劣化測定装置、二次電池パック、劣化測定方法、およびプログラム
【課題】二次電池の劣化測定の精度を向上する技術を提供する。
【解決手段】電池検出部は、二次電池の両端間の電圧を測定する。電流検出部は、二次電池を流れる電流を測定する。制御部は、放電経路における二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持しており、第1の測定時刻から、電流検出部で測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで二次電池を放電させ、第2の測定時刻において、電池検出部で測定される電圧に基づいて二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、外部インピーダンスと内部インピーダンスの和に電流検出部で測定される放電電流を乗算することで、第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出し、第1の測定時刻における第1の開放電圧と第2の開放電圧と放電容量基準値とに基づいて二次電池の復帰容量を算出する。
【解決手段】電池検出部は、二次電池の両端間の電圧を測定する。電流検出部は、二次電池を流れる電流を測定する。制御部は、放電経路における二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持しており、第1の測定時刻から、電流検出部で測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで二次電池を放電させ、第2の測定時刻において、電池検出部で測定される電圧に基づいて二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、外部インピーダンスと内部インピーダンスの和に電流検出部で測定される放電電流を乗算することで、第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出し、第1の測定時刻における第1の開放電圧と第2の開放電圧と放電容量基準値とに基づいて二次電池の復帰容量を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池の劣化測定に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の意義の高まりと共に、PV(Photo Voltaic)発電による余剰電力を蓄積する蓄電システムに電気自動車(EV:Electric Vehicle)やハイブリット電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)等に使用されるリチウムイオン二次電池を用いることが検討されている。また、鉛蓄電池などによる二次電池で生じるような環境問題に対して有効なことでもリチウムイオン二次電池は注目されている。
【0003】
しかし、二次電池には寿命があり、充電と放電を繰り返すことによって劣化していき、フル充電により復帰する電池容量(復帰容量)が低下していく。二次電池の劣化の度合いを測定する方法としては、フル充電した後に完全に放電し、その間に電流および電圧を測定して積算法で電池容量を算出する方法がある。しかし、蓄電システム内で運用されている二次電池が完全に放電されることは稀なので、この方法で電池容量を測定するのは容易ではない。
【0004】
また、特許文献1には、二次電池の満充電時の容量に対する相対的な容量が開放電圧から一意的に定まることを利用して二次電池の総実力容量(復帰容量)を算出する方法が開示されている。特許文献1に開示された方法では、負荷を接続した状態で放電電流を積算し、その後に無負荷の状態にして開放電圧を計測する。そして、開放電圧から相対的な容量値を求め、積算した放電電流と開放電圧から求めた相対的な容量値とから二次電池の総実力容量(復帰容量)を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−224901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に開示された方法は、放電を停止した後に開放電圧を測定するものであり、放電を継続したままで開放電圧を測定することはできない。しかし、システム内で運用されている二次電池に、劣化測定のために任意のタイミングで放電を停止させるのは困難である。
【0007】
また、特許文献1に開示された方法では、放電停止後短時間で開放電圧が一定値に収束することを前提として、放電停止後一定時間が経過してから開放電圧を計測している。しかし、電池に特有のリバウンド動作があり、放電を停止した後に数時間が経過しないと正確な開放電圧を計測できない場合がある。計測される開放電圧が正確でなければ、それを基に算出した復帰容量や劣化度も正確でなくなってしまう。
【0008】
本発明の目的は二次電池の劣化測定を容易かつ高精度にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の劣化測定装置は、
二次電池の両端間の電圧を測定する電池検出部と、
前記二次電池を流れる電流を測定する電流検出部と、
放電経路における前記二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持しており、第1の測定時刻から、前記電流検出部で測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで前記二次電池を放電させ、前記第2の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に前記電流検出部で測定される放電電流を乗算することで、前記第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出し、前記第1の測定時刻における第1の開放電圧と前記第2の開放電圧と前記放電容量基準値とに基づいて前記二次電池の復帰容量を算出する制御部と、を有している。
【0010】
本発明の二次電池パックは、
充電および放電が可能な二次電池と、
前記二次電池の両端間の電圧を測定する電池検出部と、
前記二次電池を流れる電流を測定する電流検出部と、
放電経路における前記二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持しており、第1の測定時刻から、前記電流検出部で測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで前記二次電池を放電させ、前記第2の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に前記電流検出部で測定される放電電流を乗算することで、前記第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出し、前記第1の測定時刻における第1の開放電圧と前記第2の開放電圧と前記放電容量基準値とに基づいて前記二次電池の復帰容量を算出する制御部と、を有している。
【0011】
本発明の劣化測定方法は、
放電経路における二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持し、
第1の測定時刻から、測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで前記二次電池を放電させ、
前記第2の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に、測定される放電電流を乗算することで、前記第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出し、
前記第1の測定時刻における第1の開放電圧と前記第2の開放電圧と前記放電容量基準値とに基づいて前記二次電池の復帰容量を算出するというものである。
【0012】
本発明のプログラムは、
放電経路における二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持する手順と、
第1の測定時刻から、測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで前記二次電池を放電させる手順と、
前記第2の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に、測定される放電電流を乗算することで、前記第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出する手順と、
前記第1の測定時刻における第1の開放電圧と前記第2の開放電圧と前記放電容量基準値とに基づいて前記二次電池の復帰容量を算出する手順と、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二次電池の劣化測定を容易かつ高精度にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態による二次電池パック10の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態による二次電池パック10の制御部14の劣化測定の動作を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態による二次電池パック10の制御部14が開放電圧を測定する動作を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態による二次電池パック10の制御部14が開放電圧を測定するときの動作を示すフローチャートである。
【図5】劣化度と復帰容量の算出について説明するための図である。
【図6】第2の実施形態によるシステム構成を示すブロック図である。
【図7A】二次電池ブロック11の劣化診断の一連の動作を説明するための図である。
【図7B】二次電池ブロック11の劣化診断の一連の動作を説明するための図である。
