説明

加速度検出システム

【課題】 センサ本体が静止状態か運動状態かを認識する。
【解決手段】 XYZ三次元直交座標系において、作用した加速度の各座標軸成分αx,αy,αzをそれぞれ電気信号として出力する三次元加速度センサ10を用意する。演算手段20は、この電気信号に基づいて、A=(αx+αy+αz1/2なる演算を行い、演算結果Aを出力する。予め、三次元加速度センサ10に重力加速度のみが作用したときの演算手段による演算結果を基準値A0として記憶手段30に記憶させておき、判定手段40により、演算手段20による演算結果Aと記憶手段30に記憶されている基準値A0とが一致するか否かを示す判定信号Jを出力する。判定信号Jが一致を示せば、センサ本体には重力加速度のみが作用しているので静止状態と判断でき、不一致を示せば、重力加速度以外の加速度も作用しているの運動状態と判断できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加速度検出システムに関し、特に、地中に埋設して用いる地震計や人体に埋め込んで用いるペースメーカなどへの利用に適した加速度検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
物理量としての加速度を検出する用途に、様々な加速度センサが利用されている。たとえば、車両、船舶、航空機といった乗り物の運動状態を制御したり、ロボットなどの産業機器を制御したりする分野では、加速度センサを用いたフィードバック制御を行うのが一般的である。また、衝突による衝撃や、地震による振動を検出する場合にも加速度センサが用いられている。現在利用されている加速度センサは、金属球の物理的な運動を検出するという原始的なものから、半導体を利用した高精度のものまで様々である。また、ある特定の一軸方向に作用した加速度成分のみを検出することができる一次元加速度センサや、互いに直交する二軸方向に作用した各加速度成分を検出することができる二次元加速度センサや、XYZ三次元直交座標系において、作用した加速度の各座標軸成分αx,αy,αzをそれぞれ独立して検出することが三次元加速度センサなどが、用途に応じて使い分けられている。たとえば、下記の特許文献1には、圧電素子を用いた三次元加速度センサが開示されており、下記の特許文献2には、容量素子を用いた三次元加速度センサが開示されている。
【特許文献1】特開平5−26744号公報
【特許文献2】特開平5−60787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
加速度は方向性をもったベクトル量であるため、加速度センサから出力される検出値(スカラー量)には、必ず方向に関する情報が付加されていなければ意味をなさない。たとえば、一次元加速度センサを地中に埋設して、地面の上下方向の振動の大きさを測定するのであれば、通常、このセンサの検出軸が鉛直方向に向くようにして地中に埋設することになる。この場合、このセンサから出力される検出値は、単なるスカラー量であったとしても、「埋設方向は鉛直方向である」という方向に関する情報が得られているので、「地面の上下方向の振動の大きさ」というベクトル量としての加速度検出値を得ることができる。
【0004】
このように、加速度センサから出力される検出値(スカラー量)に基づいて、ベクトル量としての加速度を正しく認識するためには、加速度センサの設置姿勢(検出軸の向き)が既知であることが前提となる。ところが、用途によっては、この設置姿勢を容易に確認することができないような場合がある。たとえば、地中に埋設した地震計に用いられている加速度センサの場合、設置後の地殻変動により、設置姿勢に変化が生じていたとしても、これを確認することは困難である。このため、所定の検出軸方向の検出値を示す電圧レベルに異常が生じたとしても、その異常がセンサの故障によるものなのか、あるいは地殻変動による設置姿勢の変化(センサ本体の傾斜)によるものなのか、を外部から認識することはできない。
【0005】
また、センサ本体が加速度を検出したとしても、当該加速度が重力に起因した加速度であるのか、運動に起因した加速度であるのかを判断することができないため、センサ本体が静止状態にあるのか、運動状態にあるのかを判断することもできない。
【0006】
そこで本発明は、センサ本体の状態変化を認識することが可能な加速度検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明の第1の態様は、加速度検出システムを、
XYZ三次元直交座標系において、作用した加速度の各座標軸成分αx,αy,αzをそれぞれ電気信号として出力する三次元加速度センサと、
この出力された電気信号に基づいて、三次元加速度センサが検出した三次元加速度ベクトルの大きさを示す値を求める演算を行い、演算結果Aを出力する演算手段と、
