説明

加飾成形体及びキーシート

【課題】新しい立体加飾を有する加飾成形体の提供及びその立体加飾を簡易な製造技術で実現することを目的とする。
【解決手段】キートップ(加飾成形体)3は、操作者が真上から見ると、表示層5と背景層6が同一色(白色)であるため、表示層5と背景層6が同化して表示層5を視認しにくい。しかし斜めから見ると、表示層5の深さ方向に暗い抜き文字部分6aを明瞭に視認することができる。よって表示層5が背景層6に対して浮上しているように見て取ることができる。したがってこれまでに無い新しい立体加飾を実現できる。さらに表示層5と背景層6を印刷層で形成することから、簡易な製造技術によって歩留まりの良い高品質の立体加飾を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、PDA、リモコン、デジタルカメラ、AV機器、車載電装機器等の各種電子機器の外装部品として用いられる加飾成形体に関し、特に加飾成形体としての押釦スイッチ用キートップと、これを備えるキーシートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やAV機器等の各種電子機器には、筐体やスイッチなど種々の外装部品を備えている。こうした外装部品は外観に現れて電子機器の市場価値をデザインによって高める重要な要素となる。このため機能性の優位に競合製品との持続性ある差別化を実現しがたい状況では、デザイン性の優位による差別化を如何にして実現するかが課題とされる。その差別化の一形態として外装部品の立体加飾がある。ここでは携帯電話機などに備えるキーシートのキートップに立体加飾を施す一例を説明する。
【0003】
キートップには文字・数字・図形・記号・模様といった表示要素が施されるのが一般的である。図17,図18はその表示要素の立体化を実現する既存技術の一例である。すなわち透明樹脂でなるキートップ1の内部には立体形状の表示要素2が埋設されており、これによって外装部品としてのキートップ1の立体加飾を実現している(特許文献1〜特許文献3)。
【特許文献1】特開2000−21259号公報
【特許文献2】特開2002−23924号公報
【特許文献3】特開2002−216572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたキートップ1は、例えば表示要素を平面印刷層として設けるキートップと比べると、表示要素2を立体視できるという点で優れたデザイン上の特徴がある。しかしながら、表示要素2そのものを立体形状とする立体加飾はすでに陳腐化しており、市場からはこれに代わる新しい立体加飾が求められている。
【0005】
また前述の立体加飾のキートップ1は、製造面でも解決すべき幾つかの課題がある。すなわちキートップ1は、その成形時に表示要素2の立体形状に対応する溝を形成し、そこに着色したインクや樹脂等を充填することで表示要素2を形成する。このため表示要素2に対応する複雑な溝を形作る金型の作製、金型による成形が難しく、また溝に対するインク等の充填時には立体形状の「欠け」となるエアーの巻き込みを発生しやすい。さらに溝には深さが必要なためキートップが自ずと厚肉となり、電子機器の薄型化の要請に応えにくいという不都合もある。
【0006】
以上のような従来技術を背景になされたのが本発明である。すなわち本発明の目的はこれまでにない新しい立体加飾を有する加飾成形体を実現することにある。本発明の他の目的はその立体加飾を簡易な製造技術で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく本発明は以下のように構成される。
【0008】
第1に、本発明は、透明基材と、透明基材の押圧操作側となる表面側に設けられ文字・数字・図形・記号・模様の少なくとも何れかの表示要素を形成する表示層と、透明基材の底面側に設けられ表示層の表示要素と実質的に相似形状で抜き文字状の表示要素を有する背景層と、を備える加飾成形体を提供する。
【0009】
