説明

加速器利用システム

【課題】 本発明は、1台の加速器が出力する荷電粒子ビームを、複数のターゲットに照射するように構成し、BNCTによるがん治療や、PET用薬剤に用いられるRIの製造等に効率よく利用し、採算性の向上が図れる加速器利用システムを提供することを課題にする。
【解決手段】 加速器利用システム(100)は、加速器(110)から出射する荷電粒子ビーム(5)が、ターゲット(201,301)に照射して起きる核反応を利用するものであり、荷電粒子ビーム(5)の軌道を形成しその軌道上に出入自在な複数のターゲット(201,301)が配置されるビーム輸送管(6)と、荷電粒子ビーム(5)が照射する少なくとも1つのターゲット(201,301)を前記軌道上に位置させるターゲット駆動機構(204,304)と、を前記課題の解決手段として備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1台の加速器が出力する荷電粒子ビームを、複数のターゲットに照射するように構成され、核反応により多種類の生成粒子または生成元素を生成させることが可能な加速器利用システムに関するものである。特に、病院内のホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)に適用することが可能な熱中性子もしくは熱外中性子を生成する技術、または陽電子放出断層撮像(PET:Positron Emission Tomography)用の放射性同位元素を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
BNCTとは、加速器で作られるX線、荷電粒子ビーム等の放射線を直接利用する従来の放射線療法と異なり、予め投与されて腫瘍内部に局在するホウ素(10B)と、外部から照射した中性子(n)との核反応10B(n,α)7Liによって発生するα線とリチウム原子核(7Li)とを腫瘍細胞の殺傷に利用する治療方法である。
発生するα線とリチウム(7Li)原子核の飛程は、たかだか細胞1個分程度(〜10μm)であることから、正常細胞を傷つけることなく腫瘍を殺傷することができる。
また、外部から照射される中性子(n)は、核反応B(n,α)を起こすには十分であるが、正常細胞を傷つけない程度の、比較的低いエネルギーの中性子(熱中性子:0.5eV以下、熱外中性子: 0.5eV−10keV)が用いられる(例えば、非特許文献1)。
【0003】
これまでにおいて、BNCTの治療に必要な中性子束は、1×109n/s程度と大きいことから、用いられる中性子源としては、原子炉を利用するものに限定されていた。
このような原子炉を利用する中性子源としては、例えば日本原子力研究所の研究炉JRR-4の医療用照射設備(BNCTのための設備)等が挙げられる。
また加速器を利用する中性子源についても、アイデアだけはすでにいくつか提案されているが、高い能力が加速器の仕様に要求されることもあり、これまでのところ実用化されたものはない。
一方で、PET用薬剤に用いられる放射性同位元素(以下RI:Radio Isotopeという)の製造に関しては、主としてサイクロトロン加速器を用いたシステムが実用化されているが、PET用の専用機にとどまっている。
【非特許文献1】「JRR-4医療照射設備」資料、2005年7月、日本原子力研究所発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、BNCTで利用される中性子源は、原子炉を利用した中性子源であるが、日本国内でBNCT用に利用されている原子炉としては、京都大学原子炉KURと日本原子力研究所東海研究所内の研究炉JRR-4の2箇所のみである。これらのうち、前者は2006年3月で閉鎖される予定であるため、これら中性子源を利用してBNCTの治療システムを構成するのには限界がある。
【0005】
一方で、BNCTのために新しい原子炉を建設するとなると原子炉の立地そのものを含め、その利用にはさまざまな規制が伴うとともに、その他、膨大な建設費用、および時間を要するという問題がある。さらに現在利用できる原子炉も含め、原子炉を中性子源として利用するBNCTの治療システムは、一般に、治療を実施する医師を始めとする医療スタッフ、治療を受ける患者、およびその関係者に多大な負担を強いるという問題がある。
ところで、加速器を中性子源として利用するBNCTの治療システムを開発するアイデアについては中性子の発見後間もないころ(1930年代後半)から検討されている。しかし、そのアイデアは、加速器に要求される仕様のハードルが高いことや、病院経営上の採算性等の問題から、本発明の出願時点において未だ実現していない。
【0006】
本発明は、前記した問題を解決することを課題とするものであり、1台の加速器を、BNCTによるがん治療や、PET用薬剤に用いられるRIの製造等に対し効率的に利用し、採算性の向上が図れる加速器利用システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような問題を解決することを課題とし本発明は、加速器から出射する荷電粒子ビームがターゲットに照射して起きる核反応を利用する加速器利用システムにおいて、前記荷電粒子ビームの軌道を形成しその軌道上に出入自在な複数の前記ターゲットが配置されるビーム輸送管と、前記荷電粒子ビームが照射する少なくとも1つの前記ターゲットを前記軌道上に位置させるターゲット駆動機構と、を手段として備えることを特徴とする。
