説明

加飾成形体およびその製造方法

【課題】鮮やかな虹彩色を呈する加飾成形体の製造方法および該製造方法により得られる加飾成形体を提供する。
【解決手段】加飾成形体は、樹脂成形体11と、該樹脂成形体11上に順に積層される定着層12及び装飾層13とを備える。装飾層13は、複数の有機ポリマー球状微粒子15(粒子15)が規則的に整合されて形成される。この加飾成形体は、樹脂成形体11を成形する第1の工程と、樹脂成形体11の下面11aに定着層12を形成する第2の工程と、粒子15および分散媒体を混合して分散液を調製した後、該分散液を定着層12の表面12aに塗布するとともに分散媒体を蒸発させて装飾層13を形成する第3の工程とを備える。定着層12は、分散媒体に対する不溶性を有するとともに第3の工程において分散媒体の定着層への移行を抑制し、且つ少なくとも第3の工程において粘着性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、例えば携帯電話機の筐体、液晶パネル、バッテリーカバー、及び入力部等に使用され、装飾性が高い加飾成形体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の電子機器には、入射光の反射角度に応じて反射光の色調を虹彩色に変化させる装飾層を備えた部品が用いられている。例えば、携帯電話機の入力部として、無機物薄膜からなる装飾層が設けられたキートップ(例えば特許文献1〜5参照)、及び液晶性配向高分子フィルムが設けられたキートップ(例えば特許文献6,7参照)が挙げられる。また、特許文献8には、下地シートと、該下地シート上に積層された装飾層とを有するカラーシートが開示されている。この装飾層は規則的に整合された球状粒子によって構成され、樹脂バインダーによって積層されている。
【特許文献1】特開平10−289633号公報
【特許文献2】特開平11−176273号公報
【特許文献3】特開平11−260182号公報
【特許文献4】特開平11−329144号公報
【特許文献5】特開2000−222967号公報
【特許文献6】特開2001−167654号公報
【特許文献7】特開2002−324453号公報
【特許文献8】特開2004−276492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、上記従来技術とは異なる装飾層を備え、鮮やかな虹彩色を呈する加飾成形体の製造方法および該製造方法により得られる加飾成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、樹脂成形体と、該樹脂成形体の表面に設けられる装飾層と、該樹脂成形体および装飾層の間に設けられ、装飾層を樹脂成形体に定着させる定着層とを備え、光源から照射された光を装飾層で選択的に反射する加飾成形体であって、前記装飾層が、該装飾層の表面に平行な方向と装飾層の厚さに沿った方向とに沿って複数の有機ポリマー球状微粒子が規則的に整合されることにより形成され、前記有機ポリマー球状微粒子の表面の色が黒色系無彩色に設定され、且つ有機ポリマー球状微粒子の平均粒子径が100〜500nmの範囲に設定されている加飾成形体の製造方法において、前記樹脂成形体を成形する第1の工程と、前記樹脂成形体の表面に定着層を設ける第2の工程と、前記有機ポリマー球状微粒子および分散媒体を混合して分散液を調製した後、該分散液を前記定着層の表面に塗布するとともに前記分散媒体を蒸発させて装飾層を設ける第3の工程とを備え、前記定着層は、前記分散媒体に対する不溶性を有するとともに前記第3の工程において分散媒体の定着層への移行を抑制し、且つ少なくとも前記第3の工程において粘着性を有する加飾成形体の製造方法を提供する。
【0005】
請求項2に記載の発明は、前記第2の工程が粘着剤を用いて定着層を設ける工程である請求項1に記載の加飾成形体の製造方法を提供する。
請求項3に記載の発明は、フィルムからなる保護層を前記装飾層に積層する第4の工程を更に備える請求項1又は請求項2に記載の加飾成形体の製造方法を提供する。
【0006】
請求項4に記載の発明は、前記装飾層の表面に液状をなす高分子組成物を塗布した後、該高分子組成物を固化させて前記装飾層上に保護層を設ける第4の工程を更に備える請求項1又は請求項2に記載の加飾成形体の製造方法を提供する。
【0007】
請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される加飾成形体を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鮮やかな虹彩色を呈する加飾成形体を容易に製造することができる加飾成形体の製造方法が提供される。また本発明によれば、そうした製造方法によって製造される加飾成形体も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を加飾成形体に具体化した一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
