加速度または角速度センサの自己診断装置および自己診断方法、加速度または角速度センサ、ならびに加速度または角速度センサの初期設定方法
【課題】自己診断中に加速度または角速度センサに外部から衝撃が加わった場合でも、正確な自己診断を行なうことが可能な加速度または角速度センサの自己診断装置を提供する。
【解決手段】加速度センサ1の自己診断装置10は、診断制御部13と、積分演算部11と、判定部12とを備える。診断制御部13は、加速度または角速度を検出するセンサ本体8に所定の大きさの擬似加速度信号14を印加することによって、センサ本体8に擬似的な加速度または角速度を与える。積分演算部11は、擬似加速度信号14に応答してセンサ本体8から出力されたセンサ信号17の積分演算を行なう。判定部12は、積分演算が開始されてから所定の積分時間が経過したときの積分値18が、所定の正常範囲にあるか否かを判定する。
【解決手段】加速度センサ1の自己診断装置10は、診断制御部13と、積分演算部11と、判定部12とを備える。診断制御部13は、加速度または角速度を検出するセンサ本体8に所定の大きさの擬似加速度信号14を印加することによって、センサ本体8に擬似的な加速度または角速度を与える。積分演算部11は、擬似加速度信号14に応答してセンサ本体8から出力されたセンサ信号17の積分演算を行なう。判定部12は、積分演算が開始されてから所定の積分時間が経過したときの積分値18が、所定の正常範囲にあるか否かを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加速度または角速度センサが正常か否かを診断する自己診断装置および自己診断方法に関する。また、この発明はこのような自己診断装置を備えた加速度または角速度センサ、ならびにその加速度または角速度センサの初期設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加速度および角速度センサは、自動車などの車両のエアバッグ装置の制御に広く用いられる。たとえば、特開2006−056441号公報(特許文献1)に開示されるエアバッグ制御装置は、誤動作を防止して確実な起動を確保すべく、メイン加速度センサと、メイン加速度センサとは異なる位置に配置されたセーフティング加速度センサとを含む。
【0003】
この文献のエアバッグ制御装置では、メイン加速度センサが加速度を検出して信号を出力し、マイコンがメイン加速度センサからの加速度信号の積分演算を行う。車両が衝突したために加速度の積分値が減速方向に増大して所定値を超えたときに、マイコンは車両の衝突が生じたと判断して、ハイレベルのトリガ信号をAND回路に出力する。
【0004】
また、セーフィング加速度センサの加速度検出出力はA/D(Analog to Digital)変換器によりA/D変換されて演算回路に入力され、演算回路はA/D変換出力を積分演算して判定回路に入力する。そして、判定回路において、演算回路からの積分演算出力とスレッショルドレベルとが比較され、積分演算出力がこのスレッショルドレベルを超えている場合には、判定回路がハイレベルの信号をAND回路に出力する。このとき、衝突の検出信号がマイコンからAND回路に入力されていると、AND回路はゲートを開いて信号をトランジスタのベースに送出するので、トンランジスタがオンし、電源より電流がスクイブに供給され、エアバッグが起動される。
【0005】
また、特開2007−245829号公報(特許文献2)は、車両が回転するロールオーバーを検知するエアバッグ制御装置を開示する。この文献のエアバッグ制御装置は、角速度センサの出力値を取込み、所定時間積分演算し、生成される積分値を、設定される判定閾値と比較演算してオフセット補正の正否を判定する。そして、エアバッグ制御装置は、オフセット補正が正常に行われたことを条件にロールオーバー判定を行い、ロールオーバーが検出された場合に、エアバッグ展開用の発熱抵抗体であるスクイブに電流を供給してエアバッグを作動させる。
【0006】
通常、加速度または角速度センサでは、電源投入時などにセンサの故障の有無を判定する自己診断(プライマリチェック)が行なわれる。具体的には、加速度または角速度信号に相当する擬似信号がセンサ素子に印加され、その際変化するセンサ出力の信号レベルにより、電源投入時等のプライマリチェックが実施される。
【0007】
特開2001−304871号公報(特許文献3)は、自己診断時に不測の角速度が入力される場合にも正確な自己診断を行なうことができる角速度センサの異常診断装置について開示する。この異常診断装置では、プライマリチェック回路において、センサ素子に回転擬似信号を印加しない状態での角速度出力の信号レベルがホールド回路によりホールドされる。このホールドした信号レベルに基づいて、角速度出力の信号レベルを比較判定するためのしきい値が可変に設定される。ウィンドウコンパレータでは、センサ素子に回転擬似信号を印加した状態での角速度出力の信号レベルと、設定されたしきい値とが比較され、その結果から異常の有無が診断される。
【0008】
また、特開2003−262648号公報(特許文献4)は、自己診断出力によるオフセット補正演算への悪影響を抑制するための技術を開示する。
【0009】
この文献によれば、速度センサの自己診断チェックを行うため、自己診断回路が矩形波の自己診断出力を加速度センサに入力すると、加速度センサは基準値に対して微分波形を出力する。これにより、自己診断チェック時の加速度センサ出力の変動が、オフセット補正用のローパスフィルタ処理回路の出力に現われる。同様の変動が、CPUの演算部でオフセット補正演算処理した後の補正後出力にも現われ、補正後出力の0点へ収束時間が長くなり、0点精度が低下する。そこで、この現象を避けるため、自己診断チェック前(矩形波の自己診断出力を加速度センサに入力する前)、好ましくは電源投入と同時にCPUでオフセット補正演算処理が行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−056441号公報
【特許文献2】特開2007−245829号公報
【特許文献3】特開2001−304871号公報
【特許文献4】特開2003−262648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
加速度または角速度センサが正常に動作しているか否かの自己診断は、加速度または角速度センサの動作状態で行なわれる。このため、センサ本体に擬似的な加速度または角速度を与えるための検査信号以外に、外部から不測の加速度または角速度が加わった状態でセンサが正常か否かの判定が行なわれると、誤った診断結果が出力されることになる。
【0012】
前述の特開2001−304871号公報(特許文献3)は、この問題に対処するための1つの方法を提供する。しかしながら、この文献の方法では、センサ素子に擬似信号を印加した状態でのセンサ出力の信号レベルが、センサ素子に擬似信号を印加しない状態でのセンサ出力の信号レベルに基づいて補正される。したがって、瞬間的な衝撃がセンサに加わった場合には、擬似信号が印加されたときと印加されないときとでセンサの外部から加わる加速度または角速度が異なることがあり得るので、正確な診断が行なえない場合がある。
【0013】
この発明の主たる目的は、自己診断中に加速度または角速度センサに外部から衝撃が加わった場合でも、正確な自己診断を行なうことが可能な加速度または角速度センサの自己診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は要約すれば、加速度または角速度を検出するセンサ本体が正常か否か診断する加速度または角速度センサの自己診断装置であって、診断制御部と、積分演算部と、判定部とを備える。診断制御部は、センサ本体に所定の大きさの検査信号を印加することによって、センサ本体に擬似的な加速度または角速度を与える。積分演算部は、検査信号に応答してセンサ本体から出力されたセンサ信号の積分演算を行なう。判定部は、積分演算が開始されてからセンサ本体の個体差に応じて予め設定された積分時間が経過したときの積分値が、所定の正常範囲にあるか否かを判定する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、検査信号に応答してセンサ本体から出力されたセンサ信号の積分値を用いて加速度または角速度センサの自己診断が行なわれる。したがって、自己診断中に加速度または角速度センサに外部から衝撃が加わった場合でも、衝撃の影響が抑制されるので正確な自己診断が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1に従う加速度センサ1の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の積分演算部11および判定部12の構成の一例を示す回路図である。
【図3】図1の自己診断装置10によるセンサ本体8の診断手順を示すフローチャートである。
【図4】図1の加速度センサ1の比較例としての加速度センサ101の構成を示すブロック図である。
【図5】図4の自己診断装置110において診断時のセンサ本体8の出力を示すタイミング図である(正常なセンサ本体8が正常と判定された場合)。
【図6】図4の自己診断装置110において診断時のセンサ本体8の出力を示すタイミング図である(正常なセンサ本体8が異常と誤判定された場合)。
【図7】図4の自己診断装置110において診断時のセンサ本体8の出力を示すタイミング図である(異常なセンサ本体8が正常と誤判定された場合)。
【図8】図1の自己診断装置10による診断時のセンサ本体8および積分演算部11の出力を示すタイミング図である(積分時間内にセンサ本体8が衝撃を受けなかった場合)。
【図9】図1の自己診断装置10による診断時のセンサ本体8および積分演算部11の出力を示すタイミング図である(積分時間内にセンサ本体8が衝撃を受けた場合)。
