説明

劣化試験装置及び劣化試験方法

【課題】 短時間に高精度の劣化試験を実施できる劣化試験装置を提供する。
【解決手段】 本発明の劣化試験装置100は、液晶パネル15に光を照射して劣化させるとともに、当該劣化状態を観測する劣化試験装置であり、前記液晶パネル15の劣化処理に用いるレーザ光LBを出力するレーザ光源10と、前記液晶パネル15の劣化検査に用いる観察光OBを出力する観察光源30とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化試験装置及び劣化試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶パネルの信頼性評価の1つとして耐光性試験が行われている。例えば、液晶プロジェクタにおいてライトバルブとして用いられる液晶パネルは、強い光が長時間に渡って照射されて各構成要素(部品、部材)に劣化が生じやすいので、耐光性試験は所望の品質を確保する上で重要である。
このような液晶パネルの耐光性においては、長い場合には数ヶ月といったオーダでの試験期間を要する場合がある。しかし、製品開発期間の短縮化が求められる状況ではこのような長期間の試験は許容しがたい。
これに対して、評価期間を短縮する手法の1つとして、実際の使用状況よりも過酷な条件による負荷をかけて試験を行い、その結果から長期間の使用後における劣化を予測する、いわゆる加速試験が知られている。このような液晶パネルの耐光性評価に関する従来技術が、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2001−4526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の耐光性評価方法では、メタルハイドロランプ、UHPランプあるいはハロゲンランプなどの光源を用いて液晶パネルに光を照射しているため、集光性が低く、高エネルギー密度が得られず、短時間で劣化現象を発現させることが難しかった。このため、液晶パネルの耐光性の評価に長時間を要することとなり、製品開発期間の短縮化の妨げとなっていた。
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、短時間に高精度の劣化試験を実施することができる劣化試験装置、及び劣化試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、液晶パネルに光を照射して劣化させるとともに、当該劣化状態を観測する劣化試験装置であって、前記液晶パネルの劣化処理に用いるレーザ光を出力するレーザ光源と、前記液晶パネルの劣化検査に用いる観察光を出力する観察光源と、を備えたことを特徴とする劣化試験装置を提供する。
この構成によれば、レーザ光照射による劣化処理と、観察光照射による劣化検査とを1台で行うことができる劣化試験装置を得ることができる。したがって、高エネルギーのレーザ光照射を行うことから迅速に液晶パネルの劣化処理を実施することができ、また劣化処理に並行して観察光照射による劣化検査を行うことにより劣化状態の進行を正確に観測することができる劣化試験装置となる。
【0006】
本発明の劣化試験装置では、前記観察光源が、白色光を出力する光源であることが好ましい。この構成によれば、液晶パネルが搭載された実機(液晶表示装置やプロジェクタ)に近い状態で劣化検査を行うことができ、実機における劣化時間等の推定がより正確なものとなる。
【0007】
本発明の劣化試験装置では、前記観察光源から前記液晶パネルに至る光路に対して前記レーザ光を重畳する第1光学素子と、前記液晶パネルに照射した後の前記観察光及び前記レーザ光の光路から前記観察光又はレーザ光を分岐させる第2光学素子と、を備えた構成とすることが好ましい。
この構成によれば、前記第1光学素子により前記レーザ光の光路と観察光の光路とを一致させることができるので、液晶パネルの試験対象領域に対してレーザ光と観察光とを正確に照射することができ、また、液晶パネルを移動させることなくレーザ光照射による劣化処理と、観察光照射による劣化検査とを行うことができる。
【0008】
本発明の劣化試験装置では、前記液晶パネルに照射する前記レーザ光の光量を検出する第1レーザ光量検出部と、前記液晶パネルに照射した後の前記レーザ光の光量を検出する第2レーザ光量検出部と、前記液晶パネルに照射した後の前記観察光を検出する観察光検出部とを備えた構成とすることができる。この構成によれば、液晶パネルに対する照射の前後におけるレーザ光の光量変化を観測することができるので、レーザ光から液晶パネルに付与されるエネルギーを容易に見積もることができる。また、レーザ光による液晶パネルの透過率測定も可能である。
【0009】
本発明の劣化試験装置では、前記レーザ光源から前記液晶パネルに至る前記レーザ光の光路に対して進退自在の遮光素子(第1遮光素子)を備えた構成とすることが好ましい。この構成によれば、前記遮光素子により、レーザ光源を停止することなく液晶パネルへのレーザ光の照射/非照射を切り替えることができるので、レーザ光照射による劣化処理と観察光照射による劣化検査とを切り替えつつ行う場合に、レーザ光源の安定性を損なうことなく迅速にレーザ光のオン/オフ切替を行うことができ、迅速かつ正確な劣化試験を実施することができる。
【0010】
また本発明の劣化試験装置では、前記液晶パネルに照射した後の前記レーザ光の光路に対して進退自在の遮光素子(第2遮光素子)を備えた構成とすることが好ましい。この構成によれば、液晶パネルに照射した後のレーザ光の光路についても良好に制御することが可能になるので、レーザ光の反射等による計測機器や光学部品の劣化を良好に防止することができる。
【0011】