【図7C】二次電池ブロック11の劣化診断の一連の動作を説明するための図である。
【図8】第2の実施形態において複数の二次電池ブロック11が並列に配置されたシステムの第1の構成例を示すブロックである。
【図9】第2の実施形態において複数の二次電池ブロック11が並列に配置されたシステムの第2の構成例を示すブロックである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による二次電池パックの構成を示すブロック図である。図1を参照すると、二次電池パック10は2つの二次電池ブロック11と制御ブロック12を有している。二次電池ブロック11は複数の二次電池13が直列接続された構成である。制御ブロック12は、制御部14、電池検出部15、電流検出部16、放電スイッチ17、および充電スイッチ18を有している。
【0017】
二次電池パック10は複数個が並列に配置して用いられてもよい。その場合、複数の二次電池パック10を制御する上位システム(不図示)と各二次電池パック10の制御部14とで通信を行い、制御部14が上位システムからの指示で動作することにしてもよい。
【0018】
2つの電池検出部15は、2つの二次電池ブロック11の各二次電池13の両端電圧を検出する。
【0019】
放電スイッチ17は、制御部14からの制御で放電経路をオンオフするスイッチである。充電スイッチ18は、制御部14からの制御で充電経路をオンオフするスイッチである。
【0020】
電流検出部16は、二次電池パック10の放電電流あるいは充電電流を計測する。
【0021】
制御部14は、電池検出部15、電流検出部16、放電スイッチ17、および充電スイッチ18を制御する。制御部14は、二次電池13を放電させるとき放電スイッチ17をオンにし、二次電池13を充電するとき充電スイッチ18をオンにする。
【0022】
劣化していない未使用状態の二次電池13は所定の充電容量(以下「初期容量」という)を有している。二次電池13は充電と放電を繰り返すことで次第に劣化する。劣化が進むと、二次電池13は満充電にしても初期容量まで復帰せず、所定の容量(以下「復帰容量」という)までしか復帰しなくなる。初期容量に対する復帰容量の割合を劣化度という。
【0023】
以下、劣化測定に関する動作について説明する。
【0024】
制御部14は、劣化測定として、復帰容量と劣化度の両方あるいは一方を計測する。ここでは両方を測定するものとする。
【0025】
本実施形態では、放電経路におけるインピーダンスを計算する必要がある。そして、本実施形態におけるインピーダンスの計算では、放電経路のインピーダンスを、二次電池13の内部にある内部インピーダンスと、放電経路における二次電池13の外部にある外部インピーダンスに分離して考える。内部インピーダンスは放電によって変化する。一方、外部インピーダンスは、経時や環境による変化はあり得るが、内部インピーダンスのように放電によって変化するものではない。そこで本実施形態では劣化測定の間は外部インピーダンスが一定であるか、あるいは一定と見なせるようなシステムを想定する。
【0026】
制御部14は、外部インピーダンスの値を予め保持している。この外部インピーダンスは、制御部14が、二次電池13が開放状態から放電状態になったとき、開放状態で電池検出部15にて測定される電圧と、放電状態で電池検出部15にて測定される電圧とに基づいて算出したものである。外部インピーダンスの測定および算出の方法の詳細は後述する。なお、制御部14は、二次電池13が開放状態から放電状態になる毎に、保持している外部インピーダンスを更新することにしてもよい。
【0027】
そして、制御部14は、ある第1の測定時刻から、電流検出部16で測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで二次電池13を放電させる。
【0028】
続いて、制御部14は、第1の測定時刻における第1の開放電圧と第2の測定時刻における第2の開放電圧をそれぞれ算出する。その際、制御部14は、まず、第1の測定時刻あるいは第2の測定時刻において、電池検出部15で測定される電圧に基づいて内部インピーダンスを算出する。内部インピーダンスの算出方法の詳細については後述する。次に、制御部14は、外部インピーダンスと内部インピーダンスの和に電流検出部16で測定される放電電流を乗算することで開放電圧を算出する。
【0029】
続いて、制御部14は、第1の開放電圧と第2の開放電圧と放電容量基準値とに基づいて二次電池13の復帰容量を算出する。具体的には、制御部14は、まず、第1の開放電圧から得られる二次電池13の残容量の復帰容量に対する割合と、第2の開放電圧から得られる二次電池13の残容量の復帰容量に対する割合との差分を放電割合算出値とする。そして、制御部14は、その放電割合算出値に対する、二次電池13の初期容量に対する放電容量基準値の割合である放電割合基準値の割合を劣化度として算出する。
【0030】
更に、制御部14は、初期容量に、算出した劣化度を乗算することにより復帰容量を算出する。
【0031】
図2は、二次電池の放電による電圧変化の様子を示したグラフである。図2には、放電時に測定される電圧(放電電圧)が実線で示され、残容量に依存する開放電圧が破線で示されている。放電経路にある外部インピーダンスのため、概して放電電圧は開放電圧よりも低い値となる。
【0032】
本実施形態では二次電池13を放電させながら残容量を2回測定する。図2のグラフ上で2回の測定タイミングが破線の楕円によって示されている。2回目の測定は、1回目の測定の後に積算される放電容量が放電容量基準値となる時点で行う。2回目の測定は放電を継続しながら行うことになるが、1回目の測定は、1回目の測定時刻(第1の測定時刻)に二次電池13を開放状態から放電状態に移行させる場合と、二次電池13が第1の測定時刻の前から放電状態である場合とがある。
【0033】
(第1のケース)
まずは、第1の測定時刻に二次電池13を開放状態から放電状態に移行させる場合について説明する。第1の測定時刻がAの時点である。
【0034】
Aの時点に測定される放電電圧が第1の測定時刻の開放電圧に等しいので、その開放電圧(第1の開放電圧)から第1の測定時刻の残容量を求めることができる。
【0035】
開放状態にあった二次電池13がAの時点で放電状態となり、放電電圧が短時間に急激に低下し、その後、徐々に放電が進むのに伴って放電電圧が徐々に低下していっている。放電中は、開放電圧を直接測定することはできないが、開放電圧も放電電圧と同様に低下していっている。
【0036】
まず、制御部14は、Aの時点の放電電圧と、Aの時点から第1の指定時間が経過したBの時点からCの時点までの1秒毎の放電電圧を測定する。第1の指定時間は一例として1秒間である。
【0037】
そして、制御部14は、Aの時点の放電電圧(開放電圧に等しい)を、電流検出部16で測定される放電電流で除算する。ここで算出された結果をA時点インピーダンスとし、その値をaオームとする。このA時点インピーダンスは、二次電池13の内部インピーダンスと外部インピーダンスの合計を表している。それは、開放状態からの急激な電圧降下は放電経路に存在する外部インピーダンスによるものであり、急激な電圧降下が終わった後の電圧は二次電池13の内部インピーダンスによるものだからである。第1の指定時間は、急激な電圧降下が観測される期間を包含でき、かつ内部インピーダンスの変化が外部インピーダンスに対して十分に小さくなるような期間を選択するのが好ましい。1秒間は、その好適例である。
【0038】
次に、制御部14は、Bの時点から第2の指定時間が経過するCの時点まで1秒毎に二次電池13の両端間の電圧を測定し、その平均値を、電流検出部16で測定される放電電流で除算する。ここで算出された結果をBC間平均インピーダンスとし、その値をbオームとする。第2の指定時間は一例として9秒間である。このBC間平均インピーダンスが二次電池13の内部インピーダンスを表している。それは、電流が一定という条件下において放電中に変化するインピーダンスが、二次電池13の特性に起因して容量の変化に伴って変化を示す内部インピーダンスだからである。第2の指定時間は、安定した内部インピーダンスが有意に測定でき、かつBC間平均インピーダンスのA時点における内部インピーダンスからのズレが一定範囲内となる程度の時間とするのが好ましい。二次電池13の内部インピーダンスはこのようにして算出することができる。
【0039】
また、制御部14は、算出した内部インピーダンスを二次電池13の温度特性に基づいて、基準温度における値に補正して用いることにしてもよい。
【0040】
更に、制御部14は、A時点インピーダンスからBC間平均インピーダンスを減算することにより、外部インピーダンスを算出する。外部インピーダンスの値をcオームとする。つまり、c=a−bである。外部インピーダンスはこのようにして算出することができる。
【0041】
そのまま放電を継続し、積算される放電容量が放電容量基準値になる第2の測定時刻であるEの時点の近傍のD、F、Gの時点における放電電圧を測定する。第2の測定時刻における放電電圧に、外部インピーダンス分の電圧降下を加算すれば、第2の測定時刻における開放電圧を算出することができる。
【0042】
第2の測定時刻での開放電圧の算出について説明する。
【0043】
Eの時点(第2の測定時刻)の近傍であるDの時点の放電電圧を電流検出部16で測定される放電電流で除算する。ここで算出された結果をD(1)インピーダンスとし、その値をd(1)オームとする。
【0044】
なお、ここでは図2を見て分かるように、第2の測定時刻の開放電圧を算出するのに、第2の測定時刻より前の近傍の時刻の測定値を用いることにしている。これは、第2の測定時刻の直後に放電が終了しても開放電圧の測定を正常に完了できるようにするためである。そのため、制御部14は、第2の測定時刻に達するのを予測してその前に処理を行う必要がある。
【0045】
次に、制御部14は、Fの時点から第2の指定時間(9秒間)が経過するGの時点までの1秒毎の放電電圧を測定し、その平均値を、電流検出部16で測定される放電電流で除算する。ここで算出された結果をD(9)平均インピーダンスとし、その値をd(9)オームとする。