【図10】初期設定時における積分時間の設定方法について説明するための図である(センサ本体8の出力が大きい場合)。
【図11】初期設定時における積分時間の設定方法について説明するための図である(センサ本体8の出力が小さい場合)。
【図12】積分時間の初期設定手順を示すフローチャートである。
【図13】この発明の実施の形態2に従う積分演算部11Aおよび判定部12Aの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。また、以下の各実施の形態では加速度センサを例に挙げて説明するが、角速度センサについてもこの発明を同様に適用することができる。
【0018】
[実施の形態1]
(加速度センサの自己診断装置の構成)
図1は、この発明の実施の形態1に従う加速度センサ1の構成を示すブロック図である。図1の加速度センサ1は、自己診断機能を内蔵した加速度センサであり、加速度を検出するセンサ本体8と、電源投入時などにセンサ本体8が正常か否かを診断する自己診断装置10とを含む。
【0019】
センサ本体8は、ばねに支えられた錘を用いて、錘の変位量に基づいて加速度を検出するセンサである。センサ本体8の主要部であるセンサ素子は、錘を含む可動部とばねを介して可動部を支持する固定部とからなる。このような構造のセンサ素子は、通常、半導体微細加工を用いたMEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)技術によって作製される。この場合、錘を支える梁がばねとして用いられる。
【0020】
加速度の変化に応じた錘の変位量を検出する方法として、ばねに取り付けたひずみゲージまたはピエゾ素子などを用いる方法や、センサ素子の可動部と固定部とに対向電極を設けて電極間の静電容量の変化を検出する方法などがある。図1のセンサ本体8には、センサ素子とともに、錘の変位を検出するために上記のひずみゲージなどを用いた検出回路が設けられている。検出回路は錘の変位量に応じたセンサ信号17を出力する。
【0021】
センサ素子は、半導体微細加工による製造誤差のために、錘の重量やばね定数にばらつきが生じ、特性に個体差があるのが通常である。そこで、センサ本体8に設けられた検出回路には、センサ信号17の感度調整および0点(オフセット)調整を行うための回路が組み込まれている。
【0022】
なお、角速度センサの場合も、加速度センサと同様に、ばねに支えられた錘を使って角速度を検出する。ただし、角速度センサの場合は、静電力などを用いて錘を周期的に振動させた状態で、錘が回転するときに回転方向と錘の振動方向との各々に直交する方向に働くコリオリの力が利用される。角速度センサは、このコリオリの力の方向への錘の変位量を測定することによって角速度を検出する。
【0023】
自己診断装置10は、センサ本体8の信頼性を担保するために電源投入時などにセンサ本体8が正常か否かを診断する。具体的には、センサ素子の固定部と可動部との間に、静電力よって錘を変位させるための自己診断用の対向電極が設けられる。そして、これらの自己診断用の対向電極に電圧(すなわち、擬似加速度信号14)を印加することによって錘を変位させることで、センサ本体8に擬似的な加速度が加わった状態にする。このとき、錘の変位に応じたセンサ信号17がセンサ本体8から出力されるので、自己診断装置10は、このセンサ信号17に基づいてセンサ本体8が正常か否かを検出する。
【0024】
自己診断用の対向電極にも製造誤差があるので、通常、同一の大きさの擬似加速度信号14(検査信号とも称する)をセンサ本体8に印加しても、擬似加速度信号14によって生じる錘の変位量にはばらつきがある。この結果、センサ本体8から出力されたセンサ信号17の大きさにもばらつきが生じる。このような擬似加速度信号14を印加したときにセンサ本体8の個体差に応じて生じたセンサ信号17のばらつきの補正方法については、図10〜図12を参照して後述する。
【0025】
なお、角速度センサの場合も同様に、コリオリの力の方向に静電力などによって錘を変位させることによって、擬似的な角速度をセンサ本体に与えることができる。
【0026】
以下、具体的な自己診断装置10の構成について説明する。図1に示す自己診断装置10は、積分演算部11と、判定部12と、診断制御部13とを含む。
【0027】
積分演算部11は、擬似加速度信号14に応答してセンサ本体8から出力されたセンサ信号17を積分する。図4〜図9を参照して後述するように、センサ信号17を積分することによって診断中にセンサ本体8が受けた衝撃の影響を抑制することができる。
【0028】
判定部12は、積分演算部11による所定の積分時間の間のセンサ信号の積分値に基づいて、センサ本体8が正常か否かを判定する。このときの積分時間は、図10〜図12を参照して後述するように、センサ本体8の個体差に応じて加速度センサ1の初期設定時に設定される。
【0029】
診断制御部13は、マイクロコントローラなどをベースに構成され、自己診断装置10全体の動作を制御する。具体的に、診断制御部13は、自己診断の開始とともに擬似加速度信号14をセンサ本体8に出力する。擬似加速度信号14を出力し始めてから所定の出力安定時間が経過したときに、診断制御部13は、積分演算部11に積分開始命令15を出力する。この積分開始命令15に応答して、積分演算部11はセンサ信号17の積分を開始する。
【0030】
さらに、診断制御部13は、積分開始命令15を出力してから所定の積分時間が経過した判定時刻に、判定命令16を判定部12に出力する。判定部12は、判定命令16を受けたときの積分演算部11による積分値が所定の正常範囲にあるか否かを判定し、判定結果19を出力する。積分演算部11は、自己診断用の積分値を判定部12に出力した後にセンサ信号17の積分演算を終了する。
【0031】
図2は、図1の積分演算部11および判定部12の構成の一例を示す回路図である。
図2を参照して、積分演算部11は、演算増幅器21と、演算増幅器21の出力端子と反転入力端子との間に接続されたコンデンサ23と、コンデンサと並列に接続されたスイッチ24と、演算増幅器21の非反転入力端子と接地ノードGNDとの間に接続された直流電源25と、演算増幅器21の反転入力端子とセンサ本体8の出力ノードとの間に接続された抵抗素子22とを含む。
【0032】
スイッチ24は、図1の診断制御部13から積分開始命令15を受けたとき、オフ状態からオン状態に切替わる。これによって、演算増幅器21の出力端子からは、センサ信号17の積分値の信号18が直流電源25の電圧分だけシフトして出力される。
【0033】
判定部12は、ウィンドウコンパレータ30とAND回路35とを含む。ウィンドウコンパレータ30は、コンパレータ31,32および直流電源33,34を含む。コンパレータ31の反転入力端子およびコンパレータ32の非反転入力端子は、演算増幅器21の出力端子に接続される。また、コンパレータ31の非反転入力端子と接地ノードGNDとの間には直流電源33が接続され、コンパレータ32の反転入力端子と接地ノードGNDとの間には直流電源34が接続される。
【0034】
AND回路35は、判定命令16と、コンパレータ31,32の出力とを受ける。AND回路35は、演算増幅器21の出力信号18の電圧が、直流電源34の電圧E2より大きく、直流電源33の電圧E1より小さい場合で、かつ、判定命令16を受けているときにHレベルの信号を判定結果19として出力する。電圧E1,E2は、前述の積分値の正常範囲に対応するように予め設定される。
【0035】
図3は、図1の自己診断装置10によるセンサ本体8の診断手順を示すフローチャートである。図3の診断手順は、たとえば、加速度センサ1の電源投入時になどに実行される。
【0036】
図1、図3を参照して、ステップS1で、診断制御部13はセンサ本体8への擬似加速度信号14の印加を開始する。擬似加速度信号14の印加は、積分演算部11による所定の積分時間の積分が終了するまで続く。
【0037】
次のステップS2で、診断制御部13は所定の出力安定時間が経過したか否かを判定する。所定の出力安定時間が経過した場合(ステップS2でYES)、診断制御部13はステップS3に処理を進める。
【0038】
ステップS3で、診断制御部13は積分開始命令15を積分演算部11に出力する。積分開始命令15を受けた積分演算部11は、センサ本体8から出力されたセンサ信号17の積分演算を開始する(ステップS4)。
【0039】
次のステップS5で、診断制御部13は所定の積分時間が経過したか否かを判定する。所定の積分時間が経過していない場合には(ステップS5でNO)、ステップS4の積分演算が続けられる。所定の積分時間が経過した場合には(ステップS5でYES)、診断制御部13はステップS6に処理を進める。
【0040】
ステップS6で、診断制御部13は判定部12に判定命令16を出力する。判定部12は、判定命令16を受けたときの積分演算部11による積分値18が所定の適正範囲にあるか否かを判定し、判定した結果19を出力する(ステップS7)。以上で、自己診断装置10によるセンサ本体8の診断手順が終了する。
【0041】
(実施の形態1の自己診断装置の効果)
次に、上記の構成の自己診断装置10の効果について、図4に示す比較例の加速度センサ101と対比して説明する。
【0042】
図4は、図1の加速度センサ1の比較例としての加速度センサ101の構成を示すブロック図である。図4の自己診断装置110は、積分演算部11を含まない点で図1の自己診断装置10と異なる。図4の場合、診断制御部113は、擬似加速度信号14をセンサ本体8に出力してから所定の出力安定時間が経過したとき、判定命令16を判定部112に出力する。判定部112は、擬似加速度信号14に応答してセンサ本体8から出力されるセンサ信号17に基づいて、センサ本体8が正常か否かを判定する。
【0043】