このような手段から発明が構成されることにより、所定の目的(BNCT治療、PET用RI製造等)を達成させることに特化させた複数のターゲットの各々を、荷電粒子ビームの軌道上に一列に配列させることができる。そして、適宜、ターゲット駆動機構によりターゲットを選択的に前記荷電粒子ビームの軌道上に位置させるだけで、所望する前記目的を達成させることができる。
【0008】
特に、この加速器利用システムをBNCT治療に適用する場合では、その治療前後でPET診断を行うに際し、治療の現場に近いところで、短半減期のRIを製造することができる。また、BNCT治療のスケジュールにほとんど影響を与えることなく、PET用RI製造が可能である。
さらに本発明によれば、ターゲットの選択だけで、例えば熱外中性子のBNCT、熱中性子のBNCT、または熱外中性子と熱中性子とが所定の割合で混在するBNCTが利用可能になる等、利用される中性子のエネルギー領域が異なる複数のBNCTを容易に選択できることになる。また複数のBNCT用ターゲットに対応した並列マルチベッドを構成することができ、BNCTのがん治療と並行して、別個の治療の準備や治療後処置を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1台の加速器を、例えばBNCTによるがん治療や、PET用薬剤に用いられるRIの製造等に適用でき、利用効率の向上を図ることができる加速器利用システムを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の加速器利用システム100(以下、本システムともいう)の全体構成を表す図である。本システムは、病院内あるいは病院に隣接した敷地内に設置されている。図2はその一部を拡大して示す図である。図1において、加速器室1内には荷電粒子ビーム5(本実施形態では陽子ビーム)を出射する加速器110が設置されている。加速器110はイオン源101、高周波四重極線型加速器(RFQ:Radio Frequency Quadrupole)102、ドリフトチューブ線形加速器(DTL:Drift Tube Linac)103a、103bからなる線型加速器である。
【0011】
イオン源101には、ガス圧調整器101aを介してガスボンベ101bから水素ガスが供給される。またイオン源101にはプラズマ発生用電源101cから電力が供給される。加速器本体のRFQ加速器102、DTL加速器103a、103bには、高電圧電源102a、クライストロン102b等の高周波(RF:Radio Frequency)発振管を介してRF電力が供給される。
これらイオン源101、RFQ加速器102、DTL加速器103a、103bはそれぞれターボ分子ポンプ104a、104b、104c、ロータリポンプ105等からなる真空排気系とゲートバルブ106a、106b、106c等の真空バルブを介して接続されている。図1では、イオン源101、加速器110のそれぞれに個別の真空ポンプが配置されているが、排気すべき容積・コンダクタンスと真空ポンプの排気能力とのかねあいで、これら真空ポンプの一部を共用で使用することも可能である。このように構成されている加速器110の統合的な制御は、制御指令装置4により行われる。
【0012】
PET用RI製造室2a、2bには、高速荷電粒子ビーム(陽子ビーム)5が照射されるPET用ターゲット201a、201bが、それぞれ減速体202a、202b、遮蔽体203a、203bで包囲されたPET用ターゲット収納室20a、20b内に収納されている。そして、これらのPET用ターゲット201a,201bは、真空気密に保たれているターゲット駆動機構204a、204bにより、荷電粒子ビーム5を横切るように移動可能になっている。それぞれのターゲット収納室20a、20bは真空気密のビーム輸送管6を介して加速器110の出射口100aと直線的に連通している。ターゲット収納室20a、20bを包囲する遮蔽体203a、203bの外側のビーム上流側および下流側には、ゲートバルブ205a、205bが配置されている。
【0013】
そして、この一対のゲートバルブ205a、205bに挟まれるビーム輸送管6の領域には、この領域を個別に大気開放/真空排気させる真空排気手段106が設けられている。またターゲット収納室20a、20b、30a、30bのビーム上流側にはビーム調整用磁場コイル7が配置されている。これらビーム調整用磁場コイル7は、図2に示されるように通常、水平方向ビーム収束用四重極磁場コイル7a、垂直方向ビーム収束用四重極磁場コイル7b、水平・垂直方向ビーム再調整用四重極磁場コイル7c等が用いられる。
【0014】
図1に戻って、BNCT室3a、3bには、高速な荷電粒子ビーム(陽子ビーム)5が照射されるBNCT用ターゲット(本実施形態ではベリリウム)301a、301bが、減速体302a、302b、遮蔽体303a、303bで包囲されたターゲット収納室30a、30bに収納されている。そして、ターゲット301a、301bは、同様に真空気密に保たれているターゲット駆動機構304a、304bにより、荷電粒子ビーム5を横切るように移動可能になっている。
【0015】
それぞれのBNCT用ターゲット収納室30a、30bは真空気密のビーム輸送管6を介してPET用ターゲット収納室内20a、20bを経て加速器110の出射口100aと直線的に連通している。BNCT用ターゲット収納室30a、30bを包囲する遮蔽体303a、303bおよび減速体302a、302bの外側のビーム上流側および下流側には、ゲートバルブ305a、305bが配置され、またビーム上流側にはビーム調整用磁場コイル7が配置されている。