電子機器、例えば携帯電話機には、加飾成形体からなる各種部品が配設されている。前記部品としては、例えばキートップ、液晶パネル、筐体、及びバッテリーカバーが挙げられる。図1(a)には、上記部品を構成する加飾成形体が示されている。この加飾成形体は、平板状の樹脂成形体11と、該樹脂成形体11の表面を構成する下面11a上に形成された定着層12と、該定着層12の表面12a上に形成された装飾層13と、該装飾層13の表面13a上に形成された保護層14とを備えている。この加飾成形体の上方または下方には図示しない光源が配設されており、該光源から可視光領域における特定波長(380〜780nm)を有する光が加飾成形体に照射された後、装飾層13によって選択的に反射される。
【0010】
樹脂成形体11は、例えばポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、シリコーン樹脂、又はウレタン樹脂により所定形状(本実施形態では平板状)に成形されている。
【0011】
定着層12は樹脂成形体11と装飾層13との間に介在されており、装飾層13を樹脂成形体11に定着(固定)させる。更に、定着層12は、以下の(1)〜(3)の特徴を有する。
【0012】
(1)装飾層13の形成時に用いられる分散媒体に対する不溶性を有すること。
(2)前記装飾層13の形成時における前記分散媒体の定着層12への移行(吸収)を抑制すること。
【0013】
(3)少なくとも装飾層13の形成時に粘着性を有すること。
前記(3)項において、定着層12は、装飾層13の形成時のみ粘着性を有してもよいが、好ましくは常に粘着性を有している。装飾層13の形成時のみ粘着性を有する定着層12を形成する材料としては、例えば塗料(インク)及び接着剤等の固化後に高分子膜を形成するものが挙げられる。塗料および接着剤は液状をなし、時間の経過とともに固化することによって被着体を基材に貼付ける。そして、塗料および接着剤は、それらが液状のとき、及び完全に固化したときには粘着性を有さないものの、液体から固体への相変化の途中では粘着性を有する。そのため、塗料および接着剤によって定着層12が形成されるときには、装飾層13は、塗料および接着剤の液体から固体への相変化が途中の状態で形成される。一方、常に粘着性を有する定着層12を形成する材料としては、例えば粘着剤が挙げられる。粘着剤は通常の加飾成形体の製造時の温度である常温(25℃)で粘着性を常に有し、その粘着性に基づいて被着体を基材に貼付する。
【0014】
塗料の具体例としては、例えば1液型ウレタンエマルジョン樹脂塗料および2液硬化型ウレタン樹脂塗料が挙げられる。接着剤の具体例としては、例えば反応硬化型接着剤および熱硬化型接着剤が挙げられる。粘着剤の具体例としては、例えばアクリル系粘着剤、ビニル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、及びゴム系粘着剤が挙げられる。アクリル系粘着剤の具体例としては、綜研化学(株)製のSKダイン1495及びSKダイン1473Hが挙げられる。SKダイン1495の粘着力は39.4N/mであり、SKダイン1473Hの粘着力は196N/mである。これらの粘着力は、ステンレス鋼製の被着体およびPET製の基材を用い、JIS Z 0237の180度引き剥がし試験(300mm/min)に従って測定される。
【0015】
図1(b)に示すように、装飾層13は、該装飾層13の表面に平行なX方向と装飾層13の厚さに沿ったY方向とに沿って複数の有機ポリマー球状微粒子15が規則的に整合されることにより形成されている。即ち、装飾層13は、複数の有機ポリマー球状微粒子15が前記X方向に沿って互いに近接するように配設されて形成される複数の有機ポリマー球状微粒子層が、前記Y方向に沿って積層されることにより形成されている。このとき、前記Y方向に沿って隣り合う各有機ポリマー球状微粒子15は、図1(b)及び図7に示すように最密充填される。有機ポリマー球状微粒子層は、反射光が鮮明な色彩を呈するとともに反射光の色味がよいことから、好ましくは2層以上積層される。
【0016】
有機ポリマー球状微粒子15の材質の具体例としては、例えば、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル−スチレン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、フッ素置換メタクリル系樹脂、フッ素置換アクリル系樹脂、フッ素置換メタクリル−スチレン系樹脂、フッ素置換アクリル−スチレン系樹脂、フッ素置換スチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリクリル酸メチル、テトラフルオロエチレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリベンジルメタクリレート、ポリフェニレンメタクリレート、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、及びポリスチレン−アクリロニトリル共重合体が挙げられる。これらの中でも、耐候性に優れて樹脂自体の光劣化変色が起き難いことから、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル−スチレン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、フッ素置換メタクリル系樹脂、フッ素置換アクリル系樹脂、フッ素置換メタクリル−スチレン系樹脂、フッ素置換アクリル−スチレン系樹脂、及びフッ素置換スチレン系樹脂から選ばれる少なくとも一種が好ましい。有機ポリマー球状微粒子15は、上記具体例以外にも、必要に応じて例えば、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤、帯電付与剤、分散安定剤、消泡剤、又は安定剤を含有してもよい。