本発明の劣化試験装置では、前記液晶パネルに照射した後の前記観察光の光路上に、偏光素子が設けられている構成とすることもできる。この構成によれば、前記液晶パネルに照射した後の観察光を前記偏光素子を介して観測することで、劣化の進行に伴う液晶パネルのΔn(屈折率)の変化を観測することができ、液晶パネルの劣化状態をより詳細に分析するためのデータを取得できる劣化試験装置となる。
【0012】
本発明の劣化試験方法は、先に記載の本発明の劣化試験装置を用いた劣化試験方法であって、レーザ光を液晶パネルに対して照射する第1工程と、観察光を前記液晶パネルに照射し、該液晶パネルに照射した後の観察光の状態を検出する第2工程と、前記液晶パネルに照射する前後の前記観察光の差異に基づき前記液晶パネルの耐光性を評価する第3工程と、を含み、前記第1工程の実行中に、1又は複数回の前記第2工程を実行することを特徴とする。
この劣化試験方法によれば、前記液晶パネルの劣化処理を行う第1工程中に、観察光照射による液晶パネルの劣化検査を行うので、液晶パネルの劣化状態を正確に観測することができ、また劣化の進行を正確に観測することができる。また、レーザ光照射を停止しなくとも劣化検査を行うことができるので、レーザ光照射の中断に伴う液晶パネルの温度変化等の要因を考慮することなく正確な試験結果を得ることができる。
【0013】
本発明の劣化試験方法では、前記第2工程において、前記液晶パネルを駆動することで該液晶パネルに照射した後の前記観察光の状態を連続的に検出することもできる。この劣化試験方法によれば、前記劣化検査として液晶パネルのV−T特性(電圧−透過率特性)の測定を行うので、液晶パネルの劣化度合いの変化を、電気光学特性の変化として数値的に観測することができ、測定誤差の少ない正確な劣化試験となる。
【0014】
本発明の劣化試験方法では、前記第2工程において、前記液晶パネルに照射した後の前記観察光を偏光素子に透過させ、前記透過光の光量を、前記偏光素子の光学軸の角度に対応させて測定することもできる。この劣化試験方法によれば、前記液晶パネルの劣化度合いに応じた液晶パネルのΔnの観測が可能であり、液晶パネルの劣化状態についてより詳細な分析を可能にするデータを得ることができる。
【0015】
本発明の劣化試験方法は、前記第2工程を実行するに際して、遮光素子を用いて前記レーザ光を遮断することもできる。この方法によれば、観察光照射による劣化検査の際に、レーザ光照射を中断するので、劣化検査中に液晶パネルの劣化が進行することが無く、レーザ照射時間に対する液晶パネルの劣化度合いを正確に観測することができる。
【0016】
本発明の劣化試験方法は、前記第1工程において、前記レーザ光の波長、照射エネルギー、及び照射時間の少なくとも1つを可変パラメータとして設定して前記液晶パネルに対する照射を行い、前記第3工程において、前記可変パラメータに応じた前記観察光の差異に基づき前記液晶パネルの耐光性を評価することが好ましい。この劣化試験方法によれば、種々の可変パラメータの変化に対する液晶パネルの劣化度合いの変化を容易に得ることができる。
【0017】
本発明の劣化試験方法は、前記第1工程において、前記レーザ光の照射により前記液晶パネルに含まれる配向膜の配向性を低下させることを特徴とする。光照射による液晶パネルの劣化の主たる要因は、配向膜の劣化である。したがってレーザ光照射によって配向膜に劣化を生じさせる上記の試験方法とすれば、当該劣化試験方法により液晶パネルの実際の経時劣化に即した加速試験を実施することができ、液晶パネルの耐光性や寿命をより正確に評価することができる。
【0018】
本発明の劣化試験方法は、前記液晶パネルに照射する前記レーザ光を、該液晶パネルの光入射側の偏光板の透過軸と略平行の直線偏光とすることができる。液晶パネルの劣化試験を行う場合、液晶パネルに偏光板が設けられていると、液晶パネルに照射したレーザ光の一部(偏光板の吸収軸と平行な偏光成分)が偏光板に吸収されて偏光板に劣化を生じることがあり、かかる劣化因子が試験結果に混入することも考えられる。そこで、液晶パネルに入射させるレーザ光を、偏光板の透過軸と平行な直線偏光とすれば、偏光板での光吸収をほとんど生じないため、偏光板の劣化を防止でき、例えば配向膜の劣化に起因する光学特性の変化を正確に観測できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の劣化試験装置、及びそれを用いた劣化試験方法の実施の形態について説明する。なお、以下の実施形態で説明する劣化試験方法は、一対の基板間に液晶層を挟持してなる液晶パネルの劣化試験方法であり、液晶パネルに対しレーザ光を照射することで液晶パネルに劣化を生じさせた後、観察光を液晶パネルに照射して光学的に観察することで上記液晶パネルの劣化度合いを評価するものである。
【0020】
(劣化試験装置)
図1は、本実施形態の劣化試験装置の概略構成図である。図1に示す劣化試験装置100は、レーザ光を出力するレーザ光源10と、観察光を出力する観察光源30との2つの光源を備えている。被検物である液晶パネル15は被検物支持部19に支持されており、光学系により導光されたレーザ光LBと観察光OBとは、いずれも液晶パネル15に導かれるようになっている。
【0021】
観察光源30から出力される観察光OBは、ミラー33と、第1ハーフミラー(第1光学素子)13と、集光レンズ14とを有する光学系により液晶パネル15に導かれるようになっており、レーザ光源10から出力されるレーザ光LBは、NDフィルタ12を透過して前記第1ハーフミラー13に入射し、この第1ハーフミラー13により観察光OBの光路内に導かれ、集光レンズ14を介して液晶パネル15に照射されるようになっている。
【0022】
レーザ光源10は、例えば発振波長406nmの青紫レーザ光を出力するレーザ光源であり、レーザ光LBをその波長、照射エネルギー、及び照射時間のうち、少なくとも1つを可変パラメータとして出力可能なものとされる。本実施形態の劣化試験装置100は、レーザ光照射により液晶パネル15の配向膜等を劣化させ、液晶の配向性低下の程度を観測して液晶パネル15の耐光性を評価するものであるから、レーザ光源10には、液晶パネル15に対し短時間で所望の劣化を生じさせることができるものが用いられる。
【0023】
レーザ光源10から出力されたレーザ光LBは、NDフィルタ12により測定に必要な光量に絞られた後、第1ハーフミラー13により反射されて集光レンズ14に入射し、集光レンズ14により所定のスポット径に調整された後、液晶パネル15の試験対象領域に照射される。
レーザ光源10とNDフィルタ12との間に設けられたシャッタ(第1遮光素子)11は、レーザ光LBの光路に対し進退自在の遮光素子である。かかるシャッタ11により任意のタイミングでレーザ光LBを遮断することで、液晶パネル15に入射させる光(レーザ光LB/観察光OB)を切り替えることができるようになっている。
【0024】
観察光源30は、例えば蛍光ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード等を用いた光源であり、液晶パネル15が搭載される実機(液晶表示装置、プロジェクタ)が備える光源と同種のものを用いることもできる。液晶パネル15の劣化状態を目視観察するには、観察光源30に白色光を出力する光源を用いると、実機での表示状態を再現しやすくなり、また目視観察も容易になる。
観察光源30から出力された観察光OBは、ミラー33により反射された後、第1ハーフミラー13を透過して集光レンズ14に入射し、集光レンズ14から射出されて液晶パネル15に照射される。
【0025】
集光レンズ14と液晶パネル15のとの間に設けられた第1レーザ光量検出部16は、液晶パネル15に入射させるレーザ光LBの光量(強度)を検出するものであり、必要に応じてレーザ光LBの光路内に進出させ、同光路において検出したレーザ光LBの光量を、パワーメータ20に出力するようになっている。
【0026】
液晶パネル15を支持する被検物支持部19の背面側(集光レンズ14と反対側)には、観察光OBとレーザ光LBとを分離する第2ハーフミラー(第2光学素子)18が設けられており、液晶パネル15を透過したレーザ光LBは、第2ハーフミラー18によりシャッタ(第2遮光素子)21及び第2レーザ光量検出部17へ導かれる。一方、観察光OBは、第2ハーフミラー18を透過した後、偏光素子34、観察光量検出部35に順次入射する。
【0027】
第2ハーフミラー18により反射されたレーザ光LBが入射する第2レーザ光量検出部17は、上記第1レーザ光量検出部16とともにパワーメータ20に接続されている。そして、パワーメータ20の表示を読み取ることで得られる、液晶パネル15に照射する前のレーザ光LBの光量と、液晶パネル15を透過した後のレーザ光LBの光量とを比較することで、液晶パネル15を透過する前後のレーザ光量の変化を導出することができる。これにより、液晶パネルに付与したエネルギー量を見積もることもできる。
【0028】
第2ハーフミラー18と第2レーザ光量検出部17との間に設けられたシャッタ(第2遮光素子)21は、レーザ光LB及び観察光OBの進行を規制し、第2レーザ光量検出部17に入射したレーザ光LBが反射して液晶パネル15側へ戻ったり、観察光OBが第2レーザ光量検出部17に入射するのを防止し、光照射による計測機器や光学部品の劣化を防止するものである。
【0029】
偏光素子34は、レーザ光LBを照射することによる液晶パネル15の劣化状態を、液晶パネル15の液晶層のΔn(屈折率;光学異方性)の変化として検出するために設けられるものであり、その光学軸(透過軸)を観察光OBの進行方向に対し直交する面内で回転移動させることができるものとなっている。すなわち、液晶パネル15を透過した観察光OBを、偏光素子34の光学軸を回転させながら観測すれば、観察光量検出部35で観測される偏光素子34を透過した観察光OBの強度が変化するので、最も光強度が大きくなる偏光素子34の光学軸角度を、劣化処理の前後で比較すれば、液晶パネル15のΔnの変化を容易に得ることができる。
【0030】
レーザ光LB及び観察光OBの光学系を一部共有する撮像部36がミラー33の外側(液晶パネル15と反対側)に設けられており、撮像部36は、撮像部36で得られた画像情報を処理、表示する画像処理部38と接続されている。これら撮像部36及び画像処理部38は、液晶パネル15上の試験対象領域(レーザ光照射領域)とレーザ光LBとの位置合わせ、及び前記試験対象領域と観察光OBとの位置合わせを行う位置決め手段として機能する。
【0031】
上記画像処理部38には、偏光素子34及び観察光量検出部35の外側(液晶パネル15と反対側)に配設された他の撮像部37も接続されている。撮像部37は、先の撮像部36と反対側から液晶パネル15の試験対象領域における画像情報を取得するようになっている。これにより、レーザ光LBによる劣化処理を行う前後の液晶パネル15の画像情報を取得することができ、画像処理部38にて表示させることができるので、液晶パネル15を被検物支持部19から取り外すことなく液晶パネル15の目視観察を行うことができる。
【0032】
本実施形態の劣化試験装置100では、観察光OBの光路上に配置された2個のハーフミラー13,18によりレーザ光LBの光路と観察光OBの光路とを制御し、前記両光路を一部重畳させることで液晶パネル15の試験対象領域に対するレーザ光LB及び観察光OBの照射を正確に行うことができるようになっている。また、レーザ光LBを選択的に反射する第1ハーフミラー13を用いて観察光源30と反対側にレーザ光LBを反射させているので、レーザ光LBが観察光源30や撮像部36に入射することがなく、観察光源30及び撮像部36をレーザ光LBから良好に保護することができる。さらに、第2ハーフミラー18を用いて液晶パネル15を透過したレーザ光LBを反射させるようになっているので、偏光素子34、観察光量検出部35、及び撮像部37をレーザ光LBから良好に保護することができる。