そして、BNCT用ターゲット301a、301bのビーム照射面は、照射角付与手段312a、312bにより、ビーム5の照射軸に対して所定の角度(本実施形態では約45度)をなすように固定されている。
【0016】
本実施形態では、4個のターゲット201a、201b、301a、301bのうちBNCT用ターゲットの1つ301bのみが、ターゲット駆動機構304bにより陽子ビーム5に照射される位置に配置され、他の3個のターゲット201a、201b、301aはそれぞれターゲット駆動機構204a、204b、304aにより陽子ビーム5が照射されない配置に設定されている。すなわち本実施形態ではBNCT室3bで患者ががん治療を受ける状態を示している。
【0017】
図2は、BNCT室3a、3bおよびその近傍を特に治療中のBNCT室3bに着目して示したものである。図1では図示を省略したが、BNCT室3a、3bはそれぞれ分厚い(たとえば厚さ60cm程度)コンクリート壁306で囲まれている。ただしここでは出入り口および一部の壁等を省略している。コンクリート壁306はガンマ線の外部漏洩を低減するものである。このコンクリート壁306を覆うB4C等のボロン化合物からなる中性子吸収体307は、中性子の外部漏洩を低減するとともにコンクリート壁306の放射化を防止するものである。このようにして、治療のために発生する中性子等の影響が、隣のBNCT室3aあるいはPET用RI製造室2a、2b等へ及ばないように考慮されている。
【0018】
以上のような構成における各部の動作は以下のとおりである。
図1に示すイオン源101で生成した陽子(プロトン)は、図示しない磁場と引き出し電極系で制御されて、エネルギーが数十keVの陽子ビーム5として加速器110の初段であるRFQ加速器102に入射し、所定のエネルギー(ここでは約3MeV)まで加速される。このRFQ加速器102で加速された陽子ビーム5は、さらに2段のDTL加速器103a、103bで所定のエネルギー(各段約4MeV、最終段出射口で約11MeV)に加速される。
【0019】
本実施形態では、加速器110はBNCT室3bのがん治療にのみ利用されているので加速器出射口100aで11MeVにまで加速された陽子ビーム5は、PET用ターゲット収納室20a、20bを素通りして、直線状のビーム輸送管6内を通過し、BNCT用ターゲット(ベリリウム)301bに照射される。
そうすると、陽子とベリリウムの核反応9Be(p,n)9Bによりターゲット表面(ビーム照射面)では高速中性子が発生する。このようにして発生した高速中性子はターゲット301bを包囲する減速体302bにより治療に適したエネルギー(熱中性子や熱外中性子あるいはそれらの混合)にまでエネルギーを減衰させられ、治療の照射場に到達する。
【0020】
本実施形態では荷電粒子ビーム5の輸送系が長いので対策を何もしなければこの荷電粒子ビーム5は途中で発散し、ビーム輸送管6やターゲット収納室20a、20b、30a、30bの壁あるいは待機中のターゲット201a、201b、301aにその一部が照射され、不要の中性子やガンマ線を発生したり、各部材が不要な放射化をしたりすることになる。本実施形態では荷電粒子ビーム5の輸送系が直線状のビーム輸送管6で構成されていること、さらには荷電粒子ビーム5の輸送系の途中にビーム調整用磁場コイル7を適宜設けているので、これらの磁場を調整することにより、途中でのビームの発散を防止することができ、したがって不要のガンマ線や部材の放射化を防止することができる。
【0021】
図3はターゲット201a、201b、301a、301bがベリリウム(Be)の場合とリチウム(Li)の場合の陽子エネルギーに対する陽子ビーム単位電流あたりの中性子発生率をプロットした特性曲線を示したグラフである。リチウムの場合は低いエネルギーで中性子の発生がおこる(閾値のエネルギーが小さい(1.881MeV))が、高エネルギー領域(>6MeV)では陽子のエネルギーの増加に対して中性子の発生率は飽和する傾向がある。
【0022】
一方、ベリリウムの場合は中性子発生の閾値のエネルギーは2.059MeVとリチウムの場合に対して高いが、高エネルギー領域(たとえば〜15MeV程度)まで中性子発生率は陽子エネルギーの増加に対して飽和することなく、増加することがわかる。
両特性曲線は陽子エネルギーが約5MeVの点で交差し、この交差点を境に高エネルギー側ではベリリウムが、低エネルギー側ではリチウムが中性子発生率の観点から有利となることがわかる。
【0023】
本実施形態では陽子エネルギーが11MeV、ターゲット201a、201b、301a、301bはベリリウムなのでリチウムに対して中性子発生率が大きいという効果が得られる。
【0024】
発明者らが実施したモンテカルロ計算コード(MCNP)を用いた計算によれば、治療の照射場で必要な中性子束(熱中性子あるいは熱外中性子で1×109個/cm2/s)を得るためにはターゲット201a、201b、301a、301bの照射面上において1×1013個/cm2/s程度の高速中性子束が必要で、そのためにはビーム電流は約1mA〜2.5mAが必要であることが判明している。もちろん減速体202a、202b、302a、302bのより適切な構造および材料の選定によっては、さらに小さなビーム電流で実現できることも期待される。
【0025】