【0017】
有機ポリマー球状微粒子15の表面の色は黒色系無彩色に設定されている。黒色系無彩色は、マンセル色票で表される明度が5以下である無彩色を意味しており、マンセル色票で表される明度が3以下である無彩色が好ましい。有機ポリマー球状微粒子15の表面の色が黒色系無彩色に設定されることにより、有機ポリマー球状微粒子15に照射された光の一部が有機ポリマー球状微粒子15によって散乱したり有機ポリマー球状微粒子15を透過したりすることによって生じる迷光を、有機ポリマー球状微粒子15が効果的に吸収することができる。黒色系の具体例としては、例えば灰色、黒褐色、及び黒色が挙げられる。有機ポリマー球状微粒子15の表面の色は、例えば有機ポリマー球状微粒子15の製造の際に該有機ポリマー球状微粒子15の原料に顔料が混合されたり、製造された有機ポリマー球状微粒子15の表面に塗料が塗布されたりすることによって設定される。
【0018】
有機ポリマー球状微粒子15の平均粒子径は100〜500nmの範囲に設定されている。有機ポリマー球状微粒子15の平均粒子径が上記範囲に設定されることにより、有機ポリマー球状微粒子15に照射された前記光は、有機ポリマー球状微粒子によって効果的に回折干渉されて赤、青、緑等の特定の有彩色を発色する波長領域光として分光反射される。有機ポリマー球状微粒子15の平均粒子径は、反射光の色彩がより鮮明になることから、好ましくは150〜350nmの範囲に設定される。有機ポリマー球状微粒子15の平均粒子径は、有機ポリマー球状微粒子15の体積に基づいて算出される。有機ポリマー球状微粒子15の体積に基づいて有機ポリマー球状微粒子15の平均粒子径を算出する方法としては、例えば沈降法が挙げられる。
【0019】
有機ポリマー球状微粒子15のCv(Coefficient of Variation)値は、装飾層13の形成の際に各有機ポリマー球状微粒子15が規則的に整合されることが容易であることから、好ましくは5%以下である。このCv値は複数の有機ポリマー球状微粒子15の平均粒子径の均一さを示し、その値が小さいほど複数の有機ポリマー球状微粒子15の平均粒子径が均一である。Cv値は、有機ポリマー球状微粒子15の平均粒子径と、標準偏差とを用いて下記式(1)により求められる。
【0020】
Cv値(%)=(標準偏差(nm)/平均粒子径(nm))×100 …(1)
Cv値が5%以下では、複数の有機ポリマー球状微粒子15の平均粒子径が揃っていることから、有機ポリマー球状微粒子15は単分散粒子である。Cv値は、反射光の色彩がより鮮やかになるとともに反射光の色味がよいことから、好ましくは3%以下である。
【0021】
保護層14は、装飾層13が定着層12から剥離したり変色したりすることを防止して装飾層13を保護する。保護層14の材質は該保護層14が上記作用を発揮することができるものであれば特に限定されないが、装飾層13の発色を外方から明確に視認するために、透光性を有し、且つ装飾層13を形成する有機ポリマー球状微粒子15の屈折率と異なる屈折率を有するものが好ましい。
【0022】
加飾成形体の上方に前記光源が配設されているとき、即ち樹脂成形体11及び定着層12が前記光源と装飾層13との間に位置しており、且つ保護層14が前記光源と装飾層13との間に位置していないときには、少なくとも樹脂成形体11及び定着層12が透光性を有し、好ましくは保護層14も透光性を有する。これにより、光源から加飾成形体に照射された光が装飾層13に容易に到達する。このとき、装飾層13からの反射光は加飾成形体の上方から容易に視認され、保護層14も透光性を有することにより、加飾成形体の下方からも容易に視認される。一方、加飾成形体の下方に前記光源が配設されているとき、即ち保護層14のみが前記光源と装飾層13との間に位置しており、樹脂成形体11及び定着層12が前記光源と装飾層13との間に位置していないときには、上述と同様の効果を得るために、少なくとも保護層14が透光性を有し、好ましくは樹脂成形体11及び定着層12も透光性を有する。このとき、装飾層13からの反射光は加飾成形体の下方から容易に視認され、樹脂成形体11及び定着層12も透光性を有することにより、加飾成形体の上方からも容易に視認される。
【0023】
加飾成形体は、樹脂成形体11を成形する第1の工程、該樹脂成形体11の下面11a上に定着層12を形成する第2の工程、該定着層12の表面12a上に装飾層13を形成する第3の工程、及び装飾層13の表面13a上に保護層14を形成する第4の工程を経て製造される。第1の工程では、例えば樹脂の射出成形により樹脂成形体11が平板状に成形される。