【0046】
ここでD(1)インピーダンスとD(9)平均インピーダンスは、ほぼ内部インピーダンスを表している。したがって、D(1)インピーダンスとD(9)平均インピーダンスのどちらか一方を内部インピーダンスとして用いてもよいし、それらの平均値を用いてもよい。ここでは、一例として、D(1)インピーダンスとD(9)平均インピーダンスの平均値を用いることにする。
【0047】
制御部14は、D(1)インピーダンスとD(9)平均インピーダンスの平均値(内部インピーダンス)に、予め保持しておいた外部インピーダンスを加算し、加算結果のインピーダンスに、電流検出部16で測定される電流値を乗算することで、Dの時点における開放電圧を算出する。このDの時点における開放電圧は、Eの時点における開放電圧の近似値である。
【0048】
このEの時点での開放電圧(第2の開放電圧)から第2の測定時刻における残容量を算出することができる。
【0049】
(第2のケース)
次に、二次電池13が第1の測定時刻の前から放電状態である場合について説明する。
【0050】
制御部14は、外部インピーダンスを第1のケースで用いた方法で予め算出し、保持しているものとする。
【0051】
第1の測定時点の前から放電状態であった場合、放電電圧は、第1のケースにおける第2の測定時刻近傍と類似した遷移になる。つまり、開放状態から放電状態に移行したことによる図2のB時点近傍のような急激な電圧変化は生じない。
【0052】
そこで第2のケースでは、制御部14は、第1のケースで第2の測定時刻における開放電圧を算出したのと同じ方法で、第1の測定時刻における開放電圧も算出する。その際、制御部14は、予め保持しておいた外部インピーダンスの値を用いる。
【0053】
ただし、第2の測定時刻の開放電圧を算出するのに、第2の測定時刻より前の近傍の時刻(図2におけるD、F、Gの時点)の測定値を用いた。しかし、第1の測定時刻における開放電圧を算出するのには、第1の測定時刻より後の近傍の時刻の測定値を用いてもよい。
【0054】
第1あるいは第2のケースにおいて説明した方法で算出した第1の開放電圧および第2の開放電圧と放電容量基準値とに基づいて、二次電池13の復帰容量を算出することができる。
【0055】
図3は、第1の実施形態による二次電池パック10の制御部14の劣化測定の動作を示すフローチャートである。
【0056】
図3を参照すると、制御部14は、まず、二次電池13の放電を行っている状態で1回目の開放電圧を測定する(ステップ101)。このときに二次電池13の放電を開始するのであれば、このとき外部インピーダンスを測定して更新する。
【0057】
続いて、制御部14は、二次電池13を放電容量基準値だけ放電させる(ステップ102)。そして、制御部14は、二次電池13の放電を継続しながら2回目の開放電圧を測定する。
【0058】
図4は、第1の実施形態による二次電池パック10の制御部14が開放電圧を測定するときの動作を示すフローチャートである。本フローは1回目および2回目の開放電圧の測定に共通する。
【0059】
制御部14は、上述したように複数の時点での放電電圧を測定し、その測定値を基に、二次電池13の内部インピーダンス、外部インピーダンス、開放電圧、残容量を算出する。そのために、制御部14は、必要回数の電圧測定を繰り返した後に、開放電圧等の算出処理に移行する。必要回数は、図2の例では、1回目の開放電圧の測定でAの1回と、B〜Cの9回の合計10回であり、2回目の開放電圧の測定でも同様にD、F〜Gの10回である。
【0060】
図4を参照すると、制御部14は、まず電池検出部15を用いて二次電池13の開放電圧を計測する(ステップ201)。続いて、制御部14は、開放電圧の測定回数が必要回数に達したか否か判定する(ステップ202)。測定回数が必要回数に達していなければ、制御部14は再度、ステップ201に戻って開放電圧を再度測定する。
【0061】
測定回数が必要回数に達すると、制御部14は、それらの測定結果から開放電圧を算出する(ステップ203)。
【0062】
制御部14は、開放電圧を定めると、図3に戻って、ステップ101で測定した1回目の開放電圧と、ステップ102で測定した2回目の開放電圧と、放電容量基準値とから、二次電池13の劣化度と復帰容量を算出する(ステップ104)。
【0063】
以上説明したように、本実施形態によれば、放電によって変化しない外部インピーダンスを予め保持しておき、測定される放電電圧から算出される内部インピーダンスと、保持しておいた外部インピーダンスとを用いて開放電圧を算出するので、放電を継続しながら高精度の劣化測定が可能である。
【0064】
また、二次電池13の内部インピーダンスの温度特性を補償するので、より高精度な劣化測定が可能となる。
【0065】
また、満充電から完全に放電しきるまで放電を行う必要がないので、短時間で高精度の劣化測定が可能であり、二次電池パック10を用いた充放電システムの定期的なメンテナンスに要する時間を短縮あるいはメンテナンスを省くことができる。
【0066】
また、二次電池パック10の復帰容量や劣化度が高精度で得られるので、保守点検や交換の時期を適切に提示することが可能となる。
【0067】
また、二次電池パック10を完全に放電させずに高精度の劣化測定が可能なので、複数の二次電池パック10を並列に配置し、上位装置がそれらを監視する充放電システムにおいて、二次電池パック10間のアンバランスを容易に抽出することができる。
【0068】
また、通常は放電が行われず、稀に一部の放電が行われるような待機用途の充放電システムにおいても、少ない放電の機会に劣化測定が可能である。
【0069】
(具体例)
次に、本実施形態における劣化度と復帰容量の算出例について説明する。
【0070】
図5は、劣化度と復帰容量の算出について説明するための図である。
【0071】
図5を参照すると、劣化前には初期容量1000の二次電池が充電と放電の繰り返しにより復帰容量が700にまで劣化しているものとする。ここでは、ある充電状態から劣化測定を開始するものとする。
【0072】
劣化測定を開始するとき(放電前)の残容量は600であるとする。二次電池の残容量の復帰容量に対する割合は開放電圧から得られる。復帰容量が700のときに残容量が600であれば、残容量の復帰容量に対する割合は約85.7%である。
【0073】
ここでは、二次電池の初期容量に対する、放電する容量の基準値(放電容量基準値)の割合(放電割合基準値)を10%とする。この状態から、初期容量の10%に当たる容量100だけ放電すると残容量は500となる。復帰容量が700のときに残容量が500であれば、残容量の復帰容量に対する割合は約71.4%である。
【0074】
したがって、放電前の二次電池の残容量の復帰容量に対する割合と、放電後の開放電圧から得られる二次電池の残容量の復帰容量に対する割合との差分(放電割合算出値)が14.3%となる。そして、放電割合算出値(14.3%)に対する放電割合基準値(10%)の割合は約70%となり、これが劣化度である。この劣化度を初期容量に乗算すると、劣化後の復帰容量700が得られる。
【0075】
なお、第1の実施形態では、劣化測定の間は負荷である外部インピーダンスが一定であるか、あるいは一定と見なせるようなシステムを想定した。例えば、第1の測定時刻と第2の測定時刻の時間間隔が短ければ、外部インピーダンスを一定と見なすことが可能になる。放電容量基準値を小さな値に設定することで第1の測定時刻と第2の測定時刻の時間間隔を短くすることができる。また、夜間などの負荷の変動が少ない時間帯に測定を行うことにより、外部インピーダンスを一定と見なせる状態で測定を行うことも可能になる。また、測定中には負荷を変動させないようにシステムを運用することで外部インピーダンスが一定の状態で測定を行うことも可能になる。
【0076】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、劣化測定の間は負荷である外部インピーダンスが一定であるか、あるいは一定と見なせるようなシステムを想定した。しかし、実際のシステムでは、負荷を一定と見なすことができない場合も多い。例えば、住宅に備えられるシステムではエアコンなどの電化製品の使用状況によって負荷が変動する。第2の実施形態では、負荷が一定と見なせないようなシステムにおいても二次電池の劣化測定を容易かつ高精度に行えるようにする。
【0077】
図6は、第2の実施形態によるシステム構成を示すブロック図である。図6における二次電池ブロック11、電池検出部15、電流検出部16、放電スイッチ17、および充電スイッチ18は図1に示した第1の実施形態のものと同じである。また、図6の制御部14は図1に示した第1の実施形態の制御部14に対応する。
【0078】
本実施形態では、二次電池ブロック11が診断スイッチ21に接続され、診断スイッチ21の切り替えにより、負荷23と診断用負荷22のいずれか一方に接続される。負荷23は、本システムが電力を供給する実際の負荷であり、その値は変化する。診断用負荷22は、二次電池ブロック11の劣化測定に用いる値が一定の負荷である。診断スイッチ21の切り替えは制御部14によって制御される。
【0079】
制御部14は、基本的には第1の実施形態と同様の動作を行うが、二次電池ブロック11の二次電池13内部にある内部インピーダンスの算出に用いる電圧を電池検出部15で測定するときには、二次電池ブロック11を診断用負荷22に接続する。具体的には、制御部14は、1回目の測定タイミング(図2のグラフ上で左側の破線の楕円によって示した測定タイミング)において、図7Aのように二次電池ブロック11を一定値raの診断用負荷22に接続する。1回目の測定から2回目の測定までの間、制御部14は、図7Bのように二次電池ブロック11を抵抗値Rが変動する実際の負荷23に接続し、実際の負荷23に電力を供給することによって二次電池ブロック11を放電させる。そして、制御部14は、2回目の測定タイミング(図2のグラフ上で右側の破線の楕円によって示した測定タイミング)において、図7Cのように再び二次電池ブロック11を診断用負荷22に接続する。