図5〜図7は、図4の自己診断装置110において診断時のセンサ本体8の出力を示すタイミング図である。図5は、自己診断装置110が、正常なセンサ本体8を診断して正常と判定した場合を示す。図6は、判定時刻t2にセンサ本体8に衝撃が加わったために、正常なセンサ本体8が異常と誤判定された場合を示す。図7は、判定時刻t2にセンサ本体8に衝撃が加わったために、異常なセンサ本体8が正常と誤判定された場合を示す。
【0044】
まず、図4、図5を参照して、時刻t1で擬似加速度信号14がセンサ本体8に印加されることによって、センサ本体8からセンサ信号17が出力される。そして、時刻t1から所定の出力安定時間Tstbが経過した時刻t2に、判定命令16を受けた判定部112は、センサ信号17が所定の正常範囲(上限:H1、下限:L1)にあるか否かを判定する。図5の場合、時刻t2の時点でセンサ信号17が上限H1と下限L1との間にあるので、判定部112はセンサ本体8を正常と判定する。
【0045】
これに対して、図6の場合、判定時刻t2にセンサ本体8に衝撃が加わったために、センサ信号17に外乱によるノイズが重畳する(図6の符号42参照)。このため、衝撃がなければセンサ信号17が上限H1と下限L1との間にあるのでセンサ本体8が正常と判定されるべきところ、衝撃が加わったために判定時刻t2でセンサ信号17が上限H1を超える。この結果、正常なセンサ本体8が異常と誤判定されてしまう。
【0046】
一方、図7の場合、図6の場合と同様に判定時刻t2にセンサ本体8に衝撃が加わったために、センサ信号17に外乱によるノイズが重畳する(図7の符号42参照)。このため、衝撃がなければセンサ信号17が下限L1を下回っているのでセンサ本体8が異常と判定されるべきところ、衝撃が加わったために判定時刻t2でセンサ信号17が上限H1と下限L1との間になっている。この結果、異常なセンサ本体8が正常と誤判定されてしまう。
【0047】
このように、比較例の自己診断装置110では、センサ本体8の判定時刻に衝撃が加わると誤判定する可能性がある。次に示すように、実施の形態1の自己診断装置10は、センサ本体8から出力されたセンサ信号17の積分値に基づいてセンサ本体8が正常か否かを判定するので、衝撃の影響を抑制して正確な診断を行なうことができる。
【0048】
図8、図9は、図1の自己診断装置10による診断時のセンサ本体8および積分演算部11の出力を示すタイミング図である。図8は積分時間内にセンサ本体8が衝撃を受けなかった場合を示し、図9は積分時間内にセンサ本体8が衝撃を受けた場合を示す。図8、図9において、図の上側のグラフがセンサ本体8から出力されたセンサ信号17を示し、図の下側のグラフが積分演算部11から出力された積分値の信号18を示す。
【0049】
まず、図1、図8を参照して、時刻t1で擬似加速度信号14がセンサ本体8に印加されることによって、センサ本体8からセンサ信号17が出力される。時刻t1から所定の出力安定時間Tstbが経過した時刻t2に、積分開始命令15を受けた積分演算部11はセンサ信号17の積分演算を開始する。この結果、積分演算部11から出力された積分値の信号18は時間とともに直線的に増加する。
【0050】
時刻t2から所定の積分時間Tintが経過した判定時刻t3に、判定部12は、時刻t3における積分値が所定の正常範囲(上限:H2、下限:L2)にあるか否かを判定する。判定時刻t3における積分値は、図8でハッチングを付した部分41の面積に等しい。すなわち、時刻t2〜t3でのセンサ信号17の強度をIとすると、判定時刻t3における積分値は、ほぼI×Tintに等しくなる。図8の場合、判定時刻t3における積分値が上限H2と下限L2との間にあるので、判定部12はセンサ本体8を正常と判定する。
【0051】
一方、図9の場合、時刻t2から時刻t3の間にセンサ本体8が衝撃を受けたために、センサ信号17に外乱によるノイズが重畳する(図9の符号42参照)。また、積分演算部11による積分値の信号18にもノイズの影響が現れる(図9の符号49参照)。
【0052】
ところで、加速度センサ1のセンサ素子は、ばねによって錘が支えられた構造である。擬似加速度信号14が定常的に印加された状態では、擬似加速度信号14による静電力とばねによる復元力とがつりあう。したがって、この状態にさらに瞬間的な衝撃が加わった場合には、擬似加速度信号14による静電力とばねによる復元力とのつりあいの位置を中心としてセンサ素子の錘は振動を繰り返す。
【0053】
この結果、図9に示すように、衝撃が加わったときのセンサ信号17も平均強度Iを中心に振動する(図9の符号42参照)。このとき、センサ信号17の平均強度Iよりも上側の部分43の面積と平均強度Iより下側の部分44の面積とがほぼ等しくなってキャンセルし合い、平均強度Iより上側の部分45の面積と下側の部分46の面積とがほぼ等しくなってキャンセルし合う。したがって、積分演算部11による積分値の信号18は、衝撃を受けた時点では直線的な上昇から外れるが、判定時刻t3における積分値は衝撃を受けていない場合の値(I×Tint)にほぼ等しくなる。すなわち、積分値の信号18では衝撃の影響が緩和される。
【0054】
このように実施の形態1の加速度センサ1の自己診断装置10によれば、擬似加速度信号14に応答してセンサ本体8から出力されたセンサ信号17の積分値に基づいて加速度センサの自己診断が行なわれる。したがって、自己診断中にセンサ本体8に外部から衝撃が加わった場合でも、衝撃の影響が抑制されるので正確な自己診断が可能になる。
【0055】
なお、上記の説明において、自己診断装置10は、静電力によってセンサ素子の錘を変位させ擬似的な加速度が印加されている状態にしたが、錘を変位させる方法は静電力に限るものでない。磁力など他の手段によって錘を変位させて擬似的な加速度が印加されている状態にすることも可能である。
【0056】
(積分時間の設定方法−センサ信号のばらつき補正)
次に、積分時間Tintの設定方法について説明する。
【0057】
図1で説明したように、同一の大きさの擬似加速度信号14を印加したとしても、センサ本体8から出力されるセンサ信号17の大きさは、センサ本体8の個体差によってばらつく。このため、センサ本体8の個体差に応じて、擬似加速度信号14の強度、積分時間Tint、および積分値の正常範囲(上限H2および下限L2)のいずれかを調整する必要がある。
【0058】
ここで、擬似加速度信号14の強度を調整するには、センサ本体8の個体差に応じて精度よく調整を行なうためにD/A(Digital to Analog)コンバータが必要になる。したがって、自己診断装置10の回路規模が大きくなるので好ましくない。
【0059】
また、積分値の正常範囲の設定値は、加速度センサが組み込まれたシステムの要求によって決まることが多い。たとえば、自動車のエアバッグ制御装置では、衝突時に乗員が前方に投げ出される速度に対応した加速度の積分値を基準にしてエアバッグが作動する。したがって、加速度センサの自己診断では、センサの信頼性を確保するために、エアバッグが作動する加速度の積分値以上に正常範囲を設定してセンサの診断を行なう必要がある。このため、自己診断時における積分値の正常範囲の設定値をセンサ本体8の個体差に応じて変更することは好ましくない。
【0060】
そこで、自己診断装置10では、擬似加速度信号14および判定時のセンサ信号17の積分値の正常範囲は、いずれも、センサ本体8の個体差によらず一定の大きさに設定される。そして、積分時間Tintが、加速度センサ1の初期設定時に、擬似加速度信号14に応答してセンサ本体8から出力されたセンサ信号17の積分値が正常範囲内の所定の目標値に一致するように、センサ信号17の大きさに応じて設定される。以下、図10、図11を参照して、積分時間の設定方法についてさらに説明する。
【0061】
図10、図11は、初期設定時における積分時間の設定方法について説明するための図である。図11は、図10に比べてセンサ本体8から出力されるセンサ信号17の強度が小さい場合である。図10、図11において、図の上側のグラフがセンサ本体8から出力されたセンサ信号17を示し、図の下側のグラフが積分演算部11から出力された積分値の信号18を示す。
【0062】
まず、図1、図10を参照して、加速度センサ1の初期設定時の時刻t1で、擬似加速度信号14がセンサ本体8に印加されることによって、センサ本体からセンサ信号17が出力される。擬似加速度信号14の大きさは通常の診断時と同一であり、センサ本体8の個体差によらず一定に設定されている。
【0063】
時刻t1から所定の出力安定時間Tstbが経過した時刻t2に、積分開始命令15を受けた積分演算部11はセンサ信号17の積分演算を開始する。この結果、積分演算部11から出力された積分値の信号18は時間とともに直線的に増加する。なお、出力安定時間Tstbは通常の診断時と同一である。
【0064】
時刻t3で、積分値の信号18が目標値TGに到達する。このとき、センサ信号17の積分値は、図10のハッチング部分47の面積に等しい。目標値TGは、センサ本体8の個体差によらず一定に設定され、正常範囲(上限:H2、下限:L2)の中央値に等しく設定される。この時刻t3から積分演算の開始時刻t2を減じた時間Tint1が、自己診断時の積分時間として設定される。積分時間Tint1は、診断制御部13を構成するマイクロコントローラのメモリに記憶され、診断時に参照される。
【0065】
これに対して、図11の場合には、擬似加速度信号14に応答して出力されるセンサ信号17の強度I2が、図10の場合のセンサ信号17の強度I1よりも小さい。このため、図11の時刻t3で、センサ信号17の積分値(図11のハッチング部分48の面積)が目標値TGに等しくなったとき、積分値の信号18が目標値TGに到達するまでの時間Tint2が、図10の場合の時間Tint1よりも長くなる。図11の場合には、この時間Tint2が自己診断時の積分時間として設定される。このように、センサ信号17の強度のばらつきに応じて、自己診断時のセンサ信号17の積分時間が決まる。
【0066】
図12は、積分時間の初期設定手順を示すフローチャートである。以下、図1、図12を参照し、これまでの説明を総括して、初期設定時における積分時間の設定手順を説明する。
【0067】
ステップS11で、診断制御部13は擬似加速度信号14をセンサ本体8に印加する。擬似加速度信号14の印加は、積分値の信号18が所定の目標値に到達するまで続く。
【0068】
次のステップS12で、診断制御部13は所定の出力安定時間が経過したか否かを判定する。所定の出力安定時間が経過した場合(ステップS12でYES)、診断制御部13はステップS13に処理を進める。
【0069】
ステップS13で、診断制御部13は積分演算部11に積分開始命令15を出力する。診断制御部13はこのときの時刻(積分開始時刻)を記憶する(ステップS14)。積分開始命令15を受けた積分演算部11は、センサ本体8から出力されたセンサ信号17の積分演算を開始する(ステップS15)。
【0070】
次のステップS16で、判定部12は、積分演算部11による積分値18が所定の目標値に到達したか否かを判定する。所定の目標値に到達していない場合には(ステップS16でNO)、ステップS15の積分演算が続けられる。所定の目標値に到達した場合には(ステップS16でYES)、ステップS17に進む。
【0071】
ステップS17で、診断制御部13は目標値への到達時刻から積分開始時刻を減じることによって積分時間を算出する。
【0072】
次のステップS18で、診断制御部13は、ステップS17で算出した積分時間をメモリに記憶する。積分時間は加速度センサ1の自己診断時に参照される。
【0073】
このように、実施の形態1の自己診断装置10では、予め設定した擬似加速度信号14の大きさおよび積分値の目標値の条件を満たすように積分時間Tintが調整される。なお、上記の説明では、擬似加速度信号14の大きさおよび積分値の目標値は一定としたが、必ずしも一定にする必要はない。センサ本体8の個体差に応じて積分時間Tintを調整することがポイントであるので、擬似加速度信号14の大きさおよび積分値の目標値は、加速度センサが組み込まれたシステムの要求を満たす範囲内で任意に変更することができる。
【0074】
[実施の形態2]
図13は、この発明の実施の形態2に従う積分演算部11Aおよび判定部12Aの構成を示すブロック図である。図13の積分演算部11Aおよび判定部12Aは、図1の積分演算部11および判定部12をデジタル回路で構成したものである。
【0075】
図12を参照して、積分演算部11Aは、A/D(Analog to Digital)コンバータ51と、加算回路52と、レジスタ53とを含む。また、判定部12Aは比較回路54を含む。
【0076】
A/Dコンバータ51は、擬似加速度信号14に応答してセンサ本体8から出力されたセンサ信号17をデジタル変換する。デジタル変換されたセンサ信号17Aは加算回路52に出力される。
【0077】
加算回路52は、A/Dコンバータ51から出力されたセンサ信号17Aとレジスタ53に記憶されたデータとを繰り返し加算する。レジスタ53は、加算回路52で加算演算が行なわれる度に加算結果を新たなデータとして記憶する。したがって、レジスタ53には、A/Dコンバータから出力されたセンサ信号17Aの積分値が記憶されることになる。
【0078】
ここで、レジスタ53に記憶されたデータは、積分開始命令15を受けたときにリセットされる。したがって、レジスタ53に記憶されたデータは、診断制御部13から積分開始命令15が出力された以降のセンサ信号17Aの積分値に等しい。
【0079】
比較回路54は、判定命令16を受けたときにレジスタ53に記憶されているデータを所定の正常範囲の上限および下限と比較して、センサ本体8が正常か否かを判定する。このように、実施の形態2の自己診断装置によっても、実施の形態1の場合と同様に、センサ本体8の診断を行なうことができる。
【0080】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1 加速度センサ、8 センサ本体、10 自己診断装置、11,11A 積分演算部、12,12A 判定部、13 診断制御部、14 擬似加速度信号、15 積分開始命令、16 判定命令、17 センサ信号、18 積分値の信号、19 判定結果、21 演算増幅器、22 抵抗素子、23 コンデンサ、24 スイッチ、30 ウィンドウコンパレータ、31,32 コンパレータ、33,34 直流電源、35 AND回路、51 A/Dコンバータ、52 加算回路、53 レジスタ、54 比較回路。
【技術分野】
【0001】
この発明は、加速度または角速度センサが正常か否かを診断する自己診断装置および自己診断方法に関する。また、この発明はこのような自己診断装置を備えた加速度または角速度センサ、ならびにその加速度または角速度センサの初期設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加速度および角速度センサは、自動車などの車両のエアバッグ装置の制御に広く用いられる。たとえば、特開2006−056441号公報(特許文献1)に開示されるエアバッグ制御装置は、誤動作を防止して確実な起動を確保すべく、メイン加速度センサと、メイン加速度センサとは異なる位置に配置されたセーフティング加速度センサとを含む。
【0003】
この文献のエアバッグ制御装置では、メイン加速度センサが加速度を検出して信号を出力し、マイコンがメイン加速度センサからの加速度信号の積分演算を行う。車両が衝突したために加速度の積分値が減速方向に増大して所定値を超えたときに、マイコンは車両の衝突が生じたと判断して、ハイレベルのトリガ信号をAND回路に出力する。
【0004】
また、セーフィング加速度センサの加速度検出出力はA/D(Analog to Digital)変換器によりA/D変換されて演算回路に入力され、演算回路はA/D変換出力を積分演算して判定回路に入力する。そして、判定回路において、演算回路からの積分演算出力とスレッショルドレベルとが比較され、積分演算出力がこのスレッショルドレベルを超えている場合には、判定回路がハイレベルの信号をAND回路に出力する。このとき、衝突の検出信号がマイコンからAND回路に入力されていると、AND回路はゲートを開いて信号をトランジスタのベースに送出するので、トンランジスタがオンし、電源より電流がスクイブに供給され、エアバッグが起動される。
【0005】
また、特開2007−245829号公報(特許文献2)は、車両が回転するロールオーバーを検知するエアバッグ制御装置を開示する。この文献のエアバッグ制御装置は、角速度センサの出力値を取込み、所定時間積分演算し、生成される積分値を、設定される判定閾値と比較演算してオフセット補正の正否を判定する。そして、エアバッグ制御装置は、オフセット補正が正常に行われたことを条件にロールオーバー判定を行い、ロールオーバーが検出された場合に、エアバッグ展開用の発熱抵抗体であるスクイブに電流を供給してエアバッグを作動させる。
【0006】
通常、加速度または角速度センサでは、電源投入時などにセンサの故障の有無を判定する自己診断(プライマリチェック)が行なわれる。具体的には、加速度または角速度信号に相当する擬似信号がセンサ素子に印加され、その際変化するセンサ出力の信号レベルにより、電源投入時等のプライマリチェックが実施される。
【0007】
特開2001−304871号公報(特許文献3)は、自己診断時に不測の角速度が入力される場合にも正確な自己診断を行なうことができる角速度センサの異常診断装置について開示する。この異常診断装置では、プライマリチェック回路において、センサ素子に回転擬似信号を印加しない状態での角速度出力の信号レベルがホールド回路によりホールドされる。このホールドした信号レベルに基づいて、角速度出力の信号レベルを比較判定するためのしきい値が可変に設定される。ウィンドウコンパレータでは、センサ素子に回転擬似信号を印加した状態での角速度出力の信号レベルと、設定されたしきい値とが比較され、その結果から異常の有無が診断される。
【0008】
また、特開2003−262648号公報(特許文献4)は、自己診断出力によるオフセット補正演算への悪影響を抑制するための技術を開示する。
【0009】
この文献によれば、速度センサの自己診断チェックを行うため、自己診断回路が矩形波の自己診断出力を加速度センサに入力すると、加速度センサは基準値に対して微分波形を出力する。これにより、自己診断チェック時の加速度センサ出力の変動が、オフセット補正用のローパスフィルタ処理回路の出力に現われる。同様の変動が、CPUの演算部でオフセット補正演算処理した後の補正後出力にも現われ、補正後出力の0点へ収束時間が長くなり、0点精度が低下する。そこで、この現象を避けるため、自己診断チェック前(矩形波の自己診断出力を加速度センサに入力する前)、好ましくは電源投入と同時にCPUでオフセット補正演算処理が行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−056441号公報
【特許文献2】特開2007−245829号公報
【特許文献3】特開2001−304871号公報
【特許文献4】特開2003−262648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
加速度または角速度センサが正常に動作しているか否かの自己診断は、加速度または角速度センサの動作状態で行なわれる。このため、センサ本体に擬似的な加速度または角速度を与えるための検査信号以外に、外部から不測の加速度または角速度が加わった状態でセンサが正常か否かの判定が行なわれると、誤った診断結果が出力されることになる。
【0012】
前述の特開2001−304871号公報(特許文献3)は、この問題に対処するための1つの方法を提供する。しかしながら、この文献の方法では、センサ素子に擬似信号を印加した状態でのセンサ出力の信号レベルが、センサ素子に擬似信号を印加しない状態でのセンサ出力の信号レベルに基づいて補正される。したがって、瞬間的な衝撃がセンサに加わった場合には、擬似信号が印加されたときと印加されないときとでセンサの外部から加わる加速度または角速度が異なることがあり得るので、正確な診断が行なえない場合がある。
【0013】
この発明の主たる目的は、自己診断中に加速度または角速度センサに外部から衝撃が加わった場合でも、正確な自己診断を行なうことが可能な加速度または角速度センサの自己診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は要約すれば、加速度または角速度を検出するセンサ本体が正常か否か診断する加速度または角速度センサの自己診断装置であって、診断制御部と、積分演算部と、判定部とを備える。診断制御部は、センサ本体に所定の大きさの検査信号を印加することによって、センサ本体に擬似的な加速度または角速度を与える。積分演算部は、検査信号に応答してセンサ本体から出力されたセンサ信号の積分演算を行なう。判定部は、積分演算が開始されてからセンサ本体の個体差に応じて予め設定された積分時間が経過したときの積分値が、所定の正常範囲にあるか否かを判定する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、検査信号に応答してセンサ本体から出力されたセンサ信号の積分値を用いて加速度または角速度センサの自己診断が行なわれる。したがって、自己診断中に加速度または角速度センサに外部から衝撃が加わった場合でも、衝撃の影響が抑制されるので正確な自己診断が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1に従う加速度センサ1の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の積分演算部11および判定部12の構成の一例を示す回路図である。
【図3】図1の自己診断装置10によるセンサ本体8の診断手順を示すフローチャートである。
【図4】図1の加速度センサ1の比較例としての加速度センサ101の構成を示すブロック図である。
【図5】図4の自己診断装置110において診断時のセンサ本体8の出力を示すタイミング図である(正常なセンサ本体8が正常と判定された場合)。
【図6】図4の自己診断装置110において診断時のセンサ本体8の出力を示すタイミング図である(正常なセンサ本体8が異常と誤判定された場合)。
【図7】図4の自己診断装置110において診断時のセンサ本体8の出力を示すタイミング図である(異常なセンサ本体8が正常と誤判定された場合)。
【図8】図1の自己診断装置10による診断時のセンサ本体8および積分演算部11の出力を示すタイミング図である(積分時間内にセンサ本体8が衝撃を受けなかった場合)。
【図9】図1の自己診断装置10による診断時のセンサ本体8および積分演算部11の出力を示すタイミング図である(積分時間内にセンサ本体8が衝撃を受けた場合)。
【図10】初期設定時における積分時間の設定方法について説明するための図である(センサ本体8の出力が大きい場合)。
【図11】初期設定時における積分時間の設定方法について説明するための図である(センサ本体8の出力が小さい場合)。
【図12】積分時間の初期設定手順を示すフローチャートである。
【図13】この発明の実施の形態2に従う積分演算部11Aおよび判定部12Aの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。また、以下の各実施の形態では加速度センサを例に挙げて説明するが、角速度センサについてもこの発明を同様に適用することができる。
【0018】
[実施の形態1]
(加速度センサの自己診断装置の構成)
図1は、この発明の実施の形態1に従う加速度センサ1の構成を示すブロック図である。図1の加速度センサ1は、自己診断機能を内蔵した加速度センサであり、加速度を検出するセンサ本体8と、電源投入時などにセンサ本体8が正常か否かを診断する自己診断装置10とを含む。
【0019】
センサ本体8は、ばねに支えられた錘を用いて、錘の変位量に基づいて加速度を検出するセンサである。センサ本体8の主要部であるセンサ素子は、錘を含む可動部とばねを介して可動部を支持する固定部とからなる。このような構造のセンサ素子は、通常、半導体微細加工を用いたMEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)技術によって作製される。この場合、錘を支える梁がばねとして用いられる。
【0020】
加速度の変化に応じた錘の変位量を検出する方法として、ばねに取り付けたひずみゲージまたはピエゾ素子などを用いる方法や、センサ素子の可動部と固定部とに対向電極を設けて電極間の静電容量の変化を検出する方法などがある。図1のセンサ本体8には、センサ素子とともに、錘の変位を検出するために上記のひずみゲージなどを用いた検出回路が設けられている。検出回路は錘の変位量に応じたセンサ信号17を出力する。
【0021】
センサ素子は、半導体微細加工による製造誤差のために、錘の重量やばね定数にばらつきが生じ、特性に個体差があるのが通常である。そこで、センサ本体8に設けられた検出回路には、センサ信号17の感度調整および0点(オフセット)調整を行うための回路が組み込まれている。
【0022】
なお、角速度センサの場合も、加速度センサと同様に、ばねに支えられた錘を使って角速度を検出する。ただし、角速度センサの場合は、静電力などを用いて錘を周期的に振動させた状態で、錘が回転するときに回転方向と錘の振動方向との各々に直交する方向に働くコリオリの力が利用される。角速度センサは、このコリオリの力の方向への錘の変位量を測定することによって角速度を検出する。
【0023】
自己診断装置10は、センサ本体8の信頼性を担保するために電源投入時などにセンサ本体8が正常か否かを診断する。具体的には、センサ素子の固定部と可動部との間に、静電力よって錘を変位させるための自己診断用の対向電極が設けられる。そして、これらの自己診断用の対向電極に電圧(すなわち、擬似加速度信号14)を印加することによって錘を変位させることで、センサ本体8に擬似的な加速度が加わった状態にする。このとき、錘の変位に応じたセンサ信号17がセンサ本体8から出力されるので、自己診断装置10は、このセンサ信号17に基づいてセンサ本体8が正常か否かを検出する。
【0024】
自己診断用の対向電極にも製造誤差があるので、通常、同一の大きさの擬似加速度信号14(検査信号とも称する)をセンサ本体8に印加しても、擬似加速度信号14によって生じる錘の変位量にはばらつきがある。この結果、センサ本体8から出力されたセンサ信号17の大きさにもばらつきが生じる。このような擬似加速度信号14を印加したときにセンサ本体8の個体差に応じて生じたセンサ信号17のばらつきの補正方法については、図10〜図12を参照して後述する。
【0025】
なお、角速度センサの場合も同様に、コリオリの力の方向に静電力などによって錘を変位させることによって、擬似的な角速度をセンサ本体に与えることができる。
【0026】
以下、具体的な自己診断装置10の構成について説明する。図1に示す自己診断装置10は、積分演算部11と、判定部12と、診断制御部13とを含む。
【0027】
積分演算部11は、擬似加速度信号14に応答してセンサ本体8から出力されたセンサ信号17を積分する。図4〜図9を参照して後述するように、センサ信号17を積分することによって診断中にセンサ本体8が受けた衝撃の影響を抑制することができる。
【0028】
判定部12は、積分演算部11による所定の積分時間の間のセンサ信号の積分値に基づいて、センサ本体8が正常か否かを判定する。このときの積分時間は、図10〜図12を参照して後述するように、センサ本体8の個体差に応じて加速度センサ1の初期設定時に設定される。
【0029】
診断制御部13は、マイクロコントローラなどをベースに構成され、自己診断装置10全体の動作を制御する。具体的に、診断制御部13は、自己診断の開始とともに擬似加速度信号14をセンサ本体8に出力する。擬似加速度信号14を出力し始めてから所定の出力安定時間が経過したときに、診断制御部13は、積分演算部11に積分開始命令15を出力する。この積分開始命令15に応答して、積分演算部11はセンサ信号17の積分を開始する。
【0030】
さらに、診断制御部13は、積分開始命令15を出力してから所定の積分時間が経過した判定時刻に、判定命令16を判定部12に出力する。判定部12は、判定命令16を受けたときの積分演算部11による積分値が所定の正常範囲にあるか否かを判定し、判定結果19を出力する。積分演算部11は、自己診断用の積分値を判定部12に出力した後にセンサ信号17の積分演算を終了する。
【0031】
図2は、図1の積分演算部11および判定部12の構成の一例を示す回路図である。
図2を参照して、積分演算部11は、演算増幅器21と、演算増幅器21の出力端子と反転入力端子との間に接続されたコンデンサ23と、コンデンサと並列に接続されたスイッチ24と、演算増幅器21の非反転入力端子と接地ノードGNDとの間に接続された直流電源25と、演算増幅器21の反転入力端子とセンサ本体8の出力ノードとの間に接続された抵抗素子22とを含む。
【0032】
スイッチ24は、図1の診断制御部13から積分開始命令15を受けたとき、オフ状態からオン状態に切替わる。これによって、演算増幅器21の出力端子からは、センサ信号17の積分値の信号18が直流電源25の電圧分だけシフトして出力される。
【0033】