本発明では、透明基材の表面側には表示要素を形成する表示層を備え、底面側には表示層の表示要素と実質的に相似形状で抜き文字状の表示要素を有する背景層を備える。つまり、操作者は表示要素を形成する表示層の深さ方向に、背景層が形成する抜き文字状の表示要素を視認することができる。このため操作者はあたかも表示層の表示要素が背景層に対して浮上しているかのように浮き文字状の表示要素を視認できる。よって2つの層で構成される新しい立体加飾を実現できる。なお、本明細書でいう「相似形状」とは相似比が1である「合同」を含む趣旨であり、また表示層の表示要素と背景層の表示要素とが形状について完全一致である場合に限らない趣旨である。例えば表示層の表示要素では角部が明確に現れているが背景層の表示要素は角部にアールを付けているような場合、あるいは表示層の表示要素と背景層の表示要素との線幅が異なるような場合などは、厳密には相似形状といえないが、こうした場合も本発明では「相似形状」に含む趣旨である。要するに、背景層の表示要素が表示層の表示要素に対する「影」のように明確に視認できること、それによって表示層の表示要素が浮上しているように見えることができれば、両表示要素の大きさと形状について本発明の「相似形状」として捉える趣旨である。
【0010】
第2に、本発明は、透明基材と、透明基材の押圧操作側となる表面側に設けられ文字・数字・図形・記号・模様の少なくとも何れかの表示要素を抜き文字状に形成する表示層と、透明基材の底面側に設けられ表示層の表示要素と実質的に相似形状の表示要素を形成する背景層と、を備える加飾成形体を提供する。
【0011】
本発明では、透明基材の表面側には表示要素を抜き文字状に形成する表示層を備え、底面側には表示層の表示要素と実質的に相似形状の表示要素を形成する背景層を備える。つまり、操作者は表示要素を抜き文字状に形成する表示層の奥に、背景層による表示要素を視認することができる。このため操作者はあたかも背景層の表示要素が表示層に対して沈んでいるかのように沈み文字状の表示要素を視認できる。よって2つの層で構成される新しい立体加飾を実現できる。
【0012】
そして以上のような浮き文字状、沈み文字状の立体視を実現する第1及び第2の本発明では、透明基材に備えるのが表示層及び背景層の二層であることから、従来例のような立体形状の表示要素を埋設する加飾成形体(キートップ)の例と比べて大幅な薄型化が可能である。
【0013】
さらにそれらの本発明では、表示層と背景層を例えば印刷・塗装・めっきなどの簡易な製造技術で実現することができる。
【0014】
本発明は透明基材が押釦スイッチ用のキートップ本体である。つまり、キートップ本体の操作面に表示層を有し、底面に背景層を有している。このため表示層が見やすく誤操作を防ぐことができる。なおキートップ本体の肉厚は0.1mm以上あれば使用でき、キートップ本体の操作面の形状は平坦形状、ドーム形状、凹形状が使用できる。また表示層を保護層で覆うことで、表示層の摩耗を防ぐことができる。
【0015】
本発明は押釦スイッチ用の透明なキートップ本体を備えており、透明基材がキートップ本体の底面側に備わる透明片である。つまり、表示層及び背景層を有する透明片がキートップ本体の底面側に備わっている。このため操作者がキートップの押圧操作時に表示層に直接触れることがなく、表示層の摩耗を防ぐことができ、キートップを長期間使用できる。なお透明片の肉厚は0.1mm以上あれば使用できる。
【0016】
この透明片を備える本発明については、キートップ本体と透明片とを軟化又は溶融状態で固着する接着層を備える。つまり、キートップ本体と透明片とを加熱圧着した接着層によって固着している。このため固着作業が簡単である。またキートップ本体の底面と透明片の表面を容易に全面固着でき、接着層の縁を視認することなく見映えのよい表示層とすることができる。なお加熱圧着する際の接着層への伝熱効率を考慮すると透明片の肉厚は0.3mm以下あれば用いることができる。前述のように透明片の肉厚が0.1mm以上あれば使用できることから、0.1mm〜0.3mmが好ましく利用できる。
【0017】
また接着層が軟化又は溶融状態で固着力を発現するため、接着層が再硬化する際に揮発物を無くすことができる。よって接着層にエアーなどが混入せず、表示層の見映えを損なうことがない。