三次元加速度センサに重力加速度のみが作用したときの演算手段による演算結果として得られる重力加速度ベクトルの大きさを示す値を基準値A0として予め記憶している記憶手段と、
演算手段による演算結果Aと記憶手段に記憶されている基準値A0とを比較し、両者が一致している場合は、三次元加速度センサが静止状態にある旨の判定結果を出力し、両者が不一致の場合は、三次元加速度センサが運動状態にある旨の判定結果を出力する判定手段と、
によって構成するようにしたものである。
【0008】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る加速度検出システムにおいて、
演算手段が、A=(αx+αy+αz1/2なる演算もしくはA=αx+αy+αzなる演算を行い、演算結果Aを得るようにしたものである。
【0009】
(3) 本発明の第3の態様は、
上述の第1または第2の態様に係る加速度検出システムと、
心筋に対する収縮/拡張動作のタイミングを指示する電気パルスを発生させるパルス発生部と、
加速度検出システムの判定結果に基づいて、パルス発生部が発生する電気パルスの周期を制御する制御部と、
によって心臓用ペースメーカを構成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る加速度検出システムによれば、判定信号Jが一致を示していれば、センサには重力加速度のみが作用していることが認識でき、センサが静止状態であることが認識でき、判定信号Jが不一致を示していれば、センサには重力加速度以外の加速度が作用していることが認識でき、センサが運動状態であることが認識できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。図1は、一般的な三次元加速度センサ10を地中5に埋設して地震計として用いるようにした構成例を示す概念図である。この三次元加速度センサ10は、XYZ三次元直交座標系において、作用した加速度の各座標軸成分αx,αy,αzをそれぞれ電気信号として出力する機能を有している。各座標軸成分を示す電気信号は、図示されていない配線を通じて地上の観測所へ伝達される。ここに示す例では、水平面(地表面)がXY平面に一致するような姿勢で三次元加速度センサ10が埋設されており、Z軸方向が鉛直方向になる。したがって、地震による振動が全くない状態においては、X軸方向の加速度成分αx=0、Y軸方向の加速度成分αy=0となるが、Z軸方向の加速度成分αz=−g(ただし、gは重力加速度の値)となる。
【0012】
このように地中に埋設するタイプの地震計は、埋設時にその姿勢を所定の状態(図示の例では、Z軸と定義された検出軸が鉛直方向に向くような状態)に設定することになるが、その後の設置姿勢の点検は、通常は行われない。ところが、長年の使用により、埋設地点周辺に地殻変動が生じると、三次元加速度センサ10全体が傾斜し、たとえば、図2に示すように設置姿勢が変化する場合がある。このように設置姿勢が傾くと、各検出軸の加速度成分としては、αx=k1,αy=k2,αz=k3というように、重力加速度に基づく各成分値が出力されることになる。
【0013】
しかしながら、地殻変動によってセンサ本体が傾斜したという地中での現象は、観測所においては認識することができない。観測所に伝達される情報は、3種類の加速度成分αx,αy,αzの値を示す電気信号だけであり、たとえば、αx=k1,αy=k2,αz=k3という値を示す電気信号が与えられた場合には、X軸方向成分(第1の水平方向成分)がk1,Y軸方向成分(第2の水平方向成分)がk2,Z軸方向成分(鉛直方向成分)がk3という加速度が作用したものとして取り扱われることになる。もちろん、このような取り扱い方によって得られる情報は、正しい情報ではない。
【0014】
いま、特定の地震計から伝達されてきた信号だけが異常を示した場合を考えてみる。たとえば、ある地区に埋設された10個の地震計のうち9個までは、αz=−gなる値を示しているのに、特定の1個だけがαz=k3なる別な値を示していた場合を考えよう。この場合、この特定の1個の地震計だけが異常値を示した理由として、次の2つの理由が考えられる。第1の理由は、上述したように、地殻変動によってセンサ全体が地中で傾斜したために、設置姿勢に変化が生じたという理由である。そして第2の理由は、そのセンサに何らかの故障が生じたという理由である。地中に埋設された地震計は、過酷な温度条件、湿度条件にさらされているため、経年変化による故障の発生も十分に予想される。しかしながら、従来の加速度検出システムでは、特定の地震計が異常値を示した理由が、この2つの理由のいずれに基づくものであるかを認識することができなかったため、異常値を示した加速度センサについては、一義的に故障したものとして取り扱わざるを得なかったのである。
【0015】
本願発明者は、三次元加速度センサの3種類の加速度成分αx,αy,αzの値を利用すれば、センサ自体の設置姿勢に変化が生じたことを認識することが可能であることを見出だし、次のような構成の加速度検出システムを創作するに至ったのである。