判定部12は、ウィンドウコンパレータ30とAND回路35とを含む。ウィンドウコンパレータ30は、コンパレータ31,32および直流電源33,34を含む。コンパレータ31の反転入力端子およびコンパレータ32の非反転入力端子は、演算増幅器21の出力端子に接続される。また、コンパレータ31の非反転入力端子と接地ノードGNDとの間には直流電源33が接続され、コンパレータ32の反転入力端子と接地ノードGNDとの間には直流電源34が接続される。
【0034】
AND回路35は、判定命令16と、コンパレータ31,32の出力とを受ける。AND回路35は、演算増幅器21の出力信号18の電圧が、直流電源34の電圧E2より大きく、直流電源33の電圧E1より小さい場合で、かつ、判定命令16を受けているときにHレベルの信号を判定結果19として出力する。電圧E1,E2は、前述の積分値の正常範囲に対応するように予め設定される。
【0035】
図3は、図1の自己診断装置10によるセンサ本体8の診断手順を示すフローチャートである。図3の診断手順は、たとえば、加速度センサ1の電源投入時になどに実行される。
【0036】
図1、図3を参照して、ステップS1で、診断制御部13はセンサ本体8への擬似加速度信号14の印加を開始する。擬似加速度信号14の印加は、積分演算部11による所定の積分時間の積分が終了するまで続く。
【0037】
次のステップS2で、診断制御部13は所定の出力安定時間が経過したか否かを判定する。所定の出力安定時間が経過した場合(ステップS2でYES)、診断制御部13はステップS3に処理を進める。
【0038】
ステップS3で、診断制御部13は積分開始命令15を積分演算部11に出力する。積分開始命令15を受けた積分演算部11は、センサ本体8から出力されたセンサ信号17の積分演算を開始する(ステップS4)。
【0039】
次のステップS5で、診断制御部13は所定の積分時間が経過したか否かを判定する。所定の積分時間が経過していない場合には(ステップS5でNO)、ステップS4の積分演算が続けられる。所定の積分時間が経過した場合には(ステップS5でYES)、診断制御部13はステップS6に処理を進める。
【0040】
ステップS6で、診断制御部13は判定部12に判定命令16を出力する。判定部12は、判定命令16を受けたときの積分演算部11による積分値18が所定の適正範囲にあるか否かを判定し、判定した結果19を出力する(ステップS7)。以上で、自己診断装置10によるセンサ本体8の診断手順が終了する。
【0041】
(実施の形態1の自己診断装置の効果)
次に、上記の構成の自己診断装置10の効果について、図4に示す比較例の加速度センサ101と対比して説明する。
【0042】
図4は、図1の加速度センサ1の比較例としての加速度センサ101の構成を示すブロック図である。図4の自己診断装置110は、積分演算部11を含まない点で図1の自己診断装置10と異なる。図4の場合、診断制御部113は、擬似加速度信号14をセンサ本体8に出力してから所定の出力安定時間が経過したとき、判定命令16を判定部112に出力する。判定部112は、擬似加速度信号14に応答してセンサ本体8から出力されるセンサ信号17に基づいて、センサ本体8が正常か否かを判定する。
【0043】
図5〜図7は、図4の自己診断装置110において診断時のセンサ本体8の出力を示すタイミング図である。図5は、自己診断装置110が、正常なセンサ本体8を診断して正常と判定した場合を示す。図6は、判定時刻t2にセンサ本体8に衝撃が加わったために、正常なセンサ本体8が異常と誤判定された場合を示す。図7は、判定時刻t2にセンサ本体8に衝撃が加わったために、異常なセンサ本体8が正常と誤判定された場合を示す。
【0044】
まず、図4、図5を参照して、時刻t1で擬似加速度信号14がセンサ本体8に印加されることによって、センサ本体8からセンサ信号17が出力される。そして、時刻t1から所定の出力安定時間Tstbが経過した時刻t2に、判定命令16を受けた判定部112は、センサ信号17が所定の正常範囲(上限:H1、下限:L1)にあるか否かを判定する。図5の場合、時刻t2の時点でセンサ信号17が上限H1と下限L1との間にあるので、判定部112はセンサ本体8を正常と判定する。
【0045】
これに対して、図6の場合、判定時刻t2にセンサ本体8に衝撃が加わったために、センサ信号17に外乱によるノイズが重畳する(図6の符号42参照)。このため、衝撃がなければセンサ信号17が上限H1と下限L1との間にあるのでセンサ本体8が正常と判定されるべきところ、衝撃が加わったために判定時刻t2でセンサ信号17が上限H1を超える。この結果、正常なセンサ本体8が異常と誤判定されてしまう。
【0046】
一方、図7の場合、図6の場合と同様に判定時刻t2にセンサ本体8に衝撃が加わったために、センサ信号17に外乱によるノイズが重畳する(図7の符号42参照)。このため、衝撃がなければセンサ信号17が下限L1を下回っているのでセンサ本体8が異常と判定されるべきところ、衝撃が加わったために判定時刻t2でセンサ信号17が上限H1と下限L1との間になっている。この結果、異常なセンサ本体8が正常と誤判定されてしまう。
【0047】
このように、比較例の自己診断装置110では、センサ本体8の判定時刻に衝撃が加わると誤判定する可能性がある。次に示すように、実施の形態1の自己診断装置10は、センサ本体8から出力されたセンサ信号17の積分値に基づいてセンサ本体8が正常か否かを判定するので、衝撃の影響を抑制して正確な診断を行なうことができる。
【0048】
図8、図9は、図1の自己診断装置10による診断時のセンサ本体8および積分演算部11の出力を示すタイミング図である。図8は積分時間内にセンサ本体8が衝撃を受けなかった場合を示し、図9は積分時間内にセンサ本体8が衝撃を受けた場合を示す。図8、図9において、図の上側のグラフがセンサ本体8から出力されたセンサ信号17を示し、図の下側のグラフが積分演算部11から出力された積分値の信号18を示す。
【0049】
まず、図1、図8を参照して、時刻t1で擬似加速度信号14がセンサ本体8に印加されることによって、センサ本体8からセンサ信号17が出力される。時刻t1から所定の出力安定時間Tstbが経過した時刻t2に、積分開始命令15を受けた積分演算部11はセンサ信号17の積分演算を開始する。この結果、積分演算部11から出力された積分値の信号18は時間とともに直線的に増加する。
【0050】
時刻t2から所定の積分時間Tintが経過した判定時刻t3に、判定部12は、時刻t3における積分値が所定の正常範囲(上限:H2、下限:L2)にあるか否かを判定する。判定時刻t3における積分値は、図8でハッチングを付した部分41の面積に等しい。すなわち、時刻t2〜t3でのセンサ信号17の強度をIとすると、判定時刻t3における積分値は、ほぼI×Tintに等しくなる。図8の場合、判定時刻t3における積分値が上限H2と下限L2との間にあるので、判定部12はセンサ本体8を正常と判定する。
【0051】
一方、図9の場合、時刻t2から時刻t3の間にセンサ本体8が衝撃を受けたために、センサ信号17に外乱によるノイズが重畳する(図9の符号42参照)。また、積分演算部11による積分値の信号18にもノイズの影響が現れる(図9の符号49参照)。
【0052】
ところで、加速度センサ1のセンサ素子は、ばねによって錘が支えられた構造である。擬似加速度信号14が定常的に印加された状態では、擬似加速度信号14による静電力とばねによる復元力とがつりあう。したがって、この状態にさらに瞬間的な衝撃が加わった場合には、擬似加速度信号14による静電力とばねによる復元力とのつりあいの位置を中心としてセンサ素子の錘は振動を繰り返す。
【0053】
この結果、図9に示すように、衝撃が加わったときのセンサ信号17も平均強度Iを中心に振動する(図9の符号42参照)。このとき、センサ信号17の平均強度Iよりも上側の部分43の面積と平均強度Iより下側の部分44の面積とがほぼ等しくなってキャンセルし合い、平均強度Iより上側の部分45の面積と下側の部分46の面積とがほぼ等しくなってキャンセルし合う。したがって、積分演算部11による積分値の信号18は、衝撃を受けた時点では直線的な上昇から外れるが、判定時刻t3における積分値は衝撃を受けていない場合の値(I×Tint)にほぼ等しくなる。すなわち、積分値の信号18では衝撃の影響が緩和される。
【0054】
このように実施の形態1の加速度センサ1の自己診断装置10によれば、擬似加速度信号14に応答してセンサ本体8から出力されたセンサ信号17の積分値に基づいて加速度センサの自己診断が行なわれる。したがって、自己診断中にセンサ本体8に外部から衝撃が加わった場合でも、衝撃の影響が抑制されるので正確な自己診断が可能になる。
【0055】
なお、上記の説明において、自己診断装置10は、静電力によってセンサ素子の錘を変位させ擬似的な加速度が印加されている状態にしたが、錘を変位させる方法は静電力に限るものでない。磁力など他の手段によって錘を変位させて擬似的な加速度が印加されている状態にすることも可能である。
【0056】
(積分時間の設定方法−センサ信号のばらつき補正)
次に、積分時間Tintの設定方法について説明する。
【0057】
図1で説明したように、同一の大きさの擬似加速度信号14を印加したとしても、センサ本体8から出力されるセンサ信号17の大きさは、センサ本体8の個体差によってばらつく。このため、センサ本体8の個体差に応じて、擬似加速度信号14の強度、積分時間Tint、および積分値の正常範囲(上限H2および下限L2)のいずれかを調整する必要がある。
【0058】
ここで、擬似加速度信号14の強度を調整するには、センサ本体8の個体差に応じて精度よく調整を行なうためにD/A(Digital to Analog)コンバータが必要になる。したがって、自己診断装置10の回路規模が大きくなるので好ましくない。
【0059】