【0080】
本実施形態によれば、二次電池ブロック11の劣化測定においては、値が変動しない診断用負荷23を用いるので、負荷23が変動するシステムにおいても二次電池ブロック11の劣化測定を容易かつ高精度に行える。
【0081】
なお、第1の実施形態では、制御部14は、算出した内部インピーダンスから外部インピーダンスを算出したが、第2の実施形態では、外部インピーダンスが予め定まった一定値の診断用負荷22なので、制御部14は外部インピーダンスを算出する必要が無い。
【0082】
また、本実施形態において、複数の二次電池ブロック11が並列に配置され、共通接続された端子から負荷23に対して電力を供給するものであってもよい。
【0083】
図8は、第2の実施形態において複数の二次電池ブロック11が並列に配置されたシステムの第1の構成例を示すブロックである。第1の構成例では、二次電池ブロック11が#1〜#3の3系統分あり、それら3つの二次電池ブロック11が並列接続されている。
【0084】
そして、3つの二次電池ブロック11のそれぞれに対して1つずつ診断用負荷22が備えられている。
【0085】
制御部14は、3つの二次電池ブロック11のそれぞれに対応させて3つあってもよく、3つの二次電池ブロック11に共通に1つであってもよい。制御部14は、複数の二次電池ブロック11のいずれかを劣化診断対象とし、劣化診断対象の二次電池ブロック11の内部インピーダンスの算出に用いる電圧を、その電池検出部15で測定するとき、診断スイッチ21を制御して、その二次電池ブロック11をそれに対応する診断用負荷22に接続する。また、制御部14は、劣化診断対象ではない二次電池ブロック11については常時実際の負荷23に接続しておく。図8の例では、#1系統の二次電池ブロック11が劣化診断対象となっている。
【0086】
図9は、第2の実施形態において複数の二次電池ブロック11が並列に配置されたシステムの第2の構成例を示すブロックである。第2の構成例でも、二次電池ブロック11が#1〜#3の3系統分あり、それら3つの二次電池ブロック11が並列接続されている。
【0087】
ただし、3つの二次電池ブロック11に共通に1つの診断用負荷22が備えられている。
【0088】
制御部14は、3つの二次電池ブロック11のそれぞれに対応させて3つあってもよく、3つの二次電池ブロック11に共通に1つであってもよい。制御部14は、3つの二次電池ブロック11のいずれかを劣化診断対象とし、劣化診断対象の二次電池ブロック11の内部インピーダンスの算出に用いる電圧をその電池検出部15で測定するとき、その二次電池ブロック11を共通の診断用負荷22に接続する。また、制御部14は、劣化診断対象ではない二次電池ブロック11については常時実際の負荷23に接続しておく。図9の例では、#1系統の二次電池ブロック11が劣化診断対象となっている。
【0089】
なお、以上説明した各実施形態において、制御部14の動作は、記録媒体に記録されているソフトウェアプログラムをコンピュータが実行することによっても実現され得るものである。
【符号の説明】
【0090】
10 二次電池パック
11 二次電池ブロック
12 制御ブロック
13 二次電池
14 制御部
15 電池検出部
16 電流検出部
17 放電スイッチ
18 充電スイッチ
21 診断スイッチ
22 診断用負荷
23 負荷
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池の劣化測定に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の意義の高まりと共に、PV(Photo Voltaic)発電による余剰電力を蓄積する蓄電システムに電気自動車(EV:Electric Vehicle)やハイブリット電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)等に使用されるリチウムイオン二次電池を用いることが検討されている。また、鉛蓄電池などによる二次電池で生じるような環境問題に対して有効なことでもリチウムイオン二次電池は注目されている。
【0003】
しかし、二次電池には寿命があり、充電と放電を繰り返すことによって劣化していき、フル充電により復帰する電池容量(復帰容量)が低下していく。二次電池の劣化の度合いを測定する方法としては、フル充電した後に完全に放電し、その間に電流および電圧を測定して積算法で電池容量を算出する方法がある。しかし、蓄電システム内で運用されている二次電池が完全に放電されることは稀なので、この方法で電池容量を測定するのは容易ではない。
【0004】
また、特許文献1には、二次電池の満充電時の容量に対する相対的な容量が開放電圧から一意的に定まることを利用して二次電池の総実力容量(復帰容量)を算出する方法が開示されている。特許文献1に開示された方法では、負荷を接続した状態で放電電流を積算し、その後に無負荷の状態にして開放電圧を計測する。そして、開放電圧から相対的な容量値を求め、積算した放電電流と開放電圧から求めた相対的な容量値とから二次電池の総実力容量(復帰容量)を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−224901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に開示された方法は、放電を停止した後に開放電圧を測定するものであり、放電を継続したままで開放電圧を測定することはできない。しかし、システム内で運用されている二次電池に、劣化測定のために任意のタイミングで放電を停止させるのは困難である。
【0007】
また、特許文献1に開示された方法では、放電停止後短時間で開放電圧が一定値に収束することを前提として、放電停止後一定時間が経過してから開放電圧を計測している。しかし、電池に特有のリバウンド動作があり、放電を停止した後に数時間が経過しないと正確な開放電圧を計測できない場合がある。計測される開放電圧が正確でなければ、それを基に算出した復帰容量や劣化度も正確でなくなってしまう。
【0008】
本発明の目的は二次電池の劣化測定を容易かつ高精度にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の劣化測定装置は、
二次電池の両端間の電圧を測定する電池検出部と、
前記二次電池を流れる電流を測定する電流検出部と、
放電経路における前記二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持しており、第1の測定時刻から、前記電流検出部で測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで前記二次電池を放電させ、前記第2の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に前記電流検出部で測定される放電電流を乗算することで、前記第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出し、前記第1の測定時刻における第1の開放電圧と前記第2の開放電圧と前記放電容量基準値とに基づいて前記二次電池の復帰容量を算出する制御部と、を有している。
【0010】
本発明の二次電池パックは、
充電および放電が可能な二次電池と、
前記二次電池の両端間の電圧を測定する電池検出部と、
前記二次電池を流れる電流を測定する電流検出部と、
放電経路における前記二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持しており、第1の測定時刻から、前記電流検出部で測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで前記二次電池を放電させ、前記第2の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に前記電流検出部で測定される放電電流を乗算することで、前記第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出し、前記第1の測定時刻における第1の開放電圧と前記第2の開放電圧と前記放電容量基準値とに基づいて前記二次電池の復帰容量を算出する制御部と、を有している。
【0011】
本発明の劣化測定方法は、
放電経路における二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持し、
第1の測定時刻から、測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで前記二次電池を放電させ、
前記第2の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に、測定される放電電流を乗算することで、前記第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出し、
前記第1の測定時刻における第1の開放電圧と前記第2の開放電圧と前記放電容量基準値とに基づいて前記二次電池の復帰容量を算出するというものである。
【0012】
本発明のプログラムは、
放電経路における二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持する手順と、
第1の測定時刻から、測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで前記二次電池を放電させる手順と、
前記第2の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に、測定される放電電流を乗算することで、前記第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出する手順と、