【0016】
図3は、本発明に係る加速度検出システムの基本構成を示すブロック図である。ここで、三次元加速度センサ10は、図1あるいは図2に示したセンサと同様に、従来から一般的に用いられている三次元加速度センサである。すなわち、この三次元加速度センサ10は、XYZ三次元直交座標系において、作用した加速度の各座標軸成分αx,αy,αzをそれぞれ電気信号として出力する機能を有する。また、演算手段20は、この電気信号に基づいて、A=(αx+αy+αz1/2なる演算を行い、演算結果Aを出力する機能を有する。この演算結果Aは、結局、三次元加速度センサ10が検出した加速度ベクトルの大きさを示す値となる。一方、記憶手段30内には、三次元加速度センサ10に重力加速度のみが作用したときの演算手段20による演算結果が基準値A0として記憶されている。別言すれば、この基準値A0は、重力加速度ベクトルの大きさを示す値となる。そして、判定手段40において、演算手段20による演算結果Aと記憶手段30に記憶されている基準値A0とが一致するか否かが判定され、その結果を示す判定信号Jが出力される。
【0017】
なお、演算手段20で行う実際の演算は、必ずしもA=(αx+αy+αz1/2なる演算でなくてもよく、実質的にこれと等価の演算を行ってもよい。たとえば、平方根を求める演算を省略して、A=αx+αy+αzなる演算で演算結果Aを定義してもよい。演算結果Aに対して、物理的な意味(作用した加速度ベクトルの大きさ)を与える上では、平方根演算を含む前者の演算式を用いるのが適当である。しかしながら、本発明では、判定手段40における判定が支障なく行われれば足りるので、平方根演算を省略した後者の演算式を用いてもかまわない。予め記憶手段30内に記憶しておく基準値A0を後者の演算式で求めた値にしておき、演算手段20において後者の演算式を採用するようにすれば、前者の演算式を用いた場合と全く等価な結果が得られることになる。むしろ実用上は、平方根演算を含まない後者の演算式を用いた方が、演算が単純化されることになり好ましい。
【0018】
このように、本発明に係る加速度検出システムでは、三次元加速度センサ10の直接の出力値であるαx,αy,αzの他に、判定信号Jが出力されることになり、この判定信号Jに基づいて、三次元加速度センサ10に姿勢変化が生じたか否かを認識することが可能になる。すなわち、三次元加速度センサ10に対して重力加速度のみが作用している状態においては、三次元加速度センサ10の設置姿勢がどのように変化していようが、演算手段20の演算結果Aは常に記憶手段30内の基準値A0に一致するため、判定手段40から一致を示す判定信号Jが出力されることになる。地震計の場合、通常(地震が発生していない平常時)は、ほぼ重力加速度のみが作用した環境下で利用されることになるが、このような環境下では、判定信号Jが一致を示していれば、その地震計は正常に動作しているものと判断することができる。したがって、たとえ検出値αx,αy,αzが異常な値を示している地震計が存在した場合であっても、その異常値は、センサ自体の設置姿勢が地殻変動によって変化したためにもたらされたものであると認識することができる。逆に、地震が発生していない平常時であるにもかかわらず、判定信号Jが不一致を示す地震計があれば、その地震計の三次元加速度センサ10は故障状態にあり、正しい検出値を出力していないと認識することができる。
【0019】
図4は、このような故障認識方法を利用した冗長度をもった加速度検出システムの構成例を示すブロック図である。このシステムでは、2組の三次元加速度センサ10A,10Bが設けられている。第1の三次元加速度センサ10Aは、検出値αxa,αya,αzaを出力し、第2の三次元加速度センサ10Bは、検出値αxb,αyb,αzbを出力する。選択器50は、いずれか一方の検出値を最終的な検出値αx,αy,αzとして出力する機能を有する。各三次元加速度センサ10A,10Bから出力された検出値は、演算手段20にも与えられ、各センサについてそれぞれ別個に上述した演算が実行される。そして、判定手段40において、それぞれの演算結果Aが記憶手段30内の基準値A0と比較され、各センサごとに一致/不一致を示す判定信号Jが出力される。選択器50は、所定の規則に従って2組の三次元加速度センサ10A,10Bのいずれか一方を選択する処理を行う(たとえば、故障が生じない限りは第1の三次元加速度センサ10Aを選択し続けるようにしてもよいし、あるいは、第1の三次元加速度センサ10Aと第2の三次元加速度センサ10Bとを1日おきに交互に選択するようにしてもよい)。ただし、判定手段40から与えられる判定信号Jが所定時間にわたって継続して不一致を示したセンサについては、何らかの故障が生じたものとみなして、以後一切選択を行わないようにする。
【0020】