【0024】
第2の工程において、定着層12が塗料または接着剤によって形成されるときには、まず樹脂成形体11の下面11a全体にわたって液状の塗料または接着剤が塗布される。次いで、液状の塗料または接着剤が公知の手段によって固化されることにより、定着層12が形成される。このとき、第3の工程において定着層12が粘着性を有するために、塗料および接着剤が完全に固化する前に第3の工程が行われる。一方、定着層12が粘着剤によって形成されるときには、樹脂成形体11の下面11a全体にわたって液状の粘着剤が塗布されることにより、定着層12が形成される。
【0025】
第3の工程では、まず複数の有機ポリマー球状微粒子15及び分散媒体を混合して分散液を調製する。分散媒体の種類は、分散液中において、有機ポリマー球状微粒子15がその表面の色を黒色系無彩色に維持し、且つ溶解することなく分散されているものであれば特に限定されないが、水系および溶解水を含有する非水系が好ましい。水系および溶解水を含有する非水系は、水が有する比較的大きな表面張力により、有機ポリマー球状微粒子15を水の蒸発とともに配列整合させることができる。次いで、分散液が前記定着層12の表面12a全体にわたって塗布された後、公知の手段によって分散媒体が蒸発される。分散液の塗布は、上述したように定着層12が粘着性を維持した状態で行われ、分散媒体の蒸発に伴って、分散液中の各有機ポリマー球状微粒子15が前記X方向およびY方向に沿って規則的に整合されて装飾層13が形成される。
【0026】
このとき、定着層12が塗料または接着剤によって形成されるときには、上述のように粘着性を有する程度にまで塗料または接着剤が固化していることから、有機ポリマー球状微粒子15の定着層12中への拡散が防止される。また、定着層12が粘着剤によって形成されるときには、その粘着性に起因して有機ポリマー球状微粒子15の定着層12中への拡散が防止される。更に、定着層12が分散媒体に対する不溶性を有することから、分散液の塗布の際に定着層12が溶解して有機ポリマー球状微粒子15が定着層12中に拡散することが防止される。そして、定着層12に隣接する各有機ポリマー球状微粒子15は、定着層12の粘着性によって定着層12上に固定される。
【0027】
第4の工程では、保護層14を構成するフィルムを形成した後、該フィルムを例えば熱転写によって前記装飾層13上に積層することにより保護層14を形成する。樹脂成形体11の一部にのみ装飾層13が形成されているときには、フィルムが、装飾層13と樹脂成形体11において装飾層13が形成されていない箇所とに例えば熱転写されること、即ちフィルムと装飾層13とが互いに接着されていることが好ましい。また、装飾層13の表面13a全体にわたって液状をなす高分子組成物を塗布した後、公知の手段によって高分子組成物を固化させることにより保護層14を形成する。液状をなす高分子組成物としては、例えば保護層14を形成する高分子の溶液または分散液、重合性有機モノマー液、及び無機バインダー液が挙げられる。これらは通常、塗料(インク)として用いられている。高分子の分散液としては、例えば水性ウレタン樹脂エマルジョンが挙げられる。
【0028】
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態の加飾成形体では、有機ポリマー球状微粒子15が前記X方向およびY方向に沿って規則的に整合されているとともに、有機ポリマー球状微粒子15の平均粒子径が上記範囲に設定されている。そのため、各有機ポリマー球状微粒子15に照射された光は、下記式(2)及び(3)で示されるブラッグ反射式およびその近似式に従って効果的に回折干渉され、前記特定の有彩色を発色する波長領域光として分光反射される。装飾層13からの反射光は、その反射角度に応じて色調を変化させることができ、鮮やかな虹色彩を呈する。以上のことから、加飾成形体は装飾層13による光干渉作用に基づいて鮮やかな虹色彩を呈し、美観に優れて高級感を増すことができる。下記式(2)及び(3)において、mは回折次数を示し、λは光の波長(nm)を示し、nは屈折率を示し、Dは格子間隔(nm)を示し、θは試料面の法線方向を0度としたときの観察角度を示し、dは有機ポリマー球状微粒子15の平均粒子径(nm)を示す。
【0029】
mλ=2nDcosθ …(2)
【0030】
【数1】

・ 前記第3の工程では、各有機ポリマー球状微粒子15の定着層12への拡散が防止されている。さらに、上述のように分散媒体の定着層12への移行が抑制されていることから、分散媒体は主に蒸発によって分散液から除かれる。各有機ポリマー球状微粒子15が規則的に整合されるためには一定の時間が必要である。そのため、本実施形態では、蒸発によって分散液から分散媒体を徐々に除くことによって、上記一定の時間を確保している。以上のことから、本実施形態の製造方法は、前記拡散に起因して各有機ポリマー球状微粒子15の整合が不規則になったり、各有機ポリマー球状微粒子15が短時間で整合されることによって該整合が不規則になったりすることに起因する反射光の発色の低下を防止して、鮮やかな虹色彩を呈する加飾成形体を製造することができる。