前記第1の測定時刻における第1の開放電圧と前記第2の開放電圧と前記放電容量基準値とに基づいて前記二次電池の復帰容量を算出する手順と、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二次電池の劣化測定を容易かつ高精度にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態による二次電池パック10の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態による二次電池パック10の制御部14の劣化測定の動作を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態による二次電池パック10の制御部14が開放電圧を測定する動作を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態による二次電池パック10の制御部14が開放電圧を測定するときの動作を示すフローチャートである。
【図5】劣化度と復帰容量の算出について説明するための図である。
【図6】第2の実施形態によるシステム構成を示すブロック図である。
【図7A】二次電池ブロック11の劣化診断の一連の動作を説明するための図である。
【図7B】二次電池ブロック11の劣化診断の一連の動作を説明するための図である。
【図7C】二次電池ブロック11の劣化診断の一連の動作を説明するための図である。
【図8】第2の実施形態において複数の二次電池ブロック11が並列に配置されたシステムの第1の構成例を示すブロックである。
【図9】第2の実施形態において複数の二次電池ブロック11が並列に配置されたシステムの第2の構成例を示すブロックである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による二次電池パックの構成を示すブロック図である。図1を参照すると、二次電池パック10は2つの二次電池ブロック11と制御ブロック12を有している。二次電池ブロック11は複数の二次電池13が直列接続された構成である。制御ブロック12は、制御部14、電池検出部15、電流検出部16、放電スイッチ17、および充電スイッチ18を有している。
【0017】
二次電池パック10は複数個が並列に配置して用いられてもよい。その場合、複数の二次電池パック10を制御する上位システム(不図示)と各二次電池パック10の制御部14とで通信を行い、制御部14が上位システムからの指示で動作することにしてもよい。
【0018】
2つの電池検出部15は、2つの二次電池ブロック11の各二次電池13の両端電圧を検出する。
【0019】
放電スイッチ17は、制御部14からの制御で放電経路をオンオフするスイッチである。充電スイッチ18は、制御部14からの制御で充電経路をオンオフするスイッチである。
【0020】
電流検出部16は、二次電池パック10の放電電流あるいは充電電流を計測する。
【0021】
制御部14は、電池検出部15、電流検出部16、放電スイッチ17、および充電スイッチ18を制御する。制御部14は、二次電池13を放電させるとき放電スイッチ17をオンにし、二次電池13を充電するとき充電スイッチ18をオンにする。
【0022】
劣化していない未使用状態の二次電池13は所定の充電容量(以下「初期容量」という)を有している。二次電池13は充電と放電を繰り返すことで次第に劣化する。劣化が進むと、二次電池13は満充電にしても初期容量まで復帰せず、所定の容量(以下「復帰容量」という)までしか復帰しなくなる。初期容量に対する復帰容量の割合を劣化度という。
【0023】
以下、劣化測定に関する動作について説明する。
【0024】
制御部14は、劣化測定として、復帰容量と劣化度の両方あるいは一方を計測する。ここでは両方を測定するものとする。
【0025】
本実施形態では、放電経路におけるインピーダンスを計算する必要がある。そして、本実施形態におけるインピーダンスの計算では、放電経路のインピーダンスを、二次電池13の内部にある内部インピーダンスと、放電経路における二次電池13の外部にある外部インピーダンスに分離して考える。内部インピーダンスは放電によって変化する。一方、外部インピーダンスは、経時や環境による変化はあり得るが、内部インピーダンスのように放電によって変化するものではない。そこで本実施形態では劣化測定の間は外部インピーダンスが一定であるか、あるいは一定と見なせるようなシステムを想定する。
【0026】
制御部14は、外部インピーダンスの値を予め保持している。この外部インピーダンスは、制御部14が、二次電池13が開放状態から放電状態になったとき、開放状態で電池検出部15にて測定される電圧と、放電状態で電池検出部15にて測定される電圧とに基づいて算出したものである。外部インピーダンスの測定および算出の方法の詳細は後述する。なお、制御部14は、二次電池13が開放状態から放電状態になる毎に、保持している外部インピーダンスを更新することにしてもよい。
【0027】
そして、制御部14は、ある第1の測定時刻から、電流検出部16で測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで二次電池13を放電させる。
【0028】
続いて、制御部14は、第1の測定時刻における第1の開放電圧と第2の測定時刻における第2の開放電圧をそれぞれ算出する。その際、制御部14は、まず、第1の測定時刻あるいは第2の測定時刻において、電池検出部15で測定される電圧に基づいて内部インピーダンスを算出する。内部インピーダンスの算出方法の詳細については後述する。次に、制御部14は、外部インピーダンスと内部インピーダンスの和に電流検出部16で測定される放電電流を乗算することで開放電圧を算出する。
【0029】
続いて、制御部14は、第1の開放電圧と第2の開放電圧と放電容量基準値とに基づいて二次電池13の復帰容量を算出する。具体的には、制御部14は、まず、第1の開放電圧から得られる二次電池13の残容量の復帰容量に対する割合と、第2の開放電圧から得られる二次電池13の残容量の復帰容量に対する割合との差分を放電割合算出値とする。そして、制御部14は、その放電割合算出値に対する、二次電池13の初期容量に対する放電容量基準値の割合である放電割合基準値の割合を劣化度として算出する。
【0030】
更に、制御部14は、初期容量に、算出した劣化度を乗算することにより復帰容量を算出する。
【0031】
図2は、二次電池の放電による電圧変化の様子を示したグラフである。図2には、放電時に測定される電圧(放電電圧)が実線で示され、残容量に依存する開放電圧が破線で示されている。放電経路にある外部インピーダンスのため、概して放電電圧は開放電圧よりも低い値となる。
【0032】
本実施形態では二次電池13を放電させながら残容量を2回測定する。図2のグラフ上で2回の測定タイミングが破線の楕円によって示されている。2回目の測定は、1回目の測定の後に積算される放電容量が放電容量基準値となる時点で行う。2回目の測定は放電を継続しながら行うことになるが、1回目の測定は、1回目の測定時刻(第1の測定時刻)に二次電池13を開放状態から放電状態に移行させる場合と、二次電池13が第1の測定時刻の前から放電状態である場合とがある。
【0033】
(第1のケース)
まずは、第1の測定時刻に二次電池13を開放状態から放電状態に移行させる場合について説明する。第1の測定時刻がAの時点である。
【0034】
Aの時点に測定される放電電圧が第1の測定時刻の開放電圧に等しいので、その開放電圧(第1の開放電圧)から第1の測定時刻の残容量を求めることができる。
【0035】
開放状態にあった二次電池13がAの時点で放電状態となり、放電電圧が短時間に急激に低下し、その後、徐々に放電が進むのに伴って放電電圧が徐々に低下していっている。放電中は、開放電圧を直接測定することはできないが、開放電圧も放電電圧と同様に低下していっている。
【0036】
まず、制御部14は、Aの時点の放電電圧と、Aの時点から第1の指定時間が経過したBの時点からCの時点までの1秒毎の放電電圧を測定する。第1の指定時間は一例として1秒間である。
【0037】
そして、制御部14は、Aの時点の放電電圧(開放電圧に等しい)を、電流検出部16で測定される放電電流で除算する。ここで算出された結果をA時点インピーダンスとし、その値をaオームとする。このA時点インピーダンスは、二次電池13の内部インピーダンスと外部インピーダンスの合計を表している。それは、開放状態からの急激な電圧降下は放電経路に存在する外部インピーダンスによるものであり、急激な電圧降下が終わった後の電圧は二次電池13の内部インピーダンスによるものだからである。第1の指定時間は、急激な電圧降下が観測される期間を包含でき、かつ内部インピーダンスの変化が外部インピーダンスに対して十分に小さくなるような期間を選択するのが好ましい。1秒間は、その好適例である。
【0038】
次に、制御部14は、Bの時点から第2の指定時間が経過するCの時点まで1秒毎に二次電池13の両端間の電圧を測定し、その平均値を、電流検出部16で測定される放電電流で除算する。ここで算出された結果をBC間平均インピーダンスとし、その値をbオームとする。第2の指定時間は一例として9秒間である。このBC間平均インピーダンスが二次電池13の内部インピーダンスを表している。それは、電流が一定という条件下において放電中に変化するインピーダンスが、二次電池13の特性に起因して容量の変化に伴って変化を示す内部インピーダンスだからである。第2の指定時間は、安定した内部インピーダンスが有意に測定でき、かつBC間平均インピーダンスのA時点における内部インピーダンスからのズレが一定範囲内となる程度の時間とするのが好ましい。二次電池13の内部インピーダンスはこのようにして算出することができる。
【0039】
また、制御部14は、算出した内部インピーダンスを二次電池13の温度特性に基づいて、基準温度における値に補正して用いることにしてもよい。
【0040】
更に、制御部14は、A時点インピーダンスからBC間平均インピーダンスを減算することにより、外部インピーダンスを算出する。外部インピーダンスの値をcオームとする。つまり、c=a−bである。外部インピーダンスはこのようにして算出することができる。
【0041】
そのまま放電を継続し、積算される放電容量が放電容量基準値になる第2の測定時刻であるEの時点の近傍のD、F、Gの時点における放電電圧を測定する。第2の測定時刻における放電電圧に、外部インピーダンス分の電圧降下を加算すれば、第2の測定時刻における開放電圧を算出することができる。
【0042】
第2の測定時刻での開放電圧の算出について説明する。
【0043】
Eの時点(第2の測定時刻)の近傍であるDの時点の放電電圧を電流検出部16で測定される放電電流で除算する。ここで算出された結果をD(1)インピーダンスとし、その値をd(1)オームとする。
【0044】
なお、ここでは図2を見て分かるように、第2の測定時刻の開放電圧を算出するのに、第2の測定時刻より前の近傍の時刻の測定値を用いることにしている。これは、第2の測定時刻の直後に放電が終了しても開放電圧の測定を正常に完了できるようにするためである。そのため、制御部14は、第2の測定時刻に達するのを予測してその前に処理を行う必要がある。
【0045】
次に、制御部14は、Fの時点から第2の指定時間(9秒間)が経過するGの時点までの1秒毎の放電電圧を測定し、その平均値を、電流検出部16で測定される放電電流で除算する。ここで算出された結果をD(9)平均インピーダンスとし、その値をd(9)オームとする。
【0046】
ここでD(1)インピーダンスとD(9)平均インピーダンスは、ほぼ内部インピーダンスを表している。したがって、D(1)インピーダンスとD(9)平均インピーダンスのどちらか一方を内部インピーダンスとして用いてもよいし、それらの平均値を用いてもよい。ここでは、一例として、D(1)インピーダンスとD(9)平均インピーダンスの平均値を用いることにする。
【0047】
制御部14は、D(1)インピーダンスとD(9)平均インピーダンスの平均値(内部インピーダンス)に、予め保持しておいた外部インピーダンスを加算し、加算結果のインピーダンスに、電流検出部16で測定される電流値を乗算することで、Dの時点における開放電圧を算出する。このDの時点における開放電圧は、Eの時点における開放電圧の近似値である。
【0048】
このEの時点での開放電圧(第2の開放電圧)から第2の測定時刻における残容量を算出することができる。
【0049】
(第2のケース)
次に、二次電池13が第1の測定時刻の前から放電状態である場合について説明する。
【0050】
制御部14は、外部インピーダンスを第1のケースで用いた方法で予め算出し、保持しているものとする。
【0051】
第1の測定時点の前から放電状態であった場合、放電電圧は、第1のケースにおける第2の測定時刻近傍と類似した遷移になる。つまり、開放状態から放電状態に移行したことによる図2のB時点近傍のような急激な電圧変化は生じない。
【0052】
そこで第2のケースでは、制御部14は、第1のケースで第2の測定時刻における開放電圧を算出したのと同じ方法で、第1の測定時刻における開放電圧も算出する。その際、制御部14は、予め保持しておいた外部インピーダンスの値を用いる。
【0053】
ただし、第2の測定時刻の開放電圧を算出するのに、第2の測定時刻より前の近傍の時刻(図2におけるD、F、Gの時点)の測定値を用いた。しかし、第1の測定時刻における開放電圧を算出するのには、第1の測定時刻より後の近傍の時刻の測定値を用いてもよい。
【0054】
第1あるいは第2のケースにおいて説明した方法で算出した第1の開放電圧および第2の開放電圧と放電容量基準値とに基づいて、二次電池13の復帰容量を算出することができる。
【0055】
図3は、第1の実施形態による二次電池パック10の制御部14の劣化測定の動作を示すフローチャートである。
【0056】
図3を参照すると、制御部14は、まず、二次電池13の放電を行っている状態で1回目の開放電圧を測定する(ステップ101)。このときに二次電池13の放電を開始するのであれば、このとき外部インピーダンスを測定して更新する。
【0057】
続いて、制御部14は、二次電池13を放電容量基準値だけ放電させる(ステップ102)。そして、制御部14は、二次電池13の放電を継続しながら2回目の開放電圧を測定する。
【0058】
図4は、第1の実施形態による二次電池パック10の制御部14が開放電圧を測定するときの動作を示すフローチャートである。本フローは1回目および2回目の開放電圧の測定に共通する。
【0059】
制御部14は、上述したように複数の時点での放電電圧を測定し、その測定値を基に、二次電池13の内部インピーダンス、外部インピーダンス、開放電圧、残容量を算出する。そのために、制御部14は、必要回数の電圧測定を繰り返した後に、開放電圧等の算出処理に移行する。必要回数は、図2の例では、1回目の開放電圧の測定でAの1回と、B〜Cの9回の合計10回であり、2回目の開放電圧の測定でも同様にD、F〜Gの10回である。
【0060】
図4を参照すると、制御部14は、まず電池検出部15を用いて二次電池13の開放電圧を計測する(ステップ201)。続いて、制御部14は、開放電圧の測定回数が必要回数に達したか否か判定する(ステップ202)。測定回数が必要回数に達していなければ、制御部14は再度、ステップ201に戻って開放電圧を再度測定する。
【0061】
測定回数が必要回数に達すると、制御部14は、それらの測定結果から開放電圧を算出する(ステップ203)。
【0062】
制御部14は、開放電圧を定めると、図3に戻って、ステップ101で測定した1回目の開放電圧と、ステップ102で測定した2回目の開放電圧と、放電容量基準値とから、二次電池13の劣化度と復帰容量を算出する(ステップ104)。
【0063】
以上説明したように、本実施形態によれば、放電によって変化しない外部インピーダンスを予め保持しておき、測定される放電電圧から算出される内部インピーダンスと、保持しておいた外部インピーダンスとを用いて開放電圧を算出するので、放電を継続しながら高精度の劣化測定が可能である。
【0064】
また、二次電池13の内部インピーダンスの温度特性を補償するので、より高精度な劣化測定が可能となる。
【0065】
また、満充電から完全に放電しきるまで放電を行う必要がないので、短時間で高精度の劣化測定が可能であり、二次電池パック10を用いた充放電システムの定期的なメンテナンスに要する時間を短縮あるいはメンテナンスを省くことができる。
【0066】
また、二次電池パック10の復帰容量や劣化度が高精度で得られるので、保守点検や交換の時期を適切に提示することが可能となる。
【0067】
また、二次電池パック10を完全に放電させずに高精度の劣化測定が可能なので、複数の二次電池パック10を並列に配置し、上位装置がそれらを監視する充放電システムにおいて、二次電池パック10間のアンバランスを容易に抽出することができる。
【0068】
また、通常は放電が行われず、稀に一部の放電が行われるような待機用途の充放電システムにおいても、少ない放電の機会に劣化測定が可能である。
【0069】
(具体例)
次に、本実施形態における劣化度と復帰容量の算出例について説明する。
【0070】
図5は、劣化度と復帰容量の算出について説明するための図である。
【0071】
図5を参照すると、劣化前には初期容量1000の二次電池が充電と放電の繰り返しにより復帰容量が700にまで劣化しているものとする。ここでは、ある充電状態から劣化測定を開始するものとする。
【0072】
劣化測定を開始するとき(放電前)の残容量は600であるとする。二次電池の残容量の復帰容量に対する割合は開放電圧から得られる。復帰容量が700のときに残容量が600であれば、残容量の復帰容量に対する割合は約85.7%である。
【0073】
ここでは、二次電池の初期容量に対する、放電する容量の基準値(放電容量基準値)の割合(放電割合基準値)を10%とする。この状態から、初期容量の10%に当たる容量100だけ放電すると残容量は500となる。復帰容量が700のときに残容量が500であれば、残容量の復帰容量に対する割合は約71.4%である。
【0074】
したがって、放電前の二次電池の残容量の復帰容量に対する割合と、放電後の開放電圧から得られる二次電池の残容量の復帰容量に対する割合との差分(放電割合算出値)が14.3%となる。そして、放電割合算出値(14.3%)に対する放電割合基準値(10%)の割合は約70%となり、これが劣化度である。この劣化度を初期容量に乗算すると、劣化後の復帰容量700が得られる。
【0075】
なお、第1の実施形態では、劣化測定の間は負荷である外部インピーダンスが一定であるか、あるいは一定と見なせるようなシステムを想定した。例えば、第1の測定時刻と第2の測定時刻の時間間隔が短ければ、外部インピーダンスを一定と見なすことが可能になる。放電容量基準値を小さな値に設定することで第1の測定時刻と第2の測定時刻の時間間隔を短くすることができる。また、夜間などの負荷の変動が少ない時間帯に測定を行うことにより、外部インピーダンスを一定と見なせる状態で測定を行うことも可能になる。また、測定中には負荷を変動させないようにシステムを運用することで外部インピーダンスが一定の状態で測定を行うことも可能になる。
【0076】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、劣化測定の間は負荷である外部インピーダンスが一定であるか、あるいは一定と見なせるようなシステムを想定した。しかし、実際のシステムでは、負荷を一定と見なすことができない場合も多い。例えば、住宅に備えられるシステムではエアコンなどの電化製品の使用状況によって負荷が変動する。第2の実施形態では、負荷が一定と見なせないようなシステムにおいても二次電池の劣化測定を容易かつ高精度に行えるようにする。
【0077】
図6は、第2の実施形態によるシステム構成を示すブロック図である。図6における二次電池ブロック11、電池検出部15、電流検出部16、放電スイッチ17、および充電スイッチ18は図1に示した第1の実施形態のものと同じである。また、図6の制御部14は図1に示した第1の実施形態の制御部14に対応する。
【0078】