【0018】
本発明は、前記何れかの本発明による加飾成形体と、加飾成形体を固着するベースシートと、を備えるキーシートを提供する。
【0019】
本発明のキーシートであれば、前記本発明の加飾成形体とベースシートとを備えるため、新しい立体加飾を実現できる。またベースシートを備えるため、例えばスイッチや光源を配置した基板の上に簡単に載置でき、複数の加飾成形体(例えばキートップ)もベースシートに一体化できるので、電子機器への組み込みが容易になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の加飾成形体及びキーシートによれば、操作者は表示要素を浮き文字状又は沈み文字状に立体視することができる。よって従来の立体加飾には無い斬新で新しいデザインを実現できる。
【0021】
また、浮き文字状や沈み文字状の立体視は透明基材に備える表示層及び背景層の2つの層によって実現されるため、従来例のような立体形状の表示要素を埋設しているものに比べ薄型化できる。よって電子機器の薄型化の要請にも対応できる。
【0022】
さらに、表示層及び背景層は例えば印刷・塗装・めっきなどの簡易な製造技術で実現できるため、歩留まりの良い高品質の表示要素を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態の例について図面を参照しつつ説明する。なお、各実施形態で共通する構成については、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0024】
以下の実施形態では、「加飾成形体」として携帯電話機などに備えるキートップを適用する例を説明する。
【0025】
第1実施形態〔図1〜図4〕
第1実施形態のキートップ3は、「透明基材」としての透明なキートップ本体4と、表示層5と、背景層6とを備えている。
【0026】
キートップ本体4は、ポリカーボネート樹脂などの透明樹脂材でなり、平面視で矩形状に形成されている。下端には外方へ突出する環状の鍔部4aを設けてある。
【0027】
表示層5は、キートップ本体4の押圧操作側となる表面4bに印刷によって形成されており、文字、数字、記号、図形、模様などの「表示要素」を表す表示形状である。本実施形態では表示要素として英文字「E」の表示形状とした表示層5としている。この表示層5は白色に着色されており、表示層5は塗装形成された透明樹脂でなる保護層5aによって覆われている。
【0028】
背景層6は、キートップ本体4の底面4cに印刷によって形成されており、表示層5と相似形状の「表示要素」として抜き文字部分6aを有している。この抜き文字部分6aは、表示層5と相似比が1となる合同に形成されており、同じく英文字「E」を表している。抜き文字部分6a以外の背景層6そのものは白色に着色されている。背景層6の底面は、抜き文字部分6aが目地埋めされるように、印刷形成された透明樹脂でなる保護層6bによって覆われている。
【0029】
次に、第1実施形態のキーシート7について説明する。キーシート7は、前述のキートップ3と、ベースシート8とを備えている。
【0030】
キーシート7は、図4で示すように、バックライトとして機能する光源9や接点スイッチとして機能する金属皿ばね10等を配置した基板11上に載置される。その上方にはキートップ3を表出する操作開口12aを有する筐体12を被せてある。キートップ本体4の鍔部4aは、キートップ3の脱落防止のために筐体12の操作開口12aと係合している。
【0031】
ベースシート8は、シリコーンゴムなどの透光性のゴム状弾性体で形成されている。その押圧操作側となる表面には、キートップ3を図外の透光性接着剤にて固着する台座部8aが形成されている。基板対向面となる裏面には、台座部8aに対応して基板11の金属皿ばね10を押圧する押し子部8bと、全外周及び隣り合う台座部8aどうしの間に脚部8cが突設されている。この脚部8cの先端は基板11上の光源9を収容する凹部8dを有しており、基板11の表面と接している。
【0032】
ここで本実施形態を構成する各部材の材質を説明する。
【0033】