このような冗長構成を採れば、万一、一方の三次元加速度センサが故障した場合であっても、自動的に他方の三次元加速度センサへの切り替えが行われることになる。通常、地中に埋設する地震計の場合、故障した場合にいちいち掘り起こして新品に交換したり修理したりする作業を行うことが困難であり、このような冗長度をもったシステム構成は非常に実用的である。なお、故障と判定するための不一致の継続時間として、あまり短い時間設定を行うと、実際に地震が発生したときに、正常な検出値(演算結果Aは基準値A0に一致しない)を出力しているにもかかわらず故障と誤認される可能性がある。したがって、地震が発生した場合に振動が継続すると予想される時間よりも十分に長い時間を設定しておくようにする。また、図4に示す例では、2組の三次元加速度センサを用いているが、より多数の三次元加速度センサを用いることももちろん可能である。
【0021】
以上のように、通常は重力加速度のみが作用している環境下で用いられる地震計に本発明を適用した場合には、判定手段40から得られる判定信号Jを、センサが正常か否かの判断(故障判断)に利用することができる。しかしながら、判定信号Jは、そもそもセンサに対して重力加速度以外の加速度が作用しているか否かを示す信号であり、必ずしもセンサの故障判断のみに利用されるものではない。以下に、本発明の別な実施形態として、心臓用ペースメーカに適用した例を示す。
【0022】
心臓疾患者用の治療用具のひとつとして、ペースメーカは広く利用されている。このペースメーカは、心筋に対する収縮/拡張動作のタイミングを指示する電気パルスを人為的に発生させる装置であり、近年では、非常に小型化されたものが手術によって疾患者の体内に埋め込まれる。ただ、従来用いられている一般的なペースメーカは、患者の状態にかかわらず、常に一定周期の電気パルスを送出するため、必ずしも患者の状態に適した鼓動動作は行われていない。本来であれば、患者が立っている場合、歩いている場合、走っている場合、といった患者の運動状態に応じて、心臓の鼓動周期を変える必要がある。このように患者の運動状態に応じた周期の電気パルスを発生させるために、ペースメーカ内に加速度センサを埋設するという試みが提案されている。本発明は、このようなペースメーカ内蔵型の加速度センサに適用した場合に有益である。
【0023】
たとえば、図1に示した三次元加速度センサ10が、患者の体内に埋め込まれているものとしよう。ここでは、患者の頭上方向がZ軸に一致するような姿勢で、三次元加速度センサ10が埋め込まれているものとする。この場合、患者が直立静止状態にあれば、αx=0,αy=0,αz=−gという検出値が得られる。ところが、この患者が、たとえばソファなどに着座した場合は、三次元加速度センサ10は図2に示すように傾斜することになり、検出値は、αx=k1,αy=k2,αz=k3と変化する。また、この患者がベッドに横たわった場合は、このセンサの検出値は、たとえば、αx=0,αy=g,αz=0になる。このように、患者の姿勢が変化するだけで、センサの検出値はそれぞれ変化する。一方、この患者が歩行などの運動を行った場合にも、この運動による加速度が作用するために、センサの検出値はそれぞれ変化する。
【0024】
本発明に係る加速度検出システムを適用すれば、センサの検出値に基づいて、患者が静止状態にあるのか運動状態にあるのかを認識することが可能である。すなわち、判定手段40から得られる判定信号Jが一致を示していれば、このセンサには重力加速度のみが作用していることになるから、患者は静止状態にあると認識できる。患者が直立した状態であろうが、着座した状態であろうが、ベッドに横たわっている状態であろうが、患者が静止状態にある以上、作用している加速度は重力加速度のみであるから、判定信号Jは一致を示すものになる。この場合には、ペースメーカの発生する電気パルスの周期は安静を保つのに適した比較的長い周期に制御すればよい。これに対して、判定信号Jが不一致を示していれば、このセンサには重力加速度だけでなく、他の加速度、すなわち、患者の運動によって生じる加速度も作用していることになるから、患者は運動状態にあると認識できる。この場合には、ペースメーカの発生する電気パルスの周期を運動に適した比較的短い周期に制御すればよい。
【0025】
このように、ペースメーカは、三次元加速度センサ10からの検出値αx,αy,αzとともに、判定信号Jを参考にして、患者が静止状態にあるのか、運動状態にあるのかを判断することができ、発生する電気パルスの周期を制御することが可能になる。
【実施例】
【0026】
本発明に係る加速度検出システムに用いる三次元加速度センサとしては、既に種々のものが実用化されているが、ここでは代表的な2つのタイプの三次元加速度センサの具体的な構造について簡単に説明しておく。
【0027】