【0033】
また、被検物支持部19に支持された液晶パネル15に、パネル駆動部45が接続されており、被検物支持部19に支持された液晶パネル15に任意の動作をさせることができるようになっている。このような構成のもと、観察光OBを照射した状態で液晶パネル15を動作させれば、液晶パネル15の電気光学特性(電圧−透過率(V−T)特性)を容易に得ることができ、レーザ光LBの照射による劣化処理と並行して、あるいは劣化処理と交互に、電気光学特性の測定を行うことができる。
【0034】
上記構成を具備した劣化試験装置100によれば、レーザ光源10から出力されたレーザ光LBを液晶パネル15に照射することによる劣化処理と、観察光源30から出力された観察光OBを液晶パネル15に照射することによる液晶パネル15の劣化状態の検査とを1台の試験装置で行うことができるようになっている。特に、前記液晶パネル15の検査を、液晶パネル15を被検物支持部19に支持した状態で行うことができることから、液晶パネル15の加速劣化試験を短時間に実施することができる。
【0035】
また、観察光OBを用いた液晶パネル15の検査では、液晶パネル15に照射した観察光OBの透過率変化を観測する検査と、パネル駆動部45により液晶パネル15を駆動して電気光学特性の変化を観測する検査と、液晶パネル15を透過させた観察光OBを偏光素子34を介して光量測定することにより劣化に至るΔnの変化を観測する検査と、撮像部37により液晶パネル15を撮影することで液晶パネル15を目視観察する検査と、を行うことができるものとなっている。
【0036】
そして本実施形態の劣化試験装置100では、上記いずれの検査も、レーザ光LBの照射と並行して、あるいは一時的にレーザ光LBの照射を停止した状態で行うことができるようになっているので、レーザ光照射による液晶パネル15の経時的な劣化状態変化を、簡便にかつ正確に観測することが可能である。さらに、上記検査のためにレーザ光LBの照射を一時的に停止する場合、レーザ光源10の近傍に設けられたシャッタ11によりレーザ光LBを一時的に遮光することができるので、レーザ光源10のオン/オフ動作によりレーザ光LBのオン/オフ状態を切り替える場合に比してレーザ光源10の作動状態を一定に保持しやすくなっている。したがって、液晶パネル15の検査終了後に、レーザ光LBの照射を迅速に再開することができ、極めて効率よく劣化試験を実施することができるものとなっている。
【0037】
また本実施形態の劣化試験装置100では、先に記載のように、ハーフミラー13,18と、シャッタ11,21とによりレーザ光LBの光路を適切に制御しているので、レーザ光源10と観察光源30の双方を備える構成とした場合に生じうる不都合、例えばレーザ光の入射による計測機器や光学部品の破損等を良好に防止できるようになっている。
【0038】
なお、図1に示すレーザ光LB及び観察光OBの光学系は、その主要部のみを簡略化して表示したものであり、試験装置の設計に応じた構成部材の変更/追加を妨げるものではない。例えば、集光レンズ14とともに、レーザ光LBの照度分布を均一化する光学補正素子(例えば、フライアイレンズ、ロッドレンズ等)を設けてもよい。このような構成とすれば、液晶パネル15の試験対象領域に均一な照度分布のレーザ光LBを照射でき、前記試験対象領域を均一に劣化させることができるので、液晶パネルの劣化状態を検査する際の測定値のばらつきや、目視観察におけるばらつきを防止して、より正確な試験結果を得られるようになる。
【0039】
また、上記第1レーザ光量検出部16とレーザ光源10との間には、液晶パネル15に入射させるレーザ光を所定の偏光状態とするための偏光子を設けることができる。一般的に液晶パネル15の外面側には偏光板が設けられているので、このような偏光子を設けて液晶パネル15の偏光板の透過軸と平行な直線偏光を入射させるようにすれば、液晶パネル15の偏光板での光吸収を無くすことができる。これにより、光吸収による偏光板の加熱劣化を防止でき、液晶パネル15で生じる劣化のうち偏光板の劣化に係る部分を排除できるので、液晶パネル15のうち特定箇所(配向膜)の劣化を高精度に検出できるようになる。
【0040】
また、被検物である液晶パネル15を支持する被検物支持部19には、液晶パネル15の温度制御を行う温度制御部を設けることができる。かかる温度制御部により液晶パネル15を冷却ないし加熱し、試験中の液晶パネル15の温度を一定に保持するようにすることで、レーザ光照射での加熱に起因する液晶パネル15の劣化を抑制しつつ劣化試験を行うことができるので、液晶パネル15の劣化因子から熱に起因する部分を排除し、光照射による液晶パネル15の劣化現象を正確に観測することが可能になる。
【0041】
また、本実施形態の劣化試験装置100では、レーザ光LBの光路上であって液晶パネル15を挟んだ前後に、第1レーザ光量検出部16と、第2レーザ光量検出部17とが設けられているので、液晶パネル15を透過した前後のレーザ光量を容易に比較することができ、レーザ光LBを用いた液晶パネルの透過率測定も可能である。
【0042】
<液晶パネル>
被検物である液晶パネル15としては、種々の構成のものを用いることができる。ここで、図2(a)に液晶パネル15の一例を示して説明する。図2(a)は、TNモードの液晶層を具備したTFTアクティブマトリクス型の液晶パネル15の部分断面構成図である。なお、図2では、3つの画素P1〜P3のみを示しているが、実際には画素P1〜P3と同様の構成の画素が平面視マトリクス状に配列形成された構成を備えている。また、各画素P1〜P3に対応して設けられるスイッチング素子であるTFT(薄膜トランジスタ)についての図示は省略している。
【0043】
図2(a)に示す液晶パネル15は、液晶層155を挟持して対向する一対の基板151,152を備えている。基板151,152は、石英、ガラス、プラスチック等の透明基板であり、両基板の対向面に介在させた図示略のスペーサにより所定の間隔に離間されている。基板151の内面側(液晶層155側)に、複数の画素電極156と、画素電極156を覆う配向膜153とが形成されており、基板151の外面側には、偏光板159が配設されている。基板152の内面側に、遮光膜(ブラックマトリクス)158と、対向電極157と、配向膜154とが積層形成されており、基板152の外面側には、偏光板160が配設されている。
【0044】
液晶層155は、ネマチック液晶を主体としてなり、配向膜153、154の配向規制力によって、基板151,152間でツイスト配向している。配向膜153,154は、ポリイミド膜や酸化シリコン膜により形成することができ、ポリイミド膜を用いる場合には、液晶を所望の方向に配向させるためのラビング処理を施される。また、酸化シリコン膜を用いる場合には、斜方蒸着法等によって膜面に凹凸形状を付与し、かかる形状に起因する配向規制力により液晶を配向させる。
【0045】
画素電極156は、各画素ごとに形成されて、当該領域内の液晶層155に駆動電圧を印加する。画素
電極156は、例えばITO(インジウム錫酸化物)などの透明導電膜を基板151上に成膜し、パターニングすることによって形成できる。そして、各画素電極156には、図示しないTFT(スイッチング素子)が電気的に接続され、かかるTFTのスイッチング動作に基づき画像信号に応じた電圧が書き込まれるようになっている。対向電極157は、上記の各画素電極156と共に液晶層155に電圧を印加するものであり、基板152上の略全面に形成されている。この対向電極157は、各画素に共用される共通電極となっており、接地電位等の所定電位に接続される。対向電極157についても、ITO等の透明導電膜により形成することができる。
【0046】
遮光膜158は、各画素の境界を覆い、当該領域における漏れ光を遮断するためのものであり、基板152上に形成されている。この遮光膜158には、低反射の金属材料(例えばクロム)が用いられ、各画素に対応する領域に開口部を有する平面視略格子状に形成されている。
【0047】
<劣化試験方法>
上記構成を具備した劣化試験装置100では、液晶パネル15に対して波長、照射時間等の条件を種々に設定してレーザ光LBを照射して劣化を生じさせ、この劣化処理と並行して、観察光OBを液晶パネル15に照射し、その透過光をモニタすることにより液晶パネル15の耐光性を評価することができる。そして、先に記載のように、液晶パネル15に照射した観察光OBの透過率変化を観測する検査と、パネル駆動部45により液晶パネル15を駆動して電気光学特性の変化を観測する検査と、液晶パネル15を透過させた観察光OBを偏光素子34を介して光量測定することにより劣化に至るΔnの変化を観測する検査と、撮像部37により液晶パネル15を撮影することで液晶パネル15を目視観察する検査と、を行うことができる。
【0048】
例えば、液晶パネル15に照射した観察光OBの透過率変化を観測する検査では、レーザ光の照射時間を横軸にとり、液晶パネル15を通過する光の強度(透過率)を縦軸にとったグラフをプロットすることにより、液晶パネルの耐光性の評価が可能である。かかる評価結果から加速係数を算出することにより、液晶パネル15の耐用時間を推定することができる。以下、この試験方法について図面を参照して説明する。
【0049】
まず、図2(b)に示すように、レーザ光源10から射出したレーザ光LBをその波長、照射エネルギー又は照射時間のうち少なくとも1つを可変パラメータとして設定して、液晶パネル15の試験対象領域に照射する(第1工程)。試験対象領域は任意に設定可能であり、例えば図示の場合では液晶パネル15の1画素P2に対応する領域を設定している。レーザ光LBを用いて比較的高いエネルギーを液晶パネル15に与えることにより、液晶パネル15の画素P2に含まれる各部材(例えば配向膜や液晶分子等)に劣化が生じる。このとき、液晶パネル15の劣化の度合いは、レーザ光LBの可変パラメータの設定内容によって異なることとなる。本実施形態では、主として、レーザ光LBの照射によって画素P2内の配向膜を変質させ、液晶分子の配向性を局所的に低下させるという態様の劣化を想定する。レーザ光LBを連続波(CW)とすることにより、エネルギーをより効率よく与えることが可能である。
【0050】
次に、図2(c)に示すように、観察光OBを液晶パネル15に照射し、当該液晶パネル15を通過した当該観察光OBの状態を図1に示した観察光量検出部35により検出する(第2工程)。本実施形態では、検出対象とする観察光OBの状態(光学的特性)として光量(光強度)を想定しているが、これに限定されず、偏光状態、分光特性など種々のものが考えられる。すなわち、観察光OBの状態として検出したい内容に応じて観察光OBを出力する光源と、その検出手段を用意すれば、種々の検出対象について測定が可能になる。検出対象(光量、偏光状態、分光特性等)を変更したとしても、液晶パネル15の試験対象領域に劣化が生じていれば、レーザ光LBを照射する前後で異なる光学的特性が検出されるので、液晶パネル15の劣化度合いを観測することができる。
【0051】
ここで、図3は、上記第2工程で、液晶パネル15を透過する観察光OBの光量を検出対象として測定を行う場合の説明図であり、図3(a)は、レーザ光LBを照射する前(劣化しない状態)の液晶パネル15について上記第2工程を実施する場合について示す図であり、図3(b)は、レーザ光LBを照射した後(液晶パネル15を劣化させた後)の液晶パネル15について上記第2工程を実施する場合について示す図である。
【0052】
図3(a)に示すように、液晶パネル15の光入射側及び光射出側には、それぞれ偏光板159、160が配置されている。液晶パネル15に偏光板が設けられていない場合には、偏光板159、160に対応する偏光素子を液晶パネル15の両側にそれぞれ配置する。
偏光板159と偏光板160とは、互いの透過軸が略直交するように配置されており、光入射側の偏光板159の透過軸は、液晶パネル15の基板151側における液晶分子の平均的配向方向(ダイレクタ)と略平行となるように配置されている。また、偏光板160の透過軸は、液晶パネル15の基板152側における前記ダイレクタと略平行となるように配置されている。
【0053】
観察光源30から出力されて偏光板159に入射した観察光OBは、当該偏光板159の光学的主軸に沿った振動成分のみが通過し、直線偏光となる。この直線偏光となった観察光OBは、液晶層155を透過する際に、液晶層155の旋光作用によりその偏光方向が90度回転されて液晶層155から射出される。その後、観察光OBの偏光方向と平行な透過軸を有する偏光板160を透過し、観察光量検出部35にて光量検出される。
【0054】
一方、図3(b)に示す場合では、図2(c)に示したように、レーザ光LBの照射によって配向膜153,154に劣化を生じているので、画素P2においては配向膜153,154の配向規制力低下に起因する液晶の配向乱れが生じている。そしてこれに伴って入射光に対する偏光変換作用がが低下するため、液晶層155を透過した後の観察光OBの偏光状態は、例えば図示のように楕円偏光となり、図3(a)に示したものと異なった状態となる。そのため、観察光OBのうち偏光板160を透過できる偏光成分が減少し、観察光量検出部35で検出される光量も低下する。
このようにして、液晶パネル15にレーザ光LBを照射する前後においてそれぞれ液晶パネル15を透過する観察光OBの光量を検出することができる。
【0055】
その後、レーザ光LBの可変パラメータの設定内容に応じた観察光OBの状態の差異に基づいて液晶パネルの耐光性を評価する(第3工程)。例えば、レーザ光LBの照射時間の長短による観察光OBの状態の差異を比較することにより経時劣化を評価できる。また、レーザ光LBの照射エネルギーの大小による観察光OBの状態の差異を比較することにより、光強度に対する耐性を評価できる。
【0056】
以上説明した試験方法では、先に説明した劣化試験装置100を用いて液晶パネル15の劣化試験を行うので、レーザ光LBの照射中、あるいはレーザ光LBの照射を一時的に停止した状態で観察光OBを液晶パネル15に照射することができ、レーザ光LBにより劣化処理した液晶パネル15の劣化度合いの検査を簡便にかつ迅速に行うことができる。
【0057】
次に、パネル駆動部45により液晶パネル15を駆動して電気光学特性の変化を観測する検査について図4から図6を参照して説明する。この検査では、パネル駆動部45により液晶パネル15を駆動し、試験対象領域の画素の液晶印加電圧を変化させた場合の画素の透過率変化を観測する。
本検査では、図4に示すように、液晶パネル15を挟んだ両側に偏光素子24,34を配置する。偏光素子24,34は、液晶パネル15の画素に選択電圧を印加しない状態(画素は明表示)で、観察光OBの透過率が最大となるように配置され、本例では偏光素子24,34の互いの透過軸(図示の矢印)が略直交するように配置されている。
【0058】
図4に示すように液晶パネル15、偏光素子24,34を配置したならば、先の試験方法の例と同様、レーザ光LBを液晶パネル15に照射して劣化処理を行い(第1工程)、次いで、レーザ光LBを照射したまま、あるいはシャッタ11を用いてレーザ光LBを一時的に遮断して、液晶パネル15の検査を行う(第2工程)。具体的には、観察光OBを液晶パネル15に照射しつつ、液晶パネル15に接続されたパネル駆動部45により液晶パネル15を駆動し、試験対象画素(図2では画素P2)の印加電圧を変化させ、画素を明表示状態から暗表示状態まで連続的に変化させる一方、観察光量検出部35で液晶パネル15を透過する観察光OBの光量(輝度)を検出する。
その後、上記印加電圧を横軸に、観察光OBの光量(透過率)を縦軸にプロットすることで、試験対象領域の画素のV−T特性(電気光学特性)を得ることができ、液晶パネル15の劣化度合いを評価することができる(第3工程)。
【0059】
図5は、このようにして測定したVAN(Vertical Aligned Nematic)型液晶パネルのV−T特性を示すグラフである。図5に実線で示す曲線が劣化処理前の液晶パネルのV−T特性を示しており、点線(劣化A)及び鎖線(劣化B)で示す他の曲線は、劣化処理後のV−T特性の例を示している。なお、図2に示したようなTN型液晶パネルについては、通常はノーマリホワイトの表示モードが採用されるため、TN型液晶パネルのV−T特性は、図5に示すグラフとは逆に、印加電圧の増加に伴い透過率が減少する曲線を描くものとなる。
【0060】
図5に示すように、液晶パネル15に対してレーザ光LBを照射して劣化を生じさせることで、電圧に対する透過率変化が緩やかになる(劣化A)、閾値電圧が変化する(劣化B)等の変化が観測される。このように透過率の全範囲(0〜1)について測定を行うことで、液晶パネルの劣化に伴うV−T特性の変化を視覚的に認識することができ、劣化した際の液晶パネルの特性変化の詳細な分析が可能である。
【0061】
また、劣化に伴うV−T曲線の変化の態様が既知であれば、各測定ごとに全範囲(透過率0〜1)の測定を行わなくてもよい。この場合には、正常パネル(劣化処理前のパネル)の特定の電圧に対応する基準透過率をあらかじめ設定(例えば、2Vで透過率0.95以上)しておくことで、全範囲の電圧値に対する透過率測定を行わなくとも、2Vのみ、あるいは2V近傍の数点について透過率の測定を行えば、液晶パネル15の劣化を検知することができる。
【0062】
このようなV−T特性の測定により液晶パネルの劣化試験を行うならば、図5に示したように、液晶パネル15の劣化度合いを数値的に得ることができ、客観的な数値判断が可能になる。液晶パネル15の透過率は、レーザ光照射によるパネルの劣化に伴い徐々に進行していくため、目視により劣化度合いを判別しようとすると測定者の目視精度により誤差が生じるのを避けられない。これに対して、V−T特性の経時的な変化を観測するようにすれば、測定者による誤差も生じず、高精度の劣化検査が可能である。
【0063】
本発明に係る劣化試験装置100によれば、レーザ光LBの照射による劣化処理と並行して液晶パネル15の検査を実施することが可能であり、レーザ光照射中にV−T特性の測定を行ってもよく、レーザ光照射を一時的に中断してV−T特性の測定を行ってもよい。
【0064】
レーザ光照射中にV−T特性の測定を行う場合には、測定中にも液晶パネル15の劣化が進行するため、かかる劣化の影響を極力抑えるために短時間で測定を行う必要がある。図6(a)は、レーザ光の照射中に測定を行う場合の時系図である。図6(a)に示すように、本例の試験方法では、レーザ光の照射は連続的に行い、レーザ光を一定時間(例えば1時間)照射した後、短時間(図では1分間)のV−T特性の測定を行う。この場合に、例えば、パネル駆動部45について、0.1秒ごとに0.1V刻みでステップ状に画素の印加電圧を変化させるプログラムを実装しておき、観察光量検出部35で連続的に光量測定を行うようにする。あるいは、撮像部37(画像処理部38)により、前記印加電圧の変化に合わせて0.1秒ごとに液晶パネル15の画像を取得するようにしておき、撮影した画像から試験対象領域の輝度(光量)を解析し、画像取得時の電圧値に対応させてグラフをプロットすることで、V−T特性の測定を行ってもよい。上記いずれの方法を採用しても、印加電圧0V〜5Vの範囲で透過率測定を行うのに要する時間は50秒程度であるから、1分間以内にV−T特性の測定を行うことができる。
【0065】
このようにレーザ光照射中にV−T特性の測定を行うならば、レーザ光照射の中断による外部環境の変化(例えば液晶パネル15の温度変化)を考慮しなくてもよいため、経時的なV−T特性の変化を正確に評価することが可能である。
【0066】
一方、図6(b)に時系図を示すように、レーザ光照射を一時的に中断してV−T特性の測定を行う場合にも、上記と同様の測定方法によりV−T特性の測定を行うことができるが、レーザ光照射の中断により液晶パネルの温度が変化するため、温度管理や中断時間の均一化が必要になる。例えば、図6(b)に示すように、レーザ光照射時間(1時間)と中断時間(10分間)との周期を一定にすること等の手段を講じることが好ましい。しかしその一方で、レーザ光照射を中断することで液晶パネルの劣化が進行しなくなるので、レーザ光照射中に測定を行う場合に比して測定時間の制限が緩和され、上記のような短時間でV−T特性の測定を行うためのプログラムを作製しなくても、測定者の手作業で測定を行うことができ、安価な装置を用いて劣化試験を実施できるというメリットがある。
【0067】
次に、液晶パネル15を透過させた観察光OBを偏光素子34を介して光量測定することにより劣化に至るΔnの変化を観測する検査について説明する。かかる検査を行う場合には、図4に示したように、偏光素子24,34で液晶パネル15を挟み込むように各部材を配置して測定を行う。偏光素子34は、その光学軸(透過軸)を面内で回転移動させることができるように構成され、また液晶パネル15には、偏光板を設けないものを用いる。
【0068】
上述したように液晶パネル15、偏光素子24,34を配置したならば、先の試験方法の例と同様、レーザ光LBを液晶パネル15に照射して劣化処理を行い(第1工程)、次いで、液晶パネル15の検査を行う(第2工程)。具体的には、観察光OBを液晶パネル15に照射しつつ、観察光量検出部35で液晶パネル15及び偏光素子34を透過する観察光OBの光量(輝度)を検出する。そしてこのとき、偏光素子34の光学軸角度を変えながら上記光量測定を行う。その後、同測定で得られたデータに基づき、例えば偏光素子34の光学軸角度を横軸に、観察光量検出部35で検出される光量を縦軸にしてプロットすることで、観察光量検出部35で検出される光量が最大となる光学軸角度から、劣化による液晶パネルのΔnの変化を導出することができる。これにより、液晶パネル15について、劣化に至るΔnの変化を評価することができる(第3工程)。
【0069】
本例の試験方法によれば、レーザ光照射による液晶パネル15の劣化を、Δnの変化として観測することができるので、劣化に至る液晶パネル(特に配向膜及び液晶)の状態変化をより詳細に観測し、分析することが可能である。
【0070】
なお、上記実施形態の説明では、液晶パネル15がTNモード、あるいはVANモードのものである場合について説明したが、被検物としての液晶パネルは、STN(Super Twisted Nematic)モード等の他の液晶モードのものであってもよく、その駆動形式(アクティブマトリクス型/パッシブマトリクス型)にも限定されない。また液晶パネルは、透過型に限らず、反射型、半透過反射型のものであってもよい。反射型の液晶パネルの劣化試験を行う場合にも、観察光の検出手段の配置を変更するのみで容易に対応できる。
【0071】