【0031】
これに対して、例えば分散媒体が水であり、且つ定着層12が吸水性高分子によって形成されている場合には、第3の工程において分散媒体が容易に定着層12に吸収されることから、上記一定の時間を確保することができず各有機ポリマー球状微粒子15の整合が不規則になる。また、例えば分散媒体が水であり、且つ定着層12が水溶性高分子によって形成されている場合には、第3の工程において分散液中の水によって定着層12が溶解することから、各有機ポリマー球状微粒子15が定着層12中に容易に拡散して整合が不規則になる。水溶性高分子としては、例えばヒドロキシエチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。更に、多孔質膜を用いて定着層12を形成した場合、第3の工程において分散媒体が容易に定着層12に吸収されることから、上記一定の時間を確保することができず各有機ポリマー球状微粒子15の整合が不規則になる。
【0032】
例えば定着層12を形成する液状の樹脂バインダーと各有機ポリマー球状微粒子15とを混合して混合液を調製した後、該混合液の樹脂成形体11の下面11aへの塗布および固化を行って定着層12及び装飾層13を同時に形成する場合には、装飾層13中の各有機ポリマー球状微粒子15間に樹脂バインダーが存在する。そのため、各有機ポリマー球状微粒子15は規則的に整合することができず、製造された加飾成形体は鮮やかな虹色彩を呈さない。第2の工程において液状の接着剤を塗布した後、該接着剤が液状を保持した状態で第3の工程として分散液を塗布する場合には、分散液中の有機ポリマー球状微粒子15が接着剤中に容易に拡散することから、各有機ポリマー球状微粒子15を規則的に整合することができない。
【0033】
・ 第3の工程では、定着層12が粘着性を有した状態で装飾層13の形成が行われることから、定着層12は、形成された装飾層13を樹脂成形体11に容易に定着させることができる。これに対して、第3の工程において接着剤が完全に固化して定着層12が粘着性を有していない状態で分散液を塗布する場合には、定着層12に隣接する各有機ポリマー球状微粒子15が定着層12上に固定されないことから、定着層12は装飾層13を樹脂成形体11に定着させることができない。
【0034】
・ 前記第2の工程および第3の工程では、定着層12を形成する材料および分散液の塗布によって定着層12及び装飾層13が形成されている。そのため、定着層12及び装飾層13は、樹脂成形体11の下面11aの形状に関係なく容易に形成される。これに対して、例えば装飾層13が無機物薄膜によって形成される場合には、無機物の蒸着やスパッタリングのような手段によって装飾層を形成する必要があり、加飾成形体の製造コストが嵩むおそれがある。また、装飾層13が液晶性配向高分子フィルムによって形成される場合、樹脂成形体11の下面11aの形状によっては前記フィルムの樹脂成形体11への載置が困難になることから、加飾成形体の製造が困難になるおそれがある。更に、液晶性配向高分子は鮮やかな色調を有するものの、耐熱性および物理的安定性が低いことから、例えば200℃前後の高温に晒されると色調の鮮明さを容易に失う。
【0035】
・ 前記第4の工程では、保護層14を形成するフィルムの例えば前記装飾層13への熱転写によって保護層14が形成されている。そのため、保護層14の形成の際に、例えば外方に位置する有機ポリマー球状微粒子層中の各有機ポリマー球状微粒子15が移動して規則的な整合が乱れることを容易に防止することができる。
【0036】
また、第4の工程では、液状をなす高分子組成物の塗布および固化によっても保護層14を形成することができる。この場合、保護層14を構成するフィルムを予め形成する必要がなく、装飾層13の表面13aの形状に関係なく保護層14を容易に形成することができる。
【0037】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記光は、可視光領域における特定波長(380〜780nm)に加えて、他の波長を有してもよい。
【0038】
・ 前記定着層12は、それを形成するフィルムの樹脂成形体11の下面11aへの貼付によって形成されてもよい。この場合、定着層12を形成するフィルムは、少なくとも第3の工程において粘着性を有するものであり、例えば両面粘着テープが挙げられる。
【0039】
・ 保護層14は、定着層12と同一の材料によって形成されてもよいし、省略されてもよい。
【実施例】
【0040】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。各実施例および各比較例で用いた有機ポリマー球状微粒子15の性質および加飾成形体の色調変化を表1に示す。表1において、“反射光の色彩”欄における“0度”欄中の色は、前記Y方向から装飾層13を観察した際の反射光の色を示し、“↓”欄中の色は、前記Y方向とX方向との間から装飾層13を観察した際の反射光の色を示し、“90度”欄中の色は、前記X方向から装飾層13を観察した際の反射光の色を示す。