「透明基材」としてのキートップ本体4の材質は、前述の透明樹脂だけでなく光を透過する透明なセラミックスを使用できる。このうち「樹脂」の材質は、機械的強度、耐久性等の要求性能、及び軽量化により、熱可塑性樹脂又は反応硬化性樹脂が好ましい。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリル共重合樹脂、シリコーン樹脂が使用できる。なお「透明」とは透き通っていることであり、具体的には操作者がキートップ本体4を通して底面4cに形成される背景層6の抜き文字部分6aを視認できることが必要である。したがって抜き文字部分6aを視認できれば無色でも着色でも含む趣旨である。
【0034】
ベースシート8を構成する「ゴム状弾性体」の材質は、反撥性のよい熱硬化性エラストマー又は熱可塑性エラストマーが好ましい。例えば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、ブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、イソプレン系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。さらにこれらのゴム状弾性体で温度依存性が少ない点を考慮するとシリコーンゴムが好ましく、また耐久性を考慮するとスチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0035】
次に、本実施形態のキートップ3及びキーシート7の作用・効果を説明する。
【0036】
操作者がキートップ本体4を真上(図1の矢示X方向)から見ると、表示層5と背景層6が同一色(白色)であるため表示層5と背景層6が同化して英文字「E」を表す表示層5を視認しにくい。ところが斜め(図1の矢示Y方向)から見ると、表示層5の深さ方向に、暗い抜き文字部分6aを明瞭に視認することができる。このとき操作者は、あたかも英文字「E」の表示層5が背景層6に対して浮上しているかのように見て取ることができる。つまり表示層5を浮き文字状に視認することができる。したがってこれまでに無い新しい立体加飾を実現できる。
【0037】
表示層5と背景層6とはキートップ本体4の肉厚分、相互に離間する。このため大きく傾けて斜めから見なくても、少し傾けて斜めから見れば背景層6の暗い抜き文字部分6aが視界に入る。したがって立体加飾を容易に視認することができる。
【0038】
表示層5と背景層6とが同一色(白色)であることから、敢えて真正面からは見えにくくするというデザインそれ自体がそもそも斬新である。しかし決して表示層5の視認性が悪いということではなく、前述のように少し傾けて斜めから見ると暗い抜き文字部分6aが明瞭に視界に入るため、視認性も良好である。したがって本実施形態のキートップ3及びキーシート7であれば、色遣いと立体加飾というデザインにおける斬新性だけでなく、操作時の良好な視認性をも両立することができる。
【0039】
こうした新しい立体加飾はキートップ本体4に形成する表示層5と背景層6の印刷層によって実現される。このため図17,図18で示す従来例のような立体形状の表示要素1を埋設するキートップ2と比べてキートップ3を大幅に薄型化することができる。
【0040】
さらに、表示層5と背景層6を印刷層で形成することから、簡易な製造技術によって歩留まりの良い高品質の立体加飾を実現することができる。
【0041】
キートップ本体4の表面4bに設けた表示層5を保護層5aで覆っているため、表示層5の摩耗を防ぐことができる。
【0042】
キーシート7は、前述のキートップ本体4と表示層5と背景層6とを有するキートップ3と、ベースシート8と、を備えるため、新しい立体加飾を実現できる。またベースシート8を備えるため、光源9や金属皿ばね10を配置した基板11の上に簡単に載置でき、複数のキートップ3もベースシート8で一体化できる。このようにベースシート8で一体化したキートップ3は、携帯電話機などへの組み込みが容易になる。
【0043】
第2実施形態〔図5〜図8〕
第2実施形態のキートップ13が、第1実施形態のキートップ3と異なるのは、表示層5及び背景層6の形状である。残余の構成は第1実施形態と同じである。