本実施形態では、二次電池ブロック11が診断スイッチ21に接続され、診断スイッチ21の切り替えにより、負荷23と診断用負荷22のいずれか一方に接続される。負荷23は、本システムが電力を供給する実際の負荷であり、その値は変化する。診断用負荷22は、二次電池ブロック11の劣化測定に用いる値が一定の負荷である。診断スイッチ21の切り替えは制御部14によって制御される。
【0079】
制御部14は、基本的には第1の実施形態と同様の動作を行うが、二次電池ブロック11の二次電池13内部にある内部インピーダンスの算出に用いる電圧を電池検出部15で測定するときには、二次電池ブロック11を診断用負荷22に接続する。具体的には、制御部14は、1回目の測定タイミング(図2のグラフ上で左側の破線の楕円によって示した測定タイミング)において、図7Aのように二次電池ブロック11を一定値raの診断用負荷22に接続する。1回目の測定から2回目の測定までの間、制御部14は、図7Bのように二次電池ブロック11を抵抗値Rが変動する実際の負荷23に接続し、実際の負荷23に電力を供給することによって二次電池ブロック11を放電させる。そして、制御部14は、2回目の測定タイミング(図2のグラフ上で右側の破線の楕円によって示した測定タイミング)において、図7Cのように再び二次電池ブロック11を診断用負荷22に接続する。
【0080】
本実施形態によれば、二次電池ブロック11の劣化測定においては、値が変動しない診断用負荷23を用いるので、負荷23が変動するシステムにおいても二次電池ブロック11の劣化測定を容易かつ高精度に行える。
【0081】
なお、第1の実施形態では、制御部14は、算出した内部インピーダンスから外部インピーダンスを算出したが、第2の実施形態では、外部インピーダンスが予め定まった一定値の診断用負荷22なので、制御部14は外部インピーダンスを算出する必要が無い。
【0082】
また、本実施形態において、複数の二次電池ブロック11が並列に配置され、共通接続された端子から負荷23に対して電力を供給するものであってもよい。
【0083】
図8は、第2の実施形態において複数の二次電池ブロック11が並列に配置されたシステムの第1の構成例を示すブロックである。第1の構成例では、二次電池ブロック11が#1〜#3の3系統分あり、それら3つの二次電池ブロック11が並列接続されている。
【0084】
そして、3つの二次電池ブロック11のそれぞれに対して1つずつ診断用負荷22が備えられている。
【0085】
制御部14は、3つの二次電池ブロック11のそれぞれに対応させて3つあってもよく、3つの二次電池ブロック11に共通に1つであってもよい。制御部14は、複数の二次電池ブロック11のいずれかを劣化診断対象とし、劣化診断対象の二次電池ブロック11の内部インピーダンスの算出に用いる電圧を、その電池検出部15で測定するとき、診断スイッチ21を制御して、その二次電池ブロック11をそれに対応する診断用負荷22に接続する。また、制御部14は、劣化診断対象ではない二次電池ブロック11については常時実際の負荷23に接続しておく。図8の例では、#1系統の二次電池ブロック11が劣化診断対象となっている。
【0086】
図9は、第2の実施形態において複数の二次電池ブロック11が並列に配置されたシステムの第2の構成例を示すブロックである。第2の構成例でも、二次電池ブロック11が#1〜#3の3系統分あり、それら3つの二次電池ブロック11が並列接続されている。
【0087】
ただし、3つの二次電池ブロック11に共通に1つの診断用負荷22が備えられている。
【0088】
制御部14は、3つの二次電池ブロック11のそれぞれに対応させて3つあってもよく、3つの二次電池ブロック11に共通に1つであってもよい。制御部14は、3つの二次電池ブロック11のいずれかを劣化診断対象とし、劣化診断対象の二次電池ブロック11の内部インピーダンスの算出に用いる電圧をその電池検出部15で測定するとき、その二次電池ブロック11を共通の診断用負荷22に接続する。また、制御部14は、劣化診断対象ではない二次電池ブロック11については常時実際の負荷23に接続しておく。図9の例では、#1系統の二次電池ブロック11が劣化診断対象となっている。
【0089】
なお、以上説明した各実施形態において、制御部14の動作は、記録媒体に記録されているソフトウェアプログラムをコンピュータが実行することによっても実現され得るものである。
【符号の説明】
【0090】
10 二次電池パック
11 二次電池ブロック
12 制御ブロック
13 二次電池
14 制御部
15 電池検出部
16 電流検出部
17 放電スイッチ
18 充電スイッチ
21 診断スイッチ
22 診断用負荷
23 負荷
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の両端間の電圧を測定する電池検出部と、
前記二次電池を流れる電流を測定する電流検出部と、
放電経路における前記二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持しており、第1の測定時刻から、前記電流検出部で測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで前記二次電池を放電させ、前記第2の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に前記電流検出部で測定される放電電流を乗算することで、前記第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出し、前記第1の測定時刻における第1の開放電圧と前記第2の開放電圧と前記放電容量基準値とに基づいて前記二次電池の復帰容量を算出する制御部と、を有する劣化測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1の測定時刻以前から前記二次電池が放電状態であれば、前記第1の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に前記電流検出部で測定される放電電流を乗算することで前記第1の開放電圧を算出し、
前記第1の測定時刻に開放状態から放電状態にするのであれば、前記第1の測定時刻において、第1の指定時間の放電による前記二次電池の両端間の電圧の降下と、その後に前記電池検出部で測定される電圧とに基づいて、前記二次電池の内部インピーダンスと外部インピーダンスを算出し、該外部インピーダンスを保持すると共に、前記第1の測定時刻における前記二次電池の両端間の電圧を前記第1の開放電圧とする、
請求項1に記載の劣化測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の測定時刻に開放状態から放電状態にするとき、前記第1の測定時刻における前記二次電池の両端間の電圧を前記電流検出部で測定される放電電流で除算することにより、前記内部インピーダンスと前記外部インピーダンスの合計値を算出し、前記第1の指定時間が経過した後に前記電池検出部で測定される複数の電圧の平均値を前記放電電流で除算することにより、前記内部インピーダンスを算出し、該合計値から該内部インピーダンスを除算することにより、前記外部インピーダンスを算出する、請求項2に記載の劣化測定装置。
【請求項4】
前記第1の指定時間は1秒間である、請求項2または3に記載の劣化測定装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記前記二次電池を開放状態から前記放電状態にする毎に、保持している前記外部インピーダンスを更新する、請求項2から4のいずれか一項に記載の劣化測定装置。
【請求項6】
前記外部インピーダンスは一定値の診断用負荷であり、
前記制御部は、前記内部インピーダンスの算出に用いる電圧を前記電池検出部で測定するとき、前記二次電池を前記診断用負荷に接続する、請求項1に記載の劣化測定装置。
【請求項7】
並列接続される複数の前記二次電池があり、前記診断用負荷は前記複数の二次電池に共通であり、前記制御部は、前記複数の二次電池のいずれかを劣化診断対象とし、劣化診断対象の二次電池の前記内部インピーダンスの算出に用いる電圧を前記電池検出部で測定するとき、該二次電池を前記診断用負荷に接続する、請求項6に記載の劣化測定装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1の開放電圧から得られる前記二次電池の残容量の前記復帰容量に対する割合と、前記第2の開放電圧から得られる前記二次電池の残容量の前記復帰容量に対する割合との差分を放電割合算出値とし、該放電割合算出値に対する、前記二次電池の初期容量に対する前記放電容量基準値の割合である放電割合基準値の割合を劣化度として算出する、請求項1から7のいずれか一項に記載の劣化測定装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記初期容量に前記劣化度を乗算することにより前記復帰容量を算出する、請求項8に記載の劣化測定装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記内部インピーダンスを前記二次電池の温度特性に基づいて、基準温度における値に補正する、請求項1から9のいずれか一項に記載の劣化測定装置。
【請求項11】
充電および放電が可能な二次電池と、
前記二次電池の両端間の電圧を測定する電池検出部と、
前記二次電池を流れる電流を測定する電流検出部と、
放電経路における前記二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持しており、第1の測定時刻から、前記電流検出部で測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで前記二次電池を放電させ、前記第2の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に前記電流検出部で測定される放電電流を乗算することで、前記第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出し、前記第1の測定時刻における第1の開放電圧と前記第2の開放電圧と前記放電容量基準値とに基づいて前記二次電池の復帰容量を算出する制御部と、を有する二次電池パック。