【0041】
(実施例1)
実施例1の加飾成形体を図1(a)に示す。図1(a)は、加飾成形体としての液晶パネルを示す断面図である。
【0042】
透明なPMMA樹脂の射出成形により、平板状の樹脂成形体11を製造した。次に、樹脂成形体11の下面11a全体にわたって粘着剤としてのSKダイン1473H(綜研化学社製 アクリル系粘着剤)を塗布して定着層12(厚さ:5μm)を形成した。また、黒色染料を用いて有機ポリマー球状微粒子としてのPMMA単分散球状微粒子(平均粒子径:180nm、Cv値:3%)の表面を黒色系無彩色に着色した後、PMMA単分散球状微粒子を水に分散させて分散液を調製した。そして、前記分散液を定着層12の表面12a全体にわたって塗布した。続いて、分散液中の水を蒸発させて装飾層13(厚さ:20μm)を形成した。このとき、図1(b)及び図7に示すように、PMMA単分散球状微粒子は前記X方向およびY方向に沿って規則的に整合された。そして、1液型ウレタン樹脂エマルジョン(日華化学(株)製 HA−50C)を装飾層13上の表面13aに塗布することにより、保護層14(厚さ:15μm)を形成して加飾成形体としての液晶パネルを得た。得られた液晶パネルに可視光(波長:380〜780nm)を照射したところ、可視光が装飾層13において効果的に回折干渉されて赤、青、緑等の特定の有彩色を発色する波長領域光が装飾層13から分光反射された。その結果、液晶パネルは、光の反射角度に応じて青色から紫色の光を反射し、色調の変化に基づく虹彩色を呈した。
【0043】
(実施例2)
実施例2の加飾成形体を図2に示す。図2は、加飾成形体としての筐体カバーの断面図である。
【0044】
ABS樹脂の射出成形により、有蓋筒状をなす樹脂成形体11を製造した。次に、樹脂成形体11の表面を構成する外面全体にわたって1液型水性ウレタン樹脂エマルジョン塗料としての日華化学(株)製のHA−50Cを塗布した後に常温で15分間放置して硬化させることにより、定着層12(厚さ:15μm)を形成した。そして、水性ウレタン樹脂が完全に硬化して定着層12が粘着性を失う前に実施例1と同様の分散液を定着層12の表面12a全体にわたって塗布し、分散液中の水を蒸発させて装飾層13(厚さ:20μm)を形成した。定着層12の粘着性の有無については、該定着層12の表面12aを指で触ることにより官能的に評価した。このとき、PMMA単分散球状微粒子は前記X方向およびY方向に沿って規則的に整合された。続いて、実施例1と同様にして保護層14(厚さ:15μm)を形成して加飾成形体としての筐体カバーを得た。得られた筐体カバーに可視光(波長:380〜780nm)を照射したところ、可視光が装飾層13において効果的に回折干渉されて赤、青、緑等の特定の有彩色を発色する波長領域光が装飾層13から分光反射された。その結果、筐体カバーは、光の反射角度に応じて青色から紫色の光を反射し、色調の変化に基づく虹彩色を呈した。
【0045】
(実施例3)
実施例3の加飾成形体を図3に示す。図3は、加飾成形体としてのキートップを示す断面図である。
【0046】
透明なPC樹脂の射出成形により、四角柱状の樹脂成形体11を製造した。次に、樹脂成形体11の下面11a全体にわたって1液型水性ウレタン樹脂エマルジョン塗料としての日華化学(株)製のHA−50Cを塗布した後に常温(25℃)で15分間放置して硬化させることにより、定着層12(厚さ:20μm)を形成した。この水性ウレタン樹脂塗料は、硬化後に透光性を有する。そして、水性ウレタン樹脂が完全に硬化して定着層12が粘着性を失う前に、有機ポリマー球状微粒子としてPMMA単分散球状微粒子(平均粒子径を270nm、Cv値:3%)を用いた以外は実施例1と同様の分散液を定着層12の表面12a全体にわたって塗布した。ここで、定着層12の表面12aにおいて、文字または記号を表示するための表示部16が、分散液が塗布されていない箇所によって形成されるように分散液を塗布した。定着層12の粘着性の有無については、実施例2と同様に該定着層12の表面12aを指で触ることにより官能的に評価した。続いて、分散液中の水を蒸発させて装飾層13(厚さ:20μm)を形成した。このとき、分散液中のPMMA単分散球状微粒子は前記X方向およびY方向に沿って規則的に整合された。そして、実施例1と同様にして保護層14(厚さ:15μm)を形成して加飾成形体としてのキートップを得た。得られたキートップに可視光(波長:380〜780nm)を照射したところ、可視光が装飾層13において効果的に回折干渉されて赤、青、緑等の特定の有彩色を発色する波長領域光が装飾層13から分光反射された。その結果、表示部16が保護層14の色のみで表され、表示部16以外の箇所は、光の反射角度に応じて赤色から緑色の光を反射し、色調の変化に基づく虹彩色を呈した。
【0047】
(実施例4)
実施例4の加飾成形体を図4に示す。図4は、装飾層13によって構成される表示部16を下部に有する加飾成形体としてのキートップを示す断面図である。
【0048】