第1のタイプは、ピエゾ抵抗素子を利用した加速度センサである。図5は、このタイプに属する三次元加速度センサ100の上面図であり、図6は、このセンサをX軸に沿って切断した状態を示す側断面図である。図6の側断面図に示されているように、このセンサ100は、半導体基板110、台座120、重錘体130、ベース基板140から構成されている。半導体基板110の中央部(図5の内側の破線円で囲まれた領域)は変位部111を形成し、その周囲(図5の内側の破線円と外側の破線円との中間の領域)は可撓部112を形成し、その周囲(図5の外側の破線円の外側の領域)は固定部113を形成している。半導体基板110の下面には、図6の側断面図に示されているように、溝部114が形成されており、この溝部114は図5に破線円で示したように円環状をしている。別言すれば、この溝部114の形成によって肉厚が薄くなった部分が可撓部112を構成していることになる。
【0028】
図6の側断面図に示されているように、変位部111の下面には円柱状の重錘体130が固着されており、固定部113の下面には、この重錘体130を取り囲むように台座120が固着されている。台座120の下面はベース基板140に固着されているが、重錘体130の底面とベース基板140の上面との間、および重錘体130の側面と台座120の側面との間、にはそれぞれ所定の間隙が確保されており、重錘体130はこの間隙の範囲内で変位可能である。可撓部112は肉厚が薄いために可撓性を有している。したがって、このセンサ100全体に加速度が作用すると、この加速度に起因して可撓部112に撓みが生じ、重錘体130が変位する。
【0029】
可撓部112の上面には、図5に示すように、抵抗素子Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4が配置されている。これらの抵抗素子は、生じた撓みによって抵抗値が変化する性質をもったピエゾ抵抗素子である。重錘体130に作用した加速度の向きに応じて各抵抗素子に生じる撓み方はそれぞれ相違する。したがって、X軸に沿って配置された抵抗素子Rx1〜Rx4の抵抗値の変化に基づいてX軸方向の加速度成分αxを検出することができ、Y軸に沿って配置された抵抗素子Ry1〜Ry4の抵抗値の変化に基づいてY軸方向の加速度成分αyを検出することができ、もう1つの軸に沿って配置された抵抗素子Rz1〜Rz4の抵抗値の変化に基づいてZ軸方向の加速度成分αzを検出することができる。
【0030】
なお、具体的な検出原理や検出方法については、たとえば、特開平3−2535公報、特開平3−202778号公報、特開平4−84725号公報、特開平4−81630号公報などに詳述されているので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0031】
このように、ピエゾ抵抗素子を利用した加速度センサを、本発明における三次元加速度センサ10として用いるようにすれば、各抵抗素子の抵抗値の変化を電圧信号として取り出すことができる。よって、演算増幅器などのアナログ回路で演算手段20を構成し、演算結果Aに相当する電圧値と基準値A0に相当する電圧値とを比較するコンパレータで判定手段40を構成すれば、図3に示す構成を実現することができる。もちろん、演算手段20,記憶手段30,判定手段40として論理素子やマイクロプロセッサなどのデジタル回路を用いても構わない。
【0032】
第2のタイプは、静電容量素子を利用した加速度センサである。図7は、このタイプに属する三次元加速度センサ200をX軸に沿って切断した状態を示す側断面図である。このセンサ200は、半導体基板210、台座220、重錘体230、ベース基板240、蓋基板250から構成されている。ここで、半導体基板210、台座220、重錘体230、ベース基板240の構成は、上述したセンサ100における半導体基板110、台座120、重錘体130、ベース基板140の構成と全く同じである。このセンサ200の特徴は、半導体基板210の上方に蓋基板250を設け、両基板にそれぞれ電極を設けて容量素子を形成した点にある。図8は、半導体基板210の構成を示す上面図である。この上面図に示されているように、半導体基板210の上面には、5枚の電極E1〜E5が図のように配置されている。一方、蓋基板250の下面には、この5枚の電極E1〜E5のすべてに対向するような円盤状の共通電極E0が形成されている。
【0033】
このような構成により、電極E1/E0からなる容量素子C1、電極E2/E0からなる容量素子C2、電極E3/E0からなる容量素子C3、電極E4/E0からなる容量素子C4、電極E5/E0からなる容量素子C5、という5組の容量素子が形成されることになる。重錘体230に加速度が作用すると、作用した加速度の向きに応じた態様で半導体基板210に撓みが生じ、各容量素子を構成する一対の電極の電極間隔に変化が生じ、各容量素子の容量値に変化が生じる。したがって、X軸に沿って配置された容量素子C1,C3の容量値の変化に基づいてX軸方向の加速度成分αxを検出することができ、Y軸に沿って配置された容量素子C2,C4の容量値の変化に基づいてY軸方向の加速度成分αyを検出することができ、中央に配置された容量素子C5の容量値の変化に基づいてZ軸方向の加速度成分αzを検出することができる。
