説明

加飾パネル

【課題】加飾パネルを被装着物に容易かつ確実に取り付けることができるようにするとともに、加飾パネルの意匠性の低下を防止する。
【解決手段】基材本体部19の表面の外周縁部に、外周縁部を除く領域の平坦部23と段差なく連続して外側程裏側に位置するよう凸状に湾曲する曲面部25を設ける。側壁部21に、突出端側の一部又は突出長さ全体に亘って基材本体部19の外周縁よりも所定の壁厚W分だけ内方に後退した後退面27を形成する。後退面27の基端側の端縁から上記所定の壁厚W分だけ外側までの領域が、光Lが曲面部25で屈折することにより基材本体部19の表側から見えなくなる不可視部領域Rを構成する。側壁部21の後退面27に、インストルメントパネル1に取り付けるためのクリップ31を位置決め固定する位置決め部29を不可視部領域R内に位置するように一体に突設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な樹脂材からなる基材の裏面に加飾樹脂膜層が形成された加飾パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗膜層の上に透明層を厚く設けて深みのある意匠を創出した加飾パネルとして、透明な樹脂材からなる基材の裏面に加飾樹脂膜層を形成し、上記基材を透明層としたものが一般に知られている。
【0003】
特許文献1では、透明な樹脂材からなる基材の裏面に加飾樹脂膜層を形成した加飾パネルを両面接着テープによりドアトリム等の被装着物に接着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−240645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1では、加飾パネルを両面接着テープを介して被装着物に取り付ける際、一旦位置をずらして接着してしまうと、それを剥がして再度接着し直さなければならず、また剥がすのも困難である。そのため、取付けの際の位置決めを慎重に行わなければならず作業性が悪い。また、接着してから長時間が経過すると周囲の温度や湿度等の影響により接着剤の質が劣化して剥がれてしまうことがあり、取付機能の信頼性が乏しい。
【0006】
一方、加飾パネルをより確実にドアトリム等の被装着物に取り付けるには、基材の裏面に係合片部を一体に突設して該係合片部を被装着物に形成された被係合部に係合することが考えられる。しかしこの場合には、係合片部突設箇所で、透明基材の厚みが急激に変化する。この透明基材の厚みの変化は、透明層の深みの急激な差としてパネル表面側から目立って見えてしまい意匠性が低下するという問題がある。
【0007】
また、加飾パネルとは別の取付具に係合片部を設け、加飾パネルにその取付具を組付けるようにしても、加飾パネルに取付具の位置決め部を設ける必要があるので、上記位置決め部が透明基材の厚みの急激に変化する箇所となり、パネル表面側から目立って見えてしまい意匠性が低下する問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加飾パネルを被装着物に容易かつ確実に取り付けることができるようにするとともに、加飾パネルの意匠性の低下を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、光の屈折により表側から見えなくなる加飾パネルの裏側の領域を利用して加飾パネルに取付具の位置決め部を設けたことを特徴とする。
【0010】
具体的には、本発明は、透明な樹脂材からなる基材の裏面に加飾樹脂膜層が形成された加飾パネルを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記基材は、板状の基材本体部と、該基材本体部の裏面の外周縁部に該基材本体部と直交するように一体に突設された側壁部とを有し、上記基材本体部の表面の外周縁部を除く領域は、略平坦に形成された平坦部を構成している一方、上記基材本体部の表面の外周縁部は、上記平坦部と段差なく連続して外側程裏側に位置するよう凸状に湾曲する曲面部を構成し、上記側壁部は、突出端側の一部又は突出長さ全体に亘って上記基材本体部の外周縁よりも所定の壁厚分だけ内方に後退した後退面を有し、かつ該後退面の基端側の端縁から上記所定の壁厚分だけ外側までの領域は、光が上記曲面部で屈折することにより基材本体部の表側から見えなくなる不可視部領域を構成し、上記側壁部の後退面には、被装着物に取り付けるための取付具を位置決め固定する位置決め部が上記不可視部領域内に位置するように一体に突設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、加飾パネルは取付具を介して被装着物に取り付けられるので、加飾パネルを被装着物に容易に、かつ確実に取り付けることができる。