【0044】
表示層5は、キートップ本体4の押圧操作側となる表面4bに印刷によって形成されており、文字、数字、記号、図形、模様などの「表示要素」を抜き文字状に表す抜き文字部分5bを有している。本実施形態の抜き文字部分5bは英文字「E」を表示要素として表している。抜き文字部分5b以外の表示層5そのものは白色に着色されている。表示層5は、抜き文字部分5bが目地埋めされるように、塗装形成された透明樹脂でなる保護層5aによって覆われている。
【0045】
背景層6は、キートップ本体4の底面4cに印刷によって形成されており、表示層5と相似形状の「表示要素」を表す表示形状として形成されている。この背景層6は、表示層5の抜き文字部分5bと相似比が1となる合同に形成されており、英文字「E」を表している。背景層6は白色に着色されており、印刷形成された透明樹脂でなる保護層6aによって覆われている。
【0046】
次に、第2実施形態のキーシート14について説明する。キーシート14は、図8で示すように、前述のキートップ13と、ベースシート8とを備えている。そして、第1実施形態のキーシート7と同様に、携帯電話機などの電子機器に組み込まれる。
【0047】
第2実施形態のキートップ13及びキーシート14は、第1実施形態のキートップ3及びキーシート7と同様に、キートップ13の薄型化を実現でき、簡易な製造技術で歩留まりの良い高品質の立体加飾を実現でき、表示層5の摩耗を防ぐことができ、電子機器への組み込みが容易になるほか、さらに次の作用・効果を発揮する。
【0048】
キートップ13及びキーシート14によれば、操作者はキートップ本体4を真上(図5の矢示X方向)から見ても、斜め(図5の矢示Y方向)から見ても、表示層5の抜き文字部分5bの奥に、表示要素として英文字「E」を表す背景層6を明確に視認することができる。このため操作者はあたかも英文字「E」の背景層6が手前側の表示層5に対して沈んでいる(凹んでいる)かのように見て取ることができる。つまり背景層6を沈み文字状に視認することができる。したがってこれまでに無い新しい立体加飾を実現できる。
【0049】
第3実施形態〔図9〜図12〕
第3実施形態のキートップ15が、第1実施形態のキートップ3と異なるのは、キートップ本体4とは別に「透明片」としての樹脂シート16を備える構成である。残余の構成は第1実施形態と同じである。
【0050】
樹脂シート16は、ポリカーボネート樹脂などの透明樹脂材でなり、平面視でキートップ本体4の底面4cと整合する同形状に形成されている。この樹脂シート16のキートップ本体4と対向する上面16aは、キートップ本体4の底面4cに対して、軟化又は溶融状態で固着力を発揮する透明樹脂でなる接着層17で固着されている。
【0051】
表示層5は、キートップ本体4の底面4cに印刷によって形成されており、第1実施形態と同様に、「表示要素」を表す表示形状である。本実施形態でも表示要素として英文字「E」を表す表示層5としている。この表示層5は黒色に着色されている。
【0052】
背景層6は、樹脂シート16の上面16aとは反対の下面16bに印刷によって形成されており、第1実施形態と同様に、表示層5と相似形状の「表示要素」として抜き文字部分6aを有している。この抜き文字部分6aは、表示層5よりやや小さく形成されており、英文字「E」を表している。抜き文字部分6a以外の背景層6そのものは黒色に着色されている。背景層6の底面は保護層6bによって覆われている。
【0053】
次に、第3実施形態のキーシート18について説明する。キーシート18は、図12で示すように、前述のキートップ15と、ベースシート8とを備えている。そして、第1実施形態のキーシート7と同様に、携帯電話機などの電子機器に組み込まれる。
【0054】
ここで、キートップ15の製造方法について説明する。
【0055】
先ず射出成形にてキートップ本体4を成形する。このキートップ本体4の底面4cに、黒色インクを印刷工法にて塗布し、「表示要素」として英文字「E」を表す表示形状の表示層5を形成する。
【0056】