ここでは陽子エネルギーは11MeVまで加速されているが、同様の加速器システムでRFQ加速器102(3MeV)とDTL加速器103a(追加の4MeV)とが1つずつ組み合わされた7MeVの加速エネルギーでもターゲット201a、201b、301a、301bにベリリウムを用いれば、図3で示したようにターゲットにリチウムを用いた場合よりも中性子発生率が大きいという効果が得られる。ただし7MeV加速の場合は11MeV加速の場合よりも単位電流あたりの中性子発生率が小さいので、所定の中性子発生率を得るためには、その分ビーム電流を増やす必要がある。
【0026】
また、本実施形態ではターゲット201a、201b、301a、301bのビーム照射面は、荷電粒子ビーム5に対して約45度の角度で配置されているから、ターゲット201a、201b、301a、301bの照射面の熱負荷Pe/S(単位面積あたりビーム電力)が等価的に約0.7に低減され垂直入射の場合に比較して、ターゲットの除熱が容易になるという効果が得られる。
【0027】
一般にターゲット201a、201b、301a、301bのビーム照射面が荷電粒子ビーム5に対してある角度θで配置されている場合、ターゲット照射面の熱負荷Pe/S(単位面積あたりビーム電力)は、垂直入射の場合に対する比率が次の第(1)式のようにsinθ(<1)となり、等価的に低減され、ターゲットの除熱が容易になるという効果が得られる。
(Pe/S1)/(Pe/S0) = S0/S1 = sinθ (1)
Pe:ビーム電力
S0, S1:ターゲットビーム照射面積(それぞれ垂直入射, 斜め入射)
【0028】
さらに本実施形態では、図1に示すようにターゲット201a、201b、301a、301bのビーム照射面は荷電粒子ビーム5に対して約45度の角度で配置されているから、複数のBNCT用ベッド308a、308bを荷電粒子ビーム5に対して所定の角度(本実施形態では約90度)で並列に配置することができる。このように複数のベッドを並列に配置することができるので、治療を実施している患者309の隣のベッド308bで別の患者の治療の準備や、治療後の処置を並行して進めることができ、加速器110の効率的な運転が可能になるという効果が得られる。
【0029】
本実施形態では、2つのBNCT室3a、3bが準備されており、減速体302a、302bを適宜選択することにより、熱中性子用1個と熱外中性子用1個、あるいは熱中性子用のみ2個、熱外中性子用のみ2個等の組合せが可能である。減速体302a、302bのうち熱中性子用のものには主として重水、フッ化鉛、カドミニウム等が用いられる。また減速体302a、302bのうち熱外中性子用のものには、主としてアルミニウム、フッ化アルミニウム等が用いられる。熱中性子(中性子エネルギーが0.5eV以下)は主として腫瘍部が体表面から浅い場合に適用される。脳腫瘍の場合は外科手術により開頭した状態で実施される。熱外中性子(中性子エネルギーが0.5eV〜10keV)は、腫瘍部が体表面から比較的深いところまで(たとえば6cm程度まで)適用される。脳腫瘍の場合は頭部への予備的外科手術を施すことなく、いわゆる非開頭で中性子の照射治療が可能である。
【0030】
本実施形態では、それぞれの遮蔽体203a、203b、303a、303bあるいは減速体202a、202b、302a、302bの外側でかつ荷電粒子ビーム5の上流側には、ビーム調整用磁場コイル7…が配置されている。またビーム上流側およびビーム下流側にはゲートバルブ205a、205b、305a、305bが配置されている。すべてのターゲット収納室20a、20b、30a、30bは、ビーム輸送管6で連結されることにより、加速器110の出射口100aに連通している。そして、ビーム終端部のゲートバルブ305bを除くゲートバルブが全て「開」状態であれば、全てのターゲット収納室20a、20b、30a、30bとビーム輸送管6は、1つの真空容器とみなすことができる。
【0031】
また、ターゲット収納室20a、20b、30a、30bのうちいずれか1つのビーム上流側およびビーム下流側のゲートバルブを「閉」状態にすれば、該当するターゲット収納室のみを単独で大気開放あるいは真空排気することも可能である。
このような操作は、たとえばあるターゲットのみを個別に交換する際には特に有用である。図1に示される本実施形態では、4個のターゲット201a、201b、301a、301bのうち荷電粒子ビーム5が照射される位置に配置されているものは最終段のターゲット301bのみで、他は荷電粒子ビーム5をさえぎらない位置に配置されている。これらのターゲットの配置はそれぞれターゲット駆動機構204a、204b、304a、304bにより操作設定される。
【0032】
以上の説明は、荷電粒子ビーム5の流れに沿っての最終段のBNCT用ターゲット301bのみが利用される場合であるが、最終段より1つ手前の上流側のBNCT用ターゲット301aが利用される場合も最終段のBNCTのターゲット301bが利用される場合と本質的には同様である。この場合は、ビーム5は当該ターゲット301aが終端となるので、このターゲット301aよりビーム上流側のゲートバルブはすべて「開」、下流側のゲートバルブはすべて「閉」となる。
【0033】
また本実施形態ではBNCT用ターゲットは301a、301bの2個であるが、BNCT用ターゲットがさらに3個、4個、・・・と増えた場合も本質的には同様である。
【0034】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態を示し、PET用ターゲット201a、201bを扱うPET用RI製造室2a、2bのうちの1つ(ここでは、PET用RI製造室2a)を拡大して示した図である。