【0013】
また、加飾パネルに必要な取付具の位置決め部は不可視部領域に位置して加飾パネルの表側から見えないので、意匠性が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る加飾パネルが取り付けられた自動車のインストルメントパネルの略左半分を示す正面図である。
【図2】図3のA−A線に相当する断面図である
【図3】実施形態に係る加飾パネルの斜視図である。
【図4】実施形態に係る加飾パネルの外周縁部を裏側から見た拡大底面図である。
【図5】実施形態に係る加飾パネルの長手方向略半分を裏側から見た斜視図である。
【図6】実施形態に係る加飾パネルの曲面部に入射する光の進行方向を示す図2相当図である。
【図7】実施形態における基材の長手方向端部を表側から見た平面図である。
【図8】実施形態におけるクリップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、被装着物としての自動車用インストルメントパネル1を示す。該インストルメントパネル1の助手席側には、車両幅方向に帯状に延びる略矩形状のパネル装着箇所3が形成され、当該パネル装着箇所3には、本発明の実施形態に係る略矩形帯状の加飾パネル5が装着されてインストルメントパネル1に取り付けられている。
【0017】
上記パネル装着箇所3は、図1及び図2に示すように、車両後方を向いている前面部7に対して略面直方向に沿って車両前方に延びるように一体に形成された略矩形環状の側面部9と、該側面部9の車両前端縁に一体に形成された底面部11とで凹状に形成されている。上記底面部11の車両上端縁近傍及び下端縁近傍には、矩形状の貫通孔13が、それぞれ車幅方向に間隔をあけて3つずつ形成されている。
【0018】
図2に示すように、上記加飾パネル5は、射出成形された透明な樹脂材からなる基材15を備えている。この基材15は、略帯板状の基材本体部19と、該基材本体部19の裏面の外周縁部の全周に亘って該基材本体部19と直交するように一体に突設された側壁部21とを有している。上記基材15の裏面、すなわち基材本体部19の裏面と、側壁部21の内側面及び端面とには、水圧転写によって加飾樹脂膜層17が形成されている。これにより、基材本体部19は、加飾樹脂膜層17の上に厚い透明層を形成している。
【0019】
上記側壁部21は、図3及び図5に示すように、長手方向に延びる部分の一端でその端面がなだらかに傾斜して幅方向に延びる部分の突出高さが長手方向に延びる部分の突出高さよりも低くなっている。これは上記基材15の裏面に上記加飾樹脂膜層17を水圧転写によって形成するために有効で、基材15を側壁部21の長手方向一端が他端よりも下側に位置するように傾けて水中に没入させたとき、基材15と樹脂膜との間にあるエアが上方に移動して上記側壁部21の長手方向他端から排出されやすい。
【0020】
上記基材本体部19の表面の外周縁部を除く領域は、略平坦に形成されて平坦部23を構成している。一方、上記基材本体部19の表面の外周縁部は、全周に亘って上記平坦部23と段差なく連続して外側程裏側に位置するよう凸状に湾曲して曲面部25を構成している。
【0021】
上記基材15の側壁部21は、突出端側の一部に上記基材本体部19の外周縁よりも所定の壁厚W分だけ内方に後退した後退面27を全周に亘って有している。後退面27の基端側の端縁から上記所定の壁厚W分だけ外側までの領域は、上記曲面部25の直下に位置し、図6に示すように、光Lが上記曲面部25で屈折することにより基材本体部19の表側から見えなくなる不可視部領域Rを構成している。
【0022】
上記側壁部21の後退面27には、位置決め部29が、長手方向に延びる各周縁にそれぞれ3箇所ずつ間隔をあけて上記不可視部領域R内に位置するように外側方に一体に突設されている。これら位置決め部29は、上記インストルメントパネル1の貫通孔13に対応している。各位置決め部29は、側壁部21の突出方向から見て略矩形状に形成され、側壁部21の突出方向略全体を占めている。該位置決め部29の外側方への突出高さHは上記壁厚Wの半分程度となっている。
【0023】