また、積分値の正常範囲の設定値は、加速度センサが組み込まれたシステムの要求によって決まることが多い。たとえば、自動車のエアバッグ制御装置では、衝突時に乗員が前方に投げ出される速度に対応した加速度の積分値を基準にしてエアバッグが作動する。したがって、加速度センサの自己診断では、センサの信頼性を確保するために、エアバッグが作動する加速度の積分値以上に正常範囲を設定してセンサの診断を行なう必要がある。このため、自己診断時における積分値の正常範囲の設定値をセンサ本体8の個体差に応じて変更することは好ましくない。
【0060】
そこで、自己診断装置10では、擬似加速度信号14および判定時のセンサ信号17の積分値の正常範囲は、いずれも、センサ本体8の個体差によらず一定の大きさに設定される。そして、積分時間Tintが、加速度センサ1の初期設定時に、擬似加速度信号14に応答してセンサ本体8から出力されたセンサ信号17の積分値が正常範囲内の所定の目標値に一致するように、センサ信号17の大きさに応じて設定される。以下、図10、図11を参照して、積分時間の設定方法についてさらに説明する。
【0061】
図10、図11は、初期設定時における積分時間の設定方法について説明するための図である。図11は、図10に比べてセンサ本体8から出力されるセンサ信号17の強度が小さい場合である。図10、図11において、図の上側のグラフがセンサ本体8から出力されたセンサ信号17を示し、図の下側のグラフが積分演算部11から出力された積分値の信号18を示す。
【0062】
まず、図1、図10を参照して、加速度センサ1の初期設定時の時刻t1で、擬似加速度信号14がセンサ本体8に印加されることによって、センサ本体からセンサ信号17が出力される。擬似加速度信号14の大きさは通常の診断時と同一であり、センサ本体8の個体差によらず一定に設定されている。
【0063】
時刻t1から所定の出力安定時間Tstbが経過した時刻t2に、積分開始命令15を受けた積分演算部11はセンサ信号17の積分演算を開始する。この結果、積分演算部11から出力された積分値の信号18は時間とともに直線的に増加する。なお、出力安定時間Tstbは通常の診断時と同一である。
【0064】
時刻t3で、積分値の信号18が目標値TGに到達する。このとき、センサ信号17の積分値は、図10のハッチング部分47の面積に等しい。目標値TGは、センサ本体8の個体差によらず一定に設定され、正常範囲(上限:H2、下限:L2)の中央値に等しく設定される。この時刻t3から積分演算の開始時刻t2を減じた時間Tint1が、自己診断時の積分時間として設定される。積分時間Tint1は、診断制御部13を構成するマイクロコントローラのメモリに記憶され、診断時に参照される。
【0065】
これに対して、図11の場合には、擬似加速度信号14に応答して出力されるセンサ信号17の強度I2が、図10の場合のセンサ信号17の強度I1よりも小さい。このため、図11の時刻t3で、センサ信号17の積分値(図11のハッチング部分48の面積)が目標値TGに等しくなったとき、積分値の信号18が目標値TGに到達するまでの時間Tint2が、図10の場合の時間Tint1よりも長くなる。図11の場合には、この時間Tint2が自己診断時の積分時間として設定される。このように、センサ信号17の強度のばらつきに応じて、自己診断時のセンサ信号17の積分時間が決まる。
【0066】
図12は、積分時間の初期設定手順を示すフローチャートである。以下、図1、図12を参照し、これまでの説明を総括して、初期設定時における積分時間の設定手順を説明する。
【0067】
ステップS11で、診断制御部13は擬似加速度信号14をセンサ本体8に印加する。擬似加速度信号14の印加は、積分値の信号18が所定の目標値に到達するまで続く。
【0068】
次のステップS12で、診断制御部13は所定の出力安定時間が経過したか否かを判定する。所定の出力安定時間が経過した場合(ステップS12でYES)、診断制御部13はステップS13に処理を進める。
【0069】
ステップS13で、診断制御部13は積分演算部11に積分開始命令15を出力する。診断制御部13はこのときの時刻(積分開始時刻)を記憶する(ステップS14)。積分開始命令15を受けた積分演算部11は、センサ本体8から出力されたセンサ信号17の積分演算を開始する(ステップS15)。
【0070】
次のステップS16で、判定部12は、積分演算部11による積分値18が所定の目標値に到達したか否かを判定する。所定の目標値に到達していない場合には(ステップS16でNO)、ステップS15の積分演算が続けられる。所定の目標値に到達した場合には(ステップS16でYES)、ステップS17に進む。
【0071】
ステップS17で、診断制御部13は目標値への到達時刻から積分開始時刻を減じることによって積分時間を算出する。
【0072】
次のステップS18で、診断制御部13は、ステップS17で算出した積分時間をメモリに記憶する。積分時間は加速度センサ1の自己診断時に参照される。
【0073】
このように、実施の形態1の自己診断装置10では、予め設定した擬似加速度信号14の大きさおよび積分値の目標値の条件を満たすように積分時間Tintが調整される。なお、上記の説明では、擬似加速度信号14の大きさおよび積分値の目標値は一定としたが、必ずしも一定にする必要はない。センサ本体8の個体差に応じて積分時間Tintを調整することがポイントであるので、擬似加速度信号14の大きさおよび積分値の目標値は、加速度センサが組み込まれたシステムの要求を満たす範囲内で任意に変更することができる。
【0074】
[実施の形態2]
図13は、この発明の実施の形態2に従う積分演算部11Aおよび判定部12Aの構成を示すブロック図である。図13の積分演算部11Aおよび判定部12Aは、図1の積分演算部11および判定部12をデジタル回路で構成したものである。
【0075】
図12を参照して、積分演算部11Aは、A/D(Analog to Digital)コンバータ51と、加算回路52と、レジスタ53とを含む。また、判定部12Aは比較回路54を含む。
【0076】
A/Dコンバータ51は、擬似加速度信号14に応答してセンサ本体8から出力されたセンサ信号17をデジタル変換する。デジタル変換されたセンサ信号17Aは加算回路52に出力される。
【0077】
加算回路52は、A/Dコンバータ51から出力されたセンサ信号17Aとレジスタ53に記憶されたデータとを繰り返し加算する。レジスタ53は、加算回路52で加算演算が行なわれる度に加算結果を新たなデータとして記憶する。したがって、レジスタ53には、A/Dコンバータから出力されたセンサ信号17Aの積分値が記憶されることになる。
【0078】
ここで、レジスタ53に記憶されたデータは、積分開始命令15を受けたときにリセットされる。したがって、レジスタ53に記憶されたデータは、診断制御部13から積分開始命令15が出力された以降のセンサ信号17Aの積分値に等しい。
【0079】
比較回路54は、判定命令16を受けたときにレジスタ53に記憶されているデータを所定の正常範囲の上限および下限と比較して、センサ本体8が正常か否かを判定する。このように、実施の形態2の自己診断装置によっても、実施の形態1の場合と同様に、センサ本体8の診断を行なうことができる。
【0080】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1 加速度センサ、8 センサ本体、10 自己診断装置、11,11A 積分演算部、12,12A 判定部、13 診断制御部、14 擬似加速度信号、15 積分開始命令、16 判定命令、17 センサ信号、18 積分値の信号、19 判定結果、21 演算増幅器、22 抵抗素子、23 コンデンサ、24 スイッチ、30 ウィンドウコンパレータ、31,32 コンパレータ、33,34 直流電源、35 AND回路、51 A/Dコンバータ、52 加算回路、53 レジスタ、54 比較回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度または角速度を検出するセンサ本体が正常か否かを診断する加速度または角速度センサの自己診断装置であって、
前記センサ本体に所定の大きさの検査信号を印加することによって、前記センサ本体に擬似的な加速度または角速度を与える診断制御部と、
前記検査信号に応答して前記センサ本体から出力されたセンサ信号の積分演算を行なう積分演算部と、
前記積分演算が開始されてから前記センサ本体の個体差に応じて予め設定された積分時間が経過したときの積分値が、所定の正常範囲にあるか否かを判定する判定部とを備える、加速度または角速度センサの自己診断装置。
【請求項2】
前記積分時間は、前記加速度または角速度センサが正常状態である初期設定時に、前記検査信号に応答して前記センサ本体から出力されたセンサ信号の積分値が前記正常範囲内の目標値と一致するように設定された時間である、請求項1に記載の加速度または角速度センサの自己診断装置。
【請求項3】
前記検査信号および前記正常範囲の各々は、前記センサ本体の個体差によらず一定の大きさである、請求項2に記載の加速度または角速度センサの自己診断装置。
【請求項4】
前記診断制御部は、前記検査信号を前記センサ本体に印加し始めてから所定の出力安定時間が経過したときに、前記積分演算部に積分開始命令を出力し、さらに、前記積分開始命令を出力してから前記積分時間が経過したとき、前記判定部に判定命令を出力し、
前記積分演算部は、
非反転入力端子が一定の電圧に固定された演算増幅器と、
前記演算増幅器の反転入力端子と出力端子との間に接続された容量素子と、
一端が前記演算増幅器の反転入力端子に接続され、他端に前記センサ本体から出力されたセンサ信号を受ける抵抗素子と、
前記演算増幅器の反転流力端子と出力端子との間に接続され、前記積分開始命令を受けたときオン状態になるスイッチとを含み、
前記判定部は、
前記演算増幅器の出力端子に接続され、前記演算増幅器の出力が前記正常範囲に対応する正常電圧範囲にあるか否かを判定するウィンドウコンパレータと、
前記判定命令を受けた場合に前記ウィンドウコンパレータの判定結果を出力する論理ゲートとを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加速度または角速度センサの自己診断装置。
【請求項5】
前記診断制御部は、前記検査信号を前記センサ本体に印加し始めてから所定の出力安定時間が経過したときに、前記積分演算部に積分開始命令を出力し、さらに、前記積分開始命令を出力してから前記積分時間が経過したとき、前記判定部に判定命令を出力し、
前記積分演算部は、加算回路とレジスタとを含み、
前記加算回路は、デジタル変換された前記センサ信号と前記レジスタに記憶されているデータとを繰返し加算し、
前記レジスタは、前記加算回路によって加算演算が実行される度に、加算結果を新たなデータとして記憶し、前記レジスタは、前記積分開始命令を受けたときに記憶しているデータをリセットし、
前記判定部は、前記判定命令を受けたとき前記レジスタに記憶されているデータと前記正常範囲の上限および下限とを比較する比較回路を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加速度または角速度センサの自己診断装置。
【請求項6】
加速度または角速度を検出するセンサ本体が正常か否かを診断する加速度または角速度センサの自己診断方法であって、
前記センサ本体に所定の大きさの検査信号を印加することによって、前記センサ本体に擬似的な加速度または角速度を与えるステップと、
前記検査信号に応答して前記センサ本体から出力されたセンサ信号の積分演算を行なうステップと、
前記積分演算が開始されてから前記センサ本体の個体差に応じて予め設定された積分時間が経過したときの積分値が、所定の正常範囲にあるか否かを判定するステップとを備える、加速度または角速度センサの自己診断方法。
【請求項7】
加速度または角速度を検出するセンサ本体と、
前記センサ本体が正常か否かを診断する自己診断装置とを備え、
前記自己診断装置は、
前記センサ本体に所定の検査信号を印加することによって、前記センサ本体に擬似的な加速度または角速度を与える診断制御部と、
前記検査信号に応答して前記センサ本体から出力されたセンサ信号の積分演算を行なう積分演算部と、
前記積分演算が開始されてから前記センサ本体の個体差に応じて予め設定された積分時間が経過したときの積分値が、所定の正常範囲にあるか否かを判定する判定部とを含む、加速度または角速度センサ。
【請求項8】
加速度または角速度を検出するセンサ本体を診断する自己診断装置を有する加速度または角速度センサの初期設定方法であって、
前記自己診断装置は、
前記センサ本体に所定の大きさの検査信号を印加することによって、前記センサ本体に擬似的な加速度または角速度を与える診断制御部と、
前記検査信号に応答して前記センサ本体から出力されたセンサ信号の積分演算を行なう積分演算部と、
前記積分演算が開始されてから初期設定時に設定された積分時間が経過したときの積分値が、所定の正常範囲にあるか否かを判定する判定部とを含み、
前記診断制御部によって前記所定の大きさの検査信号を前記センサ本体に印加するステップと、
前記所定の大きさの検査信号に応答して前記センサ本体から出力されたセンサ信号の積分演算を開始するステップと、
前記積分演算による積分値が前記正常範囲内に設定された所定の目標値に到達したか否かを判定するステップと、
前記積分演算を開始したときから前記積分演算による積分値が前記目標値に到達したときまでの時間を前記積分時間として設定するステップとを備える、加速度または角速度センサの初期設定方法。
【請求項1】
加速度または角速度を検出するセンサ本体が正常か否かを診断する加速度または角速度センサの自己診断装置であって、
前記センサ本体に所定の大きさの検査信号を印加することによって、前記センサ本体に擬似的な加速度または角速度を与える診断制御部と、
前記検査信号に応答して前記センサ本体から出力されたセンサ信号の積分演算を行なう積分演算部と、
前記積分演算が開始されてから前記センサ本体の個体差に応じて予め設定された積分時間が経過したときの積分値が、所定の正常範囲にあるか否かを判定する判定部とを備える、加速度または角速度センサの自己診断装置。
【請求項2】
前記積分時間は、前記加速度または角速度センサが正常状態である初期設定時に、前記検査信号に応答して前記センサ本体から出力されたセンサ信号の積分値が前記正常範囲内の目標値と一致するように設定された時間である、請求項1に記載の加速度または角速度センサの自己診断装置。
【請求項3】
前記検査信号および前記正常範囲の各々は、前記センサ本体の個体差によらず一定の大きさである、請求項2に記載の加速度または角速度センサの自己診断装置。
【請求項4】
前記診断制御部は、前記検査信号を前記センサ本体に印加し始めてから所定の出力安定時間が経過したときに、前記積分演算部に積分開始命令を出力し、さらに、前記積分開始命令を出力してから前記積分時間が経過したとき、前記判定部に判定命令を出力し、
前記積分演算部は、
非反転入力端子が一定の電圧に固定された演算増幅器と、
前記演算増幅器の反転入力端子と出力端子との間に接続された容量素子と、
一端が前記演算増幅器の反転入力端子に接続され、他端に前記センサ本体から出力されたセンサ信号を受ける抵抗素子と、
前記演算増幅器の反転流力端子と出力端子との間に接続され、前記積分開始命令を受けたときオン状態になるスイッチとを含み、
前記判定部は、
前記演算増幅器の出力端子に接続され、前記演算増幅器の出力が前記正常範囲に対応する正常電圧範囲にあるか否かを判定するウィンドウコンパレータと、
前記判定命令を受けた場合に前記ウィンドウコンパレータの判定結果を出力する論理ゲートとを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加速度または角速度センサの自己診断装置。
【請求項5】
前記診断制御部は、前記検査信号を前記センサ本体に印加し始めてから所定の出力安定時間が経過したときに、前記積分演算部に積分開始命令を出力し、さらに、前記積分開始命令を出力してから前記積分時間が経過したとき、前記判定部に判定命令を出力し、
前記積分演算部は、加算回路とレジスタとを含み、
前記加算回路は、デジタル変換された前記センサ信号と前記レジスタに記憶されているデータとを繰返し加算し、
前記レジスタは、前記加算回路によって加算演算が実行される度に、加算結果を新たなデータとして記憶し、前記レジスタは、前記積分開始命令を受けたときに記憶しているデータをリセットし、
前記判定部は、前記判定命令を受けたとき前記レジスタに記憶されているデータと前記正常範囲の上限および下限とを比較する比較回路を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加速度または角速度センサの自己診断装置。
【請求項6】
加速度または角速度を検出するセンサ本体が正常か否かを診断する加速度または角速度センサの自己診断方法であって、
前記センサ本体に所定の大きさの検査信号を印加することによって、前記センサ本体に擬似的な加速度または角速度を与えるステップと、
前記検査信号に応答して前記センサ本体から出力されたセンサ信号の積分演算を行なうステップと、
前記積分演算が開始されてから前記センサ本体の個体差に応じて予め設定された積分時間が経過したときの積分値が、所定の正常範囲にあるか否かを判定するステップとを備える、加速度または角速度センサの自己診断方法。
【請求項7】
加速度または角速度を検出するセンサ本体と、
前記センサ本体が正常か否かを診断する自己診断装置とを備え、
前記自己診断装置は、
前記センサ本体に所定の検査信号を印加することによって、前記センサ本体に擬似的な加速度または角速度を与える診断制御部と、
前記検査信号に応答して前記センサ本体から出力されたセンサ信号の積分演算を行なう積分演算部と、
前記積分演算が開始されてから前記センサ本体の個体差に応じて予め設定された積分時間が経過したときの積分値が、所定の正常範囲にあるか否かを判定する判定部とを含む、加速度または角速度センサ。
【請求項8】
加速度または角速度を検出するセンサ本体を診断する自己診断装置を有する加速度または角速度センサの初期設定方法であって、
前記自己診断装置は、
前記センサ本体に所定の大きさの検査信号を印加することによって、前記センサ本体に擬似的な加速度または角速度を与える診断制御部と、
前記検査信号に応答して前記センサ本体から出力されたセンサ信号の積分演算を行なう積分演算部と、
前記積分演算が開始されてから初期設定時に設定された積分時間が経過したときの積分値が、所定の正常範囲にあるか否かを判定する判定部とを含み、
前記診断制御部によって前記所定の大きさの検査信号を前記センサ本体に印加するステップと、
前記所定の大きさの検査信号に応答して前記センサ本体から出力されたセンサ信号の積分演算を開始するステップと、
前記積分演算による積分値が前記正常範囲内に設定された所定の目標値に到達したか否かを判定するステップと、
前記積分演算を開始したときから前記積分演算による積分値が前記目標値に到達したときまでの時間を前記積分時間として設定するステップとを備える、加速度または角速度センサの初期設定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−160112(P2010−160112A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3883(P2009−3883)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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