PET用RI製造室2aでは、PET用ターゲット201aが、減速体202aおよび遮蔽体203aで包囲されたターゲット収納室20aに収納されている。本図ではPET用ターゲット201aは、真空気密のターゲット駆動機構204aにより移動配置され、荷電粒子ビーム5が照射されることになる。したがって、本ターゲット201aよりビーム上流側のゲートバルブはすべて「開」、本ターゲット201aよりビーム下流側のゲートバルブはすべて「閉」となっている。
【0035】
PET用ターゲット収納室20aでは、目的とするRIおよび中性子(n)等の放射線が生成されるので、安全上の観点から、これらの放射線源あるいは放射線に対する防護策が必要である。通常ターゲット収納室20aは、放射線に対する遮蔽体203a(鉛、鉛入り遮蔽材、コンクリート他)で包囲されている。また部材の放射化を低減し、遮蔽体203aの軽量化を図る観点から、必要に応じて中性子(n)に対するエネルギー減速体(たとえばホウ素いりポリエチレン等)も適宜用いられる。
【0036】
本実施形態では、PET用RIとしてフッ素18(18F)を生成する場合を示す。ターゲット201aには、RIの原料として、Ti薄膜(フォイル)等の隔壁に包囲されたH218Oを含む水溶液(18O水)が用いられ、これに陽子ビームが照射されると核反応18O(p,n)18FによりPET用RIであるフッ素18(18F)が生成される。このTi薄膜は、荷電粒子ビーム5のエネルギーの減衰を考慮して、機械強度が許す限り薄いもの(たとえば25μm程度)が用いられ、さらに格子状の金属枠で補強されている。このような構成のもとで生成された18Fは図示しない合成装置により、PET用薬剤としてFDG(デオキシ-フルオロ-グルコース)等が合成される。
【0037】
フッ素18はPET用核種のなかでは半減期は長い方であるが、それでも一般のRIに比べると短半減期(約2時間程度)であるので、PET用薬剤の合成装置は、できるだけPET用RI製造室2aに近いところ、しかも病院内のPET検査室に近いところに設置されることが望ましい。作業者による作業がほとんど不要の場合、たとえば完全自動化の場合は、前記した合成装置は、PET用RI製造室2aに設置することも可能である。
【0038】
<第3実施形態>
さらに第3実施形態として、BNCTに用いられるボロン10(10B)薬剤に、本システムにより生成される18Fを標識する場合がある。BNCTの治療に用いられるホウ素化合物である10B-BPA(ボロン10を用いたボロンフェニールアラニン)に治療前後の薬剤の腫瘍部への集積具合をPET検査するために、18Fで標識した薬剤(18F-10B FBPA:18Fと10Bで標識されたフルオロボロンフェニールアラニン)を用いる方法が開発されているが、本実施形態では、このような標識作業に用いる18Fを生成する。
【0039】
本実施形態では、本システムで製造されるPET用RIを用いるPET用薬剤の合成装置や18Fの標識作業のための合成装置が、本システムのRI製造室2aに近いところに設置されているので、短半減期の18Fを効率よく利用でき、製造のための時間短縮・電力低減等の効果が得られる。
【0040】
<第4実施形態>
フッ素18以外のPET用RIについても、本システムにより18F生成の場合(第2実施形態)と同様に生成することができる。第4実施形態では、PET用ターゲット201bに水(H2O)または水で希釈された5mMエタノールを用いている。ターゲット201bは、液体であることから、第2実施形態の場合と同様に、Ti薄膜の隔壁およびその補強のための金属枠により包囲されている。
【0041】
このような構成のもとで、核反応16O(p,α)13Nにより、短半減期のPET用RIとして窒素13(13N)を生成することができる。
【0042】
窒素13はRIとして利用するには半減期がかなり短い(約10分)ものである。しかし、本システムは病院内あるいは相応の場所に設置されているので、窒素13をRIとして用いても、PET検査室とRI製造室2bとは互いに短時間でアクセスできるので、生成したRIあるいはPET薬剤を効率よく使用することができるという効果が得られる。
【0043】
また、本システムでは加速器110の仕様が十分なRIを製造するだけの能力(具体的には11MeVもの高加速エネルギー、2.5mA級もの大電流ビーム)を有しているので短半減期という短所を補って余りあるRI製造能力を有している。
【0044】
前記した第2実施形態ではRI製造室2aを、本実施形態ではRI製造室2bを用いているが、本システムでは2個のRI製造室を設けているので、それぞれ専用のRI製造室とすることができる。同様にRI製造室を3個、4個・・・と増設すれば、それぞれに専用のRI製造室とすることができ、各ターゲットの準備や交換を並行して、場合によっては加速器の使用と同時に実施することができ、加速器を効率よく使用できるという効果が得られる。また場合によっては、加速器およびターゲット収納室が使用中でも、使用していないターゲット収納室をメンテナンスにあてることができ、全体として効率のよいシステムを提供できるという効果が得られる。
【0045】
<第5実施形態>
本発明の第5実施形態として、PET用ターゲットに窒素ガス(14N2あるいは15N2)を主要成分とする混合ガスを用いる場合について示す。本実施形態の1つとしてターゲットに空気(N2+O2)を用いた場合は、核反応 14N(p,α)11C により、11Cを含むRI(11CO2, 11CO)が生成される。さらにターゲットにN2+5%H2を用いた場合、同様の核反応により、11Cを含むメタンガスのRI(11CH4)が得られる。
【0046】