【請求項12】
放電経路における二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持し、
第1の測定時刻から、測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで前記二次電池を放電させ、
前記第2の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に、測定される放電電流を乗算することで、前記第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出し、
前記第1の測定時刻における第1の開放電圧と前記第2の開放電圧と前記放電容量基準値とに基づいて前記二次電池の復帰容量を算出する、劣化測定方法。
【請求項13】
放電経路における二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持する手順と、
第1の測定時刻から、測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで前記二次電池を放電させる手順と、
前記第2の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に、測定される放電電流を乗算することで、前記第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出する手順と、
前記第1の測定時刻における第1の開放電圧と前記第2の開放電圧と前記放電容量基準値とに基づいて前記二次電池の復帰容量を算出する手順と、をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項1】
二次電池の両端間の電圧を測定する電池検出部と、
前記二次電池を流れる電流を測定する電流検出部と、
放電経路における前記二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持しており、第1の測定時刻から、前記電流検出部で測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで前記二次電池を放電させ、前記第2の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に前記電流検出部で測定される放電電流を乗算することで、前記第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出し、前記第1の測定時刻における第1の開放電圧と前記第2の開放電圧と前記放電容量基準値とに基づいて前記二次電池の復帰容量を算出する制御部と、を有する劣化測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1の測定時刻以前から前記二次電池が放電状態であれば、前記第1の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に前記電流検出部で測定される放電電流を乗算することで前記第1の開放電圧を算出し、
前記第1の測定時刻に開放状態から放電状態にするのであれば、前記第1の測定時刻において、第1の指定時間の放電による前記二次電池の両端間の電圧の降下と、その後に前記電池検出部で測定される電圧とに基づいて、前記二次電池の内部インピーダンスと外部インピーダンスを算出し、該外部インピーダンスを保持すると共に、前記第1の測定時刻における前記二次電池の両端間の電圧を前記第1の開放電圧とする、
請求項1に記載の劣化測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の測定時刻に開放状態から放電状態にするとき、前記第1の測定時刻における前記二次電池の両端間の電圧を前記電流検出部で測定される放電電流で除算することにより、前記内部インピーダンスと前記外部インピーダンスの合計値を算出し、前記第1の指定時間が経過した後に前記電池検出部で測定される複数の電圧の平均値を前記放電電流で除算することにより、前記内部インピーダンスを算出し、該合計値から該内部インピーダンスを除算することにより、前記外部インピーダンスを算出する、請求項2に記載の劣化測定装置。
【請求項4】
前記第1の指定時間は1秒間である、請求項2または3に記載の劣化測定装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記前記二次電池を開放状態から前記放電状態にする毎に、保持している前記外部インピーダンスを更新する、請求項2から4のいずれか一項に記載の劣化測定装置。
【請求項6】
前記外部インピーダンスは一定値の診断用負荷であり、
前記制御部は、前記内部インピーダンスの算出に用いる電圧を前記電池検出部で測定するとき、前記二次電池を前記診断用負荷に接続する、請求項1に記載の劣化測定装置。
【請求項7】
並列接続される複数の前記二次電池があり、前記診断用負荷は前記複数の二次電池に共通であり、前記制御部は、前記複数の二次電池のいずれかを劣化診断対象とし、劣化診断対象の二次電池の前記内部インピーダンスの算出に用いる電圧を前記電池検出部で測定するとき、該二次電池を前記診断用負荷に接続する、請求項6に記載の劣化測定装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1の開放電圧から得られる前記二次電池の残容量の前記復帰容量に対する割合と、前記第2の開放電圧から得られる前記二次電池の残容量の前記復帰容量に対する割合との差分を放電割合算出値とし、該放電割合算出値に対する、前記二次電池の初期容量に対する前記放電容量基準値の割合である放電割合基準値の割合を劣化度として算出する、請求項1から7のいずれか一項に記載の劣化測定装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記初期容量に前記劣化度を乗算することにより前記復帰容量を算出する、請求項8に記載の劣化測定装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記内部インピーダンスを前記二次電池の温度特性に基づいて、基準温度における値に補正する、請求項1から9のいずれか一項に記載の劣化測定装置。
【請求項11】
充電および放電が可能な二次電池と、
前記二次電池の両端間の電圧を測定する電池検出部と、
前記二次電池を流れる電流を測定する電流検出部と、
放電経路における前記二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持しており、第1の測定時刻から、前記電流検出部で測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで前記二次電池を放電させ、前記第2の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に前記電流検出部で測定される放電電流を乗算することで、前記第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出し、前記第1の測定時刻における第1の開放電圧と前記第2の開放電圧と前記放電容量基準値とに基づいて前記二次電池の復帰容量を算出する制御部と、を有する二次電池パック。
【請求項12】
放電経路における二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持し、
第1の測定時刻から、測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで前記二次電池を放電させ、
前記第2の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に、測定される放電電流を乗算することで、前記第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出し、
前記第1の測定時刻における第1の開放電圧と前記第2の開放電圧と前記放電容量基準値とに基づいて前記二次電池の復帰容量を算出する、劣化測定方法。
【請求項13】
放電経路における二次電池の外部にある外部インピーダンスの値を予め保持する手順と、
第1の測定時刻から、測定される放電電流を基に積算される放電容量が所定の放電容量基準値になる第2の測定時刻まで前記二次電池を放電させる手順と、
前記第2の測定時刻において、前記電池検出部で測定される電圧に基づいて前記二次電池の内部にある内部インピーダンスを算出し、前記外部インピーダンスと前記内部インピーダンスの和に、測定される放電電流を乗算することで、前記第2の測定時刻における第2の開放電圧を算出する手順と、
前記第1の測定時刻における第1の開放電圧と前記第2の開放電圧と前記放電容量基準値とに基づいて前記二次電池の復帰容量を算出する手順と、をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−202851(P2012−202851A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68213(P2011−68213)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(310010081)NECエナジーデバイス株式会社 (112)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(310010081)NECエナジーデバイス株式会社 (112)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
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