他方、別途用意した樹脂シート16の下面16bに、黒色インクを印刷工法にて塗布し、表示層5と相似形状の「表示要素」として英文字「E」の抜き文字部分6aを有する背景層6を形成する。さらにこの背景層6の底面に、透明インクを印刷工法にて塗布し、抜き文字部分6aを目地埋めするように保護層6bを形成する。またこの樹脂シート16の上面16aには、軟化又は溶融状態で固着力を発揮する透明樹脂を印刷工法にて塗布し、接着層17を形成する。
【0057】
最後にキートップ本体4の底面4cと樹脂シート16の上面16aを対向させて加熱圧着し、樹脂シート16の上面16aに形成した接着層17を軟化又は溶融状態にしてキートップ本体4の底面4cと樹脂シート16の上面16aを固着する。その後樹脂シート16をキートップ本体4の底面4cの形状に合わせて切断し、キートップ15を製造する。
【0058】
ここで本実施形態の接着層17の材質について説明する。
【0059】
「接着層」は、加熱により軟化又は溶融する熱可塑性樹脂が使用できる。非着体となるキートップ本体4や樹脂シート16の耐熱性を考慮すると、例えば、アクリル系、塩ビ系、ポリエステル系、ウレタン系などの熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0060】
第3実施形態のキートップ15及びキーシート18は、第1実施形態のキートップ3及びキーシート7と同様に、表示層5と背景層6で構成される浮き文字状の立体加飾を実現でき、キートップ15の薄型化を実現でき、簡易な製造技術で歩留まりの良い高品質の立体加飾を実現でき、電子機器への組み込みが容易になるほか、さらに次の作用・効果を発揮する。
【0061】
表示層5及び背景層6を有する樹脂シート16がキートップ本体4の底面4cに固着されているため、操作者がキートップ本体4の押圧操作時に表示層5に直接触れることがなく、表示層5の摩耗を防ぐことができる。よってキートップ15を長期間使用できる。
【0062】
接着層17を介してキートップ本体4と樹脂シート16とを加熱圧着により固着しているため、固着作業が簡単である。またキートップ本体4の底面4cと樹脂シート16の上面16aを全面固着しているため、接着層17の縁を視認することなく見映えのよい表示層5とすることができる。
【0063】
また接着層17が軟化又は溶融状態で固着力を発現するため、接着層17が再硬化する際に揮発物を生じない。よって接着層17にエアーなどが混入せず、表示層5の見映えを損なうことがない。
【0064】
本実施形態では表示層5及び背景層6がともに黒色であるため、例えばキーシート18を搭載する携帯電話機の構造によっては、背景層6に形成する英文字「E」の抜き文字部分6aと背景層6それ自体との明度差が僅かとなり、抜き文字部分6aが表示層5の影として見えにくく浮き文字状の立体加飾を十分明確には視認できないことも想定される。しかし基板に配置した光源を発光させると、その光(バックライト光)が抜き文字部分6aを透過するため、抜き文字部分6aが黒色の背景層6よりも明るくなって明度差が生じる。このためネガ(陰画)状のように明るい抜き文字部分6aが黒色の表示層5に対する影のように見て取ることができることから、照光時には明確に浮き文字状の立体加飾を視認することが可能である。
【0065】
また、表示層5と背景層6を黒色とした場合、非照光時における明確な浮き文字状の立体加飾を実現するには、例えば抜き文字部分6aを目地埋めするように黒色以外の着色層(例えば白色の着色層)を設ければよい。
【0066】
第4実施形態〔図13〜図16〕
第4実施形態のキートップ19が、第2実施形態の照光式キートップ13と異なるのは、透明なキートップ本体4とは別に「透明片」としての樹脂シート16を備える構成である。残余の構成は第2実施形態と同じである。
【0067】
樹脂シート16は第3実施形態と同様に、透明樹脂材でなり平面視でキートップ本体4の底面4cと整合する形状に形成されている。この樹脂シート16のキートップ本体4対向面となる上面16aは、キートップ本体4の底面4cに対して、軟化又は溶融状態で固着力を発揮する透明樹脂でなる接着層17で固着されている。