第5実施形態の他の1つとしてターゲットに窒素同位体混合ガス(15N2+1.5%O2)や(15N2+1.5%CO2)を用いた場合、核反応15N(p,n)15Oにより、それぞれRIとして15Oを含む15O2やC15O2を生成することができる。本実施形態にあげたガスターゲットではRI生成量を確保するためにガス圧はたとえば5気圧程度の高い圧力が設定されている。本発明ではRI製造室が複数個あるので、核種ごとにそれぞれ専用のRI製造室とすることができ、前記した他の実施形態と同様に加速器を効率よく使用できるという効果が得られる。
【0047】
<第6実施形態>
本発明の第6実施形態として、PET用RIを製造する時間帯を、BNCTの治療の時間帯にさきがけて設けた例が挙げられる。図5は、それらのタイムチャートを示したものである。ここでT1、T2、T3は加速器をPET用RIの製造に利用する時間、BT1、BT2、BT3、・・・、BTnは加速器をBNCTの治療に利用する時間を示す。本実施形態では、BNCTの治療の時間帯が昼間の病院の通常の勤務時間帯に、PET用RIの製造の時間帯が早朝・深夜の時間帯に設定されている。またそれらの合計所要時間は第(2)式のように設定されている。
Tp=T1+T2+T3 < BT1+BT2+BT3+・・・+BTn=Tb (2)
すなわち両者が前記加速器を利用する時間の占有割合において、PET用の利用時間は、BNCT用の利用時間よりも少なくなるように設定されている。通常は第(3)式のように設定されている。
Tp << Tb (3)
PET用RIの製造には、人が直接作業に関わることを極力低減することが可能であり、場合によってはほとんど自動化することができる。
【0048】
このように加速器の利用時間を配分することにより、BNCTへの治療時間を確保すると同時にPET用RIの製造もできることになり、効率的な病院経営が可能になるという効果が得られる。
【0049】
<第7実施形態>
本発明の第7実施形態として、特に超短半減期のPET用RIを製造する時間帯を病院内PET検査の直前に配置したものが挙げられる。図6は、それらのタイムチャートを示したものである。ここでT1、T2、T3は加速器をPET用超短半減期RIの製造に利用する時間、BT1、BT2、BT3、・・・、BTnは加速器をBNCTの治療に利用する時間を示す。本実施形態では、BNCTの治療の時間がPET用超短半減期RIの製造時間をとびとびにはさんで配置されている。いわばPET検査優先の加速器利用タイムスケジューリングとなっている。しかしながら、ここでもそれらの合計所要時間は前記した第6実施形態の場合と同様に前記した第(2)式が成立するように設定されている。すなわち両者が前記加速器を利用する時間の占有割合において、後者(PET用)の利用時間は、前者(BNCT用)の利用時間よりも少ないように設定され、前記した第6実施形態の場合と同様に前記した第(3)式が成立する。
【0050】
このように加速器の利用時間を配分することにより、BNCTへの治療時間を確保すると同時にPET用RIの製造もできることになり、効率的な病院経営が可能になるという効果が得られる。
【0051】
<第8実施形態>
本発明の第8実施形態として、図7にビーム屈曲手段10を用いてPET用ターゲット201a,201bの群からBNCT用ターゲット301a,301bの群を分岐した構成例を示す。ここまでに述べてきた実施形態では、図1に示されるように複数のPET用RI製造用のターゲット収納室20a,20bと複数のBNCTのターゲット収納室30a,30bのすべてが、直線状のビーム輸送管6で加速器のビーム出射口と真空容器とを連通していた。
ところが、本実施形態ではPET用ターゲット201a、201bの群は、偏向電磁石(ビーム屈曲手段)10からビーム輸送管6が途中で枝分かれして、BNCT用ターゲット301a、301bの群から分岐して配置されている。したがってビーム輸送管6は加速器110のビーム出射口100aとBNCT用ターゲット収納室30a、30bとの間を直線状に連通するビーム輸送管6と、偏向電磁石(ビーム屈曲手段)10により屈曲分岐し、PET用ターゲット収納室20a、20bに連通するビーム輸送管6とからなる。すなわち荷電粒子ビーム5が照射されるターゲットの選択は各ターゲット201a、201b、301a、301bの出し入れだけでなく、偏向電磁石(ビーム屈曲手段)10のオン・オフでも制御される。そして、本システム100は、統合的には制御指令装置4により制御される。
【0052】
本実施形態では、BNCT用ターゲット収納室30a、30bとPET用ターゲット収納室20a、20bとが完全に分離されており、BNCTの治療時には荷電粒子ビーム(陽子ビーム)5は、PET用ターゲット収納室20a、20bを通過しないので、これらのPET用ターゲット収納室20a、20b周辺での余分なガンマ線の発生や放射化等の問題が極端に小さくなるという効果が得られる。また、BNCT治療時においてもPET用ターゲット収納室20a、20bへのアクセスが容易であり、本システムを効率的に利用できるという効果が得られる。
【0053】
<第9実施形態>
本発明の第9実施形態として、図8に、主要加速器がサイクロトロン120である構成例を示す。サイクロトロン120は、イオン源で生成された荷電粒子(陽子)を、磁場と荷電粒子のエネルギーで定まる半径の円軌道を描かせながら、電場で加速するものである。そして、円軌道を運動している荷電粒子(陽子)は、次第に軌道半径を大きくしながら、そのエネルギーを増大させる。このサイクロトロン120を用いる場合、加速器の設置スペースが一箇所に集中されるので、その据付スペースがコンパクトになるという効果が得られる。