また上記実施形態では観察光OBの検出対象として光量(光強度)を採用しているが、これ以外にも偏光状態、分光特性、リタデーションなど種々のものが採用可能であり、検出対象に応じた検出手段を、観察光量検出部35に代えて用いればよい。例えば、偏光状態の変化を検出対象とするのであれば検出手段としてエリプソメータを用いればよく、分光特性を検出対象とするのであれば検出手段として分光測定機を用いればよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施形態に係る劣化試験装置の概略構成図。
【図2】被検物である液晶パネルの部分断面構成図。
【図3】実施形態に係る劣化試験方法の説明図。
【図4】実施形態に係る劣化試験方法の説明図。
【図5】劣化試験で得られる液晶パネルのV−T特性を示すグラフ。
【図6】劣化試験方法の2態様における時系図。
【符号の説明】
【0073】
100 劣化試験装置、10 レーザ光源、11 シャッタ(第1遮光素子)、12 NDフィルタ、13 第1ハーフミラー(第1光学素子)、14 集光レンズ、15 液晶パネル(被検物)、16 第1レーザ光量検出部、17 第2レーザ光量検出部、18 第2ハーフミラー(第2光学素子)、19 被検物支持部、20 パワーメータ、21 シャッタ(第2遮光素子)、30 観察光源、33 ミラー、34 偏光素子、35 観察光量検出部、36,37 撮像部、38 画像処理部、45 パネル駆動部、LB レーザ光、OB 観察光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルに光を照射して劣化させるとともに、当該劣化状態を観測する劣化試験装置であって、
前記液晶パネルの劣化処理に用いるレーザ光を出力するレーザ光源と、前記液晶パネルの劣化検査に用いる観察光を出力する観察光源と、を備えたことを特徴とする劣化試験装置。
【請求項2】
前記観察光源が、白色光を出力する光源であることを特徴とする請求項1に記載の劣化試験装置。
【請求項3】
前記観察光源から前記液晶パネルに至る光路に対して前記レーザ光を重畳する第1光学素子と、
前記液晶パネルに照射した後の前記観察光及び前記レーザ光の光路から前記観察光又はレーザ光を分岐させる第2光学素子と、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の劣化試験装置。
【請求項4】
前記液晶パネルに照射する前記レーザ光の光量を検出する第1レーザ光量検出部と、
前記液晶パネルに照射した後の前記レーザ光の光量を検出する第2レーザ光量検出部と、
前記液晶パネルに照射した後の前記観察光を検出する観察光検出部と
を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の劣化試験装置。
【請求項5】
前記レーザ光源から前記液晶パネルに至る前記レーザ光の光路に対して進退自在の遮光素子を備えたこと特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の劣化試験装置。
【請求項6】
前記液晶パネルに照射した後の前記観察光の光路上に、偏光素子が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の劣化試験装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の劣化試験装置を用いた劣化試験方法であって、
レーザ光を液晶パネルに対して照射する第1工程と、
観察光を前記液晶パネルに照射し、該液晶パネルに照射した後の観察光の状態を検出する第2工程と、
前記液晶パネルに照射する前後の前記観察光の差異に基づき前記液晶パネルの耐光性を評価する第3工程と、を含み、
前記第1工程の実行中に、1又は複数回の前記第2工程を実行することを特徴とする劣化試験方法。
【請求項8】
前記第2工程において、前記液晶パネルを駆動することで該液晶パネルに照射した後の前記観察光の状態を連続的に検出することを特徴とする請求項7に記載の劣化試験方法。
【請求項9】
前記第2工程において、前記液晶パネルに照射した後の前記観察光を偏光素子に透過させ、前記透過光の光量を、前記偏光素子の光学軸の角度に対応させて測定することを特徴とする請求項7に記載の劣化試験方法。
【請求項10】
前記第2工程を実行するに際して、遮光素子を用いて前記レーザ光を遮断することを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の劣化試験方法。
【請求項11】
前記第1工程において、前記レーザ光の波長、照射エネルギー、及び照射時間の少なくとも1つを可変パラメータとして設定して前記液晶パネルに対する照射を行い、
前記第3工程において、前記可変パラメータに応じた前記観察光の差異に基づき前記液晶パネルの耐光性を評価することを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の劣化試験方法。
【請求項12】
前記第1工程において、前記レーザ光の照射により前記液晶パネルに含まれる配向膜の配向性を低下させることを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載の劣化試験方法。
【請求項13】
前記液晶パネルに照射する前記レーザ光を、該液晶パネルの光入射側の偏光板の透過軸と略平行の直線偏光とすることを特徴とする請求項7から12のいずれか1項に記載の劣化試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−329715(P2006−329715A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151207(P2005−151207)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】