続されている。この分岐配管4Bには、真空吸引用の吸引ライン4Vと、タイヤ内を常圧に戻す常圧ライン4Nと、が並列に接続されており、更に、吸引ライン4Vを開閉する開閉弁5Yと、常圧ライン4Nを開閉する開閉弁5Zとが設けられている。
移送部7は、回動可能なアーム部7Aと、アーム部7Aの先端に設けられたタイヤ把持部7Cとを備えており、加硫装置10を構成する後述の加硫容器16で加硫されたタイヤTSをポストキュアインフレータ2の下リム3Lへ移送する構成になっている。なお、移送部7としては、これに限らず、公知のものが適用され得る。
【0022】
(加硫装置)
図3、図4に示すように、加硫装置10は、生タイヤを加硫する加硫成形機12と、加硫容器内の気体(空気)を吸引する吸引ライン14とを備えている。
【0023】
(加硫成形機)
加硫成形機12は、加硫容器16を構成する架台部18と断熱性のフード部20とを有しており、金型と加硫対象物(生タイヤ)とが接触しあうことにより加硫容器16が閉じた状態となる構造にされている。架台部18の中央にはブラダ22が立設している。フード部20は、架台部18の上側に位置して上下動可能に設けられており、後述のプラテン板26及び拡縮ガイド部34が上下動することで加硫容器16の開閉状態が切り替えられる。このフード部20は、図示しない昇降機に保持されて上下動が可能となっている。
【0024】
そして、加硫成形機12には、フード部20を上下方向に貫通して上下移動可能なシリンダ部24(図7も参照)が設けられている。シリンダ部24は、フード部20の中心軸上に位置するようにフード部20の天井部20Uを貫通している。シリンダ部24の下端部には円盤状のプラテン板26が取付けられており、シリンダ部24はプラテン板26の下面側に開口している。
【0025】
また、加硫成形機12は生タイヤ(グリーンタイヤ(GT))が収容されるいわゆるプッシュプル方式の金型30をフード部20の内側に有する。金型30は、タイヤのサイドウォール部からビード部を加硫する上金型30U及び下金型30Lと、加硫成形時には上金型30U及び下金型30Lに当接してタイヤのトレッド部、ショルダー部からサイドウォール部にかけて加硫する横金型30Sと、で構成される。下金型30Lは架台部18に固定されている。
【0026】
上金型30Uはプラテン板26の下面側に保持されている。横金型30Sは、横金型30Sのタイヤ径方向外側のセグメントホルダー32に取付けられている。セグメントホルダー32及び横金型30Sは、分割された複数部材で構成される。セグメントホルダー32のタイヤ径方向外側には、下方に向けて広がるテーパ面34Tが形成された拡縮ガイド部34が設けられている。そして、シリンダ部24が拡縮ガイド部34に対して下降すると、図4に示すように、セグメントホルダー32がプラテン板26に押圧され、拡縮ガイド部34のテーパ面34Tに案内されて径が広がりつつ下降して、横金型30Sが開く。逆にシリンダ部24が拡縮ガイド部34に対して上昇すると、セグメントホルダー32がテーパ面34Tに案内されて径が狭まりつつ上昇して横金型30Sが閉じる。この構成により、金型30内へのタイヤの収容、取出しが可能になっている。
プラテン板26、上金型30U、セグメントホルダー32、下金型30L、拡縮ガイド部34は何れもフード部20の内側に位置している。そして、横金型30Sが開いていても閉じていても、上金型30U及び横金型30Sがフード部20で覆われている。なお、フード部20は、このように加硫容器16の上面側全体を覆う形状であることが、加硫容器16内の空気を吸引する上で好ましいが、加硫容器16の上面側の一部を覆う形状であってもよい。
【0027】
そして、図3、図5に示すように、加硫成形機12の架台部18は、架台部18の上面周縁部18Eに配置されたエアーカーテン形成部40を備えている。このエアーカーテン形成部40は、後述の熱回収装置66から排出された空気が供給されて、架台部12の上面周縁部18Eからフード部20の下縁部20LまでエアーカーテンFC(図3参照)を形成する構成になっている。