【0054】
<第10実施形態>
本発明の第10実施形態は、荷電粒子が陽子でターゲットがリチウムの場合を示し、陽子ビームの加速エネルギーが5MeV以下、たとえば4MeVの例を挙げる。本実施形態の基本構成は、第1実施形態(図1参照)とほぼ同じである。
【0055】
すでに図3に示したようにこのエネルギー領域では、ターゲットがベリリウムの場合よりもリチウムの場合の方が単位電流あたりの中性子発生率が大きいので、より効率的に、具体的にはより少ないビーム電流で所定の中性子を発生させることができる。また陽子の加速エネルギーが低いので、遮蔽体や減速体の構成が簡単になるという効果が得られる。さらに加速器自身もたとえばRFQ加速器(4MeV)1台のみで構成することができ、システム全体が簡単になり、保守等が容易になるという効果が得られる。
【0056】
<第11実施形態>
本発明の第11実施形態として、図9に、主要加速器が静電加速器130である構成例を示す。この静電加速器130以外の構成については、図1に示される本システム100とほぼ同じであるので、説明は省略する。本実施形態では、荷電粒子の加速エネルギーを連続的に変更できるという利点があり、さらにビームの大電流化が他の加速器に比べて容易であるという効果が得られる。
【0057】
<第12実施形態>
本発明の第12実施形態は、図1に示されるような加速器利用システム(BNCT−PETシステム)が2組同一病院内に設置されている場合であって、図10はその構成例を示したものである。本実施形態では、たとえばBNCTがん治療に限れば、同時に2名の患者の治療ができるという効果が得られる。また、加速器に重大なトラブルが発生した場合にも、病院の治療スケジュールに大きな変更をもたらすことなく、事態に対応できるという効果が得られる。さらに加速器とBNCT用ターゲットとPET用ターゲットとの組み合わせ方が多彩になり、より効率的な病院経営ができるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の主要対象であるBNCTがん治療やPET薬剤用RI製造のみならず、マルチターゲット加速器中性子源として、現在原子炉利用中性子源でなされているような材料分析(元素分析)や、中性子ラジオグラフィー等多様な応用の可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態に係る加速器利用システムの構成図である。
【図2】加速器利用システムの一部であるBNCT治療室の拡大図である。
【図3】ターゲットの材質がベリリウムまたはリチウムである場合の中性子総発生率量を示す特性図である。
【図4】加速器利用システムの一部であるPET用RI製造室の拡大図である。
【図5】加速器利用の一例を示すタイムチャートである。
【図6】加速器利用の一例を示すタイムチャートである。
【図7】ビーム輸送管が分岐構造を有する加速器利用システムの構成図である。
【図8】サイクロトロンを加速器として用いた加速器利用システムの構成図である。
【図9】静電加速器を加速器として用いた加速器利用システムの構成図である。
【図10】加速器を2台備えた加速器利用システムの構成図である。
【符号の説明】
【0060】
5 荷電粒子ビーム
6 ビーム輸送管
7 ビーム調整用磁場コイル
10 偏向電磁石(ビーム屈曲手段)
100 加速器利用システム
101 イオン源
102 高周波四重極線型加速器(RFQ加速器)
103a,103b ドリフトチューブ線形加速器(DTL加速器)
106 真空排気手段
110 加速器
120 サイクロトロン
130 静電加速器
202a,202b,302a,302b 減速体
201a,201b PET用ターゲット(ターゲット)
203a,203b,303a,303b 遮蔽体
204a,204b,304a,304b ターゲット駆動機構
205a,205b,305a,305b ゲートバルブ
301a,301b BNCT用ターゲット(ターゲット)
312a,312b 照射角付与手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速器から出射する荷電粒子ビームが、ターゲットに照射されて起きる核反応を利用する加速器利用システムにおいて、
前記荷電粒子ビームの軌道を形成し、その軌道上に出入自在な複数の前記ターゲットが配置されるビーム輸送管と、
前記荷電粒子ビームが照射する少なくとも1つの前記ターゲットを、前記軌道上に位置させるターゲット駆動機構と、を備えることを特徴とする加速器利用システム。
【請求項2】
前記ターゲットを挟む位置で、前記ビーム輸送管を開閉する一対のゲートバルブと、
一対の前記ゲートバルブに挟まれる前記ビーム輸送管の領域を個別に大気開放/真空排気させる真空排気手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載の加速器利用システム。
【請求項3】
複数の前記ターゲットのうち少なくとも1つは、前記核反応により、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に用いる中性子を放出するBNCT用ターゲットであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加速器利用システム。
【請求項4】
前記荷電粒子ビームの照射軸と前記BNCT用ターゲットの照射面とを所定の角度に設定する照射角付与手段を有することを特徴とする請求項3に記載の加速器利用システム。
【請求項5】