【0034】
なお、具体的な検出原理や検出方法については、たとえば、特開平4−148833号公報、特開平4−249726号公報、特開平4−299227号公報、特開平4−337431号公報などに詳述されているので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0035】
このように、容量素子を利用した加速度センサを、本発明における三次元加速度センサ10として用いるようにすれば、各容量素子の容量値の変化を電圧信号として取り出すことができ、上述したセンサ100の場合と同様に、各種回路によって演算手段20,記憶手段30,判定手段40を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】一般的な三次元加速度センサ10を地中5に埋設して地震計として用いるようにした構成例を示す概念図である。
【図2】図1に示す三次元加速度センサ10の設置姿勢の変化を示す概念図である。
【図3】本発明に係る加速度検出システムの基本構成を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る故障認識方法を利用した冗長度をもった加速度検出システムの構成例を示すブロック図である。
【図5】ピエゾ抵抗素子を用いた三次元加速度センサ100の上面図である。
【図6】図5に示すセンサをX軸に沿って切断した状態を示す側断面図である。
【図7】容量素子を用いた三次元加速度センサ200をX軸に沿って切断した状態を示す側断面図である。
【図8】図7に示すセンサの半導体基板210の構成を示す上面図である。
【符号の説明】
【0037】
5:地中
10,10A,10B:三次元加速度センサ
20:演算手段
30:記憶手段
40:判定手段
50:選択器
100:ピエゾ抵抗素子を用いた三次元加速度センサ
110:半導体基板
111:変位部
112:可撓部
113:固定部
114:溝部
120:台座
130:重錘体
140:ベース基板
200:容量素子を用いた三次元加速度センサ
210:半導体基板
220:台座
230:重錘体
240:ベース基板
250:蓋基板
A:演算手段による演算結果
A0:記憶手段に記憶された基準値
E0〜E5:電極
J:判定信号
Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4:ピエゾ抵抗素子
αx,αy,αz:加速度検出値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
XYZ三次元直交座標系において、作用した加速度の各座標軸成分αx,αy,αzをそれぞれ電気信号として出力する三次元加速度センサと、
前記電気信号に基づいて、前記三次元加速度センサが検出した三次元加速度ベクトルの大きさを示す値を求める演算を行い、演算結果Aを出力する演算手段と、
前記三次元加速度センサに重力加速度のみが作用したときの前記演算手段による演算結果として得られる重力加速度ベクトルの大きさを示す値を基準値A0として予め記憶している記憶手段と、
前記演算手段による演算結果Aと前記記憶手段に記憶されている基準値A0とを比較し、両者が一致している場合は、前記三次元加速度センサが静止状態にある旨の判定結果を出力し、両者が不一致の場合は、前記三次元加速度センサが運動状態にある旨の判定結果を出力する判定手段と、
を備えることを特徴とする加速度検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の加速度検出システムにおいて、
演算手段が、A=(αx+αy+αz1/2なる演算もしくはA=αx+αy+αzなる演算を行い、演算結果Aを得ることを特徴とする加速度検出システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加速度検出システムと、
心筋に対する収縮/拡張動作のタイミングを指示する電気パルスを発生させるパルス発生部と、
前記加速度検出システムの判定結果に基づいて、前記パルス発生部が発生する電気パルスの周期を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする心臓用ペースメーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−267112(P2006−267112A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104096(P2006−104096)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【分割の表示】特願平8−185547の分割
【原出願日】平成8年6月26日(1996.6.26)
【出願人】(390013343)株式会社ワコー (34)
【Fターム(参考)】