透明なPC樹脂の射出成形により、四角柱状の樹脂成形体11を製造した。次に、樹脂成形体11の下面11a全体にわたって接着剤としてのY620(セメダイン(株)製 反応硬化系アクリル系接着剤)を塗布した後に硬化させて定着層12(厚さ:15μm)を形成した。この接着剤は、硬化後に透明性を有する。続いて、定着層12の表面12aにおいて表示部16に対応する箇所に、接着剤が完全に硬化して定着層12が粘着性を失う前に、実施例3と同様の分散液を定着層12の表面12aに塗布した。定着層12の粘着性の有無については、実施例2と同様に該定着層12の表面12aを指で触ることにより官能的に評価した。続いて、分散液中の水を蒸発させて装飾層13(厚さ:20μm)を形成した。このとき、PMMA単分散球状微粒子は前記X方向およびY方向に沿って規則的に整合された。そして、実施例1と同様にして保護層14(厚さ:15μm)を形成して加飾成形体としてのキートップを得た。得られたキートップに可視光(波長:380〜780nm)を照射したところ、可視光が装飾層13において効果的に回折干渉されて赤、青、緑等の特定の有彩色を発色する波長領域光が装飾層13から分光反射された。その結果、表示部16が光の反射角度に応じて赤色から緑色の光を反射し、色調の変化に基づく虹彩色を呈した。
【0049】
(実施例5)
実施例5の加飾成形体を図5に示す。図5は、定着層12及び装飾層13によって構成される表示部16を上部に有する加飾成形体としてのキートップを示す断面図である。
【0050】
ABS樹脂の射出成形により、四角柱状の樹脂成形体11を製造した。樹脂成形体11の上面において表示部16に対応する箇所には、該表示部16の形状に対応する凹部17を形成した。次に、樹脂成形体11の凹部17内に粘着剤としてのSKダイン1495(綜研化学(株)製 アクリル系粘着剤)をディスペンサーによって塗布した後に硬化させて定着層12(厚さ:10μm)を形成した。そして、有機ポリマー球状微粒子としてポリスチレン(PS)単分散球状微粒子(平均粒子径:210nm、Cv値:3%)を用いた以外は実施例1と同様の分散液を定着層12の表面12a全体にわたってディスペンサーにより塗布した。続いて、分散液中の水を蒸発させて装飾層13(厚さ:20μm)を形成した。このとき、PS単分散球状微粒子は前記X方向およびY方向に沿って規則的に整合された。形成された定着層12及び装飾層13は前記凹部17内に位置している。そして、透明なウレタン系樹脂組成物からなる着色フィルムを装飾層13の表面13a全体および樹脂成形体11の外面に積層することにより、保護層14(厚さ:15μm)を形成して加飾成形体としてのキートップを得た。このとき、装飾層13と保護層14とは互いに接着されている。得られたキートップに可視光(波長:380〜780nm)を照射したところ、可視光が装飾層13において効果的に回折干渉されて赤、青、緑等の特定の有彩色を発色する波長領域光が装飾層13から分光反射された。その結果、表示部16が光の反射角度に応じて緑色から紫色の光を反射し、色調の変化に基づく虹彩色を呈した。更に、表示部16が凹部17内に形成されていることから、表示部16が立体的に視認された。
【0051】
(実施例6)
実施例6の加飾成形体を図6に示す。図6は、定着層12及び装飾層13によって構成される表示部16を下部に有する加飾成形体としてのキートップを示す断面図である。
【0052】
透明なPC樹脂の射出成形により、四角柱状の樹脂成形体11を製造した。樹脂成形体11の下面11aにおいて表示部16に対応する箇所には、該表示部16の形状に対応する凹部17を形成した。次に、樹脂成形体11の凹部17内に1液型ウレタン系樹脂エマルジョン塗料としての日華化学(株)製のHA−15を塗布した後に硬化させて定着層12(厚さ:20μm)を形成した。そして、水性ウレタン樹脂が完全に硬化して定着層12が粘着性を失う前に、実施例5と同様の分散液を定着層12の表面12a全体にわたって塗布した。定着層12の粘着性の有無については、実施例2と同様に該定着層12の表面12aを指で触ることにより官能的に評価した。続いて、分散液中の水を蒸発させて装飾層13(厚さ:20μm)を形成した。このとき、PS単分散球状微粒子は前記X方向およびY方向に沿って規則的に整合された。形成された定着層12及び装飾層13は前記凹部17内に位置している。そして、ウレタン系樹脂組成物からなるフィルムを、装飾層13の表面13a全体を覆うように樹脂成形体11の下面11a全体にわたって積層することにより、保護層14(厚さ:15μm)を形成して加飾成形体としてのキートップを得た。このとき、装飾層13と保護層14とは互いに接着されている。得られたキートップに可視光(波長:380〜780nm)を照射したところ、可視光が装飾層13において効果的に回折干渉されて赤、青、緑等の特定の有彩色を発色する波長領域光が装飾層13から分光反射された。その結果、表示部16が光の反射角度に応じて緑色から紫色の光を反射し、色調の変化に基づく虹彩色を呈した。更に、表示部16が凹部17内に形成されていることから、表示部16が立体的に視認された。
【0053】
(比較例1)