【0028】
図5に示すように、エアーカーテン形成部40は、外側噴出部42と内側噴出部44で構成される。外側噴出部42は、円状のパイプ46と、パイプ46に等間隔に配置され、上方に向けて延び出す短パイプ状の外側延出し部48と、を有する。外側延出し部48の先端には噴出口が形成されており、この噴出口から噴出された空気によってエアーカーテンが形成されるようになっている。
【0029】
内側噴出部44は、パイプ46の下側に配置された円状のパイプ50と、パイプ50に等間隔に配置された短パイプ状の内側延出し部52と、を有する。内側延出し部52は、何れもパイプ50の同一円周方向に向けてやや傾斜するとともにパイプ内側にやや傾斜している。内側延出し部52の先端には噴出口が形成されており、この噴出口から噴出された空気によって、フード部20の天井部20Uの中心に向けてトルネード状(渦巻状)の空気流FT(図3参照)が発生するようになっている。なお、トルネード状であることが好適ではあるが、トルネード状でない空気流であってもよい。
【0030】
(吸引ライン)
吸引ライン14には、フード部20内に吸引口Mを形成している上記シリンダ部24と、シリンダ部24から分岐した分岐管60(図7参照)と、が設けられている。そして、吸引ライン14には、エジェクタ式で空気を吸引するバキューム装置(気体吸引装置)62(図8も参照)と、吸引した空気から油煙を除去する分煙装置64と、分煙装置64を経由した空気から熱を回収する熱回収装置66と、が上流から下流へかけて順次設けられている。また、本実施形態では、分煙装置64は集塵機(空気清浄機)で構成されている。分煙装置64は公知の分煙装置なら何でもよく、水中をくぐらせて気体を下流へ送ることによって除煙する構成であってもよい。そして、本実施形態では、熱回収装置66から回収された熱は、加硫時間を短縮するために生タイヤを保温する保温器68で利用される。
【0031】
図3に示すように、加硫装置10は他の加硫成形機(例えば加硫成形機16A)を1つ或いは複数備えており、各加硫成形機16Aの加硫容器16に対応してフード部Hがそれぞれ設けられている。そして、各フード部Hには、上記の吸引ライン14に接続する空気吸引用の分岐ラインGが、分岐管60とバキューム装置62との間に設けられた三方弁70を介して接続している。
そして加硫装置10には、加硫成形機12の温度制御、バキューム装置62及び後述の第2バキューム装置76の作動制御、各加硫成形機12の開閉制御、及び、その開閉に伴う三方弁70の切替制御、を行う制御部72が設けられている。
【0032】
図6は、吸引ライン14の吸引系統、及び、エアーカーテン形成部への空気供給系統を詳細に示す説明図である。ここで、吸引ライン14には、熱回収装置66と架台部18との間に第2バキューム装置76(図9も参照)が更に配置されていてもよい。以下の説明では、この第2バキューム装置76が設けられている例で説明する。
【0033】
吸引ライン14には、図6に示すように、バキューム装置62に圧縮空気を送給する第1送給ライン80と、第2バキューム装置76に圧縮空気を送給する第2送給ライン90と、が接続されている。第1送給ライン80には、上流から下流にかけて、減圧弁82、エアーオペレートバルブ(メカバルブ)84、開閉弁86が順次配置されている。そして、三方弁70及びエアーオペレートバルブ84の開閉制御を行う電磁弁88が設けられている。第2送給ライン82にも、上流から下流にかけて、減圧弁92、エアーオペレートバルブ(メカバルブ)94、開閉弁96が順次配置されている。そして、エアーオペレートバルブ94の開閉制御を行う電磁弁98が設けられている。
【0034】
なお、シリンダ部24に代えて、フード部内側に開口する蛇腹状のダクト部と、ダクト部の下流端に接続する吸引用配管とを設け、この吸引用配管にバキューム装置62と分煙装置64と熱回収装置66とを設けた構成にしてもよい。これにより、装置構成がより簡単になる。
【0035】
(加硫タイヤの製造方法、及び、作用効果)
以下、本実施形態の作用、効果を説明する。
【0036】
まず、生タイヤTRを加硫成形機12の加硫容器16に保持させ、加硫容器16を閉じる。この生タイヤTRとしては、保温器68で保温された生タイヤを用いても良い。
次に、制御部72からの指令で加硫容器16内の温度を設定温度にまで上げ、所定時間経過することにより生タイヤTRを加硫成形する。
所定時間経過後、制御部72の指令により加硫容器16内の温度を下げる。そして、制御部72の指令により、上金型30U、横金型30S及びフード部20を上昇させて加硫容器16を開く。その際、横金型30Sを保持する拡縮ガイド部34を上昇させることにより釜開が始まる。また、フード部20が上昇して大気が加硫容器16内に流入可能となったときに制御部72からの指令で、バキューム装置62及び第2バキューム装置76で空気吸引を開始して吸引口Mから空気吸引する。この結果、生タイヤTRが加硫されてなる加硫タイヤTSの中心軸TCから空気吸引され、分煙装置64へ送られて油煙が除去されて熱回収装置66へ送給される。なお、加硫容器16を開ける前から加硫容器16内を空気吸引してもよい。
【0037】
ここで、第2バキューム装置76から排気された油煙除去後の空気は、エアーカーテン形成部40へ注入される。そして、この注入された空気により、内側噴出部44から噴き出した空気によって、架台部18の上面周縁部18Eから吸引口Mへ向かう例えばトルネード状の空気流FT(風速は例えば3〜6m/sの範囲)が形成される。従って、加硫容器16内の油煙が吸引口Mからスムーズに吸引される。このような、釜内側の吸引口Mへ向かう空気流FTは、油煙の滞留抑制効果をもたらす。また、外側噴出部42の噴出口から噴き出した空気によって、上面周縁部18Eからフード部20の下縁部20Lまでを仕切るエアーカーテンFCが形成される。従って、加硫容器16内の油煙が建屋内に広がることが防止される。なお、本実施形態では、空気流FT、エアーカーテンFCの両方が形成される例で説明したが、空気流FT、エアーカーテンFCの何れか一方のみが形成される形態としてもよい。また、このように回収した空気を用いずに、別途に送風機などを設けてエアーカーテンを形成することも可能である。
【0038】
また、加硫容器16を開く際、フード部20、上金型30U、及び、横金型30Sを上昇させて、上金型30U及び横金型30Sに保持されている加硫タイヤTSをブラダ22から上方へ引き抜く。従って、加硫容器16を開く動作でブラダ22から加硫タイヤTSが離脱する。ブラダ表面及びタイヤ内面の少なくとも一方には、通常、離型剤が塗られており、加硫終了後にブラダ22から加硫タイヤTSが離脱するとこの離型剤の成分を含む油煙の量が多い。従って、ブラダ22から加硫タイヤTSを離脱させた際に発生する油煙が効率良く吸引口Mから排気される。また、加硫タイヤTSはシリンダ部24の動きにより保持から開放される。
【0039】
そして、吸引ライン4Vで下リム3Lの上面側を空気吸引しつつ、タイヤTSを加硫容器16からポストキュアインフレータ2にまで移送部7で移送し、下リム3Lの所定位置にタイヤTSを載置する。この所定位置にタイヤTSが載置される。
更に、上リム3UをタイヤTSの上側に配置してタイヤTS内を密閉空間とし、ポストキュアインフレーションを行う。このポストキュアインフレーションを行っている間でも、密閉状態となったタイヤTS内から発生する油煙を排出する。この排出では、例えば、加圧ライン4Pから空気を注入した後に常圧ライン4Nからタイヤ内の空気を開放することで、油煙を排出する。このプロセスを繰り返すことで、タイヤ内の圧力を一定以上に保持することができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、吸引ライン4Vで下リム3Lの上面側を空気吸引しつつ、タイヤTSを加硫容器16から下リム3Lへ移送して載置している。従って、ポストキュアインフレーションを行う際、下リム3Lに載置される過程、及び、上リム3Uが配置される前であっても、特にタイヤ内側から放出される油煙を効率よく排出することができ、この油煙がポストキュアインフレータ2の周囲に広がることが抑制される。従って、環境負荷の低いポストキュアインフレータ2を備えた加硫システム1とすることができる。
【0041】
また、タイヤTSの上側に上リム3Uを配置して下リム3Lと上リム3UとでタイヤTS内を密閉空間にし、ポストキュアインフレーションを行いつつ貫通孔3Hから気体を排出している。これにより、ポストキュアインフレーションを行っているときに、タイヤ内側面から放出される油煙を全て排出することができる。
また、本実施形態では、加硫容器16内で生タイヤTRを加硫し、加硫容器16を開きつつ、フード部20内の空気、更にはエアーカーテンFCで仕切られた空間内の空気を吸引ライン14で吸引する。従って、加硫中に加硫容器内に空気を供給しつつ加硫容器内を排気する場合に比べ、高圧の空気を供給する必要がなく、また、加硫中の熱を排出する必要がないので省エネ効果が得られる。しかも、加硫タイヤTSをブラダ22や金型内壁から離脱させた際に発生する油煙を効率良く排気することができ、この油煙が周囲に広がることが抑制される。従って、建屋内の作業環境を格段に良好にすることができ、しかも、建屋内の昇温を抑えることができる。
【0042】
また、加硫容器16を開く前にのみ加硫容器16内の気体を吸引して更に加硫容器内に大気を導入する場合に比べ、製造時間を短縮することができる。しかも、加硫タイヤTSをブラダ22や金型内壁から離脱させた際に発生する油煙を効率良く排気することができ、この油煙が周囲に広がることが抑制される。
【0043】
更に、吸引ライン14で空気吸引を行う際、タイヤの径方向中心部TCから吸引する。これにより、加硫タイヤTSの周囲を均等に効率良く空気吸引することができる。
また、加硫容器16を開く際、ブラダ22から加硫タイヤTSを上方へ引き抜く。これにより、加硫容器16を開く動作でブラダ22から加硫タイヤTSを離脱させることができ、しかも、ブラダからタイヤを離脱させた際に発生する油煙を効率良く排気することができる。
【0044】
更に、制御部72の指令によって、加硫容器16が開くとバキューム装置62及び第2バキューム装置76による空気吸引が開始されるので、空気吸引の開始操作を作業員行わなくてもよい。
【0045】
また、加硫装置10は、吸引ライン14で吸引した空気から油煙を除去する分煙装置64と、分煙装置64から排気された空気を噴出してエアーカーテンFCを形成するエアーカーテン形成部40と、を備えている。そして、このエアーカーテンFCは、加硫容器16を開いても架台部18の上面周縁部18Eからフード部20の下縁部20Lまで形成されており、加硫容器16が開いても加硫容器内が外部空間から仕切られる。従って、このエアーカーテンFCにより、加硫容器16を開いた際に油煙が周囲に広がることがより更に抑制される。また、このエアーカーテンFCは分煙装置64の排気を利用して形成されており、省エネ効果が得られる。なお、エアーカーテンFCに代えて、横金型30Sの外周より外側に向かって噴出するエアーカーテンを形成しても、加硫容器16を開いた際に油煙が周囲に広がることが抑制される。
また、分煙装置64から排出された空気は、熱回収装置66を経てエアーカーテン形成部40へ送られる。従って、熱効率が良く、省エネ効果、及び、炭酸ガス削減効果が更に奏される。
【0046】
なお、本実施形態では、三方バルブ5Xを切り換えることによって、貫通孔3Hの上端を、空気吸引口3MPと空気加圧口3MVとに切り換えることができるが、貫通孔を2本(3本以上であってもよい)形成して、空気吸引口と空気加圧口とを別々に形成してもよい。
また、本実施形態において、フード部20を設けない構成とすることも可能である。この場合、加硫容器上側外縁に向かってエアーを噴出してエアーカーテンを形成すればよい。
また、本実施形態では、加硫容器16を開ける際に、加硫タイヤTSが横金型30Sに保持された状態で横金型30Sを上昇させることにより加硫タイヤTSがブラダ22から引き抜かれる例で説明したが、図10に示すように、釜上方に吸引口Mが形成されていて、金型30を開けた後に公知のアンローダなどで下金型30L側に残った加硫タイヤTSをブラダ112から引き抜く構成の加硫装置110であっても、金型30から加硫タイヤTSが離れた際に発生する油煙を効果的に吸引して排気することができる。
すなわち、加硫容器16を開いたときに加硫タイヤTSが加硫容器16のどこに位置していても、加硫タイヤTSがブラダ22や金型内壁から離脱した際に発生する油煙を効率良く排気することができ、この油煙が周囲に広がることを抑制できる。
また、本実施形態では生タイヤを加硫する例で説明したが、生タイヤ以外の未加硫ゴムを加硫する場合であっても、同様の作用、効果を奏する。
【0047】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、上記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1 加硫システム
2 ポストキュアインフレータ(冷却装置)
3L 下リム(下リム、載置台)
3MP 空気吸引口(気体吸引口)
3U 上リム
3H 貫通孔(気体通路孔)
7 移送部(移送手段)
10 加硫装置
14 吸引ライン(吸引手段)
16 加硫容器
18 架台部
20 フード部
22 ブラダ
40 エアーカーテン形成部
64 分煙装置(分煙部)
66 熱回収装置
72 制御部(制御手段)
110 加硫装置
112 ブラダ
FC エアーカーテン
TC 中心軸
TR 生タイヤ
TS 加硫タイヤ、タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫後のタイヤにポストキュアインフレーションを行う際、前記タイヤをポストキュアインフレータの少なくとも下リムに載置した後に、該下リムに形成された気体通路孔から気体を吸引する、加硫タイヤの製造方法。
【請求項2】
前記タイヤの上側に上リムを配置し、ポストキュアインフレーションを行いつつ前記気体通路孔から気体を排出する、請求項1に記載の加硫タイヤの製造方法。
【請求項3】
タイヤ加硫用の加硫容器内で生タイヤを加硫し、
少なくとも前記加硫容器を開いた後に前記加硫容器内の気体を吸引し、
ポストキュアインフレーションを行う、請求項1又は2に記載の加硫タイヤの製造方法。
【請求項4】
前記加硫容器内の気体を吸引する際、加硫タイヤの中心軸側から吸引する、請求項3に記載の加硫タイヤの製造方法。
【請求項5】
前記加硫容器を開く際、前記加硫容器内のブラダから加硫タイヤを上方へ引き抜く、請求項1〜4のうち何れか1項に記載の加硫タイヤの製造方法。
【請求項6】
加硫後のゴムが載置されるとともに該ゴムの載置側に気体吸引口が形成された載置台を備え、前記載置台に載置された前記ゴムを冷却する、冷却装置。
【請求項7】
未加硫ゴムを加硫する加硫容器と、
少なくとも前記加硫容器が開いた後に前記加硫容器内の気体を吸引する吸引手段と、
請求項6に記載の冷却装置と、
前記加硫容器内のゴムを前記冷却装置に移送する移送手段と、
を備えた、加硫システム。
【請求項8】
前記加硫容器が開いた後に前記吸引手段に気体の吸引を開始させる制御手段を備えた、請求項7に記載の加硫システム。
【請求項9】
少なくとも加硫容器上部に設けられ前記加硫容器の少なくとも一部を外側から覆うフード部を備え、前記吸引手段が前記フード部内の気体を吸引する、請求項7又は8に記載の加硫システム。
【請求項10】
前記加硫容器の一部を構成する架台部を備え、
前記架台部には、前記加硫容器が開いたときにエアーカーテンで前記加硫容器内を外部空間から仕切るエアーカーテン形成部が設けられた、請求項8又は9に記載の加硫システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−42123(P2011−42123A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192435(P2009−192435)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】