複数の前記BNCT用ターゲットの各々は、放出された前記中性子のエネルギーを減衰させる減速体を有し、
複数の前記BNCT用ターゲットの各々が熱外中性子源、熱中性子源、および熱外中性子・熱中性子が所定の割合で混在するような中性子源として機能するように、各々の前記減速体による前記中性子のエネルギーの減衰量が調整されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の加速器利用システム。
【請求項6】
前記BNCT用ターゲットはベリリウムを含むものであって、
前記荷電粒子ビームの陽子エネルギーは、ベリリウムにおける中性子総発生量が、リチウムにおける中性子総発生量よりも上回る領域(5MeV以上)において設定されることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の加速器利用システム。
【請求項7】
前記BNCT用ターゲットはリチウムを含むものであって、
前記荷電粒子ビームの陽子エネルギーは、リチウムにおける中性子総発生量が、ベリリウムにおける中性子総発生量よりも上回る領域(5MeV以下)において設定されることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の加速器利用システム。
【請求項8】
複数の前記ターゲットのうち少なくとも1つは、前記核反応により、陽電子放出断層撮影(PET)診断用の放射性同位元素を生成するPET用ターゲットであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加速器利用システム。
【請求項9】
前記PET用ターゲットには、18O水が封入されていることを特徴とする請求項8に記載の加速器利用システム。
【請求項10】
前記PET用ターゲットには、水(H2O)または水で希釈されたエタノールが封入されていることを特徴とする請求項8に記載の加速器利用システム。
【請求項11】
前記PET用ターゲットには、14N2ガスまたは15N2ガスを主成分とする混合ガスが封入されていることを特徴とする請求項8に記載の加速器利用システム。
【請求項12】
複数の前記ターゲットのうち、少なくとも1つは、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用中性子源を構成するBNCT用ターゲットであり、
他の前記ターゲットのうち、少なくとも1つは、陽電子放出断層撮影(PET)診断用放射性同位元素を生成するPET用ターゲットであり、
前記加速器を利用する時間の占有割合は、後者(PET)の利用時間の方が、前者(BNCT)の利用時間よりも少ないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加速器利用システム。
【請求項13】
前記PET用ターゲットで製造されたフッ素18(18F)をBNCT用薬剤の標識に適用して、前記ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を実施することを特徴とする請求項12に記載の加速器利用システム。
【請求項14】
複数の前記ターゲットの各々は、前記核反応により発生した中性子のエネルギーを減衰する減速体および/または放射線を遮蔽する遮蔽体により包囲されていることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の加速器利用システム。
【請求項15】
複数の前記ターゲットの各々は、照射する前記荷電粒子ビームの上流側にビーム調整用磁場コイルが配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の加速器利用システム。
【請求項16】
前記加速器は、イオン源、高周波四重極線型加速器(RFQ)およびドリフトチューブ線形加速器(DTL)からなる線型加速器であることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載の加速器利用システム。
【請求項17】
前記加速器は、サイクロトロンであることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載の加速器利用システム。
【請求項18】
前記加速器は、静電加速器であることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載の加速器利用システム。
【請求項19】
前記ビーム輸送管は、途中から枝分かれする分岐構造を有し、
前記荷電粒子ビームを屈曲して枝方向に輸送するビーム屈曲手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項18のいずれか1項に記載の加速器利用システム。
【請求項20】
病院内または病院に隣接する施設に設置されることを特徴とする請求項1ないし請求項19のいずれか1項に記載の加速器利用システム。
【請求項21】
前記加速器と前記ビーム輸送管とを含む構成が2組以上設置されている請求項1ないし請求項20のいずれか1項に記載の加速器利用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−95553(P2007−95553A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284946(P2005−284946)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】