有機ポリマー球状微粒子としてPS単分散球状微粒子(平均粒子径90nm、Cv値:3%)を用いた以外は、実施例1と同様にして液晶パネルを得た。得られた液晶パネルに可視光(波長:380〜780nm)を照射したところ、PMMA単分散球状微粒子の平均粒子径が100nm未満であることから、可視光が装飾層13において効果的に回折干渉されることはなく、反射光は黒色系の色のみを呈しており実施例1に比べて液晶パネルの美観が劣っていた。
【0054】
(比較例2)
有機ポリマー球状微粒子としてPMMA単分散球状微粒子(平均粒子径510nm、Cv値:3%)を用いた以外は、実施例1と同様にして液晶パネルを得た。得られた液晶パネルに可視光(波長:380〜780nm)を照射したところ、PMMA単分散球状微粒子の平均粒子径が500nmを超えることから、可視光が装飾層13において効果的に回折干渉されることはなく、反射光は黒色系の色のみを呈しており実施例1に比べて液晶パネルの美観が劣っていた。
【0055】
【表1】

(比較例3)
樹脂成形体11の下面11a全体にわたってヒドロキシエチルセルロース(HEC)水溶液を塗布した後、該水溶液中の水を蒸発させてHECの膜からなる定着層12を形成した以外は、実施例2と同様にして筐体カバーを得た。得られた筐体カバーに可視光(波長:380〜780nm)を照射したところ、HECがPMMA単分散球状微粒子の分散媒体である水に溶解するとともに該水が定着層12へ移行したことから、PMMA単分散球状微粒子が規則的に整合されていなかった。そのため、反射光は黒色系の色のみを呈しており、実施例2に比べて筐体カバーの美観が劣っていた。
【0056】
(比較例4)
オリジン電気社製の2液硬化型ウレタン塗料(主剤:オリジプレートZ(ポリオール)、硬化剤:ポリハードR(ポリイソシアネート))を用いて定着層12を形成し、ウレタン樹脂が完全に硬化して定着層12が粘着層を失った後に装飾層13を形成した以外は、実施例2と同様にして筐体カバーを得た。しかしながら、得られた筐体カバーは、装飾層13が樹脂成形体11に定着されていないことから、保護層14の形成時および筐体カバーの使用時に装飾層13が樹脂成形体11から容易に剥がれ落ちた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)は本実施形態に係る加飾成形体を示す断面図、(b)は有機ポリマー球状微粒子を示す断面図。
【図2】実施例2の加飾成形体を示す断面図。
【図3】実施例3の加飾成形体を示す断面図。
【図4】実施例4の加飾成形体を示す断面図。
【図5】実施例5の加飾成形体を示す断面図。
【図6】実施例6の加飾成形体を示す断面図。
【図7】装飾層中の有機ポリマー球状微粒子を撮影した電子顕微鏡写真を示す図。
【符号の説明】
【0058】
11…樹脂成形体、11a…表面を構成する下面、12…定着層、12a…表面、13…装飾層、13a…表面、14…保護層、15…有機ポリマー球状微粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形体と、該樹脂成形体の表面に設けられる装飾層と、該樹脂成形体および装飾層の間に設けられ、装飾層を樹脂成形体に定着させる定着層とを備え、光源から照射された光を装飾層で選択的に反射する加飾成形体であって、前記装飾層が、該装飾層の表面に平行な方向と装飾層の厚さに沿った方向とに沿って複数の有機ポリマー球状微粒子が規則的に整合されることにより形成され、前記有機ポリマー球状微粒子の表面の色が黒色系無彩色に設定され、且つ有機ポリマー球状微粒子の平均粒子径が100〜500nmの範囲に設定されている加飾成形体の製造方法において、
前記樹脂成形体を成形する第1の工程と、
前記樹脂成形体の表面に定着層を設ける第2の工程と、
前記有機ポリマー球状微粒子および分散媒体を混合して分散液を調製した後、該分散液を前記定着層の表面に塗布するとともに前記分散媒体を蒸発させて装飾層を設ける第3の工程とを備え、
前記定着層は、前記分散媒体に対する不溶性を有するとともに前記第3の工程において分散媒体の定着層への移行を抑制し、且つ少なくとも前記第3の工程において粘着性を有することを特徴とする加飾成形体の製造方法。
【請求項2】
前記第2の工程が粘着剤を用いて定着層を設ける工程である請求項1に記載の加飾成形体の製造方法。
【請求項3】
フィルムからなる保護層を前記装飾層に積層する第4の工程を更に備える請求項1又は請求項2に記載の加飾成形体の製造方法。
【請求項4】
前記装飾層の表面に液状をなす高分子組成物を塗布した後、該高分子組成物を固化させて前記装飾層上に保護層を設ける第4の工程を更に備える請求項1又は請求項2に記載の加飾成形体の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されることを特徴とする加飾成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−283161(P2007−283161A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110065(P2006−110065)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】