図7は、基材15を表側から見た平面図を示す。図7では、後退面27及び位置決め部29周縁の実際の位置を仮想線で示すとともに、表側から見える後退面27の周縁を27’の符号を付して実線で示している。光Lが曲面部25で屈折することにより後退面27の内側の側壁部21が拡大されて後退面27の内側の側壁部21を除く領域が不可視部領域Rを構成するので、この不可視部領域Rに位置決め部29が収まって隠れている。
【0024】
また、上記表側から見える後退面27の内側の側壁部21の突出高さは、周方向で急激に変化することがないので、基材15の厚みの変化が透明層の深みの急激な差として目立つことがなく加飾パネル5の意匠性が損なわれない。
【0025】
上記側壁部21には、上記位置決め部29を位置基準として、図2及び図4に示すように、取付具としての板状の金属製クリップ31が取り付けられる。
【0026】
このクリップ31は、図8に詳しく示すように、略コ字状に屈曲して上記側壁部21の突出端側を挟み込む矩形板状の1対の挟持部33を有している。これら挟持部33における上記側壁部21の一側面に対応する面には、爪部35が切り起こして形成されている。上記挟持部33の爪部35形成面は、矩形状の連結板部37により互いに面一となるように連結され、挟持部33と連結板部37との境界には、スリット39が挟持部33の反屈曲側で上記境界の中程まで延びるように形成されている。上記連結板部37の反スリット39側には、略V字状をなす可撓性の係合片部41が一体に突設されている。
【0027】
そして、上記各位置決め部29形成箇所の両側の側壁部21を上記クリップ31の挟持部33で挟み込んでクリップ31を位置決め部29に位置決め固定し、この状態でクリップ31の係合片部41を上記インストルメントパネル1の貫通孔13に係合させることで、加飾パネル5をインストルメントパネル1に取り付けるようになっている。
【0028】
このように、加飾パネル5は位置決め部29に固定したクリップ31を介してインストルメントパネル1に取り付けられるので、加飾パネル5をインストルメントパネル1に容易に、かつ確実に取り付けることができる。
【0029】
また、加飾パネル5の取付けに必要なクリップ31の位置決め部29が不可視部領域Rに形成されて加飾パネル5の表側から見えないので、意匠性が低下しない。
【0030】
なお、上記実施形態では、後退面27を側壁部21の突出端側の一部に形成したが、突出長さ全体に亘って形成してもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、加飾樹脂膜層17を水圧転写により形成したが、塗装により形成してもよく、その場合、側壁部21の高さを全周に亘って一定にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、透明な樹脂材からなる基材の裏面に加飾樹脂膜層が形成された加飾パネルとして有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 インストルメントパネル(被装着物)
5 加飾パネル
15 基材
17 加飾樹脂膜層
19 基材本体部
21 側壁部
23 平坦部
25 曲面部
27 後退面
29 位置決め部
31 クリップ(取付具)
L 光
R 不可視部領域
W 所定の壁厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な樹脂材からなる基材(15)の裏面に加飾樹脂膜層(17)が形成された加飾パネルであって、
上記基材(15)は、板状の基材本体部(19)と、該基材本体部(19)の裏面の外周縁部に該基材本体部(19)と直交するように一体に突設された側壁部(21)とを有し、
上記基材本体部(19)の表面の外周縁部を除く領域は、略平坦に形成された平坦部(23)を構成している一方、上記基材本体部(19)の表面の外周縁部は、上記平坦部(23)と段差なく連続して外側程裏側に位置するよう凸状に湾曲する曲面部(25)を構成し、
上記側壁部(21)は、突出端側の一部又は突出長さ全体に亘って上記基材本体部(19)の外周縁よりも所定の壁厚(W)分だけ内方に後退した後退面(27)を有し、かつ該後退面(27)の基端側の端縁から上記所定の壁厚(W)分だけ外側までの領域は、光(L)が上記曲面部(25)で屈折することにより基材本体部(19)の表側から見えなくなる不可視部領域(R)を構成し、
上記側壁部(21)の後退面には、被装着物(1)に取り付けるための取付具(31)を位置決め固定する位置決め部(29)が上記不可視部領域(R)内に位置するように一体に突設されていることを特徴とする加飾パネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate