説明

加飾樹脂成形品

【課題】側部の第2意匠面に沿う方向へ型開きされる金型により一般部及び側部が成形される加飾樹脂成形品でありながら、第1凹凸模様及び第2凹凸模様の見栄えを略同一にする。
【解決手段】コンソールリッド(加飾樹脂成形品)11は、第1意匠面21を有する一般部20と、第1意匠面21に略直交する第2意匠面32,34を有する側部30とを備える。コンソールリッド11では、第2意匠面32(又は34)に沿う方向に型開きされる金型により、一般部20、側部30、第1意匠面21での第1凹凸模様24、及び第2意匠面32,34での第2凹凸模様33,35が形成される。これに加え、第2凹凸模様33,35における第2突部が第1凹凸模様24における第1突部と略同一の高さを有するように、第2突部の少なくとも一部が、金型による側部30の成形後にインクジェットプリンタのノズル68から噴射されたインク69により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シボ模様等の微細な凹凸模様を意匠面に有する加飾樹脂成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用内装品として、少なくとも表面部分が合成樹脂によって形成され、かつ意匠面にシボ模様、木目模様等といった微細な凹凸模様を有する加飾樹脂成形品が用いられる場合がある。この凹凸模様は、加飾樹脂成形品の成形時に形成される。すなわち、表面に模様成形部を有する金型が用いられ、キャビティに溶融樹脂が充填される際に、その溶融樹脂の表面に上記模様成形部とは逆の凹凸関係を有する凹凸模様が形成される。
【0003】
上記加飾樹脂成形品の一態様として、コンソールリッド、コンソールボックス等がある。これらの加飾樹脂成形品は、共通の構成として、外表面の少なくとも一部を第1意匠面とする一般部と、一般部の外縁部に設けられ、かつ第1意匠面に略直交する外表面の少なくとも一部を第2意匠面とする側部とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−113086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加飾樹脂成形品が、上記のように一般部と側部とを備えたものであり、側部の第2意匠面に沿う方向へ型開きされる金型により成形される場合、次の問題が生ずるおそれがある。
【0005】
すなわち、第2凹凸模様における第2突部の高さ方向は金型の型開き方向に略直交していることから、第2突部が限度を越えて高いと、金型の型開きが適正に行われなくなる、より正確には、金型から加飾樹脂成形品が離型されにくくなるおそれがある。そのため、第2突部の高さが制約を受ける。一方、第1凹凸模様における第1突部の高さ方向は金型の型開き方向と略一致していることから、第1突部の高さは上記のような制約を受けにくい。その結果、第2突部が第1突部よりも低く設定される。この設定により、型開きが確実に行われる反面、一般部と側部とで凹凸模様の見栄えが異なり、加飾樹脂成形品の外観が不自然なものとなってしまう。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、側部の第2意匠面に沿う方向へ型開きされる金型により一般部及び側部が成形されるものでありながら、第1凹凸模様と第2凹凸模様との間で見栄えを略同一にすることのできる加飾樹脂成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、外表面の少なくとも一部を第1意匠面とする一般部と、前記一般部の外縁部に設けられ、かつ前記第1意匠面に略直交する外表面の少なくとも一部を第2意匠面とする側部とを備え、前記第1意匠面には第1突部を含む第1凹凸模様が形成されるとともに、前記第2意匠面には第2突部を含む第2凹凸模様が形成され、前記第2意匠面に沿う方向へ型開きされる金型により、前記一般部及び前記側部が成形され、さらに、前記第1凹凸模様及び前記第2凹凸模様のうち少なくとも第1凹凸模様が前記金型により形成される加飾樹脂成形品であって、前記第2突部が前記第1突部と略同一の高さを有するように、前記第2突部の少なくとも一部が、前記金型による前記側部の成形後にインクジェットプリンタのノズルから噴射されて付着したインクにより形成されていることを要旨とする。
【0008】
上記の構成によれば、加飾樹脂成形品の第1凹凸模様は、金型による一般部の成形時に同金型により形成される。これに対し、加飾樹脂成形品の第2凹凸模様は、金型による側部の成形時に同金型により形成されない。又は、第2凹凸模様の第2突部は、金型による側部の成形時に、上記第1凹凸模様における第1突部よりも低く形成される。これは、側部の第2意匠面に沿う方向へ行われる金型の型開きを確実なものとするためである。
【0009】
上記金型による側部の成形後には、インクジェットプリンタのノズルからインクが噴射される。金型により第2凹凸模様が成形されていない場合には、噴射されたインクが側部に付着する。また、金型により第2凹凸模様が形成されている場合には、噴射されたインクが第2凹凸模様における第2突部上に付着する。この付着したインクにより、第2突部が実質的に高くなって、第1突部の高さに近づく。従って、第2突部上に、適切な厚みを有するインクの層を形成し、この層を第2突部の少なくとも一部とすることで、同第2突部の高さを第1突部の高さに略一致させることが可能である。両突部の高さが略一致すると、第1凹凸模様及び第2凹凸模様の見栄えが略同一となり、見栄えの相違に起因する外観上の不自然さが解消される。
【0010】
ところで、前記第2突部は、請求項2に記載の発明によるように、記金型により成形された本体突部と、前記本体突部上に付着されたインクにより形成された補助突部とからなるものであってもよい。また、第2突部は、請求項4に記載の発明によるように、その全部が前記ノズルから噴射されて付着したインクにより形成されたものであってもよい。前者は、第2突部を極力金型によって成形し、高さの不足する部分についてはインクによって補おうとするものである。これに対し、後者は、第2凹凸模様については金型により一切形成せず、インクによって全部を形成しようとするものである。前者及び後者のいずれの場合であっても、インクジェットプリンタによるインクの噴射を経た後には、第2突部の高さが、第1突部の高さと略同一となる。
【0011】
ここで、実験によると、第2突部の高さが第1突部の高さの略半分以下であれば、金型から加飾樹脂成形品を確実に離型させつつ型開きを行うことができる。従って、上記のように、第2突部を本体突部及び補助突部によって構成する場合には、請求項3に記載の発明によるように、前記本体突部が、第1突部の略半分の高さを有するものとしてもよい。この場合、第2突部を金型によってできるだけ多く成形し、インクによって形成される部分(補助突部)を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第2突部の少なくとも一部を、金型による側部の成形後にインクジェットプリンタのノズルから噴射されるインクにより形成するようにしたため、側部の第2意匠面に沿う方向へ型開きされる金型により一般部及び側部を成形するものでありながら、第1凹凸模様及び第2凹凸模様の見栄えを略同一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の加飾樹脂成形品を自動車用内装品であるコンソールリッドに具体化した一実施形態について、図1〜図12を参照して説明する。コンソールリッドは、車室内の肘掛け、小物入れ等の蓋として用いられる部材である。
【0014】
なお、各図において方向を特定するために、図9及び図10中、右下の箇所と左上の箇所とを結ぶ方向を「X方向」といい、右上の箇所と左下の箇所とを結ぶ方向を「Y方向」といい、上下方向をZ方向というものとする。X方向及びY方向はいずれも水平方向の一態様であり、Z方向は鉛直方向である。
【0015】
図1及び図10の少なくとも一方に示すように、コンソールリッド11は、大きくは、その上部を構成する一般部20と、中間部及び下部を構成する側部30とに分けられる。一般部20はZ方向についての厚みが小さく、Y方向についてよりもX方向についての長さの長い四角板状をなしている。一般部20の外表面の一部である上面は、全体が第1意匠面21とされている。第1意匠面21の略全面には、図2に示すように、多数の第1突部22及び多数の第1凹部23からなる微細な第1凹凸模様24が形成されている。第1意匠面21において第1突部22を除く箇所が第1凹部23である。第1突部22は、先端側(図2では上側)ほど幅の狭くなる断面形状を有し、50〜80μmの高さH1を有している。なお、図2では、説明の便宜上均一の高さH1を有する第1突部22が図示されている。
【0016】
図1及び図10の少なくとも一方に示すように、側部30はZ方向についての高さの低い四角枠状をなし、上記一般部20の外縁部から垂下している。一般部20の直下であって側部30によって囲まれた空間は凹所31となっている。側部30のX方向についての両側面は互いに略平行関係にあり、その全体が第2意匠面32とされている。各第2意匠面32,32の略全面には、微細な第2凹凸模様33が形成されている。同様に、側部30のY方向についての両側面は、その略全面が上記第2意匠面32に略直交する第2意匠面34とされている。各第2意匠面34の略全面には、微細な第2凹凸模様35が形成されている。
【0017】
図1及び図3の少なくとも一方に示すように、第2凹凸模様33,35(第2凹凸模様35についてのみ図示)は、いずれも多数の第2突部36及び多数の第2凹部37からなる。第2意匠面32,34(第2意匠面34についてのみ図示)において第2突部36を除く箇所が第2凹部37である。第2突部36は、先端側(図3では右側)ほど幅の狭くなる断面形状を有し、上記第1突部22(図2参照)と略同一の高さH2(50〜80μm)を有する。第2凹凸模様33,35における第2突部36の単位面積当たりの数は、上記第1凹凸模様24(図2参照)における第1突部22の単位面積当たりの数と同程度に設定されている。なお、図3についても、上記図2と同様、説明の便宜上均一の高さH2を有する第2突部36が図示されている。
【0018】
ただし、第2突部36は第1突部22とは異なる構成を採っている。詳しくは、第1突部22の全体は、一般部20を構成する合成樹脂と同一の合成樹脂によって形成されている。これに対し、第2突部36は本体突部38及び補助突部39からなる。本体突部38は、上記一般部20及び側部30と同一の合成樹脂によって形成されており、第2突部36の基端側(図3の右側)の略半分を構成している。本実施形態では、本体突部38は、第1突部22の基端側の部分とは若干異なる断面形状を有している。すなわち、本体突部38は先端側(図3の左側)ほど幅の狭くなる断面形状を有しているが、その断面形状は、第1突部22の対応する箇所(基端側部分)の断面形状よりも幅狭となっている。本体突部38は、25〜40μmの高さh2aを有している。補助突部39は、インクからなる層69Aが幾重にも重ねられることによって形成されており、本体突部38を被覆している。そして、これらの本体突部38及び補助突部39からなる第2突部36は、上記第1突部22と略同一の断面形状を有している。
【0019】
上記第1凹凸模様24及び第2凹凸模様33,35としては、皮革の表面に見られるしわ模様、いわゆるシボ模様が代表的であるが、そのほかにも、木目、岩目、砂目、梨地、幾何学模様等といった、高低差(凹凸)のある微細な模様も凹凸模様に含まれる。また、ヘアライン加工が施された金属の表面に模した模様も上記第1凹凸模様24及び第2凹凸模様33,35に含まれる。
【0020】
第1凹凸模様24及び第2凹凸模様33,35は、コンソールリッド11において、主として次の点を目的として形成されるものである。
(i)第1意匠面21及び第2意匠面32,34に立体的な質感を付与する。
(ii)第1意匠面21及び第2意匠面32,34に傷を付きにくくする、又は傷が付いても目立たなくする。
(iii )第1意匠面21及び第2意匠面32,34を滑りにくくする。
【0021】
上記コンソールリッド11は、図4に示す射出成形用の金型40によって成形される。この金型40は、図4において二点鎖線で示す固定型41と、同図4において実線で示す可動型45とを備えて構成されている。可動型45は、図4の上下方向への移動可能に設けられている。可動型45が下方へ移動して固定型41に接触することにより、金型40が型締めされる。また、可動型45が上方へ移動して固定型41から離間することにより金型40の型開きが行われる。可動型45のこの移動方向(型締め、型開きの方向)は、側部30の第2意匠面32,34に沿う方向(鉛直方向)と同一である。
【0022】
固定型41の上部には成形突部42が設けられ、可動型45には、その底面47において開口する成形凹部46が設けられている。成形凹部46はX方向についてはY方向についてよりも若干長く、Z方向については浅い形状をなしている。成形凹部46のX方向についての両内側面48,48は互いに略平行関係にある平面によって構成されている。また、成形凹部46のY方向についての両内側面49,49は上記両内側面48,48に対し略直交する平面によって構成されている。
【0023】
図4及び図5に示すように、成形凹部46の天井面50には、上記金型40を用いてコンソールリッド11を射出成形するときに、そのコンソールリッド11の第1意匠面21に第1凹凸模様24を形成するための第1模様成形部51が設けられている。図5及び図6の少なくとも一方に示すように、第1模様成形部51は、上記コンソールリッド11の第1凹凸模様24のうち、第1凹部23を成形するための第1凹部成形部52と、第1突部22を成形するための第1突部成形部53とがそれぞれ多数設けられることによって構成されている。第1突部成形部53は、50〜80μmの深さD1を有している。
【0024】
また、図4及び図7に示すように、成形凹部46の内側面48,49には、金型40を用いてコンソールリッド11を射出成形するときに、そのコンソールリッド11の第2意匠面32,34に第2凹凸模様33,35(図10参照)を形成するための第2模様成形部54が設けられている。図7及び図8に示すように、第2模様成形部54は、上記コンソールリッド11の第2凹凸模様33,35のうち、第2凹部37を成形するための第2凹部成形部55と、本体突部38を成形するための第2突部成形部56とがそれぞれ多数設けられることによって構成されている。第2突部成形部56は、上記第1突部成形部53の深さD1の略半分である25〜40μmの深さD2を有している。この深さD2は、型開きを確実に行う観点から許容される範囲の上限値に近い値である。すなわち、深さD2がこれよりも大きくなると、型開きの際に可動型45の第2模様成形部54からコンソールリッド11の第2凹凸模様33,35を離型させることが難しくなる。深さD2が上記範囲に収まるように設定することで、可動型45からコンソールリッド11を確実に離型させることが可能となる。
【0025】
そして、図4に示すように、可動型45が固定型41に接触して金型40が型締めされた状態では、成形凹部46内に成形突部42が入り込み、成形突部42及び成形凹部46間に、上記コンソールリッド11を成形するための空間であるキャビティ57が形成される。このキャビティ57に溶融樹脂が充填されて冷却硬化されると、第1意匠面21に第1凹凸模様24を有する一般部20と、第2意匠面32,34に第2凹凸模様33,35を有する側部30とを備えたコンソールリッド11(図1参照)が成形される。ただし、この段階では、第2凹凸模様33,35における第2突部36は、第2突部成形部56によって成形された本体突部38のみからなる。この本体突部38の高さh2a(図3参照)は、上述したように第1凹凸模様24における第1突部22の高さH1(図2参照)の略半分である。そのため、コンソールリッド11を見た場合、第1凹凸模様24と第2凹凸模様33,35とで見栄えが異なり、外観が不自然なものとなってしまう。
【0026】
そこで、本実施形態では本体突部38上に補助突部39を形成し、この補助突部39を第2突部36の一部とすることで、第2突部36の高さH2を第1突部22の高さH1に揃えるようにしている。この補助突部39の形成には、図9及び図10に示す装置60が用いられる。なお、金型40によって成形された直後のコンソールリッド11と、補助突部39の形成されたコンソールリッド11とを区別するために、後者(補助突部39有り)についてはコンソールリッド11といい、前者(補助突部39無し)についてはリッド中間体61というものとする。
【0027】
次に、上記装置60について説明する。この装置60は、門形のフレーム63が立設されたテーブル62を備えている。フレーム63上には、第1クロスレール65が支持されている。フレーム63及び第1クロスレール65間には、同第1クロスレール65をY方向へ移動させる第1移動機構(図示略)が設けられている。また、第1クロスレール65の側方近傍には第2クロスレール66が支持されている。両クロスレール65,66間には、同第2クロスレール66をX方向へ移動させる第2移動機構(図示略)が設けられている。さらに、第2クロスレール66の直下には、インクの微細な粒子を吹き付けることにより印刷を行なうインクジェットプリンタのインクヘッド67が支持されている。第2クロスレール66及びインクヘッド67間には、同インクヘッド67をZ方向(鉛直方向)へ移動させるための第3移動機構(図示略)が設けられている。
【0028】
インクヘッド67は、インクジェットプリンタにおける既存のインクヘッドと同様の構造を有している。インクヘッド67には、上記補助突部形成用のインク69(図11参照)を貯留するためのインク貯留室(図示略)と、そのインク貯留室の開口を構成し、かつインクヘッド67の底面において露出する多数本のノズル68とが設けられている。なお、図11(A),(B)では、ノズルの集合体を破線で示し、ノズルを意味する「68」の符号を、この破線部分に便宜上付している。インクヘッド67では、インク貯留室の壁を構成し、かつ積層構造を有する圧電素子(ピエゾ素子)に電圧が印加されて同圧電素子が振動させられる。この振動によりインク69に圧力が加えられ、対応するノズル68からインク69の粒滴が下方へ噴射(噴出)される。なお、上記圧電素子に代えて、インクを熱して沸騰させ、その圧力によって各ノズルからインクの粒滴を噴射させる方式が採用されてもよい。
【0029】
なお、上述した第1〜第3の各移動機構は、例えばモータ、ボールねじ等により構成することができる。これらの各移動機構の作動により、インクヘッド67をX方向、Y方向及びZ方向にそれぞれ直線運動させ、同インクヘッド67を任意の位置へ移動させることが可能である。
【0030】
一方、上記テーブル62上には平板状の基台71が固定されている。基台71上において、Y方向に互いに離間した箇所には一対の第1軸受72,72が設けられている。両第1軸受72,72間には第1回動板73が配置されている。第1回動板73のY方向についての両側面にはそれぞれ第1シャフト74,74が固定されており、これらの第1シャフト74,74において、第1回動板73が上記両第1軸受72,72に回動可能に支持されている。第1シャフト74,74の一方は、上記基台71上に固定された第1モータ75に駆動連結されている。この第1モータ75により、両第1シャフト74,74を中心として第1回動板73を回動させて、その傾きを調整することが可能である。
【0031】
第1回動板73上において、X方向に互いに離間した箇所には一対の第2軸受76,76が設けられている。両第2軸受76,76間には第2回動板77が配置されている。第2回動板77のX方向についての両側面にはそれぞれ第2シャフト78,78が固定されており、これらの第2シャフト78,78において、第2回動板77が上記両第2軸受76,76に回動可能に支持されている。第2シャフト78,78の一方は、上記第1回動板73上に固定された第2モータ79に駆動連結されている。この第2モータ79により、両第2シャフト78,78を中心として第2回動板77を回動させて、その傾きを調整することが可能である。
【0032】
第2回動板77には、把持機構(図示略)を介して印刷台81が取り外し可能に装着されている。さらに、印刷台81には、リッド中間体61を印刷台81に保持するための保持機構(図示略)が設けられている。
【0033】
装置60は、さらに、マイクロコンピュータを中心として構成された制御装置(図示略)を備えている。制御装置のメモリには、上記第1〜第3移動機構、第1モータ75及び第2モータ79の各作動(位置、速度等)を制御するとともに、ノズル68毎の圧電素子に印加される電圧を制御するための制御プログラムが記憶されている。そして、制御装置は、上記制御プログラムに従って各移動機構及びモータ75,79の各作動を制御するとともに、各圧電素子に印加される電圧の大きさ等を制御する。
【0034】
この制御に応じて各移動機構及びモータ75,79が作動することにより、側部30の第2意匠面32(又は34)へ向けてインク69を噴射させる際に、インクヘッド67がX方向、Y方向及びZ方向の少なくとも一方向へ移動させられる。また、リッド中間体61が第1シャフト74及び第2シャフト78の少なくとも一方を中心として回動させられる。これらの移動及び回動により、相対向する第2意匠面32,32(又は34,34)が上下に位置するようにリッド中間体61が起立状態にされる。
【0035】
例えば、リッド中間体61のX方向についての両第2意匠面32,32に対し印刷する場合には、第1モータ75により第1シャフト74を中心として第1回動板73を回動させてリッド中間体61を図11(A),(B)に示すように起立状態にし、両第2意匠面32,32を上下に位置させる。第2移動機構により第2クロスレール66をX方向へ移動させ、ノズル68を上側の第2意匠面32の上方に位置させる。ノズル68から上側の第2意匠面32までの距離Dが所定値となるように、第3機構によりインクヘッド67のZ方向の位置調整を行う。そして、この状態で、第1機構により第1クロスレール65をY方向へ移動させながら、ノズル68からインク69を下方へ噴射させる。すなわち、本体突部38の略上方に所定のノズル68が位置したときにそのノズル68に対応する圧電素子に電圧を印加して、同圧電素子を振動させインク69に圧力を加え、ノズル68からインク69の粒滴を下方へ噴射させる。
【0036】
また、リッド中間体61のY方向についての両第2意匠面34,34に対し印刷する場合には、図示はしないが、第2モータ79により第2シャフト78を中心として第2回動板77を回動させて、リッド中間体61を起立状態にし、両第2意匠面34,34を上下に位置させる。ノズル68から上側の第2意匠面34までの距離Dが上記所定値となるように、第3機構によりインクヘッド67のZ方向の位置調整を行う。そして、この状態で、第1移動機構により第1クロスレール65をY方向へ移動させながら、上記と同様にノズル68からインク69を下方へ噴射させる。
【0037】
ここで、インク69の噴射に際し、上記のようにノズル68に対するリッド中間体61の相対位置が変更されることで、ノズル68から本体突部38までの距離Dが略一定に維持される。このため、常に、本体突部38から略一定距離Dだけ上方へ離れた箇所に位置するノズル68からインク69が噴射される。その結果、意図した箇所に確実にインク69が付着される。
【0038】
図12に示すように、上記本体突部38に付着したインク69が乾燥することで、本体突部38上に、所定の厚みを有するインク69の層69Aが形成される(図3参照)。当初、すなわち本体突部38の頂部よりも低い箇所では、インク69の層69Aは本体突部38の側面に形成される。本体突部38の頂部よりも高い箇所では、インク69の層69Aは、本体突部38上に形成される。層69Aが幾重にも積層形成されることで、インク69からなる補助突部39の高さが高くなり、それに伴い第2突部36の高さH2が第1突部22の高さH1と略同一となる。
【0039】
ところで、一般に、色は三属性(色相、彩度、明度)によって表現されるところ、上記ノズル68からは、本体突部38の表面と同じ(色相、彩度、明度がいずれも同じ)色の、すなわち単一種類の色のインクが終始噴射されてもよい。この場合、噴射サイクル毎に形成されるインク69の層69Aは互いに同一色となる。
【0040】
また、上記三属性のうち明度のみが異なる複数種類のインクが用いられ、噴射タイミングに応じて噴射に供されるインクの種類が変更されてもよい。噴射サイクルの初期には明度の低い(暗い)インクが噴射され、噴射サイクルが進むにつれて明度の高い(明るい)インクが噴射される。この場合、補助突部39は上側ほど明度の高い(明るい)色を呈することとなる。
【0041】
なお、ノズル68からのインク69の噴射に際しては、例えばインクヘッドにテレビカメラ等の映像入力装置を組み込んでおき、この映像処理装置により入力される画像信号(アナログ信号)を基に上記制御装置により二値化画像処理、濃淡画像処理等の画像処理を行う。例えば、二値化画像処理では、映像処理装置からの画像データを、ある一定の閾値を境に、白い部分と黒い部分とに二分する。二値化処理した画像データを基に、第2凹凸模様33,35における第2突部36の輪郭、大きさ、位置などを計測する。また、濃淡画像処理では、テレビカメラから入力される画像信号(アナログ信号)を、明るさに応じて予め決められている多階調(例えば256階調)の濃度データとして入力し、このデータを基に濃度の分布パターンや、濃度の違いによる境界等を計算し、第2突部36の輪郭、大きさ、位置等を計測する。
【0042】
そして、上記計測結果から、第2突部36において第1突部22に対し平面形状、高さ等の異なっている箇所を特定する。この特定した箇所の上方に位置する圧電素子に電圧を印加してこれを変形させ、ノズル68からインク69を噴射させる。
【0043】
上記方法は、画像処理を逐次行いながら、第2突部36について第1突部22よりも低い箇所を特定し、その箇所にインク69を噴射するものである。これに代え、制御装置において、リッド中間体61における第2凹凸模様33,35をテレビカメラによって撮像する等して、同リッド中間体61の表面形状について、平面に展開した図を予め作成しておいてもよい。この場合、上記と同様に二値化画像処理等の画像処理を行い、インクによる補助突部39の形成される予定の箇所に関するデータを作成する。そして、このデータを基に圧電素子に対する電圧印可を制御するようにしてもよい。
【0044】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)第2突部36の高さH2が第1突部22の高さH1と略同一となるように、第2突部36の少なくとも一部を、金型40による側部30の成形後にインクジェットプリンタのノズル68から噴射されて付着したインク69により形成している。そのため、コンソールリッド11が、側部30の第2意匠面32,34に沿う方向へ型開きされる金型40により一般部20及び側部30が成形されるものでありながら、第1凹凸模様24及び第2凹凸模様33,35の見栄えを略同一にすることができる。第2突部36が第1突部22よりも低いことによる見栄えの相違に起因する外観上の不自然さを解消することができる。
【0045】
(2)型開きの観点から高さの制約を受けるものの、第2突部36の一部を構成する本体突部38を金型40によって形成し、インク69の層69Aからなる補助突部39を本体突部38上に形成し、これら本体突部38及び補助突部39によって第2突部36を構成するようにしている。このように、第2突部36の一部を本体突部38によって構成していることから、インク69によって形成される部分(補助突部39)を少なくすることができる。
【0046】
特に、上記実施形態では、本体突部38の高さh2aを、型開きを確実に行う観点から許容される範囲の上限値に近い高さとしている。そのため、インク69の消費を少なくすることができる。
【0047】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・本発明は、第2意匠面32,34上に本体突部38が形成されず、第2突部36の全部がインク69の層69Aのみによって形成される加飾樹脂成形品にも適用可能である。この場合、第2意匠面32,34が略平らであり、その上にインク69の層69Aのみからなる第2突部36が形成されることとなる。
【0048】
・本体突部38を上記実施形態とは異なる形状に変更してもよい。図13はその一例を示すものである。同図13に示すように、本体突部38は第1突部22(図2参照)の下半部と略同一の形状を有している。本体突部38の頂面38Aは平面となっている。この場合、補助突部39は第1突部22の上半部と略同一の形状を有することとなる。また、補助突部39の形成に際しては、本体突部38上にのみインク69の層69Aが積層される(本体突部38の側面にはインク69の層69Aは形成されない)。
【0049】
これは、補助突部39が形成されることを前提に、金型40により本体突部38を成形するという考え方によるものである。この場合、本体突部38の頂面38Aは補助突部39によって隠されることになるため、同頂面38Aは必ずしも上記のような平面でなくてもよく、多少の凹凸を有する面であってもよい。
【0050】
・本発明は、一般部20の外表面の一部のみを第1意匠面21としたり、側部30の外表面の一部のみを第2意匠面32,34としたりする加飾樹脂成形品にも適用可能である。
【0051】
・本発明は、第1凹凸模様24を第1意匠面21の一部にのみ形成したり、第2凹凸模様33,35を第2意匠面32,34の一部にのみ形成したりする加飾樹脂成形品にも適用可能である。
【0052】
・第2突部36に占める本体突部38の高さを上記実施形態よりも低くしてもよい。
・本発明は、コンソールリッド11以外の自動車用内装品、例えばコンソールボックス等に適用してもよい。また、本発明は、自動車以外の分野において用いられる加飾樹脂成形品にも適用することができる。
【0053】
その他、前記各実施形態から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに記載する。
(A)外表面の少なくとも一部を第1意匠面とする一般部と、前記一般部の外縁部に設けられ、かつ前記第1意匠面に略直交する外表面の少なくとも一部を第2意匠面とする側部とを備え、
前記第1意匠面には第1突部を含む第1凹凸模様が形成されるとともに、前記第2意匠面には前記第1突部よりも高さの低い第2突部を含む第2凹凸模様が形成され、
前記第2意匠面に沿う方向へ型開きされる金型により、前記一般部及び前記側部が成形され、さらに、前記第1凹凸模様及び前記第2凹凸模様のうち少なくとも第1凹凸模様が前記金型により形成される加飾樹脂成形品に適用される方法であって、
前記金型により前記側部を成形した後に、インクジェットプリンタのノズルから前記第2突部に向けてインクを噴射させ、前記第2突部が前記第1突部と略同一の高さとなるまで、前記第2突部上にインクの層を形成することを特徴とする加飾樹脂成形品の加飾方法。
【0054】
この方法によれば、金型の型開きを確実なものにしつつ、第1凹凸模様及び第2凹凸模様の見栄えを略同一にすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を具体化した一実施形態におけるコンソールリッドの断面図。
【図2】一般部の第1意匠面における第1凹凸模様を示す部分拡大断面図。
【図3】側部の第2意匠面における第2凹凸模様を示す部分拡大断面図。
【図4】コンソールリッドを成形するための金型を示す部分断面図。
【図5】可動型における第1模様成形部を示す部分拡大断面図。
【図6】第1模様成形部により第1凹凸模様が形成された状態を示す部分拡大断面図。
【図7】可動型における第2模様成形部を示す部分拡大断面図。
【図8】第2模様成形部により第2凹凸模様が形成された状態を示す部分拡大断面図。
【図9】リッド中間体の本体突部上に補助突部を形成する際に使用される装置を示す部分斜視図。
【図10】図9におけるA部を拡大して示す部分斜視図。
【図11】図9の装置を用いた補助突部の形成に際し、本体突部上にインクを噴射させる状態を示す図であり、(A)は同状態をY方向から見た説明図、(B)は同状態をX方向から見た説明図。
【図12】本体突部上にインクを付着させて補助突部を形成する状態を示す部分拡大断面図。
【図13】第2突部における本体突部及び補助突部の別の実施形態を示す部分拡大断面図。
【符号の説明】
【0056】
11…コンソールリッド(加飾樹脂成形品)、20…一般部、21…第1意匠面、22…第1突部、24…第1凹凸模様、30…側部、32,34…第2意匠面、33,35…第2凹凸模様、36…第2突部、38…本体突部、39…補助突部、40…金型、41…固定型、45…可動型、68…ノズル、69…インク、H1,H2,h2a…高さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面の少なくとも一部を第1意匠面とする一般部と、前記一般部の外縁部に設けられ、かつ前記第1意匠面に略直交する外表面の少なくとも一部を第2意匠面とする側部とを備え、
前記第1意匠面には第1突部を含む第1凹凸模様が形成されるとともに、前記第2意匠面には第2突部を含む第2凹凸模様が形成され、
前記第2意匠面に沿う方向へ型開きされる金型により、前記一般部及び前記側部が成形され、さらに、前記第1凹凸模様及び前記第2凹凸模様のうち少なくとも第1凹凸模様が前記金型により形成される加飾樹脂成形品であって、
前記第2突部が前記第1突部と略同一の高さを有するように、前記第2突部の少なくとも一部が、前記金型による前記側部の成形後にインクジェットプリンタのノズルから噴射されて付着したインクにより形成されていることを特徴とする加飾樹脂成形品。
【請求項2】
前記第2突部は、前記金型により成形された本体突部と、前記本体突部上に付着されたインクにより形成された補助突部とからなる請求項1に記載の加飾樹脂成形品。
【請求項3】
前記本体突部は、前記第1突部の略半分の高さを有する請求項2に記載の加飾樹脂成形品。
【請求項4】
前記第2突部は、その全部が前記ノズルから噴射されて付着したインクにより形成されている請求項1に記載の加飾樹脂成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−279338(P2008−279338A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124555(P2007−124555)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】