【0068】
表示層5は第3実施形態と同様に、キートップ本体4の底面4cに印刷によって形成されており、第2実施形態と同様に「表示要素」を抜き文字状に表す表示形状である。本実施形態でも表示要素として英文字「E」の抜き文字部分5bを有する表示層5としている。抜き文字部分5b以外の表示層5そのものは白色に着色されている。
【0069】
背景層6は第3実施形態と同様に、樹脂シート16の上面16aとは反対の下面16bに印刷によって形成されており、第2実施形態と同様に表示層5と相似形状の「表示要素」として表示要素を表す表示形状である。この背景層6は、表示層5の抜き文字部分5bよりやや小さく形成されており、英文字「E」を表している。背景層6は白色に着色されており、印刷形成された透明樹脂でなる保護層6bによって覆われている。
【0070】
次に、第4実施形態のキーシート20について説明する。キーシート20は、図16で示すように、前述のキートップ19と、ベースシート8とを備えている。そして、第2実施形態のキーシート14と同様に、携帯電話機などの電子機器に組み込まれる。
【0071】
ここで、キートップ19の製造方法について説明する。
【0072】
キートップ19の製造方法は第3実施形態と同様であり、キートップ本体4の底面4cに英文字「E」の抜き文字部分5bを有する表示層5を形成する。他方、樹脂シート16の下面16bに英文字「E」を表す背景層6と保護層6bを形成し、上面16aの全面に接着層17を形成する。そしてキートップ本体4の底面4cと樹脂シート16の上面16aを対向させて加熱圧着し、キートップ本体4の底面4cと樹脂シート16の上面16aを固着する。その後樹脂シート16をキートップ本体4の底面4cの形状に合わせて切断し、キートップ19を製造する。
【0073】
第4実施形態のキートップ19及びキーシート20は、第2実施形態のキートップ13及びキーシート14と同様に、表示層5と背景層6で構成される沈み文字状の立体加飾を実現でき、キートップ19の薄型化を実現でき、簡易な製造技術で歩留まりの良い高品質の立体加飾を実現でき、電子機器への組み込みが容易になるほか、さらに次の作用・効果を発揮する。
【0074】
キートップ19及びキーシート20によれば、第3実施形態と同様に、表示層5の摩耗を防ぐことができる。また接着層17の縁やエアー混入を視認することなく見映えのよい表示層5とすることができる。
【0075】
各実施形態に共通の変形例
以下に各実施形態のキートップに共通する変形例を説明する。
【0076】
第1の変形例
第1変形例のキートップは、第1実施形態〜第4実施形態に適用することが可能である。
【0077】
第1,第3実施形態では「表示要素」を表す表示層5と「表示要素」としての抜き文字部分6aを、また第2,第4実施形態では「表示要素」としての抜き文字部分5bと「表示要素」を表す背景層6を、それぞれキートップ本体4の底面4cと水平方向にややずらして設ける。
【0078】
このような構成の表示層5と背景層6にすると、操作者がキートップを真上(真正面)から見たときに各層に形成されている「表示要素」としての英文字「E」がずれて視認できる。このため英文字「E」をあたかも斜め文字又は影付き文字のように視認でき、新しい立体加飾を実現できる。
【0079】
第2の変形例
第2変形例のキートップは、第1,第3実施形態に適用することが可能である。
【0080】
「表示要素」を表す表示層5より「表示要素」としての抜き文字部分6aをやや大きく形成する。
【0081】
このような構成の表示層5と背景層6にすると、操作者がキートップを真上から見たときに抜き文字部分6aの英文字「E」が表示層5の英文字「E」を取り巻く「影」のように視認できる。このため表示層5の英文字「E」をあたかも浮き文字状に視認でき、新しい立体加飾を実現できる。
【0082】
第3の変形例
第3変形例のキートップは、第3,第4実施形態に適用することが可能である。
【0083】
「透明片」としての樹脂シート16をキートップ本体4の表面4bに備える構成である。すなわち樹脂シート16には、上面16aに表示層5とこれを覆う透明な保護層5aを設け、下面16bに背景層3を設けている。この樹脂シート16の下面16bをキートップ本体4の表面4bに合わせて接着層17で固着している。
【0084】
このような変形例でも第3実施形態のキートップ15、第4実施形態のキートップ19と同様に、新しい立体加飾を実現でき、キートップ15,19の薄型化を実現でき、簡易な製造技術で歩留まりの良い高品質の立体加飾を実現でき、電子機器への組み込みが容易になる等の作用・効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図2のSA−SA線に沿う第1実施形態のキートップの断面図。
【図2】図1の矢示X方向から見る説明図。
【図3】図1の矢示Y方向から見る説明図。
【図4】第1実施形態のキートップによる押釦スイッチの説明図。
【図5】図6のSB−SB線に沿う第2実施形態のキートップの断面図。
【図6】図5の矢示X方向から見る説明図。
【図7】図5の矢示Y方向から見る説明図。
【図8】第2実施形態のキートップによる押釦スイッチの説明図。
【図9】図10のSC−SC線に沿う第3実施形態のキートップの断面図。
【図10】図9の矢示X方向から見る説明図。
【図11】図9の矢示Y方向から見る説明図。
【図12】第3実施形態のキートップによる押釦スイッチの説明図。
【図13】図14のSD−SD線に沿う第4実施形態のキートップの断面図。
【図14】図13の矢示X方向から見る説明図。
【図15】図13の矢示Y方向から見る説明図。
【図16】第4実施形態のキートップによる押釦スイッチの説明図。
【図17】従来のキートップの平面図。
【図18】従来のキートップの斜視図。
【符号の説明】
【0086】
1 キートップ(従来例)
2 表示要素
3 キートップ(第1実施形態)
4 キートップ本体
4a 鍔部
4b 表面
4c 底面
5 表示層
5a 保護層
5b 抜き文字部分
6 背景層
6a 抜き文字部分
6b 保護層
7 キーシート(第1実施形態)
7a 台座部
7b 押し子部
7c 脚部
7d 凹部
8 ベースシート
9 光源
10 金属皿ばね
11 基板
12 筐体
12a 操作開口
13 キートップ(第2実施形態)
14 キーシート(第2実施形態)
15 キートップ(第3実施形態)
16 樹脂シート
16a 上面
16b 下面
17 接着層
18 キーシート(第3実施形態)
19 キートップ(第4実施形態)
20 キーシート(第4実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
透明基材の押圧操作側となる表面側に設けられ文字・数字・図形・記号・模様の少なくとも何れかの表示要素を形成する表示層と、
透明基材の底面側に設けられ表示層の表示要素と実質的に相似形状で抜き文字状の表示要素を有する背景層と、を備える加飾成形体。
【請求項2】
透明基材と、
透明基材の押圧操作側となる表面側に設けられ文字・数字・図形・記号・模様の少なくとも何れかの表示要素を抜き文字状に形成する表示層と、
透明基材の底面側に設けられ表示層の表示要素と実質的に相似形状の表示要素を形成する背景層と、を備える加飾成形体。
【請求項3】
透明基材が押釦スイッチ用のキートップ本体である請求項1又は請求項2記載の加飾成形体。
【請求項4】
押釦スイッチ用の透明なキートップ本体を備えており、透明基材がキートップ本体の底面側に備わる透明片である請求項1又は請求項2記載の加飾成形体。
【請求項5】
キートップ本体と透明片とを軟化又は溶融状態で固着する接着層を備える請求項4記載の加飾成形体。
【請求項6】
請求項1〜請求項5何れか1項記載の加飾成形体と、該加飾成形体を固着するベースシートと、を備えるキーシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−213840(P2007−213840A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29512(P2006−29512)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】